(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145011
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板及びその製造方法並びに折箱
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241004BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241004BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CET
B29C44/00 E
B29C44/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057228
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】北本 康裕
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074AA32L
4F074AB01
4F074AG06
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA95
4F074BC11
4F074CA22
4F074CA30
4F074CC02Z
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4F074CE46
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4F074DA02
4F074DA08
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4F074DA34
4F214AA13
4F214AA50
4F214AB02
4F214AG01
4F214AG20
4F214AH52
4F214UA11
4F214UA14
4F214UB02
(57)【要約】
【課題】折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板の加工適性の向上を図る。
【解決手段】発泡層22を有し、発泡層22は、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)が特定の範囲であるポリスチレン系樹脂を含み、分子量分布(Mw/Mn)及び分子量分布(Mz/Mw)が特定の範囲であることよりなる。ポリスチレン系樹脂は、分子量低減ポリスチレン系樹脂を含み、分子量低減ポリスチレン系樹脂は、リサイクル原料、及び、予め加熱溶融処理による分子量低減加工が施されたポリスチレン系樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層を有し、
前記発泡層は、ポリスチレン系樹脂を含み、
前記ポリスチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、75,000~105,000であり、
前記ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、200,000~320,000であり、
前記ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量(Mz)は、450,000~600,000であり、
前記ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)を前記ポリスチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)で除した分子量分布(Mw/Mn)は、2.78~3.20であり、
前記ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量(Mz)を前記ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)で除した分子量分布(Mz/Mw)は、1.80~2.20である、折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂は、分子量低減ポリスチレン系樹脂を含み、
前記分子量低減ポリスチレン系樹脂は、リサイクル原料、及び、予め加熱溶融処理による分子量低減加工が施されたポリスチレン系樹脂から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板。
【請求項3】
前記分子量低減ポリスチレン系樹脂の含有量は、前記ポリスチレン系樹脂の総質量に対して10~100質量%である、請求項2に記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板。
【請求項4】
前記発泡層の片面又は両面に、非発泡層を有する、請求項1又は2に記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板を有する、折箱。
【請求項6】
請求項1に記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板の製造方法であって、
原料ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂組成物を板状に押し出し、発泡させて発泡シートを得る工程と、
前記発泡シートを二次発泡して、前記発泡層とする工程と、
