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特開2024-144933研磨パッド、及び研磨加工物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144933
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】研磨パッド、及び研磨加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20241004BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241004BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
C08J5/18 CFF
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057118
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 健太
【テーマコード(参考)】
3C158
4F071
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA01
3C158CB01
3C158DA12
3C158EB29
3C158ED00
4F071AA53
4F071AA67X
4F071AA82
4F071AF20
4F071AF25Y
4F071AH19
4F071BC12
5F057AA02
5F057AA24
5F057AA34
5F057BA11
5F057BB03
5F057DA03
5F057EB03
5F057EB13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた研磨レートを有するとともに、被研磨物に良好な端部形状を与える、研磨パッド等を提供する。
【解決手段】研磨面を有する樹脂シートを備える研磨パッドであって、前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂を含み、前記ポリウレタン樹脂が、下記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、ポリエチレングリコール(B)に由来する単位(b)と、を有し、前記単位(a)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%であり、前記単位(b)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%である、研磨パッド。

(式(I)中、Rは、各々独立して、炭素原子数1~10の有機基又は水素原子を表し、nは5~25の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する樹脂シートを備える研磨パッドであって、
前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂を含み、
前記ポリウレタン樹脂が、
下記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、
ポリエチレングリコール(B)に由来する単位(b)と、
を有し、
前記単位(a)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%であり、
前記単位(b)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%である、研磨パッド。
【化1】
(式(I)中、Rは、各々独立して、炭素原子数1~10の有機基又は水素原子を表し、nは5~25の整数を表す。)
【請求項2】
前記ポリシロキサンジオール(A)が、前記式(I)における前記Rの全てがメチル基であるポリシロキサンジオール(A1)を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記樹脂シートのA硬度が50度以上であり、かつ、前記樹脂シートのDO硬度が90度以下である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記樹脂シートの密度が、0.3~0.6g/cmである、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
研磨スラリーの存在下、請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を含む、研磨加工物の製造方法。
【請求項6】
前記研磨加工物が、シリコンウェハである、請求項5に記載の研磨加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド、及び研磨加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レンズ、平行平面板、及び反射ミラーのような光学材料、半導体ウェハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、金属、並びにセラミック等の材料に対して、研磨パッドを用いた研磨加工が行われる。かかる研磨加工の方法として、化学機械研磨(CMP)が広く用いられている。一般に、CMPでは、研磨パッドと半導体ウェハの被研磨面とを摺動させながら、研磨パッドの表面に必要に応じて砥粒成分と酸化剤、キレート剤、酸性又はアルカリ性等の化学成分を含む研磨液を流下させつつ、研磨を行う。
【0003】
CMP用の研磨パッドとしては、研磨レート及び平坦性の確保やスクラッチの抑制等の観点から、種々の研磨パッドが提案されている。例えば、特許文献1には、高分子ジオールと、有機ジイソシアネートと、炭素数4以下であるジオールを含む第1の鎖伸長剤と、炭素数5以上であるジオールを含む第2の鎖伸長剤と、を含む単量体の重合体であり、非多孔性である、研磨用成形体が提案されている。また、特許文献2には、硬化剤と、8.3~9.8重量%の未反応イソシアナート(NCO)濃度を有するポリイソシアナートプレポリマーと、を含む反応混合物のポリウレタン反応生成物である研磨層を含む化学機械研磨パッドが提案されている。また、特許文献3には、ポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、イソシアネート成分、高分子量ポリオール、及びポリシロキサン基含有ジオールを含有するイソシアネート末端プレポリマーと、鎖延長剤とを含むポリウレタン原料組成物の反応硬化体である研磨パッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6541683号
