(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144925
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ディフューザー、及びこれを備えたスピーカーユニット
(51)【国際特許分類】
H04R 1/34 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H04R1/34 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057105
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179453
【弁理士】
【氏名又は名称】會田 悠介
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】小西 和希
(72)【発明者】
【氏名】中西 芳徳
【テーマコード(参考)】
5D018
【Fターム(参考)】
5D018AF12
(57)【要約】
【課題】スピーカーから放出された音を、偏りなく広く拡散することができ、良好な音響放射特性を得ることができるディフューザー、及びこれを備えたスピーカーユニットを提供する。
【解決手段】ディフューザー3は、板状に形成され、スピーカー4の振動板4aとほぼ同じ形状及びサイズの貫通孔11aを有するベース部11と、貫通孔11aに対応する所定サイズに形成されるとともに、ベース部11に支持された中央反射部12と、ベース部11において貫通孔11aの周縁部からベース部11の前方及び後方の少なくとも一方に突出しかつ内面側が凹んだ円弧状に形成され、中央反射部12で反射された音をさらに反射させる周縁反射部13と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーの振動板の前方に配置され、前記スピーカーから放出された音を反射させることによって拡散するためのディフューザーであって、
所定の平面形状を有する板状に形成され、前記スピーカーの前記振動板とほぼ同じ形状及びサイズの貫通孔を有するベース部と、
前記貫通孔に対応する所定サイズに形成されるとともに、前記ベース部に支持された中央反射部と、
前記ベース部において前記貫通孔の周縁部から当該ベース部の前方及び後方の少なくとも一方に突出しかつ内面が凹んだ円弧状に形成され、前記中央反射部で反射された音をさらに反射させる周縁反射部と、
を備えていることを特徴とするディフューザー。
【請求項2】
前記中央反射部は、前記ベース部の前方に開放する中空状に形成されており、その中央に、所定の径を有する貫通した開口を有していることを特徴とする請求項1に記載のディフューザー。
【請求項3】
前記中央反射部は、各々が前記ベース部の前方に突出する所定の高さを有するとともに、互いに平行にかつ前記開口を横切るように延びる複数の板部を、さらに有していることを特徴とする請求項2に記載のディフューザー。
【請求項4】
前記複数の板部は、
前記開口の中心を横切る中央板部と、
この中央板部と所定間隔を隔てて配置された複数の側方板部と、
を有しており、
前記中央板部は、高さが最も高くなるように設定され、
前記複数の側方板部は、前記中央板部から離れるほど、高さが低くなるように設定されていることを特徴とする請求項3に記載のディフューザー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のディフューザーを備えたスピーカーユニットであって、
所定の厚さを有する板状に形成されるとともに、前記ディフューザーの前記周縁反射部とほぼ同じ形状及びサイズの貫通した放音孔を有するバッフル板と、
このバッフル板の背面側から取り付けられ、前記放音孔の内側に前記中央反射部が配置された前記ディフューザーと、
このディフューザーの背面側に取り付けられたスピーカーと、
を備えており、
前記ディフューザーは、前記周縁反射部が前記バッフル板の前記放音孔に嵌合するように、前記バッフル板に取り付けられていることを特徴とするスピーカーユニット。
【請求項6】
前記ディフューザーは、前記ベース部が前記バッフル板の背面に接した状態で取り付けられるとともに、前記中央反射部の前面が前記バッフル板の前面とほぼ同じ位置になるように設定されていることを特徴とする請求項5に記載のスピーカーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーの振動板の前方に配置され、スピーカーから放出された音を拡散するためのディフューザー、及びこれを備えたスピーカーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のディフューザーとして、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このディフューザーは、中心部に所定サイズの貫通した開口を有する第1反射部材と、前記開口を介してスピーカー側に臨むように配置された第2反射部材とを備えている。ディフューザーの第1反射部材とその背面側に配置されたスピーカーの振動板との間には、第1音響通路が形成される一方、第1反射部材と第2反射部材との間には、第2音響通路が形成されている。
【0003】
