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特開2024-145007積層成形システム及び積層成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145007
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層成形システム及び積層成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20241004BHJP
   B29C 43/56 20060101ALI20241004BHJP
   B30B 1/18 20060101ALI20241004BHJP
   B30B 15/34 20060101ALI20241004BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20241004BHJP
   B29C 43/52 20060101ALI20241004BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/56
B30B1/18 B
B30B15/34 A
B29C43/34
B29C43/52
B29C43/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057223
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】本荘 豊
(72)【発明者】
【氏名】永井 岳志
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
【テーマコード(参考)】
4E090
4F204
【Fターム(参考)】
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA02
4E090CC04
4E090DA01
4E090EB05
4E090FA02
4E090HA10
4F204AC03
4F204AD19
4F204AG03
4F204AH36
4F204AM28
4F204AR12
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FB22
4F204FG02
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ01
4F204FQ11
4F204FQ38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積層成形品の厚みをより好適に調整する積層成形システムおよび積層成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の積層成形システムは、被積層体を押圧する第1の加圧板が設けられる固定盤と、固定盤と対向する位置に設けられ、被積層体を押圧する第2の加圧板が設けられる可動盤と、可動盤を固定盤側に押しつける押圧力を発生させる駆動部と、をそれぞれ有する複数の積層成形装置を有し、複数の積層成形装置の駆動部は、それぞれが第2の加圧板の少なくとも2点の異なる加圧点に対して押圧力を伝達する押圧力生成機構を有し、複数の積層成形装置は、被積層体が搬送される搬送方向に沿って配置され、複数の積層成形装置の加圧点の設定位置は、前記積層成形装置毎にぞれぞれ異なる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の積層成形装置を有し、
複数の前記積層成形装置が、それぞれ、
被積層体に所定の温度を付与するための第1の熱板が設けられる固定盤と、
前記固定盤と対向する位置に設けられ、被積層体に所定の温度を付与するための第2の熱板が設けられる可動盤と、
前記可動盤を前記固定盤側に近接させて前記被積層体を押圧するために、前記可動盤の所定の位置に設定される加圧点に対して押圧力を伝達する押圧力生成機構と、を有し、
前記加圧点の設定位置は、前記積層成形装置毎にそれぞれ異なる積層成形システム。
【請求項2】
前記被積層体は、一対のキャリフィルムにより搬送され、
複数の前記積層成形装置は、前記被積層体が搬送される搬送方向に沿って配置される請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項3】
前記押圧力生成機構は、サーボモータの動力によって駆動されるボールネジ軸とボールネジナットの組み合わせを少なくとも1以上含む請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項4】
複数の前記積層成形装置の組み合わせとして、減圧可能なチャンバを含むラミネータと、被積層体を平坦化する平坦プレス装置を含む請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項5】
