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  • 特開-分光光度計 図1
  • 特開-分光光度計 図2
  • 特開-分光光度計 図3
  • 特開-分光光度計 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144944
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】分光光度計
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/36 20060101AFI20241004BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20241004BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01J3/36
G01N30/74 E
G01N30/74 A
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057134
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真人
【テーマコード(参考)】
2G020
2G059
【Fターム(参考)】
2G020BA14
2G020CA02
2G020CC02
2G020CC26
2G020CC42
2G020CC63
2G020CD03
2G020CD24
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB04
2G059EE01
2G059JJ05
2G059JJ11
2G059KK04
(57)【要約】
【課題】高次回折光による測定精度の悪化を防止しつつ受光器と窓板との間での光の多重反射の影響を排除する。
【解決手段】試料へ照射すべき光を発する光源(2)と、前記試料からの光を波長ごとに分光する分光素子(12)と、前記分光素子(12)により分光された各波長の光をそれぞれ検出するための受光素子が配列された受光器(14)と、を備え、前記受光器(14)の表面に前記分光素子からの高次回折光を遮光するフィルタ層(16)が直接的に接している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料へ照射すべき光を発する光源と、
前記試料からの光を波長ごとに分光する分光素子と、
前記分光素子により分光された各波長の光をそれぞれ検出するための受光素子が配列された受光器と、を備え、
前記受光器の表面に前記分光素子からの高次回折光を遮光するフィルタ層が直接的に接している、分光光度計。
【請求項2】
前記フィルタ層は前記受光器の表面に蒸着されている、請求項1に記載の分光光度計。
【請求項3】
前記フィルタ層は前記受光器の表面形状を反映した形状の表面を有する、請求項1に記載の分光光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフなどの分析装置で検出器として使用される分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフなどの分析装置の検出器として分光光度計がある。分光光度計の中には、リアルタイムでサンプルのスペクトル情報を取得することができる装置もある(特許文献1参照)。そのような分光光度計は、光源からの光を試料に照射し、試料の透過光又は散乱光を回折格子、プリズムなどの分光素子で波長ごとに分光し、分光された各波長の光をフォトダイオードアレイ(PDA)、荷電結合デバイス(CCD)などの受光器で検出することで、波長ごとの強度分布(波長スペクトル)を測定する。
【0003】
上記の分光光度計では、受光器に設けられている複数の受光素子のそれぞれに所定の波長の光が入射するように調整されるが、分光素子として回折格子を使用する場合、測定波長範囲によっては回折格子で生じたある波長の高次回折光が他の波長を受光すべき受光素子に入射して測定精度を悪化させるという問題がある。そのため、高次回折光を遮光するフィルタが表面に設けられた石英ガラス製の窓板を分光素子と受光器との間に配置するという対応が一般的に採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/193572号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルタが表面に設けられた石英ガラス製の窓板を分光素子と受光器との間に配置すると、受光器と窓板との間で多重反射を起こし、本来入射すべき受光素子とは別の受光素子に入射して測定精度が悪化するという問題がある。
【0006】
そのため、国際公開第2018/193572号では、特定波長範囲(200nm~300nm)の光を受光する受光素子と窓板との間で多重反射した光が隣接する受光素子に再入射しないように分光素子と受光器との位置関係を調整することが提案されている。これにより、特定波長範囲内においては、受光素子と窓板との間の多重反射の影響が抑制される。しかし、そのように分光素子と受光器との位置関係を調整しても、特定波長範囲以外の波長範囲では多重反射の影響を受ける。さらに、特定波長範囲内においても、受光素子の表面で広角に散乱される成分が存在し、そのような散乱成分が窓板で再反射して測定精度に悪影響を与えることがわかった。
【0007】
そこで本発明は、高次回折光による測定精度の悪化を防止しつつ受光器と窓板との間での光の多重反射の影響を排除することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分光光度計は、試料へ照射すべき光を発する光源と、前記試料からの光を波長ごとに分光する分光素子と、前記分光素子により分光された各波長の光をそれぞれ検出するための受光素子が配列された受光器と、を備え、前記受光器の表面に前記分光素子からの高次回折光を遮光するフィルタ層が直接的に接している。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る分光光度計によれば、受光器の表面に分光素子からの高次回折光を遮光するフィルタ層が直接的に接しているので、高次回折光による測定精度の悪化を防止することができるとともに、石英ガラス製の窓板を分光素子と受光器との間に配置する必要がなくなり、受光器と窓板との間での光の多重反射が生じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】分光光度計の一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例のフィルタ層の構造の一例を説明するための受光器の側面図である。