【特許文献2】特許第6981823号
【特許文献3】特許第5875300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、同文献に記載の研磨パッドは、成形性に優れるとともに、研磨層として用いた場合に高い平坦化性を発現すると評価されている。また、特許文献2によれば、同文献に記載の化学機械研磨パッドは、研磨パッドの平坦化効率の低下を伴うことなく、改善された欠陥率を提供すると評価されている。特許文献3によれば、同文献に記載の研磨パッドは、疎水性が高く、研磨層のスラリー排出性が向上するとともに、研磨層の吸水性及び膨潤性が低下するため、長時間研磨操作を行った場合であっても研磨速度の低下を抑制することができると評価されている。
【0006】
このように、特許文献1~3においては、研磨レートや平坦性の観点で検討されているものの、近時は、研磨レートと平坦性とのバランスとしてより高い水準にある研磨パッドが指向されている。ここで、本発明者が検討したところ、従来の研磨レートを重視した研磨パッドで研磨を行った場合、被研磨物の端部において過度に研磨される傾向が認められている。この場合、結果として、被研磨物の端部において狭い範囲で急激に厚さが小さくなる形状が付与される傾向にあり、このような現象を以下では「端部ダレ」という。また、以下では、端部ダレが防止された形状を意図して、「良好な端部形状」という。
上記のとおり、特許文献1~3に記載の技術においては、優れた研磨レートを有することと、被研磨物に良好な端部形状を与えることを両立する観点で、未だ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、優れた研磨レートを有するとともに、被研磨物に良好な端部形状を与える、研磨パッド等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、所定の成分を含む研磨パッドによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
研磨面を有する樹脂シートを備える研磨パッドであって、
前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂を含み、
前記ポリウレタン樹脂が、
下記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、
ポリエチレングリコール(B)に由来する単位(b)と、
を有し、
前記単位(a)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%であり、
前記単位(b)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%である、研磨パッド。
【化1】
(式(I)中、Rは、各々独立して、炭素原子数1~10の有機基又は水素原子を表し、nは5~25の整数を表す。)
[2]
前記ポリシロキサンジオール(A)が、前記式(I)における前記Rの全てがメチル基であるポリシロキサンジオール(A1)を含む、[1]に記載の研磨パッド。
[3]
前記樹脂シートのA硬度が50度以上であり、かつ、前記樹脂シートのDO硬度が90度以下である、[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4]
前記樹脂シートの密度が、0.3~0.6g/cmである、[1]~[3]のいずれかに記載の研磨パッド。
[5]
研磨スラリーの存在下、[1]~[4]のいずれかに記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を含む、研磨加工物の製造方法。
[6]
前記研磨加工物が、シリコンウェハである、[5]に記載の研磨加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた研磨レートを有するとともに、被研磨物に良好な端部形状を与える、研磨パッド等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度の測定結果に係るグラフである。
図2図2は、比較例1の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度の測定結果に係るグラフである。
図3図3は、比較例2の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度の測定結果に係るグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
[研磨パッド]
本実施形態の研磨パッドは、研磨面を有する樹脂シートを備える研磨パッドであって、前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂を含み、前記ポリウレタン樹脂が、上記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、ポリエチレングリコール(B)に由来する単位(b)と、を有し、前記単位(a)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%であり、前記単位(b)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%である。
本実施形態の研磨パッドは、上記構成を有するため、優れた研磨レートを有するとともに、被研磨物に良好な端部形状を与えることができる。本実施形態の研磨パッドによれば、とりわけ、被研磨物の端部ダレを防止することができる。端部ダレが生じて端部形状が損なわれると、例えば、半導体ウェハの研磨加工では、端部近傍から製品を得ることが難しくなり、歩留や生産性を低下させるという問題が生じるが、本実施形態の研磨パッドを用いることで、外縁近傍までフラットに仕上がり、端部形状を改善することができる。
【0014】
本実施形態の研磨パッドは、研磨面を有する所定の樹脂シートを少なくとも備えるものである。すなわち、本実施形態の研磨パッドは、本実施形態における樹脂シートのみからなっていてもよく、当該樹脂シート以外の構成を有するものであってもよい。本実施形態において、樹脂シート以外の構成としては、例えば、種々公知の、研磨層、クッション層及び接着層等が挙げられる。
【0015】
本実施形態において、「研磨面を有する樹脂シート」とは、本実施形態の研磨パッドの少なくとも1つの表面が本実施形態における樹脂シートの表面に対応しており、当該樹脂シートの表面が、本実施形態における研磨の際、被研磨物に押し当てられる研磨面となることを意味する。
【0016】