を有する、折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板及びその製造方法並びに折箱に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる折箱としては、上端に開口部を有する容器本体と、容器本体の開口部を塞ぐ蓋体とを有するものが知られている。容器本体としては、例えば、平面視で略四角形状の底板と、底板の相対する二辺から立ち上がる2つの側板と、底板の他の二辺から立ち上がる2つの妻板と(側板と妻板とで構成される部材を「周側板」ということがある)、を有し、全体として直方体の形態がある。あるいは、容器本体としては、平面視円形の底板と、底板の周縁から立ち上がる周側板とを有し、全体として円柱形の態様がある。
【0003】
折箱の原反としては、ポリスチレン系樹脂の発泡層と、発泡層の片面又は両面に位置する非発泡層とを有するポリスチレン系樹脂発泡板が用いられる。
このポリスチレン系樹脂発泡板を折り曲げたり、湾曲させたりして、折箱とする。
ポリスチレン系樹脂発泡板を折箱に成形する際、折り曲げ縁や湾曲面にしわを生じると、外観不良となる。
こうした問題に対して、MD方向の平均気泡径とTD方向の平均気泡径との比が特定の範囲であり、シートの表裏いずれかのスキン層の厚みが特定の範囲であるポリスチレン系樹脂発泡板が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、折箱の形状は複雑化している。このため、折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板には、加工適性を高めて、複雑な形状の折箱を美麗にすることが求められている。
そこで、本発明は、加工適性を高めた折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>
発泡層を有し、
前記発泡層は、ポリスチレン系樹脂を含み、
前記ポリスチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、75,000~105,000であり、
前記ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、200,000~320,000であり、
前記ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量(Mz)は、450,000~600,000であり、
前記ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)を前記ポリスチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)で除した分子量分布(Mw/Mn)は、2.78~3.20であり、
前記ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量(Mz)を前記ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)で除した分子量分布(Mz/Mw)は、1.80~2.20である、折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板。
<2>
前記ポリスチレン系樹脂は、分子量低減ポリスチレン系樹脂を含み、
前記分子量低減ポリスチレン系樹脂は、リサイクル原料、及び、予め加熱溶融処理による分子量低減加工が施されたポリスチレン系樹脂から選ばれる1種以上である、<1>に記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板。
<3>
前記分子量低減ポリスチレン系樹脂の含有量は、前記ポリスチレン系樹脂の総質量に対して10~100質量%である、<2>に記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板。
<4>
前記発泡層の片面又は両面に、非発泡層を有する、<1>~<3>のいずれかに記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板。
<5>
<1>~<4>のいずれかに記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板を有する、折箱。
【0007】
<6>
<1>~<5>のいずれかに記載の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板の製造方法であって、
原料ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性樹脂組成物を板状に押し出し、発泡させて発泡シートを得る工程と、
前記発泡シートを二次発泡して、前記発泡層とする工程と、
を有する、折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡板によれば、加工適性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板の断面図である。
【
図2】本発明の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板の製造装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板)
本発明の折箱用のポリスチレン系樹脂発泡板(以下、単に「発泡板」ともいう。)は、ポリスチレン系樹脂を含む発泡層を有する。発泡板は、発泡層のみからなる単層構造でもよいし、発泡層の片面又は両面に非発泡層を有する多層構造でもよい。
以下、本発明の発泡板について、一実施形態を挙げて説明する。
