(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144927
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】転落検知装置、転落検知システム、転落検知方法および転落検知プログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20241004BHJP
B61B 1/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
B61B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057108
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】松本 充弘
(72)【発明者】
【氏名】廣兼 晴司
(72)【発明者】
【氏名】相澤 知禎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】高田 義教
(72)【発明者】
【氏名】松井 雅宏
【テーマコード(参考)】
3D101
5H161
【Fターム(参考)】
3D101AD12
5H161AA01
5H161MM01
5H161MM15
5H161NN12
(57)【要約】
【課題】軌道上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物等の侵入による誤検知を回避することが可能な転落検知装置、転落検知システム、転落検知方法および転落検知プログラムを提供する。
【解決手段】転落検知装置4は、走査データ取得部14、転落検知エリア設定部13、検知サイズ設定部17、転落検知部15を備えている。走査データ取得部14は、下走査器32と、上走査器31とからそれぞれ検知結果を取得する。検知サイズ設定部17は、上・下走査器31,32によって走査される上下の転落検知エリアについて、異なる大きさの検知サイズの下限値を設定する。転落検知部15は、上下2つの転落検知エリアにおけるそれぞれの検知結果を用いて、転落者の有無を判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの下方であって列車が走行する軌道上に設定される転落検知エリアへの前記プラットホームからの転落者を検知する転落検知装置であって、
前記軌道の直上付近に設定される第1転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第1光走査部と、前記軌道から所定の高さに設定され前記第1転落検知エリアよりも高い位置にある第2転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第2光走査部と、からそれぞれ検知結果を取得する転落検知情報取得部と、
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアを設定する転落検知エリア設定部と、
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知対象サイズを設定するとともに、前記第1転落検知エリアと前記第2転落検知エリアとで異なる大きさの検知対象サイズを設定する検知サイズ設定部と、
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知結果を用いて、前記転落者の有無を判定する判定部と、
を備えている転落検知装置。
【請求項2】
前記検知サイズ設定部は、前記第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、前記第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値よりも大きく設定する、
請求項1に記載の転落検知装置。
【請求項3】
前記検知サイズ設定部は、前記第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、小動物の大きさよりも大きい値に設定する、
請求項1または2に記載の転落検知装置。
【請求項4】
前記検知サイズ設定部は、前記第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、一般的な人の太腿の直径よりも小さい値に設定する、
請求項1または2に記載の転落検知装置。
【請求項5】
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知時間を設定する検知時間設定部を、さらに備えており、
前記検知時間設定部は、前記第2転落検知エリアにおける検知時間を、飛来物が前記第2転落検知エリアを通過する時間よりも長く設定する、
請求項1または2に記載の転落検知装置。
【請求項6】
前記転落検知エリア設定部は、前記第2転落検知エリアを、前記軌道上に侵入する小動物の体高よりも高い位置に設定する、
請求項1または2に記載の転落検知装置。
【請求項7】
前記第1転落検知エリアまたは前記第2転落検知エリアは、前記列車と前記プラットホームとの間に挟まった前記転落者を検知するために設定されている、
請求項1または2に記載の転落検知装置。
【請求項8】
前記列車が前記プラットホームに入線していないこと検出する列車検知部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の転落検知装置。
【請求項9】
前記転落検知エリア設定部は、前記第1転落検知エリアと前記第2転落検知エリアとを平面視において重複するように設定する、
請求項1または2に記載の転落検知装置。
【請求項10】
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアは、前記プラットホームに入線する列車の進行方向に沿って複数設定されており、1つの前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアにおいて前記列車の2両分の範囲をカバーするように設定されている、
請求項1または2に記載の転落検知装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の転落検知装置と、
前記軌道の直上付近に設定された第1転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて、物体の有無を検知する第1光走査部と、
前記軌道から所定の高さに設定され前記第1転落検知エリアよりも高い位置にある第2転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて、物体の有無を検知する第2光走査部と、
を備えた転落検知システム。
【請求項12】
プラットホームの下方であって列車が走行する軌道上に設定される転落検知エリアへの前記プラットホームからの転落者を検知する転落検知方法であって、
前記軌道の直上付近に設定される第1転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第1光走査部と、前記軌道から所定の高さに設定され前記第1転落検知エリアよりも高い位置にある第2転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第2光走査部と、からそれぞれ検知結果を取得する転落検知情報取得ステップと、
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアを設定する転落検知エリア設定ステップと、
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知対象サイズを設定するとともに、前記第1転落検知エリアと前記第2転落検知エリアとで異なる大きさの検知対象サイズを設定する検知サイズ設定ステップと、
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知結果を用いて、前記転落者の有無を判定する判定ステップと、
を備えた転落検知方法。
【請求項13】
プラットホームの下方であって列車が走行する軌道上に設定される転落検知エリアへの前記プラットホームからの転落者を検知する転落検知プログラムであって、
前記軌道の直上付近に設定される第1転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第1光走査部と、前記軌道から所定の高さに設定され前記第1転落検知エリアよりも高い位置にある第2転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第2光走査部と、からそれぞれ検知結果を取得する転落検知情報取得ステップと、
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアを設定する転落検知エリア設定ステップと、
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知対象サイズを設定するとともに、前記第1転落検知エリアと前記第2転落検知エリアとで異なる大きさの検知対象サイズを設定する検知サイズ設定ステップと、
