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特開2024-145017山型食パン用生地、山型食パン、及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145017
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】山型食パン用生地、山型食パン、及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 8/02 20060101AFI20241004BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20241004BHJP
   A21D 2/14 20060101ALI20241004BHJP
   A21D 2/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A21D8/02
A21D13/00
A21D2/14
A21D2/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057236
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝見 俊昭
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB02
4B032DG02
4B032DK01
4B032DK03
4B032DK10
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK17
4B032DK18
4B032DK43
4B032DK54
4B032DK70
4B032DP08
4B032DP16
4B032DP25
4B032DP26
4B032DP33
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】柔らかな食感が損なわれることなくケービングが抑制された山型食パン、及び、該山型食パンを製造するための山型食パン用生地を提供すること。
【解決手段】水分含量がパン用生地全体中44~46.5重量%であり、且つ比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンを製造するための山型食パン用生地であって、前記生地に含まれる水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、ネイティブジェランガムを0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドを0.05~0.7重量部、カルシウム塩を0.1~0.5重量部、パン酵母を0.1~5重量部(乾燥重量)含有する、山型食パン用生地。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含量がパン用生地全体中44~46.5重量%であり、且つ比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンを製造するための山型食パン用生地であって、
前記生地に含まれる水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、ネイティブジェランガムを0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドを0.05~0.7重量部、カルシウム塩を0.1~0.5重量部、パン酵母を0.1~5重量部(乾燥重量)含有する、山型食パン用生地。
【請求項2】
請求項1に記載の山型食パン用生地が加熱調理された、比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パン。
【請求項3】
水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の小麦粉を、中種生地には30~100重量部含み、山型食パン用生地には100重量部含む、比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンを製造するための山型食パン用生地の製造方法であって、
山型食パン用生地に含まれる水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の小麦粉100重量部に対して、前記小麦粉のうち30~100重量部、パン酵母0.1~5重量部(乾燥重量)、及び添加水を混捏した後、5~30℃で2~72時間発酵して、中種生地全体中の水分含量が45~47重量%の中種生地を得、
前記中種生地に、山型食パン用生地に含まれる水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の小麦粉100重量部に対して、前記小麦粉のうち70~0重量部、ネイティブジェランガム0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05~0.7重量部、カルシウム塩0.1~0.5重量部、及び添加水を混捏して小麦粉100重量部を含む、本捏生地全体中の水分含量が44~46.5重量%の本捏生地を得、
前記本捏生地を第一発酵させることを特徴とする、山型食パン用生地の製造方法。
【請求項4】
比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンを製造するための山型食パン用生地の製造方法であって、
山型食パン用生地に含まれる水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の小麦粉100重量部に対して、ネイティブジェランガム0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05~0.7重量部、カルシウム塩0.1~0.5重量部、パン酵母0.1~5重量部(乾燥重量)、及び添加水を混捏して、小麦粉100重量部を含む、混合物全体中の水分含量が44~46.5重量%の混合物を得、前記混合物を第一発酵させることを特徴とする、山型食パン用生地の製造方法。
