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特開2024-145015添加剤供給量制御システム、燃焼設備及び添加剤供給量制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145015
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】添加剤供給量制御システム、燃焼設備及び添加剤供給量制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23L 7/00 20060101AFI20241004BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F23C99/00 302
F23G5/50 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057233
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】土山 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】今道 哲朗
【テーマコード(参考)】
3K062
3K065
【Fターム(参考)】
3K062AA01
3K062AB01
3K062AC17
3K062BA02
3K062CB10
3K062DA40
3K062DB02
3K065TA08
3K065TB01
3K065TC03
3K065TD06
3K065TF08
3K065TL07
3K065TM03
3K065TN09
3K065TN17
(57)【要約】
【課題】少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を抑制することが可能な添加剤供給量制御システムを提供する。
【解決手段】リンを含む燃料を燃焼させるための燃焼炉用の添加剤供給量制御システムであって、燃料の燃焼によって生成される灰又は燃料を分析することによって、灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の少なくとも一方と、灰中のリンの含有量とを検出するように構成された検出部と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を含む添加剤を燃料に添加する添加量を制御する添加量制御部と、を備え、添加量制御部は、灰中のリンの含有量に応じた値から、灰中のアルミニウムの含有量に応じた値及び灰中のカルシウムの含有量に応じた値の少なくとも一方を減算することで得られた値に基づいて、添加剤の添加量を制御するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンを含む燃料を燃焼させるための燃焼炉用の添加剤供給量制御システムであって、
前記燃料の燃焼によって生成される灰又は前記燃料を分析することによって、前記灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の少なくとも一方と、前記灰中のリンの含有量とを検出するように構成された検出部と、
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を含む添加剤を前記燃料に添加する添加量を制御するように構成された添加量制御部と、
を備え、
前記添加量制御部は、前記灰中のリンの前記含有量に応じた値から、前記灰中のアルミニウムの前記含有量に応じた値及び前記灰中のカルシウムの前記含有量に応じた値の少なくとも一方を減算することで得られた値に基づいて、前記添加剤の前記添加量を制御するように構成された、添加剤供給量制御システム。
【請求項2】
前記添加量制御部は、前記灰中のリンの前記含有量に応じた値から、前記灰中のアルミニウムの前記含有量に応じた値及び前記灰中のカルシウムの前記含有量に応じた値の両方を減算することで得られた値に基づいて、前記添加剤の前記添加量を制御するように構成された、請求項1に記載の添加剤供給量制御システム。
【請求項3】
前記検出部は、前記燃料の燃焼によって生成される灰又は前記燃料を分析することによって、前記灰中のナトリウムの含有量及びカリウムの含有量を更に検出するように構成され、
前記灰の単位重量当たりに含まれるナトリウム、カリウム、リン、カルシウム及びアルミニウムの各々のモル数を、それぞれ、mNa、K、P、Ca、Alとすると、
前記添加量制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、下記式(1)によって規定される値Xが1より大きくなるように前記添加剤の添加量を制御するように構成された、請求項2に記載の添加剤供給量制御システム。
X=(mNa+m)/(m-0.6×mCa-mAl) ・・・(1)
【請求項4】
前記添加量制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記値Xが2.6以上となるように前記添加剤の添加量を制御するように構成された、請求項3に記載の添加剤供給量制御システム。
【請求項5】