前記第1転落検知エリアおよび前記第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知結果を用いて、前記転落者の有無を判定する判定ステップと、
を備えた転落検知方法をコンピュータに実行させる転落検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道駅のプラットホームからの転落者を検知する転落検知装置、転落検知システム、転落検知方法および転落検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道駅では、鉄道利用者が、誤ってプラットホームから軌道上へ転落することがある。また、列車が鉄道駅で停止しているときには、鉄道利用者が、プラットホームと列車との間の隙間へ転落することがある。従来、これら軌道転落および隙間転落を検知して、関係者(指令員、駅係員、車掌あるいは運転士など)に発報するシステムが提案されている。
例えば、特許文献1および2は、レーザを偏向しながら射出して2次元的な走査範囲を形成するレーザスキャナを備えたシステムを開示している。レーザスキャナは、レーザを水平に射出する姿勢で、プラットホームよりも下方かつ軌道よりも上方の高さに設置される。当該高さに形成された水平な走査範囲内の任意領域が、監視領域として設定される。レーザスキャナは、物体が監視領域内に存在するか否かを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-095649号公報
【特許文献2】特開2007-038991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のホーム転落検知システムでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたホーム転落検知システムの構成において、例えば、犬やネコ、鳥等の小動物が軌道上に侵入して検知エリア内に滞留した際に、これらの小動物を転落者として誤検知しないように、検知対象サイズの下限値を大きくすることが考えられる。
【0005】
ここで、軌道上に転落した人を確実に検知することができるようにするために、レーザセンサは、軌道の直上から少し上方の高さ領域での検知を狙って配置されている。
このため、例えば、人が軌道上に転落した後、立ち上がった状態では、比較的細い足首付近をレーザセンサが検出した結果、検知対象サイズの下限値未満となり、まだ転落者が軌道上に残っているにもかかわらず、未検知となってしまうおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、軌道上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物等の侵入による誤検知を回避することが可能な転落検知装置、転落検知システム、転落検知方法および転落検知プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る転落検知装置は、プラットホームの下方であって列車が走行する軌道上に設定される転落検知エリアへのプラットホームからの転落者を検知する転落検知装置であって、転落検知情報取得部と、転落検知エリア設定部と、検知サイズ設定部と、判定部と、を備えている。転落検知情報取得部は、軌道の直上付近に設定される第1転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第1光走査部と、軌道から所定の高さに設定され第1転落検知エリアよりも高い位置にある第2転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第2光走査部と、からそれぞれ検知結果を取得する。転落検知エリア設定部は、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアを設定する。検知サイズ設定部は、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知対象サイズを設定するとともに、第1転落検知エリアと第2転落検知エリアとで異なる大きさの検知対象サイズを設定する。判定部は、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知結果を用いて、転落者の有無を判定する。
【0008】
ここで、上下に設定された第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおいて得られる転落検知情報を取得して転落者の有無を検知する転落検知装置において、下方に設置された第1光走査部によって検知される物体の検知対象サイズが、上方に設置された第2光走査部によって検知される物体の検知対象サイズとは異なるように設定されるとともに、第1光走査部および第2光走査部のそれぞれから取得した転落検知情報に基づいて、転落者の有無を判定する。
【0009】
ここで、第1転落検知エリアは、例えば、軌道の直上付近に設定されており、転落者が軌道上で立った状態では脚部を、転落者が軌道上に寝そべった状態では身体全体を検知する。第2転落検知エリアは、第1転落検知エリアよりも高い、例えば、軌道上の約70~80cmの高さ位置に設定されており、転落者が軌道上に立った状態では太腿から腰、上半身付近を検知する。
【0010】
従来、駅プラットホーム下に設置したレーザセンサによって、軌道上に転落した人を検知する技術が提案されている。しかし、従来技術では、レーザセンサに設定した検知エリア内に、所定サイズ以上の物体が所定時間以上滞留した場合には、転落者ありと判定していたため、動物(ネコなど)や鳥等の小動物が軌道に侵入し、所定時間以上滞留すると、転落者ありと判定されて、誤発報してしまうという課題があった。
【0011】
この対策として、ネコや鳥等の小動物が検知エリア内に滞留した場合でも転落者ありと判定してしまうことがないように、検知対象サイズの下限を大きく設定することが考えられる。しかしながら、人が軌道上に転落した後に立って歩くなどしている状態の場合、比較的細い足首付近が検出された結果、検知対象サイズ未満の大きさとみなされ、まだ転落状態が続いているにもかかわらず、未検知となるおそれがある。
【0012】
そこで、本発明では、レーザセンサ等の光走査部を上下に配置し、両者で軌道転落を監視する。そして、下方に配置された第1光走査部においては、検知対象サイズ下限を、ネコや鳥等の小動物の体長より大き目に設定するとともに、上方に配置された第2光走査部においては、検知対象サイズの下限を、軌道上に立った状態の人の太腿・腰~上半身を確実に捉えることができるように、小さ目に設定する。
【0013】
これにより、軌道上の転落者の状態(横になっている、立っている等)に関わらず、転落者を上下いずれかの転落検知エリアにおいて検知することができるとともに、猫や鳥等の小動物については、上下いずれの転落検知エリアでも検知して誤発報してしまうことをできるだけ回避することができる。
この結果、軌道上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物等の侵入による誤発報を回避して、列車運行の阻害や係員の手間を大幅に軽減することができる。
【0014】
第2の発明に係る転落検知装置は、第1の発明に係る転落検知装置であって、検知サイズ設定部は、第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値よりも大きく設定する。
これにより、下方の第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値が、上方の第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値よりも大きく設定されているため、軌道上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物の軌道上への侵入時に小動物を誤って転落者として検知してしまうことを回避することができる。
【0015】
第3の発明に係る転落検知装置は、第1または第2の発明に係る転落検知装置であって、検知サイズ設定部は、第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、小動物の大きさよりも大きい値に設定する。
これにより、下方の第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値が、小動物の大きさ(体長等)よりも大きく設定されているため、小動物の軌道上への侵入時に小動物を誤って転落者として検知してしまうことを回避することができる。
【0016】
第4の発明に係る転落検知装置は、第1または第2の発明に係る転落検知装置であって、検知サイズ設定部は、第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、一般的な人の太腿の直径よりも小さい値に設定する。