図3】同実施例のフィルタ層の構造の他の例を説明するための受光器の側面図である。
図4】フィルタ層の表面形状の一例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る分光光度計の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0012】
この実施例の分光光度計は、光源2、集光レンズ4、フローセル6、ミラー8、入口スリット10、回折格子12(分光素子)及び受光器14を備えている。
【0013】
光源2により発せられる光の光路上に、集光レンズ4及びフローセル6が配置されており、光源2からの光が集光レンズ4を介してフローセル6へ照射されるようになっている。フローセル6内を液体クロマトグラフの分離カラムからの溶出液が流れる。
【0014】
ミラー8はフローセル6を透過した光を反射させて入口スリット10側へ導くように配置されており、入口スリット10を経た光が回折格子などの分光素子12に導かれるようになっている。分光素子12に導かれた光は各波長成分の光に分光されて受光器14に導かれる。
【0015】
受光器14は、分光素子12で分光された各波長成分の光をそれぞれ受光するように光の分光方向に配列された複数の受光素子を有する。受光器14は、例えばフォトダイオードアレイである。受光器14の受光面にフィルタ層16が直接的に接している。フィルタ層16は、分光素子12からの高次回折光を遮光して受光器14の受光素子への入射を防止するためのものである。
【0016】
図2に示されているように、この実施例では、受光器14の受光面上のフィルタ層16は、第1のフィルタ層16a及び第2のフィルタ層16bで構成されている。第1のフィルタ層16aは受光器14の受光面上に直接的に形成され、第2のフィルタ層16bは第1のフィルタ層16a上に形成されている。
【0017】
第1のフィルタ層16aは、受光器14の受光素子のうち波長が320nm以上の光を受光するための受光素子の受光面上に蒸着されている。第1のフィルタ層16aは、例えば、波長が320nm以上の光の透過率が80%以上であり、波長が270nm未満の光の透過率が0.04%以下である(270-320nmは過渡領域)。これにより、波長が270nm未満の波長の2次回折光及び3次回折光が受光器14の受光素子に入射することが抑制される。
【0018】
第2のフィルタ層16bは、受光器14の受光素子のうち波長が480nm以上の光を受光するための受光素子の受光面を覆うように第1のフィルタ層16a上に蒸着されている。第2のフィルタ層16bは、例えば、波長が480nm以上の光の透過率が80%以上であり、波長が420nm未満の光の透過率が0.04%以下である(420-480nmは過渡領域)。これにより、波長が420nm未満の波長の2次回折光が受光器14の受光素子に入射することが抑制される。
【0019】
上記のように、第1のフィルタ層16a及び第2のフィルタ層16bからなるフィルタ層16は、受光器14の受光面上に直接的に接し、受光器14の受光面との間に間隔をもたない。これにより、高次回折光を遮光するためのフィルタを保持するための石英ガラス製の窓板を分光素子12と受光器14との間に配置する必要がない。これにより、受光器14と窓板との間での光の多重反射による測定精度への影響が排除される。
【0020】
なお、受光器14の受光面で反射した光は、第1のフィルタ層16aと空気層との界面、第1のフィルタ層16aと第2のフィルタ層16bとの界面、及び第2のフィルタ層16bと空気層との界面で再反射することによって光の多重反射が起こり得るが、各フィルタ層16a及び16bの膜厚が非常に小さい(例えば、10μm以下)ため、再反射した光の入射位置はその光が最初に反射した位置から大きくずれることはなく、再反射した光が本来入射すべき受光素子から離れた位置に設けられている受光素子に入射することは少ない。したがって、受光器14の受光面上にフィルタ層16を直接的に接するように設けることで、分光素子12と受光器14との間に窓板を設ける場合に比べて、光の多重反射がスペクトルの測定精度に与える影響を大幅に抑制することができる。
【0021】
なお、この実施例では、受光器14の受光面のうち波長が320nm未満の光を受光するための受光素子の受光面上にはフィルタ層が存在しない。このように、フィルタ層16が不要な領域、すなわち、高次回折光が入射しない領域には、フィルタ層16の形成の際にマスクしてフィルタ層が形成されないようにすることで、高次回折光が入射する領域にのみ必要なフィルタ層16を形成することができる。なお、図2の例では、フィルタ層16bがフィルタ層16aの上に形成されているが、図3に示されているように、フィルタ層16bを受光器14の受光面上に直接的に蒸着することもでき、図2の構造と同等の効果が得られる。
【0022】
また、図4示されているように、フィルタ層16は、受光器14の受光面の表面に沿って形成されるため、フィルタ16の表面は光器14の受光面の表面形状を反映した形状となる。図4の例では、受光器14の各受光素子14aが互いの間にギャップを挟んで配列されており、互いに隣り合う受光素子14aの受光面の間に窪みが存在する。そのため、フィルタ層16の表面形状も受光器14の受光面の凹凸形状を反映した凹凸形状となっている。このような構造は、受光器14の表面にフィルタ層16が直接的にされているために形成されるものであり、表面にフィルタが形成された石英ガラス製の窓板を受光器14の受光面に単に貼り付けた構造とは明確に異なる。
【0023】
なお、以上において説明した実施例は、本発明に係る分光光度計の実施形態の一例に過ぎない。本発明に係る分光光度計の実施形態は以下の通りである。
【0024】
本発明に係る分光光度計の一実施形態では、試料へ照射すべき光を発する光源と、前記試料からの光を波長ごとに分光する分光素子と、前記分光素子により分光された各波長の光をそれぞれ検出するための受光素子が配列された受光器と、を備え、前記受光器の表面に前記分光素子からの高次回折光を遮光するフィルタ層が直接的に接している。
【0025】
上記一実施形態の態様[1]では、前記フィルタ層は前記受光器の表面に蒸着されている。
【0026】
上記一実施形態の態様[2]では、前記フィルタ層は前記受光器の表面形状を反映した形状の表面を有する。この態様[2]は上記態様[1]と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0027】
2 光源
4 レンズ
6 フローセル
8 ミラー
10 スリット
12 分光素子
14 受光器
16 フィルタ層
図1
図2
図3
図4