(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144962
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20241004BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F02M21/02 M
F02M21/02 L
F17C13/00 302A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057160
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】金子 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康二
(72)【発明者】
【氏名】宇野 忍
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB11
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB10
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD03
3E172EB02
3E172EB19
3E172EB20
3E172HA08
3E172JA01
3E172JA03
3E172JA05
3E172JA08
3E172KA22
(57)【要約】
【課題】ボイルオフガスの大気への排出を抑制する。
【解決手段】車両に搭載された貯蔵システムSは、車両のエンジンの燃料である液化天然ガスを貯蔵する第1容器1と、エンジンの燃料である圧縮天然ガスを貯蔵する第2容器2と、第1容器1と第2容器2とを接続し、第1容器1内の液化天然ガスが気化したボイルオフガスが流れる第1管路41と、第1管路41に設けられ、ボイルオフガスを圧縮して第2容器2に供給するコンプレッサ3と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された貯蔵システムであって、
前記車両のエンジンの燃料である液化天然ガスを貯蔵する第1容器と、
前記エンジンの燃料である圧縮天然ガスを貯蔵する第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器とを接続し、前記第1容器内の前記液化天然ガスが気化したボイルオフガスが流れる第1管路と、
前記第1管路に設けられ、前記ボイルオフガスを圧縮して前記第2容器に供給するコンプレッサと、
を有する貯蔵システム。
【請求項2】
前記エンジンの停止中に前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が第1所定値以上になった場合に前記コンプレッサを動作させて前記第2容器に圧縮した前記ボイルオフガスを供給する供給部を有する、
請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項3】
前記供給部は、前記コンプレッサを動作させた後、前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が前記第1所定値よりも低い第2所定値未満になった場合、前記コンプレッサを停止させる、
請求項2に記載の貯蔵システム。
【請求項4】
前記エンジンと前記第2容器とを接続する第2管路と、
前記第2管路に設けられた制御弁と、
前記制御弁を開くことで前記第2容器内の前記圧縮天然ガス及び前記ボイルオフガスの混合ガスを前記エンジンに供給する供給部と、を有する、
請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項5】
前記第1管路の前記コンプレッサと前記第1容器との間に設けられて、前記第1容器から前記コンプレッサに向かう前記ボイルオフガスを通過させ、前記コンプレッサから前記第1容器に向かう前記ボイルオフガスを遮断する第1逆止弁を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項6】
