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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144966
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/26 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
E03D1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057164
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】豊福 達也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 洋式
(72)【発明者】
【氏名】頭島 周
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AD01
2D039DB05
(57)【要約】
【課題】洗浄水の水跳ねを抑制することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明は、水洗大便器(2)であって、汚物受け面(6)と、洗浄水を溜める壺部(8)と、排水トラップ管路(10)と、リム吐水口(12b)が形成されたリム部(12)と、を有し、リム吐水口は、平面視において、壺部に溜められた洗浄水の溜水面を水洗大便器の後方側へ向けて投影した領域(A1)と少なくとも一部が重なるように配置され、リム吐水口下方の汚物受け面は、リム吐水口から吐出された洗浄水を壺部の中に導く洗浄水誘導面(6a)を構成し、この洗浄水誘導面は、その延長線(EL)が、側面視において排水トラップ管路の入口(10a)の前端(10c)よりも下側を通るように傾斜していることを特徴としている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム吐水口から吐出された洗浄水により汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル形状の汚物受け面と、
この汚物受け面の下側に連続するように形成され、洗浄水を溜める壺部と、
この壺部の底面に入口が開口するように接続された排水トラップ管路と、
上記汚物受け面の上側に設けられ、且つ上記汚物受け面に洗浄水を吐出させるリム吐水口が形成されたリム部と、を有し、
上記リム吐水口は、平面視において、上記壺部に溜められた洗浄水の溜水面を水洗大便器の後方側へ向けて投影した領域と少なくとも一部が重なるように配置され、
上記リム吐水口下方の汚物受け面は、上記リム吐水口から吐出された洗浄水を上記壺部の中に導く洗浄水誘導面を構成し、
この洗浄水誘導面は、その延長線が、側面視において上記排水トラップ管路の入口の前端よりも下側を通るように傾斜していることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記壺部は、側面視において、上記壺部の底面の前端から上記排水トラップ管路の入口の前端までの水平方向距離が、上記排水トラップ管路の入口の前端から後端までの水平方向距離よりも短くなるように構成されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記洗浄水誘導面は、その両側の汚物受け面に対して窪んでいる請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記リム吐水口は、窪んでいる洗浄水誘導面と、それに連なる汚物受け面の境界を跨ぐように配置されている請求項3記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記排水トラップ管路の入口の開口は、側面視において、開口の前端よりも後端が低くなるように構成されている請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に関し、特に、リム吐水口から吐出された洗浄水により汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-111947号公報(特許文献1)には、水洗式便器が記載されている。この水洗式便器においては、便鉢部後方のリム部に設けられた吐水口から洗浄水を吐出させることにより、便鉢部の内壁面上に旋回流を生成し、洗浄を行っている。また、吐水口吐出された洗浄水の一部は、そのまま流下し、便鉢部の下方の凹部に直接流入する。これにより、凹部内に旋回流を引き起こし、凹部の内壁面を洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-111947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の水洗式便器においては、便鉢部後方のリム部に設けられた吐水口からの洗浄水の一部を、直接、凹部(壺部)に流入させている。これにより、壺部内の溜水面に後方から強力な洗浄水を流入させることができ、壺部内の溜水及び汚物を効率良く排水トラップ管路内に押し込むことができる。しかしながら、便鉢部後方の吐水口から吐出された洗浄水を、直接、壺部に流入させるタイプの水洗大便器においては、洗浄水の強力な流れが壺部の壁面に衝突して水跳ねを生じやすいという問題がある。
