(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144968
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20241004BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20241004BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B7/023
G02B5/22
G02B1/14
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057167
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浦辺 光
(72)【発明者】
【氏名】間宮 倫孝
(72)【発明者】
【氏名】杉 裕紀
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H148CA01
2H148CA14
2H148CA29
2K009BB24
2K009CC23
2K009CC24
2K009EE00
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100CA13D
4F100CA13E
4F100DE01B
4F100DE01C
4F100EH46
4F100JB05E
4F100JB06D
4F100JK09
4F100JL10D
4F100JL10E
4F100JN06B
4F100JN06C
4F100JN28B
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、構造色を示す部分と構造色を示さない部分とのコントラスト、光沢性、及び耐摩擦性に優れる積層体を提供することにある。
【解決手段】基材上に、構造色を示すパターン部A、及び、構造色を示さないパターン部Bを有する積層体であって、前記パターン部Aにおいては、樹脂微粒子が規則配列し、前記パターン部Bにおいては、樹脂微粒子が不規則に存在する、積層体。パターン部Aの膜厚が、5~30μmである、前記の積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、構造色を示すパターン部A、及び、構造色を示さないパターン部Bを有する積層体であって、前記パターン部Aにおいては、樹脂微粒子が規則配列し、
前記パターン部Bにおいては、樹脂微粒子が不規則に存在する、積層体。
【請求項2】
パターン部Aの膜厚が、5~30μmである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
パターン部Aが、入射角5°で拡散反射スペクトルを測定した場合、380nm~2000nmの波長範囲において、半値幅100nm未満かつ反射光強度5%以上の反射ピークを示す、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
パターン部Bが、入射角5°で拡散反射スペクトルを測定した場合、380nm~2000nmの波長範囲において、半値幅100nm未満かつ反射光強度5%以上の反射ピークを示さない、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
パターン部A及び/又はパターン部B上に、更に、被覆層を有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項6】
被覆層の膜厚が、0.1~10μmである、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
被覆層が、着色剤を含む、請求項5に記載の積層体。
【請求項8】
パターン部B上に、樹脂を含む被覆層Cを有する、請求項5に記載の積層体。
【請求項9】
パターン部A上に、樹脂を含む被覆層Dを有する、請求項5に記載の積層体。
【請求項10】
被覆層Cが、非水性樹脂を含む、請求項8に記載の積層体。
【請求項11】
被覆層Dが、水性樹脂を含む、請求項9に記載の積層体。
【請求項12】
基材上に、構造色を示すパターン部A、及び構造色を示さないパターン部Bを有する積層体の製造方法であって、
基材上に、樹脂微粒子を含むコーティング剤を塗工して、前記樹脂微粒子の規則配列による構造色を示すパターン部Aを形成する工程1と、
前記パターン部Aの一部に、樹脂微粒子を含まないコーティング剤を塗工することで、前記パターン部Aを、構造色を示さないパターン部Bに変化させる工程2と、
を含む、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、及び該積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モルフォ蝶やタマムシをはじめとした生物の色は構造色と呼ばれ、光の波長と同程度の間隔の規則構造により光の回折・干渉が生じることで発色している。構造色は鮮やかな発色と観察する角度によって色が変化する角度依存性が特徴であり、これまでにない高級感や華やかさを演出することができる。近年、人工的な構造色の利用も盛んに行われており、例えばスマートフォン背面の加飾や、シールラベル等に用いられている。これらの用途では任意の文字や絵柄のみ構造色で表現する、構造色によるパターン形成技術が望まれている。
【0003】
コロイド結晶は構造色材料の一種であり、粒子が規則的に最密充填した構造を有し、粒子と粒子間隙の屈折率差によりブラッグ反射が生じることで構造色を発現する。コロイド結晶は構造色材料の中でも粒子の規則性に由来して半値幅が狭く強度の高い反射ピークを示すことが特徴であり、これにより単色で鮮やかな構造色が現れる。また、簡便に作製できることも特徴の一つであり、粒子懸濁液を基材などへ塗布した後、乾燥することで形成することができる。なお、実用的な生産スピードでコロイド結晶を形成しようとすると、乾燥時に少なからずクラックを生じることが知られている。
コロイド結晶を用いた構造色材料のパターン形成技術としては、部分的に熱を加えて粒子間の空隙を埋め尽くして構造色を退色させることでパターン形成をする技術が知られている。
【0004】
特許文献1及び2には、感熱機能を有するコロイド結晶積層体が開示され、レーザー等の加熱処理によって構造色を退色させ、画像形成できることが記載されている。コロイド結晶積層体は微粒子とその空隙の屈折率差により発色しており、加熱処理によって空隙が埋まることで構造色が退色する。しかしながら、特許文献1及び2に記載されたように、加熱処理を行うだけでは、微粒子の規則配列が維持されたまま空隙が埋まるため、構造色が完全に消失せず、コントラストが不十分となる懸念、及び、処理部に生じたクラックにより、コントラストが低下する懸念がある。また、上記クラックの存在により、不要な散乱が生じ、加熱処理部の光沢が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-80205号公報
【特許文献2】WO2006/129506号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、構造色を示す部分と構造色を示さない部分とのコントラスト、光沢性、及び耐摩擦性に優れる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の積層体及び積層体の製造方法を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下[1]~[12]に関する。
【0009】
[1]基材上に、構造色を示すパターン部A、及び、構造色を示さないパターン部Bを有する積層体であって、前記パターン部Aにおいては、樹脂微粒子が規則配列し、
前記パターン部Bにおいては、樹脂微粒子が不規則に存在する、積層体。
【0010】
[2]パターン部Aの膜厚が、5~30μmである、[1]に記載の積層体。
【0011】
[3]パターン部Aが、入射角5°で拡散反射スペクトルを測定した場合、380nm~2000nmの波長範囲において、半値幅100nm未満かつ反射光強度5%以上の反射ピークを示す、[1]又は[2]に記載の積層体。
【0012】
[4]パターン部Bが、入射角5°で拡散反射スペクトルを測定した場合、380nm~2000nmの波長範囲において、半値幅100nm未満かつ反射光強度5%以上の反射ピークを示さない、[1]~[3]いずれかに記載の積層体。
