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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144959
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】締結装置、及び締結方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20241004BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B23P19/06 M
B25J13/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057155
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】有光 健
(72)【発明者】
【氏名】石塚 康孝
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707FS01
3C707FS06
3C707HS27
3C707KS07
3C707KS33
3C707KS35
3C707KT01
3C707KT05
3C707KT11
3C707KW03
3C707KW05
3C707KX10
3C707LU06
(57)【要約】
【課題】ボルトの締結処理にかかる時間を短縮する締結装置、締結方法を提供する。
【解決手段】締結手段を締結することで、組付け部品を被組付け部品に組み付ける締結装置であって、第一締結穴を有する前記組付け部品が、第二締結穴を有する前記被組付け部品の上部に載置された状態で、少なくとも前記第一締結穴を含む領域を撮像する撮像手段と、撮像画像に基づいて、前記第一締結穴の第一位置、及び前記第二締結穴の第二位置を算出する制御手段とを備える。前記制御手段は、ロボットを制御して、前記第一位置に基づいて前記締結手段を前記第一締結穴に移動し挿入させるとともに、当該締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させ、前記締結手段が前記第二締結穴へ挿入されたことの検出に応じて前記ロボットを制御して前記締結手段を締結させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結手段を締結することで、組付け部品を被組付け部品に組み付ける締結装置であって、
第一締結穴を有する前記組付け部品が、第二締結穴を有する前記被組付け部品の上部に載置された状態で、少なくとも前記第一締結穴を含む領域を撮像する撮像手段と、
撮像画像に基づいて、前記第一締結穴の第一位置、及び前記第二締結穴の第二位置を算出する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、ロボットを制御して、前記第一位置に基づいて前記締結手段を前記第一締結穴に移動し挿入させるとともに、当該締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させ、前記締結手段が前記第二締結穴へ挿入されたことの検出に応じて前記ロボットを制御して前記締結手段を締結させる、
締結装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記撮像画像が前記第二締結穴の少なくとも一部の画像を含む場合、前記撮像画像の前記第二締結穴の画像に基づいて前記第二締結穴の前記第二位置を算出する、
請求項1に記載の締結装置。
【請求項3】
前記被組付け部品の輪郭から前記第二締結穴までの距離を示す距離情報を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記撮像画像が前記第二締結穴の少なくとも一部の画像を含んでいない場合、前記撮像画像における前記被組付け部品の前記輪郭の位置と、前記距離情報とに基づいて前記第二位置を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の締結装置。
【請求項4】
前記締結手段にかかる力を計測する力覚センサをさらに備え、
前記制御手段は、前記締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させる時に、前記力覚センサによるセンサ値が第一閾値を超える場合、前記移動を停止させる、
請求項1又は請求項2に記載の締結装置。
【請求項5】
前記締結手段にかかる力を計測する力覚センサ、前記締結手段の移動量を計測する変位センサの少なくともいずれかのセンサを備え、
前記制御手段は、前記センサによるセンサ値又は前記センサ値の変化量が第二閾値を超える場合に、前記締結手段が前記第二締結穴へ挿入されたことを検出する、
請求項1又は請求項2に記載の締結装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動後に、前記締結手段が前記第二締結穴へ挿入されたことが検出されない場合、前記ロボットを制御して、前記締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を、移動方向を変更させながら往復動させる、
請求項1又は請求項2に記載の締結装置。
【請求項7】
前記制御手段は、算出した前記第一位置と前記第二位置との距離が所定値未満である場合に、前記第一位置に基づいて前記締結手段を前記第一締結穴に移動し挿入させるとともに、前記締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させることなく前記締結手段を締結させる、
請求項1又は請求項2に記載の締結装置。
【請求項8】
前記組付け部品は、複数の前記第一締結穴を有し、
前記複数の第一締結穴のうち、一部の前記第一締結穴は、他の前記第一締結穴よりも後に締結処理が行われ、
