(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144930
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】学習データ生成システム、学習データ生成プログラムおよび学習データ生成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/087 20230101AFI20241004BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241004BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241004BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G06Q10/087
G06N20/00 130
G03G21/00 388
G03G21/00 512
B41J29/38 204
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057113
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(72)【発明者】
【氏名】同前 和樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 幸雄
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ06
2C061HK11
2C061HK19
2H270LA70
2H270LA99
2H270MF09
2H270RA01
2H270RA10
2H270RC05
2H270ZC03
2H270ZC04
5L010AA04
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】 機械学習モデルによる消耗品の残量の予測精度を向上することができる学習データを生成することができる学習データ生成システム、学習データ生成プログラムおよび学習データ生成方法を提供する。
【解決手段】 画像形成装置におけるトナーの残量を予測する機械学習モデルとしてのトナー残量予測モデルに学習させる学習データを生成する学習データ生成システムは、画像形成装置におけるトナーの残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において時系列データと同一の残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、最終記録時点後、残量が無くなる時点以前のデータを、時系列データに追加することによって、学習データを生成する(S113)ことを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器における消耗品の残量を予測する機械学習モデルに学習させる学習データを生成する学習データ生成システムであって、
前記電子機器における前記残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、前記時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において前記時系列データと同一の前記残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、前記最終記録時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成することを特徴とする学習データ生成システム。
【請求項2】
前記時系列データにおいて前記最終記録時点を含む連続した複数の記録時点において前記残量が一定ではない場合に、前記最終記録時点後補完用直線における、前記最終記録時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成し、
前記時系列データにおいて前記最終記録時点を含む連続した複数の記録時点において前記残量が一定である場合に、前記近似直線の傾きと同一の傾きであって、前記時系列データにおいて前記最終記録時点と前記残量が同一である最先の記録時点としての停滞開始時点において前記時系列データと同一の前記残量になる直線としての停滞開始時点後補完用直線における、前記停滞開始時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記停滞開始時点以前の前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成することを特徴とする請求項1に記載の学習データ生成システム。
【請求項3】
電子機器における消耗品の残量を予測する機械学習モデルに学習させる学習データを生成するための学習データ生成プログラムであって、
前記電子機器における前記残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、前記時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において前記時系列データと同一の前記残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、前記最終記録時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成することをコンピューターに実現させることを特徴とする学習データ生成プログラム。
【請求項4】
電子機器における消耗品の残量を予測する機械学習モデルに学習させる学習データを生成する学習データ生成方法であって、