【請求項5】
比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンを製造する方法であって、
請求項3又は4に記載の製造方法により得られた山型食パン用生地を分割し、
前記分割された生地を成形し、
前記成形された生地を型に入れてから蓋をせずに最終発酵してから加熱調理を行う、山型食パンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山型食パン用生地、該生地を用いた山型食パン、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柔らかな食感のパンがベーカリーで流行しているが、柔らかな食感にするためにパンの比容積(比容積=(加熱調理後のパン容積/加熱調理後のパン重量))を大きくすると、パンの密度が低くなることから構造が弱くなり、特に山型食パンにおいてはパン生地を型に入れ蓋をせず焼成することから相対的に型上端周辺部分の焼きが甘く構造上弱くなり、密度も低いために加熱調理後に凹む所謂ケービング(腰折れともいう)が発生しやすく、特にパンの側面に多く見られ、期待する形状のパンが得られずに外観不良での廃棄が増えることが課題となっていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、炭酸カルシウムを含む水不溶性カルシウムをパン用小麦粉に配合して、食パンのケービングを防止する方法が開示されている。しかしながら、水不溶性カルシウムのみで十分な効果を得るためには配合量を増やす必要があり、そうすると食感に悪影響を与えてしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-186406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、柔らかな食感が損なわれることなくケービングが抑制された山型食パン、及び、該山型食パンを製造するための山型食パン用生地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水分、小麦粉、ネイティブジェランガム、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、カルシウム塩、及び、パン酵母をそれぞれ特定量含有する山型食パン用生地が加熱調理された山型食パンは、概ね比容積が特定範囲になり、柔らかな食感が損なわれることなくケービングが抑制されたものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、水分含量がパン用生地全体中44~46.5重量%であり、且つ比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンを製造するための山型食パン用生地であって、前記生地に含まれる水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、ネイティブジェランガムを0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドを0.05~0.7重量部、カルシウム塩を0.1~0.5重量部、パン酵母を0.1~5重量部(乾燥重量)含有する、山型食パン用生地に関する。
本発明の第二は、前記の山型食パン用生地が加熱調理された、比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンに関する。
本発明の第三は、水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の小麦粉を、中種生地には30~100重量部含み、山型食パン用生地には100重量部含む、比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンを製造するための山型食パン用生地の製造方法であって、山型食パン用生地に含まれる水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の小麦粉100重量部に対して、前記小麦粉のうち30~100重量部、パン酵母0.1~5重量部(乾燥重量)、及び添加水を混捏した後、5~30℃で2~72時間発酵して、中種生地全体中の水分含量が45~47重量%の中種生地を得、前記中種生地に、山型食パン用生地に含まれる水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の小麦粉100重量部に対して、前記小麦粉のうち70~0重量部、ネイティブジェランガム0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05~0.7重量部、カルシウム塩0.1~0.5重量部、及び添加水を混捏して小麦粉100重量部を含む、本捏生地全体中の水分含量が44~46.5重量%の本捏生地を得、前記本捏生地を第一発酵させることを特徴とする、山型食パン用生地の製造方法に関する。
本発明の第四は、比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンを製造するための山型食パン用生地の製造方法であって、山型食パン用生地に含まれる水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の小麦粉100重量部に対して、ネイティブジェランガム0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05~0.7重量部、カルシウム塩0.1~0.5重量部、パン酵母0.1~5重量部(乾燥重量)、及び添加水を混捏して、小麦粉100重量部を含む、混合物全体中の水分含量が44~46.5重量%の混合物を得、前記混合物を第一発酵させることを特徴とする、山型食パン用生地の製造方法に関する。
