(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144937
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】芳香剤
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20241004BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20241004BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20241004BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C11B9/00 D
A61L9/01 Q
A61L9/12
A61L9/01 V
C11B9/00 T
D21H21/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057122
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100220836
【弁理士】
【氏名又は名称】堂前 里史
(72)【発明者】
【氏名】西脇 真由
【テーマコード(参考)】
4C180
4H059
4L055
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA16
4C180CA06
4C180EA52Y
4C180EB03X
4C180EB04X
4C180EB06X
4C180EB06Y
4C180EB07X
4C180EB07Y
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4C180EB15X
4C180EB30Y
4C180EC01
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4C180GG17
4C180GG19
4C180HH10
4C180LL20
4H059BA12
4H059BA30
4H059BC10
4H059DA09
4H059DA22
4H059DA28
4H059EA36
4L055AG34
4L055AH50
4L055BE10
4L055EA08
4L055EA32
(57)【要約】
【課題】本発明は、香りの強度および香り立ちの良さに優れる芳香剤を提供する。
【解決手段】本発明の芳香剤は、香料組成物と揮散部材とを備える。香料組成物は、香料と水と水溶性溶剤とを含む。揮散部材は、芳香剤の使用時に、香料組成物に少なくとも部分的に浸漬される。そして、水溶性溶剤は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノールおよび3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ、揮散部材は、紙材料を有する、芳香剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料と水と水溶性溶剤とを含む、香料組成物と、
前記香料組成物に少なくとも部分的に浸漬される揮散部材と、
を備え、
前記水溶性溶剤が、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノールおよび3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記揮散部材が、紙材料を有する、芳香剤。
【請求項2】
前記紙材料の目付が、250~650g/m2である、請求項1に記載の芳香剤。
【請求項3】
前記紙材料の密度が、0.01~3.0g/cm3である、請求項1または2に記載の芳香剤。
【請求項4】
前記紙材料からなる前記揮散部材の厚さが、0.01~10mmである、請求項1または2に記載の芳香剤。
【請求項5】
前記香料組成物における水の割合が、前記香料組成物の総量の10~50質量%である、請求項1または2に記載の芳香剤。
【請求項6】
前記香料組成物における前記水溶性溶剤の割合が、前記香料組成物における前記水の割合より大きい、請求項1または2に記載の芳香剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤に関する。
【背景技術】
【0002】
香料成分や消臭成分を空間に揮散させるための棒状の揮散部材を備えた芳香剤が使用されている。イソパラフィン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤等の有機溶剤に香料成分等を溶解した香料組成物を棒状の揮散部材に含浸させた後に、該揮散部材から香料成分等を揮散させることが主に提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-11868号公報
【特許文献2】特開2018-53174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2のような従来の棒状の揮散部材を備えた芳香剤においては、香料等の強度および香り立ちの良さに改善の余地がある。
本発明は、香りの強度および香り立ちの良さに優れる芳香剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]香料と水と水溶性溶剤とを含む、香料組成物と、前記香料組成物に少なくとも部分的に浸漬される揮散部材と、を備え、前記水溶性溶剤が、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノールおよび3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記揮散部材が、紙材料を有する、芳香剤。
[2]前記紙材料の目付が、250~650g/m2である、[1]に記載の芳香剤。
[3]前記紙材料の密度が、0.01~3.0g/cm3である、[1]または[2]に記載の芳香剤。
[4]前記紙材料からなる前記揮散部材の厚さが、0.01~10mmである、[1]~[3]のいずれかに記載の芳香剤。
[5]前記香料組成物における水の割合が、前記香料組成物の総量の10~50質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の芳香剤。
[6]前記香料組成物における前記水溶性溶剤の割合が、前記香料組成物における前記水の割合より大きい、[1]~[5]のいずれかに記載の芳香剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、香りの強度および香り立ちの良さに優れる芳香剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、官能試験による香り立ちの良さの評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。例えば、「A~B%」は、A%以上B%以下であることを意味する。
【0009】