前記電子機器における前記残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、前記時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において前記時系列データと同一の前記残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、前記最終記録時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成することを特徴とする学習データ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器における消耗品の残量を予測する機械学習モデルに学習させる学習データを生成する学習データ生成システム、学習データ生成プログラムおよび学習データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器において用いられる消耗品の消費量または残量を表す消費量情報の時系列データに基づいて、消耗品の需要予測の条件を機械学習した学習済モデルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の学習済モデルにおいては、機械学習に用いられる時系列データとして、消耗品の残量が無くなるまでのデータを含む時系列データが十分に使用されていない場合には、消耗品の残量が無くなる時点の付近の時期のデータを十分に学習することができないので、消耗品の需要予測の精度が低い可能性があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、機械学習モデルによる消耗品の残量の予測精度を向上することができる学習データを生成することができる学習データ生成システム、学習データ生成プログラムおよび学習データ生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の学習データ生成システムは、電子機器における消耗品の残量を予測する機械学習モデルに学習させる学習データを生成する学習データ生成システムであって、前記電子機器における前記残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、前記時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において前記時系列データと同一の前記残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、前記最終記録時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成することを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明の学習データ生成システムは、電子機器における消耗品の残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において時系列データと同一の残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、最終記録時点後、残量が無くなる時点以前のデータを、時系列データに追加することによって、消耗品の残量が無くなるまでの学習データを生成するので、機械学習モデルによる消耗品の残量の予測精度を向上することができる学習データを生成することができる。
【0008】
本発明の学習データ生成システムは、前記時系列データにおいて前記最終記録時点を含む連続した複数の記録時点において前記残量が一定ではない場合に、前記最終記録時点後補完用直線における、前記最終記録時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成し、前記時系列データにおいて前記最終記録時点を含む連続した複数の記録時点において前記残量が一定である場合に、前記近似直線の傾きと同一の傾きであって、前記時系列データにおいて前記最終記録時点と前記残量が同一である最先の記録時点としての停滞開始時点において前記時系列データと同一の前記残量になる直線としての停滞開始時点後補完用直線における、前記停滞開始時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記停滞開始時点以前の前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成しても良い。
【0009】
この構成により、本発明の学習データ生成システムは、電子機器における消耗品の残量の時系列データにおいて最終記録時点を含む連続した複数の記録時点において消耗品の残量が一定である場合に、時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、時系列データにおいて最終記録時点と残量が同一である最先の記録時点としての停滞開始時点において時系列データと同一の残量になる直線としての停滞開始時点後補完用直線における、停滞開始時点後、残量が無くなる時点以前のデータを、停滞開始時点以前の時系列データに追加することによって学習データを生成するので、時系列データにおいて最終記録時点の付近の時期で利用者による消耗品の使用控えの影響があったとしても、利用者による消耗品の使用控えの影響を低減した学習データを生成することができる。したがって、本発明の学習データ生成システムは、機械学習モデルによる消耗品の残量の予測精度を向上することができる学習データを生成することができる。
【0010】