前記被積層体が搬送される搬送方向に延在する軸を搬送軸、前記搬送軸に直交する方向に延在する軸を直交軸、前記搬送軸と前記直交軸とが交わる点を加圧中心点とした場合、
前記直交軸を境に線対称になる位置に配置される第1の加圧点及び第2の加圧点を含む第1の積層成形装置と、
前記加圧中心点を中心に点対称となる位置に配置される第3の加圧点及び第4の加圧点を含む第2の積層成形装置と、
前記第3の加圧点及び前記第4の加圧点とは前記直交軸を境に線対称となる位置に配置される第5の加圧点及び第6の加圧点を含む第3の積層成形装置と、
前記搬送軸を境に線対称になる位置に配置される第7の加圧点及び第8の加圧点を含む第4の積層成形装置と、
の少なくとも2つの前記積層成形装置を含む請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項6】
前記第1の加圧点と前記第2の加圧点とは、いずれも前記搬送軸上に配置される請求項5に記載の積層成形システム。
【請求項7】
前記第7の加圧点と前記第8の加圧点とは、いずれも前記直交軸上に配置される請求項5に記載の積層成形システム。
【請求項8】
複数の前記積層成形装置の前記加圧点を互いに前記第2の熱板の位置が重なるように重ね合わせた場合、前記加圧中心点を中心に点対称になるように個々の前記加圧点が配置される請求項5に記載の積層成形システム。
【請求項9】
複数の前記積層成形装置の前記加圧点を互いに前記第2の熱板の位置が重なるように重ね合わせた場合、前記搬送軸または前記直交軸を境に線対称になるように個々の前記加圧点が配置される請求項5に記載の積層成形システム。
【請求項10】
個々の前記加圧点は互いに重ならないように配置される請求項8又は9に記載の積層成形システム。
【請求項11】
複数の前記積層成形装置の少なくとも1つは、前記加圧点の位置を移動可能な移動機構を備える請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項12】
前記移動機構は、レールであって、前記押圧力生成機構は前記レール上に配置される請求項11に記載の積層成形システム。
【請求項13】
前記加圧点の位置を検知する位置検知機構と、前記加圧点の位置を可視的に表示する表示機構と、をさらに備える請求項11に記載の積層成形システム。
【請求項14】
複数の積層成形装置を有し、
複数の前記積層成形装置が、それぞれ、
被積層体に所定の温度を付与するための第1の熱板が設けられる固定盤と、
前記固定盤と対向する位置に設けられ、前記被積層体に所定の温度を付与するための第2の熱板が設けられる可動盤と、
前記可動盤を前記固定盤側に近接させて前記被積層体を押圧するために、前記可動盤の所定の位置に設定される加圧点に対して押圧力を伝達する押圧力生成機構と、
を有する積層成形システムにおける積層成形品の製造方法であって、
複数の前記積層成形装置毎に前記加圧点の設定位置を前記積層成形装置毎にそれぞれ異なる位置に設定し、
前記被積層体の搬送方向に沿って並べて配置した複数の前記積層成形装置により順次前記被積層体に前記押圧力を加えて前記被積層体の平坦度を順次高めていき積層成形品を成形する積層成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、被積層体に押圧力を加えて積層成形品を成形する複数の積層成形装置を備える積層成形システム及び積層成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被積層体に対して押圧力を加えて積層成形品を成形する装置の1つに、積層成形装置がある。この積層成形装置は、表面に凹凸を有する基板材料に当該凹凸を埋める積層フィルム材を積層する真空積層成形や、積層した積層フィルム材の表面の凹凸をする平坦プレス成形を行う。このような積層成形装置の一例として、真空積層成形装置と平坦プレス装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、真空状態のチャンバ内で積層成形を行う真空積層装置と、前記真空積層装置の後工程に設けられサーボモータを駆動源とする第1の平坦プレス装置と第2の平坦プレス装置とを積層成形品の搬送方向に沿って配置した積層成形システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-15589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の積層成形においては、積層成形品の厚みを均一とすることが求められる。