(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144965
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 1/26 20060101AFI20241004BHJP
E03D 11/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E03D1/26
E03D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057163
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】豊福 達也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 洋式
(72)【発明者】
【氏名】頭島 周
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AD01
(57)【要約】
【課題】洗浄開始後の比較的初期から洗浄水を鉛直下方に吐出させた場合でも、汚物受け面上に十分な旋回流を発生させることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明は水洗大便器(2)であって、汚物受け面(6)と、壺部(8)と、排水トラップ管路(10)と、汚物受け面に洗浄水を吐出させるリム吐水口(12b)が形成されたリム部(12)と、リム吐水口に連通した第1の洗浄水導水路(14a)及び第2の洗浄水導水路(14b)と、を有し、リム吐水口は、汚物受け面の後方領域のリム部に設けられ、第1の洗浄水導水路は旋回流(TF)が生成されるようにリム吐水口に洗浄水を導き、第2の洗浄水導水路は押し込み流(PF)を生成するようにリム吐水口に洗浄水を導くように構成され、汚物受け面の上縁からリム吐水口の下端までの高さは、リム吐水口の下端から上端までの高さの1/2以上であることを特徴としている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム吐水口から吐出された洗浄水により汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル形状の汚物受け面と、
この汚物受け面の下側に連続するように形成され、洗浄水を溜める壺部と、
この壺部に連通するように形成された排水トラップ管路と、
上記汚物受け面の上側に設けられ、且つ上記汚物受け面に洗浄水を吐出させるリム吐水口が形成されたリム部と、
上記リム吐水口に洗浄水を導くように、上記リム吐水口に連通した第1の洗浄水導水路及び第2の洗浄水導水路と、
を有し、
上記リム吐水口は、上記汚物受け面の後方領域のリム部に設けられ、
上記第1の洗浄水導水路は上記汚物受け面上に洗浄水の旋回流が生成されるように上記リム吐水口に洗浄水を導き、上記第2の洗浄水導水路は上記壺部の中の汚物を上記排水トラップ管路に押し込む押し込み流を生成するように上記リム吐水口に洗浄水を導くように構成され、
上記汚物受け面の上縁から上記リム吐水口の下端までの高さは、上記リム吐水口の下端から上端までの高さの1/2以上であることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
さらに、上記汚物受け面の上縁と、上記リム部の下縁を接続するように棚部が設けられ、この棚部の、上記リム吐水口に隣接して設けられた部分は、上記リム吐水口の、上記第2の洗浄水導水路に近い側から、上記第1の洗浄水導水路に近い側に向けて高くなるように形成されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記リム吐水口に洗浄水を導く洗浄水導水路は、上記リム吐水口の近傍において、上記第2の洗浄水導水路側の底面が、上記第1の洗浄水導水路側の底面よりも高くなるように構成されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記リム吐水口の下縁と上記リム部の壁面との接続部には丸味がつけられ、この丸味の曲率半径は、上記リム吐水口の、上記第2の洗浄水導水路の側が、上記第1の洗浄水導水路の側よりも小さくなるように形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に関し、特に、リム吐水口から吐出された洗浄水により汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第7105342号公報(特許文献1)には、水洗式大便器が記載されている。