前記第1管路の前記コンプレッサと前記第2容器との間に設けられて、前記コンプレッサから前記第2容器に向かう前記ボイルオフガスを通過させ、前記第2容器から前記コンプレッサに向かう前記ボイルオフガス及び前記圧縮天然ガスを遮断する第2逆止弁を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスを貯蔵する貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスを燃焼して走行する車両が知られている。特許文献1には、液化天然ガスを貯蔵する容器を備えた車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器内の液化天然ガスが大気の熱等により蒸発してボイルオフガス(Boil Off Gas)が発生する。従来の技術では、ボイルオフガスが発生して容器の内圧が高くなると、ボイルオフガスを大気中に排出していた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ボイルオフガスの大気への排出を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、車両に搭載された貯蔵システムであって、前記車両のエンジンの燃料である液化天然ガスを貯蔵する第1容器と、前記エンジンの燃料である圧縮天然ガスを貯蔵する第2容器と、前記第1容器と前記第2容器とを接続し、前記第1容器内の前記液化天然ガスが気化したボイルオフガスが流れる第1管路と、前記第1管路に設けられ、前記ボイルオフガスを圧縮して前記第2容器に供給するコンプレッサと、を有する貯蔵システムを提供する。
【0007】
前記エンジンの停止中に前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が第1所定値以上になった場合に前記コンプレッサを動作させて前記第2容器に圧縮した前記ボイルオフガスを供給する供給部を有してもよい。
【0008】
前記供給部は、前記コンプレッサを動作させた後、前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が前記第1所定値よりも低い第2所定値未満になった場合、前記コンプレッサを停止させてもよい。
【0009】
前記貯蔵システムは、前記エンジンと前記第2容器とを接続する第2管路と、前記第2管路に設けられた制御弁と、前記制御弁を開くことで前記第2容器内の前記圧縮天然ガス及び前記ボイルオフガスの混合ガスを前記エンジンに供給する供給部と、を有してもよい。
【0010】
前記第1管路の前記コンプレッサと前記第1容器との間に設けられて、前記第1容器から前記コンプレッサに向かう前記ボイルオフガスを通過させ、前記コンプレッサから前記第1容器に向かう前記ボイルオフガスを遮断する第1逆止弁を有してもよい。
【0011】
前記第1管路の前記コンプレッサと前記第2容器との間に設けられて、前記コンプレッサから前記第2容器に向かう前記ボイルオフガスを通過させ、前記第2容器から前記コンプレッサに向かう前記ボイルオフガス及び前記圧縮天然ガスを遮断する第2逆止弁を有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボイルオフガスの大気への排出を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】貯蔵システムの構成を説明するための図である。
【
図2】供給制御装置の構成を説明するための図である。
【
図3】車両が停止中の圧力の時間変化を説明するための図である。
【
図4】ボイルオフガスを貯蔵する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[貯蔵システムSの構成]
図1は、貯蔵システムSの構成を説明するための図である。
図2は、供給制御装置9の構成を説明するための図である。貯蔵システムSは、車両に搭載されている。貯蔵システムSは、車両のエンジン5の燃料である天然ガスを貯蔵するためのシステムである。貯蔵システムSは、第1容器1、第2容器2、コンプレッサ3、第1管路41、第2管路42、第3管路43、第4管路44、第5管路45、第1弁71、第2弁72、第3弁73、レギュレータ74、レギュレータ75、安全弁76、第1逆止弁77、第2逆止弁78、充填口81、熱交換器82、ベントスタック83、充填口84及び供給制御装置9を含む。以下、
図1及び
図2を用いて、貯蔵システムSの構成を説明する。
【0015】
第1容器1は、天然ガスを液化した液化天然ガス(LNG)を貯蔵する。液化天然ガスは、天然ガスが液体状態を維持可能な温度(例えば天然ガスが液化するマイナス162度以下)で第1容器1に貯蔵されている。第1容器1は、例えば円筒形状であるが、これに限らない。第1容器1の内側には断熱材が設けられている。第1容器1の容量は、例えば300リットルであるが、これに限定するものではない。第1容器1には、液化天然ガスを第1容器1に充填するための充填口81が接続されている。