本発明の芳香剤は、香料と水と水溶性溶剤とを含む、香料組成物と、該香料組成物に少なくとも部分的に浸漬される揮散部材とを備える。該水溶性溶剤は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノールおよび3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつ、該揮散部材は紙材料を有する。
【0010】
従来の界面活性剤を使用して香料を水に可溶化させた水性の香料組成物は、界面活性剤を使用せずに香料をイソパラフィン系の溶剤に溶解させた従来の油性の香料組成物と比較して香料の含有量を高くすることが困難である。そのため、強度の高い香りを出すことができない。一方、油性の香料組成物は水性の香料組成物と比較して香り立ちが充分ではない。
【0011】
かかる状況の下、本発明者は香りの強度の向上のために、香料と水と3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等の水溶性溶剤とを含む香料組成物を、紙材料を有する揮散部材によって揮散させることに想到した。かかる技術的手段を採用することで、香りの強度に加えて、芳香剤の香り立ちの良さが改善されるという予想外の効果が奏されることを本発明者は見出し、本発明を完成させた。
【0012】
以下、芳香剤の実施形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の代表的な例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0013】
(香料組成物)
香料組成物は、香料と水と水溶性溶剤とを含む。水溶性溶剤は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノールおよび3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
かかる香料組成物を紙材料を有する揮散部材から揮散させることで、香料等の強度および香り立ちの良さに優れる芳香剤を提供することができる。
【0014】
水溶性溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも水溶性溶剤は3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを含むことが好ましく、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールの単独使用がより好ましい。
【0015】
香料は天然香料であってもよく、天然香料から分離された単品香料であってもよく、合成された単品香料であってもよく、これらの調合香料であってもよい。香料としては、従来公知の油性香料を制限なく使用することができる。
【0016】
香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、動物性香料、植物性香料、合成香料、抽出香料が挙げられる。香料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
動物性香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、麝香、霊猫香、竜延香が挙げられる。
植物性香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、ジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油が挙げられる。
動物性香料、植物性香料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
合成香料や抽出香料等の人工香料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料;リナロール、テトラヒドロリナロール、ゲラニオール、シトロネロール、2―イソブチル―4―メチルテトラヒドロ―2H―ピラン―4-オール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、βフェネチルアルコール等のアルコール系香料;アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料;3-(4―tert―ブチルフェニル)プロパナール、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド等のアルデヒド系香料;1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8―オクタヒドロナフタレン―2―イル)エタン―1-オン、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料;γ-ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料;ジヒドロジャスモン酸メチル、酢酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル、酢酸2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチル、ヘキシルアセテート、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、リナリルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料;ガラクソリド等のベンゾピラン系香料が挙げられる。
人工香料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
なかでも、炭化水素系香料としては、リモネンが好ましい。アルコール系香料としては、リナロール、テトラヒドロリナロール、ゲラニオール、シトロネロール、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、βフェネチルアルコールが好ましい。アルデヒド系香料としては、3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、シトラール、シトロネラールが好ましい。ケトン系香料としては、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8―オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オンが好ましい。エステル系香料としては、ジヒドロジャスモン酸メチル、酢酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル、酢酸2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチル、ヘキシルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、リナリルアセテートが好ましい。ベンゾピラン系香料としてはガラクソリドが好ましい。