前記制御手段は、前記他の第一締結穴の前記締結手段の締結状態を緩めた状態で、前記締結手段が前記一部の第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させる、
請求項1又は請求項2に記載の締結装置。
【請求項9】
締結手段を締結することで、組付け部品を被組付け部品に組み付ける締結方法であって、
第一締結穴を有する前記組付け部品が、第二締結穴を有する前記被組付け部品の上部に載置された状態で、少なくとも前記第一締結穴を含む領域を撮像する撮像工程と、
撮像画像に基づいて、前記第一締結穴の第一位置、及び前記第二締結穴の第二位置を算出する算出工程と、
ロボットを制御して、前記第一位置に基づいて前記締結手段を前記第一締結穴に移動し挿入させるとともに、当該締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させる移動工程と、
前記締結手段が前記第二締結穴へ挿入されたことの検出に応じて前記ロボットを制御して前記締結手段を締結させる締結工程と、
を有する締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結装置、及び締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のバッテリパック等の製品の製造において、工程の自動化が求められている。自動化が求められる工程のひとつに、ボルトやネジなどの締結手段を、ワーク上の締結穴に挿入して締結するボルトの締結工程が挙げられる。
締結工程の自動化の例として、例えば、特許文献1がある。特許文献1では、締結部品の移動軌跡がスパイラル状軌道となるように座標を算出することで、締結穴の位置を広範囲において探索する処理を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-20345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、ネジが締結穴内に入っていない場合、ある地点を中心として外向きに広がるスパイラル状に締結穴を探索する締結装置を開示する。このように、スパイラル状に探索することにより、締結穴の探索に時間がかかるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ボルトの締結処理にかかる時間を短縮する締結装置、締結方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る締結装置、及び締結方法は、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る締結装置は、締結手段を締結することで、組付け部品を被組付け部品に組み付ける締結装置である。締結装置は、撮像手段と、制御手段とを備える。撮像手段は、第一締結穴を有する前記組付け部品が、第二締結穴を有する前記被組付け部品の上部に載置された状態で、少なくとも前記第一締結穴を含む領域を撮像する。制御手段は、撮像画像に基づいて、前記第一締結穴の第一位置、及び前記第二締結穴の第二位置を算出する。前記制御手段は、ロボットを制御して、前記第一位置に基づいて前記締結手段を前記第一締結穴に移動し挿入させるとともに、当該締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させ、前記締結手段が前記第二締結穴へ挿入されたことの検出に応じて前記ロボットを制御して前記締結手段を締結させる。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記制御手段は、前記撮像画像が前記第二締結穴の少なくとも一部の画像を含む場合、前記撮像画像の前記第二締結穴の画像に基づいて前記第二締結穴の前記第二位置を算出するものである。
【0008】
(3):上記(1)または(2)の態様において、締結手段は、前記被組付け部品の輪郭から前記第二締結穴までの距離を示す距離情報を記憶する記憶手段を備える。前記制御手段は、前記撮像画像が前記第二締結穴の少なくとも一部の画像を含んでいない場合、前記撮像画像における前記被組付け部品の前記輪郭の位置と、前記距離情報とに基づいて前記第二位置を算出するものである。
【0009】
(4):上記(1)~(3)のうちいずれかの一つの態様において、締結装置は、前記締結手段にかかる力を計測する力覚センサをさらに備える。前記制御手段は、前記締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させる時に、前記力覚センサによるセンサ値が第一閾値を超える場合、前記移動を停止させるものである。
【0010】
(5):上記(1)~(4)のうちいずれかの一つの態様において、前記締結装置は、前記締結手段にかかる力を計測する力覚センサ、前記締結手段の移動量を計測する変位センサの少なくともいずれかのセンサを備える。前記制御手段は、前記センサによるセンサ値又は前記センサ値の変化量が第二閾値を超える場合に、前記締結手段が前記第二締結穴へ挿入されたことを検出するものである。
【0011】
(6):上記(1)~(5)のうちいずれかの一つの態様において、前記制御手段は、前記締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動後に、前記締結手段が前記第二締結穴へ挿入されたことが検出されない場合、前記ロボットを制御して、前記締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を、移動方向を変更させながら往復動させるものである。
【0012】
(7):上記(1)~(6)のうちいずれかの一つの態様において、前記制御手段は、算出した前記第一位置と前記第二位置との距離が所定値未満である場合に、前記第一位置に基づいて前記締結手段を前記第一締結穴に移動し挿入させるとともに、前記締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させることなく前記締結手段を締結させるものである。