本発明の第五は、比容積が4.5×10-3~5.5×10-3/kgの山型食パンを製造する方法であって、前記の製造方法により得られた山型食パン用生地を分割し、前記分割された生地を成形し、前記成形された生地を型に入れてから蓋をせずに最終発酵してから加熱調理を行う、山型食パンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、柔らかな食感が損なわれることなくケービングが抑制された山型食パン、及び、該山型食パンを製造するための山型食パン用生地を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。本発明の山型食パン用生地は、小麦粉に対して、ネイティブジェランガム、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、カルシウム塩、パン酵母、及び、水分をそれぞれ特定量含有することが特徴である。前記山型食パン用生地を加熱調理することで、本発明の山型食パンが得られる。前記山型食パンは通常よりも比容積が大きなことが特徴であり、柔らかな食感で、加えて加熱調理後のケービング(腰折れともいう)発生が抑制される。
【0010】
前記小麦粉は、小麦を挽いて粉末状にしたものであり、パン類の製造に通常用いられるものであれば、精製度合いに特に制限なく用いることができ、強力粉、準強力粉、超強力粉、中力粉、薄力粉等を用いることができる。尚、前記小麦粉の水分含量は、一般的に小麦粉全体中14~15重量%であり、そこから外れる水分含量の小麦粉を用いる場合は、各使用原料の含有量及び添加水の量を、必要に応じて小麦粉の乾燥重量を基準として計算し微調整すれば良い。尚、本開示における各原料の含有量は、使用する水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の一般的な小麦粉100重量部に対して記載するものとする。
【0011】
また、前記山型食パン用生地には、前記小麦粉を除く、全粒粉、ライ麦粉、ハト麦粉、米粉、玄米粉、及び大豆粉等の穀粉類、並びにオーツフレーク、及び亜麻仁等の穀物からなる群より選ばれる少なくとも1種を、前記水分含量が小麦粉全体中14~15重量%の小麦粉100重量部に対し合計で15重量部(乾燥重量)以下であれば含有しても良い。15重量部より多いと、加熱調理後のパンの体積が小さくなる場合や、柔らかな食感が損なわれる場合がある。
【0012】
前記ネイティブジェランガムは、スフィンゴモナス・エロディア(Pseudomonas elodea)により産生される多糖体を脱アシル化工程なしで乾燥粉砕させた粉末である。
【0013】
前記ネイティブジェランガムの含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し0.009~0.075重量部が好ましく、0.015~0.05重量部がより好ましく、0.018~0.048重量部が更に好ましい。前記ネイティブジェランガムの含有量が0.009重量部より少ないと、十分なケービング抑制効果が得られない場合があり、0.075重量部より多いと、コストが高くなりすぎる場合や、パンが硬くなり柔らかな食感が損なわれる場合がある。
【0014】
前記ジアセチル酒石酸モノグリセリドは、モノグリセリドの水酸基にジアセチル酒石酸が結合したモノグリセリドである。
【0015】
前記ジアセチル酒石酸モノグリセリドの含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し0.05~0.7重量部が好ましく、0.1~0.65重量部がより好ましく、0.25~0.5重量部が更に好ましい。前記ジアセチル酒石酸モノグリセリドの含有量が0.05重量部より少ないと、十分なケービング抑制効果が得られない場合があり、0.7重量部より多いと、コストが高くなりすぎる場合や、柔らかな食感が損なわれる場合がある。
【0016】
前記カルシウム塩は、カチオンのカルシウムと様々なアニオンで構成される塩類の総称であり、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸3カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、及びクエン酸カルシウムが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種が使用できる。コストの観点からは、炭酸カルシウムが好ましい。なお、これらのカルシウム塩は、直接配合するものだけでなく、後述するイーストフード及びその他の任意の原料に由来するものであってよい。
【0017】
前記カルシウム塩の含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し0.1~0.5重量部が好ましく、0.1~0.4重量部がより好ましく、0.15~0.35重量部が更に好ましい。前記カルシウム塩の含有量が0.1重量部より少ないと、十分なケービング抑制効果が得られない場合があり、0.5重量部より多いと、柔らかな食感が損なわれる場合がある。
【0018】
前記パン酵母は、糖を資化して炭酸ガス及びアルコールを生成し、有機酸及び香気成分を生成するパンの製造に用いられる酵母をいい、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・エクシギュース、クルイベロマイセス・ラクティス、トルラスポラ・デルブルッキー、キャンディダ・ユティリス、キャンディダ・ケフィア、その他通常製パンに使用する酵母等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0019】
前記パン酵母の含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し乾燥重量で0.1~5重量部が好ましく、0.2~4重量部がより好ましく、0.2~3重量部が更に好ましく、0.48~1.28重量部が特に好ましい。前記パン酵母の含有量が0.1重量部より少ないと、発酵に時間がかかり生産性が悪い場合がある。また5重量部より多いと、パン酵母自体の好ましくない風味が付与される場合がある。