この水洗式大便器においては、便鉢上端縁部のリムの1箇所のみに1つだけ吐水口が開口しており、この吐水口から洗浄水が吐出される。また、便鉢後部のリムに設けられた吐水口は、洗浄水を平面視において反時計周り方向へ吐出する。これにより、洗浄水は、上部鉛直内壁面の下端部及び棚面に接して流れる旋回流となる。そして、洗浄水の吐出終了間際には、吐水口から吐出した洗浄水がほぼ鉛直下向きの誘導流となり、旋回流が誘導流によって下向きに誘導される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の水洗式大便器においては、洗浄水の吐出開始直後からほぼ鉛直下向きの誘導流が発生した場合には、洗浄開始直後から旋回流が誘導流によって押し下げられてしまい、旋回流が十分に旋回することができなくなる。この場合には、便鉢の表面(汚物受け面)上に洗浄水が十分に流れない不洗部が発生する可能性がある。一方、便鉢後部の吐水口から鉛直下方に流れる洗浄水は、溜水部内の汚物や洗浄水を排水路に押し込む効果があり、鉛直下方に流れる洗浄水が洗浄水の吐出終了間際だけに限られると、汚物や洗浄水を排水路に押し込む作用が不足する場合もある。
【0005】
従って、本発明は、洗浄開始後の比較的初期から洗浄水を鉛直下方に吐出させた場合でも、汚物受け面上に十分な旋回流を発生させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、リム吐水口から吐出された洗浄水により汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の下側に連続するように形成され、洗浄水を溜める壺部と、この壺部に連通するように形成された排水トラップ管路と、汚物受け面の上側に設けられ、且つ汚物受け面に洗浄水を吐出させるリム吐水口が形成されたリム部と、リム吐水口に洗浄水を導くように、リム吐水口に連通した第1の洗浄水導水路及び第2の洗浄水導水路と、を有し、リム吐水口は、汚物受け面の後方領域のリム部に設けられ、第1の洗浄水導水路は汚物受け面上に洗浄水の旋回流が生成されるようにリム吐水口に洗浄水を導き、第2の洗浄水導水路は壺部の中の汚物を排水トラップ管路に押し込む押し込み流を生成するようにリム吐水口に洗浄水を導くように構成され、汚物受け面の上縁からリム吐水口の下端までの高さは、リム吐水口の下端から上端までの高さの1/2以上であることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、第1の洗浄水導水路によってリム吐水口に導かれた洗浄水は、汚物受け面上に、主として旋回流を生成し、第2の洗浄水導水路によってリム吐水口に導かれた洗浄水は、主として押し込み流を生成する。上記のように構成された本発明によれば、汚物受け面の上縁からリム吐水口の下端までの高さは、リム吐水口の下端から上端までの高さの1/2以上に構成されているので、第2の洗浄水導水路によってリム吐水口に導かれた洗浄水が、第1の洗浄水導水路によってリム吐水口に導かれ汚物受け面上を旋回している旋回流の上を越えて、押し込み流として壺部の中に流入する。このため、リム吐水口から壺部の中に流入する押し込み流が、汚物受け面上を旋回する旋回流を阻害しにくく、十分な汚物の押し込み効果を得ながら、旋回流により汚物受け面を十分に洗浄することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、さらに、汚物受け面の上縁と、リム部の下縁を接続するように棚部が設けられ、この棚部の、リム吐水口に隣接して設けられた部分は、リム吐水口の、第2の洗浄水導水路に近い側から、第1の洗浄水導水路に近い側に向けて高くなるように形成されている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、棚部が、リム吐水口の、第2の洗浄水導水路に近い側から、第1の洗浄水導水路に近い側に向けて高くなるように形成されている。このため、第2の洗浄水導水路によって導かれた洗浄水がリム吐水口から吐出される部分では、棚部が低く、その上を流れる旋回流も低い位置を流れる。この結果、第2の洗浄水導水路によって導かれリム吐水口から吐出される押し込み流は、棚部の上を流れる旋回流を容易に乗り越えることができ、旋回流が押し込み流によって阻害されにくくなる。
【0010】