【0013】
(8):上記(1)~(7)のうちいずれかの一つの態様において、前記組付け部品は、複数の前記第一締結穴を有する。前記複数の第一締結穴のうち、一部の前記第一締結穴は、他の前記第一締結穴よりも後に締結処理が行われる。前記制御手段は、前記他の第一締結穴の前記締結手段の締結状態を緩めた状態で、前記締結手段が前記一部の第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させる。
【0014】
(9):この発明の一態様に係る締結方法は、第一締結穴を有する前記組付け部品が、第二締結穴を有する前記被組付け部品の上部に載置された状態で、少なくとも前記第一締結穴を含む領域を撮像する撮像工程と、撮像画像に基づいて、前記第一締結穴の第一位置、及び前記第二締結穴の第二位置を算出する算出工程と、ロボットを制御して、前記第一位置に基づいて前記締結手段を前記第一締結穴に移動し挿入させるとともに、当該締結手段が前記第一締結穴に挿入された状態の前記組付け部品を前記第二位置の方向に移動させる移動工程と、前記締結手段が前記第二締結穴へ挿入されたことの検出に応じて前記ロボットを制御して前記締結手段を締結させる締結工程と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
(1)~(9)によれば、ボルトの締結処理にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態における締結装置の全体図である。
図2】本実施の形態における締結装置のハードウェア構成図を表す。
図3】本実施の形態における締結装置の処理の流れ説明するフローチャートである。
図4】上穴と下穴との位置関係を模式的に表す図である。
図5】矯正処理の一例を模式的に表す図である。
図6】矯正処理の流れを説明するフローチャートである。
図7】挿入状態の検出処理について説明する図である。
図8】矯正処理の一例を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について、図1図8に基づいて説明すると以下のとおりである。
【0018】
(締結装置の構成)
図1及び図2を用いて実施形態に係る締結装置の構成を説明する。図1は、本実施の形態における締結装置10の全体図である。図2は、本実施の形態における締結装置のハードウェア構成図を表す。本実施の形態における締結装置10は、例えば、ロボットハンド15、制御装置11、ナットランナ制御部13、及び制御盤14を備える。ロボットハンド15は、例えば、撮像装置51、ナットランナ52、ソケット53、力覚センサ54、及び変位センサ55を備える。
【0019】
図1に示すワーク載置部60には、ベース部材20(被組付け部品)が載置される。ロボットハンド15は、架台の上に設置されている。本実施の形態における締結装置10は、一例としてベース部材20にバスバー30(組付け部品、図1図2に不図示)を組み付ける。
【0020】
なお、本実施形態において、X軸方向及びY軸方向とは、締結手段の挿入方向と垂直な平面上の互いに直交する2本の直線のそれぞれに平行な方向であり、Z軸方向とは、ネジの挿入方向と平行な方向である。
【0021】
ロボットハンド15は、例えば、6軸の多関節ロボットハンドである。ロボットハンド15は、複数のリンクと、各リンクを回転可能に連結する関節部と、を有する多関節型アームとして構成される。各関節部には、各関節部を駆動させるアクチュエータ(不図示)が設けられる。アクチュエータは、例えば、モータ、油圧式や空気圧式の駆動部などである。
【0022】
撮像装置51は、例えば、電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)等の撮像素子と、光学系としてのレンズ部とを有する。撮像装置51は、ワーク載置部60に載置された部材を撮像して、撮像画像データを生成する。
【0023】
ナットランナ52は、ロボットハンド15の先端部に装着されたハンドツール等である。ナットランナ52は、駆動部の駆動によって該軸を中心に回転可能なソケット53を有する。ソケット53は、ナットランナ52の先端部に装着される。ソケット53は、例えば、マグネットによる磁気吸着機能(あるいは真空吸着機能)を有し、当該機能を用いてボルト40を保持する。
【0024】
ナットランナ52は、制御装置11からの制御信号に応じて、軸を中心にソケット53を回転させる。また、ナットランナ52は、ナットランナ制御部13からの制御信号に応じて、ソケット53の回転を停止させる。これにより、ソケット53の凹部がボルト40の頭部に嵌合する。
【0025】
力覚センサ54、及び変位センサ55は、ロボットハンド15の先端部に取り付けられる。力覚センサ54は、例えば、6軸成分(X軸、Y軸及びZ軸の3軸方向の力成分、X軸、Y軸及びZ軸の3軸方向のモーメント成分)を検出可能な接触覚センサである。
【0026】
力覚センサ54は、ナットランナ52のソケット53がボルト40に接触したときに、ソケット53のボルト40に対する接触状態の変化を検出する。すなわち、力覚センサ54は、ソケット53がボルト40から受ける接触力(反力)の3軸成分、及び、接触力のモーメントの3軸成分を逐次検出する。力覚センサ54は、6軸成分の検出結果を制御装置11に順次出力する。
【0027】
力覚センサ54は、モータのトルクを検出するトルクセンサであってもよい。この場合、複数のトルクセンサはモータのトルクを検出し、検出結果を制御装置11に出力する。制御装置11の検出部は、複数のトルクセンサの検出結果に基づいて、ボルト40に対するソケット53の接触力の変化を推定する。
【0028】