【0020】
前記山型食パン用生地に含まれる水分含量は、山型食パン用生地全体中44~46.5重量%が好ましく、44.5~45.7重量%がより好ましく、45~45.5が更に好ましい。水分含量が44重量%より少ないと、柔らかな食感が損なわれる場合がある。また46.5重量%より多いと、該生地から得られるパンは、粘ついた食感となり口溶けが損なわれる場合や、生地がベタついて生地の生産性が悪くなる場合がある。尚、前記水分含量は、各原料に含まれる水分と、それとは別に添加した水(以下、添加水という)との合計重量のことであり、前記合計重量を生地全体の重量で割り、100を乗じることで求めることができる。
【0021】
本発明の山型食パン用生地には、その特定事項として定める必須成分の含有量の範囲を逸脱しない範囲で、必要に応じて通常パンに用いられる前述されていない任意の原料を使用でき、例えば、前記任意の原料としては、油脂、糖類、食塩、乳原料、ジアセチル酒石酸モノグリセリドを除く乳化剤、イーストフード、グルテン、卵、デンプン、アスコルビン酸等の酸化剤、並びにグルコースオキシダーゼ、アミラーゼ、及びキシラナーゼ等の酵素等が挙げられる。
【0022】
前記油脂としては、例えば、コーン油、サフラワー油、胡麻油、綿実油、向日葵油、菜種油、大豆油、米糠油、オリーブ油、椰子油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、及びシア脂等の植物油、並びに乳脂、魚油、牛脂、及び豚脂等の動物油が挙げられ、また、これらの油脂をエステル交換したものや、硬化、分別したもの等、通常食用に供されるすべての油脂類を用いることができ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0023】
また、油脂を用いる形態は、融解した前記油脂に、必要に応じて乳化剤や香料等の油溶性成分を添加、混合して得た油脂組成物を急冷捏和して得られるショートニング、及び融解した前記油脂に、必要に応じて乳化剤や香料等の油溶性成分を添加、混合して油脂組成物を得、そこへ必要に応じて水溶性成分が溶解した水溶液を添加した後、急冷捏和して得られるマーガリン、ファットスプレッド等の油中水型油脂組成物、並びにタンパク質等の水溶性成分が溶解した水溶液に、任意の油脂や油溶性成分を添加した後、ホモジナイズして得られる水中油型油脂組成物を使用することもできる。
【0024】
前記油脂の含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し0.1~50重量部が好ましく、0.1~20重量部がより好ましい。前記油脂の含有量が0.1重量部より少ないとパンが老化し易い場合があり、50重量部より多いと、生地を均一にするために混捏時間が長くなり過ぎる場合がある。
【0025】
前記糖類としては、例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、異性化糖、オリゴ糖、水あめ、糖アルコール類等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。尚、前記糖類は、粉末状であることが好ましく、呈する甘みの点からは、上白糖やグラニュー糖を用いることがより好ましい。
【0026】
前記糖類の含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し乾燥重量で1~15重量部が好ましく、1~10重量部がより好ましい。前記糖類の含有量が1重量部より少ないと、パン酵母の栄養源を十分に供給できずパンの比容積を大きくする効果が得られにくくなる場合があり、15重量部より多いと、パン酵母の活性が抑えられパンの比容積を大きくする効果が得られにくくなる場合がある。
【0027】
前記食塩としては、例えば、精製塩、上質塩、内地白塩、原塩、粉砕塩等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。前記食塩の含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し0.5~5重量部が好ましく、1~5重量部がより好ましく、1~3重量部が更に好ましく、1.2~2.2重量部が特に好ましい。前記食塩の含有量が0.5重量部より少ないと、パンの味が乏しくなる場合があり、5重量部より多いと、パンの塩味が濃過ぎて食せない場合がある。
【0028】
前記乳原料としては、例えば、全粉乳、脱脂粉乳、牛乳、脱脂乳、クリーム、バター、チーズ等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。前記乳原料の含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し0.1~50重量部が好ましく、0.1~15重量部がより好ましい。前記乳原料の含有量が0.1重量部より少ないと焼き色が劣る場合や、所望の乳風味が不足する場合があり、50重量部より多いと、パン酵母の発酵を阻害しボリューム不足のパンとなる場合がある。
【0029】
前記ジアセチル酒石酸モノグリセリドを除く乳化剤としては、例えば、モノグリセリド、有機酸が結合したモノグリセリド誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類を用いることができる。尚、前記有機酸が結合したモノグリセリド誘導体とは、脂肪酸モノグリセリドに更に有機酸がエステル結合したモノグリセリドのことである。前記有機酸としては、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸等が挙げられる。
【0030】