【0013】
[5]パターン部A及び/又はパターン部B上に、更に、被覆層を有する、[1]~[4]いずれかに記載の積層体。
【0014】
[6]被覆層の膜厚が、0.1~10μmである、[5]に記載の積層体。
【0015】
[7]被覆層が、着色剤を含む、[5]に記載の積層体。
【0016】
[8]パターン部B上に、樹脂を含む被覆層Cを有する、[5]に記載の積層体。
【0017】
[9]パターン部A上に、樹脂を含む被覆層Dを有する、[5]に記載の積層体。
【0018】
[10]被覆層Cが、非水性樹脂を含む、[8]に記載の積層体。
【0019】
[11]被覆層Dが、水性樹脂を含む、[9]に記載の積層体。
【0020】
[12]基材上に、構造色を示すパターン部A、及び構造色を示さないパターン部Bを有する積層体の製造方法であって、
基材上に、樹脂微粒子を含むコーティング剤を塗工して、前記樹脂微粒子の規則配列による構造色を示すパターン部Aを形成する工程1と、
前記パターン部Aの一部に、樹脂微粒子を含まないコーティング剤を塗工することで、前記パターン部Aを、構造色を示さないパターン部Bに変化させる工程2と、
を含む、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、構造色を示す部分と構造色を示さない部分とのコントラスト、光沢性、及び耐摩擦性に優れる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0023】
<積層体>
本発明の積層体は、基材上に、構造色を示すパターン部A、及び、構造色を示さないパターン部Bを有する積層体であって、前記パターン部Aにおいては、樹脂微粒子が規則配列し、前記パターン部Bにおいては、樹脂微粒子が不規則に存在する、積層体である。
【0024】
パターン部Aにおいては樹脂微粒子が規則的に配列するため、発色性に優れた構造色を示し、パターン部Bにおいては、樹脂微粒子が不規則に存在することにより、塗膜のクラックが少なく平滑であるため、不要な散乱が低減される。上記効果により、本発明の積層体はコントラスト、及び光沢性が高いレベルで実現できると考えられる。なお、本説明はあくまで技術的考察に基づくものであり、何ら発明を限定するものではない。
【0025】
本発明の積層体は、パターン部A及び/又はパターン部B上に、被覆層を有することが好ましい。本発明では、パターン部A上に位置する被覆層を被覆層D、パターンB上に位置する被覆層を被覆層Cと称する。
【0026】
<積層構成>
本発明の積層体の構成は、具体的には、以下の構成を例示することができるが、これらに限定されない。なお以下(1)から(8)の構成表示においては、「/」は各層の境界を意味する。また、1つの基材上にパターンAとパターンBとは共に存在しうるが、各層の位置関係を明確にするために、便宜上、パターン部Aとパターン部Bとで分けて記載している。
(1)基材/パターン部A、パターン部B
(2)基材/パターン部A、パターン部B/被覆層C(パターン部B上)
(3)基材/パターン部A、パターン部B/被覆層D(パターン部A上)
(4)基材/パターン部A、パターン部B/被覆層C(パターン部B上)、被覆層D(パターン部A上)
(5)基材/プライマー層/パターン部A、パターン部B
(6)基材/プライマー層/パターン部A、パターン部B/被覆層C(パターン部B上)
(7)基材/プライマー層/パターン部B/被覆層D(パターン部A上)
(8)基材/プライマー層/パターン部A、パターン部B/被覆層C(パターン部B上)、被覆層D(パターン部A上)
【0027】
<パターン部A>
本発明においてパターン部Aは、樹脂微粒子が規則配列された構造を有し、密充填した粒子と粒子間隙の屈折率差によりブラッグ反射が生じて鮮やかな構造色を示す。パターン部Aに存在する樹脂微粒子は、球状であることが好ましい。
【0028】
パターン部Aの膜厚は、5~30μmであることが好ましく、7~20μmであることがより好ましく、8~15μmであることが更に好ましい。パターン部Aの膜厚が5μm以上であることにより、優れた構造色を発現するため、非構造色部分とのコントラストが良好となる。また、膜厚が30μm以下であることにより、パターン部Aの強度が保たれ積層体の耐摩擦性が良好となる。
【0029】
パターン部Aは、入射角5°で拡散反射スペクトルを測定した場合、380nm~2000nmの波長範囲において、半値幅100nm未満かつ反射光強度5%以上の反射ピークを有することが好ましい。反射ピークの波長範囲は、より好ましくは380nm~700nmであり、半値幅はより好ましくは60nm未満であり、反射光強度はより好ましくは10%以上である。
パターン部Aが上記光学特性を示すことで優れた構造色が現れ積層体のコントラストが良好となる。
【0030】
<樹脂微粒子>
樹脂微粒子とは、粒子状の樹脂を指す。樹脂微粒子の一部は、規則配列することにより構造色を示す。樹脂微粒子としては、優れた構造発色を示す粒度分布の狭い単分散な微粒子を容易に作製可能なため、エチレン性不飽和単量体の重合体からなる樹脂微粒子が好ましく、パターン部A中の隣接する粒子間での架橋、並びに/又は、パターン部Aと隣接する被覆層及び/若しくは基材との架橋が形成可能な反応性基が容易に導入できるため、より好ましくはアクリル樹脂又はスチレンアクリル樹脂からなる樹脂微粒子である。
【0031】
また、樹脂微粒子は、コア及びシェルが水に不溶なポリマーであり、互いに相溶しないコア(内層)とシェル(外層)の構造を含むコアシェル型構造であることが好ましい。コアは球状形状の維持として機能し、シェルは流動性を有して結着部位として機能する。コアシェル型樹脂微粒子を含む組成物(以下、パターン部A用組成物ともいう)を基材に塗布し、コアシェル型樹脂微粒子が移流集積して規則的に配列し樹脂層を形成することで、隣接したコアシェル型樹脂微粒子のシェル同士、コアシェル型樹脂微粒子のシェルと基材層又は後述するプライマー層とが、容易に結着し、積層体は、優れた耐摩擦性を発揮する。
樹脂層を構成する樹脂微粒子がエチレン性不飽和単量体の重合体からなる場合、エチレン性不飽和単量体を乳化重合することにより、目的の樹脂微粒子を得ることができる。
【0032】
<コアシェル型樹脂微粒子>
コアシェル型樹脂微粒子の製造方法は特に制限されず、乳化重合のように水性媒体中でエチレン性不飽和単量体を重合する方法や、非水系で重合を行った後に脱溶剤しながら水相に転相する転相乳化法等が挙げられるが、高分子量、低粘度、且つ高固形分濃度化が可能である点から、乳化重合を用いることが好ましい。また、乳化重合では、一段目と二段目とで単量体の組成を変えて滴下する二段重合、又は、三段以上の多段で単量体の組成を変えて滴下する多段重合のいずれを用いてもよい。
コアシェル型樹脂微粒子は、上記二段重合により、具体的には、下記に示す手順で調製できる。
(1)まず、反応槽に水性媒体と界面活性剤とを仕込み、昇温する。その後、窒素雰囲気下でコアを形成する一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、滴下量にしたがって粒子は徐々に成長してコア粒子を形成する。
(2)次いで、一段目の滴下が完了し、発熱が落ちついたところで、シェルを形成する二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の滴下を開始する。その際、追加の開始剤を添加してもよい。滴下された二段目のエチレン性不飽和単量体は、一旦コア粒子に分配されるが、重合が進むにつれてコア粒子の外層に重合体として析出していき、シェル層を形成する。
【0033】
<エチレン性不飽和単量体>