これにより、上方の第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値が、一般的な人の太腿の直径よりも小さい値に設定されているため、小動物を検知しない高さ位置において、転落者が立ち上がった状態で太腿あるいは太腿よりも大きい部位を確実に検知することができる。
また、転落者が子供の場合には、立ち上がった子供の頭~上半身を確実に検知することができる。
【0017】
第5の発明に係る転落検知装置は、第1または第2の発明に係る転落検知装置であって、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知時間を設定する検知時間設定部を、さらに備えている。検知時間設定部は、第2転落検知エリアにおける検知時間を、飛来物が第2転落検知エリアを通過する時間よりも長く設定する。
これにより、鳥やゴミ等の飛来物が上方の第2転落検知エリアを通過した場合でも、飛来物が通過するであろう時間よりも長く検知されないと転落者として検知されないため、飛来物等による転落者の誤検知を回避することができる。
【0018】
第6の発明に係る転落検知装置は、第1または第2の発明に係る転落検知装置であって、転落検知エリア設定部は、第2転落検知エリアを、軌道上に侵入する小動物の体高よりも高い位置に設定する。
これにより、上方に設置された第2光走査器によって走査される範囲において、検知サイズの下限値を小さく設定した場合でも、軌道上に侵入した小動物を、転落者として誤検知してしまうことを回避することができる。
【0019】
第7の発明に係る転落検知装置は、第1または第2の発明に係る転落検知装置であって、第1転落検知エリアまたは第2転落検知エリアは、列車とプラットホームとの間に挟まった転落者を検知するために設定されている。
これにより、下方の第1転落検知エリアまたは上方の第2転落検知エリアにおける検知結果は、軌道上への転落者の有無の判定に用いられるだけでなく、列車がプラットホームに停車している状態での列車とプラットホームとの間の隙間への隙間転落者の検知も行うことができる。
【0020】
第8の発明に係る転落検知装置は、第1または第2の発明に係る転落検知装置であって、列車がプラットホームに入線していないこと検出する列車検知部を、さらに備えている。
これにより、プラットホームに列車が入線していないことを検出した上で、上述した第1・第2転落検知エリアにおける検知結果を用いた軌道上への転落者の検知を実施することができる。
【0021】
第9の発明に係る転落検知装置は、第1または第2の発明に係る転落検知装置であって、転落検知エリア設定部は、第1転落検知エリアと第2転落検知エリアとを平面視において重複するように設定する。
これにより、平面視において重複するように上下2段で第1転落検知エリアと第2転落検知エリアとを設定することで、転落者の有無を高精度に検出することができる。
【0022】
第10の発明に係る転落検知装置は、第1または第2の発明に係る転落検知装置であって、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアは、プラットホームに入線する列車の進行方向に沿って複数設定されており、1つの第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおいて列車の2両分の範囲をカバーするように設定されている。
これにより、列車2両に対して1つの第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアが設定されていることで、例えば、全車両分に対応する転落検知エリアを設定する場合でも、1両ずつに対応して光走査部が設けられた構成と比較してコストダウンを図ることができる。
【0023】
第11の発明に係る転落検知装置は、第1または第2の発明に係る転落検知装置と、第1光走査部と、第2光走査部と、を備えている。第1光走査部は、軌道の直上付近に設定された第1転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて、物体の有無を検知する。第2光走査部は、軌道から所定の高さに設定され第1転落検知エリアよりも高い位置にある第2転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて、物体の有無を検知する。
これにより、上下2段に設置された第1光走査部および第2光走査部を用いて、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおける転落者の有無を高精度に検出するとともに、小動物等の侵入による誤検知を回避することができる。
【0024】
第12の発明に係る転落検知方法は、プラットホームの下方であって列車が走行する軌道上に設定される転落検知エリアへのプラットホームからの転落者を検知する転落検知方法であって、転落検知情報取得ステップと、転落検知エリア設定ステップと、検知サイズ設定ステップと、判定ステップと、を備えている。転落検知情報取得ステップでは、軌道の直上付近に設定される第1転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第1光走査部と、軌道から所定の高さに設定され第1転落検知エリアよりも高い位置にある第2転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第2光走査部と、からそれぞれ検知結果を取得する。転落検知エリア設定ステップでは、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアを設定する。検知サイズ設定ステップでは、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知対象サイズを設定するとともに、第1転落検知エリアと第2転落検知エリアとで異なる大きさの検知対象サイズを設定する。判定ステップでは、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知結果を用いて、転落者の有無を判定する。
【0025】
ここで、上下に設定された第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおいて得られる転落検知情報を取得して転落者の有無を検知する転落検知装置において、下方に設置された第1光走査部によって検知される物体の検知対象サイズが、上方に設置された第2光走査部によって検知される物体の検知対象サイズとは異なるように設定されるとともに、第1光走査部および第2光走査部のそれぞれから取得した転落検知情報に基づいて、転落者の有無を判定する。
【0026】
ここで、第1転落検知エリアは、例えば、軌道の直上付近に設定されており、転落者が軌道上で立った状態では脚部を、転落者が軌道上に寝そべった状態では身体全体を検知する。第2転落検知エリアは、第1転落検知エリアよりも高い、例えば、軌道上の約70~80cmの高さ位置に設定されており、転落者が軌道上に立った状態では太腿から腰、上半身付近を検知する。
【0027】
従来、駅プラットホーム下に設置したレーザセンサによって、軌道上に転落した人を検知する技術が提案されている。しかし、従来技術では、レーザセンサに設定した検知エリア内に、所定サイズ以上の物体が所定時間以上滞留した場合には、転落者ありと判定していたため、動物(ネコなど)や鳥等の小動物が軌道に侵入し、所定時間以上滞留すると、転落者ありと判定されて、誤発報してしまうという課題があった。
【0028】
この対策として、ネコや鳥等の小動物が検知エリア内に滞留した場合でも転落者ありと判定してしまうことがないように、検知対象サイズの下限を大きく設定することが考えられる。しかしながら、人が軌道上に転落した後に立って歩くなどしている状態の場合、比較的細い足首付近が検出された結果、検知対象サイズ未満の大きさとみなされ、まだ転落状態が続いているにもかかわらず、未検知となるおそれがある。
【0029】
そこで、本発明では、レーザセンサ等の光走査部を上下に配置し、両者で軌道転落を監視する。そして、下方に配置された第1光走査部においては、検知対象サイズ下限を、ネコや鳥等の小動物の体長より大き目に設定するとともに、上方に配置された第2光走査部においては、検知対象サイズの下限を、軌道上に立った状態の人の太腿・腰~上半身を確実に捉えることができるように、小さ目に設定する。
【0030】
これにより、軌道上の転落者の状態(横になっている、立っている等)に関わらず、転落者を上下いずれかの転落検知エリアにおいて検知することができるとともに、猫や鳥等の小動物については、上下いずれの転落検知エリアでも検知して誤発報してしまうことをできるだけ回避することができる。
この結果、軌道上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物等の侵入による誤発報を回避して、列車運行の阻害や係員の手間を大幅に軽減することができる。
【0031】
