(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145021
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】財産評価方法及び融資管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/03 20230101AFI20241004BHJP
【FI】
G06Q40/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057241
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】523064446
【氏名又は名称】WHYアセットマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】星川 尚久
(72)【発明者】
【氏名】辛川 兼人
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB23
5L055BB23
(57)【要約】
【課題】簡便且つ迅速に財産の評価を行うことができる。
【解決手段】融資管理システム1は、評価対象の財産の内容を複数の評価者に対して提示する財産提示処理と、複数の評価者のそれぞれからの個別評価額と対応する情報を取得する評価取得処理とを実行する。評価取得処理で取得された情報と対応する個別評価額の合計が財産の評価額として決定される。あるいは、評価取得処理で取得された情報及び財産の評価額に基づいて個別評価額が決定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のコンピュータが複数の処理を実行する財産評価方法であって、
前記複数の処理が、
評価対象の財産の内容を複数の評価者に対して提示する財産提示処理と、
前記複数の評価者のそれぞれからの個別評価額と対応する情報を取得する評価取得処理とを備えており、
前記評価取得処理で取得された情報と対応する前記個別評価額の合計が前記財産の評価額として決定されるか、前記評価取得処理で取得された情報及び前記財産の評価額に基づいて前記個別評価額が決定されることを特徴とする財産評価方法。
【請求項2】
前記評価取得処理において、1口当たりの単位評価額が固定されており、前記個別評価額と対応する情報として前記評価者のそれぞれから口数が取得され、
前記評価取得処理で取得された前記複数の評価者についての前記口数の合計を前記単位評価額に乗算した結果が前記評価額として決定されることを特徴とする請求項1に記載の財産評価方法。
【請求項3】
前記評価額決定処理において、前記評価取得処理で取得された情報と対応する前記個別評価額の大きい方から上位N人(N:2以上の自然数)の前記評価者からの前記個別評価額の合計が前記評価額として決定されることを特徴とする請求項1に記載の財産評価方法。
【請求項4】
前記評価取得処理において、前記評価額が固定されており、前記個別評価額と対応する情報として前記評価者のそれぞれから口数が取得され、
前記評価取得処理で取得された前記複数の評価者についての前記口数の合計で前記評価額を除算した結果を1口当たりの単位評価額として前記複数の評価者のそれぞれについての前記個別評価額が決定されることを特徴とする請求項1に記載の財産評価方法。
【請求項5】
前記評価取得処理において、1口当たりの単位評価額及び最大口数が固定されており、前記個別評価額と対応する情報として前記評価者のそれぞれから口数が取得されると共に、取得済みの口数の合計が前記最大口数に達した時点で前記評価者からの口数の取得が打ち切られることを特徴とする請求項1に記載の財産評価方法。
【請求項6】
前記複数の処理が、
前記財産提示処理により開示されることになる情報についての権利者に対して情報開示先が負う義務の内容又は概要を複数名の評価候補者に開示する義務開示処理と、
前記義務開示処理により開示された前記書面に対する前記評価候補者による承認を取得する承認取得処理と、
前記承認取得処理で承認が取得された前記評価候補者及び前記権利者の双方に前記義務が記載された電子文書を送信する文書送信処理とをさらに含んでおり、
前記財産提示処理において、前記承認取得処理で承認を取得した前記評価候補者が前記評価者として取り扱われ、当該評価者に対して前記評価対象の財産の内容が提示されることを特徴とする請求項1に記載の財産評価方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の財産評価方法が実行されると共に、前記複数の処理が、前記複数の評価者のそれぞれからの前記個別評価額相当の拠出金に基づく融資を管理する融資管理処理をさらに含んでいることを特徴とする融資管理方法。
【請求項8】