スピーカーの振動板が振動することによって、その前方に音が放出されると、第1反射部材のスピーカー側の面に反射した音は、第1音響通路を介して、ディフューザーの径方向に拡散される。また、スピーカーから放出された音のうち、第1反射部材の中央の開口を通過した音は、第2反射部材に反射し、第2音響通路を介して、ディフューザーの径方向及び前方に拡散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のディフューザーでは、スピーカーから放出された音が、第1反射部材によって仕切られた第1音響通路と第2音響通路を介して、ディフューザーの径方向及び前方に拡散される。しかし、両音響通路をそれぞれ通った音波について、ディフューザーの径方向や前方において合成される際に、音域によってはズレが生じ、その結果、音の強さや拡散度合について、偏りや音ムラが発生することがある。
【0006】
また、放音孔を有するバッフル板の背面側にスピーカーが配置されたスピーカーユニットにおいて、バッフル板の放音孔の内側に上記のようなディフューザーが設置されると、次のような問題が生じる。すなわち、スピーカーから放出され、第1音響通路や第2音響通路を通過した音が、バッフル板の放音孔の内周面に直接、反射することがある。この場合、バッフル板の放音孔の内周面に反射する音が、意図しない方向へ反射したり、場合によっては、スピーカー側に戻るように反射したりすることがある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、スピーカーから放出された音を、偏りなく広く拡散することができ、良好な音響放射特性を得ることができるディフューザー、及びこれを備えたスピーカーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、スピーカーの振動板の前方に配置され、スピーカーから放出された音を反射させることによって拡散するためのディフューザーであって、所定の平面形状を有する板状に形成され、スピーカーの振動板とほぼ同じ形状及びサイズの貫通孔を有するベース部と、貫通孔に対応する所定サイズに形成されるとともに、ベース部に支持された中央反射部と、ベース部において貫通孔の周縁部からベース部の前方及び後方の少なくとも一方に突出しかつ内面が凹んだ円弧状に形成され、中央反射部で反射された音をさらに反射させる周縁反射部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、スピーカーの振動板の前方に配置されるディフューザーが、上記のベース部、中央反射部及び周縁反射部を備えている。スピーカーの振動板から音が放出されると、その音は、中央反射部で反射され、その径方向に向かって進み、周縁反射部でさらに反射される。この周縁反射部は、ベース部の前方及び後方の少なくとも一方に突出しかつ内面が凹んだ円弧状に形成されているので、周縁反射部で反射された音は、ディフューザーの前方から、ディフューザーの中心を通る軸線に対して反射部位の反対側にわたって広く拡散し、その拡散度合が高められる。これにより、スピーカーから放出された音を、偏りなく広く拡散することができるディフューザーを得ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のディフューザーにおいて、中央反射部は、ベース部の前方に開放する中空状に形成されており、その中央に、所定の径を有する貫通した開口を有していることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、中央反射部がベース部の前方に開放する中空状に形成され、その中央に、所定の径を有する貫通した開口が設けられているので、その開口を通過する音をそのまま、ディフューザーの前方へ放出させ、音圧の低下を抑制することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のディフューザーにおいて、中央反射部は、各々がベース部の前方に突出する所定の高さを有するとともに、互いに平行にかつ開口を横切るように延びる複数の板部を、さらに有していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、開口を有する中央反射部に、各々がベース部の前方に突出する所定の高さを有する複数の板部が、互いに平行にかつ開口を横切るように設けられることにより、開口を通過する音において、特定の周波数の音圧が低下するのを抑制することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のディフューザーにおいて、複数の板部は、開口の中心を横切る中央板部と、この中央板部と所定間隔を隔てて配置された複数の側方板部と、を有しており、中央板部は、高さが最も高くなるように設定され、複数の側方板部は、中央板部から離れるほど、高さが低くなるように設定されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、複数の板部が、上記の中央板部及び複数の側方板部を有しており、中央板部の高さが最も高く、中央板部から離れるほど、側方板部の高さが低くなっているので、開口を通過した音を、中央板部から側方板部側へ拡散しやすくすることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかに記載のディフューザーを備えたスピーカーユニットであって、所定の厚さを有する板状に形成されるとともに、ディフューザーの周縁反射部とほぼ同じ形状及びサイズの貫通した放音孔を有するバッフル板と、このバッフル板の背面側から取り付けられ、放音孔の内側に中央反射部が配置されたディフューザーと、このディフューザーの背面側に取り付けられたスピーカーと、を備えており、ディフューザーは、周縁反射部がバッフル板の放音孔に嵌合するように、バッフル板に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、上記の放音孔を有するバッフル板に、その背面側からディフューザーが取り付けられ、ディフューザーの中央反射部がバッフル板の放音孔の内側に配置される。