第13の発明に係る転落検知プログラムは、プラットホームの下方であって列車が走行する軌道上に設定される転落検知エリアへのプラットホームからの転落者を検知する転落検知プログラムであって、転落検知情報取得ステップと、転落検知エリア設定ステップと、検知サイズ設定ステップと、判定ステップと、を備えた転落検知方法をコンピュータに実行させる。転落検知情報取得ステップでは、軌道の直上付近に設定される第1転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第1光走査部と、軌道から所定の高さに設定され第1転落検知エリアよりも高い位置にある第2転落検知エリアに光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する第2光走査部と、からそれぞれ検知結果を取得する。転落検知エリア設定ステップでは、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアを設定する。検知サイズ設定ステップでは、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知対象サイズを設定するとともに、第1転落検知エリアと第2転落検知エリアとで異なる大きさの検知対象サイズを設定する。判定ステップでは、第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知結果を用いて、転落者の有無を判定する。
【0032】
ここで、上下に設定された第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリアにおいて得られる転落検知情報を取得して転落者の有無を検知する転落検知装置において、下方に設置された第1光走査部によって検知される物体の検知対象サイズが、上方に設置された第2光走査部によって検知される物体の検知対象サイズとは異なるように設定されるとともに、第1光走査部および第2光走査部のそれぞれから取得した転落検知情報に基づいて、転落者の有無を判定する。
【0033】
ここで、第1転落検知エリアは、例えば、軌道の直上付近に設定されており、転落者が軌道上で立った状態では脚部を、転落者が軌道上に寝そべった状態では身体全体を検知する。第2転落検知エリアは、第1転落検知エリアよりも高い、例えば、軌道上の約70~80cmの高さ位置に設定されており、転落者が軌道上に立った状態では太腿から腰、上半身付近を検知する。
【0034】
従来、駅プラットホーム下に設置したレーザセンサによって、軌道上に転落した人を検知する技術が提案されている。しかし、従来技術では、レーザセンサに設定した検知エリア内に、所定サイズ以上の物体が所定時間以上滞留した場合には、転落者ありと判定していたため、動物(ネコなど)や鳥等の小動物が軌道に侵入し、所定時間以上滞留すると、転落者ありと判定されて、誤発報してしまうという課題があった。
【0035】
この対策として、ネコや鳥等の小動物が検知エリア内に滞留した場合でも転落者ありと判定してしまうことがないように、検知対象サイズの下限を大きく設定することが考えられる。しかしながら、人が軌道上に転落した後に立って歩くなどしている状態の場合、比較的細い足首付近が検出された結果、検知対象サイズ未満の大きさとみなされ、まだ転落状態が続いているにもかかわらず、未検知となるおそれがある。
【0036】
そこで、本発明では、レーザセンサ等の光走査部を上下に配置し、両者で軌道転落を監視する。そして、下方に配置された第1光走査部においては、検知対象サイズ下限を、ネコや鳥等の小動物の体長より大き目に設定するとともに、上方に配置された第2光走査部においては、検知対象サイズの下限を、軌道上に立った状態の人の太腿・腰~上半身を確実に捉えることができるように、小さ目に設定する。
【0037】
これにより、軌道上の転落者の状態(横になっている、立っている等)に関わらず、転落者を上下いずれかの転落検知エリアにおいて検知することができるとともに、猫や鳥等の小動物については、上下いずれの転落検知エリアでも検知して誤発報してしまうことをできるだけ回避することができる。
この結果、軌道上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物等の侵入による誤発報を回避して、列車運行の阻害や係員の手間を大幅に軽減することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る転落検知装置によれば、軌道上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物等の侵入による誤検知を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の一実施形態に係る転落検知装置を含む転落検知システムの構成を示す制御ブロック図。
【
図2】
図1の転落検知システムに含まれる転落検知装置の構成を示す制御ブロック図。
【
図3】(a)は、駅のプラットホームに列車が不在の状態において光走査器による走査範囲を示す平面図。(b)は、駅のプラットホームに列車が在線の状態において光走査器による走査範囲を示す平面図。
【
図4】駅のプラットホームの下部空間に設置された光走査器と駅に停止した列車との位置関係を示す、列車の進行方向から見た断面図。
【
図5】(a)は、列車が駅のプラットホームに不在の状態における転落検知エリアを示す斜視図。(b)は、列車が駅のプラットホームに在線の状態における隙間転落検知エリアを示す斜視図。
【
図6】(a)は、プラットホームから軌道上へ転落した転落者が軌道上に寝そべっている状態において、上走査器および下走査器による走査光の走査範囲を示す概念図。(b)は、転落者が軌道上に立ち上がった状態において、上走査器および下走査器による走査光の走査範囲を示す概念図。
【
図7】
図1の転落検知システムに含まれる列車検知センサによって列車がプラットホームに在線状態であるか否かを検出する状態を示す平面図。
【
図8】
図1の転落検知システムに含まれる転落検知装置において実施される転落検知方法の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の一実施形態に係る転落検知装置4およびこれを備えた転落検知システム1について、
図1~
図8を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0041】
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
以下の説明において、「長手方向」は、鉄道駅のプラットホームPの長手方向である(
図3の紙面左右方向、
図4の紙面直交方向)。長手方向は、プラットホームPに隣接した軌道Rの延在方向、および、軌道R上の車両Cの車長方向と略平行である。「幅方向」は、プラットホームPの幅方向(
図3の紙面上下方向、
図4の紙面左右方向)である。幅方向は、プラットホームPに隣接した軌道Rの軌間方向、および、軌道R上の車両Cの車幅方向と略平行である。幅方向の「内側」または「内方」は、プラットホームPの幅中心に近づく側または方向である。幅方向の「外側」または「外方」は、プラットホームPの幅中心から遠ざかる側または方向である。
【0042】
軌道Rは、道床と、その上に設けられた一対のレールとを含む。列車Trは、レールに沿って軌道R上を走行する。列車Trは、1両の車両Cで構成され、または、連結器を介して2両以上の車両Cを順次に連結することによって構成される。プラットホームPは、軌道Rと幅方向に隣接して設定され、その上面は軌道Rよりも上方に位置する。
軌道Rの状態には、
図3(a)に示す「不在状態」と、
図3(b)に示す「在線状態」とが含まれる。不在状態では、軌道R上に列車Trが存在せず、軌道Rの上方が広く開放される。不在状態において、鉄道利用者は、プラットホームPの上面で列車Trの到着を待つ。在線状態では、軌道R上で列車Trが停止している。在線状態において、鉄道利用者は、プラットホームPと列車Trとの間に形成される隙間Dを跨いで、プラットホームPの上面から列車Trに乗り、または、列車TrからプラットホームPの上面へ降り立つ。
【0043】
(1)転落検知システム1の構成
本実施形態に係る転落検知システム1は、プラットホームPを備えた鉄道駅に適用され、プラットホームPから誤って転落した鉄道利用者を検知する。検知の対象は、不在状態でプラットホームPから軌道Rまで転落した「軌道転落者」と、在線状態で隙間Dへ転落した「隙間転落者」との両方である。隙間転落者には、軌道Rまで落下する者もいれば、隙間Dに挟まって宙吊りになる者もいるが、そのどちらも検知の対象である。
【0044】
また、本実施形態の転落検知システム1では、後述する上走査器31および下走査器32におけるそれぞれ検知結果を用いて、軌道R上における転落者の有無を判定する。
なお、軌道Rの状態には、不在状態から在線状態への過渡状態としての「入線状態」と、在線状態から不在状態への過渡状態としての「出線状態」とが含まれる。
また、本実施形態に係る転落検知システム1は、
図1に示すように、プラットホームPの下部空間に設置された走査装置3と、走査装置3と接続された転落検知装置4と、パトライト(登録商標)等のシステム状態表示器5および転落警報器6と、列車検知センサ7と、記憶装置8と、表示装置9と、を備えている。