【0005】
従って、本発明は、リム部に設けられた吐水口から吐出させた洗浄水の一部を直接、壺部に流入させながら、洗浄水の水跳ねを抑制することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、リム吐水口から吐出された洗浄水により汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の下側に連続するように形成され、洗浄水を溜める壺部と、この壺部の底面に入口が開口するように接続された排水トラップ管路と、汚物受け面の上側に設けられ、且つ汚物受け面に洗浄水を吐出させるリム吐水口が形成されたリム部と、を有し、リム吐水口は、平面視において、壺部に溜められた洗浄水の溜水面を水洗大便器の後方側へ向けて投影した領域と少なくとも一部が重なるように配置され、リム吐水口下方の汚物受け面は、リム吐水口から吐出された洗浄水を壺部の中に導く洗浄水誘導面を構成し、この洗浄水誘導面は、その延長線が、側面視において排水トラップ管路の入口の前端よりも下側を通るように傾斜していることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明によれば、リム吐水口下方に設けられた洗浄水誘導面は、その延長線が、側面視において排水トラップ管路の入口の前端よりも下側を通るように傾斜している。このため、リム吐水口から吐出され、洗浄水誘導面に沿って流下した洗浄水は、主として、壺部の底面に開口した排水トラップ管路の中に流入する。壺部の中に流入する洗浄水は、その内壁面や、底面に当たると水跳ねを生じやすい一方、壺部の底面に開口した排水トラップ管路の入口の部分では水深が深く、水跳ねが生じにくい。本発明によれば、洗浄水誘導面の延長線が排水トラップ管路の入口の前端よりも下側を通るため、壺部に流入する洗浄水は、主として排水トラップ管路の入口の水深の深い部分に流入するので、効果的に水跳ねを抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、壺部は、側面視において、壺部の底面の前端から排水トラップ管路の入口の前端までの水平方向距離が、排水トラップ管路の入口の前端から後端までの水平方向距離よりも短くなるように構成されている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、壺部底面の前端から排水トラップ管路の入口前端までの長さが、排水トラップ管路の入口前端から後端までの長さよりも短いので、洗浄水誘導面に沿って流下した洗浄水は、水深の浅い壺部底面の部分に当たりにくく、より水跳ねを抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、洗浄水誘導面は、その両側の汚物受け面に対して窪んでいる。
【0011】
このように構成された本発明によれば、洗浄水誘導面が、その両側の汚物受け面に対して窪んでいるので、リム吐水口から吐出された洗浄水の一部を効率良く壺部の中に流入させることができ、壺部内の汚物を強力に排水トラップ管路に押し込むことができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、リム吐水口は、窪んでいる洗浄水誘導面と、それに連なる汚物受け面の境界を跨ぐように配置されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、窪んだ洗浄水誘導面と汚物受け面の境界を跨ぐようにリム吐水口が配置されているので、リム吐水口から吐出された洗浄水を、汚物受け面上を旋回する旋回流と、そのまま壺部に流入する流れに分流することができ、リム吐水口で、汚物受け面全体を効果的に洗浄することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、排水トラップ管路の入口の開口は、側面視において、開口の前端よりも後端が低くなるように構成されている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、排水トラップ管路の入口開口が前端よりも後端が低くなるように構成されているので、洗浄水誘導面によって誘導され、壺部の中に流入した洗浄水が、壺部内及び排水トラップ管路の入口部分で縦方向に旋回する空間を十分に確保することができ、壺部内の汚物を効果的に排水トラップ管路の中に流入させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水洗大便器によれば、リム部に設けられた吐水口から吐出させた洗浄水の一部を直接、壺部に流入させながら、洗浄水の水跳ねを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による水洗大便器を備えた水洗大便器装置を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態による水洗大便器の側面断面図である。