本実施形態の研磨パッドは、必要に応じて、研磨面に溝加工、エンボス加工、及び/又は、穴加工(パンチング加工)が施されていてもよく、光透過部を備えてもよい。溝加工及びエンボス加工の形状に特に限定はなく、例えば、格子型、同心円型、及び放射型等の形状が挙げられる。
【0017】
(樹脂シート)
(ポリウレタン樹脂)
本実施形態における樹脂シートは、ポリウレタン樹脂を含む。すなわち、本実施形態における樹脂シートは、ポリウレタン樹脂をシート状に成形加工すること等により得ることができる。一般に、ポリウレタン樹脂は、少なくともポリイソシアネートとポリオールとの反応物として特定することができ、また、少なくともイソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーとポリアミンとの反応物として特定することもできる。換言すると、一般に、ポリウレタン樹脂は、その分子中に、ウレタン結合を有するものであり、ウレア結合を更に有していてもよい。
【0018】
本実施形態におけるポリウレタン樹脂は、上記式(I)で表されるポリシロキサンジオール(A)に由来する単位(a)と、ポリエチレングリコール(B)に由来する単位(b)と、を有する。
【0019】
(単位(a))
本実施形態における単位(a)は、ポリシロキサンジオール(A)に由来する。
ポリシロキサンジオール(A)は、下記式(I)で表されるものであり、シラン系繰り返し単位を含むことで、研磨パッドに適度な撥水性を与えることができ、研磨パッド内部にスラリーが浸漬して研磨層が軟化することを抑制することができる。その結果、端部ダレを防止することができる。また、ポリシロキサンジオール(A)は、分子鎖の両末端にヒドロキシ基を有しているため、片末端にヒドロキシ基を有しているポリシロキサンジオールと比較して、研磨パッドの強度が向上する。その結果、研磨パッドの性能が研磨中に経時変化することを抑制することができ、被研磨物の平坦性をより高めることができる。さらに、側鎖Rが炭素原子数1~10の有機基又は水素原子であることにより、研磨パッドの物性や反応性に影響を及ぼすことなく、優れた研磨レートを有することと、被研磨物に良好な端部形状を与えることを両立できるとともに、研磨パッドの物性や反応性を制御しやすい。
【化2】
(式(I)中、Rは、各々独立して、炭素原子数1~10の有機基又は水素原子を表し、nは5~25の整数を表す。)
【0020】
本実施形態における単位(a)は、上記式(I)の末端OH基から水素原子を除いた化学構造として特定することもできる。
【0021】
上記式(I)におけるRは、各々同じ基であってもよく、異なる基であってもよい。
【0022】
上記式(I)における炭素原子数1~10の有機基としては、特に限定されないが、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基が挙げられる。炭素原子数1~10のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、1,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられる。
【0023】
本実施形態において、研磨パッドに適度な撥水性を与える観点から、Rは炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、本実施形態においては、研磨パッドの物性や反応性への影響を抑制したり、物性や反応性を制御しやすくする観点から、ポリシロキサンジオール(A)が、式(I)におけるRの全てがメチル基であるポリシロキサンジオール(A1)を含むことがとりわけ好ましい。
【0024】
上記式(I)中、nは、研磨パッドに適度な撥水性を与える観点から、5以上の整数であり、研磨パッドの諸物性を調整しやすくする観点から、25以下の整数である。上記と同様の観点から、nは、10~20の整数であることが好ましい。
【0025】
ポリシロキサンジオール(A)は、種々公知の方法に基づいて合成することもできるし、市販品として入手することもできる。
【0026】
単位(a)の含有量は、ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%である。上記含有量は、研磨パッドに適度な撥水性を与える観点から、0.3質量%以上であり、優れた研磨レートを有する観点から、10.0質量%以下である。上記含有量が0.3質量%未満であると、研磨パッド内部にスラリーが浸漬して研磨層が軟化し、被研磨物の平坦性が悪化する場合があり、10.0質量%超であると、研磨パッドの撥水性が高くなり、研磨レートが低下する場合がある。このように、単位(a)の含有量が、ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%にあることで、研磨パッドの物性や反応性に影響を及ぼすことなく、優れた研磨レートを有することと、被研磨物に良好な端部形状を与えることを両立できるとともに、研磨パッドの物性や反応性を制御しやすい傾向にある。また、研磨層と被研磨物との摩擦抵抗を低減することができ、摩擦熱による研磨層の軟化等の熱劣化を抑制することができる。その結果、被研磨物が研磨中にスムーズに自転し、被研磨物の平坦性をより高めることができる傾向にある。
上述した観点から、上記含有量は、好ましくは0.3~5.0質量%であり、より好ましくは0.3~3.0質量%である。さらに、上記と同様の観点から、ポリシロキサンジオール(A1)に由来する単位の含有量は、ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~5.0質量%であり、さらに好ましくは0.3~3.0質量%である。
【0027】
単位(a)の含有量は、ポリウレタン樹脂の調製時(後述する組成物の調製時)の仕込み比より求めることもできるし、公知の元素分析・構造解析手段などにより分析して求めることもできる。
【0028】
(単位(b))
本実施形態における単位(b)は、ポリエチレングリコール(B)に由来する。すなわち、単位(b)は、-(CH-CH-O)-で表される化学構造(ここで、mは繰り返し単位の数を表し、任意の整数である。)として特定することもできる。mの範囲は特に限定はないが、例えば、4~455としてもよい。
【0029】
ポリエチレングリコール(B)は、酸化エチレンの重合物であり、特に限定されないが、取り扱い上の利便性の観点から、その数平均分子量は200~20000であることが好ましい。
【0030】
ポリエチレングリコール(B)は、種々公知の方法に基づいて合成することもできるし、市販品として入手することもできる。
【0031】