上記エチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族系エチレン性不飽和体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキル若しくはアルケニルモノエステル、コハク酸β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸等のスルホ基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、アリルアルコール等の水酸基含有エチレン性不飽和単量体;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有エチレン性不飽和単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシ(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のケトン基含有エチレン性不飽和単量体;アリル(メタ)アクリレート、1-メチルアリル(メタ)アクリレート、2-メチルアリル(メタ)アクリレート、1-ブテニル(メタ)アクリレート、2-ブテニル(メタ)アクリレート、3-ブテニル(メタ)アクリレート、1,3-メチル-3-ブテニル(メタ)アクリレート、2-クロルアリル(メタ)アクリレート、3-クロルアリル(メタ)アクリレート、o-アリルフェニル(メタ)アクリレート、2-(アリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルラクチル(メタ)アクリレート、シトロネリル(メタ)アクリレート、ゲラニル(メタ)アクリレート、ロジニル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、ビニル(メタ)アクリレート、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、2-(2’-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルエーテル化N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有エチレン性不飽和単量体;が挙げられる。
これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0034】
<平均粒子径>
樹脂微粒子の平均粒子径は、160~350nmであることが好ましく、190~320nmであることがより好ましく、220~280nmであることが更に好ましい。なお、本発明における平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができ、得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とする。
また、樹脂微粒子の平均粒子径の変動係数(Cv値)は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。変動係数が30%以下であることにより、着色部が鮮やかな構造色を発現し、積層体のコントラストが良化する。変動係数は、粒子径の均斉度を表す数値であり、下記式により算出することができる。
式: 変動係数Cv値(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
[式において、標準偏差と平均粒子径の単位は同一である]
【0035】
<ガラス転移点>
樹脂微粒子がコアシェル型樹脂微粒子である場合は、コアのガラス転移点が80℃以上であることが好ましく、80~250℃であることがより好ましい。シェルのガラス転移点は、-20℃以上であることが好ましく、-20~100℃であることがより好ましく、-20~50℃であることが更に好ましい。コアのガラス転移点が80℃以上であると、コアの形状が、外部からの熱や力の影響で変形することが抑制される。これにより、パターン部Bの形成時や巻きとり時にパターン部Aが優れた発色を維持することができ、積層体のコントラストが良好となる。シェルのガラス転移点が-20℃以上であると、シェルが適切な流動性を有して粒子間の結着部位として機能するため、積層体の耐摩擦性が良好となる。
ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計)により測定することができる。
【0036】
<粒子間隙>
パターン部Aは粒子間隙を有することが好ましく、当該粒子間隙には空気が存在すことが好ましい。粒子間隙に空気が存在することで、粒子と粒子間隙の屈折率差が大きくなり着色部の発色性に優れ、積層体のコントラストが良好となる。なお、本発明において、窒素吸着法により最頻細孔径10~200nmの空隙が検出される場合、樹脂層の粒子間隙が空気であると判断できる。最頻細孔径は、Barrett- Joyner-Halenda法(BJH法)に基づいて解析して得られる、吸着側の窒素吸着等温線におけるピークトップを最頻細孔径として用いることができる。BJH法においては、Harkins-Jura型の式を用いて基準t曲線を算出し、体積頻度分布に基づいて解析する。本発明では、マイクロトラック・ベル株式会社製の、装置名BELSORP-maxIIを使用して測定した。
【0037】
<添加剤>
パターン部Aは、必要に応じて消泡剤、増粘剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、架橋剤、レベリング剤、ワックス、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤、アルコールなどの有機溶剤を含有してもよい。
【0038】
<パターン部Aの形成>
パターン部Aは、基材上に、樹脂微粒子を含むコーティング剤を塗布した後乾燥することで形成することができる。当該樹脂微粒子を含むコーティング剤は、樹脂微粒子と水とを含有することが好ましい。
なお、樹脂微粒子分散体は乾燥に伴い規則配列すると同時に少なからずクラックを生じることが知られている。
【0039】
<樹脂微粒子を含むコーティング剤の製造方法>
パターン部Aを形成するための、樹脂微粒子を含むコーティング剤の製造方法について説明する。樹脂微粒子を含むコーティング剤は、例えば、攪拌羽根、回転翼等を供えた攪拌機に、樹脂微粒子の水分散体と、任意の添加剤を仕込み、混合、及び攪拌して得ることができる。撹拌速度としては特に制限されることはなく、50~2000rpmで行うことが可能である。樹脂微粒子を含むコーティング剤の取り扱い、塗布性等の向上のために、さらに水や添加剤を適宜追加することもできる。
【0040】
<パターン部B>
パターン部Bは、樹脂微粒子が不規則に存在する構造を有し、構造色を示さない。本発明において「樹脂微粒子が不規則に存在する」とは、樹脂微粒子が規則配列していないことを指し、樹脂微粒子の形態が一部でも残存していればよく、樹脂微粒子が一部溶解して不定形状になっている場合、及び、樹脂微粒子のシェル同士が融着している場合を含む。樹脂微粒子が不規則に存在することにより、規則配列に伴って生じるようなクラックが少ない、平滑な塗膜になるため、不要な散乱が低減される。したがって、本発明の積層体はコントラスト、光沢性、及び耐摩擦性に優れる。なお、前記樹脂微粒子は、上述の<パターン部A>で説明した<樹脂微粒子>の態様を援用することができる。
パターン部Bは、不定形の樹脂微粒子を含むことが好ましい。パターン部Bは、パターン部A上の一部に、後述する樹脂微粒子を含まないコーティング剤を塗工することで形成することができるが、その際、パターン部Aに含まれていた樹脂微粒子は部分的に溶解し、一部が不定形の樹脂微粒子へ変化することが好ましい。
【0041】
パターン部Bは、入射角5°で拡散反射スペクトルを測定した場合、380nm~2000nmの波長範囲において、半値幅100nm未満かつ反射光強度5%以上の反射ピークを、示さないことが好ましい。パターン部Bが上記光学特性を示さないことで積層体のコントラストが良好となる。
【0042】
<その他の樹脂>
本発明のパターン部Bは、上述の樹脂微粒子以外にも樹脂を含むことができ、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、及びこれらの樹脂を複合した複合樹脂が挙げられ、これらを1種または2種以上を含むことができる。
【0043】
<添加剤>
本発明のパターン部Bは、構造色の色調調整や保護のために、着色剤や紫外線吸収剤や光安定剤を含有してもよい。パターン部Bがエチレン性不飽和単量体を含有する場合、塗膜を硬化させる目的で光重合開始剤を含んでもよい。
【0044】
<パターン部Bの形成>
パターン部Bは、パターン部A上の一部に、樹脂微粒子を含まないコーティング剤を塗工することで形成することができる。
【0045】
<樹脂微粒子を含まないコーティング剤>
樹脂微粒子を含まないコーティング剤は、非水性低分子成分を含むことが好ましい。樹脂微粒子を含まないコーティング剤は、更に、後述の非水性樹脂を含むことが好ましい。樹脂微粒子を含まないコーティング剤が、非水性樹脂を含む場合、これをパターン部A上に塗工することで、パターン部Bの形成及び後述する被覆層Cの形成を同時に行うことができる。
【0046】
<非水性低分子成分>