【0020】
香料組成物における香料の割合は香料組成物の総量の1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましく、5~10質量%がさらに好ましい。香料の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、香料による香りの強度が向上しやすい。香料の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、透明で均一な香料組成物が得られやすい。
【0021】
香料組成物における水溶性溶剤の割合は香料組成物の総量の40~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましく、55~70質量%がさらに好ましい。水溶性溶剤の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、透明で均一な香料組成物が得られやすい。水溶性溶剤の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、香り立ちの良さが向上しやすいと考えられる。
【0022】
香料組成物における水の割合は香料組成物の総量の10~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましく、25~35質量%がさらに好ましい。水の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、香り立ちの良さが向上しやすい。また、保管時のリスクが低下する。水の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、透明で均一な香料組成物が得られやすい。
【0023】
香料組成物においては、水溶性溶剤の割合が水の割合より大きいことが好ましい。水溶性溶剤の割合が水の割合より大きいと、透明で均一な香料組成物が得られやすい。
【0024】
香料組成物は発明の効果を妨げない範囲内であれば、香料、水溶性溶剤および水以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルコール系、グリコールエーテル系等の他の溶剤、非イオン性や陰イオン性の界面活性剤、殺虫剤、抗菌剤、害虫忌避剤、消臭剤、安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、色素が挙げられる。
【0025】
(揮散部材)
揮散部材は、芳香剤の使用時に香料組成物に少なくとも部分的に浸漬される。揮散部材に香料組成物が浸漬されることで、香料組成物が毛細管力によって揮散部材に吸い上げられる。吸い上げられた香料成分は、揮散部材から揮散させられる。
【0026】
揮散部材は、紙材料を有する。紙材料のパルプは、典型的には、セルロース繊維を主成分とする。セルロース繊維を主成分とするとは、セルロース繊維の割合が紙材料の80質量%以上であることを意味し、好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。紙材料とは、パルプモールドおよび紙軸を包含する用語である。
【0027】
パルプとしては、例えば、化学パルプ、半化学パルプ、機械パルプ、非木材繊維パルプ、古紙パルプが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
パルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、パルプの原料となる木材は、針葉樹材でもよく、広葉樹材でもよく、これらを併用してもよい。
【0028】
化学パルプとしては、例えば、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)が挙げられる。
半化学パルプとしては、例えば、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)が挙げられる。
機械パルプとしては、例えば、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)が挙げられる。
非木材繊維パルプとしては、例えば、楮、三椏、麻、ケナフのような非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプが挙げられる。
古紙パルプとしては、例えば、離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプが挙げられる。古紙パルプの原料となる古紙としては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙が挙げられる。
ただし、パルプは以上の例示に限定されない。
【0029】
紙の種類も特に限定されない。例えば、クッション紙、コート紙、上質紙、マット紙、アートポスト紙、クラフト紙、マットポスト紙、ケント紙が挙げられる。例えば、クッション紙、再生紙(古紙50%)は好適である。
【0030】
紙材料の目付は250~650g/m2が好ましく、300~600g/m2がより好ましく、350~550g/m2がさらに好ましい。目付が前記数値範囲内の下限値以上であると、揮散部材の強度を確保しやすい。目付が前記数値範囲内の上限値以下であると、紙の空隙が確保され、香料組成物を揮散部材が吸液しやすい。
【0031】
紙材料の密度は0.01~3.0g/cm3が好ましく、0.1~2.5g/cm3がより好ましく、0.2~2.0g/cm3がさらに好ましい。密度が前記数値範囲内の下限値以上であると、揮散部材の強度を確保しやすい。密度が前記数値範囲内の上限値以下であると、紙の空隙が確保され、香料組成物を揮散部材が吸液しやすい。
【0032】
紙材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
紙材料を有する揮散部材の製法は、容器内に収容された香料組成物を揮散させることができればよく、特に限定されるものではない。例えば、水に溶かしたパルプを長網抄紙機または丸網抄紙機等の抄紙機によって抄紙した後乾燥することでシート状に加工したものや、水に溶かしたパルプを金型で抄き上げた後、プレス乾燥して成型したもの(いわゆるパルプモールド)、乾燥させたパルプを不織布で挟み接着剤で固定したもの等が挙げられる。これらはそのまま用いてももよいが、一定の大きさに裁断してもよい。さらに細長く裁断したシートを巻き回して軸状にしたものを用いてもよい。
【0034】
揮散部材の形状は、容器内に収容された香料組成物を揮散させることができればよく、特に限定されるものではないが、典型的には短形状のものが挙げられる。ただし、揮散部材の形状は、容器の開口の形状や求められる意匠性に応じて適宜変更可能である。
【0035】
紙材料からなる揮散部材の厚さは0.01~10mmが好ましく、0.1~7mmがより好ましく、0.2~5mmがさらに好ましい。揮散部材の厚さが前記数値範囲内の下限値以上であると、揮散部材の強度を確保しやすい。揮散部材の厚さが前記数値範囲内の上限値以下であると、香料組成物を揮散部材が吸液しやすい。