前記評価取得処理において複数の態様により前記個別評価額と対応する情報が取得され、
前記複数の処理が、前記複数の態様で取得された情報に基づく複数の前記財産の評価額のうち、最も高い額及び最も低い額の少なくともいずれかを出力する評価額出力処理をさらに含んでいることを特徴とする請求項7に記載の融資管理方法。
【請求項9】
前記複数の処理が、融資先から希望額を取得する希望額取得処理をさらに含んでおり、
前記融資管理処理において、前記希望額取得処理で取得された前記希望額を前記評価額が上回った場合に、前記希望額を融資額とすることを特徴とする請求項7に記載の融資管理方法。
【請求項10】
前記複数の処理が、
前記評価額における前記希望額からの超過分を、前記評価者のそれぞれの前記個別評価額の前記評価額に対する割合に応じて前記評価者のそれぞれに返却した場合に、前記評価者のそれぞれにおける前記個別評価額から前記超過分の返却額を減算した金額を前記評価者のそれぞれからの拠出金として取り扱う返却管理処理をさらに含んでいることを特徴とする請求項9に記載の融資管理方法。
【請求項11】
前記複数の処理が、
前記評価者のそれぞれの拠出金に応じた利息額を計上する利息計上処理をさらに含んでいることを特徴とする請求項7に記載の融資管理方法。
【請求項12】
財産の評価に係る複数の処理を実行するサーバであって、
前記複数の処理が、
評価対象の財産の内容を複数の評価者に対して提示する財産提示処理と、
前記複数の評価者のそれぞれからの個別評価額と対応する情報を取得する評価取得処理とを含んでおり、
前記評価取得処理で取得された情報と対応する前記個別評価額の合計が前記財産の評価額として決定されるか、前記評価取得処理で取得された情報及び前記財産の評価額に基づいて前記個別評価額が決定されることを特徴とするサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、財産評価方法及びこれに基づく融資管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許等の財産を評価する各種の処理を実行する方法が存在する。特許文献1はその一例であり、特許の手続等に係る書類、手続上のアクション、契約や売上、研究開発投資等の情報に基づいて特許の価値を評価するシステムに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
財産、例えば、特許等の知的財産に対する正確な価値評価は一般的に困難である。上記特許文献1においても、評価に当たってさまざまな情報を収集し、互いに分野・内容の異なる多数の情報を総合的に勘案しながら定性的な評価を行い、なおかつ、その定性的な評価を、具体的な金額に対応する定量的な評価に繋げている。このような評価の各段階に課題があり、全体として財産の評価のハードルが高くなっている。これにより、迅速な評価が妨げられている。
【0005】
本発明の目的は、簡便且つ迅速に財産の評価を行うことができる財産評価方法及びこれに基づく融資管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の財産評価方法は、1又は複数のコンピュータが複数の処理を実行する財産評価方法であって、前記複数の処理が、評価対象の財産の内容を複数の評価者に対して提示する財産提示処理と、前記複数の評価者のそれぞれからの個別評価額と対応する情報を取得する評価取得処理とを備えており、前記評価取得処理で取得された情報と対応する前記個別評価額の合計が前記財産の評価額として決定されるか、前記評価取得処理で取得された情報及び前記財産の評価額に基づいて前記個別評価額が決定される。
【0007】
また、別の観点による本発明のサーバは、財産の評価に係る複数の処理を実行するサーバであって、前記複数の処理が、評価対象の財産の内容を複数の評価者に対して提示する財産提示処理と、前記複数の評価者のそれぞれからの個別評価額と対応する情報を取得する評価取得処理とを含んでおり、前記評価取得処理で取得された情報と対応する前記個別評価額の合計が前記財産の評価額として決定されるか、前記評価取得処理で取得された情報及び前記財産の評価額に基づいて前記個別評価額が決定される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の財産評価方法又はサーバによると、財産の評価が簡便且つ迅速に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る融資管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の融資管理システムに含まれるメインサーバに格納された情報を示す概念図である。
【
図3】
図1のメインサーバが実行する処理の流れ並びにこれに関連した権利者及び評価者のアクションを示すフローチャートである。