単位(b)の含有量は、ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%である。上記含有量は、研磨パッドとスラリーの親和性を高める観点から、0.3質量%以上であり、研磨パッド内部にスラリーが浸漬して研磨層が軟化することを抑制する観点から、10.0質量%以下である。上記含有量が0.3質量%未満であると、研磨パッドとスラリーの親和性が低下し、研磨レートが低下する場合があり、10.0質量%超であると、研磨パッド内部にスラリーが浸漬して研磨層が軟化し、被研磨物が研磨パッドに沈み込んで端部を過度に研磨する場合がある。このように、単位(b)の含有量が、ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.3~10.0質量%であることで、研磨パッドの物性や反応性に影響を及ぼすことなく、優れた研磨レートを有することと、被研磨物に良好な端部形状を与えることを両立できるとともに、研磨パッドの物性や反応性を制御しやすい傾向にある。
上述した観点から、上記含有量は、好ましくは0.3~5.0質量%であり、より好ましくは0.3~3.0質量%である。
【0032】
単位(b)の含有量は、ポリウレタン樹脂の調製時(後述する組成物の調製時)の仕込み比より求めることもできるし、公知の元素分析・構造解析手段などにより分析して求めることもできる。
【0033】
(単位(c))
本実施形態におけるポリウレタン樹脂は、単位(a)及び単位(b)には該当しないその他の単位(c)を含むことができる。単位(c)は特に限定されず、例えば、本実施形態におけるポリウレタン樹脂の原料に由来する種々の単位とすることができる。すなわち、単位(c)は後述する[研磨パッドの製造方法]に記載の種々のポリウレタン樹脂原料に由来する単位とすることができる。
単位(c)の含有量は、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂を100質量%として、80.0~99.4質量%とすることができ、90.0~99.4質量%とすることもでき、94.0~99.4質量%とすることもできる。
【0034】
(その他の成分)
本実施形態における樹脂シートは、ポリウレタン樹脂以外に、添加剤に由来する成分を含有していてもよい。そのような添加剤としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態の研磨パッドの製造方法において後述する、消泡剤、触媒、発泡剤、整泡剤、砥粒、染料、顔料、中実微粒子、難燃剤、親水化剤、疎水化剤、耐光剤、酸化防止剤、及び帯電防止剤等が挙げられる。これらは、ポリウレタンの製造に用いる材料のうち、未反応原料等に由来するものであってもよい。
添加剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
(樹脂シートの厚さ)
樹脂シートの厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.5mm以上10.0mm以下であり、より好ましくは0.6mm以上8.0mm以下であり、更に好ましくは0.7mm以上5.0mm以下である。樹脂シートの厚さは、JIS K 6505に記載された測定方法に準拠して測定される。すなわち、樹脂シートの厚さ方向に初荷重として1cm当たり100gの荷重をかけた(負荷した)ときの厚さである。
【0036】
(樹脂シートの物性)
(硬度)
本実施形態において、研磨加工物の平坦性をより高める観点から、樹脂シートのA硬度は50度以上であることが好ましい。
また、研磨加工物のスクラッチをより抑制させる観点から、本実施形態における樹脂シートのD硬度は60度以下であることが好ましく、優れた研磨レートを有することと、被研磨物に良好な端部形状を与えることを両立する観点から、本実施形態における樹脂シートは、A硬度が50度以上であり、かつ、D硬度が60度以下であることがより好ましい。
さらに、研磨加工物のスクラッチをより抑制させる観点から、本実施形態における樹脂シートのDO硬度は90度以下であることが好ましく、優れた研磨レートを有することと、被研磨物に良好な端部形状を与えることを両立する観点から、本実施形態における樹脂シートは、A硬度が50度以上であり、かつ、DO硬度が90度以下であることがより好ましい。
本実施形態における樹脂シートは、とりわけ、研磨加工物がシリコンウェハである場合は、優れた研磨レートを有することと、被研磨物に良好な端部形状を与えることを両立するから、D硬度が30度以上60度以下であることが特に好ましい。上記と同様の観点から、本実施形態における樹脂シートは、とりわけ、DO硬度が60度以上90度以下であることがより好ましい。
上記A硬度及びDO硬度は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。上記D硬度は、D型硬度計(JIS K 7311)により測定することができる。
上記A硬度、DO硬度及びD硬度は、例えば、ポリウレタン樹脂の構成成分及び発泡剤の添加量を調整すること等により各々上記した範囲に調整することができる。
【0037】
(密度)
本実施形態において、樹脂シートの密度は、特に限定されないが、例えば、0.3~0.8g/cmとすることができ、好ましくは0.3~0.6g/cmである。すなわち、研磨パッドと被研磨物との摩擦抵抗を低減させ、被研磨物により良好な端部形状を与える観点から、樹脂シートの密度が0.3g/cm以上であることが好ましく、研磨加工物のスクラッチをより抑制させる観点から、樹脂シートの密度が0.6g/cm以下であることが好ましい。
上記密度は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
上記密度は、例えば、後述する本実施形態の研磨パッドの製造方法を採用すること等により上記した範囲に調整することができる。例えば、本実施形態における樹脂シートの製造工程において、発泡剤の量を少なくする場合、樹脂シートの密度は高くなる傾向にある。
【0038】
(圧縮率及び圧縮弾性率)
(圧縮率)
樹脂シートの圧縮率は、特に限定されないが、0.1~10.0%であると好ましく、0.5~5.0%であるとより好ましい。圧縮率が上記範囲内にあることにより、研磨パッドが、研磨加工時に被研磨物上に存在する研磨屑等を、適度に拭き取って除去することができる傾向にある。したがって、特に研磨屑等の凝集物に起因する微小欠陥を抑制することができる傾向にある。圧縮率は、例えば、樹脂シートにおける気泡の大きさや数、形状等を調整することにより制御することができる。圧縮率は、下記の方法に準じて測定される。
【0039】
(圧縮弾性率)