本発明において、好ましくは、リム吐水口に洗浄水を導く洗浄水導水路は、リム吐水口の近傍において、第2の洗浄水導水路側の底面が、第1の洗浄水導水路側の底面よりも高くなるように構成されている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、第2の洗浄水導水路側の底面が、第1の洗浄水導水路側の底面よりも高くなるように構成されているので、第2の洗浄水導水路によってリム吐水口まで導かれた洗浄水が、汚物受け面上を旋回する旋回流を容易に乗り越えることができる。このため、旋回流が押し込み流によって阻害されるのを抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、リム吐水口の下縁とリム部の壁面との接続部には丸味がつけられ、この丸味の曲率半径は、リム吐水口の、第2の洗浄水導水路の側が、第1の洗浄水導水路の側よりも小さくなるように形成されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、リム吐水口の下縁とリム部の壁面との接続部は、第2の洗浄水導水路の側において曲率半径が小さく、第1の洗浄水導水路の側において曲率半径が大きくされている。このため、第2の洗浄水導水路によって導かれた洗浄水は、第1の洗浄水導水路によって導かれた洗浄水よりも水平に近い角度でリム吐水口から吐出され、第2の洗浄水導水路によって導かれた押し込み流は、旋回流を容易に乗り越えることができる。このため、旋回流が押し込み流によって阻害されるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水洗大便器によれば、洗浄開始後の比較的初期から洗浄水を鉛直下方に吐出させた場合でも、汚物受け面上に十分な旋回流を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による水洗大便器を備えた水洗大便器装置を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態による水洗大便器の側面断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による水洗大便器の上面図である。
【
図4】本発明の実施形態による水洗大便器の、
図2におけるIV-IV線に沿う斜視断面図である。
【
図5】本発明の実施形態による水洗大便器において、リム部に設けられたリム吐水口の部分を拡大して示す正面図である。
【
図6】本発明の実施形態による水洗大便器において、
図3及び
図5の点P1、P2、P3における棚部の相対的な高さを示した図である。
【
図7】本発明の実施形態による水洗大便器において、
図3の点P4、P5、P6における洗浄水導水路の床面の相対的な高さを示した図である。
【
図8】本発明の実施形態による水洗大便器において、
図5の点P7、P8、P9におけるリム吐水口とリム部の壁面との接続部の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
図1は、本発明の実施形態による水洗大便器を備えた水洗大便器装置を示す側面図である。
図2は、本発明の実施形態による水洗大便器の側面断面図である。
図3は、本発明の実施形態による水洗大便器の上面図である。
図4は、本発明の実施形態による水洗大便器の、
図2におけるIV-IV線に沿う斜視断面図である。
【0017】
図1は水洗大便器装置1の側面図であり、水洗大便器装置1は、本発明の実施形態による水洗大便器2と、この水洗大便器2の後部に載置された洗浄水タンク4から構成されている。本実施形態において、水洗大便器2は、洗浄水タンク4に貯留された洗浄水により洗浄される洗い落とし式の大便器である。即ち、水洗大便器装置1の使用者により洗浄操作が行われると、洗浄水タンク4に内蔵された排水弁4aが開弁され、これにより、水洗大便器2の内部に形成された洗浄水導水路に洗浄水が流入し、水洗大便器2が洗浄される。
【0018】
次に、
図2に示すように、本実施形態の水洗大便器2は、汚物受け面6と、洗浄水を溜める壺部8と、この壺部8に連通するように接続された排水トラップ管路10と、汚物受け面6の上側に設けられたリム部12と、このリム部12に設けられた吐水口に洗浄水を導く洗浄水導水路14と、を有する。また、本実施形態において、水洗大便器2は陶器製である。
【0019】
汚物受け面6は、汚物を受けるように、水洗大便器2の前方側に設けられたボウル形状の面である。また、汚物受け面6の上縁と、リム部12の下縁を接続するように棚部6aが設けられている。この棚部6aは、汚物受け面6の上縁の周囲に設けられた幅の狭い面であり、ほぼ水平方向に向けられている。なお、本明細書においては、水洗大便器2の汚物受け面6が設けられた側を、水洗大便器2の「前方側」と云い、その反対側の洗浄水タンク4が設けられた側を、水洗大便器2の「後方側」と云う。