【0011】
図1の発泡板2Aは、発泡層22と、発泡層22の片面に位置する非発泡層21とを有する。
【0012】
発泡板2Aの厚さT1は、特に限定されないが、2.0~5.5mmが好ましく、2.2~5.3mmがより好ましく、2.4~5.2mmがさらに好ましい。厚さT1が上記下限値以上であると、得られる折箱の強度を高められる。厚さT1が上記上限値以下であると、発泡板2Aの柔軟性を高めて、折曲させたりする際の加工適性をより高められる。
厚さT1は、発泡板2AのTD方向の任意の10点を厚み測定器SM-114(TECLOCK社製)を用いて測定し、その平均値として求められる。
【0013】
発泡板2Aの坪量は、特に限定されないが180~350g/m2が好ましく、200~330g/m2がより好ましく、210~310g/m2がさらに好ましい。発泡板2Aの坪量が上記下限値以上であると、折箱の剛性をより高められる。発泡板2Aの坪量が上記上限値以下であると、発泡板2Aの柔軟性を高めて、折曲させたりする際の加工適性をより高められる。
【0014】
<発泡層>
発泡層22は、樹脂(発泡層を構成する樹脂を「発泡層樹脂」ということがある)と、発泡剤とを含有する樹脂組成物(発泡性樹脂組成物)を発泡してなる層である。
発泡層樹脂は、ポリスチレン系樹脂を含む。
【0015】
発泡層22の厚さT22は、特に限定されないが、2.0~5.5mmが好ましく、2.2~5.3mmがより好ましく、2.4~5.2mmがさらに好ましい。厚さT22が上記下限値以上であると、折箱の剛性をより高められる。厚さT22が上記上限値以下であると、発泡板2Aの柔軟性を高めて、折曲させたり、湾曲させたりする際の加工適性をより高められる。厚さT22の測定方法は、厚さT1の測定方法と同様である。
【0016】
発泡層22の発泡倍率は、特に限定されないが8.0~29.0倍が好ましく、9.0~27.0倍がより好ましい、10.1~25.0倍がさらに好ましい。発泡倍率が上記下限値以上であると、折箱の剛性をより高められる。発泡倍率が上記上限値以下であると、発泡板2Aの柔軟性を高めて、折曲させたり、湾曲させたりする際の加工適性をより高められる。発泡倍率は、1を発泡層22の見掛け密度(g/cm3)で除した値である。
見かけ密度は、質量(g)÷見掛け体積(cm3)により求められる。
【0017】
発泡層22の坪量は、例えば、140~300g/m2が好ましく、145~280g/m2がより好ましく、150~270g/m2がさらに好ましい。坪量が上記下限値以上であると、折箱の剛性をより高められる。坪量が上記上限値以下であると、発泡板2Aの柔軟性を高めて、折曲させたり、湾曲させたりする際の加工適性をより高められる。
【0018】
発泡層22の平均気泡径は、例えば、60~650μmが好ましく、80~550μmがより好ましく、100~500μmがさらに好ましい。発泡層22の平均気泡径が上記下限値以上であると、折箱の耐衝撃性を高められる。発泡層22の平均気泡径が上記上限値以下であると、発泡層22の表面の平滑性を高められる。
発泡層22の平均気泡径は、ASTM D2842-69に記載の方法に準拠して測定できる。
【0019】
発泡層22の独立気泡率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%でもよい。発泡層22の独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法に準拠して測定できる。
【0020】
発泡層樹脂を構成するポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体、スチレン系単量体と他のビニル系単量体との共重合体、又はこれらの混合物等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体に基づく構成単位が、ポリスチレン系樹脂の全構成単位に対して50質量%以上含まれるものが好ましく、70質量%以上含まれるものがより好ましく、80質量%以上含まれるものがさらに好ましい。
【0021】
上記スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又は共重合体が挙げられる。このなかでも、スチレンに基づく構成単位を、全構成単位に対して50質量%以上有するものが好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
また、ポリスチレン系樹脂として、ゴム成分を含むハイインパクトポリスチレンが用いられてもよい。
【0022】
スチレン系単量体と他のビニル系単量体との共重合体としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体、スチレン-フマル酸エステル共重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-アルキレングリコールジメタクリレート共重合体等が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0023】
スチレン系単量体と他のビニル系単量体との共重合体としては、スチレン系単量体に基づく構成単位を、共重合体の全構成単位に対して50質量%以上含むものが好ましく、70質量%以上含むものがより好ましく、80質量%以上含むものがさらに好ましい。
【0024】
スチレン系単量体と他のビニル系単量体との共重合体としては、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体が好ましく、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体がより好ましい。
スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、共重合体中の(メタ)アクリル酸エステルに基づく構成単位の含有質量が1~14質量%のものが好ましく、1質量%以上14質量%未満のものがより好ましく、4~10質量%のものがさらに好ましい。
【0025】
ポリスチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、75,000~105,000であり、76,000~104,000が好ましく、77,000~103,000がより好ましい。数平均分子量(Mn)が上記下限値以上であると、発泡層22の曲げ強度を高められる。数平均分子量(Mn)が上記上限値以下であると、発泡層22の柔軟性を高めて、加工適性を高められる。
【0026】
ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、200,000~320,000であり、205,000~317,000が好ましく、208,000~315,000がより好ましい。質量平均分子量(Mw)が上記下限値以上であると、発泡層22の曲げ強度を高められる。質量平均分子量(Mw)が上記上限値以下であると、発泡層22の柔軟性を高めて、加工適性を高められる。
【0027】
ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量(Mz)は、450,000~600,000であり、455,000~595,000が好ましく、460,000~590,000がより好ましい。Z平均分子量(Mn)が上記下限値以上であると、発泡層22の曲げ強度を高められる。Z平均分子量(Mz)が上記上限値以下であると、発泡層22の柔軟性を高めて、加工適性を高められる。
【0028】
ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)をポリスチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)で除した分子量分布(Mw/Mn)は、2.78~3.20であり、2.79~3.19が好ましく、2.80~3.18がより好ましい。Mw/Mnが上記下限値以上であると、発泡層22の柔軟性を高めて、加工適性を高められる。Mw/Mnが上記上限値以下であると、発泡層22の曲げ強度を高められる。
【0029】
ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量(Mz)をポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)で除した分子量分布(Mz/Mw)は、1.80~2.20であり、1.83~2.18が好ましく、1.85~2.16がより好ましい。Mz/Mwが上記下限値以上であると、発泡層22の曲げ強度を高められる。Mz/Mwが上記上限値以下であると、発泡層22の柔軟性を高めて、加工適性を高められる。
【0030】
ポリスチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)が上記の関係を有すると、ポリスチレン系樹脂の分子量分布は、モード値よりも低分子量側にブロードな分布となる。このような分子量分布を有することで、発泡層22の柔軟性が高まって、発泡板2Aの加工適性が高まり、かつ折箱に必要な曲げ強度を維持できる。
【0031】
ポリスチレン系樹脂のカス平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した値を、標準ポリスチレンによる較正曲線に基づき換算した値である。
【0032】
ポリスチレン系樹脂は、分子量低減ポリスチレン系樹脂を含んでもよい。ポリスチレン系樹脂は、分子量低減ポリスチレン系樹脂を含むことで、分子量を所望の分布に、より容易に調節できる。
分子量低減ポリスチレン系樹脂は、リサイクル原料、及び、予め加熱溶融処理による分子量低減加工が施されたポリスチレン系樹脂(加熱溶融PS)から選ばれる1種以上である。
リサイクル原料は、その製造過程で加熱溶融処理が施されているため、原料として用いたポリスチレン系樹脂よりも小さい分子量のポリマーが増えている。また、加熱溶融PSは、加熱溶融処理が施されているため、加熱溶融処理前よりも小さい分子量のポリマーが増えている。このような分子量低減ポリスチレン系樹脂を含むことで、発泡層樹脂のポリスチレン系樹脂は低分子量側にブロードな分布となる。
【0033】
リサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系発泡板、ポリスチレン系樹脂発泡成形体(食品包装用トレー等)等を再生処理して得られたポリスチレン系樹脂発泡体を使用できる。リサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系発泡板、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料が挙げられる。
【0034】
加熱溶融PSとしては、市販のポリスチレン系樹脂を押し出し機内で加熱溶融し、押し出して、リペレット化したものを例示できる。押し出し機内での加熱温度は、ポリスチレン系樹脂の種類等を勘案して適宜決定され、例えば200~320℃が好ましい。加熱温度が上記下限値以上であると、得られる加熱溶融PSの平均分子量をより小さくできる。加熱温度が上記上限値以下であると、より効率的に分子量低減加工を施すことができる。
【0035】