樹脂シートの圧縮弾性率は、特に限定されないが、65~98%であると好ましく、70~95%であるとより好ましい。圧縮弾性率が上記範囲内にあることにより、被研磨物の微小欠陥をより低減することができる傾向にある。圧縮弾性率は、例えば、樹脂シートに用いる樹脂の種類や組成を調整することにより、制御することができる。圧縮弾性率は、下記の方法に準じて測定される。
【0040】
(圧縮率及び圧縮弾性率の測定方法)
樹脂シートの圧縮率及び圧縮弾性率は、JIS L 1021に準拠して、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて求める。具体的には、室温において、無荷重の状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さtを測定し、次に厚さtの状態から最終荷重をかけて、そのまま1分間放置後の厚さtを測定する。更に厚さtの状態から全ての荷重を除き、1分間放置後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt’を測定する。これらから、圧縮率及び圧縮弾性率を下記式:
圧縮率(%)=(t-t)/t×100
圧縮弾性率(%)=(t’-t)/(t-t)×100
により算出する。このとき、初荷重は100g/cm、最終荷重は1120g/cmとする。
【0041】
[研磨パッドの製造方法]
本実施形態の研磨パッドの製造方法としては、前述した構成を有する研磨パッドが得られる方法であれば特に限定されないが、例えば、次の方法により研磨パッドを製造することができる。すなわち、本実施形態の研磨パッドの製造方法は、ポリウレタン樹脂原料を含む組成物を、硬化反応に供し、ポリウレタン樹脂を含む樹脂シートを得る工程を含むことができる。
ポリウレタン樹脂原料としては、ポリオール、ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマー及びポリアミン等が挙げられる。
硬化反応としては、(i)少なくともポリオールとポリイソシアネートとを反応させること、(ii)少なくともウレタンプレポリマーとポリアミンとを反応させること、及び(iii)少なくともウレタンプレポリマーとポリアミンとポリオールとを反応させること等が挙げられる。
本実施形態において、単位(a)及び(b)は、各々独立して、ポリオール、ポリイソシアネート及びウレタンプレポリマーのいずれに由来するものであってもよいが、単位(a)及び(b)の双方が、ポリオールに由来することが好ましい。すなわち、本実施形態における硬化反応は、上記(iii)少なくともウレタンプレポリマーとポリアミンとポリオールとの反応であって、ここで、当該ポリオールがポリシロキサンジオール(A)及びポリエチレングリコール(B)を含むことが好ましい。その理由としては、以下に限定する趣旨ではないが、次のように推測される。すなわち、ウレタンプレポリマーが、ポリシロキサンジオール(A)及び/又はポリエチレングリコール(B)にそれぞれ由来する単位(a)及び/又は単位(b)を含む場合、当該プレポリマーによって組成物の粘度が上昇する傾向にあり、その結果、ポリウレタン樹脂の調製過程において均一な撹拌ができず、得られる樹脂シートの組成にムラが生ずる原因となり得る。一方、プレポリマーが、ポリシロキサンジオール(A)及び/又はポリエチレングリコール(B)にそれぞれ由来する単位(a)及び/又は単位(b)を含まない場合、粘度上昇が防止される傾向にあり、均一な攪拌が可能となる結果、得られる樹脂シートの組成も均一となり、優れた研磨レートを有するとともに、被研磨物に良好な端部形状を与える研磨パッドが得られる傾向にある。
【0042】
本実施形態の研磨パッドの好ましい製造方法(以下、「製法(α)」ともいう。)としては、ポリシロキサンジオール(A)と、ポリエチレングリコール(B)と、ウレタンプレポリマー(C1)と、ポリアミン(C2)と、を含む組成物であって、ここで、ウレタンプレポリマー(C1)は、少なくともポリイソシアネート化合物(PI)とポリオール化合物(PO)との反応物であって、当該反応物は末端にイソシアネート基を有し、ポリオール化合物(PO)はポリシロキサンジオール(A)及びポリエチレングリコール(B)とは異なる、組成物(以下、「組成物(α)」ともいう。)を、硬化反応に供し、ポリウレタン樹脂(以下、「ポリウレタン樹脂(α)」ともいう。)を含む樹脂シートを得る工程を含むことが好ましい。ここで、組成物(α)におけるポリシロキサンジオール(A)、ポリエチレングリコール(B)及びポリアミン(C2)は、ウレタンプレポリマー(C1)の硬化剤として機能することができる。
【0043】
(組成物)
組成物(α)中のポリシロキサンジオール(A)の含有量としては、ポリウレタン樹脂(α)における単位(a)の含有量を、ポリウレタン樹脂(α)を100質量%として、0.3~10.0質量%に調整する観点から、組成物(α)を100質量%として、0.3~10.0質量%であることが好ましい。ポリウレタン樹脂(α)における単位(a)の含有量をより好ましい範囲に調整する観点から、組成物(α)中のポリシロキサンジオール(A)の含有量としては、0.3~5.0質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは0.3~3.0質量%である。さらに、上記と同様の観点から、組成物(α)中のポリシロキサンジオール(A1)の含有量は、組成物(α)を100質量%として、0.3~10.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~5.0質量%であり、さらに好ましくは0.3~3.0質量%である。
組成物(α)中のポリエチレングリコール(B)の含有量としては、ポリウレタン樹脂(α)における単位(b)の含有量を、ポリウレタン樹脂(α)を100質量%として、0.3~10.0質量%に調整する観点から、組成物(α)を100質量%として、0.3~10.0質量%であることが好ましい。ポリウレタン樹脂(α)における単位(b)の含有量をより好ましい範囲に調整する観点から、組成物(α)中のポリエチレングリコール(B)の含有量としては、0.3~5.0質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは0.3~3.0質量%である。
【0044】
ポリイソシアネート化合物(PI)は、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である限り特に限定されないが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソフォロンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、及びエチリジンジイソチオシアネート等が挙げられる。これらの中で、ジイソシアネート化合物が好ましく、2,4-TDI、及び2,6-TDI、MDIがより好ましい。