また、ディフューザーの背面側にスピーカーが取り付けられている。そして、これらのバッフル板、ディフューザー及びスピーカーを備えたスピーカーユニットでは、ディフューザーの周縁反射部がバッフル板の放音孔に嵌合するように、ディフューザーがバッフル板に取り付けられている。スピーカーから放出され、ディフューザーの中央反射部に反射した音のうち、バッフル板の放音孔の周縁部側に進んだ音は、ディフューザーの周縁反射部でさらに反射される。そして、この周縁反射部で反射された音は、前述したように、ディフューザーの前方から、ディフューザーの中心を通る軸線に対して反射部位の反対側にわたって広く拡散し、その拡散度合が高められる。これにより、スピーカーから放出された音を、偏りなく広く拡散することができ、良好な音響放射特性を有するスピーカーユニットを得ることができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載のスピーカーユニットにおいて、ディフューザーは、ベース部がバッフル板の背面に接した状態で取り付けられるとともに、中央反射部の前面がバッフル板の前面とほぼ同じ位置になるように設定されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ディフューザーのベース部が、バッフル板の背面に接した状態で、ディフューザーがバッフル板に取り付けられるので、ディフューザーを安定した状態でバッフル板に取り付けることができる。また、ディフューザーの中央反射部の前面がバッフル板の前面とほぼ同じ位置になるように設定されているので、ディフューザーがバッフル板から前方に大きく突出することがなく、バッフル板の前面が平坦ですっきりとしたデザインのスピーカーユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるスピーカーユニットを示す斜視図であり、(a)は斜め上から見たときの状態、(b)は斜め下から見たときの状態を示す。
【
図2】(a)はスピーカーユニットの平面図、(b)は(a)のb-b線に沿う断面図、(c)は(a)のc-c線に沿う断面図である。
【
図3】スピーカーユニットを分解して示す斜視図であり、(a)はバッフル板、(b)はディフューザー、(c)はスピーカーを示す。
【
図4】
図2(b)に対応する分解断面図であり、(a)はバッフル板、(b)はディフューザー、(c)はスピーカーを示す。
【
図5】
図2(c)に対応する分解断面図であり、(a)はバッフル板、(b)はディフューザー、(c)はスピーカーを示す。
【
図6】スピーカーユニットから出力される音波の音響放射特性について、右半部のシミュレーション結果の一例を示す図であり、(a)はスピーカーの長径に対応する音響放射特性、(b)はスピーカーの短径に対応する音響放射特性を示す。
【
図7】本発明の第2実施形態によるディフューザーを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線に沿う断面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態によるディフューザーを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb-b線に沿う断面図である。
【
図9】横軸を周波数、縦軸を音圧とした音響放射特性のグラフであり、(a)は第2実施形態のディフューザーを備えたスピーカーユニットにおける音響放射特性、(b)は第3実施形態のディフューザーを備えたスピーカーユニットにおける音響放射特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるディフューザーを備えたスピーカーユニットを示しており、(a)は斜め上から見たときの状態、(b)は斜め下から見たときの状態を示している。なお、このスピーカーユニット1は、例えば電子ピアノに適用され、その電子ピアノの鍵盤付近に、上方に向いた状態で組み込まれる。
【0022】
図2(a)は、スピーカーユニット1の平面図、(b)及び(c)はそれぞれ、(a)のb-b線及びc-c線に沿う断面図である。また、
図3は、スピーカーユニット1の分解斜視図であり、
図4は
図2(b)に対応し、
図5は
図2(c)に対応する分解断面図である。上記の
図1~
図5に示すように、このスピーカーユニット1は、バッフル板2、ディフューザー3及びスピーカー4を備えている。
【0023】
バッフル板2は、所定の厚さを有する板状のものであり、平面形状が矩形に形成されている。また、バッフル板2の中央には、平面形状が所定サイズを有する楕円状の貫通した放音孔2aが形成されている。
【0024】
ディフューザー3は、合成樹脂などで構成され、所定形状に成形されている。具体的には、