前記ジアセチル酒石酸モノグリセリドを除く乳化剤の含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、0.01~3重量部が好ましく、0.01~1.5重量部がより好ましく、0.01~1重量部が更に好ましい。前記乳化剤の含有量が0.01重量部より少ないとパンが老化し易い場合があり、3重量部より多いと、乳化剤の異味が感じられる場合や、柔らかな食感が損なわれる場合がある。
【0031】
前記イーストフードは、生地に含まれるパン酵母の発酵を促し、生地の膨張を強化して得られるパン類の比容積を向上させるための一種の食品添加剤を意味する。イーストフードの例としては、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム(無水)、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、及び焼成カルシウム等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0032】
前記イーストフードの含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し0.01~0.5重量部が好ましく、0.01~0.2重量部がより好ましい。前記イーストフードの含有量が0.01重量部より少ないとパンの比容積を大きくする効果が得られにくくなる場合があり、0.5重量部より多いと、生地が荒れる場合や得られたパンの食感に引きが感じられる場合や、イーストフードの異味が感じられる場合がある。
【0033】
前記グルテンは、穀類から選別されたものであれば特に制限はなく、小麦、大麦、ライ麦等の穀物由来のものを用いることができ、パンの食感の観点から、小麦由来のものが好ましい。
【0034】
前記グルテンの含有量は、前記水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し0.05~3重量部が好ましく、0.1~2重量部がより好ましく、0.2~1重量部が更に好ましい。前記グルテンの含有量が0.05重量部より少ないと、ケービング抑制効果をより高める十分な効果が得られない場合がある。また3重量部より多いと、柔らかな食感が損なわれる場合や、作業性が悪くなる場合がある。
【0035】
本発明の山型食パン用生地の製造方法を、以下に例示する。
(中種法による山型食パン用生地の作製)
山型食パン用生地に含まれる水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部のうち、小麦粉30~100重量部、パン酵母0.1~5重量部(乾燥重量)、添加水、及び必要に応じてイーストフードやその他の任意の原料を混捏した後、5~30℃で2~72時間発酵して中種生地を得ることができる。尚、前記添加水の配合量は、中種生地と本捏生地とに適宜配分すれば良く、中種生地全体中の水分含量が45~47重量%となるよう適宜各原料に含まれる水分との差分を計算し決定すれば良い。
【0036】
中種生地の調製における混捏の条件は、通常の中種生地の製造条件に準ずれば良く、例えば、全原料を低速で2~4分間、中速で1~3分間混捏すればよい。捏ね上げ温度は23~25℃であってよい。混捏時間が短いと原料の分散性が悪く、生地が不均一になる場合があり、逆に長くなると生地の弾力性が過度に富み、本捏混捏時間が長くなり生産性が悪い場合がある。
【0037】
また、発酵温度が5℃より低いと発酵時間が長くなり生産性が悪い場合がある。また、30℃より高いと発酵過剰となり望ましくない場合がある。更に、発酵時間が2時間より短いと発酵が不十分となる場合があり、72時間より長くなると発酵過剰となり望ましくない場合がある。
【0038】
次いで、上記で得られる中種生地に、中種生地を除く本捏生地の原料である、山型食パン用生地に含まれる水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部のうち、小麦粉70~0重量部、ネイティブジェランガム0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05~0.7重量部、カルシウム塩0.1~0.5重量部、添加水、及び必要に応じて油脂、糖類、食塩、乳原料、酸化剤、グルコースオキシダーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ等の酵素やその他の任意の原料を混捏して本捏生地を得ることができる。尚、前記添加水の配合量は、中種生地と本捏生地とに適宜配分すれば良く、本捏生地全体中の水分含量が44~46.5重量%となるよう適宜各原料に含まれる水分との差分を計算し決定すれば良い。
【0039】
本捏生地の調製における混捏の条件は、通常の本捏生地の製造条件に準ずれば良く、一般的には低速で2~4分間、中速で3~30分間、必要に応じて高速で1~10分間混捏すればよい。捏ね上げ温度は25~29℃であってよい。混捏時間が短いと生地がべたつき保形性が低く成形が困難になり、逆に長くなると生産性が悪い場合がある。尚、油脂以外の原料で生地をまとめた後に油脂を添加し、更に混捏しても良い。
【0040】
混捏した本捏生地を「第一発酵(フロアタイムとも言う)」させることで、本発明の山型食パン用生地を得ることができる。ここで、第一発酵の条件としては、20~30℃で10~60分間が好ましい。
【0041】
(ストレート法による山型食パン用生地の作製)
水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部、パン酵母0.1~5重量部(乾燥重量)、ネイティブジェランガム0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05~0.7重量部、カルシウム塩0.1~0.5重量部、添加水、及び必要に応じて油脂、糖類、食塩、乳原料、酸化剤、グルコースオキシダーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ等の酵素やその他の任意の原料を混捏して、水分含量が44~46.5重量%の混合物を得ることができる。