本発明の学習データ生成プログラムは、電子機器における消耗品の残量を予測する機械学習モデルに学習させる学習データを生成するための学習データ生成プログラムであって、前記電子機器における前記残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、前記時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において前記時系列データと同一の前記残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、前記最終記録時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成することをコンピューターに実現させることを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明の学習データ生成プログラムを実行するコンピューターは、電子機器における消耗品の残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において時系列データと同一の残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、最終記録時点後、残量が無くなる時点以前のデータを、時系列データに追加することによって、消耗品の残量が無くなるまでの学習データを生成するので、機械学習モデルによる消耗品の残量の予測精度を向上することができる学習データを生成することができる。
【0012】
本発明の学習データ生成方法は、電子機器における消耗品の残量を予測する機械学習モデルに学習させる学習データを生成する学習データ生成方法であって、前記電子機器における前記残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、前記時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において前記時系列データと同一の前記残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、前記最終記録時点後、前記残量が無くなる時点以前のデータを、前記時系列データに追加することによって前記学習データを生成することを特徴とする。
【0013】
この構成により、本発明の学習データ生成方法は、電子機器における消耗品の残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において時系列データと同一の残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、最終記録時点後、残量が無くなる時点以前のデータを、時系列データに追加することによって、消耗品の残量が無くなるまでの学習データを生成するので、機械学習モデルによる消耗品の残量の予測精度を向上することができる学習データを生成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の学習データ生成システム、学習データ生成プログラムおよび学習データ生成方法は、機械学習モデルによる消耗品の残量の予測精度を向上することができる学習データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るシステムのブロック図である。
【
図2】1台のコンピューターによって構成されている場合の
図1に示す学習データ生成システムのブロック図である。
【
図3】画像形成装置によって記録されて
図2に示す学習データ生成システムによって使用される時系列データの一例を示す図である。
【
図4】
図2に示す学習データ生成システムの動作のフローチャートである。
【
図5】(a)
図3に示す時系列データから分割された1つの時系列データを示す図である。 (b)
図3に示す時系列データから分割された、
図5(a)に示す時系列データとは異なる1つの時系列データを示す図である。
【
図6】
図4に示す補完工程の一例のフローチャートである。
【
図7】(a)
図5(a)に示す時系列データの近似直線を示す図である。 (b)
図5(b)に示す時系列データの近似直線を示す図である。
【
図8】(a)
図5(a)に示す時系列データの最終記録時点後補完用直線を示す図である。 (b)
図5(b)に示す時系列データの最終記録時点後補完用直線を示す図である。
【
図9】(a)
図5(a)に示す時系列データを補完した学習データを示す図である。 (b)
図5(b)に示す時系列データを補完した学習データを示す図である。
【
図10】
図4に示す補完工程の、
図6に示す例とは異なる一例のフローチャートである。
【
図11】(a)
図5(b)に示す時系列データの停滞開始時点後補完用直線を示す図である。 (b)
図5(b)に示す時系列データを補完した学習データを示す図である。
【
図12】(a)トナー残量予測モデルによってトナーの残量が予測される対象の時系列データの一例を示す図である。 (b)トナーの残量が無くなるまでのデータが存在しない時系列データを学習データとして学習したトナー残量予測モデルによって
図12(a)に示す時系列データに対して予測されたトナーの残量の時系列データの一例を示す図である。
【
図13】
図2に示す学習データ生成システムによって生成された学習データを学習したトナー残量予測モデルによって
図12(a)に示す時系列データに対して予測されたトナーの残量の時系列データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
まず、本発明の一実施の形態に係るシステムの構成について説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係るシステム10のブロック図である。
【0019】