しかしながら、配線パターンの複雑化や積層フィルム材の多層化等の要因により、特許文献1では、積層成形品の厚みの均一化が困難となる虞があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、積層成形品の厚みをより好適に調整することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる積層成形システムは、複数の積層成形装置を有し、複数の前記積層成形装置が、それぞれ、被積層体に所定の温度を付与するための第1の熱板が設けられる固定盤と、前記固定盤と対向する位置に設けられ、被積層体に所定の温度を付与するための第2の熱板が設けられる可動盤と、前記可動盤を前記固定盤側に近接させて前記被積層体を押圧するために、前記可動盤の所定の位置に設定される加圧点に対して押圧力を伝達する押圧力生成機構と、を有し、前記加圧点の設定位置は、前記積層成形装置毎にそれぞれ異なる。
【0008】
一実施の形態にかかる積層成形品の製造方法は、複数の積層成形装置を有し、複数の前記積層成形装置が、それぞれ、被積層体に所定の温度を付与するための第1の熱板が設けられる固定盤と、前記固定盤と対向する位置に設けられ、前記被積層体に所定の温度を付与するための第2の熱板が設けられる可動盤と、前記可動盤を前記固定盤側に近接させて前記被積層体を押圧するために、前記可動盤の所定の位置に設定される加圧点に対して押圧力を伝達する押圧力生成機構と、を有する積層成形システムにおける積層成形品の製造方法であって、複数の前記積層成形装置毎に前記加圧点の設定位置を前記積層成形装置毎にそれぞれ異なる位置に設定し、前記被積層体の搬送方向に沿って並べて配置した複数の前記積層成形装置により順次前記被積層体に前記押圧力を加えて前記被積層体の平坦度を順次高めていき積層成形品を成形する。
【0009】
一実施の形態にかかる積層成形システム及び積層成形品の成形方法は、積層成形品に対する加圧力が最も高くする加圧点を複数の積層成形装置を用いて分散させることで積層成形品の厚みの均一性を高める。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態にかかる積層成形装置によれば、積層成形品の厚みをより好適に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる積層成形システムの概略図である。
図2】実施の形態1にかかる真空積層装置の概略図である。
図3】実施の形態1にかかる積層成形システムにおける加圧点の設定例を説明する図である。
図4】実施の形態2にかかる積層成形システムの概略図である。
図5】実施の形態2にかかる積層成形システムにおける加圧点の設定例の第1の例を説明する図である。
図6】実施の形態2にかかる積層成形システムにおける加圧点の設定例の第1の例を説明する図である。
図7】実施の形態3にかかる真空積層装置における加圧点の移動機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
実施の形態1
以下で説明する積層成形システムは、固定盤と可動盤との間に被積層体が位置している状態で、可動盤を固定板側に押し当てるような押圧力を加えることで、被積層体の厚みを調整した積層成形品を成形する。被積層体の形状、形態、大きさは特に限定されず、被積層体は金属板であっても良いし、絶縁材に銅箔を貼り合わせた銅張積層板(CCL)であっても良い。本実施の形態では、被積層体の一例として、凹凸のある所定の配線パターンを有する基材に積層フィルムが載置された被積層体を用い、複数の積層成形装置により被積層体に所定の成形を段階的に行うことで積層成形品を製作する積層成形システムについて説明する。
【0014】
図1に実施の形態1にかかる積層成形システム1の概略図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる積層成形システム1は、フィルム巻出し装置10、真空積層装置11、平坦プレス装置12、13、フィルム巻取り装置14を有する。この積層成形システム1において、真空積層装置11、平坦プレス装置12、13のいずれもが積層成形装置に相当する。
【0015】
実施の形態1にかかる積層成形システム1では、フィルム巻出し装置10とフィルム巻取り装置14との間に真空積層装置11、平坦プレス装置12、13を挟み込むように配置する。フィルム巻出し装置10は、キャリアフィルム上に被積層体を載置した状態で、キャリアフィルムを巻出す。また、フィルム巻取り装置14は、真空積層装置11、平坦プレス装置12、13により加圧された被積層体をキャリアフィルムを巻き取ることで取り出す。つまり、フィルム巻出し装置10からフィルム巻取り装置14に向かう方向が被積層体の搬送方向となる。
【0016】
そして、実施の形態1にかかる積層成形システム1は、搬送元から搬送先に向かって順に真空積層装置11、平坦プレス装置12、13を連続して隣接するように配置する。そして、積層成形システム1では、被積層体を真空積層装置11、平坦プレス装置12、13の順に移動させつつ、各装置で被積層体を加圧することで被積層体の厚みを目標値としながら、厚みムラを低減する。ここで、真空積層装置11、平坦プレス装置12、13は、チャンバの有無、加圧制御方法の違い等があるものの駆動部(例えば、下盤駆動部)に組み込まれた押圧力生成機構により可動盤を固定盤に押しつける構成については同じである。