樹脂微粒子を含まないコーティング剤に含まれる非水性低分子成分としては、樹脂微粒子の形状及び規則配列構造を崩壊させることができれば特に限定されない。そのような非水性低分子成分としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤や、前述の<エチレン性不飽和単量体>の項に記載のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
【0047】
<被覆層>
本発明の積層体は、パターン部A及び/又はパターン部B上に、更に、被覆層を有することが好ましい。積層体が被覆層を有することによって、パターン部A及び/又はパターン部Bの樹脂微粒子及びクラックに由来する散乱が抑えられ、積層体のコントラスト、及び光沢性が更に良化する。
【0048】
本発明では、パターン部A上に位置する被覆層を被覆層D、パターンB上に位置する被覆層を被覆層Cと称する。
本発明の積層体は、被覆層C及び/又は被覆層Dを有することが好ましく、被覆層Cを有することがより好ましく、被覆層C及び被覆層Dを有することが特に好ましい。
【0049】
被覆層の膜厚は、0.1~10μmであることが好ましい。被覆層の膜厚が0.1μm以上であることにより、パターン部A及び/又はパターン部Bの樹脂微粒子及びクラックに由来する散乱が抑えられることで積層体のコントラスト、及び光沢性が更に良化する。
また、被覆層の膜厚が10μm以下であることにより、積層体面内の最大膜厚差が小さく抑えられ積層体の巻き取り性が良好となる。
【0050】
<着色剤>
被覆層は、着色剤を含むことが好ましい。被覆層が着色剤を含むことにより、裏刷り構成で非塗工面側から積層体を観測した際に構造色に関係のない散乱光を低減することができ、積層体のコントラストが良化する。着色剤の種類は特に制限されないが、例えば、顔料や染料を挙げることができ、中でも顔料が好ましい。本発明で利用可能な顔料は特に限定されず、一般に印刷インキや塗料で使用できる各種の無機顔料や有機顔料を好適に使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、及び、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。また有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が好適である。なおこれらに限らず、前記顔料はカラーインデックスのジェネリックネームで記載のものが適宜使用可能である。
【0051】
<添加剤>
被覆層は、必要に応じて消泡剤、増粘剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、架橋剤、レベリング剤、ワックス、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含んでもよい。
【0052】
<被覆層C>
被覆層Cがパターン部B上に位置することにより、パターン部Bの構造色の退色が更に促進され、且つ散乱が低減されるため、積層体のコントラスト、及び光沢性が良化する。被覆層Cの膜厚は、0.3~25μmであることが好ましく、0.8~20μmであることがより好ましく、1~18μmであることが更に好ましい。
【0053】
被覆層Cは、樹脂を含むことが好ましく、中でも非水性樹脂を含むことが好ましい。また、被覆層Cは、上述の通り、更に着色剤を含むことが好ましい。被覆層Cが着色剤を含む場合、その含有量は被覆層C中に0.1~50質量%であることが好ましい。
【0054】
<非水性樹脂>
被覆部Cに含まれうる非水性樹脂は、有機溶媒中に分散又は溶解し得る樹脂を表し、親水性樹脂は含まれない。非水性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、硝化綿、ポリアミド樹脂及びこれらの樹脂を複合した複合樹脂、からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むものであってよい。
非水性樹脂は、樹脂微粒子との親和性が高く積層体の耐摩擦性が向上するため、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、又はウレタン樹脂を含むことが好ましく、スチレンアクリル樹脂、又はウレタン樹脂であることがより好ましい。
【0055】
<被覆層Cの形成>
被覆層Cは、パターン部A又はパターン部B上に、樹脂を含むコーティング剤を塗布した後乾燥することで形成することができる。上記コーティング剤は、好ましくは非水性樹脂を含むコーティング剤である。また、パターン部A又はパターン部B上に、UVモノマーを含むコーティング剤を塗工し、UV照射することにより形成することもできる。
なお、パターン部A上に、樹脂を含み、かつ樹脂微粒子を含まないコーティング剤を塗布した後乾燥させることで、パターン部Bの形成、及び、パターン部B上における被覆層Cの形成を同時に行うことができる。
【0056】
<非水性樹脂を含むコーティング剤>
非水性樹脂を含むコーティング剤は、非水性樹脂、及び非水性低分子成分を含むことが好ましく、更に、着色剤を含むことがより好ましい。また、被覆層が含みうる添加剤を適宜含むことができる。前記非水性低分子成分としては、上述の<パターン部B>で説明した<非水性低分子成分>の態様を援用することができる。
【0057】
<非水性樹脂を含むコーティング剤の製造方法>
非水性樹脂を含むコーティング剤は、例えば、顔料を非水性樹脂等により分散機を用いて非水性低分子成分中に分散させ、得られた顔料分散体に非水性樹脂、各種添加剤や非水性低分子成分等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。25℃における非水性樹脂を含むコーティング剤の粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から300mPa・s以下の範囲であることが好ましい。
【0058】
<被覆層D>
被覆層Dがパターン部A上に位置することにより、パターンAの優れた構造色が維持され、積層体のコントラスト、及び光沢性が良化する。被覆層Dの膜厚は、0.2~12μmであることが好ましく、0.5~9μmであることがより好ましく、1~5μmであることが更に好ましい。
被覆層Dは、樹脂を含むことが好ましく、中でも水性樹脂を含むことが好ましい。また、被覆層Dは、上述の通り、更に着色剤を含むことも好ましい。
【0059】
<被覆層Dの形成>
被覆層Dは、パターン部A上に、樹脂を含むコーティング剤を塗布した後乾燥することで形成することができる。上記コーティング剤は、好ましくは水性樹脂を含むコーティング剤である。
【0060】
<水性樹脂を含むコーティング剤>
水性樹脂を含むコーティング剤は、水性樹脂、及び水性媒体を含むことが好ましく、更に、着色剤を含むことがより好ましい。また、被覆層が含みうる添加剤を適宜含むことができる。水性樹脂を含むコーティング剤に含まれる水性樹脂は、水性媒体中に分散又は溶解し得る樹脂を表す。水性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、及びこれらの樹脂を複合した複合樹脂、からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。なお、水性樹脂は、樹脂微粒子との親和性が高く積層体の耐摩擦性が向上するため、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、又はウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0061】
<水性媒体>
水性媒体の主成分は水であることが好ましいが、水に加えて、親水性有機溶剤を使用できる。具体的には、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度)に応じて、アルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等を含有させることができる。
ここで、本発明において、主成分が水であるとは、水性媒体中、水の含有量が最も多いことをいう。また、親水性有機溶剤とは、25℃で液体であり、かつ、25℃の水に対する溶解度が1質量%以上であるものを指す。
【0062】
<水性樹脂を含むコーティング剤の製造方法>