前記添加量制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記値Xが3未満となるように前記添加剤の添加量を制御するように構成された、請求項3又は4に記載の添加剤供給量制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の添加剤供給量制御システムと、
前記燃焼炉と、
を備える、燃焼設備。
【請求項7】
リンを含む燃料を燃焼させるための燃焼炉用の添加剤供給量制御方法であって、
前記燃料の燃焼によって生成される灰又は前記燃料を分析することによって、前記灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の少なくとも一方と、前記灰中のリンの含有量とを検出する検出ステップと、
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を含む添加剤を前記燃料に添加する添加量を制御する添加量制御ステップと、
を備え、
前記添加量制御ステップでは、前記灰中のリンの前記含有量に応じた値から、前記灰中のアルミニウムの前記含有量に応じた値及び前記灰中のカルシウムの前記含有量に応じた値の少なくとも一方を減算することで得られた値に基づいて、前記添加剤の前記添加量を制御する、添加剤供給量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、添加剤供給量制御システム、燃焼設備及び添加剤供給量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リンを含有する下水汚泥を焼却炉によって焼却処理する方法が記載されている。この方法では、燃焼炉の出口側の排ガス流路に燃焼灰が付着及び堆積して排ガス流路の詰まり、損傷又は破損等が生じるという問題を解決するために、焼却炉に供給される脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とから下記式(h)よって求められるYの値が1以上となるように、焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を添加剤によって調整することにより、840~900℃の温度域で溶融しやすいリン化合物の生成を抑制し、焼結灰が溶融しにくくなって、その付着及び堆積の問題が生じにくくなることが記載されている。
Y={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)/P(mol×3) ・・・(h)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-120104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リンを含有する燃料を燃焼炉で燃焼させる場合、焼却炉の炉壁や焼却炉の下流側の構造物(例えば排ガス流路の流路壁や排ガス流路内の熱交換器等)にリン酸塩に起因する腐食が生じやすい。この点、特許文献1には、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を抑制するための知見は開示されていない。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を抑制することが可能な添加剤供給量制御システム及びこれを備えた燃焼設備並びに添加剤供給量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る添加剤供給量制御システムは、
リンを含む燃料を燃焼させるための燃焼炉用の添加剤供給量制御システムであって、
前記燃料の燃焼によって生成される灰又は前記燃料を分析することによって、前記灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の少なくとも一方と、前記灰中のリンの含有量とを検出するように構成された検出部と、
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を含む添加剤を前記燃料に添加する添加量を制御するように構成された添加量制御部と、
を備え、
前記添加量制御部は、前記灰中のリンの前記含有量に応じた値から、前記灰中のアルミニウムの前記含有量に応じた値及び前記灰中のカルシウムの前記含有量に応じた値の少なくとも一方を減算することで得られた値に基づいて、前記添加剤の前記添加量を制御するように構成される。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼設備は、
前記添加剤供給量制御システムと、
前記燃焼炉と、
を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る添加剤供給量制御方法は、
リンを含む燃料を燃焼させるための燃焼炉用の添加剤供給量制御方法であって、
前記燃料の燃焼によって生成される灰又は前記燃料を分析することによって、前記灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の少なくとも一方と、前記灰中のリンの含有量とを検出する検出ステップと、
