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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144980
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057190
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】醍醐 宏典
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA18
2C056EB12
2C056EB29
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA33
2C056KD06
(57)【要約】
【課題】記録ヘッドに紙粉が付着することに起因するインクの吐出不良を抑制する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、シートを搬送する搬送ベルトと、搬送ベルト上のシートに向けてインクを吐出する記録ヘッドと、搬送ベルトの上方領域の空気を吸引する吸引部と、搬送ベルトの上方領域のうち予め定められた検知位置の紙粉量を検知する紙粉検知部と、を備え、検知位置は、記録ヘッドよりもシート搬送方向の上流側の位置であって、搬送ベルトのシート搬送方向と直交する幅方向の中心よりも搬送ベルトの上方領域に生じる気流の下流側の位置である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸引孔を有し、シートを担持して移動することにより、前記シートを搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトと対向して配置され、前記搬送ベルト上の前記シートに向けてインクを吐出することにより、前記シートに画像を形成する記録ヘッドと、
前記複数の吸引孔を介して前記搬送ベルトの上方領域の空気を吸引する吸引部と、
前記搬送ベルトの上方領域のうち予め定められた検知位置の紙粉量を検知する紙粉検知部と、を備え、
前記検知位置は、前記記録ヘッドよりもシート搬送方向の上流側の位置であって、前記搬送ベルトの前記シート搬送方向と直交する幅方向の中心よりも前記搬送ベルトの上方領域に生じる気流の下流側の位置である、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記吸引部は、前記幅方向の一方側から他方側に向かって空気を流通させ、前記幅方向の他方側に配置された排気口を介して空気を排気し、
前記検知位置は、前記搬送ベルトの前記幅方向の中心よりも前記幅方向の他方側の位置である、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記検知位置は、前記搬送ベルトにより搬送される前記シートの前記幅方向の端縁と重なる位置である、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドのインク吐出面を清掃する清掃部と、
前記清掃部を制御する制御部と、を備え、
前記紙粉検知部により検知された紙粉量が閾値を超えたとき、前記制御部は、新たな前記シートの前記搬送ベルトへの給送を停止し、搬送中の前記シートに対する画像形成が完了してから、前記清掃部に前記インク吐出面の清掃を行わせる処理、および、次回行うべき前記インク吐出面に対する清掃の実行タイミングを予め設定されたタイミングよりも早くする処理、の少なくとも一方を行う、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記吸引部を制御する制御部を備え、
前記紙粉検知部により検知された紙粉量が閾値を超えたとき、前記制御部は、前記吸引部の吸引力を予め設定された初期値よりも大きくする、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクを吐出する記録ヘッドを備える。記録ヘッドに紙粉が付着すると、インクの吐出不良が発生する。
【0003】