図1に示すように、システム10は、消耗品としてのトナーを格納する交換可能なトナーカートリッジ21を備える電子機器としての例えばプリンター専用機、MFP(Multifunction Peripheral)などの画像形成装置20と、画像形成装置20におけるトナーの残量を予測する機械学習モデル(以下「トナー残量予測モデル」という。)に学習させる学習データを、画像形成装置20によって記録されたトナーの残量の時系列データを使用して生成する学習データ生成システム30と、学習データ生成システム30によって生成された学習データをトナー残量予測モデルに学習させるモデル学習システム40と、モデル学習システム40によって生成されたトナー残量予測モデル、および、画像形成装置20によって記録されたトナーの残量の時系列データを使用して画像形成装置20におけるトナーの残量を予測する残量予測システム50とを備えている。
【0020】
学習データ生成システム30、モデル学習システム40、残量予測システム50は、それぞれ、1台のコンピューターによって構成されても良いし、複数台のコンピューターによって構成されても良い。
【0021】
学習データ生成システム30を構成するコンピューターと、モデル学習システム40を構成するコンピューターとは、少なくとも一部が共通していても良い。例えば、学習データ生成システム30は、モデル学習システム40を兼ねていても良い。
【0022】
学習データ生成システム30を構成するコンピューターと、残量予測システム50を構成するコンピューターとは、少なくとも一部が共通していても良い。例えば、学習データ生成システム30は、残量予測システム50を兼ねていても良い。
【0023】
モデル学習システム40を構成するコンピューターと、残量予測システム50を構成するコンピューターとは、少なくとも一部が共通していても良い。例えば、モデル学習システム40は、残量予測システム50を兼ねていても良い。
【0024】
学習データ生成システム30、モデル学習システム40および残量予測システム50の少なくとも一部は、画像形成装置20によって構成されても良い。例えば、残量予測システム50は、画像形成装置20によって実現されても良い。
【0025】
図2は、1台のコンピューターによって構成されている場合の学習データ生成システム30のブロック図である。
【0026】
図2に示すように、学習データ生成システム30は、種々の操作が入力される例えばキーボード、マウスなどの操作デバイスである操作部31と、種々の情報を表示する例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部32と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部33と、各種の情報を記憶する例えば半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部34と、学習データ生成システム30全体を制御する制御部35とを備えるPC(Personal Computer)などのコンピューターによって実現されている。
【0027】
記憶部34は、トナー残量予測モデルに学習させる学習データを生成するための学習データ生成プログラム34aを記憶している。学習データ生成プログラム34aは、例えば、学習データ生成システム30の製造段階で学習データ生成システム30にインストールされていても良いし、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの外部の記憶媒体から学習データ生成システム30に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上から学習データ生成システム30に追加でインストールされても良い。
【0028】
制御部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、制御部35のCPUの作業領域として用いられるメモリーとしてのRAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部35のCPUは、記憶部34または制御部35のROMに記憶されているプログラムを実行する。
【0029】
制御部35は、学習データ生成プログラム34aを実行することによって、トナー残量予測モデルに学習させる学習データを生成する学習データ生成部35aを実現する。
【0030】
次に、学習データ生成システム30による学習データ生成方法について説明する。
【0031】
図3は、画像形成装置20などの画像形成装置によって記録されて学習データ生成システム30によって使用される時系列データ60の一例を示す図である。
【0032】
以下においては、
図3に示す時系列データ60から学習データを生成する場合の学習データ生成システム30の動作について説明する。
【0033】
図3に示す時系列データ60は、毎日1回、定期的に画像形成装置によって記録されたトナーの残量の時系列データである。以下、画像形成装置によってトナーの残量が記録された時点を記録時点という。
図3に示す時系列データ60には、2023年1月6日の記録時点以降2023年1月7日の記録時点以前の期間と、2023年2月17日の記録時点以降2023年2月18日の記録時点以前の期間と、2023年3月16日の記録時点以降2023年3月17日の記録時点以前の期間とのそれぞれに、画像形成装置においてトナーカートリッジが新品に交換されたことが現われている。
【0034】
画像形成装置の利用者は、例えば、画像形成装置を使用した作業の途中でトナーの残量が無くなる、すなわち、0%になることを回避するなどの理由によって、トナーの残量が無くなる前に、余裕を持ってトナーカートリッジを新品に交換する場合が多い。したがって、トナーカートリッジ毎のトナーの残量の時系列データとしては、トナーの残量が無くなるまでのデータが存在するものが非常に少ない。