【0017】
つまり、実施の形態1にかかる積層成形システム1では、複数の積層成形装置を有し、複数の積層成形装置が、それぞれ、被積層体に所定の温度を付与するための第1の熱板が設けられる固定盤と、固定盤と対向する位置に設けられ、被積層体に所定の温度を付与するための第2の熱板が設けられる可動盤と、可動盤を固定盤側に近接させて被積層体を押圧するために、可動盤の所定の位置に設定される加圧点に対して押圧力を伝達する押圧力生成機構と、を有する。そして、実施の形態1にかかる積層成形システム1では、複数の積層成形装置毎に加圧点の設定位置を積層成形装置毎にそれぞれ異なる位置に設定し、被積層体の搬送方向に沿って並べて配置した複数の積層成形装置により順次被積層体に押圧力を加えて被積層体の平坦度を順次高めていき積層成形品を成形する。
そこで、以下では、真空積層装置11を例に積層成形装置の基本的な構成を説明する。
【0018】
図2に実施の形態1にかかる真空積層装置11の概略図を示す。図2に示すように、真空積層装置11は、ベース盤20、タイバ21、固定盤22、可動盤23を有する。真空積層装置11では、ベース盤20と可動盤23とをタイバ21で連結し、固定盤22の四隅に設けられた挿通孔にタイバ21が挿通されるように可動盤23を組み込む。そして、図2に示す例では、固定盤22に断熱板24aを介して上側熱板25bを取り付け、可動盤23に断熱板24bを介して下側熱板25aを取り付けた。上側熱板25b、下側熱板25aは、加圧板の1つである。加圧板は、被積層体に積層材を載せた被積層成形品に加圧力を伝達する。また、加圧機構は、被積層成形品に加圧力を加えるものであれば特に限定されないが、例えば加熱や冷却が可能な板状部材(熱板)であってもよいし、加熱や冷却が可能な可撓性シートであってもよい。これにより、積層成形品を好適に成形できる。
【0019】
また、真空積層装置11では、押圧力生成機構として、サーボモータによりボールネジ軸を回転させることで、ボールネジナットを昇降させることで可動盤23を昇降させる機構を有するものを説明する。さらに、真空積層装置11では、少なくとも2組のボールネジによって、1つの下側熱板25aに対して少なくとも2点の加圧点による加圧を行うものとする。図2に示す例では、2組のボールネジを有する真空積層装置11を示した。なお、押圧力生成機構は、サーボモータによりボールネジナットを回転させることで、ボールネジ軸を昇降させることで可動盤23を昇降させる機構であっても良い。
【0020】
図2に示すように、真空積層装置11の押圧力生成機構は、モータ261、262、ボールネジ軸271、272、ボールネジナット281、282、押圧力分散板291、292を有する。なお、図2では、図示していないがモータとボールネジ軸との間に減速機等の他の構成が介在することもある。
【0021】
ここで、モータ261、ボールネジ軸271、ボールネジナット281、押圧力分散板291の第1の組と、モータ262、ボールネジ軸272、ボールネジナット282、押圧力分散板292の第2の組とは、同じ構成であるため、第1の組を例に押圧力生成機構の構成について説明し、第2の組については説明を省略する。押圧力生成機構では、モータ261によりボールネジ軸271を回転させる。そして、ボールネジ軸271が回転することでボールネジナット281を昇降させる。ボールネジナット281の可動盤23側の端部には、押圧力分散板291が設けられている。押圧力分散板291は、ボールネジナット281から可動盤23に向かって徐々に面積が大きくなるように複数枚の板が重ねられるような構成とした。このように、多段で面積を増やすことで、ボールネジナット281から伝達される押圧力が可動盤23に分散され、可動盤23によって被積層体に印加される押圧力が被積層体の面方向において均等化される。
【0022】
ここで、実施の形態1にかかる積層成形システム1では、複数の積層成形装置の加圧点の位置を積層成形装置毎にそれぞれ異なるように設定する。そこで、以下において、実施の形態1にかかる積層成形システム1における加圧点の設定方法について説明する。なお、以下の説明では、ボールネジ軸272の昇降方向と直交する方向の断面の中心位置を加圧点と称するものとする。
【0023】
図3に実施の形態1にかかる積層成形システム1における加圧点の設定例を説明する図を示す。図3では、真空積層装置11、平坦プレス装置12、平坦プレス装置13のそれぞれに対して設定したボールネジナットの位置と、ボールネジナットの位置に対応する加圧点の位置と、下側熱板25aの位置とを示した。また、図3では、搬送軸TX、直交軸Xaを示した。搬送軸TXは、第2の加圧板(例えば、下側熱板25a)の搬送方向と直交する直交方向の中心位置において搬送方向に延在する軸である。直交軸Xaは、下側熱板25aの搬送軸TX上の中心位置を直交方向に延在する軸である。そして、加圧中心点P0は、搬送軸TXと直交軸Xaとが交わる点と一致する。