変位センサ55は、センサから物体までの距離を測定する。変位センサ55は、測定した位置情報に基づいて、物体がある位置から他の位置まで移動したときの移動量(変位)を測定する。本実施の形態における変位センサ55は、例えば、ボルト40のZ軸方向の移動量を測定する。
【0029】
制御装置11は、IPU(Intelligence Processing Unit)等のプロセッサとメモリとを用いて構成される。メモリは、例えば、半導体メモリであり、各種制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、一次的な作業領域を提供するRAM(Random Access Memory)を有する。制御装置11は、メモリに格納されているプログラムを読み出して各機器の動作を制御する。
【0030】
制御装置11は、ロボットハンド15に制御信号を供給することにより、ロボットハンド15を動作させる。具体的には、制御装置11は、ロボットハンド15のアクチュエータを駆動させ、アクチュエータの軸を回転させる。制御装置11は、センサの検知結果からソケット53とボルト40との接触状態や変位の時間変化を波形データとして検出する。制御装置11は、撮像装置51が生成した撮像画像データに基づいて処理を行う。
【0031】
ナットランナ制御部13は、ナットランナ52の回転を制御する。ナットランナ制御部13は、例えば、ソケット53の回転に伴いトルクアップを検知すると、制御装置11に対して締結完了信号を送信する。制御盤14は、例えば、アンプ、電源、PLC(Programmable Logic Controller)を有する。
【0032】
図3は、本実施の形態における締結装置10の処理の流れ説明するフローチャートである。図3では、ボルト40を締結することによって、バスバー30をベース部材20に組み付ける処理を例示する。ベース部材20及びバスバー30のそれぞれは締結穴を有する。締結装置10は、ベース部材20の締結穴と、バスバー30の締結穴とにボルト40を挿入し締結させる。
【0033】
以下、ベース部材20の締結穴21を下穴、バスバー30の締結穴31を上穴とも称する。なお、本実施の形態では、組付け部品としてバスバー30を例示し、被組付け部品としてベース部材20を例示するが、この例に限定されるものではない。他の部材同士を組み付ける場合についても適用可能である。バスバー30は、本実施の形態における組付け部品の一例である。本実施の形態における組付け部品は、ブラケットや、他の共締め部品等であってもよい。ブラケットは、部材同士を結合するために使用する支持具、取付け金具である。また、本実施の形態では、締結手段としてボルト40を例示するが、この例に限定されるものではない。ネジ又は他の部材であってもよい。
【0034】
ベース部材20が搬送され、ワーク載置部60に配置される。ロボットハンド15は、ワーク載置部60に配置されたベース部材20の上に、組付け対象の部品であるバスバー30を載置する(ステップS11)。制御装置11は、ロボットハンド15を制御して、バスバー30を把持させるとともに、予め指示された目標座標にバスバー30を載置させる。
【0035】
撮像装置51は、ベース部材20の上にバスバー30が載置された状態で、上部から、少なくともバスバー30の上穴31を含む領域を撮像する(ステップS12)。撮像装置51は、これにより、少なくとも上穴31を含む領域の撮像画像データを生成する。
【0036】
制御装置11は、生成された撮像画像データから上穴31の画像を検出し、撮像画像データにおける上穴31の中心位置を算出する(ステップS13)。制御装置11は、撮像画像データから上穴31の輪郭を検出する。メモリは、例えば、バスバー30における上穴31の輪郭から、中心座標までの距離(X軸の距離、Y軸の距離)の情報を記憶する。制御装置11は、検出した上穴31の輪郭の位置情報と、メモリから読み出した距離情報とに基づいて、撮像画像データにおける上穴31の中心位置を算出する。制御装置11は、算出した上穴31の中心位置を空間座標に変換して、上穴31の中心座標を算出する。
【0037】
制御装置11は、ベース部材の下穴21の少なくとも一部の画像が、撮像画像データに含まれているか否かを判定する(ステップS14)。バスバー30とベース部材20との間の位置のずれが少なく、上穴31と下穴21との間の距離が小さい場合、例えば、上穴31の内側から下穴21の一部又は全部が覗く。この場合、撮像画像データには、下穴21の少なくとも一部の画像が含まれる。
【0038】
ベース部材20の搬送過程で、様々な影響によって配置されたベース部材20の位置がずれる場合がある。または、バスバー30を載置する過程で、ベース部材20又はバスバー30の位置がずれる場合がある。このような場合、上穴31と下穴21との間の距離が大きくなることがある。バスバー30とベース部材20との間の位置ずれが大きく、上穴31と下穴21との間の距離が大きい場合、例えば、下穴21はバスバー30によって隠れる、又はバスバー30の周辺(外側)に位置する。
【0039】
下穴21がバスバー30によって覆われる場合、撮像画像データから下穴21の画像は検出されない。一方、バスバー30の周辺に下穴21が位置する場合、撮像画像データから、バスバー30の外側に下穴21の少なくとも一部の画像が検出される。
【0040】
図4は、上穴31と下穴21との位置関係を模式的に表す図である。図4(a)は、上穴31の内側から下穴21の一部が覗いている状態を表す。このような状態で上穴31を上部から撮像した場合、下穴21の少なくとも一部の画像が撮像画像データに含まれる。一方、図4(b)は、バスバー30の載置位置がずれたことにより、バスバー30によって下穴21が覆われている状態を表す。このような状態で上穴31を上部から撮像した場合、下穴21の画像は撮像画像データに含まれない。
【0041】
このように、上穴31と下穴21との位置関係に応じて、撮像画像データに下穴21の画像が含まれるか否かが異なる。図3のフローチャートに戻り、制御装置11は、生成された撮像画像データに基づいて、下穴21の中心座標を算出する。