そこで、特許文献1では、紙粉量が検知される。そして、検知した紙粉量に基づき、紙粉の飛散を抑制する処理が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-203408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置内の紙粉量は場所によって異なる。たとえば、紙粉量が少ない場所で紙粉検知が行われると、他の場所では紙粉量が多いにもかかわらず、紙粉量が少ないと判断される場合がある。この場合には、紙粉量が多いときに行うべき対策が行われない。その結果、記録ヘッドに紙粉が付着してインクの吐出不良が発生する。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、記録ヘッドに紙粉が付着することに起因するインクの吐出不良を抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によるインクジェット記録装置は、複数の吸引孔を有し、シートを担持して移動することにより、シートを搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトと対向して配置され、搬送ベルト上のシートに向けてインクを吐出することにより、シートに画像を形成する記録ヘッドと、複数の吸引孔を介して搬送ベルトの上方領域の空気を吸引する吸引部と、搬送ベルトの上方領域のうち予め定められた検知位置の紙粉量を検知する紙粉検知部と、を備える。検知位置は、記録ヘッドよりもシート搬送方向の上流側の位置であって、搬送ベルトのシート搬送方向と直交する幅方向の中心よりも搬送ベルトの上方領域に生じる気流の下流側の位置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成では、記録ヘッドに紙粉が付着することに起因するインクの吐出不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるインクジェット記録装置の概略図である。
図2】一実施形態によるインクジェット記録装置のベルトユニットを上方から見た図である。
図3】一実施形態によるインクジェット記録装置のベルトユニットおよびその周辺を幅方向から見た図である。
図4】一実施形態によるインクジェット記録装置のブロック図である。
図5】一実施形態によるインクジェット記録装置の内部に存在する紙粉量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図5を参照し、本発明の一実施形態について、記録媒体としてのシートSに印刷を行うプリンター100を例にとって説明する。シートSの種類は特に限定されない。たとえば、シートSとして用紙が使用される場合がある。この場合には、シートSから紙粉が飛散し得る。
【0011】
なお、プリンター100は、平坦な床面に設置される。以下の説明では、プリンター100が設置される平坦な床面に対して垂直な方向を上下方向と定義する。
【0012】
<プリンターの全体構成>
図1に示すように、本実施形態のプリンター100(「インクジェット記録装置」に相当)は、第1搬送部11および第2搬送部12を備える。第1搬送部11は、給紙カセットCAにセットされたシートSを給紙し、印刷位置に向けてシートSを搬送する。プリンター100による印刷ジョブでは、印刷位置を通過するシートSに対してインクが吐出される。これにより、シートSに画像が印刷される。言い換えると、プリンター100による印刷ジョブでは、インクからなる画像がシートSに形成される。第2搬送部12は、印刷済みのシートSを搬送する。第2搬送部12は、印刷済みのシートSを排出トレイETに排出する。
【0013】
第1搬送部11は、レジストローラー対10を含む複数の搬送ローラー部材を備える。図1では、複数の搬送ローラー部材のうちレジストローラー対10にのみ符号を付す。複数の搬送ローラー部材は、それぞれ、回転することによってシートSを搬送する。
【0014】
レジストローラー対10は、後述するベルトユニット2にシートSを給送する給送部として機能する。レジストローラー対10は、互いに圧接する一対のローラーを含む。レジストローラー対10を構成する一対のローラー間にレジストニップが形成される。給紙カセットCAから給送されたシートSがレジストニップに進入する。レジストローラー対10は、回転することにより、後述するベルトユニット2に向けてシートSを搬送する。
【0015】
なお、シートSの前端がレジストニップに到達した時点では、レジストローラー対10は回転を停止している。一方で、レジストローラー対10よりもシートSの搬送方向上流側の搬送ローラー部材は回転している。これにより、シートSの斜行が矯正される。