水性樹脂を含むコーティング剤は、例えば、顔料を水性樹脂等により分散機を用いて水性媒体中に分散させ、得られた顔料分散体に水性樹脂、各種添加剤や水性媒体等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。25℃における水性樹脂を含むコーティング剤の粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から300mPa・s以下の範囲であることが好ましい。
【0063】
<基材>
基材は特に制限されず、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等の熱可塑性樹脂基材;アルミニウム箔等の金属基材;ガラス基材、コート紙等の紙基材;布基材が挙げられる。
基材は、塗布面が平滑であってもよく、凹凸のついたものであってもよい。また基材は、透明、半透明、不透明のいずれであってもよく、パターン部Aの発色をより明瞭にするため、あらかじめ黒色等に着色された基材を用いてもよい。また、これら基材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の層から構成される積層体であってもよい。
基材の厚みは、特に制限されず、通常5~500μmの範囲で適宜選択できる。
【0064】
<プライマー層>
本発明の積層体は、基材上でのパターン部A及びパターン部Bの定着性をより高めるため、プライマー層を有していることが好ましい。プライマー層は、基材とパターン部A及びパターン部Bとの間に位置し、パターン部Aの形成前に、基材上にプライマーコーティング剤を塗布することで形成できる。
プライマー層の厚みは、0.5~30μmであることが好ましく、0.8~15μmであることがより好ましく、1~5μmであることが特に好ましい。
【0065】
プライマー層は、パターン部A及びパターン部Bへの影響を抑制する観点から、未反応成分や残留溶剤の含有率が低いことが好ましく、水性樹脂により形成されることが好ましい。
【0066】
プライマー層を形成する水性樹脂は特に制限されず、基材及びパターン部Aの種類に応じて適宜選択できる。好ましくは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、及びこれらの樹脂を複合した複合樹脂、からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである。中でも、基材及びパターン部Aへの密着性に優れる点、プライマー層の耐水性、耐溶剤性及び透明性に優れる点から、好ましくは、アクリル樹脂及び/又はウレタン樹脂を含み、より好ましくはアクリル樹脂を含み、さらに好ましくはスチレンを構成単位に含むアクリル樹脂(以下、スチレンアクリル樹脂)を含むものである。スチレンアクリル樹脂を用いると、基材やパターン部Aへの密着性、プライマー層の基材追従性及び耐水性に優れ、積層体の基材追従性、耐摩擦性及び耐水性が良好となるため好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0067】
<プライマーコーティング剤>
プライマー層の形成方法は特に制限されないが、例えば、プライマー層を形成する水性樹脂及び水性媒体を含むプライマーコーティング剤を、基材上に塗布し、必要に応じて乾燥することで形成することができる。
プライマーコーティング剤は、積層体の諸物性に悪影響を及ぼさない範囲で、塗工性、積層体のコントラスト、光沢性、及び巻取り性を向上させる目的で、親水性溶剤、無彩黒色微粒子、光熱変換剤、架橋剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0068】
<積層体塗工面の段差>
本発明の積層体は塗工面の段差(最大の膜厚差)が、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが好ましく、0~3μmであることが更に好ましい。段差が10μm以下であることにより、積層体を巻き取った際に塗膜の凹凸によるフィルムのしわが生じずコントラスト及び光沢性が良好となる。
【0069】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、基材上又はプライマー層上に、樹脂微粒子を含むコーティング剤を塗工して、前記樹脂微粒子の規則配列による構造色を示すパターン部Aを形成する工程1と、
前記パターン部Aの一部に、樹脂微粒子を有しないコーティング剤を塗工することで、前記パターン部Aを、構造色を示さないパターン部Bに変化させる工程2を含む。
【0070】
前記工程2においては、工程1において形成されたパターン部Aの樹脂微粒子の規則配列が、樹脂微粒子を有しないコーティング剤の塗工により崩壊し、樹脂微粒子が不規則に存在するパターン部Bが形成されることが好ましい。
また、前記工程2においては、工程1において形成されたパターン部Aにおける樹脂微粒子が、樹脂微粒子を有しないコーティング剤の塗工により部分的に溶解し、一部が不定形の樹脂微粒子へ変化することが好ましい。
また、前記工程2においては、樹脂微粒子を有しないコーティング剤として、非水性樹脂を含むものを用いることで、パターン部Bの形成と、被覆層Cの形成を同時に行うことが好ましい。
【0071】
また、本発明の積層体の製造方法は、更に、パターン部A上に、水性樹脂を含むコーティング剤を塗工して、被覆層Dを形成する工程を含むことが好ましい。
【0072】
<塗工方法>
各種コーティング剤の塗工方式としては、特に限定されず、公知の印刷方法を用いて形成することができる。印刷方式としては、例えば、インクジェット法、スプレー法、ディッピング法、スロットダイ法、スピンコート法のような無版印刷方式;オフセットグラビアコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、キスコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター、ロールコーターのような有版印刷方式が挙げられる。
【0073】
樹脂微粒子を含むコーティング剤の塗工方式は、スプレー法、ディッピング法、スロットダイ法、スピンコート法、グラビアコーター、ドクターコーター、キスコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーターであることが好ましい。樹脂微粒子を含むコーティング剤の塗工方式が上記のいずれかであることにより、パターン部Aの発色性が優れ積層体のコントラストが良化する。
【0074】
また、樹脂微粒子を含むコーティング剤の塗工速度は、0.1~100m/minであることが好ましい。塗工速度が100m/min以下であることにより、微粒子が精密な規則配列を形成しパターン部Aの発色性に優れる。
【0075】
樹脂微粒子を有しないコーティング剤の塗工方式は、パターン形成が容易であるためインクジェット法、スプレー法、オフセットグラビアコーター、グラビアコーター、フレキソコーターが好ましい。
【0076】
また、樹脂微粒子を有しないコーティング剤の塗工速度は、20m/min以上であることが好ましい。塗工速度が20m/min以上であることにより、鮮明なパターン部Bを形成可能であり積層体の生産性も向上する。
【実施例0077】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0078】
<平均粒子径、Cv値>
平均粒子径は、微粒子分散体を500倍に水希釈し、該希釈液約5mlを動的光散乱測定法(測定装置はナノトラックUPA(株)マイクロトラックベル社製)により測定を行い、得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とした。また、下記式により、粒子径の均斉度を表す変動係数Cv値を算出した。
式: Cv値(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
[式において、標準偏差と平均粒子径の単位は同一である]
【0079】
<ガラス転移点>
ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計TAインスツルメント社製)により測定した。具体的には、樹脂微粒子分散体を乾固したサンプル約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるDSC曲線の吸熱側へのベースラインシフト(変曲点)チャートの吸熱ピークを読み取り、ガラス転移点を得た。
【0080】