壺部8は、汚物受け面6の下側に連続するように形成された部分であり、この壺部8の中に洗浄水が溜められ、排水トラップ管路10が水封される。
【0020】
排水トラップ管路10は、壺部8の中に連通するように形成された管路であり、本実施形態において、排水トラップ管路10は、その上流端の入口10aが、壺部8の底面に開口するように壺部8に接続されている。排水トラップ管路10は、上方に向かって開口した入口10aから後方へ斜め下方に向かって延びた後、斜め上方に延びて頂点10bに到達する。さらに、排水トラップ管路10は、頂点10bの下流側で下方に延び、排水管16に接続されている。このため、排水トラップ管路10に連通した壺部8内の溜水の溜水面WLの水位は、排水トラップ管路10の頂点10bにより規定される。
【0021】
リム部12は、汚物受け面6(棚部6a)の上側に設けられた、水洗大便器2の上端の縁部である。そして、
図3及び
図4に示すように、リム部12には、汚物受け面6に洗浄水を吐出させる第1吐水口12a及びリム吐水口である第2吐水口12bが形成されている。これらの第1吐水口12a、第2吐水口12bには、洗浄水導水路14を介して洗浄水が供給される。
【0022】
洗浄水導水路14は、汚物受け面6の後方側に設けられた導水路であり、洗浄水タンク4の排水弁4a(
図1)を開弁させることにより、洗浄水タンク4内の洗浄水が流入するように構成されている。また、
図3に示すように、洗浄水導水路14は、平面視において、水洗大便器2の幅方向中央に、後方側から前方側に向けて洗浄水を導くように設けられている。さらに、洗浄水導水路14は、仕切り壁15により、第1の洗浄水導水路14aと第2の洗浄水導水路14bに仕切られており、排水弁4a(
図1)が開弁されると、洗浄水は、第1の洗浄水導水路14a及び第2の洗浄水導水路14bに夫々流入する。即ち、第1の洗浄水導水路14a及び第2の洗浄水導水路14bは水平方向に並べて配置されており、本実施形態においては、正面視において左側に第1の洗浄水導水路14aが配置され、右側に第2の洗浄水導水路14bが配置されている。また、第1、第2の洗浄水導水路は、第2吐水口12bに洗浄水を導くように、水洗大便器2の後方側から前方側に向けて延び、第2吐水口12bに接続されている。
【0023】
即ち、第2の洗浄水導水路14bは、水洗大便器2の後方側から前方側へ向けて洗浄水を導くと共に、導かれた洗浄水が衝突壁面12cに衝突した後、第2吐水口12bから吐出されるように構成されている。なお、本実施形態においては、陶器製の洗浄水導水路14の中に仕切り壁15を設け、この仕切り壁15により、導水路を第1の洗浄水導水路14aと第2の洗浄水導水路14bに分けている。これに対して、変形例として、1本の洗浄水導水路14の中に洗浄水を流す2本のディストリビュータを配置し、これにより、導水路を第1の洗浄水導水路14aと第2の洗浄水導水路14bに分けることもできる。
【0024】
衝突壁面12cは、汚物受け面6の後方側において、リム部12の一部を構成する壁面であり、第2の洗浄水導水路14b内を前方側に向けて流れてきた洗浄水が衝突するように設けられている。衝突壁面12cに衝突した洗浄水は主として第2吐水口12bから吐出される。
【0025】
一方、第1の洗浄水導水路14a内を前方側に向けて流れてきた洗浄水の一部は第2吐水口12bから吐出され、残りの洗浄水はリム導水路18に流入する。リム導水路18は、リム部12の内壁面の裏側に設けられた導水路であり、汚物受け面6の外側を、汚物受け面6の後部から側部まで延びている。リム導水路18の下流端には、第1吐水口12aが設けられている。
【0026】
第1吐水口12aは、汚物受け面6の側部に配置され、水洗大便器2の前方に向けて、棚部6aの上に洗浄水を吐出させるように構成されている。第1吐水口12aから吐出された洗浄水は、棚部6a上を旋回しながら汚物受け面6に流下して、汚物受け面6を洗浄した後、壺部8の中に流入する。なお、第1吐水口12aは、省略することもできる。
【0027】
リム吐水口である第2吐水口12bは、汚物受け面6の後方領域のリム部12に配置され、水洗大便器2の前方に向けて洗浄水を吐出させるように構成されている。第2の洗浄水導水路14bによって導かれ、第2吐水口12bから吐出された洗浄水は、主として、第2吐水口12bから下方に流れ、汚物受け面6の後部を洗浄して壺部8に直接流入する。これにより、壺部8内の汚物を排水トラップ管路10に押し込む押し込み流PFが生成される。即ち、第2の洗浄水導水路14bは壺部8の中の汚物を排水トラップ管路10に押し込む押し込み流PFを生成するように第2吐水口12bに洗浄水を導く。