【0016】
第1容器1と車両のエンジン5とは、第3管路43で接続されている。第1容器1とエンジン5の間には、液化天然ガスを気化させる熱交換器82が設けられている。熱交換器82には、エンジン5の冷却材が循環する配管が設けられている。熱交換器82は、エンジン5の冷却水の熱を利用して液化天然ガスを気化させる。熱交換器82とエンジン5の間には、熱交換器82を通過した天然ガスの圧力をエンジン5で噴射できる圧力に調整するレギュレータ75が設けられている。噴射できる圧力は、例えば5気圧である。第3弁73は、レギュレータ75とエンジン5の間に設けられて、第3管路43を流れてエンジン5に向かう天然ガスを通過させるか、遮断させるか否かを切り替える弁である。
【0017】
ところで、第1容器の内側には断熱材が設けられているが、断熱材があっても第1容器内には大気の熱が流入してしまう。第1容器1内に大気の熱が流入すると液化天然ガスの温度が上昇することにより液化天然ガスが気化して、メタンを主成分とするボイルオフガスが発生する。ボイルオフガスが発生すると第1容器1の内圧は上昇する。第1容器1の内圧が上昇して第1容器1が耐えられる圧力を超えるまえに、ボイルオフガスを第1容器1から排出して第1容器1の内圧を下げる必要がある。
【0018】
第1容器1には、ボイルオフガスを大気に排出するための第4管路44、安全弁76及びベントスタック83が接続されている。安全弁76は、第1容器1の圧力が閾値以上になった場合に自動的に開弁してボイルオフガスを排出させ、第1容器1の圧力が降下して閾値未満になった場合に自動的に閉弁する。安全弁76から排出されたボイルオフガスは、ベントスタック83から大気へ排出される。
【0019】
しかしながら、ボイルオフガスの主成分であるメタンは、温室効果が高く、可燃性があるため、大気へ排出するのは望ましくない。そこで、実施の形態に係る貯蔵システムSは、第1容器1で発生したボイルオフガスをコンプレッサ3で圧縮して第2容器2に貯蔵し、大気への排出を抑制している。
【0020】
第2容器2は、エンジン5の燃料である圧縮天然ガスを貯蔵する。第2容器2は、耐圧容器である。例えば、第2容器2の両端は半球形状であり、第2容器2の両端を除く部分は円筒形状であるが、これに限定するものではない。第2容器2の容量は、例えば180リットルである。第2容器2は、複数設けられていてもよい。
【0021】
第2容器2とエンジン5は、第2管路42で接続されている。第2容器2とエンジン5の間には、レギュレータ74が設けられている。レギュレータ74は、通過した天然ガスの圧力をエンジン5で噴射できる圧力に調整する。噴射できる圧力は、例えば5気圧である。レギュレータ74とエンジン5の間には、第2弁72が設けられている。第2弁72は、第2管路42を流れてエンジン5に向かう天然ガスを通過させるか、遮断させるか否かを切り替える弁である。
【0022】
第2容器2には、圧縮天然ガスを第2容器2に充填するための充填口84が接続されている。具体的には、第2容器2と充填口84は、第5管路45で接続されている。第5管路45は、第2管路42に接続されている。具体的には、第5管路45は、第1弁71とレギュレータ74の間の第2管路42に接続されている。なお、第5管路45は、第2容器2に直接接続されていてもよい。
【0023】
第1容器1と第2容器2とは第1管路41で接続されている。第1管路41は、第4管路44から分岐して、第5管路45に合流している。なお、第1管路41は、これに限らず、第1弁71とレギュレータ74の間の第2管路42に合流していてもよい。第1管路41には、第1容器1内の液化天然ガスが気化したボイルオフガスが流れる。第1管路41には、コンプレッサ3が設けられている。
【0024】
コンプレッサ3は、ボイルオフガスを圧縮して第2容器2に供給する。具体的には、コンプレッサ3は、第1管路41及び第4管路44を流れているボイルオフガスを吸い込んで第2容器2に供給する。より具体的には、コンプレッサ3は、第1管路41及び第4管路44を流れているボイルオフガスを吸い込むことで第1容器1から吸い出したボイルオフガスを圧縮して第2容器2に供給する。コンプレッサ3は、ボイルオフガスを20MPa(メガパスカル)まで圧縮することができる。なお、コンプレッサ3は、20MPa以上に圧縮してもよく、20MPa未満であってもよい。コンプレッサ3は、例えば遠心圧縮機であるが、これに限定するものではない。
【0025】