【0016】
プリンター100は、ベルトユニット2を備える。ベルトユニット2は、第1搬送部11からシートSを受け入れ、シートSを搬送する。ベルトユニット2は、搬送ベルト21を備える。搬送ベルト21は、無端状である。搬送ベルト21は、複数の張架ローラー200によって回転可能に張架される。
【0017】
複数の張架ローラー200は、回転可能に支持される。複数の張架ローラー200のうち1つは、ベルトモーター71(図4参照)に連結され、ベルトモーター71の駆動力が伝達されて回転する。ベルトモーター71に連結された張架ローラー200が回転することにより、搬送ベルト21が移動し、他の張架ローラー200が従動して回転する。言い換えると、搬送ベルト21は、回転する。
【0018】
搬送ベルト21は、第1搬送部11からシートSを受け入れる。第1搬送部11からのシートSは搬送ベルト21の外周面に至る。搬送ベルト21は、その外周面にシートSを担持する。搬送ベルト21は、シートSを担持して移動(すなわち、回転)することにより、シートSを搬送する。
【0019】
以下の説明では、搬送ベルト21によるシートSの搬送方向を単に「シート搬送方向」と称し、シート搬送方向と直交する方向を単に「幅方向」と称する。シート搬送方向および幅方向と直交する方向がプリンター100の上下方向である。幅方向はプリンター100の前後方向でもある。なお、図1では、図面の右から左に向かう方向がシート搬送方向であり、紙面に対して垂直な方向が幅方向である。
【0020】
搬送ベルト21は、図2に示すように、複数の吸引孔210を有する。図2では、便宜上、一部の吸引孔210にのみ符号を付す。複数の吸引孔210は、それぞれ、搬送ベルト21の厚み方向に貫通する。複数の吸引孔210は、搬送ベルト21の全域にわたって規則的に配列される。すなわち、複数の吸引孔210は、シート搬送方向および幅方向に配列される。たとえば、複数の吸引孔210は、千鳥状に配列される。
【0021】
また、プリンター100は、図1に示すように、吸引部3を備える。吸引部3は、搬送ベルト21の内周側から、複数の吸引孔210を介して、搬送ベルト21の上方領域の空気を吸引する。搬送ベルト21上にシートSが存在する場合には、搬送ベルト21上のシートSが吸引される。これにより、搬送ベルト21の外周面にシートSが吸着される。すなわち、吸引部3は、搬送ベルト21の内周側から搬送ベルト21上のシートSを吸引することにより、搬送ベルト21の外周面にシートSを吸着させる。
【0022】
吸引部3は、図3に示すように、吸引ケース31と、ガイド板32と、ファン33と、ダクト34と、を備える。吸引ケース31、ガイド板32およびファン33は、搬送ベルト21の内周側に配置される。
【0023】
吸引ケース31は、たとえば、樹脂製である。吸引ケース31は、上部が開口された有底筒状である。吸引ケース31は、その内部空間を空気流通室として有する。吸引ケース31の内部空間に負圧が発生することにより、搬送ベルト21の上方領域の空気が吸引ケース31の内部空間に吸引される。
【0024】
ガイド板32は、たとえば、樹脂製である。ガイド板32は、上下方向を板厚方向とする。ガイド板32は、吸引ケース31の上部開口を覆う。ガイド板32は、搬送ベルト21の内周面に接触して搬送ベルト21を支持する。
【0025】
ガイド板32は、それぞれが板厚方向(すなわち、上下方向)に貫通する複数の貫通孔320を有する。たとえば、ガイド板32は、その上面から下方に凹む溝321を複数有する。複数の溝321は、それぞれ、シート搬送方向を長手方向とする。複数の溝321は、ガイド板32の全域に配置される。複数の溝321は、シート搬送方向および幅方向に配列される。そして、複数の溝321の各底部に貫通孔320が形成される。
【0026】
ファン33は、吸引装置の一例である。ファン33は、吸引ケース31の内部空間(すなわち、空気流通室)に接続される。たとえば、吸引ケース31の底部に吸引口(図示せず)が形成される。当該吸引口を介して、ファン33は、吸引ケース31の内部空間の空気を吸引する。これにより、ファン33は、吸引ケース31の内部空間に負圧を発生させる。ファン33の設置数は特に限定されず、1つでもよい、複数でもよい。
【0027】