図3(b)に示すように、ディフューザー3は、平面形状が横長矩形状でかつ中央に比較的大きな貫通孔11aを有する板状のベース部11と、貫通孔11aよりも小さい所定サイズに形成された中央反射部12と、ベース部11において、貫通孔11aの周縁部からベース部11の上方及び下方にそれぞれ突出する周縁反射部13とを備えている。
【0025】
図1~
図3に示すように、ベース部11は、その四隅にそれぞれ、ディフューザー3をバッフル板2にねじ止めするための上下方向に貫通する取付孔11bを有している。また、ベース部11には、周縁反射部13の内側に、スピーカー4をねじ止めするための複数(本実施形態では4つ)のねじ孔11cが設けられている。
【0026】
中央反射部12は、平面形状が所定サイズの楕円状に形成され、上方に開放する中空状でかつ下方に突出する錐状に形成されている。また、この中央反射部12は、ベース部11の貫通孔11aの周縁部から立設された複数(本実施形態では3つ)の連結部12aを介して、貫通孔11aの中央に位置するように支持されている。
【0027】
周縁反射部13は、
図3(b)、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、ベース部11の上面及び下面からそれぞれ突出する上凸部13a及び下凸部13bを有している。また、周縁反射部13は、その内面に、所定の曲率を有する円弧状に形成された上円弧面13cと、その下端に連なり、内方に若干傾斜する平坦面13dと、その内端に連なり、上円弧面13cよりも曲率の小さな円弧状に形成された下円弧面13eとを有している。
【0028】
スピーカー4は、コーン型の振動板4aを有しており、この振動板4aの平面形状が所定の長径及び短径を有する楕円状に形成されている。また、スピーカー4は、振動板4aの外径側の所定位置に、4つの取付孔4bを有している。
【0029】
以上のように構成されたバッフル板2、ディフューザー3及びスピーカー4を備えたスピーカーユニット1では、ディフューザー3がバッフル板2の下面側から、スピーカー4がディフューザー3の下面側から取り付けられ、それぞれ取付孔11b及び4bを介してねじ止めされている。この場合、ディフューザー3は、そのベース部11がバッフル板2の下面に接した状態で、かつ、周縁反射部13の上凸部13aがバッフル板2の放音孔2aに嵌合した状態で、バッフル板2に取り付けられている。これにより、バッフル板2の放音孔2aの周縁部には、その内側に、ディフューザー3の周縁反射部13が位置し、その内面である上円弧面13c、平坦面13d及び下円弧面13eが、中央反射部12の反射面12bに所定間隔を隔てて対向している。
【0030】
またこの場合、
図2(b)及び(c)に示すように、ディフューザー3の中央反射部12は、その上面がバッフル板2の上面とほぼ同じ位置になるように設定されている。
【0031】
図6は、スピーカーユニット1から出力される音波の音響放射特性について、右半部のシミュレーション結果の一例を示しており、(a)はスピーカー4の長径に対応し、(b)はスピーカー4の短径に対応している。両図に示すように、スピーカー4の振動板4aからその前方(
図6の上方)に音波が出力されると、その音波の大部分は、ディフューザー3の中央反射部12の反射面12aで反射され、中央反射部12の径方向に向かって放射状に進む。この場合、バッフル板2の放音孔2aの周縁部側に進んだ音波は、ディフューザー3の周縁反射部13の内面である上円弧面13c及び下円弧面13eでさらに反射される。そして、これらの上円弧面13c及び下円弧面13eで反射された音波は、ディフューザー3の前方(
図6では上方)から、その中心を通る軸線Cに対して反射部位の反対方向(
図6では左方向)にわたって広く拡散するよう、その拡散度合が高くなっている。
【0032】
なお、
図6(a)及び(b)は、ディフューザー3の中央反射部12及び周縁反射部13の右半部で音波が反射したシミュレーション結果のみを示しているが、中央反射部12及び周縁反射部13の左半部で反射する音波については、両図に示すシミュレーション結果と左右対称な状態になる。
【0033】
以上のように、本実施形態のディフューザー3を備えたスピーカーユニット1によれば、スピーカー4から放出された音を、偏りなく広く拡散することができ、良好な音響放射特性を得ることができる。
【0034】
図7は、本発明の第2実施形態によるディフューザーを示している。同図に示すように、このディフューザー3Aは、上述した第1実施形態のディフューザー3に対し、中央反射部12の中央に、貫通した開口12cを有する点のみが異なっている。なお、以下の説明では、第1実施形態のディフューザー3と同じ部位については同じ符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0035】
図7(a)及び(b)に示すように、ディフューザー3Aの中央反射部12には、その中央に、平面形状が円形で、所定の径を有する開口12cが形成されている。
【0036】
前述した第1実施形態のディフューザー3では、スピーカー4の振動板4aの中央付近から放出された音波は、中央反射部12で反射されるために、音圧が低下することがある。これに対し、本実施形態のディフューザー3Aでは、中央反射部12の中央に、上記の開口12cが設けられているので、スピーカー4の振動板4aの中央付近から放出された音波が、開口12cを介してそのまま、ディフューザー3の上方へ放出されることで、音圧の低下が抑制され、全体として良好な音響放射特性を得ることができる。
【0037】