<酸価>
酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
【0081】
<アミン価>
アミン価は、試料1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。試料を0.5~2g精秤し(試料固形分:Sg)、精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
(式)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0082】
<重量平均分子量>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW2500
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW3000
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW4000
東ソー株式会社製TSKgelguardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0083】
<樹脂微粒子の形状及び配列、並びに各層の膜厚の測定>
樹脂微粒子の形状及び配列、並びに各層の膜厚については、積層体の断面を、走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM-7800F)で観察して測定した。
【0084】
<半値幅、反射波長、及び反射光強度の測定>
積層体について紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製V-770D、積分球ユニットISN-923)を用いて、波長350~2000nmの範囲で拡散反射スペクトルを測定した。各波長における反射率は、反射率が既知の標準白板(ラブスフェア社製SRS-99-010)をリファレンスとして用いて測定した相対反射率である。
得られた反射スペクトル中で最も反射強度が高い反射ピークについて、半値幅、反射波長、及び反射光強度を読み取った。
【0085】
<樹脂微粒子の製造>
[製造例1]コアシェル型樹脂微粒子の製造
スチレン99.0部、アクリル酸1.0部、アクアロンAR-10(第一工業製薬株式会社製、アニオン性の反応性界面活性剤(ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩類))の25%水溶液4.0部(固形分1.0部)、イオン交換水39.0部を混合、撹拌して一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液を調製した。撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水95.0部と、一段目の乳化液のうちの1.5%を加えた。反応容器の内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの2.5%水溶液6.0部(固形分0.15部)を添加して重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を維持しながら、乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.2部(固形分0.11部)を2時間かけて滴下しながら反応させ、コア粒子を合成した。
次に、スチレン27.6部、n-ブチルアクリレート13.2部、メタクリル酸2.2部、アクアロンAR-10の25%水溶液1.7部(固形分0.4部)、イオン交換水16.7部を混合、撹拌して、二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液を調製した。一段目の滴下完了から20分後、二段目の乳化液の滴下を開始した。内温を80℃に保ちながら二段目の乳化液と過硫酸カリウムの2.5%水溶液1.6部(固形分0.04部)を2時間かけて滴下しながら反応を進め、コアシェル型樹脂微粒子の水分散体を得た。
反応後、水を添加して固形分を45.0%に調整した。また、25%アンモニア水(NH3(aq))を1.7部添加してコアシェル型樹脂微粒子を中和した。上記アンモニア水の配合量は、シェルに含まれる全カルボキシ基を中和する量(以下、1当量)に相当する。得られた微粒子の平均粒子径は258nm、Cv値は12.9%、コアのTgは100.1℃、シェルのTgは51.8℃であった。
【0086】
[製造例2~5]コアシェル型樹脂微粒子の製造
製造例2~5では、反応容器に仕込む一段目の乳化液量を、製造例1の1.5%から、0.9%、1.0%、3.0%、3.3%にそれぞれ変更した。それ以外は、製造例1と同様にして、表1に示す通り、コアシェル型樹脂微粒子の水分散体を得た。反応容器の水は、エチレン性不飽和単量体の総量に対して67%になるように仕込んだ。エチレン性不飽和単量体の乳化液は、乳化液中のエチレン性不飽和単量体の濃度が69%、界面活性剤の濃度が0.69%になるよう、水を添加して調製した。過硫酸カリウム2.5%水溶液において、反応開始時/一段目の乳化液の滴下時/二段目乳化液の滴下時の配分は、製造例1と同じ比率にした。また、シェルに含まれるカルボキシ基に対して1当量のアンモニア水を添加してコアシェル型樹脂微粒子を中和した。
【0087】
【0088】
[製造例6]単一構造樹脂微粒子の製造
スチレン99.0部、メタクリル酸1.0部、アクアロンAR-10の25%水溶液部3.6部(固形分0.9部)、イオン交換水40.4部を予め混合、撹拌して、エチレン性不飽和単量体の乳化液を調製した。
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水68.9部と乳化液のうちの3%とを加え、内温を80℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの2.5%水溶液6.0部(固形分0.15部)を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に保ちながら、乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液6.0部(固形分0.15部)を3時間かけて滴下し、更に4時間反応させてスチレンアクリル樹脂の水分散体を得た。反応完了後、樹脂微粒子に含まれるカルボキシ基に対して1当量のアンモニア水を添加して中和し、イオン交換水で水分散体の固形分を45.0%に調整した。得られた微粒子の平均粒子径は251nm、Cv値は13.4%、Tgは116.1℃であった。
【0089】
[製造例7]樹脂微粒子の製造
スチレン40.2部、n-ブチルアクリレート57.8部、メタクリル酸2.0部、アクアロンAR-10の25%水溶液部4.0部(固形分1.0部)、イオン交換水40.4部を予め混合、撹拌して、エチレン性不飽和単量体の乳化液を調製した。
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水68.9部と乳化液のうちの3%とを加え、内温を80℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの2.5%水溶液6.0部(固形分0.15部)を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に保ちながら、乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液6.0部(固形分0.15部)を3時間かけて滴下し、更に4時間反応させてスチレンアクリル樹脂の水分散体を得た。反応完了後、樹脂微粒子に含まれるカルボキシ基に対して1当量のアンモニア水を添加して中和し、イオン交換水で水分散の固形分を45.0%に調整した。得られた微粒子の平均粒子径は225nm、Cv値は13.9%、Tgは7.4℃であった。
【0090】
[製造例8]ウレタン樹脂1の製造
3-メチル1,5ペンタンジオールとセバシン酸の縮合物である、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール 100部、1,4-ブタンジオール 1部、イソホロンジイソシアネート 28.5部及び酢酸エチル32.1部を混合して、窒素雰囲気下で90℃、5時間反応させて、末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを得た。