第2容器2とレギュレータ74の間には、第1弁71が設けられている。第1弁71は、第2容器2からエンジン5に向かう天然ガスを通過させるか、遮断させるか否かを切り替える制御弁である。具体的には、第1弁71は、充填口84から充填された圧縮天然ガス及びコンプレッサ3から供給されたボイルオフガスを通過させ、第2容器2から第2管路42に向かう圧縮天然ガス及びボイルオフガスの混合ガスを遮断する。また、第1弁71は、供給部922の制御により開弁して、第2容器2から第2管路42に向かう混合ガスを通過させる。なお、第1弁71は、容器の取り外し時や、配管破損によるガス漏れなどの緊急時にガス流出を防止する安全装置として設けられるものである。
【0026】
第1管路41の第1容器1とコンプレッサ3の間には、第1逆止弁77が設けられている。第1逆止弁77は、第1容器1からコンプレッサ3に向かうボイルオフガスを通過させ、コンプレッサ3から第1容器1に向かうボイルオフガスを遮断する。第1逆止弁77は、例えばディスク式逆止弁であるが、これに限らず、ポペット式逆止弁、スイング式逆止弁、又は他の方式の逆止弁であってもよい。
【0027】
コンプレッサ3と第2容器2との間には、第2逆止弁78が設けられている。第2逆止弁78は、コンプレッサ3から第2容器2に向かうボイルオフガスを通過させ、第2容器2からコンプレッサ3に向かうボイルオフガス及び圧縮天然ガスを遮断する。第2逆止弁78は、第1逆止弁77と同じ方式の逆止弁であっても、異なる方式の逆止弁であってもよい。
【0028】
供給制御装置9は、第1弁71、第2弁72及び第3弁73の開閉と、コンプレッサ3の動作とを制御する。供給制御装置9は、記憶部91及び制御部92を有する。記憶部91は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部91は、制御部92が実行するプログラムを記憶する。
【0029】
制御部92は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部92は、記憶部91に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部921及び供給部922としての機能を実現する。
【0030】
取得部921は、第1容器1内のボイルオフガスの第1圧力を取得する。例えば、取得部921は、第1容器1内に設けられた圧力センサから第1圧力を取得する。また、第1容器1内のボイルオフガスの圧力と第1管路41を流れるボイルオフガスの圧力は略一致しているので、取得部921は、第1管路41に設けられた圧力センサから第1管路41を流れるボイルオフガスの圧力を第1圧力として取得してもよい。
【0031】
供給部922は、コンプレッサ3が圧縮したボイルオフガスを第2容器2に供給する。具体的には、供給部922は、車両のエンジン5が停止中に第1容器1内のボイルオフガスの第1圧力が第1所定値以上になった場合にコンプレッサ3を動作させて第2容器2に圧縮したボイルオフガスを供給する。これにより、供給部922は、第1容器1で発生したボイルオフガスを大気へ排出することなく第2容器2に貯蔵できる。
【0032】
エンジン5の動作中にはボイルオフガスが発生しても燃料としてエンジン5で消費されるので第1容器1の第1圧力は上昇し難いが、エンジン5の停止中にはボイルオフガスが燃料として消費されないので第1容器1の第1圧力は上昇しやすい。そこで、供給部922は、車両のエンジン5が停止中に第1容器1内のボイルオフガスの第1圧力が第1所定値以上になった場合にコンプレッサ3を動作させて第2容器2に圧縮したボイルオフガスを供給する。これにより、供給部922は、エンジン5が停止していてボイルオフガスが燃料として消費されない場合でも、第1容器1で発生したボイルオフガスを大気へ排出することなく第2容器2に貯蔵できる。
【0033】
供給部922は、コンプレッサ3を動作させた後、第1圧力が所定値未満になったらコンプレッサ3を停止させる。具体的には、供給部922は、第1圧力が第1所定値よりも低い第2所定値未満になった場合、コンプレッサ3を停止させて第2容器2へのボイルオフガスの供給を停止する。
【0034】
図3は、車両が停止中の圧力の時間変化を説明するための図である。
図3の横軸は時刻を示し、縦軸は圧力を示す。車両のエンジン5は、時刻T0で停止した。エンジン5の停止後、第1容器1内の液化天然ガスが気化してボイルオフガスが発生する。そして、第1容器1内のボイルオフガスの第1圧力P1は、時間が経過するほど高くなり、時刻T1で第1所定値K1以上になった。
【0035】