【0042】
撮像画像データから下穴の画像が検出される場合(ステップS14のYes)、制御装置11は、撮像画像データの下穴21の画像に基づいて、下穴21の中心座標を算出する(ステップS15)。例えば、制御装置11は、撮像画像データから、下穴21の一部又は全部の輪郭を検出する。制御装置11は、撮像画像データにおける、上穴31の輪郭と下穴21の輪郭との位置関係に基づいて、下穴21の中心位置を算出する。例えば、制御装置11は、上穴31と下穴21との間の距離を取得し、上穴31の中心位置と、取得した距離とに基づいて下穴21の中心位置を算出する。制御装置11は、算出した下穴21の中心位置を空間座標に変換して、下穴21の中心座標を算出する。
【0043】
一方、撮像画像データから下穴の画像が検出されない場合(ステップS14のNo)、制御装置11は、例えば、撮像画像データから検出されるベース部材20の輪郭に基づいて、下穴21の中心座標を算出する。本実施の形態における輪郭は、例えば、ベース部材20の外側の形状やフォルムを示す。外側の輪郭をキャラクタラインとも称する。
【0044】
制御装置11は、撮像画像データから、ベース部材20の輪郭を検出する(ステップS16)。制御装置11は、例えば、パターンマッチング等の技術を利用して、輪郭を検出する。制御装置11は、撮像画像データの別の解析処理に基づいて輪郭をしてもよい。
【0045】
例えば、メモリは、ベース部材20の輪郭から、下穴21の中心座標までの距離(X軸の距離、Y軸の距離)の情報を記憶する。制御装置11は、検出した輪郭の位置情報と、メモリから読み出した距離情報に基づいて、撮像画像データにおける下穴21の中心位置を算出する。制御装置11は、算出した下穴21の中心位置を空間座標に変換して、下穴21の中心座標を算出する(ステップS17)。
【0046】
なお、制御装置11は、ベース部材20の位置ずれ量に基づいて下穴21の中心座標を算出してもよい。この場合、メモリは、例えば、ベース部材20が適切に配置されている場合の、輪郭の位置、及び下穴21の位置の情報を記憶する。制御装置11は、撮像画像データに基づいて検出された輪郭の位置と、記憶された位置とを比較することで、ベース部材20の位置ずれ量を取得する。制御装置11は、取得した位置ずれ量と、適切に配置されている場合の下穴21の位置情報に基づいて、撮像画像データにおける下穴21の中心位置を算出する。これにより、制御装置11は、空間における下穴21の中心座標を算出できる。
【0047】
バスバー30の周辺に下穴21が位置する場合、撮像画像データから下穴の画像が検出されるとして、ステップS15にしたがって下穴21の中心座標を算出することを例示した。ただし、バスバー30の周辺に下穴21が位置する場合、制御装置11は、ステップS16、S17に従って、下穴21の中心座標を算出してもよい。すなわち、制御装置11は、バスバー30によって下穴21が隠れる場合と同様して、ベース部材20の輪郭を検出することによって、下穴21の中心座標を取得してもよい。
【0048】
制御装置11は、ロボットハンド15を制御して、ボルト40を把持させ、ステップS13で算出された上穴31の中心座標に移動させる(ステップS18)。制御装置11は、ロボットハンド15を制御して、把持したボルト40を算出された上穴31の中心座標に移動させることによって上穴31に挿入させる。このように、撮像画像データに基づいて上穴31の位置を検出することで、上穴31にボルト40を高精度に高速に挿入させることができる。
【0049】
制御装置11は、矯正処理を行う(ステップS19)。制御装置11は、ロボットハンド15を制御して、バスバー30の上穴31にボルト40が挿入された状態で、バスバー30を移動させる。移動により上穴31と下穴21との位置が一致すると、ボルト40がベース部材20の下穴21に落ち、ボルト40が上穴31及び下穴21に挿入される。矯正処理の詳細について、図6のフローチャートで説明する。
【0050】
矯正処理の結果、ボルト40が下穴21に挿入されたことを検出すると、制御装置11は、ロボットハンド15を制御してボルト40を締結させる(ステップS20)。制御装置11は、ナットランナ制御部13に指示し、ソケット53を回転させることで、ボルト40を締結させる。
【0051】
図5は、矯正処理の一例を模式的に表す図である。ボルト40aは、バスバー30の上穴31に挿入された状態であって、上穴31と下穴21とが一致していない状態を示す。矯正処理によって、上穴31と下穴21とが一致するように、ボルト40aごとバスバー30が移動される。移動の結果、ボルト40bは、バスバー30の上穴31に挿入されたまま、ベース部材20の下穴21に落ちる。ボルト40bが下穴21に落ちることによって、ボルト40を締結可能な状態になったことがわかる。
【0052】
図6は、矯正処理の流れを説明するフローチャートである。制御装置11は、上穴31の中心座標と、下穴21の中心座標との間の距離が所定の閾値以内であるか否かを判定する(ステップS31)。当該距離が閾値以内である場合(ステップS31のYes)、上穴31の位置と下穴21の位置がほぼ一致していることを示し、上穴31と下穴21との位置合わせは不要であると判定される。この場合、制御装置11は、S32~S37の処理を省略する。これにより、不要な処理を省略し効率化できる。
【0053】
ステップS31における所定の閾値は、例えば、0.5mmである。ただし、この例に限定されるものではない。所定の閾値は、例えば、ボルト40の径や、部材のサイズや材質等に応じて設定されてもよい。
【0054】
一方、上穴31の中心座標と、下穴21の中心座標との間の距離が所定の閾値を超える場合(ステップS31のNo)、上穴31と下穴21の位置がずれていることを示す。したがって、制御装置11は、ロボットハンド15を制御して、ボルト40が上穴31に挿入された状態のバスバー30の移動を開始させる(ステップS32)。具体的には、制御装置11は、バスバー30を、図3のステップS15又はS17で算出した下穴21の中心座標の方向に直線移動させる。