次いで、イソホロンジアミン 11.0部、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン1.0部、ジブチルアミン 1.0部及び混合溶剤1(酢酸エチル/イソプロパノール=70/30(質量比))298.1部を攪拌混合し、得られた末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加した。80℃で1時間反応させ、固形分30質量%、アミン価6.5mgKOH/g、水酸基価3.8mgKOH/g、重量平均分子量50,000のウレタン樹脂1の溶液を得た。ウレタン樹脂1の塩素含有率は0質量%であった。
【0091】
<樹脂微粒子を含むコーティング剤>
[製造例9]
製造例1のコアシェル型樹脂微粒子の水分散体100.0部に、界面活性剤としてサーフィノール420(日新化学工業社製、アセチレン系ノニオン性界面活性剤)1.0部を添加して攪拌し、樹脂微粒子を含むコーティング剤を調製した。
【0092】
[製造例10~15]
表2に示す配合組成に変更した以外は、製造例9と同様の方法により樹脂微粒子を含むコーティング剤用組成物を調製した。
【0093】
【0094】
<プライマーコーティング剤>
[製造例16]
製造例7の樹脂微粒子の水分散体100.0部に、界面活性剤としてサーフィノール420(日新化学工業社製、アセチレン系ノニオン性界面活性剤)1.0部を添加して攪拌し、プライマーコーティング剤を調製した。
【0095】
<非水性樹脂を含むコーティング剤>
[製造例17]
大成ファインケミカル製7550MA(固形分47.5%、酢酸エチル/IPA溶液、油性スチレンアクリル樹脂)210.0部に、非水溶性低分子成分としてメチルエチルケトン190.0部を添加して攪拌し、非水性樹脂を含むコーティング剤を調製した。
【0096】
[製造例18~27]
表3に示す配合組成に変更した以外は、製造例17と同様の方法により非水性樹脂を含むコーティング剤を調製した。
【0097】
【0098】
<水性樹脂を含むコーティング剤>
[製造例28]
BASF社製JONCRYL PDX7326 260.0部に、界面活性剤としてサーフィノール420 1.0部、着色剤として三菱カーボンブラック#40 5.0部、水240.0部を添加して固形分を20%に調整後、攪拌し、水性樹脂を含むコーティング剤を調製した。
【0099】
[製造例29~32]
表4に示す配合組成に変更した以外は、製造例28と同様の方法により水性樹脂を含むコーティング剤を調製した。
【0100】
【0101】
表2~表4における略号を以下に示す。
スチレンアクリル1:大成ファインケミカル製7550MA(固形分47.5%、酢酸エチル/IPA溶液、油性スチレンアクリル樹脂)
ウレタン1:製造例8で製造したウレタン樹脂1
塩ビアクリル:巴工業製ビンノールE15/40A(油性塩ビ-アクリル樹脂)
ポリアミド:築野食品工業製ベジケムグリーン725(固形分25%、酢酸エチル/IPA=1/1溶液、油性ポリアミド樹脂)
硝化綿:TNC INDUSTRIAL製NC TR2(固形分25%、酢酸エチル/IPA=1/1溶液、油性硝化綿樹脂)
ポリエステル1:東洋紡製バイロン200(油性ポリエステル樹脂)
スチレンアクリル2:BASF社製JONCRYL PDX7326(固形分38.5%、水性スチレンアクリル樹脂)
ウレタン2:第一工業製薬株式会社製スーパーフレックス210(固形分35%、水性ポリウレタン樹脂)
ポリオレフィン:日本製紙株式会社製アウローレンAE―301(固形分30%、水性ポリオレフィン樹脂)
ポリエステル2:互応化学株式会社製プラスコートZ―221(固形分20%、水性ポリエステル樹脂)
MEK:メチルエチルケトン
EA:酢酸エチル
MCH:メチルシクロヘキサン
IPA:イソプロパノール
サーフィノール420:日新化学工業社製アセチレン系ノニオン性界面活性剤
SNシックナー617:サンノプコ株式会社製アクリル系増粘剤
三菱カーボンブラック#40:三菱ケミカル社製、カーボンブラック
TMP-A:共栄社化学株式会社製ライトアクリレートTMP―A(トリメチロールプロパントリアクリレート)
Omnirad1173:IGM Resins社製Omnirad1173 (2-ヒドロキシー2-メチル-1-フェニルプロパノン)
【0102】
<積層体の製造>
[実施例1]
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、表5に示すプライマーコーティング剤を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、70℃で1分間乾燥しプライマー層を形成した。次に、プライマー層上に表5に示す樹脂微粒子を含むコーティング剤を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃で1分間乾燥し、パターン部Aを形成した。更に、前記パターン部Aの一部に非水性樹脂を含むコーティング剤を、乾燥後の厚みが1.5μmになるように版を選択しグラビア印刷で塗工し、パターン部B及び被覆層Cを形成した。次いで、パターン部A及び被覆層C上に、水性樹脂を含むコーティング剤を、乾燥後の厚みが1.5μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、PET基材上にプライマー層が形成され、更にプライマー層上に構造色を示すパターン部A、及び、構造色を示さないパターン部Bを有し、パターン部B上に被覆層Cを有し、パターン部A上に被覆層Dを有する積層体を得た。
【0103】
[実施例2~6、8、11~25、27~31]
表5に示す組み合わせに変更した以外は、実施例1と同様の方法により積層体を作製した。なお、実施例14~17ではパターン部Aの厚みがそれぞれ3.0、6.0、25.8、33.1μmになるように調整した。
実施例18~20では、非水性樹脂を含むコーティング剤、及び水性樹脂を含むコーティング剤を、被覆層の乾燥後の厚みが表5に示した厚みになるように調整した。
【0104】
[実施例7]
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、表5に示す樹脂微粒子を含むコーティング剤を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃で1分間乾燥し、パターン部Aを形成した。更に、前記パターン部Aの一部に非水性樹脂を含むコーティング剤を、乾燥後の厚みが1.5μmになるように版を選択しグラビア印刷で塗工し、パターン部B及び被覆層Cを形成した。次いで、パターン部A及び被覆層C上に、水性樹脂を含むコーティング剤を、乾燥後の厚みが1.5μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、PET基材上に構造色を示すパターン部A、及び、構造色を示さないパターン部Bを有し、パターン部B上に被覆層Cを有し、パターン部A上に被覆層Dを有する積層体を得た。
【0105】
[実施例9]
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、表5に示すプライマーコーティング剤を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、70℃で1分間乾燥しプライマー層を形成した。次に、プライマー層上の一部に表5に示す樹脂微粒子を含むコーティング剤を乾燥後の厚みが10.0μmになるように版を選択してグラビア印刷し、パターン部Aを形成した。更に、パターン部Aの形成されていないプライマー層上に製造例15の単一構造樹脂微粒子を含むコーティング剤を、乾燥後の厚みが10.0μmになるように版を選択しグラビア印刷で塗工し、パターン部Bを形成した。次いで、パターン部A及びパターン部B上に、水性樹脂を含むコーティング剤を、乾燥後の厚みが1.5μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、PET基材上にプライマー層が形成され、更にプライマー層上に構造色を示すパターン部A、及び、構造色を示さないパターン部Bを有し、パターン部A上に被覆層Dを有する積層体を得た。
【0106】
[実施例10]