【0028】
また、第1の洗浄水導水路14aによって導かれ、第2吐水口12bから吐出された洗浄水は、主として、棚部6a上を旋回する旋回流TFを形成し、旋回しながら流下して、汚物受け面6を洗浄した後、壺部8の中に流入する。即ち、本実施形態において、第1の洗浄水導水路14aは汚物受け面6上に洗浄水の反時計回りの旋回流TFが生成されるように第2吐水口12bに洗浄水を導く。このように、本実施形態においては、第1の洗浄水導水路14a及び第2の洗浄水導水路14bを備えることにより、1つの第2吐水口12bから吐出された洗浄水によって、汚物受け面6上に押し込み流PF及び旋回流TFが形成される。
【0029】
ここで、第2吐水口12bは、汚物受け面6の後方領域に設けられている。また、本実施形態において、第2吐水口12bは、平面視において、壺部8に溜められた洗浄水の溜水面WLを水洗大便器2の後方側へ向けて投影した領域A1と少なくとも一部が重なるように配置されている。ここで、汚物受け面6の後方領域A2とは、汚物受け面6の前後方向の長さL1の、後端から1/3の領域を意味している。
【0030】
また、
図3及び
図4に示すように、水洗大便器2には、汚物受け面6の上縁と、リム部12の下縁を接続するように棚部6aが設けられている。本実施形態において、棚部6aは汚物受け面6全周の上縁に設けられ、棚部6aは、それに接続される汚物受け面6の上縁よりも水平に近い、ほぼ水平な角度に構成されている。このため、第1吐水口12aから吐出された洗浄水、及び第2吐水口12bから吐出された洗浄水の一部は、棚部6aの上を流れながら汚物受け面6の周囲を旋回し、少しずつ内側の汚物受け面6上に流下して、汚物受け面6を洗浄する。
【0031】
次に、
図5乃至
図8を新たに参照して、本発明の実施形態による水洗大便器2の、第2吐水口12b近傍の構成を詳細に説明する。
図5は、リム部に設けられたリム吐水口である第2吐水口の部分を拡大して示す正面図である。
図6は、
図3及び
図5の点P1、P2、P3における棚部の相対的な高さを示した図である。
図7は、
図3の点P4、P5、P6における洗浄水導水路の床面の相対的な高さを示した図である。
図8は、
図5の点P7、P8、P9における第2吐水口とリム部の壁面との接続部の断面を示す図である。
【0032】
図5に示すように、リム部12に設けられた第2吐水口12bは、汚物受け面6の上縁とリム部12の下縁を接続する棚部6aよりも上方に開口している。本実施形態において、第2吐水口12bは、汚物受け面6の上縁(棚部6a)から第2吐水口12bの下端までの高さH1は、第2吐水口12bの下端から上端までの高さH2の1/2以上になるように設けられている。
【0033】
次に、
図5及び
図6に示すように、棚部6aの、第2吐水口12bに隣接して設けられた部分は、第2吐水口12bの、第2の洗浄水導水路14bに近い側から、第1の洗浄水導水路14aに近い側に向けて高くなるように形成されている。
図6に示すように、第2吐水口12bに隣接して設けられた棚部6aの高さは、
図5の点P3における高さよりも、
図5の点P2における高さの方が高く形成されている。即ち、
図5に示すように、棚部6aは、第2吐水口12bに隣接して設けられた部分において、第2吐水口12bの第2の洗浄水導水路14bに近い側(
図5の右側)から、第1の洗浄水導水路14aに近い側(
図5の左側)に向けて高くなるように形成されている。なお、本実施形態においては、正面視において、左側に第1の洗浄水導水路14a、右側に第2の洗浄水導水路14bが設けられている。このため、第2吐水口12bの第1の洗浄水導水路14aに近い側は、第2吐水口12bの左側を意味し、第2の洗浄水導水路14bに近い側は、第2吐水口12bの右側を意味している。
【0034】
即ち、
図5に示すように、第2吐水口12bは、正面視において、第1の洗浄水導水路14aに対して左側に偏心した位置に設けられており、第1の洗浄水導水路14aによって導かれた洗浄水は、主として、第2吐水口12bの
図5における左側の領域から吐出される。この第2吐水口12bから吐出された洗浄水は、棚部6a上を
図5の左方向に向けて流れ、反時計回りの旋回流TFを形成する(
図3)。棚部6aは、第2吐水口12bよりも