供給部922は、第1圧力P1が第1所定値K1以上になった時刻T1でコンプレッサ3を動作させて圧縮されたボイルオフガスの第2容器2への供給を開始する。ボイルオフガスが供給されると第2容器2内のボイルオフガスの第2圧力P2は高くなる。一方、第1圧力P1は、第1容器1内のボイルオフガスが減少するため低くなる。
【0036】
第1圧力P1は、時刻T2で第1所定値K1よりも低い第2所定値K2以下になった。供給部922は、第1圧力P1が第2所定値K2以下になった時刻T2でコンプレッサ3の動作を停止させる。第2圧力P2は、コンプレッサ3が停止するとボイルオフガスが供給されなくなるので変化しなくなり、一定の値で推移する。一方、第1圧力P1は、ボイルオフガスが発生するため、再び高くなる。
【0037】
供給部922は、第1圧力P1が再び第1所定値K1以上になった場合(時刻T3)にコンプレッサ3を動作させ、第2所定値K2以下になった場合(時刻T4)にコンプレッサ3を停止させる。供給部922は、車両が停止している間、上記の処理を繰り返す。このように、供給部922は、第1容器1内で発生したボイルオフガスを第2容器2に貯蔵するのでボイルオフガスの大気への排出を抑制できる。
【0038】
なお、供給部922は、第2圧力P2が第2容器2の圧力許容値以下である間、コンプレッサ3を動作させて第2容器2にボイルオフガスを供給し、第2圧力P2が第2容器2の圧力許容値よりも大きい場合、第1圧力P1が第1所定値K1以上であってもコンプレッサ3を動作させない。これにより、供給部922は、第2容器2の許容量を超えたボイルオフガスを第2容器2に供給してしまうことを抑制できる。第2圧力P2が第2容器2の圧力許容値よりも大きい場合に第1圧力P1が第1所定値K1以上になったら、第1容器1内のボイルオフガスは、第2容器2に貯蔵されずにベントスタック83から大気へ排出される。
【0039】
ところで、ボイルオフガスはほぼメタンで構成されており、圧縮天然ガスは、メタンに加えてブタン、エタン及びプロパンが含まれているので、ボイルオフガスのみの燃焼カロリーは、圧縮天然ガスの燃焼カロリーと異なる。そのため、ボイルオフガスのみをエンジン5で適切に燃焼させるためには、ボイルオフガスの噴射量を圧縮天然ガスの噴射量と異ならせる必要があり、制御が複雑になってしまう。
【0040】
そこで、供給部922は、ボイルオフガスを第2容器2に供給することで、圧縮天然ガスとボイルオフガスを第2容器2内で混合させる。第2容器2には、第1容器1で発生するボイルオフガスよりも多量の圧縮天然ガスが貯蔵されているので、第1容器1で生じたボイルオフガスを第2容器2に供給しても第2容器2内の気体の成分比率が変化しにくい。そのため、第2容器2内の混合ガスの燃焼カロリーは、略一定に保たれる。そして、供給部922は、第2容器2内で混合された混合ガスをエンジン5に供給する。具体的には、供給部922は、第1弁71及び第2弁72を開いて第2容器2内の混合ガスをエンジン5に供給する。供給部922は、混合ガスをエンジン5に供給することで燃料の噴射量を異ならせることを抑制できるので、燃料の噴射制御を簡単にできる。
【0041】
[供給制御装置9が実行するボイルオフガスを貯蔵する処理]
図4は、ボイルオフガスを貯蔵する処理の一例を示すフローチャートである。ボイルオフガスを貯蔵する処理は、貯蔵システムSが搭載された車両のエンジン5が停止中に繰り返し実行される。
【0042】
取得部921は、第1容器1内のボイルオフガスの第1圧力P1を取得する(ステップS1)。具体的には、取得部921は、第1容器1から安全弁76の間に設けられている圧力センサからボイルオフガスの第1圧力を取得する。
【0043】
供給部922は、取得された第1圧力P1が第1所定値K1以上か否かを判定する(ステップS2)。供給部922は、第1圧力P1が第1所定値K1未満である場合(ステップS2でNo)、ステップS1に戻り、第1圧力P1が第1所定値K1以上になるまで待機する。
【0044】
供給部922は、第1圧力P1が第1所定値K1以上である場合(ステップS2でYes)、コンプレッサ3を動作させる(ステップS3)。具体的には、供給部922は、コンプレッサ3を動作させて圧縮されたボイルオフガスを第2容器2に供給する。
【0045】
取得部921は、コンプレッサ3の動作後の第1圧力P1を取得する(ステップS4)。供給部922は、コンプレッサ3の動作後に取得された第1圧力P1が第2所定値K2以下であるか否かを判定する(ステップS5)。供給部922は、第1圧力P1が第2所定値K2よりも大きい場合(ステップS5でNo)、第1圧力P1が第2所定値K2以下になるまでコンプレッサ3を動作させ続ける。
【0046】