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を含む添加剤を前記燃料に添加する添加量を制御する添加量制御ステップと、
を備え、
前記添加量制御ステップでは、前記灰中のリンの前記含有量に応じた値から、前記灰中のアルミニウムの前記含有量に応じた値及び前記灰中のカルシウムの前記含有量に応じた値の少なくとも一方を減算することで得られた値に基づいて、前記添加剤の前記添加量を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を抑制することが可能な添加剤供給量制御システム及びこれを備えた燃焼設備並びに添加剤供給量制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る添加剤供給量制御システム50を含む燃焼設備1の概略図である。
図2図1における添加量制御部40のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】図中に記載の条件下におけるNaPO-NaCl、NaPO-NaSO、NaPO-KPO、NaCl-KCl-NaSO-KSOの各々の腐食量を示した図である。
図4】溶融塩の組成と腐食量との関係を示す曲線C並びに(a)NaPO-NaCl、(b)NaPO-NaSO及び(d)NaCl-KCl-NaSO-KSOの腐食量を示す図である。
図5】溶融塩NaCl-KCl-NaSO-KSOへのCrの溶解度と塩基度との関係を示す図である。
図6】NaO/P (モル比)と溶融塩中のNaO活量との関係を示す図である。
図7】NaPO-KPO-NaPO-KPO系の状態図である。
図8】上記灰中のAl、CaO、P、NaO、KOの各々の含有量を変化させて上記値Xを変化させた場合における灰の付着性の検証結果を示す図である。
図9】他の実施形態に係る添加剤供給量制御システム50を含む燃焼設備1の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る添加剤供給量制御システム50を含む燃焼設備1の概略図である。図2は、図1における添加量制御部40のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、燃焼設備1は、内部で燃料を燃焼させるための燃焼炉12と、燃焼炉12からの燃焼ガスが導かれる煙道4と、煙道4に設けられた伝熱管14と、煙道4にて伝熱管14の下流側に設けられた捕捉部18と、上記燃料に添加する添加剤の供給量を制御するための添加剤供給量制御システム50と、を備えている。燃焼炉12、煙道4、及び伝熱管14はボイラ2を構成しており、燃焼炉12、煙道4、及び伝熱管14の各々は、クロム、ニッケル等等を含有する耐熱鋼によって構成されている。
【0014】
燃焼炉12には、燃料供給部8から燃料が供給されるとともに、空気供給部10から空気が供給されるようになっており、燃焼炉12の内部で燃料を燃焼するように構成されている。燃料供給部8から供給される燃料は、リンを含む燃料であり、例えば、PKS(Palm Kernel Shell)、ゴムの木、鶏糞又は汚泥等に代表されるバイオマス燃料である。なお、単独で燃焼(専焼)させることが困難なバイオマス燃料が用いられる場合は、燃焼炉12に供給される燃料は、バイオマス燃料に加えて天然ガス等の補助燃料を含んでいてもよい。
【0015】
燃焼炉12では、燃料の燃焼により燃焼ガスや灰が生成される。灰の一部は、燃焼炉12の下部に溜まり、図示しない灰排出部を介して、燃焼炉12の外部に排出される。また、灰の一部は、フライアッシュとして、燃焼ガスに同伴されて煙道4に導かれる。燃焼炉12の燃焼温度は900℃未満(例えば800℃以上900℃未満)であってもよい。
【0016】
伝熱管14は、煙道を流れる高温の燃焼ガスとの熱交換により、伝熱管14の内部を流れる流体(水等)を加熱するように構成されている。伝熱管14で加熱された水は、例えば、蒸気として発電タービンを駆動するために利用されてもよい。
【0017】
図1に示すように、煙道4において伝熱管14の下流側には、煙道4を流れる燃焼ガスの温度を低下させるための減温部16が設けられていてもよい。減温部16は、例えば、水を噴霧することにより、燃焼ガスの温度を低下させるように構成されていてもよい。減温部16は、伝熱管14を通過後の燃焼ガスの温度を、所定の物質(例えばダイオキシン類)の合成が進まない温度域まで低下させるようになっていてもよい。
【0018】
捕捉部18は、煙道4からの燃焼ガスに同伴される灰(フライアッシュ)を捕捉するように構成されている。すなわち、捕捉部18は、灰を同伴する燃焼ガスから灰を分離するようになっている。捕捉部18として、例えばバグフィルタや電気式集塵機等の集塵装置を用いることができる。
【0019】
捕捉部18にて灰が除去された燃焼ガスは、捕捉部18に接続された排気通路5及び煙突6を介して、燃焼設備1の外部に排出される。なお、排気通路5にファン22が設けられており、ファン22によって燃焼ガスを吸引するようになっていてもよい。また、捕捉部18にて燃焼ガスから分離された灰は、排出管20及び排出バルブ21を介して捕捉部18から排出されるようになっている。
【0020】
以下、添加剤供給量制御システム50についてより詳細に説明する。