発泡層22の分子量低減ポリスチレン系樹脂の含有量は、発泡層樹脂中のポリスチレン系樹脂の総質量に対して、10~100質量%が好ましく、30~100質量%がより好ましく、50~100質量%がさらに好ましい。分子量低減ポリスチレン系樹脂の含有量が上記下限値以上であると、ポリスチレン系樹脂の分子量分布をより容易に調節できる。
【0036】
ポリスチレン系樹脂としては、分子量低減ポリスチレン系樹脂の他、市販のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等により合成されたポリスチレン系樹脂等、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂(バージンポリスチレン)を使用できる。
【0037】
分子量低減ポリスチレン系樹脂を発泡層樹脂として用いる場合、予め分子量低減ポリスチレン系樹脂の平均分子量を測定し、分子量分布を確認した後に製造に供する。分子量低減ポリスチレン系樹脂の分子量分布の状況に応じて、適宜、バージンポリスチレンや他の分子量低減ポリスチレン系樹脂と組み合わせて、分子量分布を調節する。
【0038】
発泡層樹脂は、ポリスチレン系樹脂が主成分である範囲で、ポリスチレン系樹脂以外の樹脂を含んでもよい。ポリスチレン系樹脂が主成分である範囲とは、発泡層樹脂の総質量(100質量%)に対してポリスチレン系樹脂の含有量が50質量%以上となる範囲を意味する。ポリスチレン系樹脂の含有量は、発泡層樹脂の総質量に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0039】
ポリスチレン系樹脂以外の発泡層樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、エチレン-プロピレン-非共役ジエン三次元共重合体、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂等が挙げられる。
【0040】
発泡剤は、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素;テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素等である。中でも、発泡剤としては、ブタンが好適である。ブタンは、ノルマルブタン又はイソブタンの単独でもよいし、ノルマルブタンとイソブタンとの組み合わせでもよい。
これらの発泡剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
発泡剤の配合量は、発泡剤の種類や、発泡層22に求める全体密度等を勘案して決定される。発泡剤の含有量は、発泡層樹脂100質量部に対して1.0~7.0質量部が好ましい。
【0041】
発泡層22には、発泡層樹脂及び発泡剤以外に、発泡核剤(気泡調整剤)、架橋剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤(炭化水素、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸、シリコーン油、低分子ポリエチレン等のワックス等)、展着剤(流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ポリブテン等)、着色剤(顔料等)等の添加剤が添加されてもよい。なかでも、本発明の発泡板は、発泡核剤を含有することが好ましい。
【0042】
発泡核剤としては、例えば、タルク、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カルシウム、クレー、クエン酸等が挙げられる。なかでも、タルクが好ましい。
気泡調整剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
気泡調整剤の添加量は、発泡層樹脂100質量部に対して0.01~5質量部が好ましい。
【0043】
<非発泡層>
発泡板2Aは、非発泡層21を有してもよい。発泡板2Aは、非発泡層21を有することで、折箱にした際に表面をより平滑にし、折箱の強度を高められる。
【0044】
非発泡層21の厚さT21は、発泡シートの用途等を勘案して決定され、例えば、5~100μmが好ましく、10~80μmがより好ましく、15~60μmがさらに好ましい。厚さT21が上記下限値以上であると、強度をより高め、折箱の表面をより平滑にし、折箱の強度をより高められる。厚さT21が上記上限値以下であると、折箱の軽量化を図れる。厚さT21は、厚さT1から厚さT22を減じて求める。
【0045】
非発泡層21を構成する樹脂(非発泡層樹脂)としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)等が挙げられる。非発泡層樹脂のポリスチレン系樹脂は、発泡層樹脂のポリスチレン系樹脂と同様である。非発泡層樹脂のポリスチレン系樹脂は、発泡層樹脂のポリスチレン系樹脂と同じでもよいし、異なってもよい。
【0046】
非発泡層21は、非発泡層樹脂以外に、架橋剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤(炭化水素、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸、シリコーン油、低分子ポリエチレン等のワックス等)、展着剤(流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ポリブテン等)、着色剤(顔料等)等の添加剤が添加されてもよい。
【0047】