図3】本発明の実施形態による水洗大便器の上面図である。
図4】本発明の実施形態による水洗大便器の、図2におけるIV-IV線に沿う斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
図1は、本発明の実施形態による水洗大便器を備えた水洗大便器装置を示す側面図である。図2は、本発明の実施形態による水洗大便器の側面断面図である。図3は、本発明の実施形態による水洗大便器の上面図である。図4は、本発明の実施形態による水洗大便器の、図2におけるIV-IV線に沿う斜視断面図である。
【0019】
図1は水洗大便器装置1の側面図であり、水洗大便器装置1は、本発明の実施形態による水洗大便器2と、この水洗大便器2の後部に載置された洗浄水タンク4から構成されている。本実施形態において、水洗大便器2は、洗浄水タンク4に貯留された洗浄水により洗浄される洗い落とし式の大便器である。即ち、水洗大便器装置1の使用者により洗浄操作が行われると、洗浄水タンク4に内蔵された排水弁4aが開弁され、これにより、水洗大便器2の内部に形成された洗浄水導水路に洗浄水が流入し、水洗大便器2が洗浄される。
【0020】
次に、図2に示すように、本実施形態の水洗大便器2は、汚物受け面6と、洗浄水を溜める壺部8と、この壺部8に連通するように接続された排水トラップ管路10と、汚物受け面6の上側に設けられたリム部12と、このリム部12に設けられた吐水口に洗浄水を導く洗浄水導水路14と、を有する。また、本実施形態において、水洗大便器2は陶器製である。
【0021】
汚物受け面6は、汚物を受けるように、水洗大便器2の前方側に設けられたボウル形状の面である。なお、本明細書においては、水洗大便器2の汚物受け面6が設けられた側を、水洗大便器2の「前方側」と云い、その反対側の洗浄水タンク4が設けられた側を、水洗大便器2の「後方側」と云う。
壺部8は、汚物受け面6の下側に連続するように形成された部分であり、この壺部8の中に洗浄水が溜められ、排水トラップ管路10が水封される。
【0022】
排水トラップ管路10は、壺部8の中に連通するように形成された管路であり、本実施形態において、排水トラップ管路10は、その上流端の入口10aが、壺部8の底面8aに開口するように壺部8に接続されている。排水トラップ管路10は、上方に向かって開口した入口10aから後方へ斜め下方に向かって延びた後、斜め上方に延びて頂点10bに到達する。さらに、排水トラップ管路10は、頂点10bの下流側で下方に延び、排水管16に接続されている。このため、排水トラップ管路10に連通した壺部8内の溜水の溜水面WLの水位は、排水トラップ管路10の頂点10bにより規定される。
【0023】
リム部12は、汚物受け面6の上側に設けられた、水洗大便器2の上端の縁部である。そして、図3に示すように、リム部12には、汚物受け面6に洗浄水を吐出させるリム吐水口である第1吐水口12a及び第2吐水口12bが形成されている。これらの第1吐水口12a、第2吐水口12bには、洗浄水導水路14を介して洗浄水が供給される。
【0024】
洗浄水導水路14は、汚物受け面6の後方側に設けられた導水路であり、洗浄水タンク4の排水弁4a(図1)を開弁させることにより、洗浄水タンク4内の洗浄水が流入するように構成されている。洗浄水導水路14は、第2吐水口12bに洗浄水を導くように、水洗大便器2の後方側から前方側に向けて延び、第2吐水口12bに接続されている。即ち、図3に示すように、洗浄水導水路14は、水洗大便器2の幅方向中央に後方側から前方側へ向けて洗浄水を導くと共に、導かれた洗浄水の一部が衝突壁面12cに衝突した後、第2吐水口12bから吐出されるように構成されている。なお、本実施形態においては、陶器製の洗浄水導水路14に洗浄水を直接流しているが、変形例として、水洗大便器2に設けた通路内に洗浄水を流すディストリビュータを配置し、これを洗浄水導水路14とすることもできる。
【0025】
衝突壁面12cは、汚物受け面6の後方側において、リム部12の一部を構成する壁面であり、洗浄水導水路14内を前方側に向けて流れてきた洗浄水の一部が衝突するように設けられている。衝突壁面12cに衝突した洗浄水の一部は第2吐水口12bから吐出され、残りの洗浄水はリム導水路18に流入する。リム導水路18は、リム部12の内壁面の裏側に設けられた導水路であり、汚物受け面6の外側を、汚物受け面6の後部から側部まで延びている。リム導水路18の下流端には、第1吐水口12aが設けられている。
【0026】
第1吐水口12aは、汚物受け面6の側部に配置され、水洗大便器2の前方に向けて洗浄水を吐出させるように構成されている。第1吐水口12aから吐出された洗浄水は、汚物受け面6上を旋回しながら流下して、汚物受け面6を洗浄した後、壺部8の中に流入する。なお、第1吐水口12aは、省略することもできる。