図1に示すように、一実施形態に係る添加剤供給量制御システム50は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む添加剤を燃焼前又は燃焼中の燃料に供給するための添加剤供給部28と、灰中の成分を計測するための検出部26と、燃料に対する添加剤の添加量を制御するための添加量制御部40と、を備えている。
【0021】
図2に示すように、添加量制御部40は、例えばプロセッサ72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、HDD (Hard Disk Drive)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。なお、添加量制御部40のハードウェア構成は上記に限定されず、制御回路と記憶装置との組み合わせにより構成されてもよい。また添加量制御部40は、添加量制御部の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明する添加量制御部40における各部の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてプロセッサ72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。添加量制御部40を構成するハードウェアは、1つの場所に集約されていてもよいし、複数の場所に分散して設けられていてもよい。
【0022】
図1に示す例示的な実施形態では、添加剤供給部28は、燃料に添加剤を供給するための添加剤供給ライン29と、添加剤供給ライン29に接続され、添加剤が貯留されるタンク30と、タンク30からの添加剤を加圧送給するための供給ポンプ32と、添加剤の供給量を調節するための供給バルブ34と、を含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、添加剤供給部28は、燃焼前の燃料に添加剤を供給するように構成されている。例えば、添加剤供給部28は、燃焼炉12に供給される前の燃料が貯留された燃料供給部8(ホッパ等)に、添加剤を供給するように構成されていてもよい。あるいは、幾つかの実施形態では、添加剤供給部28は、燃焼炉12の内部において、燃料の上方から添加剤を供給するように構成されていてもよい。
【0024】
添加剤は、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等のうち1種類又は2種類以上を含んでいてもよい。以下では、添加剤が炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムを含む場合を例に説明する。なお、添加剤が例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等のうち2種類以上の化合物を含む場合には、各化合物を別々に燃料に供給してもよいし、2種類以上の化合物を混合してから燃料に供給してもよい。
【0025】
検出部26は、少なくとも、燃料の燃焼により生成される灰の性状を例えばXRF(蛍光X線分析装置)を用いて分析して、灰中のナトリウム、カリウム、リン、カルシウム及びアルミニウムの各々の含有量を検出するように構成されている。図1に示す例示的な実施形態では、検出部26は、捕捉部18で捕捉された灰中のナトリウム、カリウム、リン、カルシウム及びアルミニウムの各々の含有量を検出するように構成されている。検出部26は、例えば、捕捉部18から灰が排出される排出管20を介して、分析対象の灰を採取するようになっていてもよい。
【0026】
添加量制御部40は、検出部26による検出結果に基づいて、添加剤供給部28による燃料への添加剤の添加量を制御するように構成されている。すなわち、添加量制御部40は、検出部26によって検出された灰中のナトリウム、カリウム、リン、カルシウム及びアルミニウムの各々の含有量に基づいて、添加剤供給部28による燃料への添加剤の添加量を制御する。図1に示す例示的な実施形態では、添加量制御部40は、供給バルブ34の開度を制御することによって燃料に添加する添加剤の添加量を制御する。
【0027】
ここで、検出部26の検出結果から算出される、灰の単位重量当たりに含まれるナトリウム、カリウム、リン、カルシウム及びアルミニウムの各々のモル数を、それぞれ、mNa、K、P、Ca、Alとすると、添加量制御部40は、下記式(1)によって規定される値Xが1より大きくなるように、燃料への添加剤の添加量を制御する。
X=(mNa+m)/(m-0.6×mCa-mAl) ・・・(1)
【0028】
すなわち、添加量制御部40は、検出部26の検出結果から算出される、灰の単位重量当たりに含まれるナトリウム、カリウム、リン、カルシウム及びアルミニウムの各々のモル数mNa、K、P、Ca、Alに基づいて、上記式(1)の分子(mNa+m)及び分母(m-0.6×mCa-mAl)をそれぞれ算出し、該分子(mNa+m)を該分母(m-0.6×mCa-mAl)で除算することで上記値Xを算出し、Xが1より大きくなるように、燃料への添加剤の添加量を制御する。すなわち、添加量制御部40は、mNaとmの和を、mCaに0.6を乗じた値とmAlとをmから減算した値で除算した値Xを算出し、Xが1より大きくなるように、燃料への添加剤の添加量を制御する。