【
図4】
図3の事前契約処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図3の融資管理処理の詳細な流れ並びにこれに関連した権利者及び評価者のアクションを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な一実施形態に係る融資管理システム1並びに融資管理システム1によって実行される財産評価方法及び融資管理方法について
図1~
図5を参照しつつ、以下に説明する。
【0011】
本実施形態に係る融資管理システム1は、金融関連業務を行う事業者(金融機関等)の業務を支援するシステムである。融資管理システム1は、このような業務支援の処理として、財産に金銭的な評価を付与する処理と、その評価に基づく融資に伴う情報を管理する処理とを実行する。評価対象となる財産は、知的財産等の無体財産の他、動産及び不動産を問わず、各種の有体財産のいずれであってもよい。以下の説明において「権利者」とは、評価対象となる財産に係る財産権者を意味する。融資管理システム1が行う財産の評価及び融資の管理には、権利者及び財産の評価を行う評価者が関与する。権利者の代わりにその代理人が関与してもよい。
【0012】
融資管理システム1は、
図1に示すように、権利者が使用する権利者PC100、複数名の評価者がそれぞれ使用する複数の評価者PC200及びメインサーバ300(以上、本発明の1又は複数のコンピュータに対応する)を備えている。権利者PC100、評価者PC200及びメインサーバ300同士の間では、インターネットNを通じたデータ通信が行われる。この通信には、HTTPS(Hyper Text Transfer Protocol Secure)、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)等のインターネット用の通信プロトコルが使用される。なお、インターネットNに代えて、又は加えて、LAN(Local Area Network)その他の通信ネットワークが用いられてもよい。
【0013】
権利者PC100及び評価者PC200は、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージ等を有している。また、ディスプレイ若しくはタッチパネルディスプレイ、キーボード、マイク、スピーカ等の各種の入出力デバイスが搭載され又は接続されている。これらの入出力デバイスは、文字や画像等をディスプレイの画面に表示すると共に、文字や数字等のユーザ入力を受け付けることができる。また、マイクやスピーカを通じて音声の入出力が可能である。
【0014】
上記ROM及びRAMには、CPUが各種制御を行うためのプログラム他の各種データからなるソフトウェアが格納される。RAMは、CPUがプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。CPU等のハードウェアがソフトウェアに従って各種の処理を実行することにより、権利者PC100及び評価者PC200の機能が実現している。
【0015】
メインサーバ300は、CPU、ROM、RAM、ストレージからなる記憶部310等を有している。ROM及びRAMには、CPUが各種制御を行うためのプログラム他の各種データからなるソフトウェアが格納される。RAMは、CPUがプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。記憶部310には、財産の評価及び融資の管理を実行するためのアプリがインストールされている。CPU等のハードウェアがソフトウェアに従って財産の評価及び融資の管理に係る各種の処理を実行する。
【0016】
メインサーバ300の記憶部310には、
図2に示すように、権利者情報、評価者情報、契約雛形情報、契約概要情報及び融資情報が格納されている。
【0017】
権利者情報は、権利者に関する情報であり、契約関連情報、宛先情報、財産情報、希望額情報及び評価額情報を含んでいる。このうち、契約関連情報、宛先情報及び財産情報は、財産の評価に先立ってあらかじめメインサーバ300に登録されている。
【0018】
契約関連情報は、財産の評価に先立って権利者及び評価者間で契約を締結するために必要な情報である。この情報には、例えば権利者の氏名、住所等、有効な契約に必要となる権利者を特定するための個人情報その他の情報が含まれている。また、契約内容を示す電子文書に施される電子署名に必要な情報、例えば公開鍵や秘密鍵、電子証明書に係る情報が含まれている。
【0019】
宛先情報は、権利者PC100とのデータの送受信に必要な情報、例えば、IPアドレス、メールアドレス等の情報である。
【0020】