非発泡層21は、単層構造でもよいし、二層以上の多層構造でもよい。非発泡層21が多層構造である場合、非発泡層21は、例えば、ポリスチレン系樹脂フィルムにポリオレフィン系樹脂フィルム等がドライラミネートされた積層フィルム等が挙げられる。
非発泡層21が積層フィルムである場合、ドライラミネートするポリオレフィン系樹脂フィルムは、例えば、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)フィルム、ポリスチレン系フィルム(OPS、CPS)、ポリプロピレン系樹脂(PP)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルム等が挙げられる。
【0048】
非発泡層21を構成する樹脂フィルムは、無延伸フィルム、弱延伸フィルム、1軸延伸フィルム、及び、2軸延伸フィルムのいずれでもよい。
【0049】
非発泡層21の表面には、印刷層が設けられていてもよく、印刷層の表面にさらに非発泡層が設けられていてもよい。あるいは、非発泡層21と発泡層22との間に印刷層が設けられてもよい。
【0050】
(発泡板の製造方法)
発泡板は、従来公知の製造方法により製造される。
図2の製造装置1は、押出成形により発泡シートを得る装置である。製造装置1は、押出機10と、発泡剤供給源18と、サーキュラーダイ20と、マンドレル30と、2つの巻取機40とを備える。
押出機10は、いわゆるシングル型押出機である。押出機10は、ホッパー14を備える。押出機10には、発泡剤供給源18が接続されている。
押出機10には、サーキュラーダイ20が接続されている。サーキュラーダイ20の下流には、カッター32を備えるマンドレル30が設けられている。サーキュラーダイ20とマンドレル30との間には、冷却用送風機(不図示)が設けられている。
なお、製造装置1の押出機10はシングル型押出機以外の押出機でもよいし、いわゆるタンデム型押出機でもよい。
また、製造装置1の押出機10は単軸押出機であってもよいし、二軸押出機等の多軸押出機であってもよい。
【0051】
発泡層を構成する原料(発泡層樹脂、発泡層任意成分)をホッパー14から押出機10に投入する。発泡層樹脂の原料(即ち、原料ポリスチレン系樹脂を含む原料樹脂)は、発泡層樹脂と同様である。
押出機10では、原料を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源18から発泡剤を押出機10に供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して発泡性樹脂組成物とする。
加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して、樹脂が溶融しかつ任意成分が変性しない範囲で適宜決定される。
【0052】
発泡性樹脂組成物は、押出機10にて、さらに混合される。発泡性樹脂組成物は、任意の温度にされた後、サーキュラーダイ20内の樹脂流路に導かれる。
樹脂流路に導かれた発泡性樹脂組成物は、サーキュラーダイ20の吐出口から吐出され、発泡剤が発泡して、発泡体である円筒状の発泡シート2aとなる(押出発泡工程)。
円筒状の発泡シート2aは、冷却用送風機から送風された冷却用のエアーが吹き付けられつつ、マンドレル30に案内される。円筒状の発泡シート2aは、マンドレル30の外面を通過し、任意の温度に冷却されて発泡硬化物となり、カッター32によって2枚に切り裂かれて発泡シート2となる(切開工程)。発泡シート2は各々ガイドロール42とガイドロール44とに掛け回され、巻取機40に巻き取られて発泡シートロール4となる。
【0053】
サーキュラーダイ20の吐出口における発泡性樹脂組成物に対するせん断速度は、7500s-1以下が好ましく、6500s-1以下がより好ましく、6000s-1以下でさらに好ましい。
【0054】
次いで、発泡シートロール4から発泡シート2aを繰り出し、これを加熱して二次発泡して、折箱用の発泡板とする(二次発泡工程)。
二次発泡する際の加熱方法としては、発泡シート2aをトンネル型電熱加熱炉で加熱する方法、発泡シート2aを加熱板で挟み、これを加熱する方法等が挙げられる。発泡シート2aに対する加熱温度は、例えば、150~200℃である。
【0055】
発泡板に非発泡層を設ける場合、発泡シート2aに樹脂フィルムを熱融着し、次いで二次発泡してもよいし、二次発泡した発泡板に樹脂フィルムを熱融着してもよい。
【0056】
(折箱)
本発明の折箱は、本発明の発泡板を有する。折箱は、本発明の発泡板のみで構成されていてもよいし、折箱の一部のみが本発明の発泡板で構成されていてもよい。
【0057】
折箱としては、容器本体と、容器本体の開口部を塞ぐ蓋体とを有するものが挙げられる。
容器本体は、平板状の底板と、底板の周縁から立ち上がる周側板を有するものであればよい。
容器本体の形状は、特に限定されず、有底多角筒状でもよいし、有底円筒状でもよい。
【0058】
有底多角筒状の容器本体は、常法により製造できる。平面視多角形の底板と側板及び妻板との境界に押し罫線を形成し、又は切込みによる溝を形成し、この罫線又は溝で折り曲げて、容器本体を製造する。この際、本発明の発泡板は、柔軟性に優れて、高い加工適性を有するため、折り曲げ縁の近傍に、折れ、皺、歪み又は割れ等の変形が生じるのを抑制する。このため、製造された折箱の表面は美麗である。
【0059】
有底円筒状の容器本体は、常法により製造できる。長尺の発泡板を湾曲させて環状の周側板とし、この環状の周側板の開口部の一方に円形の底板を取り付けて、有底円筒状の容器本体を製造する。この際、本発明の発泡板は、柔軟性に優れて、高い加工適性を有するため、湾曲した面において皺や歪みが生じるのを抑制する。このため、製造された折箱の表面は美麗である。