添加量制御部40は、例えばXが1以下である場合には、燃料の単位重量当たりの添加剤の添加量を増加させてもよく、例えばXが3以上である場合には、燃料の単位重量当たりの添加剤の添加量を減少させてもよい。
【0029】
以下、上記式(1)によって規定される値Xを1より大きくすることの技術的意義について説明する。
本願発明者の鋭意検討の結果、図1に例示した燃焼設備1において、安定に運転された燃焼炉12から排出された灰をXRD(X線回析装置)を用いて分析したところ、燃焼炉12から排出されるリン酸化合物には、AlPOとCa(PO(OH)が含まれる一方で、ナトリウムとカリウムのリン酸化合物は検出されなかった。本願発明者が化学熱力学計算を用いて検討したところ、燃料に含まれるリンのうちAlPO及びCa(PO(OH)の生成に用いられなかったリン(以下、「残りのリン」と記載する。)は、ナトリウム/カリウムの固溶体(XRDで検出されず化合物として特定されない、任意の組成のNa/K/P/Oの固体)で存在すると計算された。
【0030】
すなわち、燃焼炉12を安定的に運転している状態においてはリン酸のアルカリ金属塩よりもAlPO及びCa(PO(OH)が優先して生成され、上記残りのリンの物質量は、上記式(1)の右辺の分母、すなわち、(m-0.6×mCa-mAl)によって表される。また、上記残りのリンは、リン酸ナトリウム塩/カリウム塩の固溶体として存在していることが考えられる。
【0031】
また、本願発明者の鋭意検討の結果、上記残りのリンに関して、溶融塩中のNaOとPとのモル比(=NaO/P)と溶融塩中のKOとPとのモル比(=KO/P)との和を1より大きくすることにより、すなわち上記値Xを1より大きくすることにより、リン酸塩に起因する上述の腐食を効果的に抑制できることが明らかとなった。
【0032】
図3は、図3の右上部に記載の所定条件下における(a)NaPO-NaCl、(b)NaPO-NaSO、(c)NaPO-KPO、(d)NaCl-KCl-NaSO-KSOの各々の溶融塩による材料(25Cr鋼)の腐食量を示した図である。ここでの所定条件とは、温度が600℃、ガス組成が窒素ベースで3%の酸素濃度、試験時間が50時間、腐食の対象材料が25Cr鋼である。図4は、溶融塩の組成と材料(25Cr鋼)の腐食量との関係を示す曲線Cとともに、上記(a)、(b)及び(d)の各々の溶融塩による材料(25Cr鋼)の腐食量を示している。
【0033】
図3に示すように、(b)NaPO-NaSO、(c)NaPO-KPO、(d)NaCl-KCl-NaSO-KSOの各々の腐食量は、(a)NaPO-NaClの腐食量よりも大幅に抑制されており、溶融塩中のNaOとPとのモル比(=NaO/P)と溶融塩中のKOとPとのモル比(=KO/P)との和が1である場合(すなわち上記(c)の場合)には腐食量が大幅に抑制されている。また、図4において、曲線Cは、溶融塩中におけるSOの含有量とClの含有量の合計に対するSOの含有量の比(重量%)に応じて腐食量が変化することを示しており、上記(a)NaPO-NaCl、(b)NaPO-NaSO及び(d)NaCl-KCl-NaSO-KSOの各々による腐食量は、何れも曲線Cにほぼ一致している。
【0034】
このため、上記(a)~(d)の各々の腐食量は、溶融塩中におけるSOの含有量とClの含有量の合計に対するSOの含有量の比に応じた量となっており、リンを含むか否かが各腐食量に与える影響は無視できる程度に小さい。
【0035】
また、図5に例示するように、溶融塩の塩基度がNaO>10-10を満たす範囲では活性溶解が起こるために溶融塩による腐食が激しくなることが知られているが、リン酸塩の場合、溶融塩中のNaOとPとのモル比(=NaO/P)が1以上3未満である場合における溶融塩中のNaOの活量(図6における-23~-14程度に相当)では溶融塩による腐食は限定的であり、例えばメタル温度を700℃にしてもNaO<10-10を満たす。
【0036】
したがって、添加量制御部40は、上記式(1)によって規定される値Xを1より大きくするように燃料への添加剤の添加量を制御することにより、リン酸自体の腐食性及び腐食加速性を抑制し、リン酸塩に起因した腐食を効果的に抑制することができる。また、添加量制御部40は、1<X<3を満たすように燃料への添加剤の添加量を制御することにより、少量の添加剤で、リン酸塩に起因した腐食を効果的に抑制することができる。
【0037】
図7は、NaPO-KPO-NaPO-KPO系の状態図である。図7では、Kの含有量をNaの含有量とKの含有量の和で除算した値すなわちK/(Na+K)の等価分数を横軸とし、P/(NaO+KO)の等価分数を縦軸としたときの、リン酸化合物の融点の計算結果を示している。
【0038】
図7に示すように、上記式(1)によって規定される値XについてX≧2.6を満たすことにより、リン酸化合物の融点を900℃以上にすることができる。このため、900℃未満の温度域で灰が溶融しにくくなる。これにより、燃焼炉の出口側の排ガス流路に燃焼灰が付着及び堆積しにくくなり、排ガス流路の詰まり、損傷又は破損等を抑制することができる。また、2.6≦X<3を満たすことにより、特許文献1に記載の焼却処理方法よりも少量の添加剤で、燃焼炉の出口側の排ガス流路に燃焼灰を付着しにくくすることができ、排ガス流路の詰まり、損傷又は破損等を抑制することができる。例えばX=2.6を満たす場合には、特許文献1と比較して、アルカリ金属(上記の例ではナトリウム及びカリウム)の添加量(mol)をリンのモル量に対して2.6/3倍に減らすことができる。