ダクト34は、ファン33を内部に収容する。すなわち、ダクト34は、ファン33が設置される部分を搬送ベルト21の内周側に有する。ファン33が駆動することにより、ダクト34の内部で気流が発生する。ダクト34を介して、ファン33により吸引された空気がプリンター100の外部に排気される。
【0028】
ダクト34は、図2に示すように、排気口340を有する。排気口340は、プリンター100の後方側に配置される。具体的には、プリンター100の筐体背面に開口(図示せず)が設けられ、当該開口に排気口340が配置される。なお、排気口340は、その開口を覆うフィルターを有する。ダクト34の内部に紙粉が存在する場合には、その紙粉がフィルターによって捕集される。
【0029】
プリンター100の後方側に排気口340が配置される構成では、ファン33が駆動することにより、ダクト34の内部において、プリンター100の前方側から後方側への気流が発生する。言い換えると、吸引部3は、プリンター100の前方側から後方側(すなわち、幅方向の一方側から他方側)に向かって空気を流通させ、排気口340を介して空気を排気する。
【0030】
ここで、搬送ベルト21の上方領域は、搬送ベルト21の複数の吸引孔210、ガイド板32の複数の貫通孔320、および、吸引ケース31の内部空間(空気流通室)を介して、ダクト34の内部空間と連通する。このため、プリンター100の後方側に排気口340が配置される場合、搬送ベルト21の上方領域においても、プリンター100の前方側から後方側(すなわち、幅方向の一方側から他方側)への気流が発生する。たとえば、搬送ベルト21のシート搬送方向上流側では、図2の白抜き矢印で示す方向に空気が流れる。
【0031】
また、図3に示すように、プリンター100は、記録部4を備える。記録部4は、搬送ベルト21の外周面と上下方向に対向するよう配置される。搬送ベルト21によるシートSの搬送中、搬送ベルト21上のシートSと記録部4とが上下方向に間隔を隔てて対向する。これにより、搬送ベルト21によるシートSの搬送中、後述する記録ヘッド40のインク吐出面400と搬送ベルト21の外周面との間をシートSが通過する。すなわち、記録ヘッド40のインク吐出面400と搬送ベルト21の外周面との間がシートSの搬送経路の一部となる。なお、記録ヘッド40が搬送ベルト21の上方に配置され、記録ヘッド40のインク吐出面400が下方に向けられる。
【0032】
記録部4は、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色にそれぞれ対応する4つのラインヘッド41を備える。図3では、シアンのラインヘッド41に符号「C」を付し、マゼンタのラインヘッド41に符号「M」を付し、イエローのラインヘッド41に符号「Y」を付し、ブラックのラインヘッド41に符号「K」を付して区別する。
【0033】
各色のラインヘッド41は、複数(たとえば、3つ)の記録ヘッド40を含む。たとえば、各色の複数の記録ヘッド40は、幅方向に千鳥状に配列される。
【0034】
各記録ヘッド40は、搬送ベルト21の外周面に対して上下方向に間隔を隔てて配置される。言い換えると、各記録ヘッド40は、搬送ベルト21により搬送されるシートSと上下方向に対向する位置に配置される。さらに言い換えると、搬送ベルト21は、各記録ヘッド40の下方においてシートSを吸着して搬送する。
【0035】
各記録ヘッド40は、搬送ベルト21の外周面と上下方向に対向する面をインク吐出面400として有する。各記録ヘッド40のインク吐出面400は、複数のノズル(図示せず)を有する。すなわち、インク吐出面400には、複数のノズルが形成される。各記録ヘッド40は、対応する色のインクをインク吐出面400から下方に吐出する。
【0036】
各記録ヘッド40は、印刷ジョブでシートSに印刷すべき画像データに基づき、搬送ベルト21上のシートSに向けてインクを吐出する。各記録ヘッド40から吐出されるインクはシートSに付着する。これにより、シートSに画像が形成される。言い換えると、各記録ヘッド40と搬送ベルト21との間が印刷位置であり、その印刷位置においてシートSに対する印刷が行われる。
【0037】
なお、プリンター100は、吸着ローラー20を備える。吸着ローラー20は、ガイド板32のうちシート搬送方向上流側の端部と搬送ベルト21を挟んで上下方向に対向するよう配置される。吸着ローラー20は、搬送ベルト21に従動して回転する。すなわち、吸着ローラー20は、搬送ベルト21によるシートSの搬送中、搬送ベルト21と共に回転する。吸着ローラー20は、レジストローラー対10から搬送されてくるシートSを搬送ベルト21との間でニップする。言い換えると、吸着ローラー20は、搬送ベルト21にシートSが吸着されるようシートSをガイドする。