供給部922は、第1圧力P1が第2所定値K2以下である場合(ステップS5でYes)、コンプレッサ3を停止させる(ステップS6)。具体的には、供給部922は、コンプレッサ3を停止させてボイルオフガスの第2容器2への供給を停止させる。そして、供給部922は、コンプレッサ3を停止させた後に取得された第1圧力P1が第1所定値K1以上になるまで待機し、第1圧力P1が第1所定値K1以上になったら、再度コンプレッサ3を動作させる。
【0047】
[貯蔵システムSの効果]
貯蔵システムSは、第1容器1に貯蔵された液化天然ガスが気化したボイルオフガスを圧縮して第2容器2に貯蔵するので、ボイルオフガスの大気へ排出を抑制できる。また、第2容器2には、第1容器1で発生するボイルオフガスよりも多量の圧縮天然ガスが貯蔵されているので、第2容器2にボイルオフガスが第2容器2に供給されても第2容器2内の気体の成分比率は変化しにくい。そのため、第2容器2からボイルオフガスと圧縮天然ガスの混合ガスが供給されても、エンジン5の気筒内での燃焼カロリーが略一定に保たれる。つまり、供給部922は、混合ガスをエンジン5に供給することで燃料の噴射量を補正することを抑制できるので、燃料の噴射制御を簡単できる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0049】
S 貯蔵システム
1 第1容器
2 第2容器
3 コンプレッサ
41 第1管路
42 第2管路
43 第3管路
44 第4管路
45 第5管路
5 エンジン
71 第1弁
72 第2弁
73 第3弁
74 レギュレータ
75 レギュレータ
77 第1逆止弁
78 第2逆止弁
81 充填口
82 熱交換器
83 ベントスタック
84 充填口
9 供給制御装置
91 記憶部
92 制御部
921 取得部
922 供給部
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された貯蔵システムであって、
前記車両のエンジンの燃料である液化天然ガスを貯蔵する第1容器と、
前記エンジンの燃料である圧縮天然ガスを貯蔵する第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器とを接続し、前記第1容器内の前記液化天然ガスが気化したボイルオフガスが流れる第1管路と、
前記第1管路に設けられ、前記ボイルオフガスを圧縮して前記第2容器に供給するコンプレッサと、
前記エンジンの停止中に前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が第1所定値以上であり、かつ前記第2容器内のボイルガスの圧力が圧力許容値以下である場合に前記コンプレッサを動作させて前記第2容器に圧縮した前記ボイルオフガスを供給し、前記ボイルオフガスの圧力が前記第1所定値以上であり、かつ前記第2容器内のボイルガスの圧力が前記圧力許容値よりも大きい場合、前記コンプレッサを動作させない供給部と、
を有する貯蔵システム。
【請求項2】
前記供給部は、前記コンプレッサを動作させた後、前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が前記第1所定値よりも低い第2所定値未満になった場合、前記コンプレッサを停止させる、
請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項3】
前記エンジンと前記第2容器とを接続する第2管路と、
前記第2管路に設けられた制御弁と、
前記制御弁を開くことで前記第2容器内の前記圧縮天然ガス及び前記ボイルオフガスの混合ガスを前記エンジンに供給する供給部と、を有する、
請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項4】
前記第1管路の前記コンプレッサと前記第1容器との間に設けられて、前記第1容器から前記コンプレッサに向かう前記ボイルオフガスを通過させ、前記コンプレッサから前記第1容器に向かう前記ボイルオフガスを遮断する第1逆止弁を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項5】
前記第1管路の前記コンプレッサと前記第2容器との間に設けられて、前記コンプレッサから前記第2容器に向かう前記ボイルオフガスを通過させ、前記第2容器から前記コンプレッサに向かう前記ボイルオフガス及び前記圧縮天然ガスを遮断する第2逆止弁を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の貯蔵システム。