【0039】
したがって、添加量制御部40は、上記式(1)によって規定される値Xについて、2.6≦X<3を満たすように燃料への添加剤の添加量を制御することにより、少量の添加剤で燃焼炉の出口側の排ガス流路に燃焼灰を付着しにくくすることができ、排ガス流路の詰まり、損傷又は破損等を抑制することができる。
【0040】
図8は、上記灰中のAl、CaO、P、NaO、KOの各々の含有量を変化させて上記値Xを変化させた場合における灰の付着性の検証結果を示す図である。
図8に示すように、X=1.1のケース3では灰の付着性が大きく、X=-1.7のケース1、X=-7.5のケース2及びX=8.3のケース4では灰の付着性が小さい。
【0041】
ここで、X=1.1のケース3では、Xが2.6より小さいため、リン酸化合物の融点が900℃よりも低く灰の付着性が大きいのに対し、X=8.3のケース4では、Xが2.6以上であるため、リン酸化合物の融点が900℃よりも高く灰の付着性が小さい。
【0042】
また、X=-1.7のケース1及びX=-7.5のケース2では、上記式(1)の分母が負の値となっているため、上記残りのリンが存在していないことを意味し、この場合も灰の付着性は小さい。
【0043】
このように、2.6≦Xを満たすケースでは、燃焼炉の出口側の排ガス流路に燃焼灰を付着しにくくすることができ、排ガス流路の詰まり、損傷又は破損等を抑制することができる。なお、1<X<3を満たすケース3では、灰の付着性は大きいものの、上述のように、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を抑制することができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、添加量制御部40は、燃焼炉の燃焼温度に応じて上記Xの値を調節することにより、燃焼炉の燃焼温度よりも灰に含まれるリン酸化合物の融点が高くなるように、燃料の単位重量当たりの添加剤の添加量を制御してもよい。この場合、添加量制御部40は、燃焼炉の燃焼温度が高くなるほど上記Xの値を大きくしてもよく、燃焼炉の燃焼温度が高くなるにつれて燃料の単位重量当たりの添加剤の添加量を増加させてもよい。これにより、燃焼炉の出口側の排ガス流路に燃焼灰を付着しにくくすることができ、排ガス流路の詰まり、損傷又は破損等を抑制することができる。
【0045】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0046】
例えば、上述した実施形態では、検出部26は、燃料の燃焼により生成される灰の性状を例えばXRF(蛍光X線分析装置)によって分析したが、他の実施形態では、例えば図9に示すように、検出部26は、燃焼炉12に供給する前の燃料をXRF等によって分析することで、灰中のナトリウム、カリウム、リン、カルシウム及びアルミニウムの各々の含有量を検出するように構成されていてもよい。
【0047】
また、燃焼炉12に供給される燃料がバイオマス燃料と天然ガス等の補助燃料とを含む場合には、添加量制御部40は、1<X<3を満たすように(より好ましくは2.6≦X<3を満たすように)、燃料への添加剤の添加量の制御とともに、燃焼炉12に供給される燃料に占めるバイオマス燃料の割合であるバイオマス混焼率を制御するように構成されていてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、検出部26は、灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の両方を検出したが、他の実施形態では、検出部26は、灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の少なくとも一方を検出してもよく、灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の何れか一方は検出しなくてもよい。この場合、添加量制御部は、灰中のリンの含有量に応じた値(例えば灰の単位重量当たりに含まれるリンのモル数)から、灰中のアルミニウムの含有量に応じた値(灰の単位重量当たりに含まれるアルミニウムのモル数)及び灰中のカルシウムの含有量に応じた値(灰の単位重量当たりに含まれるカルシウムのモル数に0.6を乗じた値)の少なくとも一方(例えば灰中のアルミニウムの含有量に応じた値のみ又は例えば灰中のカルシウムの含有量に応じた値のみ)を減算することで得られた値に基づいて、燃料への添加剤の添加量を制御してもよい。
【0049】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0050】
[1]本開示の少なくとも一実施形態に係る添加剤供給量制御システム(例えば上述の添加剤供給量制御システム50)は、
リンを含む燃料を燃焼させるための燃焼炉(例えば上述の燃焼炉12)用の添加剤供給量制御システムであって、