【0060】
以上説明した通り、本発明の発泡板によれば、優れた加工適性を有するため、得られる折箱には、折れ、皺、歪み又は割れ等の変形が抑制されている。
加えて、本発明の発泡版は、折箱用として要求される曲げ強度を有する。
さらに、本発明は、リサイクル原料を有効に利用でき、プラスチックの使用量削減が図れ、環境負荷の低減を図れる。
【実施例0061】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
(使用原料)
<ポリスチレン系樹脂>
・PS-1:商品名「HRM-26」、汎用ポリスチレン(GPPS)、東洋スチレン(株)製。
・PS-2:商品名「HRM-10N」、汎用ポリスチレン(GPPS)、東洋スチレン(株)製。
・PS-3:商品名「HRM-48N」、汎用ポリスチレン(GPPS)、東洋スチレン(株)製。
・PS-4:商品名「HRM-18」、汎用ポリスチレン(GPPS)、東洋スチレン(株)製。
・PS-5:ポリスチレン系樹脂のリサイクル原料。
【0063】
<発泡剤>
・ブタン:イソブタン/ノルマルブタン=70/30(質量比)。
【0064】
<その他>
・顔料:商品名「ESH-K-4799LB」、ポリコール(株)製。
・発泡核剤:商品名「MO-60-SH-HC」、キハラ化成(株)製。
【0065】
(測定方法)
<ポリスチレン系樹脂の分子量>
以下に、発泡板におけるポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mzの測定方法を示す。なお、ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量Mw及びポリスチレン系樹脂の数平均分子量Mnは、ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mzと同様の方法で測定した。
各例の発泡板をスライサー又は剃刀で切り取り、試料として採取した。この試料について、下記測定条件のもと、前処理によって濾液を得て、ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mzを測定した。
【0066】
≪測定条件≫
[前処理]
採取した試料6mgをテトラヒドロフラン(THF)6mLに溶解し(浸漬時間:6±1hr(完全溶解))、試料溶液を得た。株式会社島津ジーエルシー製、非水系0.45μmシリンジフィルターにて試料溶液を濾過して濾液を得た。
上記前処理で得られた濾液を用いて、下記測定条件のもと、下記測定装置でポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mzを測定した。
【0067】
[測定装置]
・GPC装置:東ソー(株)製、HLC-8320GPC(RI検出器・UV検出器内蔵)。
・ガードカラム:TOSOH TSK guardcolumn SuperMP(HZ)-H(4.6mmI.D.×2cm)×1本。
・カラム(リファレンス):TOSOH TSKgel Super HZ1000(6.0mmI.D.×15cm)×1本。
・カラム(サンプル):TSKgel SuperMultiporeHZ-H(4.6mmI.D.×15cm)×2本直列。
【0068】
[測定条件]
・カラム温度:40℃。
・検出器温度:40℃。
・ポンプ注入部温度:40℃。
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)。
・流量(リファレンス):0.2mL/min。
・流量(サンプル):0.2mL/min。
・実行時間:21min。
・データ集積時間:6~25min。
・データ間隔:200msec。
・注入容積:20μL。
・検出器:RI。
【0069】
[検量線用標準ポリスチレン試料]
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工株式会社製の製品名「STANDARD SM-105」及び「STANDARD SH-75」から、質量平均分子量Mwが5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いた。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)及びB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした。Aを秤量(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)した後、THF30mLに溶解した。Bを秤量(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)した後、THF30mLに溶解した。 標準ポリスチレン検量線は、作成した各A及びB溶解液を20μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(一次式)を作成することにより得た。その検量線を用いてZ平均分子量(Mz)を算出した。
【0070】
<曲げ強度>
曲げ強度は、株式会社オリエンテック製、テンシロン万能試験機「RTC-1310A」を用いて測定を行った。試験片は、押出方向(MD方向)及び押出方向に直交する方向(TD方向)に対して幅50mm×長さ150mm×厚さ(各例の厚さ)の大きさに切り出した。それぞれの方向に対して試験片の数を3個とした。測定条件は、試験速度を50mm/minとし、加圧くさび及び支点の先端部の半径は3.2Rとし、支点間距離は100mmとし、各試験片の3点曲げ測定を行い、最大点荷重を発泡板の曲げ強度(N)とした。次に、MD方向の曲げ強度(N)とTD方向の曲げ強度(N)の平均値(N)から、下記評価基準に基づいて判定を行った。