【0035】
図4は、学習データ生成システム30の動作のフローチャートである。
【0036】
図4に示すように、学習データ生成部35aは、画像形成装置によって記録されたトナーの残量の時系列データを、トナーカートリッジの交換のタイミングを基準として複数の時系列データに分割する分割工程を実行する(S101)。トナーカートリッジの交換のタイミングは、トナーの残量が増加した記録時点の直前の記録時点以降、トナーの残量が増加した記録時点以前の期間に存在する。S101の処理によって、トナーカートリッジ毎の時系列データが生成される。
【0037】
図5(a)は、
図3に示す時系列データ60から分割された1つの時系列データ61を示す図である。
図5(b)は、
図3に示す時系列データ60から分割された、
図5(a)に示す時系列データ61とは異なる1つの時系列データ62を示す図である。
【0038】
図5(a)に示す時系列データ61は、2023年1月7日以降2023年2月17日以前の期間の時系列データである。
図5(a)に示す時系列データ61は、
図3に示す時系列データ60においてトナーの残量が増加した記録時点としての2023年1月7日の直前の記録時点としての2023年1月6日以降、トナーの残量が増加した記録時点としての2023年1月7日以前の期間に新たに画像形成装置に装着されたトナーカートリッジにおけるトナーの残量の時系列データである。
【0039】
図5(b)に示す時系列データ62は、2023年2月18日以降2023年3月16日以前の期間の時系列データである。
図5(b)に示す時系列データ62は、
図5(a)に示す時系列データ61の対象のトナーカートリッジの次に画像形成装置に装着されたトナーカートリッジ、すなわち、
図3に示す時系列データ60においてトナーの残量が増加した記録時点としての2023年2月18日の直前の記録時点としての2023年2月17日以降、トナーの残量が増加した記録時点としての2023年2月18日以前の期間に新たに画像形成装置に装着されたトナーカートリッジにおけるトナーの残量の時系列データである。
【0040】
図4に示すように、学習データ生成部35aは、S101の分割工程が終了すると、S101において生成したトナーカートリッジ毎の時系列データのそれぞれに対して、データを補完する補完工程を実行して(S102)、
図4に示す動作を終了する。
【0041】
図6は、
図4に示す補完工程の一例のフローチャートである。
【0042】
図6に示すように、学習データ生成部35aは、S101において生成した時系列データの近似直線を線形近似によって求める(S111)。
【0043】
図7(a)は、
図5(a)に示す時系列データ61の近似直線61aを示す図である。
図7(b)は、
図5(b)に示す時系列データ62の近似直線62aを示す図である。
【0044】
図7(a)に示す近似直線61aは、
図5(a)に示す時系列データ61における最終の記録時点(以下、「最終の記録時点」を単に「最終記録時点」という。)である2023年2月17日におけるトナーの残量が、時系列データ61における2023年2月17日におけるトナーの残量より増えている。ここで、トナーカートリッジにおけるトナーの残量は、画像形成装置によって消費されて減ることはあるが、増えることはない。したがって、
図7(a)に示す近似直線61aにおける、2023年2月17日の後、残量が無くなる時点以前のデータを、時系列データ61に追加することは、現実では起こり得ない状況を表すことになる。
【0045】
図7(b)に示す近似直線62aも、
図5(b)に示す時系列データ62における最終記録時点である2023年3月16日におけるトナーの残量が、時系列データ62における2023年3月16日におけるトナーの残量より増えている。したがって、
図7(b)に示す近似直線62aにおける、2023年3月16日の後、残量が無くなる時点以前のデータを、時系列データ61に追加することは、現実では起こり得ない状況を表すことになる。
【0046】
図6に示すように、学習データ生成部35aは、S111の工程が終了すると、S111の工程において求めた近似直線の傾きと同一の傾きであって、時系列データにおける最終記録時点において時系列データと同一のトナーの残量になる直線(以下「最終記録時点後補完用直線」という。)を求める(S112)。
【0047】
図8(a)は、
図5(a)に示す時系列データ61の最終記録時点後補完用直線61bを示す図である。
図8(b)は、
図5(b)に示す時系列データ62の最終記録時点後補完用直線62bを示す図である。
【0048】
図8(a)に示す最終記録時点後補完用直線61bは、
図7(a)に示す近似直線61aの傾きと同一の傾きであって、
図5(a)に示す時系列データ61における最終記録時点である2023年2月17日において時系列データ61と同一のトナーの残量になる直線である。
【0049】
図8(b)に示す最終記録時点後補完用直線62bは、
図7(b)に示す近似直線62aの傾きと同一の傾きであって、
図5(b)に示す時系列データ62における最終記録時点である2023年3月16日において時系列データ62と同一のトナーの残量になる直線である。
【0050】
図6に示すように、学習データ生成部35aは、S112の工程が終了すると、時系列データにおける最終記録時点後、S112の工程において求めた最終記録時点後補完用直線においてトナーの残量が無くなる時点以前の、S112の工程において求めた最終記録時点後補完用直線におけるデータを、時系列データに追加することによって、学習データを生成して(S113)、
図6に示す補完工程を終了する。
【0051】
図9(a)は、
図5(a)に示す時系列データ61を補完した学習データ71を示す図である。
図9(b)は、
図5(b)に示す時系列データ62を補完した学習データ72を示す図である。