前記燃料の燃焼によって生成される灰又は前記燃料を分析することによって、前記灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の少なくとも一方と、前記灰中のリンの含有量とを検出するように構成された検出部(例えば上述の検出部26)と、
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を含む添加剤を前記燃料に添加する添加量を制御するように構成された添加量制御部(例えば上述の添加量制御部40)と、
を備え、
前記添加量制御部は、前記灰中のリンの前記含有量に応じた値(例えば灰の単位重量当たりに含まれるリンのモル数)から、前記灰中のアルミニウムの前記含有量に応じた値(例えば灰の単位重量当たりに含まれるアルミニウムのモル数)及び前記灰中のカルシウムの前記含有量に応じた値(例えば灰の単位重量当たりに含まれるカルシウムのモル数に0.6を乗じた値)の少なくとも一方を減算することで得られた値に基づいて、前記添加剤の前記添加量を制御するように構成される。
【0051】
本願発明者の鋭意検討の結果、安定に運転された燃焼炉から排出された灰をXRDを用いて分析したところ、燃焼炉から排出されるリン酸化合物には、AlPOとCa(PO(OH)が含まれる一方で、ナトリウムとカリウムのリン酸化合物は検出されなかった。本願発明者が化学熱力学計算を用いて検討したところ、燃料に含まれるリンのうちAlPO及びCa(PO(OH)の生成に用いられなかったリン(以下、「残りのリン」と記載する。)は、ナトリウム/カリウムの固溶体(XRDで検出されず化合物として特定されない、任意の組成のNa/K/P/Oの固体)で存在すると計算された。
【0052】
すなわち、燃焼炉を安定的に運転している状態においてはリン酸のアルカリ金属塩よりもAlPO及びCa(PO(OH)が優先して生成され、残りのリンは、リン酸ナトリウム塩/カリウム塩として存在していることが考えられる。
また、残りのリンに対して燃焼炉に適切な量のアルカリ金属が供給されていれば、溶融塩中のリン酸の腐食性及び腐食加速性を抑制できることが明らかとなった。
【0053】
上記[1]に記載の添加剤供給量制御システムは、このような知見に基づくものであり、灰中のリンの含有量に応じた値から、灰中のアルミニウムの含有量に応じた値及び灰中のカルシウムの含有量に応じた値の少なくとも一方を減算することで得られた値に基づいて、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む添加剤の添加量を制御することにより、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を抑制することができる。
【0054】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の添加剤供給量制御システムにおいて、
前記添加量制御部は、前記灰中のリンの前記含有量に応じた値から、前記灰中のアルミニウムの前記含有量に応じた値及び前記灰中のカルシウムの前記含有量に応じた値の両方を減算することで得られた値に基づいて、前記添加剤の前記添加量を制御するように構成される。
【0055】
上記[2]に記載の添加剤供給量制御システムは、上記[1]に記載の知見に基づくものであり、灰中のリンの前記含有量に応じた値から、灰中のアルミニウムの含有量に応じた値及び灰中のカルシウムの前記含有量に応じた値の両方を減算することで得られた値に基づいて、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む添加剤の添加量を制御することにより、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を抑制することができる。
【0056】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の添加剤供給量制御システムにおいて、
前記検出部は、前記燃料の燃焼によって生成される灰又は前記燃料を分析することによって、前記灰中のナトリウムの含有量及びカリウムの含有量を更に検出するように構成され、
前記灰の単位重量当たりに含まれるナトリウム、カリウム、リン、カルシウム及びアルミニウムの各々のモル数を、それぞれ、mNa、K、P、Ca、Alとすると、
前記添加量制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、下記式(1)によって規定される値Xが1より大きくなるように前記添加剤の添加量を制御するように構成される。
X=(mNa+m)/(m-0.6×mCa-mAl) ・・・(1)
【0057】
上記[3]に記載の添加剤供給量制御システムによれば、上記値Xが1より大きくなるように添加剤の添加量を制御することにより、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を効果的に抑制することができる。
【0058】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]に記載の添加剤供給量制御システムにおいて、
前記添加量制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記値Xが2.6以上となるように前記添加剤の添加量を制御するように構成される。
【0059】