【0071】
≪評価基準≫
A:曲げ強度の平均値が10N以上・・・曲げ強度が極めて高く、優れている。
B:曲げ強度の平均値が9N以上10N未満・・・曲げ強度が低いが、許容できる。
C:曲げ強度の平均値が9N未満・・・曲げ強度が極めて低く、不良である。
【0072】
<折れ>
各例の発泡板をMD方向が短手方向となり、TD方向が長手方向となるように、幅55mm、長さ510mmの長矩形状に裁断した。裁断した発泡板の短手方向に沿って、長手方向の片端から35mm、及び235mmの位置に、短手方向に沿って幅4mm、深さ1mmの縦溝加工を施してサンプルとした。その後、サンプルを環状に曲げ、両端を加熱融着させて周側板とし、長径183mm、短径133mm、周長502mmの楕円形の底板を周側板内に入れ、周側板と底板からなる容器とした。なお、加熱融着された周側板の両端が底板の短径方向に重なるようにした。この容器の周側部の溝加工部分について、折れの角度を分度器にて測定した。評価基準は次の通りとした。
【0073】
≪評価基準≫
A(折れなし):163°以上。
B(折れあり):163°未満。
【0074】
<皺>
前記<折れ>の評価で作製した容器について、周側板の内面における皺の発生状況を目視で観察した。評価基準は次の通り。
【0075】
≪評価基準≫
A(皺なし):内面の湾曲部に全く皺がない。
B(皺あり):内面の湾曲部に1つ以上の皺がある。
【0076】
<外観>
各例の発泡板に外観を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
A(問題なし):外観むらやライン等がない。
B(問題あり):外観むらやライン等がある。
【0077】
<総合評価>
下記評価基準に従って評価した。
≪評価基準≫
A:曲げ強度、折れ、皺及び外観の評価のいずれもが「A」である。
B:曲げ強度、折れ、皺及び外観の評価の内、1つが「A」以外である。
C:曲げ強度、折れ、皺及び外観の評価の内、2つが「A」以外である。
D:曲げ強度、折れ、皺及び外観の評価の内、3つが「A」以外である。
E:曲げ強度、折れ、皺及び外観の評価の内、4つが「A」以外である。
【0078】
(実施例1~5、比較例1~6)
図1の製造装置と同様の製造装置を用い、下記のようにして発泡シートを得た。
押出機として内径65mm押出機と90mm押出機が連結されたタンデム押出機を用いた。表1~2のポリスチレン系樹脂配合に従い、ポリスチレン系樹脂と100質量部と、発泡核剤1.36質量部と、顔料2.7質量部とを押出機に供給し、押出機内で最高温度264℃で溶融し、混練して、溶融混練物とした。溶融混練物に対して、発泡剤6.3質量部(樹脂の総量を100質量部する)を添加し、更に混練した。その後、発泡に適した樹脂温度167.1℃まで冷却して、発泡性樹脂組成物とした。
押出機先端部に取り付けたサーキュラーダイ(口径128mmφ、スリットクリアランス0.75mm)より、吐出量100kg/h、せん断速度626s
-1で発泡性樹脂組成物を押し出し、発泡させた後、冷却して円筒状の発泡シートとした。この際、押出された後の円筒状の発泡シートを冷却するエアー(温度は40℃)の風量を、1.4m
3/minとした。
円筒状の発泡シートを左右に設けたカッターで切開して2枚の発泡シートとした。それぞれの発泡シートは、多段のロール間で延伸を加えながら、巻きロールに巻き取った。この巻き取りの際、発泡シートのMD方向に延伸を加えるため、引き取り速度を7.2m/minとした。発泡シートのTD方向の寸法は690mmであった。その後、得られた発泡シートをトンネル型電熱加熱炉に通し、温度178℃、長さ3.5m、移動速度27.04m/minの条件で電熱加熱して、二次発泡させた後、裁断し発泡板とした。発泡板の寸法は、TD方向635mm、MD方向1365mmとした。
得られた発泡板について、曲げ強度、折れ、皺、外観及び総合評価を行い、その結果を表中に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
表1~2に示す通り、本発明を適用した実施例1~6は、いずれも折れ及び皺の発生がなく、外観も良好で、総合評価がAであった。即ち、実施例1~6の発泡板は、加工適性に優れていた。
ポリスチレン系樹脂の分子量分布(Mz/Mw)が1.79である比較例1は、曲げ強度の評価が「C」、皺及び外観の評価が「B」であった。
ポリスチレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が3.39比較例2は、折れの評価が「B」であった。
ポリスチレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が3.46、Mz/Mwが2.52である比較例3は、折れの評価が「B」であった。
ポリスチレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が2.72、分子量分布(Mz/Mw)が2.22である比較例4は、曲げ強度、皺及び外観の評価が「B」、皺の評価が「B」であった。
ポリスチレン系樹脂の分子量分布(Mz/Mw)が2.44である比較例5は、折れの評価が「B」であった。
ポリスチレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が2.75である比較例6は、曲げ強度、皺及び外観の評価が「B」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、加工適性を高められることを確認できた。