ポリイソシアネート化合物(PI)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
ポリオール化合物(PO)は、分子内に2つ以上のアルコール性水酸基(OH)を有する化合物であって、ポリシロキサンジオール(A)及びポリエチレングリコール(B)とは異なるものである限り、特に限定されないが、そのような具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールメタン等のトリオール化合物等;ポリプロピレングリコール(PPG)、及びポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、並びにポリカプロラクトンポリオール化合物等が挙げられる。また、エチレンオキサイドを付加した3官能性プロピレングリコールを用いることもできる。
ポリオール化合物(PO)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
ポリアミン(C2)は、分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物を意味し、例えば、ジアミン化合物を使用することができる。
ジアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の脂肪族環を有するジアミン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAともいう。)等の芳香族環を有するジアミン;2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン等が挙げられる。これらの中で、芳香族環を有するジアミンが好ましく、MOCAがより好ましい。
ポリアミン化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ポリウレタン樹脂(α)の分子中には、ウレタン結合及びウレア結合の双方が含まれる。すなわち、ポリウレタン樹脂(α)の分子中、ウレタンプレポリマー(C1)に由来する単位(c1)にウレタン結合が含まれ、ポリアミン(C2)に由来する単位(c2)にウレア結合が含まれる。例えば、ポリアミン(C2)がMOCAである場合、単位(c2)は、-NHC(=O)NH-C(Cl)-CH-C(Cl)-NHC(=O)NH-で表される化学構造として特定することもできる。
【0048】
組成物の調製においては、例えば、ポリウレタン樹脂原料として、30℃~90℃に加温したポリシロキサンジオール(A)、ポリエチレングリコール(B)、ウレタンプレポリマー(C1)及びポリアミン(C2)を温度調整可能なジャケット付き混合機に投入し、30℃~130℃で攪拌すればよい。この際、必要に応じて、ポリウレタン樹脂原料の少なくとも1つを攪拌機付きジャケット付きのタンクに入れて熟成させてもよい。また、ポリウレタン樹脂原料同士を攪拌及び/又は熟成してもよい。攪拌時間は混合機の歯数や回転数、クリアランス等によって適宜調整することができるが、例えば0.1秒~60秒である。
【0049】
ポリシロキサンジオール(A)及びポリエチレングリコール(B)等のポリオール、並びにポリアミン(C2)の活性水素当量(例えば、OH当量及びNH当量)は、特に限定されず、例えば、各々独立して、50以上5000以下であってもよく、100以上4000以下であってもよく、130以上3000以下であってもよい。
また、ポリシロキサンジオール(A)及びポリエチレングリコール(B)のOH当量は、各々独立して、100以上5000以下であってもよく、200以上4000以下であってもよく、200以上3000以下であってもよい。
ポリアミン(C2)のNH当量は、50以上2000以下であってもよく、75以上1000以下であってもよく、100以上300以下であってもよい。
【0050】
ウレタンプレポリマー(C1)等のウレタンプレポリマーのNCO当量は、好ましくは150以上700以下であり、より好ましくは200以上600以下であり、さらに好ましくは200以上500以下である。「NCO当量」とは、“(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)-(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]”で求められる、NCO基1個当たりのウレタンプレポリマー(C1)の分子量を示す数値である。
【0051】
ウレタンプレポリマー(C1)の使用量は特に限定されず、組成物全量に対して、好ましくは30質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは40質量部以上80質量部以下である。
【0052】
本実施形態における組成物は、ポリシロキサンジオール(A)、ポリエチレングリコール(B)、ウレタンプレポリマー(C1)及びポリアミン(C2)以外の成分を、種々の機能を有する添加剤として含んでいてもよい。その具体例としては、以下に限定されないが、ポリプロピレングリコールのような溶媒(希釈剤);シリコーン系消泡剤のような消泡剤;触媒;水や中空微粒子のような発泡剤;シリコーン系整泡剤のような整泡剤;並びに、酸化セリウムのようなフィラー(砥粒);染料;顔料;中実微粒子;難燃剤;親水化剤;疎水化剤;耐光剤;酸化防止剤;帯電防止剤等が挙げられる。
【0053】
(樹脂シートの作製)
本実施形態においては、上記のようにして得られた組成物を硬化反応に供し、ポリウレタン樹脂を含む樹脂シートを得る。具体的には、例えば、30℃~150℃に予熱した型枠内に本実施形態における組成物を流し込み、30℃~150℃程度で10分~5時間程度加熱すればよい。このような操作により、組成物(α)を硬化反応に供する例でいえば、ポリシロキサンジオール(A)、ポリエチレングリコール(B)、ウレタンプレポリマー(C1)及びポリアミン(C2)が反応してポリウレタン樹脂(α)が得られる。ここで、さらに、オーブンにより、50℃~180℃程度で10分~10時間程度加熱することで、2次硬化してもよい。上記のように組成物を硬化させる際の反応温度は、用いるポリウレタン樹脂原料の種類や配合比等によって適宜調整することができ、反応温度を調整することにより、硬化反応の反応速度を制御し、得られる研磨パッドの諸物性を制御することができる傾向にある。
【0054】
上記のようにして得られた樹脂シートから、適当な厚さの樹脂シートに切り出して使用することもでき、得られた樹脂シートは、30℃~150℃で1時間~24時間程度エイジングしてもよい。
【0055】