上記[4]に記載の添加剤供給量制御システムによれば、上記値Xが2.6以上となるように添加剤の添加量を制御することにより、灰に含まれるリン酸化合物の融点を900℃以上にすることができる。このため、900℃未満の温度域で灰が溶融しにくくなる。これにより、燃焼炉の出口側の排ガス流路に燃焼灰が付着及び堆積しにくくなり、排ガス流路の詰まり、損傷又は破損等を効果的に抑制することができる。
【0060】
[5]幾つかの実施形態では、上記[3]又は[4]に記載の添加剤供給量制御システムにおいて、
前記添加量制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記値Xが3未満となるように前記添加剤の添加量を制御するように構成される。
【0061】
上記[5]に記載の添加剤供給量制御システムによれば、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を効果的に抑制し、及び/又は、少量の添加剤で燃焼炉の出口側の排ガス流路に燃焼灰を付着及び堆積しにくくすることができる。したがって、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を効果的に抑制し、及び/又は、少量の添加剤で排ガス流路の詰まり、損傷又は破損等を効果的に抑制することができる。
【0062】
[6]本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼設備(例えば上述の燃焼設備1)は、
上記[1]乃至[5]の何れかに記載の添加剤供給量制御システムと、
前記燃焼炉と、
を備える。
【0063】
上記[6]に記載の燃焼設備によれば、上記[1]乃至[5]の何れかに記載の添加剤供給量制御システムを備えるため、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を抑制することができる。
【0064】
[7]本開示の少なくとも一実施形態に係る添加剤供給量制御方法は、
リンを含む燃料を燃焼させるための燃焼炉(例えば上述の燃焼炉12)用の添加剤供給量制御方法であって、
前記燃料の燃焼によって生成される灰又は前記燃料を分析することによって、前記灰中のアルミニウムの含有量及びカルシウムの含有量の少なくとも一方と、前記灰中のリンの含有量とを検出する検出ステップと、
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を含む添加剤を前記燃料に添加する添加量を制御する添加量制御ステップと、
を備え、
前記添加量制御ステップでは、前記灰中のリンの前記含有量に応じた値(例えば灰の単位重量当たりに含まれるリンのモル数)から、前記灰中のアルミニウムの前記含有量に応じた値(例えば灰の単位重量当たりに含まれるアルミニウムのモル数)及び前記灰中のカルシウムの前記含有量に応じた値(例えば灰の単位重量当たりに含まれるカルシウムのモル数に0.6を乗じた値)の少なくとも一方を減算することで得られた値に基づいて、前記添加剤の前記添加量を制御する。
【0065】
本願発明者の鋭意検討の結果、安定に運転された燃焼炉から排出された灰をXRDを用いて分析したところ、燃焼炉から排出されるリン酸化合物には、AlPOとCa(PO(OH)が含まれる一方で、ナトリウムとカリウムのリン酸化合物は検出されなかった。本願発明者が化学熱力学計算を用いて検討したところ、燃料に含まれるリンのうちAlPO及びCa(PO(OH)の生成に用いられなかったリン(以下、「残りのリン」と記載する。)は、ナトリウム/カリウムの固溶体(XRDで検出されず化合物として特定されない、任意の組成のNa/K/P/Oの固体)で存在すると計算された。
【0066】
すなわち、燃焼炉を安定的に運転している状態においてはリン酸のアルカリ金属塩よりもAlPO及びCa(PO(OH)が優先して生成され、残りのリンは、リン酸ナトリウム塩/カリウム塩として存在していることが考えられる。
また、残りのリンに対して燃焼炉に適切な量のアルカリ金属が供給されていれば、溶融塩中のリン酸の腐食性及び腐食加速性を抑制できることが明らかとなった。
【0067】
上記[7]に記載の添加剤供給量制御方法は、このような知見に基づくものであり、灰中のリンの含有量に応じた値から、灰中のアルミニウムの含有量に応じた値及び灰中のカルシウムの含有量に応じた値の少なくとも一方を減算することで得られた値に基づいて、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含む添加剤の添加量を制御することにより、少量の添加剤でリン酸塩に起因する腐食を抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 燃焼設備
2 ボイラ
4 煙道
5 排気通路
6 煙突
8 燃料供給部
10 空気供給部
12 燃焼炉
14 伝熱管
16 減温部
18 捕捉部
20 排出管
21 排出バルブ
22 ファン
26 検出部
28 添加剤供給部
29 添加剤供給ライン
30 タンク
32 供給ポンプ
34 供給バルブ
40 添加量制御部
50 添加剤供給量制御システム
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9