【0055】
本実施の形態におけるロボットハンド15は、ボルトチャック機構を備える。バスバー30を把持する部位をチャックすることで、移動時にバスバー30をリジッドな状態で把持することができる。これにより、ボルト40のよれ、脱落等の事象の発生を抑制できる。また、ボルトチャック機構を備えることにより、バスバー30のように比較的軽量の部品だけでなく、重量の大きい部品についても移動可能になる。
【0056】
制御装置11は、バスバー30の移動を開始させるとともに、力覚センサ54が計測したセンサ値を取得する。制御装置11は、取得したセンサ値が閾値を超えるか否かを判定する(ステップS33)。ボルト40ごとバスバー30を移動する場合、他の部品にひっかかる等の原因により、ボルト40に大きな負荷がかかる場合がある。負荷がかかることによって、部材の重量に応じて、ボルト40やベース部材20に傷が生じたり、各部材が変形したりする可能性がある。
【0057】
したがって、制御装置11は、移動開始時に、力覚センサ54によって、ボルト40にかかる力の大きさを測定する。制御装置11は、ボルト40にかかる力が所定の閾値以上の場合(ステップS33のYes)、異常状態が発生していると判定する。そこで、制御装置11は、警告を報知して(ステップS34)、矯正処理を終了する。このように、バスバー30の移動開始時にボルト40への負荷を判定することで、異常状態の発生を早期に抑制できる。
【0058】
一方、センサ値が閾値未満の場合(ステップS33のNo)、制御装置11はバスバー30の移動を継続する。制御装置11は、バスバー30を移動させながらボルト40の下穴21への挿入状態を検出する(ステップS35)。すなわち、制御装置11は、ボルト40が下穴21に落ちたか否かを検出する。
【0059】
図7は、挿入状態の検出処理について説明する図である。本実施の形態における制御装置11は、力覚センサ54や変位センサ55のセンサ値に基づいて、下穴21にボルト40が挿入されたか否かを検出する。
【0060】
力覚センサ54は、図7の矢印Y1で表される方向の力(反力値)を測定する。移動時においてボルト40が下穴21に落ちていない状態では、ボルト40がベース部材20に接地していることにより、ベース部材20からのZ軸方向の反力は一定範囲に維持される。一方、ボルト40が下穴21に落ちた場合、当該反力値が低下する。制御装置11は、力覚センサ54からZ軸方向の反力値を取得し、反力値が所定の閾値を超えた場合に、Z軸方向にボルト40にかかる力が変化したことを検知する。または、制御装置11は、反力値の変化量が所定の閾値を超えた場合に、Z軸方向にボルト40にかかる力が変化したことを検知してもよい。これにより、制御装置11は、ボルト40が下穴21に落ちたこと、すなわち、ボルト40が下穴21に挿入されたことを検出する。
【0061】
変位センサ55は、例えば、図7の矢印Y2で表されるZ軸方向の変位を測定する。移動時においてボルト40が下穴21に落ちていない状態では、ボルト40のZ軸方向の位置は大きく変化しない。一方、ボルト40が下穴21に落ちた場合、位置が大きく変化することに伴い変位量が一時的に増加する。制御装置11は、変位量が所定の閾値を超えた場合に、ボルト40の位置が急速に変化したことを検知する。または、制御装置11は、変位量の変化度合いが所定の閾値を超えた場合に、ボルト40の位置が急速に変化したことを検知してもよい。これにより、制御装置11は、ボルト40が下穴21に落ちたこと、すなわち、ボルト40が下穴21に挿入されたことを検出する。
【0062】
このように、力覚センサ54、変位センサ55等のセンサ値を用いて、挿入状態を検出することで、ボルト40が適切に挿入されているか否かを高精度に検出できる。これにより、ボルト40の挿入状態が適切ではない状態や不十分な状態で締結処理が実行され、部材が傷ついたり破損したりする事態を回避できる。本実施の形態では、ボルト40ごとバスバー30を移動することにより、移動時に、ボルト40の傾きやよれが生じることがある。そこで、力覚センサ54のセンサ値に基づく検出処理と、変位センサ55のセンサ値に基づく検出処理とを組み合わせる。これにより、ボルト40ごとバスバー30を移動する場合において、ボルト40の挿入状態を高精度に検出できる。
【0063】
なお、本実施の形態では、制御装置11は、力覚センサ54及び変位センサ55が測定したセンサ値に基づいて、検出処理を行う場合を例示する。しかしながら、この例に限定されるものではない。制御装置11は、力覚センサ54、変位センサ55のいずれか一方が測定したセンサ値に基づいて、検出処理を行ってもよい。もしくは、検出装置は、ボルト40の締結時のトルク値に基づいてボルト40の挿入されたことを判定してもよい。
【0064】
ボルト40が下穴21に挿入されたことが検出された場合(ステップS36のYes)、制御装置11は矯正処理を終了する。一方、算出された下穴21の中心座標の方向に直線移動してもボルト40が下穴21に挿入されたことが検出されない場合(ステップS36のNo)、制御装置11は、別の方法に従って位置合わせを行う(ステップS37)。制御装置11は、周辺範囲から下穴21の位置を探索しながら、上穴31と下穴21とを位置合わせすることで矯正処理を行う。
【0065】
撮像画像データに基づいて算出された下穴21の位置に従って矯正処理を行ってもボルト40が落ちない場合、例えば、次のような状況が想定される。バスバー30の移動に連動してベース部材20が位置ずれしてしまった場合や、ベース部材20自体が傾いて配置された場合である。これらの場合、撮像画像データから算出した下穴21の位置座標は、適切ではない場合がある。または、製造誤差により、ベース部材20における下穴21の位置がそもそもずれている場合がある。このような場合、制御装置11は、別の方法に切り替えることによって、下穴21の位置を探索する。