【0027】
リム吐水口である第2吐水口12bは、汚物受け面6の後方領域のリム部12に配置され、水洗大便器2の前方に向けて洗浄水を吐出させるように構成されている。第2吐水口12bから吐出された洗浄水の一部は、第2吐水口12bから下方に流れ、汚物受け面6の後部を洗浄して壺部8に直接流入する。これにより、壺部8内の汚物を排水トラップ管路10に押し込む押し込み流PFが生成される。また、第2吐水口12bから吐出された洗浄水の残りの部分は、汚物受け面6上を旋回する旋回流TFを形成し、旋回しながら流下して、汚物受け面6を洗浄した後、壺部8の中に流入する。
【0028】
ここで、第2吐水口12bは、汚物受け面6の後方領域に設けられている。また、本実施形態において、第2吐水口12bは、平面視において、壺部8に溜められた洗浄水の溜水面WLを水洗大便器2の後方側へ向けて投影した領域A1と少なくとも一部が重なるように配置されている。加えて、第2吐水口12bは、平面視において、後方領域A2の範囲に設けられている。ここで、汚物受け面6の後方領域A2とは、汚物受け面6の前後方向の長さL1の、後端から1/3の領域を意味している。
【0029】
さらに、図3及び図4に示すように、第2吐水口12b下方の汚物受け面6は、第2吐水口12bから吐出された洗浄水を壺部8の中に導く洗浄水誘導面6aを構成している。即ち、図4に示すように、洗浄水誘導面6aは、その両側の汚物受け面6に対して窪んでおり、壺部8の後ろ側の内壁面に滑らかに連なっている。このため、第2吐水口12bから吐出された洗浄水の一部は、洗浄水誘導面6aにより、壺部8のへ誘導される。
【0030】
また、図3に示すように、第2吐水口12bは、窪んでいる洗浄水誘導面6aと、それに連なる汚物受け面6の境界6bを跨ぐように配置されている。このため、第2吐水口12bから吐出された洗浄水は、洗浄水誘導面6aによって誘導されて壺部8の中に流入する押し込み流PFと、汚物受け面6上を旋回する旋回流TFに分岐される。この結果、第2吐水口12bから吐出された洗浄水により、汚物受け面6全体を効果的に洗浄することができる。
【0031】
さらに、図2に示すように、汚物受け面6の洗浄水誘導面6aは、洗浄水誘導面6aの接線として下側に延びるその延長線ELが、側面視において排水トラップ管路10の入口10aの前端10cよりも下側を通るように傾斜している。これにより、第2吐水口12bから吐出され、洗浄水誘導面6aによって誘導されながら流下した洗浄水は、延長線ELに沿って、又は延長線ELの下側に落下する。その結果、第2吐水口12bから洗浄水誘導面6aに沿って流下して、壺部8に直接流入する洗浄水は、主として、排水トラップ管路10の入口10aの前端10cよりも後方側に落下する。なお、少なくとも洗浄水誘導面6aの一部の下り面の下側に延びる接線である延長線ELが側面視において排水トラップ管路10の入口10aの前端10cよりも下側を通るように傾斜していればよい。
本実施形態では、洗浄水誘導面6aの左右中心が最も大きく窪んでおり、最も窪んだ面の下側に延びる接線が、側面視において排水トラップ管路10の入口10aの前端10cよりも下側を通るように下方に向かって傾斜している。
【0032】
このため、壺部8に直接流入する洗浄水の多くは、壺部8の底面8aには当たらず、水深の深い排水トラップ管路10の入口10aの中に流入する。これにより、壺部8に直接流入する洗浄水が、壺部8の水深の浅い部分に流入し、水跳ねが生じるのを抑制することができる。
【0033】
さらに、壺部8は、側面視において、壺部8の底面8aの前端8bから排水トラップ管路10の入口10aの前端10cまでの水平方向距離L2が、排水トラップ管路10の入口10aの前端10cから後端10dまでの水平方向距離L3よりも短くなるように構成されている。このため、洗浄水誘導面6aに沿って流下した洗浄水は、水深の浅い壺部8の底面8aの部分に当たりにくく、より水跳ねを抑制することができる。
【0034】
また、排水トラップ管路10の入口10aの開口は、側面視において、開口の前端10cよりも後端10dが低くなるように構成されている。このため、洗浄水誘導面6aによって誘導され、壺部8の中に流入した洗浄水が、壺部8内及び排水トラップ管路10の入口10a部分で縦方向に旋回する空間を十分に確保することができ、壺部8内の汚物を効果的に排水トラップ管路10の中に流入させることができる。
【0035】
次に、本発明の実施形態による水洗大便器2の作用を説明する。
まず、水洗大便器装置1の使用者が、便器洗浄用の操作部(図示せず)を操作すると、洗浄水タンク4に備えられた排水弁4a(図1)が開弁される。排水弁4aが開弁されると、洗浄水タンク4内の洗浄水が水洗大便器2の洗浄水導水路14の中に流入する。洗浄水導水路14に流入した洗浄水は、洗浄水導水路14内を水洗大便器2の前方側に向けて流れ(図3)、第2吐水口12bに供給される。洗浄水導水路14内を流れた一部の洗浄水は、衝突壁面12cに衝突し、第2吐水口12bから吐出される。
【0036】