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、表5に示すプライマーコーティング剤を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、70℃で1分間乾燥しプライマー層を形成した。次に、プライマー層上に表5に示す樹脂微粒子を含むコーティング剤を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃で1分間乾燥し、パターン部Aを形成した。更に、前記パターン部Aの一部に樹脂微粒子を含まないコーティング剤としてMEK(メチルエチルケトン)を、グラビア印刷で塗布、乾燥し、パターン部Bを形成し、PET基材上にプライマー層が形成され、更にプライマー層上に構造色を示すパターン部A、及び、構造色を示さないパターン部Bを有する積層体を得た。
【0107】
[実施例26]
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、表5に示すプライマーコーティング剤を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、70℃で1分間乾燥しプライマー層を形成した。次に、プライマー層上に表5に示す樹脂微粒子を含むコーティング剤を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃で1分間乾燥し、パターン部Aを形成した。更に、前記パターン部Aの一部にUVモノマー及び開始剤を含むコーティング剤を、乾燥後の厚みが1.5μmになるように版を選択しフレキソ印刷で塗工した後、高圧水銀ランプで500mJ/cm2の紫外線を照射し、パターン部B、及び被覆層Cを形成した。次いで、パターン部A及び被覆層C上に、水性樹脂を含むコーティング剤を、乾燥後の厚みが1.5μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、PET基材上にプライマー層が形成され、更にプライマー層上に構造色を示すパターン部A、及び、構造色を示さないパターン部Bを有し、パターン部B上に被覆層Cを有し、パターン部A上に被覆層Dを有する積層体を得た。
【0108】
[比較例1]
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、表6に示すプライマーコーティング剤を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、70℃で1分間乾燥しプライマー層を形成した。次に、プライマー層上に表6に示す樹脂微粒子を含むコーティング剤を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃で1分間乾燥し、パターン部Aを形成した。更に、パターン部A上の全面に、MEK(メチルエチルケトン)を、バーコーターで塗工し、70℃で1分間乾燥して、PET基材上にプライマー層及びパターン部Bを有する積層体を得た。
【0109】
[比較例2]
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、表6に示すプライマーコーティング剤を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、70℃で1分間乾燥しプライマー層を形成した。次に、プライマー層上に表6に示す樹脂微粒子を含むコーティング剤を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃で1分間乾燥してパターン部Aを形成し、PET基材上にプライマー層が形成され、更にプライマー層上に構造色を示すパターン部Aを有する積層体を得た。次いで、パターン部A上に、非水性樹脂を含むコーティング剤を、乾燥後の厚みが1.5μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、PET基材上にプライマー層が形成され、更にプライマー層上に構造色を示さないパターン部Bを有し、パターン部B上に被覆層Cを有する積層体を得た。
【0110】
[比較例3]
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、表6に示すプライマーコーティング剤を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、70℃で1分間乾燥しプライマー層を形成した。次に、プライマー層上に表6に示す樹脂微粒子を含むコーティング剤を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃で1分間乾燥してパターン部Aを形成し、PET基材上にプライマー層が形成され、更にプライマー層上に構造色を示すパターン部Aを有する積層体を得た。
次いで、サーマルヘッドを備えたサーマルプリンター(ブラザー工業社製PocketJet PJ-673)によりパターン部Bを形成し、PET基材上にプライマー層が形成され、更にプライマー層上に構造色を示すパターン部A及び構造色を示さないパターン部Bを有する積層体を得た。
【0111】
<積層体の評価>
得られた積層体について、下記の通り評価を行った。結果を表5、6に示す。
【0112】
[コントラスト]
積層体について紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製V-770D、積分球ユニットISN-923)を用いて、波長350~2000nmの範囲で拡散反射スペクトルを測定した。各波長における反射率は、反射率が既知の標準白板(ラブスフェア社製SRS-99-010)をリファレンスとして用いて測定した相対反射率である。全ての積層体について、塗工面側から(表刷り構成を想定)と、非塗工面側から(裏刷り構成を想定)、パターン部A及びパターン部Bについて拡散反射スペクトルを測定した。得られた反射スペクトルについて、構造色に由来する反射率の最大値と、構造色によらないベースラインの反射率の差分(△R)を算出し、塗工面側と非塗工面側でそれぞれ、パターン部AにおけるΔRとパターン部BにおけるΔRの差分をコントラストとして評価し、優れた結果を採用した。
実施例10、11では塗工面側のコントラスト評価結果を採用し、実施例1~9、12~31では非塗工面側の評価結果を採用している。
(評価基準)
S:コントラストが70%以上(非常に良好)
A:コントラストが60%以上、70%未満(良好)
B:コントラストが5%以上、60%未満(使用可)
C:コントラストが5%未満、又は構造色を示すパターン部Aが存在しない(使用不可)
【0113】
[光沢性]
積層体のパターン部A及びパターン部Bについて、塗工面側からBYK-Gardner社製Micro-TRI-grossmeterを用いて、入射角60°、受光角60°の光沢値を測定した。
(評価基準)
S:パターン部Aとパターン部Bの光沢値の和が50以上(非常に良好)
A:パターン部Aとパターン部Bの光沢値の和が40以上、50未満(良好)
B:パターン部Aとパターン部Bの光沢値の和が30以上、40未満(使用可)
C:パターン部Aとパターン部Bの光沢値の和が30未満(使用不可)
【0114】
[耐摩擦性]
積層体のパターン部A及びパターン部Bについて、塗工面の耐摩擦性をテスター産業(株)製の学振型摩擦堅牢度試験器を用いて測定した。なお、測定条件は、試験片20mm幅、荷重200g、10回往復、対カナキン3号とした。
(評価基準)
A:パターン部A、パターン部Bともに外観変化なし(良好)
B:パターン部A、又はパターン部Bのいずれかが白化(使用可)
C:積層体の全面が白化(使用不可)
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
上記結果から、比較例1は、パターン部Aを有しないため、コントラストが不良であり、比較例2は、パターン部Bを有しないため、コントラスト及び耐摩擦性が不良であり、比較例3は、パターン部Bの樹脂微粒子が規則配列しているため、光沢性が不良であった。
一方、実施例は、樹脂微粒子が規則配列したパターン部A、及び樹脂微粒子が不規則に存在するパターン部Bを有するため、コントラスト、光沢性、及び耐摩擦性が良好であった。
パターン部Aが、入射角5°で拡散反射スペクトルを測定した場合、380nm~2000nmの波長範囲において、半値幅100nm未満かつ反射光強度5%以上の反射ピークを示す、請求項1に記載の積層体。
パターン部Bが、入射角5°で拡散反射スペクトルを測定した場合、380nm~2000nmの波長範囲において、半値幅100nm未満かつ反射光強度5%以上の反射ピークを示さない、請求項1又は2に記載の積層体。