【0038】
また、プリンター100は、板状部材30を備える。板状部材30は、上下方向を板厚方向とする。板状部材30は、搬送ベルト21の上方位置で、かつ、シート搬送方向の最上流の記録ヘッド40と吸着ローラー20との間の位置に配置される。板状部材30は、搬送ベルト21と上下方向に間隔を隔てて配置されることにより、搬送ベルト21との上下方向間に狭小な領域300を形成する。
【0039】
この構成では、吸引ケース31の内部空間が負圧状態となることにより、板状部材30と搬送ベルト21との上下方向間の領域300から吸引ケース31に空気が流れる。このとき、板状部材30のシート搬送方向上流側では、領域300に向けてシート搬送方向の上流側から下流側に空気が流れる。板状部材30のシート搬送方向下流側では、領域300に向けてシート搬送方向の下流側から上流側に空気が流れる。
【0040】
これにより、シートSの搬送中、板状部材30と搬送ベルト21との上下方向間の領域300の付近にシートSの前端が到達するとき、シートSの前端から飛散する紙粉が回収される。また、板状部材30と搬送ベルト21との上下方向間の領域300の付近をシートSの後端が通過するとき、シートSの後端から飛散する紙粉が回収される。すなわち、板状部材30と搬送ベルト21との上下方向間の領域300は紙粉回収領域となる。以下の説明では、便宜上、板状部材30と搬送ベルト21との上下方向間の領域300を単に紙粉回収領域300と称する。
【0041】
図1に戻り、プリンター100は、乾燥ユニット51およびデカーラー52を備える。乾燥ユニット51は、デカーラー52に向けてシートSを搬送しつつ、搬送中のシートSに付着したインクを乾燥する。デカーラー52は、シートSのカールを矯正する。デカーラー52は、カール矯正後のシートSを第2搬送部12に向けて搬送する。
【0042】
また、プリンター100は、ワイプユニット6を備える。ワイプユニット6は「清掃部」に相当する。ワイプユニット6は、ワイパー(図示せず)を有する。ワイプユニット6は、インク吐出面400に付着したインクをワイパーで拭き取るワイピング動作を行う。すなわち、ワイプユニット6は、各記録ヘッド40のインク吐出面400を清掃する。
【0043】
たとえば、各記録ヘッド40は、増粘インク、異物および気泡を排出するため、インク吐出面400からインクを強制的に押し出すパージ動作を行う。各記録ヘッド40がパージ動作を行うとき、ベルトユニット2は、各記録ヘッド40に対して離間する方向に移動する。また、このとき、ワイプユニット6は、各記録ヘッド40の下方に移動する。そして、ワイプユニット6は、各記録ヘッド40のインク吐出面400から、パージ動作によって付着したインクを拭き取る。
【0044】
また、図4に示すように、プリンター100は、制御部7を備える。制御部7は、CPUおよびASICなどの処理回路を含む。制御部7は、ROM、RAM、HDDおよびSSDなどの記憶デバイスを含む。制御部7は、印刷ジョブを制御する。
【0045】
具体的には、制御部7は、ベルトモーター71を制御する。これにより、制御部7は、搬送ベルト21を適切に移動(すなわち、回転)させる。言い換えると、制御部7は、搬送ベルト21によるシートSの搬送を制御する。そして、制御部7は、シートSの搬送に合わせて、各記録ヘッド40によるインクの吐出を制御する。また、制御部7は、各記録ヘッド40によるパージ動作を制御する。さらに、制御部7は、ワイプユニット6によるワイピング動作を制御する。
【0046】
プリンター100は、ベルトユニット駆動機構72およびワイプユニット駆動機構73を備える。ベルトユニット駆動機構72は、ベルトユニット2を移動させる。ワイプユニット駆動機構73は、ワイプユニット6を移動させる。各記録ヘッド40にパージ動作を行わせるとき、制御部7は、ベルトユニット駆動機構72を制御し、ベルトユニット2を各記録ヘッド40に対して離間する方向に移動させる。言い換えると、制御部7は、ベルトユニット2を各記録ヘッド40の下方位置から予め定められた退避位置に移動させる(すなわち、ベルトユニット2を退避させる)。そして、制御部7は、ワイプユニット駆動機構73を制御し、ワイプユニット6を各記録ヘッド40の下方に移動させる。