【0045】
走査装置3は、
図2~
図4に示すように、プラットホームPの下部空間において、プラットホームPと隣接した軌道Rに沿って設けられており、複数の走査器ユニット3a,3b,3cを有している。各走査器ユニット3a,3b,3cは、上下一対で配置された上走査器31および下走査器(光走査器)32を含む。複数の走査器ユニット3a,3b,3cは、長手方向に間隔をおいて設定された複数の設置位置それぞれに設置されている。
【0046】
上・下走査器31,32は、例えば、レーザ光を所定の角度範囲内で走査する2Dレーザスキャナであって、
図2に示すように、発光部33、偏向部34、受光部35、検知部36、距離算出部37を有している。
発光部33は、レーザ光のような走査光SLを発光する。
偏向部34は、ガルバノミラーのような偏向器、および、偏向器を回転駆動するアクチュエータを有する。発光部33で発光された走査光SLは、偏向部34によって偏向されながら射出される。これにより、2次元的な走査範囲SRが形成される。走査範囲SR内に物体が存在すると、走査光SLがその物体で反射する。
【0047】
受光部35は、走査光SLの反射光を受光する。
検知部36は、発光部33から照射されてから受光部35で受光された反射光を受光するまでの時間に基づいて、走査範囲SR(更に言えば、走査範囲SR内に設定された転落監視領域)に物体が存在するか否かを検知する。
距離算出部37は、受光部35において受光した反射光を受光するまでの時間の情報に応じて、光を反射した物体までの距離を算出する。
【0048】
上・下走査器31,32は、
図4に示すように、プラットホームPよりも下方かつ軌道Rよりも上方に設置されている。上走査器31は、下走査器32よりも上方に設置されている。
下走査器32は、主に、軌道転落者を検知する。また、下走査器32は、軌道Rの構成要素を検知しないことを求められる。よって、下走査器32の上下方向の位置は、このような役割を果たすための適値(例えば、軌道から約250mm上方)に調整される。
【0049】
また、下走査器32は、プラットホームPに列車Trが停止している状態でプラットホームPと列車Trとの間の隙間Dから軌道Rまで転落した転落者を検知する。
上走査器31は、軌道R上において中腰あるいは立ち上がった転落者を検知するとともに、プラットホームPと列車Trとの間の隙間Dで宙吊りになった隙間転落者を検知する。すなわち、上走査器31は、軌道R上に転落して立ち上がった状態の転落者を検知するとともに、プラットホームPと列車Trとの間の隙間に転落した転落者を検知するために、設置されている。
【0050】
上走査器31の上下方向の位置は、このような役割を果たすための適値(例えば、軌道から約700~800mm上方、あるいは、プラットホームPから約600mm下方)に調整される。
上・下走査器31,32は、軌道Rよりも幅方向内方、更には、プラットホームPの端縁よりも幅方向内方に設置されている。プラットホームPの下方には、プラットホームPの端縁から見て幅方向内方に奥まった空間が形成されることがある。走査器ユニット3a,3b,3cの設置位置は、例えば、このような空間内に設定されており、当該空間内で上・下走査器31,32の上下方向および幅方向における位置が調整される。
【0051】
上・下走査器31,32は、走査光SLが幅方向外方へ水平に射出されて水平面内で偏向される姿勢で、設置されている。これにより、上・下走査器31,32が、プラットホームPよりも下方かつ上・下走査器31,32から見て幅方向外方に、2つの水平な走査範囲SRを形成する。
走査光SLの偏向範囲は、
図3に示すように、約-5°~185°の角度範囲で設定されている。走査範囲SRは、平面視において、対応する上・下走査器31,32から幅方向に延びる基準線RLに対して線対称の半円形状に形成される。複数の走査範囲SRが、長手方向に並べられ、かつ、列車Trの進行方向に沿って互いに部分的にオーバラップされるようにして、複数の走査器ユニット3a,3b,3cによって形成される。また、上下に配置された上走査器31および下走査器32によって形成される走査範囲SRは、
図3に示すように、平面視において重複するように形成される。
【0052】
各走査範囲SR内に、転落監視領域が設定される。上・下走査器31,32は、それぞれ、走査範囲SR内の物体(転落者または車輪)の存否を検知することができる。そして、上・下走査器31,32は、それぞれが設定された転落監視領域内の物体の存在を検知したときに、その旨を示す検出信号を出力する。
転落監視領域のサイズおよび場所は、軌道の状態に応じて変更される。本実施形態では、上・下走査器31,32において、複数の転落監視領域を、同一の走査範囲SR内における互いに異なる領域に同時に設定することが可能である。また、同時に設定される2以上の転落監視領域を、同一の走査範囲SR内で部分的に互いにオーバラップさせることも可能である。
【0053】
本実施形態では、走査器ユニット3a,3b,3cのそれぞれの設置位置が、長手方向において車両2両分の長さに相当する間隔をおいて設定されている。各設置位置は、停車中の列車Trの車両連結部と幅方向に対向する位置である。
長手方向一方側(
図3の紙面左側)の末端に設置された走査器ユニット3aは、1両目および2両目の車両連結部と対向する。その隣に設置された走査器ユニット3bは、末端の走査器ユニット3aから車両2両分の長さだけ離されており、3両目および4両目の車両連結部と対向する。
【0054】
上・下走査器31,32にそれぞれ設定される転落監視領域は、長手方向に車両2両分の長さを有している。転落監視領域は、設置位置から見て長手方向一方側の車両Cと他方側(
図3の紙面右側)の車両Cとの2両が停止する領域と対応する。
複数の走査器ユニット3a,3b,3cにそれぞれ設定される複数の転落監視領域は、長手方向に連なる。したがって、列車Trが停車する全領域が監視の対象となる。
【0055】
ただし、走査器ユニット3a,3b,3cは、単数でも複数でもよく、特に限定されない。走査器ユニット3a,3b,3cの個数は、転落監視領域の長手方向における寸法や、プラットホームPの有効長や、軌道R上で停止すると想定されている列車Trの最大長に応じて、適宜変更可能である。
例えば、プラットホームPと列車Trとの間の隙間が広くなりやすい曲線状の部分にのみ、走査器ユニット3a,3b,3cが設置されており、プラットホームPの一部において転落検知が実施されてもよい。
【0056】
転落検知装置4は、
図2に示すように、走査装置3と接続されており、走査装置3から出力された検知結果に基づいて、プラットホームPからの転落者を検知する。転落検知装置4は、転落者を検知すると、関係者に知らせるために転落警報器6に発報動作を行わせる。
なお、転落検知装置4の詳細な構成については、後段にて詳述する。
【0057】
転落警報器6は、列車運行を管理する指令所に設けられ指令員に向けて警報を発する、あるいは、鉄道駅に設けられ駅係員に向けて警報を発する、あるいは、列車Trの制御車に設けられ運転士あるいは車掌に向けて警報を発する警報器を含む。警報器は、警告音等の音情報を出力するスピーカまたはブザーでもよいし、警告メッセージを表示するディスプレイ、または警告光を照射するランプであってもよい。
【0058】
関係者は、警報に基づいて、転落への対処、および、転落に付随する二次事故を未然に防ぐための措置を採ることができるとともに、雑草等の植生、落ち葉その他の落下物の処理等の措置を採ることができる。
列車検知センサ7は、例えば、赤外線レーザセンサであって、軌道R内の車両在線有無を漏れなく監視できるように、プラットホームPの長手方向両端部の屋根に複数設置され、車両Cの上面または側面の存否を検知する(
図7参照)。そして、列車検知センサ7は、
図2に示すように、後述する転落検知装置4の軌道情報取得部12に対して、列車Trが在線か否かを示す検知結果を送信する。
【0059】
(2)転落検知装置4
転落検知装置4は、一例として、CPUと、ROM、RAMおよびEEPROM等のメモリと、入出力インタフェースとを備えるコンピュータによって構成される。コンピュータは、単体でもよいし、物理的に分散された複数のコンピュータの複合でもよい。メモリは、このようなコンピュータに転落検知方法を実行させるための転落検知プログラムを記憶している。CPUは、メモリに保存された転落検知プログラムを読み込んで、転落検知プログラムに従って転落検知方法に係る情報処理を行う。メモリは、転落検知プログラムのほか、転落検知方法の実行に際して必要な情報またはデータを一時的に記憶することもできる。
【0060】
転落検知装置4は、CPUが転落検知プログラムを読み込んで実行することで、
図2に示すように、制御部10、信号受信部11、軌道情報取得部(列車検知部)12、転落検知エリア設定部13、走査データ取得部(転落検知情報取得部)14、転落検知部(判定部)15、検知サイズ設定部17、検知時間設定部18および出力部20を有している。
制御部10は、信号受信部11、軌道情報取得部12、転落検知エリア設定部13、走査データ取得部14、転落検知部15、検知サイズ設定部17、検知時間設定部18および出力部20と接続されており、各部を制御する。