図8は、本発明の第3実施形態によるディフューザーを示している。同図に示すように、このディフューザー3Bは、上述した第2実施形態のディフューザー3Aに対し、中央反射部12の内側に、薄い板状の複数の板部14を有する点のみが異なっている。なお、以下の説明では、第1及び第2実施形態のディフューザー3、3Aと同じ部位については同じ符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0038】
図8(a)及び(b)に示すように、ディフューザー3Bの中央反射部12の内面には、その長径方向に沿って延び、互いに平行にかつ所定間隔を隔てた3つの板部14が設けられている。具体的には、同図(a)に示すように、これらの板部14はいずれも、中央反射部12の開口12cを横切るように延びている。また、3つの板部14のうち、開口12cの中心を横切る中央板部14aは、同図(b)に示すように、他の2つの側方板部14b、14bよりも高さ(
図8(b)の上方への高さ)が高くなっている。
【0039】
図9(a)及び(b)は、第2実施形態のディフューザー3A及び第3実施形態のディフューザー3Bを備えたスピーカーユニットにおける音響放射特性の実験結果を示している。具体的には、各グラフでは、横軸に周波数、縦軸に音圧をとり、互いに異なる線種は、ディフューザー3A、3Bの中央反射部12の中心を通る中心軸線を0度(deg.)とし、その中心軸線とスピーカーユニットの前面との交点を中心としたときの中心軸線に対する所定角度ごとの音響放射特性を示している。
【0040】
図9(a)に示すように、第2実施形態のディフューザー3A、すなわち中央反射部12の中央に開口12cを設けたディフューザー3Aでは、中心軸線に沿うように放射される音波の音圧が、10000Hz付近において低下する、いわゆるピークディップが発生した。これに対し、
図9(b)に示すように、第3実施形態のディフューザー3B、すなわち、開口12cを有する中央反射部12に、開口12cを横切る複数の板部14を設けたディフューザー3Bでは、上述した第2実施形態のディフューザー3Aと異なり、ピークディップを抑制できることが確認された。
【0041】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、ディフューザー3、3A及び3Bにおいて、中央反射部12及び周縁反射部13の平面形状を楕円状に形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スピーカーの振動板の平面形状が円形の場合には、それに合わせて、円形にすることが可能である。また、各実施形態では、中央反射部12を下方に突出する錐状に形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スピーカー4から出力された音波を周縁反射部13側に反射可能であれば、他の形状を採用することも可能である。
【0042】
また、各実施形態では、中央反射部12をベース部11の貫通孔11aよりも小さく形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、良好な音響放射特性が確保できれば、中央反射部12を貫通孔11aと同じにしたり、貫通孔11aよりも大きくしたりすることも可能である。さらに、各実施形態では、周縁反射部13について、ベース部11の上面及び下面からそれぞれ突出する上凸部13a及び下凸部13bを有するように形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、周縁反射部13を、ベース部11の上面及び下面の一方のみから突出するように形成することも可能である。
【0043】
また、第2実施形態のディフューザー3Aにおいて、中央反射部12の中央に開口12cを設けたが、この開口12cの形状やサイズは特に限定されるものではなく、開口12cを複数設けたり、開口12cの平面形状をスリット状にしたりすることも可能である。
【0044】
さらに、第3実施形態のディフューザー3Bにおいて、中央反射部12の内側に、長径方向に沿って延びる3つの板部14を設けたが、これらの板部14の延び方向や数は特に限定されるものではない。例えば、各板部を、中央反射部12の短径方向に延びるように設けたり、2つ又は4つ以上の板部を設けたりすることも可能である。
【0045】
また、上記の各実施形態のディフューザー3、3A及び3Bではいずれも、中央反射部12として、上方に開放する中空状に形成されたものを採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1及び第2実施形態のディフューザー3及び3Aにおいて、中央反射部12を中実状に形成したものを採用することも可能である。また、実施形態で示したディフューザー3、3A及び3B、並びにスピーカーユニット1の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 スピーカーユニット
2 バッフル板
2a 放音孔
3 ディフューザー
3A ディフューザー
3B ディフューザー
4 スピーカー
4a スピーカーの振動板
11 ベース部
11a 貫通孔
12 中央反射部
12a 連結部
12b 中央反射部の反射面
12c 中央反射部の開口
13 周縁反射部
13a 上凸部
13b 下凸部
13c 上円弧面
13d 平坦面
13e 下円弧面
14 板部
14a 中央板部
14b 側方板部