【0066】
例えば、制御装置11は、ロボットハンド15を制御して、ボルト40が挿入された状態のバスバー30を、移動方向を変えながら往復動させる。具体的には、制御装置11は、ロボットハンド15を制御して、現在のボルト40の位置を中心として移動方向を変更させながら、バスバー30を往復動させる。すなわち、制御装置11は、全方位を対象として、周辺範囲から下穴21の位置を探索する。このような探索を行うことで、下穴21の位置が不明な場合であっても下穴21の位置を検出できる。
【0067】
このように、本実施の形態における制御装置11は、撮像画像データに基づいて下穴21の位置を算出した場合であっても、挿入状態が検出されない場合、別の方法によって位置合わせを行う。このように、複数の異なる下穴21の手法を組み合わせることによって、矯正処理の成功率を上げることができる。
【0068】
制御装置11は、ステップS37の工程にしたがって、ボルト40が下穴21に挿入されたことが検出された場合(ステップS36のYes)、制御装置11は矯正処理を終了する。一方、別の探索方法にしたがってもボルト40が下穴21に挿入されたことが検出されない場合、制御装置11は、警告を報知して矯正処理を終了する。
【0069】
図8は、矯正処理の一例を模式的に表す図である。図8は、上穴31の内側から下穴21の一部が覗いておらず、下穴21がバスバー30によって覆われている場合を例示する。
【0070】
図8(a)によると、ベース部材20の下穴21がバスバー30によって覆われているため、撮像画像データから下穴21の画像が検出されない。撮像画像データに上穴31が画像は含まれるため、制御装置11は、撮像画像データに基づいて、上穴31の中心座標を算出する。また、制御装置11は、撮像画像データからベース部材20の輪郭を検出し、輪郭と下穴21との距離情報とに基づいて下穴21の中心座標を算出する。
【0071】
制御装置11は、ロボットハンド15を制御して、ボルト40を算出した上穴31の中心座標に移動させる。これにより、図8(b)に示すように、バスバー30の上穴31にボルト40が挿入される。制御装置11は、上穴31にボルト40が挿入された状態のバスバー30を、算出した下穴21の中心座標の方向(Y3)に直線移動させる。
【0072】
この結果、図8(c)のように、XY平面上の下穴21の位置にボルト40が移動する。上穴31と下穴21のXY平面上の位置が重なることにより、図8(d)のようにボルト40が下穴21に落ちる。これにより、ボルト40が上穴31及び下穴21に挿入された状態となる。この状態でボルト40が締結されることで、バスバー30がベース部材20に組付けられる。
【0073】
以上のように、本実施形態の締結装置10は、撮像手段51と、制御手段11とを備える。撮像手段は、第一締結穴(上穴)を有する組付け部品(例えば、バスバー)が、第二締結穴(下穴)を有する被組付け部品(例えば、ベース部材)の上部に載置された状態で、少なくとも第一締結穴を含む領域を撮像する。制御手段は、撮像画像に基づいて、第一締結穴の第一位置、及び第二締結穴の第二位置を算出する。制御手段は、ロボットを制御して、第一位置に基づいて締結手段を第一締結穴に移動し挿入させるとともに、当該締結手段が第一締結穴に挿入された状態の組付け部品を第二位置の方向に移動させる。制御手段は、締結手段(例えば、ボルト)が第二締結穴へ挿入されたことの検出に応じてロボットを制御して締結手段を締結させる。上述したとおり、バスバーは本実施の形態における組付け部品の一例であり、ベース部材は、本実施の形態における被組付け部品の一例である。同様にして、ボルトは、本実施の形態における締結手段の一例である。
【0074】
このように、締結装置10は、バスバー30がベース部材20の上に載置された状態で、少なくとも上穴31の含む領域を撮像する。これにより、一度の撮像によって取得された撮像画像データに基づいて、上穴31と下穴21との位置関係を検出できる。撮像画像データにおける位置関係に基づくことにより、上穴31及び下穴21を高精度に算出できる。したがって、算出した上穴31及び下穴21の位置情報に基づいて、バスバー30の上穴31へのボルト40の挿入を実現きるとともに、ボルト40を上穴31に挿入させた状態でバスバー30を、下穴21の位置方向に直線移動できる。これにより、下穴21の周辺範囲からの探索処理も不要になる。このように、上穴31と下穴21との位置合わせを、少ない工程で、高精度に、高速に実現できる。したがって、締結処理を自動化するとともに、締結処理にかかる時間を短縮できる。
【0075】
また、本実施の形態における制御手段は、撮像画像が第二締結穴の少なくとも一部の画像を含む場合、撮像画像の第二締結穴の画像に基づいて第二締結穴の第二位置を算出する。このように、バスバー30がベース部材20の上に載置された状態で、少なくとも上穴31の含む領域を撮像することで、撮像画像データに上穴31の画像と下穴の画像の少なくとも一部とが含まれる場合、上穴31と下穴21との位置を検出できる。これにより、一度の撮像によって、上穴31及び下穴21それぞれの位置を算出できる。
【0076】
また、本実施の形態における締結装置は、被組付け部品の輪郭から第二締結穴までの距離を示す距離情報を記憶する記憶手段を備える。制御手段は、撮像画像が第二締結穴の少なくとも一部の画像を含んでいない場合、撮像画像における被組付け部品の輪郭の位置と、距離情報とに基づいて第二位置を算出する。これにより、バスバー30によって下穴21が隠れている場合であっても、撮像画像データに基づいて、下穴21の位置を算出できる。このように、上穴31と下穴21の位置がずれている場合であっても、一度の撮像によって、上穴31の位置に加えて下穴21の位置を算出できる。
【0077】