【0024】
実施の形態1にかかる積層成形システムでは、複数の積層成形装置が第1の積層成形装置から第3の積層成形装置のうちの少なくとも2つの積層成形装置を含む。第1の積層成形装置(真空積層装置11)は、複数の加圧点が直交軸Xaを中心に線対称になる位置に配置される第1の加圧点及び第2の加圧点を含む。第2の積層成形装置(平坦プレス装置12)は、複数の加圧点が搬送軸TXを挟んで加圧中心点を中心に点対称となる位置に配置される第3の加圧点及び第4の加圧点を含む。第3の積層成形装置(平坦プレス装置13)は、複数の加圧点が第3の加圧点及び第4の加圧点とは直交軸Xaを中心に線対称となる位置に配置される第5の加圧点及び第6の加圧点を含む。すなわち、被積層体は、第1の積層成形装置、第2の積層成形装置、および第3の積層成形装置によって、それぞれ異なる加圧点により押圧される。
【0025】
図3に示した積層成形システムでは、真空積層装置11に第1の積層成形装置を適用し、平坦プレス装置12に第2の積層成形装置を適用し、平坦プレス装置13に第3の積層成形装置を適用した。具体的には、真空積層装置11は、直交軸Xaを中心に線対称となる位置に加圧点PX11と加圧点PX12が配置されるように、ボールネジナット281とボールネジナット282を配置した。また、真空積層装置11では、加圧点PX11及び加圧点PX12がいずれも搬送軸TX上に配置される。
【0026】
平坦プレス装置12は、下側熱板35aの加圧中心点P0を中心に点対称となる位置に加圧点PX21と加圧点PX22が配置されるように、ボールネジナット381とボールネジナット382を配置した。なお、図3に示す例では、加圧点PX21と加圧点PX22は、加圧中心点P0を通り、搬送軸TXに対して角度θの傾きを有する対角線Xa上に配置される。
【0027】
平坦プレス装置13は、下側熱板45aの加圧中心点P0を中心に点対称となる位置に加圧点PX31と加圧点PX32が配置されるように、ボールネジナット481とボールネジナット482を配置した。なお、図3に示す例では、加圧点PX31と加圧点PX32は、加圧中心点P0を通り、搬送軸TXに対して角度θの傾きを有する対角線Xb上に配置される。また、加圧点PX31及び加圧点PX32は、第2の積層成形装置(例えば、平坦プレス装置12)の加圧点PX21及び加圧点PX22とは直交軸Xaを中心に線対称となる位置に配置される。
【0028】
そして、積層成形システム1では、真空積層装置11、平坦プレス装置12、13による押圧履歴として、それぞれの加圧点の位置が重なるように重ね合わせた場合(図3の下側に示した図)、加圧点の数が1つの積層成形装置に設定される加圧点よりも数が多く、かつ、加圧点の位置が加圧中心点P0を中心に下側熱板の面内に均一に分散されるように加圧点の位置が設定される。より具体的には、積層成形システム1では、真空積層装置11、平坦プレス装置12、13はそれぞれ2つの加圧点を有するが、積層成形システム1全体で見ると下側熱板の面内の異なる6つの位置に加圧点PX11、PX12、PX21、PX22、PX31、PX32が設定される。また、積層成形システム1では、加圧点PX11、PX12、PX21、PX22、PX31、PX32が下側熱板の面内に均一に分散されるように設定される。すなわち、それぞれの加圧点を合算すると、被積層体は全体的に万遍なく押圧される。
【0029】
上記説明より、実施の形態1にかかる積層成形システム1では、加圧板(例えば、下側熱板)に対して多点で押圧力を加える押圧力生成機構を有する積層成形装置を複数有し、複数の積層成形装置の間で異なる加圧点の位置を設定する。これにより、実施の形態1にかかる積層成形システム1では、このような複数の積層成形装置を用いて段階的な積層成形を行うことで、被積層体の全体に対して均一な押圧力をかけることが可能になり、積層成形品の厚みをより好適に調整することができる。
【0030】
特に、被積層体として、凹凸のある所定の配線パターンを有する基材に積層フィルムが載置された被積層体を適用する場合は、積層成形品の厚みをより好適に調整した高精度な積層成形品を成形することが可能になる。また、積層フィルムを繰り返し積層した多層積層成形品を製作する場合、積層成形品の厚みの誤差は積層成形を繰り返すごとに蓄積していくため、層毎に積層成形品の厚みをより好適に調整することが重要になる。このため、実施の形態1にかかる積層成形システム1を適用した場合の効果をより高く得ることできる。