【0042】
混捏の条件は、通常のパン生地の製造条件に準ずれば良く、一般的には低速で2~4分間、中速で3~30分間、必要に応じて高速で1~10分間混捏すればよい。捏ね上げ温度は25~32℃であってよい。尚、油脂以外の原料で生地をまとめた後に油脂を添加しても良い。混捏時間が短いと生地がべたつき保形性が低く成形が困難になり、逆に長くなると生産性が悪く、望ましくない場合がある。
【0043】
混捏した混合物を「第一発酵(フロアタイムとも言う)」させることで、本発明の山型食パン用生地を得ることができる。ここで、第一発酵の条件としては、20~30℃で30~180分間が好ましい。
【0044】
尚、本発明の山型食パン用生地において、ネイティブジェランガム、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、及びカルシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを改良剤等の形態で生地に添加しても構わない。最終的に前記の全ての原料を混捏し、ノータイム法、ストレート法、中種法、冷蔵中種法、及び冷凍生地製法等の一般的な製パン工程を通じて生地を調製すればよい。原料の投入順序は何れでもよく、また各原料投入タイミングは、中種ミキシング時・本捏時を含め何時でもよく、公知の方法に準ずれば良い。
【0045】
前記改良剤の作製は、通常の改良剤と同様の方法で実施できる。例えば、粉末混合機にて改良剤を製造すればよい。
【0046】
尚、前記改良剤には、取り扱い性や生地中での分散性を高めることを目的にデンプン類を添加することが好ましい。デンプン類としては、例えば、生デンプン及び加工デンプンが挙げられ、その中でも生地物性に与える影響の少なさの観点からコーンスターチが好ましい。
【0047】
前記デンプン類の分量は、前記改良剤中のネイティブジェランガム、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、及びカルシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも2種の合計量100重量部(乾燥重量)に対して50~500重量部(乾燥重量)が好ましく、60~200重量部(乾燥重量)がより好ましく、70~100重量部(乾燥重量)が更に好ましい。前記デンプン類の分量が50~500重量部の範囲を外れると、取り扱い性や生地中での分散性が低下する場合がある。
【0048】
前記山型食パンは、前記山型食パン用生地を型に適量入れてから蓋をせずに最終発酵した後に常法に従って加熱調理することで得られる。加熱調理の方法としては、焼成、蒸し等が挙げられる。これらのうち焼成が好ましい。加熱調理の条件は、パンを作製するための通常の条件であって良い。得られる山型食パンは、比容積が大きくてもケービングが抑制されているにもかかわらず、柔らかな食感が損なわれないという特徴をもつ。そのような特徴から、生地量を減らすことができ、コストダウンにも繋がる。
【0049】
前記の製造方法により得られた山型食パン用生地を分割し、前記分割された生地を成形し、前記成形された生地を型に入れてから蓋をせずに最終発酵してから加熱調理を行うことにより、山型食パンを製造することができる。最終発酵の条件としては、30~40℃、相対湿度50~90%で、10~60分間が好ましい。
【0050】
前記分割した生地を中間発酵してから成形してもよい。中間発酵の条件としては、20~30℃で10~60分間又は0~15℃で2~24時間が好ましい。尚、中間発酵とは、ベンチタイムとも言う。
【0051】
前記山型食パンの比容積は、4.5×10-3~5.5×10-3/kgが好ましく、5×10-3~5.5×10-3/kgがより好ましい。比容積が4.5×10-3/kgより小さいと柔らかな食感が損なわれる場合があり、また5.5×10-3/kgより大きいとパンケースより上に大きくはみ出たいびつな形のパンとなる場合がある。尚、前記比容積は、加熱調理後のパン容積を加熱調理後のパン重量で除して求めることができる。山型食パンの比容積を4.5×10-3~5.5×10-3/kgとするには、例えば型に入れる山型食パン用生地の型比容積や最終発酵条件を適宜調整すれば良い。尚、前記型比容積は、パン型の容積を加熱調理前のパン生地重量で除して求めることができる。
【0052】
山型食パンの比容積は、下記式で求めることができる。
比容積[m/kg]=加熱調理後のパン容積/加熱調理後のパン重量
加熱調理後のパン容積は、レーザー体積計(ケイ・アクシス社製「AR-01」)を用い測定することができる。
【0053】
前記山型食パンとしては、例えば、食パン、全粒粉入り食パン、サンドイッチ用食パン、ホテルブレッド、湯種食パン、バタートップ食パン、ミニ食パン、又はこれらの二次加工品、或いはレンジ調理を必要とするもの等、いかなる山型食パンでもよいが、特に食パン、サンドイッチ用食パン、ホテルブレッド、ミニ食パンが本発明の効果を有効に享受できる。
【実施例0054】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0055】
<実施例及び比較例で使用した原料>
1)日清製粉(株)製「ミリオン」(水分含量14.5重量%)
2)新化食品(株)製「ASインプルーバー」(水分含量4.5重量%、カルシウム塩含量0重量%)
3)(株)カネカ製「SRイースト」(水分含量68重量%)
4)日新製糖(株)製「上白糖P」(水分含量0.8重量%)
5)財団法人塩事業センター製「精製塩」(水分含量0重量%)
6)(株)カネカ製「EMマーガリン」(水分含量17.5重量%)
7)(株)北海道乳業製「脱脂粉乳」(水分含量3.8重量%)
8)(株)三栄源エフ・エフ・アイ製「ケルコゲルLT100」(水分含量8.3重量%)
9)(株)ケリージャパン製「DATEM」(水分含量0重量%)
10)備北粉化工業(株)製「カミゲンS」(水分含量0重量%)
11)敷島スターチ(株)製「SF-100」(水分含量3重量%)