上記のようにして得られた樹脂シートは、例えば、その後、片面に両面テープなどの、研磨装置への固定手段が貼り付けられ、所定形状、好ましくは円板状にカットされて、本実施形態の研磨パッドとして使用することもできる。研磨装置への固定手段としては、特に限定されず、従来公知の両面テープや接着テープ、接着剤、粘着剤、面ファスナーなどの中から任意に選択して用いることができる。
【0056】
また、本実施形態の研磨パッドは、樹脂シートのみからなる単層構造であってもよく、樹脂シートの片面に他の層(クッション層、又は基板層)を貼り合わせた複層からなっていてもよい。複層構造を有する場合には、両面テープや接着剤等を用いて、複数の層同士を必要により加圧しながら接着、固定すればよい。用いられる両面テープ、及び接着剤としては、特に限定されず、従来公知の両面テープ及び接着剤の中から任意に選択して用いることができる。
【0057】
さらに、本実施形態の研磨パッドは、必要に応じて、表面に溝加工、エンボス加工、及び/又は、穴加工(パンチング加工)を施してもよい。溝加工及びエンボス加工の形状に特に限定はなく、例えば、格子型、同心円型、放射型などの形状が挙げられる。
【0058】
また、研磨パッドは、樹脂シートの表面及び/又は裏面にドレス(研削処理)を施してもよい。ドレス処理としては、特に限定されず、ダイヤモンドドレッサーによる研削等の公知の方法によりドレスすることができる。
【0059】
(研磨加工物の製造方法)
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、研磨スラリーの存在下、本実施形態の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し、研磨加工物を得る研磨工程を含む。研磨工程は、一次研磨(粗研磨)であってもよく、仕上げ研磨であってもよく、それら両方の研磨を兼ねるものであってもよい。
【0060】
本実施形態の研磨加工物の製造方法においては、研磨スラリーの供給と共に、保持定盤で被研磨物を研磨パッド側に押圧しながら、保持定盤と研磨用定盤とを相対的に回転させることで、被研磨物の加工面が研磨パッドで化学機械研磨により研磨加工される。保持定盤と研磨用定盤は、互いに異なる回転速度で同方向に回転してもよく、異方向に回転してもよい。また、被研磨物は、研磨加工中に、枠部の内側で移動(自転)しながら研磨加工されてもよい。
【0061】
研磨スラリーは、被研磨物や研磨条件等に応じて、水、過酸化水素に代表される酸化剤、酸成分、アルカリ成分等の化学成分、添加剤、並びに砥粒(研磨粒子;例えば、SiC、SiO、Al、及びCeO)等を含んでいてもよい。
【0062】
また、被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、レンズ、平行平面板、及び反射ミラーのような光学材料、半導体ウェハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、金属、並びにセラミック等の材料が挙げられるが、被研磨物の自転性能(研磨パッドとの低摩擦抵抗)及び、研磨パッドの諸物性の精度が要求される観点から、好ましくは半導体ウェハであり、より好ましくはシリコンウェハであれば、本実施形態の効果がより顕在化しやすくなる。
【実施例0063】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態をより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
まず、ポリシロキサンジオール(上記式(I)においてRの全てがメチル基であり、n=13.65;活性水素当量588)1.2質量部、ポリエチレングリコール(2官能で活性水素当量294)1.2質量部、発泡剤としての水0.1質量部、触媒(東ソー株式会社製、製品名「トヨキャットET」)0.1質量部、及びシリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、製品名「SH-193」)0.2質量部を混合し、減圧脱泡して、第1の混合液を得た。
次いで、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI;主成分)とポリオール化合物(PTMG;重量平均分子量650)とに由来する単位を含む、NCO当量400のイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(以下「プレポリマー」ともいう。)78.8質量部を減圧脱泡した後、第1の混合液に加え、第2の混合液を得た。
さらに、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)18.4質量部を減圧脱泡した後、第2の混合液に加え、実施例1に係る組成物を得た。
組成物調製時の仕込み比より、組成物中のポリシロキサンジオール(A)の含有量は、当該組成物を100質量%として、1.2質量%と特定し、組成物中のポリエチレングリコール(B)の含有量は、当該組成物を100質量%として、1.2質量%と特定した。
【0065】
実施例1に係る組成物を80℃に加熱した型枠(850mm×850mmの正方形の形状)に注型し、40分間、80℃にて一次硬化させて第1の樹脂発泡体を得た。樹脂発泡体を型枠から抜き出し、オーブンにて130℃で8時間、二次硬化させて第2の樹脂発泡体を得た。第2の樹脂発泡体を厚さ方向にわたって1.3mm厚にスライスして、実施例1に係る樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを実施例1に係る研磨パッドとして後述する評価に供した。
組成物調製時の仕込み比より、樹脂シートを構成するポリウレタン樹脂において、単位(a)の含有量は前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、1.2質量%と特定し、単位(b)の含有量は前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、1.2質量%と特定した。
【0066】
[比較例1]
実施例1において、プレポリマーの使用量を78.7質量部に、MOCAの使用量を18.8質量部に、ポリシロキサンジオールの使用量を0.0質量部(不使用)に、ポリエチレングリコールの使用量を0.7質量部に、発泡剤の使用量を0.1質量部に、シリコーン系整泡剤の使用量を0.2質量部に、それぞれ変更し、分散剤としてのポリプロピレングリコール(活性水素当量1009)1.4質量部を第1の混合液に加えたことを除き、実施例1と同様にして、比較例1に係る組成物を得た。