【0061】
信号受信部11は、上・下走査器31,32から、例えば、受光部35において反射光を受光するまでの時間のデータ、検知部36において検知された検知結果、距離算出部37において算出された転落検知エリア内に存在する物体までの距離データ等を受信する。
軌道情報取得部(列車検知部)12は、軌道の状態を示す情報を取得する。本実施形態では、軌道情報取得部12は、軌道の状態として、在線状態であるか、不在状態であるか、これら2つの状態のいずれでもないか(過渡状態であるか)を示す情報を取得する。
【0062】
本実施形態では、軌道情報取得部12は、上述した列車検知センサ7から列車Trが在線状態であるか否かを示す信号を受信して、軌道の状態を取得する。
転落検知エリア設定部13は、取得された軌道の状態等に応じて、上・下走査器31,32にそれぞれ設定されるべき転落を監視する転落監視領域を所定のパターンの中から1つ選択し、選択されたパターンの転落監視領域を上・下走査器31,32にそれぞれ設定する。転落検知エリア設定部13は、軌道の状態に応じて、転落監視領域のパターン、転落検知システム1の検知の対象、あるいは、転落検知システム1の動作モードを切り換える。
【0063】
また、転落検知エリア設定部13は、上走査器31によって走査される範囲に設定される転落検知エリア(第2転落検知エリア)を、軌道R上に侵入する小動物の体高よりも高い位置に設定する。
これにより、上方に設置された上光走査器31によって走査される範囲において、検知サイズの下限値を下方の転落検知エリアよりも小さく設定した場合でも、上方の転落検知エリアにおいて、小動物等が誤って転落者として検知されてしまうことを回避することができる。
【0064】
さらに、転落検知エリア設定部13は、下走査器32によって走査される範囲に設定される転落検知エリア(第1転落検知エリア)と、上走査器31によって走査される範囲に設定される転落検知エリア(第2転落検知エリア)とが平面視において重複するように設定する。
走査データ取得部(転落検知情報取得部)14は、各走査器ユニット3a~3c(上・下走査器31,32)によって出力された転落監視領域内における物体の存否についての検知結果を取得する。
【0065】
転落検知部(判定部)15は、走査データ取得部14において取得された検知結果に基づいて、所定の判定ロジックに従って、プラットホームPからの転落者の有無を判定する。
本実施形態の転落検知装置4では、転落検知部15が、下走査器32によって走査される範囲に設定される転落検知エリア(第1転落検知エリア)と、上走査器31によって走査される範囲に設定される転落検知エリア(第2転落検知エリア)とにおけるそれぞれの検知結果を用いて、転落者の有無を判定する。
【0066】
検知サイズ設定部17は、下走査器32によって走査される範囲に設定される転落検知エリア(第1転落検知エリア)と、上走査器31によって走査される範囲に設定される転落検知エリア(第2転落検知エリア)とにおけるそれぞれの検知対象サイズを設定するとともに、第1転落検知エリアと第2転落検知エリアとで異なる大きさの検知対象サイズを設定する。
【0067】
具体的には、検知サイズ設定部17は、下方の第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、上方の第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値よりも大きく設定する。
例えば、下方の第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値は、200mmであって、上方の第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値は、60mmである。
【0068】
また、検知サイズ設定部17は、上方の第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、一般的な人の太腿の直径よりも小さい値(例えば、60mm)に設定する。
これにより、小動物を検知しない高さ位置において、転落者が立ち上がった状態で太腿あるいは太腿よりも大きい部位を確実に検知することができる。また、転落者が子供である場合には、立ち上がった子供の頭~上半身を確実に検知することができる。
【0069】
検知時間設定部18は、下方の第1転落検知エリアおよび上方の第2転落検知エリアにおけるそれぞれの検知時間を設定する。
より詳細には、検知時間設定部18は、上方の第2転落検知エリアにおける検知時間を、飛来物が第2転落検知エリアを通過する時間よりも長く、例えば、1.0~1.5秒に設定する。
【0070】
これにより、鳥やゴミ等の飛来物が上方の第2転落検知エリアを通過した場合でも、飛来物が通過するであろう時間よりも長く検知されないと転落者として検知されないため、飛来物等による転落者の誤検知を回避することができる。
ここで、検知時間とは、対象物が検知エリア内に滞留し続け、「検知」とみなすまでの時間を意味している。例えば、検知時間1.0~1.5秒に設定されている場合には、上・下走査器31,32から20m先(車両1両分のおおよその長さ)におけるレーザのスポット径は20~30cmであって(Sick社製LMS511の場合)、重力加速度が9.8m/s2であることを考慮すると、飛来物が上走査器31のレーザ走査領域において1.0~1.5秒以上滞留している可能性は極めて小さいと考えられる。したがって、上走査器31においては、検知対象サイズの下限値を下走査器32よりも小さく設定した場合でも、誤検知を抑制することができる。
出力部20は、転落検知部15が転落者を検知した場合に、転落警報器6に警報動作を行わせる指令を出力する。また、出力部20は、検知された転落者の有無およびその位置を、システム状態表示器5および表示装置9に出力して表示させる。
【0071】
(転落監視領域)
本実施形態の転落検知装置4では、
図3に示すように、軌道の状態に応じて走査装置3に選択的に設定される転落監視領域のパターンとして、不在状態で設定されるパターンである軌道監視領域ARと、在線状態で設定されるパターンである隙間監視領域ADとが設定されている。
【0072】
本実施形態の転落検知装置4では、軌道R上への転落者の有無を監視するために設定される軌道監視領域ARが、下走査器32によって走査される第1転落検知エリアと、上走査器31によって走査される第2転落検知エリアとを含むように設定される。
軌道監視領域ARは、
図3(a)に示すように、軌道Rの上部空間を覆うように2段で設定される(第1・第2転落検知エリア)。軌道転落者は、転落の過程で軌道監視領域AR内に入る。よって、軌道監視領域AR内に物体が存在するとの検知結果に基づき、軌道Rの幅方向全体にわたって、軌道転落者を検知することができる。
【0073】
隙間監視領域ADは、
図3(b)に示すように、軌道監視領域ARよりも幅方向に狭く、隙間D内に設定される。
本実施形態の転落検知装置4では、隙間監視領域ADが、上走査器31によって走査される第2転落検知エリア、下走査器32によって走査される第1転落検知エリアに含まれるように設定される。
隙間転落者のうち軌道Rまで達した者は、転落の過程で隙間監視領域AD内に入る。宙吊りになった者も、隙間監視領域AD(特に、上隙間監視領域ADU)内で留まる。よって、隙間監視領域AD内に物体が存在するとの検知結果に基づき、隙間転落者を検知することができる。
【0074】
(軌道監視領域)
走査装置3は、長手方向に並ぶ複数の走査器ユニット3a,3b,3cで構成される。
【0075】
軌道監視領域ARは、
図3(a)に示すように、複数の走査器ユニット3a,3b,3cごとに設定される軌道監視領域ARa,ARb,ARcを長手方向に連ねることによって構成される。
各走査器ユニット3a,3b,3cは、上述したように、上下一対で設けられた上・下走査器31,32で構成されている。
【0076】
走査器ユニット3aの軌道監視領域ARaは、上走査器31に設定される上軌道監視領域ARaUと、下走査器32に設定される下軌道監視領域ARaLとで構成される。他の走査器ユニット3b,3cの軌道監視領域ARb,ARcについても、これと同様である。
すなわち、複数の上走査器31が長手方向に沿って並べられ、かつ、複数の下走査器32が長手方向に沿って並べられている。走査装置3の軌道監視領域ARは、上軌道監視領域ARUと、下軌道監視領域ARLとで構成されている。
【0077】
上軌道監視領域ARUは、複数の上走査器31に設定された複数の上軌道監視領域ARaU,ARbU,ARcUを長手方向に連ねることによって形成されている。下軌道監視領域ARLは、上軌道監視領域ARUよりも低い位置に設定され、複数の下走査器32に設定された複数の下軌道監視領域ARaL,ARbL,ARcLを長手方向に連ねることによって形成されている。
【0078】
複数の上軌道監視領域ARaU,ARbU,ARcUは、長手方向に並ぶように設定されている。また、複数の下軌道監視領域ARaL,ARbL,ARcLは、複数の上軌道監視領域ARaU,ARbU,ARcUとそれぞれ対応して設定されている。各下軌道監視領域ARaL,ARbL,ARcLは、対応する上軌道監視領域ARaU,ARbU,ARcUと長手方向において略同じ位置に設定されている。