【0036】
揮散部材には、複数に分割して切り離して使用するための切れ込み点線が形成されていてもよい。切れ込み点線に沿って揮散部材を複数に分割することで、香料組成物の揮散速度を変更することができる。
【0037】
揮散部材を複数本使用する場合、全てが同じ形状であってもよいし、一部の形状が異なるものであってもよい。また、揮散部材は、単数で用いてもよく、複数用いてもよい。外観、揮散部材の形状、香料組成物の揮散速度に応じて、揮散部材の使用本数を適宜設定すればよい。複数の揮散部材を用いると、香料組成物が量的にはより揮散しやすくなる。
【0038】
(容器)
芳香剤は、香料組成物を貯留するための容器をさらに備えてもよい。芳香剤の使用時には、容器の内部に貯留された香料組成物に揮散部材が少なくとも部分的に浸漬される。揮散部材は容器の開口部から容器内に挿入されることで、香料組成物に部分的に浸漬される。容器外に露出した部分の揮散部材から、含浸した香料組成物の香料等が揮散される。
【0039】
容器およびその開口部の形状は、特に限定されない。外観を考慮して適宜設定することができる。また、容器の材質も特に限定されない。容器はプラスチック製であってもよく、ガラス製であってもよく、陶器製であってもよい。また、容器は透明であってもよく、不透明であってもよく、半透明であってもよい。容器の材質も外観を考慮して適宜設定することができる。
【0040】
(作用機序)
以上説明した一実施形態に係る芳香剤は、香料と水と水溶性溶剤とを含む香料組成物と、該香料組成物に少なくとも部分的に浸漬される揮散部材と、を備え、該揮散部材が、紙材料を有する。そして、水溶性溶剤は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノールおよび3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。かかる水性の香料組成物が紙材料を有する揮散部材から揮散することで、香りの強度が向上し、また、香り立ちの良さも向上する。
【0041】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の効果が奏される範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。
【実施例0042】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されない。
【0043】
<実施例1~6、比較例1~6>
表1に示す組成にしたがって各例の香料組成物をそれぞれ調製した。各例の香料組成物をガラス製透明容器(容積95mL、開口部の内径20mm、底面の内径45mm、高さ75mm)の開口部から50mLそれぞれ注ぎ入れた。その後、紙材料からなる揮散部材6本を容器の開口部から差し込んだ。揮散部材が容器の開口部の全周に広がるように揮散部材の各位置を調整した。その後、香料組成物を各揮散部材に含侵させた。
【0044】
紙材料からなる揮散部材として、実施例1~3および比較例1~3では、クッション紙のFKコースターG(富士共和製紙社製品)を使用した。このFKコースターGの厚さは1.0mmであり、目付は430g/m2である。実施例4~6および比較例4~6では、古紙パルプ紙のケンラン(富士共和製紙社製品)を使用した。このケンランの厚さは0.6mmであり、目付は465g/m2である。
【0045】
<香りの官能試験および評価方法>
各例の芳香剤の香りの嗜好と強度をそれぞれ10名のパネラーにより評価した。芳香剤を16.8m3(幅2.7m、奥行き2.7m、高さ2.3m)の密閉空間内に静置することで、香料成分を1時間かけて空間内に揮散させた。その後、10名のパネラーによって下記の基準で香りの嗜好と強度をそれぞれ評価し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0046】
(香りの強度の評価基準)
5:強い。
4:やや強い。
3:ちょうどよい。
2:やや弱い。
1:弱い。
【0047】
(香りの嗜好の評価基準)
5:好き。
4:やや好き。
3:どちらでもない。
2:やや嫌い。
1:嫌い。
【0048】
(香り立ちの良さの選択率)
香り立ちの良さについて、同じ香料と同じ揮散体を使用し、香料組成物が異なる、対応する2つの使用中の各例の芳香剤(例えば実施例1と比較例1)について、それぞれ香り立ちが良いものをパネラーに選択させた(差異がない場合は「差異なし」を選択させた)。選択された数を全パネラー数で割ることにより、香り立ちの選択率を算出した。結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
略号の意味、使用原料は、以下の通りである。
香料1:グリーンフルーティー系香料
香料2:フローラルフルーティー系香料
香料3:シトラスハーブ系香料
MMB:3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール
イソパラフィン系溶剤:ISOPAR L(エクソンモービル社製品)
グリコールエーテル系溶剤:ダワノールDPnB(ダウ・ケミカル社製品)
【0051】
香料1の主要成分は以下の通りである。
リナロール、スチラリルアセテート、ゲラニオール、シトラール、ヘキシルアセテート。
香料2の主要成分は以下の通りである。
ガラクソリド、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8―オクタヒドロナフタレン―2―イル)エタン―1-オン、2―イソブチル―4―メチルテトラヒドロ―2H―ピラン―4-オール、βフェネチルアルコール、ジヒドロジャスモン酸メチル、酢酸1,1-ジメチル-2-フェニルエチル、テトラヒドロリナロール、シトロネロール、酢酸2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチル、3-(4―tert―ブチルフェニル)プロパナール。
香料3の主要成分は以下の通りである。
リナロール、シトラール、リモネン、ゲラニオール、リナリルアセテート。
【0052】
図1に香り立ちの良さの選択率の結果を示した。
同じ香料1を使用した実施例1、比較例1の結果を比較すると、香りの強度、香り立ちの良さの選択率の両方において実施例1の方が高かった。実施例4、比較例4についても同様である。
同じ香料2を使用した実施例2、比較例2の結果を比較すると、香りの強度、香り立ちの良さの選択率の両方において実施例2の方が高かった。実施例5、比較例5についても同様である。
同じ香料3を使用した実施例3、比較例3の結果を比較すると、香りの強度、香り立ちの良さの選択率の両方において実施例3の方が高かった。実施例6、比較例6についても同様である。
【0053】
以上の結果から、強度および香り立ちの良さに優れる芳香剤が提供できたことを確認した。また、いずれの実施例の芳香剤においても香りの嗜好および強度が十分に高評価であった。