【0031】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる積層成形システム1の別の形態となる積層成形システム2を説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1の説明において説明した構成要素と同じ構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0032】
そこで、図4に実施の形態2にかかる積層成形システム2の概略図を示す。図4に示すように実施の形態2にかかる積層成形システム2では、2つの積層成形装置が連続して隣接するように配置する。実施の形態2にかかる積層成形システム2では、この2つの積層成形装置の組み合わせとして、真空積層装置11、平坦プレス装置15を組み合わせた第1の例と、真空積層装置16、平坦プレス装置17を組み合わせた第2の例を説明する。
【0033】
そこで、図5に実施の形態2にかかる積層成形システム2における加圧点の設定例の第1の例を説明する図に示す。図5に示す第1の例では、真空積層装置11として第1の積層成形装置を用い、平坦プレス装置15として第4の積層成形装置を用いた。なお、第1の積層成形装置は、複数の加圧点が直交軸Xaを中心に線対称になる位置に配置される第1の加圧点及び第2の加圧点を含むものである。第4の積層成形装置は、複数の加圧点が搬送軸TXを中心に線対称になる位置に配置される第7の加圧点及び第8の加圧点を含むものである。
【0034】
より具体的には、真空積層装置11は、直交軸Xaを中心に線対称となる位置に加圧点PX11と加圧点PX12が配置されるように、ボールネジナット281とボールネジナット282を配置した。また、真空積層装置11では、加圧点PX11及び加圧点PX12がいずれも搬送軸TX上に配置される。
【0035】
平坦プレス装置15は、搬送軸TXを中心に線対称となる位置に加圧点PX21と加圧点PX22が配置されるように、ボールネジナット381とボールネジナット382を配置した。また、平坦プレス装置15では、加圧点PX21及び加圧点PX22がいずれも直交軸Xa上に配置される。
【0036】
また、積層成形システム2の第1の例では、真空積層装置11、平坦プレス装置15による押圧履歴として、それぞれの加圧点の位置が重なるように重ね合わせた場合(図5の下側に示した図)、加圧点の数が1つの積層成形装置に設定される加圧点よりも数が多く、かつ、加圧点の位置が加圧中心点P0を中心に下側熱板の面内に均一に分散されるように加圧点の位置が設定される。より具体的には、積層成形システム2の第1の例では、真空積層装置11、平坦プレス装置15はそれぞれ2つの加圧点を有するが、積層成形システム2の第1の例の全体で見ると下側熱板の面内の異なる4つの位置に加圧点PX11、PX12、PX21、PX22が設定される。また、積層成形システム2の第1の例では、加圧点PX11、PX12、PX21、PX22が下側熱板の加圧中心点P0を中心とする同心円上に均一に分散されるように設定される。
【0037】
続いて、図6に実施の形態2にかかる積層成形システム2における加圧点の設定例の第1の例を説明する図を示す。図6に示す第2の例では、真空積層装置16として第2の積層成形装置を用い、平坦プレス装置17として第3の積層成形装置を用いた。なお、第2の積層成形装置は、複数の加圧点が搬送軸TXを挟んで加圧中心点を中心に点対称となる位置に配置される第3の加圧点及び第4の加圧点を含むものである。第3の積層成形装置は、複数の加圧点が第3の加圧点及び第4の加圧点とは直交軸Xaを中心に線対称となる位置に配置される第5の加圧点及び第6の加圧点を含むものである。
【0038】
より具体的には、真空積層装置16は、下側熱板25aの加圧中心点P0を中心に点対称となる位置に加圧点PX11と加圧点PX12が配置されるように、ボールネジナット281とボールネジナット282を配置した。なお、図6に示す例では、加圧点PX11と加圧点PX22は、加圧中心点P0を通り、搬送軸TXに対して角度θの傾きを有する対角線Xa上に配置される。
【0039】
平坦プレス装置17は、下側熱板35aの加圧中心点P0を中心に点対称となる位置に加圧点PX21と加圧点PX22が配置されるように、ボールネジナット381とボールネジナット382を配置した。なお、図6に示す例では、加圧点PX21と加圧点PX22は、加圧中心点P0を通り、搬送軸TXに対して角度θの傾きを有する対角線Xb上に配置される。また、加圧点PX21及び加圧点PX22は、第2の積層成形装置(例えば、真空積層装置16)の加圧点PX11及び加圧点PX12とは直交軸Xaを中心に線対称となる位置に配置される。
【0040】