【0079】
図5(a)は、列車Trが不在状態で走査器ユニット3aに設定される軌道監視領域ARaを示す斜視図である。本実施形態では、上軌道監視領域ARaUが、走査器ユニット3aの上走査器31によって形成される単一の走査範囲SR内に設定された複数の上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4を長手方向に連ねることによって形成されている。下軌道監視領域ARaLも、走査器ユニット3aの下走査器32によって形成される単一の走査範囲SR内に設定された複数の下セグメントARaL1,ARaL2,ARaL3,ARaL4を長手方向に連ねることによって形成されている。
【0080】
このように、複数の上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4が、長手方向に並ぶように設定されている。また、複数の下セグメントARaL1,ARaL2,ARaL3,ARaL4が、複数の上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4とそれぞれ対応して設定されている。各下セグメントARaL1,ARaL2,ARaL3,ARaL4は、対応する上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4と長手方向において略同じ位置に設定されている。
【0081】
別の走査器ユニット3b,3cにおいても、これと同様である。セグメント数は、1つの走査器ユニットにおいて上下同じであれば、どのように設定されていてもよい。本実施形態では、単なる一例として、いずれの走査器ユニット3a,3b,3cにおいても、セグメント数が4である。
一例として、上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4は、上軌道監視領域ARaUを長手方向に等分割することによって形成されている。本例では、上軌道監視領域ARaUは、長手方向が長辺となる長方形状であり、長辺の長さは車両2両分(約40m)である。上セグメントARaU1,ARaU2,ARaU3,ARaU4も、平面視で概略長方形状であり、その長辺の長さは、車両半分の長さと概ね等しい。下セグメントARaL1,ARaL2,ARaL3,ARaL4についても、これと同様である。
【0082】
本実施形態の転落検知装置4では、
図6(a)および
図6(b)に示すように、軌道R上に転落した転落者を、転落者の姿勢、状態に関わらず、精度よく検出する、そして、下方に設置された下走査器32によって走査される転落検知エリアにおける小動物等を誤って転落者として検知してしまうことを回避するために、下方の転落検知エリアと上方の転落検知エリアとで異なる検知サイズの下限値が設定されている。
【0083】
具体的には、
図6(a)に示すように、転落者が軌道R上に寝そべっていたり、しゃがんでいたりする場合には、上走査器31による走査範囲において転落者P1は検知されないおそれがあるものの、下走査器32による走査範囲において確実に転落者P1が検知される。
一方、
図6(b)に示すように、転落者が軌道R上に立ち上がった場合には、下走査器32による走査範囲に設定される転落検知エリアの検知サイズの下限値が大きく設定されているために、転落者の足首等が検知されなかったとしても、上走査器31による走査範囲において確実に転落者P1を検知することができる。
【0084】
また、上走査器31における走査範囲は、小動物が検知されない高さに設定されており、下走査器32による走査範囲に設定される転落検知エリアよりも検知サイズの下限値が小さくても、小動物を誤って検知してしまうことを回避することができる。
さらに、上走査器32における走査範囲に設定され転落検知エリア(第2転落検知エリア)では、立ち上がった転落者P1の太腿から腰の周辺に相当する。このため、上走査器31によって走査される走査範囲に設定される転落検知エリア(第2転落検知エリア)では、下方の転落検知エリアよりも検知サイズの下限値が小さく設定されているため、転落者P1を確実に検知することができる。
なお、転落者P1が、例えば、小学生等の子供である場合には、小学校1年生の平均身長115cmであることから、上走査器31によって走査される走査範囲に設定される転落検知エリアにおいて、確実に子供の転落者を検知することができる。
【0085】
(隙間監視領域)
隙間監視領域ADについても、軌道監視領域ARと同様である。隙間監視領域ADは、複数の走査器ユニット3a,3b,3cごとに設定される隙間監視領域ADa,ADb,ADcを長手方向に連ねることによって構成される。
【0086】
走査器ユニット3aの隙間監視領域ADaは、上走査器31に設定される上隙間監視領域ADaUと、下走査器32に設定される下隙間監視領域ADaLとで構成される。他の走査器ユニット3b,3cの隙間監視領域ADb,ADcについても、これと同様である。また、走査装置3の隙間監視領域ADは、上隙間監視領域ADUと、下隙間監視領域ADLとで構成されている。上隙間監視領域ADUは、複数の上走査器31に設定された複数の上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUを長手方向に連ねることによって構成される。下隙間監視領域ADLは、上隙間監視領域ADUよりも低い位置に設定され、複数の下走査器32に設定された複数の下隙間監視領域ADaL,ADbL,ADcLを長手方向に連ねることによって構成される。
【0087】
複数の上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUが、長手方向に並ぶように設定されている。また、複数の下隙間監視領域ADaL,ADbL,ADcLが、複数の上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUとそれぞれ対応して設定されている。各下隙間監視領域ADaL,ADbL,ADcLは、対応する上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUと長手方向において略同じ位置に設定されている。
【0088】
図5(b)は、在線状態で走査器ユニット3aに設定される隙間監視領域ADaを示す斜視図である。本実施形態では、単なる一例として、走査器ユニット3aの隙間監視領域ADaは、軌道監視領域ARa(
図5(a)を参照)とは異なり、複数のセグメントに細分されていない。ただし、複数の上隙間監視領域ADaU,ADbU,ADcUが、部分的に互いにオーバラップされていてもよい。付随して、複数の下隙間監視領域ADaL,ADbL,ADcLも、部分的に互いにオーバラップされていてもよい。
【0089】
<転落検知方法>
本実施形態の転落検知装置4は、以上のような構成により、
図8に示すフローチャートに従って、転落検知方法を実施する。
すなわち、
図8に示すように、ステップS11では、転落検知エリア設定部13が、軌道上および在線時の列車TrとプラットホームPとの間の隙間に、それぞれ転落検知エリア(軌道監視領域AR、隙間監視領域AD)を設定する(転落検知エリア設定ステップ)。
【0090】
次に、ステップS12では、検知サイズ設定部17が、下方に設置された下走査器32によって走査される転落検知エリアと、上方に設置された上走査器31によって走査される転落検知エリアとについて、それぞれ異なる値で検知サイズの下限値を設定する(検知サイズ設定ステップ)。
具体的には、検知サイズ設定部17は、下方の第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、上方の第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値よりも大きく設定する。
【0091】
例えば、下方の第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値は、200mmであって、上方の第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値は、60mmである。
検知サイズ設定部17は、下方の第1転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、猫、犬、キツネ、タヌキ、鳥等の小動物の大きさ(体長等)よりも大きい値(例えば、200mm)に設定する。
【0092】
さらに、検知サイズ設定部17は、上方の第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を、一般的な人の太腿の直径よりも小さい値(例えば、60mm)に設定する。
次に、ステップS13では、検知時間設定部18が、転落検知用の検知時間を設定する。具体的には、検知時間設定部18は、上方の第2転落検知エリアにおける検知時間を、飛来物が第2転落検知エリアを通過する時間よりも長く設定する。
【0093】