【0047】
また、プリンター100は、ファン駆動回路74を備える。ファン駆動回路74は、ファン33にPWM(Pulse Width Modulation)信号を入力し、ファン33を駆動させる。制御部7は、PWM信号のデューティー比を調整し、ファン33の回転速度を制御する。言い換えると、制御部7は、吸引部3による吸引力を制御する。
【0048】
<紙粉の検知>
搬送ベルト21の上方領域を紙粉が飛散すると、記録ヘッド40のインク吐出面400に紙粉が付着する。インク吐出面400に許容範囲を超える紙粉が付着すると、インクの吐出不良が発生し得る。このため、搬送ベルト21の上方領域の紙粉量を検知し、検知した紙粉量が多い場合、すなわち、インク吐出面400に許容範囲を超える紙粉が付着する可能性がある場合には、紙粉対策をとることが好ましい。
【0049】
たとえば、搬送ベルト21の上方領域の紙粉量が多い場合には、各記録ヘッド40のインク吐出面400に対する清掃処理を行うことが好ましい。また、搬送ベルト21の上方領域の紙粉量が多い場合には、吸引部3の吸引力をより強くする(すなわち、紙粉の回収能力を上げる)ことが好ましい。
【0050】
このため、プリンター100は、搬送ベルト21の上方領域の予め定められた検知位置DPにおける紙粉量を検知する紙粉検知部8(図4参照)を備える。紙粉検知部8は、パーティクルカウンターであってもよい。この場合、紙粉検知部8は、搬送ベルト21の上方領域の紙粉を計数する。紙粉検知部8は、制御部7に接続される。制御部7は、紙粉検知部8により検知される紙粉量(すなわち、紙粉の数)を認識する。
【0051】
プリンター100に紙粉検知部8を設置することにより、搬送ベルト21の上方領域で紙粉を検知できる。しかし、搬送ベルト21の上方領域では、紙粉が一様に飛散しているわけではない。紙粉量が比較的少ない領域(ここでは、第1領域と称する)もあれば、第1領域よりも紙粉量が多い領域(ここでは、第2領域と称する)もある。仮に、第1領域で紙粉量を検知すると、第2領域の紙粉量が多いにもかかわらず、紙粉量が少ないと判断され、紙粉対策がとられない場合がある。このため、紙粉量の検知は第2領域で行われることが好ましい。
【0052】
以下、搬送ベルト21の上方領域における紙粉量について説明する。
【0053】
まず、図5を参照し、搬送ベルト21の上方領域のうちシート搬送方向の位置における紙粉量の違いについて説明する。なお、図5には、搬送ベルト21の上方領域の紙粉量を実際に検知した結果が示される。
【0054】
図5のグラフ横軸は、シート搬送方向の位置である。位置Aは、吸着ローラー20と紙粉回収領域300との間の位置に略相当する。位置Bは、紙粉回収領域300とシート搬送方向の最上流側の記録ヘッド40との間の位置に相当する。位置Cは、シート搬送方向の最下流側の記録ヘッド40の配置位置に略相当する。図5のグラフ縦軸は、紙粉量(紙粉の数)である。また、図5のグラフでは、15分間で検知した紙粉の合計数が白丸でプロットされ、その合計数の1分間の平均数が黒丸でプロットされる。
【0055】
図5に示すように、搬送ベルト21の上方領域では、シート搬送方向上流側ほど、紙粉量が多くなる。位置Aでは、紙粉回収領域300よりもシート搬送方向上流側の位置(すなわち、紙粉回収領域300で紙粉の回収が行われる直前の位置)であるため、紙粉量が最も多くなる。位置Bでは、紙粉回収領域300よりもシート搬送方向下流側の位置(すなわち、紙粉回収領域300で紙粉の回収が行われた直後の位置)であるため、位置Aよりも紙粉量が少なくなる。位置Cでは、紙粉回収領域300よりもシート搬送方向下流側の位置であり、かつ、位置Bから位置Cに至る間にも紙粉が回収されるため、紙粉量が最も少なくなる。
【0056】
次に、搬送ベルト21の幅方向(すなわち、プリンター100の前後方向)の位置における紙粉量の違いについて説明する。
【0057】
図2に示すように、搬送ベルト21の上方領域では、幅方向の一方側から他方側(すなわち、プリンター100の前方側から後方側)への気流が発生する。すなわち、搬送ベルト21の上方領域では、幅方向の一方側から他方側に向かって紙粉が移動する。したがって、紙粉量は、幅方向の一方側よりも他方側の方が多い。また、幅方向の中心よりも幅方向の他方側に行くほど紙粉量が多くなる。
【0058】