また、積層成形システム2の第2の例では、真空積層装置16、平坦プレス装置17による押圧履歴として、それぞれの加圧点の位置が重なるように重ね合わせた場合(図6の下側に示した図)、加圧点の数が1つの積層成形装置に設定される加圧点よりも数が多く、かつ、加圧点の位置が加圧中心点P0を中心に下側熱板の面内に均一に分散されるように加圧点の位置が設定される。より具体的には、積層成形システム2の第2の例では、真空積層装置16、平坦プレス装置17はそれぞれ2つの加圧点を有するが、積層成形システム2の第2の例の全体で見ると下側熱板の面内の異なる4つの位置に加圧点PX11、PX12、PX21、PX22が設定される。また、積層成形システム2の第2の例では、加圧点PX11、PX12、PX21、PX22下側熱板の加圧中心点P0を中心とする正方形の四隅に均一に分散されるように設定される。
【0041】
上記説明より、加圧板(例えば、下側熱板)に対して多点で押圧力を加える押圧力生成機構を有する積層成形装置を複数有し、複数の積層成形装置毎に異なる加圧点の位置を設定した積層成形システムにおいて、積層成形品の厚みをより好適に調整するためには、加圧中心点P0を中心に複数の加圧点が分散されるように各積層成形装置の加圧点を設定することが好ましい。
【0042】
実施の形態3
実施の形態3では、加圧点を任意の位置に設定するための機構について説明する。そこで、図7に実施の形態3にかかる真空積層装置11における加圧点の移動機構を説明する図を示す。図7に示すように、実施の形態3にかかる11は、ベース盤20にレール51、52を有する。
【0043】
レール51は、搬送方向と、搬送方向とは直交する直交方向と、の少なくとも一方向に加圧点PX11が移動可能になるように押圧力生成機構(例えば、モータ261、ボールネジ軸271、ボールネジナット281及び押圧力分散板291)を支持する。レール52は、搬送方向と、搬送方向とは直交する直交方向と、の少なくとも一方向に加圧点PX21が移動可能になるように押圧力生成機構(例えば、モータ262、ボールネジ軸272、ボールネジナット282及び押圧力分散板292)を支持する。
【0044】
図7に示す例では、レール51上の位置P11にボールネジナット281の中心を移動させることで、加圧点PX11を図3の加圧点PX31と同じ位置に設定できる。レール51上の位置P12にボールネジナット281の中心を移動させることで、加圧点PX11を図3の加圧点PX21と同じ位置に設定できる。レール51上の位置P13にボールネジナット281の中心を移動させることで、加圧点PX11を図5の加圧点PX22と同じ位置に設定できる。レール51上の位置P21にボールネジナット282の中心を移動させることで、加圧点PX12を図3の加圧点PX32と同じ位置に設定できる。レール51上の位置P22にボールネジナット282の中心を移動させることで、加圧点PX12を図3の加圧点PX22と同じ位置に設定できる。レール51上の位置P23にボールネジナット282の中心を移動させることで、加圧点PX12を図5の加圧点PX21と同じ位置に設定できる。
【0045】
押圧力生成機構は、加圧点をベース盤20内で前後左右及び斜め方向に自由に移動させるように支持することも可能であるが、レールにより移動方向及び移動量をレールの設置範囲のみに制限することで、自由な方向に移動させる場合よりも加圧点の位置設定精度及び移動に要する作業工数を低減することができる。さらに、押圧力生成機構の位置を移動する場合には、加圧点の位置を検知する位置検知機構と、加圧点の位置を可視的に表示する表示機構(例えば、モニタ)を有することが好ましい。このように加圧点の位置をモニタ等に可視的に表示することで、加圧点を所望の位置により精度よく移動させることができる。
【0046】
また、レール51、52を設けることで、各積層成形装置に設定される加圧点の位置を連続して配置される積層成形装置の配置順序に適したものに可変することができ、1つの積層成形装置で対応出来る積層成形装置の配置の自由度を高めることができる。また、このように加圧点の位置を移動可能に構成することで、被積層体の種類や大きさに応じた加圧点の設定を行うことができるため、1つの積層成形装置で対応可能な被積層体の数を増やすことができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1、2 積層成形システム
10 フィルム巻出し装置
11、16 真空積層装置
12、13、15、17 平坦プレス装置
13 平坦プレス装置
14 フィルム巻取り装置
20 ベース盤
21 タイバ
22 固定盤
23 可動盤
24a、24b 断熱板
25a、35a、45a 下側熱板
25b 上側熱板
261、262 モータ
271、272 ボールネジ軸
281、282、381、382、481、482 ボールネジナット
291、291 押圧力分散板
51、52 レール
TX 搬送軸
Xa 直交軸
P0 加圧中心点
PX11、PX12 加圧点
PX21、PX22 加圧点
PX31、PX32 加圧点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7