次に、ステップS14では、走査データ取得部14が、実際に、走査装置3の各走査器ユニット3a,3b,3cから照射された光を受光して、受光データを取得する(転落検知情報取得ステップ)。
次に、ステップS15では、ステップS14において取得した受光データに基づいて、転落検知エリア(第1転落検知エリアおよび第2転落検知エリア)において転落者を検知したか否かを判定する(判定ステップ)。
【0094】
ここで、転落者ありと判定されると、ステップS16へ進み、転落者なしと判定されると、処理を終了する。
次に、ステップS16では、ステップS15において、転落者ありと判定されたため、転落者ありとする警報と、転落者の位置を、システム状態表示器5、転落警報器6、表示装置9の少なくとも1つを用いて表示して、処理を終了する。
【0095】
本実施形態の転落検知方法では、以上のように、下走査器32によって走査される下方の転落検知エリアと、上走査器31によって走査される上方の転落検知エリアとにおいて、それぞれ異なる値の検知サイズの下限値が設定されている。
より詳細には、検知サイズ設定部17が、下方の転落検知エリアにおける検知サイズの下限値が、上方の転落検知エリアにおける検知サイズの下限値よりも大きくなるように設定する。
【0096】
これにより、下方の転落検知エリアにおいて、軌道R上に侵入した小動物等を誤って転落者として検知してしまうことを回避することができるとともに、軌道R上の転落者の状態(横になっている、立っている等)に関わらず、転落者を上下いずれかの転落検知エリアにおいて検知することができる。
この結果、軌道R上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物等の侵入による誤検知を回避することができる。
【0097】
<主な特徴>
本実施形態の転落検知装置4は、プラットホームPの下方であって列車Trが走行する軌道R上に設定される転落検知エリアへのプラットホームPからの転落者を検知する装置であって、走査データ取得部14と、転落検知エリア設定部13と、検知サイズ設定部17と、転落検知部15とを備える。走査データ取得部14は、軌道Rの直上付近に設定される転落検知エリア(第1転落検知エリア)に光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する下走査器32と、軌道Rから所定の高さに設定され下走査器32よりも高い位置にある転落検知エリア(第2転落検知エリア)に光を照射してその反射光の強度に応じて物体の有無を検知する上走査器31とからそれぞれ検知結果を取得する。転落検知エリア設定部13は、下走査器32によって走査される転落検知エリアと、上走査器31によって走査される転落検知エリアとを設定する。検知サイズ設定部17は、上・下走査器31,32によって走査される上下の転落検知エリアにおけるそれぞれの検知対象サイズを設定するとともに、それぞれの転落検知エリアについて異なる大きさの検知対象サイズを設定する。転落検知部15は、上下2つの転落検知エリアにおけるそれぞれの検知結果を用いて、転落者の有無を判定する。
【0098】
本実施形態の転落検知装置4では、以上のように、下走査器32によって走査される下方の転落検知エリアと、上走査器31によって走査される上方の転落検知エリアとにおいて、それぞれ異なる値の検知サイズの下限値が設定されている。
より詳細には、検知サイズ設定部17が、下方の転落検知エリアにおける検知サイズの下限値が、上方の転落検知エリアにおける検知サイズの下限値よりも大きくなるように設定する。
【0099】
これにより、下方の転落検知エリアにおいて、軌道R上に侵入した小動物等を誤って転落者として検知してしまうことを回避することができるとともに、軌道R上の転落者の状態(横になっている、立っている等)に関わらず、転落者を上下いずれかの転落検知エリアにおいて検知することができる。
この結果、軌道R上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物等の侵入による誤検知を回避することができる。
【0100】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、転落検知装置および転落検知方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0101】
例えば、上述した転落検知方法をコンピュータに実行させる転落検知プログラムとして本発明を実現してもよい。
この転落検知プログラムは、転落検知装置に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された転落検知プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが転落検知プログラムを読み込んで、上述した転落検知情報取得ステップと、転落検知エリア設定ステップと、検知サイズ設定ステップと、判定ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、転落検知プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0102】
(B)
上記実施形態では、検知サイズ設定部17が、下方に設置された下走査器32によって走査される転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を200mm、上方に設置された上走査器31によって走査される転落検知エリアにおける検知サイズの下限値を60mmに設定した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、下方の第1転落検知エリアおよび上方の第2転落検知エリアにおける検知サイズの下限値は、上記値に限定されるものではなく、誤検知されるおそれがある小動物の大きさ等に応じて適宜変更が可能である。
【0103】
(C)
上記実施形態では、鉄道駅のプラットホームPに列車Trが在線状態であるか否かを、列車検知センサ7を用いて検知する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、鉄道駅に既設の軌道回路による車両在線有無情報を用いて、プラットホームにおける在線状態を検知してもよい。
【0104】
(D)
上記実施形態では、レーザを走査して転落者等の物体を検知する走査器ユニット3a~3cに含まれる上走査器31および下走査器32を、第1光走査部および第2光走査部として用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、レーザ走査以外の方式を採用して転落者等の物体を検知する光走査部を含む転落検知システムであってもよい。
【0105】
(E)
上記実施形態では、3つの走査器ユニット3a~3cを用いて、6両編成の列車Trの各2両ずつの車両Cに対応する転落監視領域において転落者の監視を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0106】
例えば、転落者を検知するセンサ装置の数は3つに限定されるものではなく、2つ以下、あるいは4つ以上であってもよい。
また、検知対象となる列車の編成は、6両編成に限定されるものではなく、5両以下、あるいは7両以上の編成であってもよい。
さらに、転落検知を行う転落検知エリアは、全ての車両に対応する位置に設定されていることに限定されるものではなく、例えば、車両とプラットホームとの間の隙間が大きい場所等の一部の車両に対応する位置にのみ設定されていてもよい。
【0107】
(F)
上記実施形態では、転落検知装置4における転落検知の判定結果、異物の有無の判定結果等を、外部に設けられた記憶装置8に保存する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、転落検知の判定結果や異物の有無の判定結果等を保存する記憶部が、転落検知装置の内部に設けられた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の転落検知装置は、軌道上に転落した転落者を確実に検知しつつ、小動物等の侵入による誤検知を回避することができるという効果を奏することから、鉄道駅等に設定される転落者を検知する各種システムに対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 転落検知システム
3 走査装置(光走査部)
3a,3b,3c 走査器ユニット
4 転落検知装置
5 システム状態表示器
6 転落警報器
7 列車検知センサ
8 記憶装置
9 表示装置(表示部、警報部)
10 制御部
11 信号受信部
12 軌道情報取得部(列車検知部)
13 転落検知エリア設定部
14 走査データ取得部(転落検知情報取得部)
15 転落検知部(判定部)
17 検知サイズ設定部
18 検知時間設定部
20 出力部
31 上走査器(第2光走査部)
32 下走査器(第1光走査部)
33 発光部
34 偏光部
35 受光部
36 検知部
37 距離算出部
AD 隙間監視領域
AR 軌道監視領域
C 車両
D 隙間
P プラットホーム
P1 転落者
R 軌道
SL 走査光
SR 走査範囲
Tr 列車