組成物調製時の仕込み比より、組成物中のポリエチレングリコール(B)の含有量は、当該組成物を100質量%として、0.7質量%と特定した。
【0067】
比較例1に係る組成物を、実施例1と同様に加工して、比較例1に係る樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを比較例1に係る研磨パッドとして後述する評価に供した。
組成物調製時の仕込み比より、樹脂シートを構成するポリウレタン樹脂において、単位(b)の含有量は前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.7質量%と特定した。
【0068】
[比較例2]
実施例1において、プレポリマーの使用量を78.2質量部に、MOCAの使用量を19.2質量部に、ポリシロキサンジオールの使用量を0.8質量部に、ポリエチレングリコールの使用量を0.0質量部(不使用)に、シリコーン系整泡剤の使用量を0.4質量部に、それぞれ変更し、分散剤としてのポリプロピレングリコール(活性水素当量1009)1.2質量部を第1の混合液に加えたことを除き、実施例1と同様にして、比較例2に係る組成物を得た。
組成物調製時の仕込み比より、組成物中のポリシロキサンジオール(A)の含有量は、当該組成物を100質量%として、0.8質量%と特定した。
【0069】
比較例2に係る組成物を、実施例1と同様に加工して、比較例2に係る樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを比較例2に係る研磨パッドとして後述する評価に供した。
組成物調製時の仕込み比より、樹脂シートを構成するポリウレタン樹脂において、単位(a)の含有量は前記ポリウレタン樹脂を100質量%として、0.8質量%と特定した。
【0070】
[厚さ]
JIS K 6505に記載された測定方法に準拠し、実施例1及び比較例1~2(以下「各例」ともいう。)における樹脂シートの厚さを測定した。すなわち、樹脂シートの厚さ方向に初荷重として1cm当たり100gの荷重をかけた(負荷した)ときの厚さを測定した。
【0071】
[圧縮率及び圧縮弾性率]
各例における樹脂シートの圧縮率及び圧縮弾性率は、JIS L 1021に準拠して、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて求めた。すなわち、室温において、無荷重の状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さtを測定し、次に厚さtの状態から最終荷重をかけて、そのまま1分間放置後の厚さtを測定した。更に厚さtの状態から全ての荷重を除き、1分間放置後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt’を測定した。これらから、圧縮率及び圧縮弾性率を下記式:
圧縮率(%)=(t-t)/t×100
圧縮弾性率(%)=(t’-t)/(t-t)×100
により算出した。ここで、初荷重は100g/cm、最終荷重は1120g/cmとした。
【0072】
[密度]
各例における樹脂シートから切り出したサンプルの体積と重量から密度を算出した。
【0073】
[硬度]
各例における樹脂シートから10cm×10cmに切り出したサンプルを、厚さが4.5mm以上となるように複数枚重ね、ASTM D2240に準じて、DO型硬度計により測定した。A硬度は、A型硬度計(日本工業規格、JIS K 7311)により測定した。
【0074】
[平坦度測定]
各例の研磨パッドを用いて、シリコンウェハの両面を研磨した。具体的には、シリコンウェハの表面形状を監視しながら研磨し、シリコンウェハの厚さの平均値がキャリア(被研磨物保持材)の厚さと同程度付近になり、表面形状が最も良好となった時点で研磨を終了した。研磨の際の条件は次のとおりとした。
(研磨条件)
被研磨物:シリコンウェハ(直径300mmφ、厚さ779μm、各5枚)
研磨機:スピードファム株式会社製「DSM20B-5P-5D」
研磨液:フジミインコーポレーテッド社製 アルカリ溶液(コロイダルシリカ含有pH10.5)
下定盤回転数:35.0rpm
上定盤回転数:-13.4rpm
インターナル回転数:7.0rpm
サンギア回転数:25.0rpm
研磨荷重:5287N
【0075】
上記のようにして研磨されたシリコンウェハを対象とし、平坦度測定装置(KOBELCO社製「LSW3020FE」)を用いて、シリコンウェハの表面形状(厚さ)を計測し、グラフを得た。得られたグラフから、端部形状(端部ダレ)及び研磨レートを評価した。
【0076】
[評価結果]
各例の研磨パッドについて評価した結果を以下の表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例1の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度を測定した結果を図1に示す。図1のグラフにおいて、横軸はシリコンウェハの被研磨面の中心からの距離(mm)を表し、縦軸は対応する位置におけるシリコンウェハの厚さ(μm)表す(後述の図2及び3においても同じ。)。図1において、グラフの両端が急落しておらず(端部ダレが発生しておらず)、厚さの最大値と最小値の差も小さく、シリコンウェハは良好な端部形状を有すると評価された。なお、グラフの両端の急落は、他の部分の厚さと比較して、シリコンウェハの端部の厚さが極端に減少している(端部ダレが発生している)ことを示す。
比較例1の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度を測定した結果を図2に示す。図2において、厚さの最大値と最小値の差は実施例と同等であった一方で、両端部20mm程度の狭い範囲で厚さが急落しており(端部ダレが発生しており)、シリコンウェハの平坦性が不良であると評価された。
比較例2の研磨パッドを用いて研磨したシリコンウェハの平坦度を測定した結果を図3に示す。図3において、グラフの両端が急落しておらず(端部ダレが発生しておらず)、厚さの最大値と最小値の差も実施例と同等で、シリコンウェハは良好な端部形状を有すると評価された。しかしながら、研磨レートは低いと評価された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の研磨パッドは、レンズ、平行平面板、及び反射ミラーのような光学材料、半導体ウェハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、金属、並びにセラミック等の材料の研磨(とりわけ化学機械研磨(CMP))に用いられる研磨パッドとして、産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3