【0056】
(食感への影響の評価)
実施例及び比較例で作製したパンを、熟練した10名のパネラーに食べて評価してもらい、それらの平均点を評価値とした。その際の評価基準は、以下の通りである。ここで、ギシギシした食感とは、グルテン骨格の強度が高すぎて歯切れに劣る食感をいい、クチャつきとは、口の中でパンがだまになって残り口溶けが悪い様子をいう。
5点:食感が実施例7と比べ、ギシギシした食感、及び/又は、食感のクチャつきが全く感じられず、柔らかな食感である
4点:食感が実施例7と同等で、ギシギシした食感、及び/又は、食感のクチャつきがほとんど感じられず、柔らかな食感への悪影響がない
3点:食感が実施例7と比べ、ギシギシした食感、及び/又は、食感のクチャつきがわずかに感じられるが、柔らかな食感への悪影響は商品性に問題がないレベルである
2点:食感が実施例7と比べ、ギシギシした食感、及び/又は、食感のクチャつきが明確に感じられ、柔らかな食感への悪影響がやや大きい
1点:食感が実施例7と比べ、ギシギシした食感、及び/又は、食感のクチャつきが強く感じられ、柔らかな食感への悪影響が大きい
【0057】
(ケービング抑制効果の評価)
実施例及び比較例で作製したパンについて、(食パン型中で焼かれた部分の断面積/食パン型の底辺×高さ)の値を以下の方法で算出した。前記実施例及び比較例で作製した3斤のパンを、焼成後2.5~3時間室温にて冷却後、ビニール袋に入れ水分蒸発を防ぎつつ更に室温で16~18時間室温で冷却した後、その3斤のパン2本より中央部分を2cmの厚みで6枚ずつ切り出し合計12枚のスライス食パンを調整して前記スライス食パンを各々スキャナーで撮影し、食パン型中で焼かれた部分のケービング(底面及び側面に生じたケービング)部分を三角形に近似してそれぞれの底辺と高さを実測することで、食パン型中で焼かれた部分のケービング部分の合計断面積を算出した。一方で食パン型の底辺及び高さを実測して(食パン型の底辺×高さ)の値を得、前記ケービング部分の合計断面積との差を求めることで食パンの断面積を得、(食パン型中で焼かれた部分の断面積/食パン型の底辺×高さ)の値を算出した。算出した値の平均点を、以下の評価基準に従い評価した。
5点:(食パン型中で焼かれた部分の断面積/食パン型の底辺×高さ)の値が0.90以上1以下であり、ケービング抑制効果が非常に高い
4点:(食パン型中で焼かれた部分の断面積/食パン型の底辺×高さ)の値が0.86以上0.90未満であり、ケービング抑制効果が十分である
3点:(食パン型中で焼かれた部分の断面積/食パン型の底辺×高さ)の値が0.82以上0.86未満であり、ケービング抑制効果に問題はないレベルである
2点:(食パン型中で焼かれた部分の断面積/食パン型の底辺×高さ)の値が0.79以上0.82未満であり、ケービング抑制効果がやや不足している
1点:(食パン型中で焼かれた部分の断面積/食パン型の底辺×高さ)の値が0.79未満であり、ケービング抑制効果が不足している
【0058】
(総合評価)
食感への影響、ケービング抑制効果の評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:食感への影響、ケービング抑制効果の評価が何れも4.5点以上5点以下であって、且つ5点が一つ以上であるもの
B:食感への影響、ケービング抑制効果の評価が何れも4点以上5点未満であるもの、又は、食感への影響、ケービング抑制効果の評価の何れか一方が4点以上4.5点未満であって、且つもう一方が5点であるもの
C:食感への影響、ケービング抑制効果の評価が何れも3点以上5点以下であって、且つ3点以上4点未満が少なくとも一つあるもの
D:食感への影響、ケービング抑制効果の評価が何れも2点以上5点以下であって、且つ2点以上3点未満が少なくとも一つあるもの
E:食感への影響、ケービング抑制効果の評価において、1点以上2点未満が少なくとも一つあるもの
【0059】
(実施例1) 山型食パン用生地及び山型食パンの作製
表1の配合に従って、以下の製法で山型食パンの中種生地の作製を行った。即ち、小麦粉70重量部、イーストフード0.1重量部、パン酵母2重量部(乾燥重量:0.64重量部)、及び添加水40重量部を製パン用ミキサー(カントーミキサー社製「HPi-20M」)を用いて低速で2分間、次いで中速で3分間混捏した(捏ね上げ温度24℃)。混捏終了後、28℃にて4時間発酵させて中種生地(水分含量:46.0重量%)を得た。
【0060】
得られた中種生地に、本捏配合である小麦粉30重量部、上白糖6重量部、食塩2重量部、脱脂粉乳2重量部、ネイティブジェランガム0.025重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.35重量部、カルシウム塩として炭酸カルシウム0.2重量部及び添加水27.00重量部を加えて製パン用ミキサー(カントーミキサー社製「HPi-20M」)を用いて低速で2分間、中速で3分間混捏し、ここでマーガリン6重量部を加え、更に中速で3分間混捏して(捏ね上げ温度27℃)本捏生地を得(水分含量:45.3重量%)、20分間フロアタイム(室温24℃)をとることにより第一発酵させ、山型食パン用生地を得た。
【0061】
得られた山型食パン用生地を1個226gに分割し丸め、20分間のベンチタイムをとった後、分割された生地をモルダー(フジサワ・マルゼン社製「FM-31Z」)に通し棒状に丸め、前記丸めた生地をU字に曲げ12.4cm×37cm×12.4cmの食パン型(プルマンケース)に6個ずつ入れ(型比容積4.18×10-3/kg)、蓋をせずに38℃、相対湿度75%のホイロで50分間最終発酵させた後、190℃のオーブンで35分間焼成し、比容積5.40×10-3/kgの山型食パン(3斤の食パン2本)を得た。
【0062】
【表1】
【0063】
(実施例2~4、比較例1)山型食パン用生地及び山型食パンの作製