図5において左側の点P1においては、点P2よりも低く構成されており、反時計回りの旋回流TFの下流側に向けて高さが低くされている。また、旋回流TFの一部は、棚部6a上を流れて汚物受け面6を一周する。この棚部6aを一周した洗浄水は、
図5の右端から、第2吐水口12bの方に流れる。
【0035】
一方、第2の洗浄水導水路14bによって導かれた洗浄水は、主として、第2吐水口12bの、
図5における右側の領域から、そのまま下方に流下して押し込み流PF(
図3)を形成する。ここで、上記のように、第2吐水口12bは、棚部6aから第2吐水口12bの下端までの高さH1が、第2吐水口12bの下端から上端までの高さH2の1/2以上になるように設けられている。このように第2吐水口12bを配置することにより、第2吐水口12bから吐出された押し込み流PFが、第1吐水口12a又は第2吐水口12bから吐出され、棚部6a上を旋回している旋回流TFの上を容易に越えることができる。これにより、第2吐水口12bから壺部8の中に流入する押し込み流PFが、汚物受け面6上を旋回する旋回流TFを阻害しにくくなる。
【0036】
次に、
図7に示すように、第2吐水口12bに洗浄水を導く洗浄水導水路14は、第2吐水口12bの近傍において、第2の洗浄水導水路14b側の底面が、第1の洗浄水導水路14a側の底面よりも高くなるように構成されている。即ち、
図3に示すように、第1の洗浄水導水路14aと第2の洗浄水導水路14bを仕切る仕切り壁15は、第2吐水口12bよりも上流側で終端し、第1の洗浄水導水路14aによって導かれた洗浄水と、第2の洗浄水導水路14bによって導かれた洗浄水は、第2吐水口12bの近傍で合流する。この合流した洗浄水導水路14の、第2吐水口12bの近傍における床面の高さは、第2の洗浄水導水路14bの側(
図3における右側)の方が、第1の洗浄水導水路14aの側(同左側)よりも高く構成されている。即ち、
図3の点P4、P5、P6における洗浄水導水路14の床面の高さは、
図7に示すように、この順に高くされている。
【0037】
また、上記のように、第2吐水口12bは、リム部12の壁面に開口している。そして、第2吐水口12bの下縁とリム部12の壁面との接続部における曲率半径は、第2吐水口12bの、第2の洗浄水導水路14bの側が、第1の洗浄水導水路14aの側よりも小さくなるように形成されている。
図8に示すように、第2吐水口12bとリム部12の壁面との接続部には丸味がつけられており、この丸味の曲率半径は、第2吐水口12bの、第2の洗浄水導水路14bの側が、の側よりも小さくなるように形成されている。即ち、
図5の点P7における接続部の曲率半径R1は、
図5の点P8における接続部の曲率半径R2よりも大きく、曲率半径R2は、
図5の点P9における接続部の曲率半径R3よりも大きい。このように、第2吐水口12bとリム部12の壁面との接続部における曲率半径は、第2の洗浄水導水路14bの側(
図5における右側)が、第1の洗浄水導水路14aの側(同左側)よりも小さくなるように形成されている。
【0038】
このため、第2吐水口12bの第1の洗浄水導水路14aに近い側から吐出された洗浄水は、滑らかに棚部6aの上に流れ、旋回流TFを形成する。一方、第2吐水口12bの第2の洗浄水導水路14bに近い側から吐出された洗浄水は、第2吐水口12bの下方に設けられた棚部6aを飛び越えて、汚物受け面6上に流下し、押し込み流PFを形成する。このため、第2吐水口12bから吐出された押し込み流PFの少なくとも一部は、棚部6a上を流れて、汚物受け面6を一周して第2吐水口12bへ到達した旋回流TFの上を飛び越えて流下することができる。
【0039】
次に、本発明の実施形態による水洗大便器2の作用を説明する。
まず、水洗大便器装置1の使用者が、便器洗浄用の操作部(図示せず)を操作すると、洗浄水タンク4に備えられた排水弁4a(
図1)が開弁される。排水弁4aが開弁されると、洗浄水タンク4内の洗浄水が水洗大便器2の洗浄水導水路14の中に流入する。洗浄水導水路14に流入した洗浄水は、第1の洗浄水導水路14aと第2の洗浄水導水路14bに分流されて水洗大便器2の前方側に向けて流れ(
図3)、第2吐水口12bに供給される。洗浄水導水路14内を流れた一部の洗浄水は、衝突壁面12cに衝突し、第2吐水口12bから吐出される。
【0040】
第2吐水口12bから吐出された洗浄水の一部は、第2吐水口12bから下方に流れ、押し込み流PFとして、壺部8に直接流入する。また、第2吐水口12bから吐出された洗浄水の一部は、汚物受け面6の上側に設けられた棚部6aの上に流れ、旋回流TFとして汚物受け面6上を旋回して汚物受け面6を洗浄した後、壺部8へ流入する。