財産情報は、評価及び融資の対象となる権利者の財産の内容を示す情報である。財産情報には、既に公開された情報である公開情報と、秘密の状態に保持された秘密情報とが含まれている。例えば、財産が特許に関する場合には、その特許に係る特許番号、特許権者、公報に記載された範囲の発明の内容、権利の存続期間、登録された実施権の内容等の情報が公開情報に該当する。一方、その特許に係る特許発明の改良技術、特許発明を実施するための技術的なノウハウ情報、過去の取引情報等が秘密情報に該当する。また、例えば、財産が不動産である場合には、その不動産の所在や面積、所有者、建築時期、権利関係等を示す情報が公開情報に該当し、その不動産に係る各種の調査結果、建築技術上のノウハウ、過去の取引情報等を示す情報が秘密情報に該当する。財産が動産である場合には、その動産の物品としての一般名称等を示す情報が公開情報に該当し、その動産に係る製造技術上のノウハウ、所有者等を示す情報が秘密情報に該当する。
【0021】
希望額情報は、権利者が融資を希望する金額である。この情報は、後述の通り、希望額取得処理における権利者による権利者PC100への入力に基づき、入力内容に応じた希望額を示す情報として記憶部310内に格納される。
【0022】
評価額情報は財産の評価額を示す情報である。この情報は、後述の通り、評価取得処理における評価取得の態様に応じ、評価決定処理において決定された額を示す情報として記憶部310内に格納されるか、あらかじめ希望額と等しい額に設定される。
【0023】
評価者情報は、評価者に関する情報であり、契約関連情報、宛先情報及び個別評価額情報を含んでいる。このうち、契約関連情報及び宛先情報は、財産の評価に先立ってあらかじめメインサーバ300に登録されている。
【0024】
契約関連情報は、財産の評価に先立って権利者及び評価者間で契約を締結するために必要な情報である。この情報には、例えば評価者の氏名、住所等、有効な契約に必要となる評価者を特定するための個人情報その他の情報が含まれている。また、契約内容を示す電子文書に施される電子署名に必要な情報、例えば公開鍵や秘密鍵、電子証明書に係る情報が含まれている。
【0025】
宛先情報は、評価者PC200との間でデータの送受信に必要な情報、例えば、IPアドレス、メールアドレス等の情報である。
【0026】
個別評価額情報は、各評価者による財産の個別の評価額を示す情報である。この情報は、後述の通り、評価決定処理において決定された額を示す情報として記憶部310内に格納される。
【0027】
契約雛形情報は、財産評価に先立って権利者及び評価者間で締結される秘密保持契約に係る契約書の雛形を示す電子文書の情報である。契約書の雛形は、契約当事者(権利者及び評価者の双方)を特定するための特定情報(例えば、氏名及び住所)及び契約の日を含む契約固有の情報の記載欄が空欄になっている。つまり、契約書の雛形は、各空欄に情報が追加されると契約書として完成するような内容を有している。また、契約書の雛型には、権利者から開示される財産情報に関して契約当事者となる評価者が権利者に対して負う秘密保持義務に係る契約事項が含まれている。
【0028】
契約概要情報は、契約雛形情報が示す契約内容の概要を表す情報である。例えば、契約概要情報は、秘密保持契約によって評価者(及び権利者)が負う義務の概要をリスト形式で含んでいる。
【0029】
融資情報は、融資額、返済の期間、金利、返済方法、融資残高等の融資の実施に係る各種情報を含んでいる。この情報は、後述の通り、財産の評価に係る一連の処理が実行された後、財産の評価結果に基づいて生成される。
【0030】
メインサーバ300は、
図3に示す財産評価方法及び融資管理方法に係る一連の処理を実行する。なお、これら一連の処理において、権利者PC100、評価者PC200及びメインサーバ300間の通信処理は、インターネットNを通じた各種の通信プロトコルに従ってなされる。この際、メインサーバ300の記憶部310に格納された権利者情報及び評価者情報にそれぞれ含まれる宛先情報が用いられる。以下の説明においては、通信処理に係るこのような詳細の説明を省略する。
【0031】
まず、メインサーバ300は希望額取得処理を実行する(S1)。この処理は、メインサーバ300から権利者PC100に希望額取得要請を送信することで行われる。これに応じ、権利者PC100は、入力デバイスを通じて権利者から受け付けた入力内容が示す希望額をメインサーバ300に送信する。メインサーバ300は、権利者PC100から送信された希望額を記憶部310に権利者情報として格納する。
【0032】
次に、メインサーバ300は、事前契約処理を実行する(S2)。この処理は、S3の財産情報の提示に先立って秘密保持契約を権利者及び評価者間で締結する処理である。この処理の詳細については後述する。なお、この処理が行われる前の評価者は、厳密には評価候補者である。評価候補者のうち、事前契約処理によって権利者と秘密保持契約を締結した者が、以降の段階において評価者として財産の評価に関与する。