【0052】
図9(a)に示す学習データ71は、
図5(a)に示す時系列データ61における最終記録時点である2023年2月17日の後、
図8(a)に示す最終記録時点後補完用直線61bにおいてトナーの残量が無くなる時点以前の、最終記録時点後補完用直線61bにおけるデータ61cが、時系列データ61に追加された時系列データである。
【0053】
図9(b)に示す学習データ72は、
図5(b)に示す時系列データ62における最終記録時点である2023年3月16日の後、
図8(b)に示す最終記録時点後補完用直線62bにおいてトナーの残量が無くなる時点以前の、最終記録時点後補完用直線62bにおけるデータ62cが、時系列データ62に追加された時系列データである。
【0054】
学習データ生成部35aは、
図6に示す補完工程に代えて、
図10に示す補完工程を実行しても良い。
【0055】
図10は、
図4に示す補完工程の、
図6に示す例とは異なる一例のフローチャートである。
【0056】
図10に示すように、学習データ生成部35aは、S111の工程と同様に、S101において生成した時系列データの近似直線を線形近似によって求める(S121)。
【0057】
次いで、学習データ生成部35aは、時系列データにおいて最終記録時点を含む連続した複数の記録時点においてトナーの残量が一定であるか否かを判断する(S122)。
【0058】
図5(a)に示す時系列データ61は、最終記録時点である2023年2月17日の直前の記録時点である2023年2月16日におけるトナーの残量と、最終記録時点である2023年2月17日におけるトナーの残量とが異なる。したがって、学習データ生成部35aは、
図5(a)に示す時系列データ61については、時系列データ61における最終記録時点である2023年2月17日を含む連続した複数の記録時点においてトナーの残量が一定ではないとS122において判断する。
【0059】
図5(b)に示す時系列データ62は、2023年3月13日から最終記録時点である2023年3月16日までにおけるトナーの残量が一定である。画像形成装置の利用者は、例えば、画像形成装置を使用した作業の途中でトナーの残量が無くなる、すなわち、0%になることを回避するなどの理由によって、最終記録時点の付近の時期でトナーの使用控えを行う場合がある。
図5(b)に示す時系列データ62は、最終記録時点の付近の時期で利用者によるトナーの使用控えの影響が現われている。したがって、学習データ生成部35aは、
図5(b)に示す時系列データ62については、時系列データ62における最終記録時点である2023年3月16日を含む連続した複数の記録時点においてトナーの残量が一定であるとS122において判断する。
【0060】
図10に示すように、学習データ生成部35aは、時系列データにおいて最終記録時点を含む連続した複数の記録時点においてトナーの残量が一定ではないとS122において判断すると、S112およびS113の工程と同様のS123およびS124の工程を実行して、
図10に示す補完工程を終了する。
【0061】
学習データ生成部35aは、時系列データにおいて最終記録時点を含む連続した複数の記録時点においてトナーの残量が一定であるとS122において判断すると、S121の工程において求めた近似直線の傾きと同一の傾きであって、時系列データにおいて最終記録時点とトナーの残量が同一である最先の記録時点(以下「停滞開始時点」という。)において時系列データと同一のトナーの残量になる直線(以下「停滞開始時点後補完用直線」という。)を求める(S125)。
【0062】
学習データ生成部35aは、S125の工程が終了すると、時系列データにおける停滞開始時点後、S125の工程において求めた停滞開始時点後補完用直線においてトナーの残量が無くなる時点以前の、S125の工程において求めた停滞開始時点後補完用直線におけるデータを、停滞開始時点以前の時系列データに追加することによって、学習データを生成して(S126)、
図10に示す補完工程を終了する。
【0063】
図11(a)は、
図5(b)に示す時系列データ62の停滞開始時点後補完用直線62dを示す図である。
図11(b)は、
図5(b)に示す時系列データ62を補完した学習データ82を示す図である。
【0064】
図11(a)に示す停滞開始時点後補完用直線62dは、
図7(b)に示す近似直線62aの傾きと同一の傾きであって、
図5(b)に示す時系列データ62における停滞開始時点である2023年3月13日において時系列データ62と同一のトナーの残量になる直線である。
【0065】
図11(b)に示す学習データ82は、
図5(b)に示す時系列データ62における停滞開始時点である2023年3月13日の後、
図11(a)に示す停滞開始時点後補完用直線62dにおいてトナーの残量が無くなる時点以前の、停滞開始時点後補完用直線62dにおけるデータ62eが、停滞開始時点である2023年3月13日以前の
図5(b)に示す時系列データ62に追加された時系列データである。
【0066】
次に、トナー残量予測モデルについて説明する。
【0067】
まず、学習データ生成システム30によって生成された学習データを学習したトナー残量予測モデルとの比較のために、
図5に示す時系列データ61、62のようにトナーの残量が無くなるまでのデータが存在しない時系列データを学習データとして学習したトナー残量予測モデルについて説明する。
【0068】
図12(a)は、トナー残量予測モデルによってトナーの残量が予測される対象の時系列データ91の一例を示す図である。
図12(b)は、トナーの残量が無くなるまでのデータが存在しない時系列データを学習データとして学習したトナー残量予測モデルによって
図12(a)に示す時系列データ91に対して予測されたトナーの残量の時系列データ92の一例を示す図である。