第2吐水口12bから吐出された洗浄水の一部は、第2吐水口12bの下側に形成された洗浄水誘導面6aによって誘導され、押し込み流PFとして、壺部8に直接流入する。洗浄水誘導面6aによって誘導された洗浄水は、主として、洗浄水誘導面6aの延長線ELの下側に落下し、壺部8の水深の深い部分に着水する。このため、押し込み流PFの壺部8への流入による水跳ねが抑制される。
【0037】
また、第2吐水口12bから吐出された洗浄水の一部は、洗浄水誘導面6aの外側(図3における境界6b左側)へ流れ、旋回流TFとして汚物受け面6上を旋回して汚物受け面6を洗浄した後、壺部8へ流入する。
【0038】
さらに、洗浄水導水路14から供給された洗浄水の一部は、第2吐水口12bから吐出されずに、リム導水路18に流入する。リム導水路18に流入した洗浄水は第1吐水口12aから吐出され、汚物受け面6上を旋回して汚物受け面6を洗浄した後、壺部8へ流入する。なお、第1吐水口12aから吐出された洗浄水は、第1吐水口12aよりも前方で旋回流TFと合流し、汚物受け面6上を旋回して汚物受け面6を洗浄した後、洗浄水誘導面6aにより壺部8へ流入する。
洗浄水誘導面6aは、下方から上方に向かって左右方向に広がるように設けられており、第1吐水口12aと旋回流TFが合流した流れまたは旋回流TFが旋回して洗浄水誘導面6aに到達した際に、集められて壺部8へ流入する押し込み流を形成できる。
洗浄水誘導面6aは、左右方向から中心に向けて徐々に窪みが大きくなるように設けられており、中心が最も大きく窪んでいる。そのため、押し込み流PFまたは旋回してきた旋回流TFが洗浄水誘導面6aにより中心に集められ洗浄水誘導面6aに沿って押込み流れを形成することができる。
【0039】
洗浄水が壺部8に流入することにより、水位が上昇し、壺部8内の汚物が洗浄水と共に排水トラップ管路10の頂点10bを乗り越えて排水管16に排出される。これにより、1回の便器洗浄が終了する。
【0040】
本発明の実施形態の水洗大便器2によれば、リム吐水口である第2吐水口12b下方に設けられた洗浄水誘導面6aは、その延長線ELが、側面視において排水トラップ管路10の入口10aの前端10cよりも下側を通るように傾斜している(図2)。このため、第2吐水口12bから吐出され、洗浄水誘導面6aに沿って流下した洗浄水は、主として、壺部8の底面8aに開口した排水トラップ管路10の中に流入する。壺部8の中に流入する洗浄水は、その内壁面や、底面8aに当たると水跳ねを生じやすい一方、壺部8の底面8aに開口した排水トラップ管路10の入口10aの部分では水深が深く、水跳ねが生じにくい。本実施形態によれば、洗浄水誘導面6aの延長線ELが排水トラップ管路10の入口10aの前端10cよりも下側を通るため、壺部8に流入する洗浄水は、主として排水トラップ管路10の入口10aの水深の深い部分に流入するので、効果的に水跳ねを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態の水洗大便器2によれば、壺部8の底面8aの前端8bから排水トラップ管路10の入口10aの前端10cまでの長さが、排水トラップ管路10の入口10aの前端10cから後端10dまでの長さよりも短い(図2)ので、洗浄水誘導面6aに沿って流下した洗浄水は、水深の浅い壺部8の底面8aの部分に当たりにくく、より水跳ねを抑制することができる。
【0042】
さらに、本実施形態の水洗大便器2によれば、洗浄水誘導面6aが、その両側の汚物受け面6に対して窪んでいる(図4)ので、第2吐水口12bから吐出された洗浄水の一部を効率良く壺部8の中に流入させることができ、壺部8内の汚物を強力に排水トラップ管路10に押し込むことができる。
【0043】
また、本実施形態の水洗大便器2によれば、窪んだ洗浄水誘導面6aと汚物受け面6の境界6bを跨ぐように第2吐水口12bが配置されている(図3)ので、第2吐水口12bから吐出された洗浄水を、汚物受け面6上を旋回する旋回流TFと、そのまま壺部8に流入する流れに分流することができ、吐水口が1つの場合でも、汚物受け面6全体を効果的に洗浄することができる。
【0044】
さらに、本実施形態の水洗大便器2によれば、排水トラップ管路10の入口10aの開口が前端10cよりも後端10dが低くなるように構成されている(図2)ので、洗浄水誘導面6aによって誘導され、壺部8の中に流入した洗浄水が、壺部8内及び排水トラップ管路10の入口10aの部分で縦方向に旋回する空間を十分に確保することができ、壺部8内の汚物を効果的に排水トラップ管路10の中に流入させることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 水洗大便器装置
2 水洗大便器
4 洗浄水タンク
4a 排水弁
6 汚物受け面
6a 洗浄水誘導面
6b 境界
8 壺部
8a 底面
8b 前端
10 排水トラップ管路
10a 入口
10b 頂点
10c 前端
10d 後端
12 リム部
12a 第1吐水口
12b 第2吐水口(リム吐水口)
12c 衝突壁面
14 洗浄水導水路
16 排水管
18 リム導水路
図1
図2
図3
図4