【0033】
次に、メインサーバ300は財産提示処理を実行する(S3)。この処理は、記憶部310の記憶内容に基づく財産情報のうち、秘密情報に該当するものが、S2で権利者と秘密保持契約を締結した評価者の各評価者PC200に対して送信されることによって行われる。これに応じ、評価者PC200は、出力デバイスを通じて、メインサーバ300から送信された財産情報の内容を評価者に出力する。
【0034】
次に、メインサーバ300は評価取得処理を実行する(S4)。評価取得処理においては、以下の3つの態様のいずれか1つが行われる。
【0035】
第1の態様は、1口当たりの単位評価額が固定されており、評価者のそれぞれから口数が取得されるものである。口数は、個別評価額と対応する情報に相当する。具体的には、口数に単位評価額を乗算した値が個別評価額として取り扱われる。この方法は、メインサーバ300が、各評価者PC200に対し、口数を取得する要請を1口当たりの単位評価額と共に送信することで行われる。これに応じ、各評価者PC200は、出力デバイスを通じて1口当たりの単位評価額の内容を評価者に対して出力すると共に、入力デバイスを通じて評価者から受け付けた入力内容が示す口数をメインサーバ300に送信する。なお、単位評価額は、あらかじめ固定された額であってもよいし、権利者によって、あるいは、融資管理システム1による業務支援の対象者である金融関連業務を行う事業者によって設定された額であってもよい。
【0036】
第2の態様は、評価額があらかじめ固定されており、評価者のそれぞれから口数が取得されるものである。この態様は、評価額がS1の希望額取得処理において取得された希望額にあらかじめ設定されると共に、メインサーバ300が、各評価者PC200に対し、口数を取得する要請を評価額と共に送信することで行われる。これに応じ、評価者PC200は、出力デバイスを通じて評価額を評価者に対して出力すると共に、入力デバイスを通じて評価者から受け付けた入力内容が示す口数をメインサーバ300に送信する。各評価者の個別評価額は、後述の通り、全評価者の口数の合計に基づいて決定される。
【0037】
第3の態様は、1口当たりの単位評価額及び最大口数が固定されており、個別評価額と対応する情報として評価者のそれぞれから口数が取得されるものである。この態様は、メインサーバ300が、各評価者PC200に対し、口数を取得する要請を1口当たりの単位評価額と共に送信することで行われる。これに応じ、各評価者PC200は、出力デバイスを通じて1口当たりの単位評価額の内容を評価者に対して出力すると共に、入力デバイスを通じて評価者から受け付けた入力内容が示す口数をメインサーバ300に送信する。メインサーバ300は、評価者PC200から取得した口数を順次集計し、取得済みの口数の合計が最大口数に達した時点で評価者PC200からの口数の取得を打ち切る。
【0038】
S4の評価取得処理において、上記第1~第3の態様のいずれが行われるかは、権利者の選択に応じて決定されてもよい。この場合、権利者PC100は、いずれの態様を選択するかを示す入力を入力デバイスを通じて権利者から受け付け、その入力結果をメインサーバ300に送信する。メインサーバ300は、上記第1~第3の態様のうち、権利者PC200から送信された入力結果が示す方法をS4の評価取得処理において実行する。なお、評価取得処理の態様は、融資管理システム1による業務支援の対象者である金融関連業務を行う事業者によって選択されてもよい。
【0039】
次に、メインサーバ300は評価額決定処理を実行する(S5)。評価額決定処理においては、S4の評価取得処理で実行された態様に応じて評価額及び個別評価額の少なくともいずれかが決定される。これにより、評価額及び個別評価額の両方が確定する。メインサーバ300は、確定した評価額を記憶部310に権利者情報として格納する。また、メインサーバ300は、確定した個別評価額を記憶部310に評価者情報として格納する。S4において第1の態様が実行された場合、各評価者について取得された口数に単位評価額を乗算した値が各評価者についての個別評価額として決定されると共に、全評価者について取得された口数の合計に単位評価額を乗算した値が評価額として決定される。
【0040】
なお、上記のような評価額の決定の代わりに、個別評価額の大きい方から上位N人(N:2以上の自然数)の評価者からの個別評価額の合計が評価額として決定されてもよい。Nは、あらかじめ固定された値であってもよいし、融資管理システム1による業務支援の対象者である金融関連業務を行う事業者によって設定された値であってもよい。
【0041】