表1の配合に従い、ネイティブジェランガムの配合量をそれぞれ、0.010重量部(実施例2)、0.045重量部(実施例3)、0.075重量部(実施例4)、0.008重量部(比較例1)に変更した以外は、実施例1と同様にして山型食パン用生地及び山型食パンを得た。得られた山型食パンについて、食感への影響、ケービング抑制効果、及び、総合評価の評価結果を表1に示した。
【0064】
表1から明らかなように、水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、ネイティブジェランガムの含有量が0.009~0.075重量部の範囲にある山型食パン用生地が加熱調理された山型食パン(実施例1~4)は、何れも食感への影響、ケービング抑制効果の評価が良好であった。一方、水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、ネイティブジェランガムの含有量が0.008重量部と少ない山型食パン用生地が加熱調理された山型食パン(比較例1)は、ケービング抑制効果の評価がやや不足しており、総合評価はDであった。
【0065】
【表2】
【0066】
(実施例5~7、比較例2及び3)山型食パン用生地及び山型食パンの作製
表2の配合に従い、ジアセチル酒石酸モノグリセリドの配合量をそれぞれ、0.055重量部(実施例5)、0.15重量部(実施例6)、0.65重量部(実施例7)、0.04重量部(比較例2)、0.75重量部(比較例3)に変更した以外は、実施例1と同様にして山型食パン用生地及び山型食パンを得た。得られた山型食パンについて、食感への影響、ケービング抑制効果、及び、総合評価の評価結果を表2に示した。
【0067】
表2から明らかなように、水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、ジアセチル酒石酸モノグリセリドの含有量が0.05~0.7重量部の範囲にある山型食パン用生地が加熱調理された山型食パン(実施例1、5~7)は、何れも食感への影響、ケービング抑制効果の評価が良好であった。一方、水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、ジアセチル酒石酸モノグリセリドの含有量が0.04重量部と少ない山型食パン用生地が加熱調理された山型食パン(比較例2)は、ケービング抑制効果の評価がやや不足しており、総合評価はDであった。また、水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、ジアセチル酒石酸モノグリセリドの含有量が0.75重量部と多い山型食パン用生地が加熱調理された山型食パン(比較例3)は、食感のクチャつきが明確に感じられて食感への影響の評価が悪く、総合評価はDであった。
【0068】
【表3】
【0069】
(実施例8~11、比較例4及び5)山型食パン用生地及び山型食パンの作製
表3の配合に従い、カルシウム塩として配合する炭酸カルシウムの配合量をそれぞれ、0.12重量部(実施例8)、0.3重量部(実施例9)、0.4重量部(実施例10)、0.5重量部(実施例11)、0.05重量部(比較例4)、0.55重量部(比較例5)に変更した以外は、実施例1と同様にして山型食パン用生地及び山型食パンを得た。得られた山型食パンについて、食感への影響、ケービング抑制効果、及び、総合評価の評価結果を表3に示した。
【0070】
表3から明らかなように、水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、パン生地中のカルシウム塩の含有量が0.1~0.5重量部の範囲にある山型食パン用生地が加熱調理された山型食パン(実施例1、8~11)は、何れも食感への影響、ケービング抑制効果の評価が良好であった。一方、水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、パン生地中のカルシウム塩の含有量が0.05重量部と少ない山型食パン用生地が加熱調理された山型食パン(比較例4)は、ケービング抑制効果の評価がやや不足しており、総合評価はDであった。また、水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、パン生地中のカルシウム塩の含有量が0.55重量部と多い山型食パン用生地が加熱調理された山型食パン(比較例5)は、ギシギシとした食感が明確に感じられて食感への影響の評価が悪く、総合評価はDであった。
【0071】
【表4】
【0072】
(製造例1)山型食パン用ケービング抑制剤(改良剤)の作製
表4の配合に従い、ネイティブジェランガム2.5重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリド35.0重量部、カルシウム塩として炭酸カルシウム20.0重量部、コーンスターチ42.5重量部をそれぞれ混合し、改良剤として山型食パン用ケービング抑制剤を得た。
【0073】
【表5】
【0074】
(実施例12~15)山型食パン用生地及び山型食パンの作製
表5の配合に従い、ネイティブジェランガム、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、カルシウム塩として炭酸カルシウムを単独で配合せず、代わりにケービング抑制剤(製造例1)をそれぞれ0.6重量部(実施例12)、0.8重量部(実施例13)、1.0重量部(実施例14)、1.8重量部(実施例15)配合した以外は、実施例1と同様にして山型食パン用生地及び山型食パンを得た。得られた山型食パンについて、食感への影響、ケービング抑制効果、及び、総合評価の評価結果を表5に示した。
【0075】
表5から明らかなように、水分含量が14~15重量%の小麦粉100重量部に対し、改良剤としてケービング抑制剤の形態でネイティブジェランガム0.009~0.075重量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05~0.7重量部、カルシウム塩0.1~0.5重量部を満たす範囲で配合した山型食パン用生地が加熱調理された山型食パン(実施例12~15)は、何れも食感への影響、ケービング抑制効果の評価が良好であった。