これらの理由により、紙粉検知部8の検知位置DPは、図2および図3に示す位置に設定される。すなわち、紙粉検知部8の検知位置DPは、シート搬送方向の最上流側の記録ヘッド40よりもシート搬送方向上流側の位置であって、搬送ベルト21の幅方向の中心よりも幅方向の他方側(すなわち、搬送ベルト21の上方領域に生じる気流の下流側)の位置に設定される。図2では、紙粉検知部8の検知位置DPにドット柄を付す。
【0059】
なお、紙粉回収領域300では、紙粉の回収が行われる。紙粉回収領域300で回収しきれなかった紙粉が記録ヘッド40のインク吐出面400に付着し得る。このため、紙粉検知部8の検知位置DPは、シート搬送方向の最上流側の記録ヘッド40よりもシート搬送方向上流側のうち、紙粉回収領域300よりもシート搬送方向下流側の位置に設定されることが好ましい。すなわち、インク吐出面400に付着し得る紙粉が多く存在する位置を検知位置DPに設定することが好ましい。
【0060】
これにより、本実施形態では、搬送ベルト21の上方領域のうち紙粉量が比較的多くなる領域で紙粉検知部8による紙粉検知が行われる。その結果、記録ヘッド40のインク吐出面400に付着する可能性がある紙粉量を精度良く検知できる。
【0061】
具体的には、本実施形態では、搬送ベルト21の上方領域のうち紙粉量の多い領域が存在するにもかかわらず紙粉量が少ないと判断されることを抑制できる。すなわち、紙粉量の多い領域が存在する場合には紙粉量が多いと判断される。このように紙粉量の検知精度が向上すれば、紙粉量の多い領域が存在する場合、すなわち、記録ヘッド40のインク吐出面400に許容範囲を超える紙粉が付着する可能性がある場合、確実に紙粉対策がとられる。これにより、記録ヘッド40のインク吐出面400に許容範囲を超える紙粉が付着したまま放置されることを抑制できる。その結果、インクの吐出不良を抑制できる。
【0062】
また、図2および図3に示す位置を紙粉検知部8の検知位置DPとすることにより、他の位置で紙粉量を検知しなくても、記録ヘッド40のインク吐出面400に付着する可能性がある紙粉量を精度良く検知できる。これにより、複数個所で紙粉検知を行わなくてもよい。すなわち、紙粉検知部8を複数設置しなくてもよい。
【0063】
なお、紙粉検知部8は、紙粉検知部8の本体に繋がるノズルで本体内に紙粉を吸引し、吸引した紙粉を検知する。したがって、検知位置DPには、紙粉検知部8の本体ではなくノズル先端が配置される。この構成では、紙粉検知部8の本体をプリンター100の内部に設置しなくてもよい。たとえば、紙粉検知部8の本体とノズルとをチューブで繋ぎ、紙粉検知部8の本体をプリンター100の外部に設置してもよい。
【0064】
ここで、シートSとしての用紙は、裁断されることによって所定サイズに形成される。したがって、シートSのうち幅方向の端縁(すなわち、裁断面)から紙粉が発生し易い。このため、搬送ベルト21の上方領域では、幅方向の他方側(プリンター100の後方側)で紙粉量が多くなるが、そのうち、シートSの幅方向の端縁と重なる位置における紙粉量がより多くなる。すなわち、シートSの幅方向の端縁が通過する位置における紙粉量がより多くなる。
【0065】
そこで、紙粉検知部8の検知位置DPは、搬送ベルト21により搬送されるシートSの幅方向の端縁と重なる位置(すなわち、搬送ベルト21により搬送されるシートSの幅方向の端縁が通過する位置)に設定される。これにより、搬送ベルト21の上方領域のうち紙粉量の多い領域内が紙粉検知部8の検知位置DPとなる。たとえば、プリンター100のメーカーにより、最も使用頻度の高いシートSのサイズが求めらる。そして、最も使用頻度の高いシートSの幅方向の端縁と重なる位置が紙粉検知部8の検知位置DPに設定される。
【0066】
なお、主に使用されるシートSのサイズはユーザーによって異なる。このため、紙粉検知部8の検知位置DPがユーザー先に応じて変更されてもよい。また、紙粉検知部8の検知位置DPを変更する機構を設置し、紙粉検知部8の検知位置DPをユーザーが変更できてもよい。
【0067】
<紙粉対策の要否判断>
印刷ジョブの実行中、制御部7は、紙粉検知部8を制御し、紙粉検知部8による紙粉検知を所定時間間隔で行わせる。所定時間は特に限定されず、任意に変更可能である。所定時間は、たとえば、1分である。所定時間は、ユーザーが任意に変更できてもよい。
【0068】