【0041】
さらに、洗浄水導水路14から供給された洗浄水の一部は、第2吐水口12bから吐出されずに、リム導水路18に流入する。リム導水路18に流入した洗浄水は第1吐水口12aから吐出され、棚部6aの上を旋回しながら少しずつ汚物受け面6へ流下し、壺部8へ流入する。また、旋回流TFの一部は、棚部6aの上を一周して、第2吐水口12bまで到達する。このため、旋回流TFにより、汚物受け面6の全周を洗浄することができる。
【0042】
この際、棚部6aを一周して第2吐水口12bまで戻った旋回流TFは、第2吐水口12bの下側を流れる。しかしながら、第2吐水口12bは、棚部6aから下端までの高さH1が、下端から上端までの高さH2の1/2以上になるように設けられているため、第2吐水口12bから壺部8へ直接流下する押し込み流PFは、一周して戻った旋回流TFの上を乗り越え、旋回流TFを阻害することはない。
【0043】
洗浄水が壺部8に流入することにより、水位が上昇し、壺部8内の汚物が洗浄水と共に排水トラップ管路10の頂点10bを乗り越えて排水管16に排出される。これにより、1回の便器洗浄が終了する。
【0044】
本発明の実施形態の水洗大便器2においては、第1の洗浄水導水路14aによってリム吐水口である第2吐水口12bに導かれた洗浄水は、汚物受け面6上に、主として旋回流TFを生成し、第2の洗浄水導水路14bによって第2吐水口12bに導かれた洗浄水は、主として押し込み流PFを生成する。本実施形態の水洗大便器2によれば、汚物受け面6の上縁から第2吐水口12bの下端までの高さH1は、第2吐水口12bの下端から上端までの高さH2の1/2以上に構成されている(
図5)ので、第2の洗浄水導水路14bによって第2吐水口12bに導かれた洗浄水が、第1の洗浄水導水路14aによって第2吐水口12bに導かれ汚物受け面6上を旋回している旋回流TFの上を越えて、押し込み流PFとして壺部8の中に流入する。このため、第2吐水口12bから壺部8の中に流入する押し込み流PFが、汚物受け面6上を旋回する旋回流TFを阻害しにくく、十分な汚物の押し込み効果を得ながら、旋回流TFにより汚物受け面6を十分に洗浄することができる。
【0045】
また、本実施形態の水洗大便器2においては、棚部6aが、第2吐水口12bの、第2の洗浄水導水路14bに近い側から、第1の洗浄水導水路14aに近い側に向けて高くなるように形成されている。このため、第2の洗浄水導水路14bによって導かれた洗浄水が第2吐水口12bから吐出される部分では、棚部6aが低く、その上を流れる旋回流TFも低い位置を流れる。この結果、第2の洗浄水導水路14bによって導かれ第2吐水口12bから吐出される押し込み流PFは、棚部6aの上を流れる旋回流TFを容易に乗り越えることができ、旋回流TFが押し込み流PFによって阻害されにくくなる。
【0046】
さらに、本実施形態の水洗大便器2によれば、第2の洗浄水導水路14b側の底面が、第1の洗浄水導水路側14aの底面よりも高くなるように構成されている(
図6)ので、第2の洗浄水導水路14bによって第2吐水口12bまで導かれた洗浄水が、汚物受け面6上を旋回する旋回流TFを容易に乗り越えることができる。このため、旋回流TFが押し込み流PFによって阻害されるのを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態の水洗大便器2によれば、第2吐水口12bの下縁とリム部12の壁面との接続部は、第2の洗浄水導水路14bの側(
図5の点P9)において曲率半径が小さく、第1の洗浄水導水路14aの側(同点P7)において曲率半径が大きくされている(
図8)。このため、第2の洗浄水導水路14bによって導かれた洗浄水は、第1の洗浄水導水路14aによって導かれた洗浄水よりも水平に近い角度で第2吐水口12bから吐出され、第2の洗浄水導水路14bによって導かれた押し込み流PFは、旋回流TFを容易に乗り越えることができる。このため、旋回流TFが押し込み流PFによって阻害されるのを抑制することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 水洗大便器装置
2 水洗大便器
4 洗浄水タンク
4a 排水弁
6 汚物受け面
6a 棚部
8 壺部
10 排水トラップ管路
10a 入口
10b 頂点
12 リム部
12a 第1吐水口
12b 第2吐水口(リム吐水口)
12c 衝突壁面
14 洗浄水導水路
14a 第1の洗浄水導水路
14b 第2の洗浄水導水路
15 仕切り壁
16 排水管
18 リム導水路