また、本実施の形態における締結装置は、締結手段にかかる力を計測する力覚センサをさらに備える。制御手段は、締結手段が第一締結穴に挿入された状態の組付け部品を第二位置の方向に移動させる時に、力覚センサによるセンサ値が第一閾値を超える場合、移動を停止させる。これにより、バスバー30を上穴31にボルト40が挿入された状態で移動させる場合において、異常状態の発生を早期に検知できる。これにより、締結処理の自動化を促進する場合に、ボルト40の変形や傷の発生を抑制できる。
【0078】
また、本実施の形態における締結装置は、締結手段にかかる力を計測する力覚センサ、締結手段の移動量を計測する変位センサの少なくともいずれかのセンサを備える。制御手段は、センサによるセンサ値又はセンサ値の変化量が第二閾値を超える場合に、締結手段が第二締結穴へ挿入されたことを検出する。これにより、下穴21にボルト40が挿入されたか否かを高精度に検出できる。このため、ボルト40の挿入状態が適切ではない状態や不十分な状態で締結処理が実行され、部材が傷ついたり破損したりする事態を回避できる。したがって、締結処理の自動化を促進するとともに、高精度に締結処理を実現することができる。
【0079】
また、本実施の形態における制御手段は、締結手段が第一締結穴に挿入された状態の組付け部品を第二位置の方向に移動後に、締結手段が第二締結穴へ挿入されたことが検出されない場合、ロボットを制御して、締結手段が第一締結穴に挿入された状態の組付け部品を、移動方向を変更させながら往復動させる。このように、撮像画像データに基づいて算出した下穴21の位置に移動させた場合であってもボルト40を挿入できない場合、別の探索方法に切り替えることができる。このように、複数の異なる下穴21の探索手法を組み合わせることによって、矯正処理の成功率を上げることができる。
【0080】
また、本実施の形態における制御手段は、算出した第一位置と第二位置との距離が所定値未満である場合に、次の処理を行う。すなわち、制御手段は、第一位置に基づいて締結手段を第一締結穴に移動し挿入させるとともに、締結手段が第一締結穴に挿入された状態の組付け部品を第二位置の方向に移動させることなく締結手段を締結させる。これにより、上穴31と下穴21の位置合わせが不要な場合に、不要な工程を省略することができ、処理を効率化できる。
【0081】
(変形例)
上述した実施形態では、バスバー30の単一の締結穴についてボルト40で締結する場合を例示したが、複数の締結穴について締結する場合にも適用できる。例えば、バスバー30は複数の締結穴を有する。例えば、一部の締結穴をボルト40で締結すると、ベース部材20にバスバー30が固定される。固定されることで、他の締結穴の矯正処理を行う場合に、バスバー30を移動できない場合がある。
【0082】
したがって、バスバー30が複数の締結穴を有する場合、制御装置11は、先に締結される対象の締結穴については、仮締めの状態(浮き状態)に制御してもよい。仮締めの状態は、例えば、締結度合いを緩くした状態を示す。制御装置11は、複数の締結穴について仮締めが完了した後に、各締結穴のボルト40の締結度合いを強めてもよい。これにより、組付け部品が複数の締結穴を有する場合においても、締結処理の自動化を推進することができる。
【0083】
なお、上述した実施形態では、撮像画像データに基づいて算出した下穴21の位置に基づいて上穴31と下穴21とを位置合わせできない場合、別の探索処理(ステップS37)を行うことを例示した。バスバー30が複数の締結穴を有する場合については、次のように処理を行ってもよい。例えば、制御装置11は、複数の締結穴のうち、二番目以降に締結対象となる締結穴の矯正処理において、挿入状態が検出されない場合(S36のNo)、警告を報知して締結処理を終了してもよい。これにより、矯正処理における異常を早期に検知でき、処理を効率化できる。
【0084】
また、バスバー30が複数の締結穴を有する場合に加えて、単一のベース部材20(被組付け部品)に複数の部材(組付け部品)が組付けられる場合もある。このような場合についても、複数の部材のうち一部の部材がベース部材20に固定されることで、他の部材の矯正処理において移動できない場合がある。このような場合についても、制御装置11は、複数の部材それぞれの締結穴を仮締め状態に制御してもよい。制御装置11は、複数の部材それぞれの締結穴の仮締めが完了した後に、各部材の締結穴の締結度合いを強めてもよい。
【0085】
なお、制御装置11は、複数の締結穴について、締結する順番を決定してもよい。制御装置11は、予め決定された締結順序にしたがって、締結処理を行う。この時、制御装置11は、最後に締結される締結穴がボルト40で締結されるまで、他の締結穴については、仮締め状態になるように締結される。制御装置11は、最後の締結穴が締結された後に、他の締結穴について、仮締め状態から本締め状態に制御する。
【0086】
このように、変形例における組付け部品は、複数の第一締結穴を有する。複数の第一締結穴のうち、一部の第一締結穴は、他の第一締結穴よりも後に締結処理が行われる。このような場合、制御手段は、他の第一締結穴の締結手段の締結状態を緩めた状態で、締結手段が一部の第一締結穴に挿入された状態の組付け部品を第二位置の方向に移動させる。これにより、バスバー30が複数の締結穴を有する場合であっても、複数の上穴31それぞれについて、バスバー30を移動させることができる。したがって、バスバー30が複数の締結穴を有する場合においても、締結処理の自動化処理を促進できる。
【0087】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0088】
10…締結装置、11…制御装置、13…ナットランナ制御部、14…制御盤、15…ロボットハンド、20…ベース部材、21…締結穴(下穴)、30…バスバー、31…締結穴(上穴)、40…ボルト、51…撮像装置、52…ナットランナ、53…ソケット、54…力覚センサ、55…変位センサ、60…ワーク載置部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8