印刷ジョブの開始から所定時間が経過したとき、制御部7は、紙粉検知部8により検知された紙粉量を認識する。以降、前回の紙粉検知から所定時間が経過するごとに、制御部7は、紙粉検知部8により検知された紙粉量を認識する。制御部7は、印刷ジョブが完了するまで、紙粉検知部8に紙粉検知を行わせる。
【0069】
そして、制御部7は、紙粉検知部8により検知された紙粉量に基づき、紙粉対策の要否判断を行う。具体的には、制御部7は、予め定められた閾値(紙粉量)を記憶する。印刷ジョブの実行中、制御部7は、紙粉検知部8により検知された紙粉量(ここでは、検知紙粉量と称する)と閾値とを比較する。そして、検知紙粉量が閾値を超えたとき、制御部7は、紙粉対策が必要と判断する。
【0070】
制御部7は、紙粉対策として、記録ヘッド40のインク吐出面400を清掃するヘッド清掃処理、および、吸引部3の吸引力を強める吸引力増強処理のうち少なくとも一方を行う。いずれか一方が行われてもよいし、両方が行われてもよい。
【0071】
まず、紙粉対策としてヘッド清掃処理を行う場合について説明する。
【0072】
制御部7は、ワイプユニット6によるインク吐出面400の拭き取りをヘッド清掃処理として行う。すなわち、ワイプユニット6にワイピング動作を行わせる処理がヘッド清掃処理である。ここで、ワイプユニット6にワイピング動作を行わせるときには、ベルトユニット2を退避させる必要がある。
【0073】
このため、検知紙粉量が閾値を超えたとき、制御部7は、搬送ベルト21への新たなシートSの給送を停止し、搬送中のシートSに対する画像形成が完了してから、ワイプユニット6にインク吐出面400の清掃を行わせる。言い換えると、検知紙粉量が閾値を超えたとき、制御部7は、印刷ジョブを中断して、ヘッド清掃処理を行う。
【0074】
または、検知紙粉量が閾値を超えたとき、制御部7は、次回行うべきインク吐出面400に対する清掃の実行タイミング(すなわち、ヘッド清掃処理の実行タイミング)を予め設定されたタイミングよりも早くするタイミング補正処理を行う。制御部7は、タイミング補正処理を行うことにより、ヘッド清掃処理の実行タイミングを補正する。ここで、制御部7は、予め設定された期間ごとにヘッド清掃処理を行う。たとえば、ヘッド清掃処理を前回行ってからの印刷枚数が予め定められた閾値枚数に達したとき、そのときに実行中の印刷ジョブが完了してから、制御部7は、ヘッド清掃処理を行う。この場合、検知紙粉量が閾値を超えたとき、制御部7は、閾値枚数を予め定められた初期枚数よりも少ない枚数に補正する。その結果、次回行うべきヘッド清掃処理の実行タイミングが早まる。
【0075】
なお、検知紙粉量が閾値を超えたとき、印刷ジョブを中断してヘッド清掃処理を行い、かつ、タイミング補正処理を行ってもよい。すなわち、検知紙粉量が閾値を超えたとき、印刷ジョブを中断してのヘッド清掃処理、および、タイミング補正処理、の少なくとも一方が行われる。
【0076】
紙粉対策としてヘッド清掃処理が行われる構成では、記録ヘッド40のインク吐出面400に許容範囲を超える紙粉が付着した状態で放置されることを抑制できる。その結果、インクの吐出不良が発生することを抑制できる。
【0077】
次に、紙粉対策として吸引力増強処理を行う場合について説明する。
【0078】
制御部7は、ファン33に入力するPWM信号のデューティー比を調整する処理を吸引力増強処理として行う。制御部7は、吸引力増強処理を行うことにより、ファン33の回転速度を上げる。これにより、吸引部3の吸引力が強くなる。
【0079】
具体的には、紙粉検知量が閾値を超えたとき、制御部7は、吸引部3の吸引力を予め設定された初期値よりも大きくする。言い換えると、紙粉検知量が閾値を超えたとき、制御部7は、ファン33の回転速度を予め定められた初期値よりも速くする。
【0080】
紙粉対策として吸引力増強処理が行われることにより、搬送ベルト21の上方領域における紙粉の回収がより促進される。これにより、記録ヘッド40のインク吐出面400に許容範囲を超える紙粉が付着することを抑制できる。その結果、インクの吐出不良が発生することを抑制できる。
【0081】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0082】
3 吸引部
6 ワイプユニット(清掃部)
7 制御部
8 紙粉検知部
21 搬送ベルト
40 記録ヘッド
100 プリンター(インクジェット記録装置)
210 吸引孔
330 排気口
400 インク吐出面
DP 検知位置
S シート
図1
図2
図3
図4
図5