【0069】
図12(a)に示す時系列データ91は、2023年3月17日から2023年4月10日までの期間のトナーの残量の時系列データであり、2023年4月10日の後のトナーの残量のデータは含まれていない。
【0070】
図12(b)に示す時系列データ92は、2023年4月10日の後のトナーの残量のデータであるが、トナーの残量が0%より高い値で収束している。このような現象が生じる原因は、学習データにおいてトナーの残量が無くなるまでのデータが存在しないため、トナーの残量を0%に到達させるよりも、トナーの残量を0%より高い値に収束させる方が学習データとの乖離が少ないからである。
【0071】
したがって、トナーの残量が無くなるまでのデータが存在しない時系列データを学習データとして学習したトナー残量予測モデルでは、トナーの残量が無くなる時点を予測することができない。
【0072】
次に、学習データ生成システム30によって生成された学習データを学習したトナー残量予測モデルについて説明する。
【0073】
図13は、学習データ生成システム30によって生成された学習データを学習したトナー残量予測モデルによって
図12(a)に示す時系列データ91に対して予測されたトナーの残量の時系列データ93の一例を示す図である。
【0074】
図13に示す時系列データ93は、2023年4月10日の後のトナーの残量のデータであるが、最終的にトナーの残量が0%に到達している。このような現象が生じる原因は、学習データにおいてトナーの残量が無くなるまでのデータが存在するため、トナーの残量を0%より高い値に収束させるよりも、トナーの残量を0%に到達させる方が学習データとの乖離が少ないからである。
【0075】
したがって、学習データ生成システム30によって生成された学習データを学習したトナー残量予測モデルでは、トナーの残量が無くなる時点を予測することができる。
【0076】
以上に説明したように、学習データ生成システム30は、画像形成装置におけるトナーの残量の時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、時系列データにおける最終の記録時点としての最終記録時点において時系列データと同一の残量になる直線としての最終記録時点後補完用直線における、最終記録時点後、残量が無くなる時点以前のデータを、時系列データに追加することによって、トナーの残量が無くなるまでの学習データを生成する(S113およびS124)ので、トナー残量予測モデルによるトナーの残量の予測精度を向上することができる学習データを生成することができる。
【0077】
学習データ生成システム30は、画像形成装置におけるトナーの残量の時系列データにおいて最終記録時点を含む連続した複数の記録時点においてトナーの残量が一定である場合に(S122でYES)、時系列データの近似直線の傾きと同一の傾きであって、時系列データにおいて最終記録時点と残量が同一である最先の記録時点としての停滞開始時点において時系列データと同一の残量になる直線としての停滞開始時点後補完用直線における、停滞開始時点後、残量が無くなる時点以前のデータを、停滞開始時点以前の時系列データに追加することによって学習データを生成する(S126)ので、時系列データにおいて最終記録時点の付近の時期で利用者によるトナーの使用控えの影響があったとしても、利用者によるトナーの使用控えの影響を低減した学習データを生成することができる。したがって、学習データ生成システム30は、トナー残量予測モデルによるトナーの残量の予測精度を向上することができる学習データを生成することができる。
【0078】
学習データ生成システム30によって生成された学習データを学習したトナー残量予測モデルによってトナーの残量が無くなる時点が高精度に予測されることができるので、画像形成装置の利用者は、適切なタイミングで交換用の新品のトナーカートリッジを発注することができる。したがって、画像形成装置の利用者は、交換用の新品のトナーカートリッジを利用者自身によって長期間保管しなくて良い。
【0079】
本実施の形態に係る学習データ生成方法は、以上において、全ての工程が学習データ生成システム30によって自動で実行される。しかしながら、本実施の形態に係る学習データ生成方法は、少なくとも一部の工程が人間によって手動で実行されても良い。例えば、本実施の形態に係る学習データ生成方法は、全ての工程が人間によって手動で実行されても良い。
【0080】
本実施の形態に係る時系列データは、毎日1回、定期的に画像形成装置によって記録されたトナーの残量の時系列データである。しかしながら、画像形成装置によるトナーの残量の記録時点は、毎日1回以外のタイミングでも良い。
【0081】
本発明における消耗品は、本実施の形態においてトナーである。しかしながら、本発明における消耗品は、トナー以外の消耗品でも良い。
【0082】
本発明における電子機器は、本実施の形態において画像形成装置である。しかしながら、本発明における電子機器は、画像形成装置以外の電子機器でも良い。
【符号の説明】
【0083】
20 画像形成装置(電子機器)
30 学習データ生成システム(コンピューター)
34a 学習データ生成プログラム
61 時系列データ
61a 近似直線
61b 最終記録時点後補完用直線
61c データ(最終記録時点後補完用直線における、最終記録時点後、消耗品の残量が無くなる時点以前のデータ)
62 時系列データ
62a 近似直線
62b 最終記録時点後補完用直線
62c データ(最終記録時点後補完用直線における、最終記録時点後、消耗品の残量が無くなる時点以前のデータ)
62d 停滞開始時点後補完用直線
62e データ(停滞開始時点後補完用直線における、停滞開始時点後、消耗品の残量が無くなる時点以前のデータ)
71、72、82 学習データ