S4において第2の態様が実行された場合、評価額があらかじめ固定されているので、全評価者について取得された口数の合計で評価額を除算した結果が1口分の金額(単位評価額)として取り扱われる。そして、各評価者について取得された口数を1口分の金額に乗算した値が各評価者についての個別評価額として決定される。
【0042】
S4において第3の態様が実行された場合、口数の取得が打ち切られた時点までに評価者から取得された口数の合計で評価額を除算した結果が1口分の金額(単位評価額)として取り扱われる。そして、各評価者について取得された口数を1口分の金額に乗算した値が各評価者についての個別評価額として決定される。
【0043】
S5において評価額及び個別評価額が確定すると、各評価者から個別評価額分の拠出金が提供される(T1)。これに応じ、メインサーバ300は融資管理処理を実行する(S6)。この処理は、T1の各評価者からの拠出金を原資とした融資を管理する処理である。この処理の詳細については後述する。
【0044】
続いて、
図3のS2の事前契約処理の詳細について
図4を参照しつつ説明する。まず、メインサーバ300は概要送信処理を実行する(S21)。この処理は、全評価者PC200に対して、記憶部310の記憶内容が示す財産情報のうちの一部及び契約概要情報を送信する処理である。この処理で評価者PC200に送信される財産情報は、公開情報であって、財産の概要を示すもの(特許番号、不動産の所在等)である。これに応じ、評価者PC200は、出力デバイスを通じて、メインサーバ300から送信された財産情報及び契約概要情報を評価者に対して出力する。これにより、評価者は、財産の概要及び事前に交わすべき秘密保持契約における義務の概要を把握できる。なお、この処理は、本発明の義務開示処理に対応する。
【0045】
次に、メインサーバ300は承認取得処理を実行する(S22)。この処理は、評価者PC200に対して評価者からの承認を取得する旨の指示を送信することで行われる。これに応じ、評価者PC200は、入力デバイスを通じ、評価者からの承認を示す入力を受け付ける。評価者は、S21で把握した概要に基づき、承認するか否かを判断すると共に、その判断結果を評価者PC200に入力する。評価者PC200は、受け付けた入力内容をメインサーバ300に送信する。
【0046】
次に、メインサーバ300は文書送信処理を実行する(S23)。この処理は、電子署名がなされた契約書の電子文書を生成し、権利者PC100及び評価者PC200の双方に送信する処理である。電子文書は、記憶部310の記憶内容に基づき、契約雛形情報と、権利者情報及び評価者情報にそれぞれ含まれる契約関連情報とに基づいて生成される。具体的には、契約雛形情報が示す契約書の雛形の空欄箇所に、契約関連情報が示す権利者及び評価者の氏名及び住所等の必要事項を追記した電子文書が生成される。さらに、生成された電子文書に対し、権利者情報及び評価者情報の双方の契約雛形情報に含まれる秘密鍵に基づいて、権利者及び評価者双方による電子署名がなされる。電子署名がなされた契約書の電子文書は、S22でメインサーバ300に承認の入力が送信された評価者PC200と権利者PC100との双方に送信される。その後、
図3のS3以降の処理が実行される。
【0047】
続いて、
図3のS6の融資管理処理の詳細について
図5を参照しつつ説明する。まず、メインサーバ300は、融資情報生成処理を実行する(S61)。この処理は、S5の評価額決定処理において確定した評価額に基づいて融資情報を生成する処理である。融資情報は、上記の通り、融資の実施に係る、融資額、返済の期間、金利、返済方法、融資残高等の各種情報からなる。融資額は、S5の評価額決定処理において確定した評価額に応じて設定される。具体的には、確定した評価額が記憶部310の記憶内容が示す希望額以上である場合には、希望額が融資額として設定される。一方、確定した評価額が記憶部310の記憶内容が示す希望額を下回っている場合には、評価額が融資額として設定される。そして、設定された額の融資が権利者に対して実行される(T11)。なお、確定した評価額が記憶部310の記憶内容が示す希望額を下回っている場合には、融資がキャンセルされてもよい。この場合、S62以降の処理が実行されない。また、T1の拠出金が全額、評価者に元通りに返却される。
【0048】
評価額が希望額を上回っていた場合、その超過分は評価者に返却される(T12)。各評価者への返却額は、評価額に対する個別評価額(拠出金)の割合に比例した額である。例えば、ある評価者による個別評価額の評価額に対する割合がA%であった場合、上記超過分に(A/100)を乗算した金額がその評価者への返却額となる。
【0049】
次に、メインサーバ300は、権利者から返済される返済金(T13)に基づく返済処理を実行する(S63)。権利者からの返済は、融資情報が示す返済の期間、金利、返済方法、融資残高等に基づいて実行される。返済処理は、残高管理処理及び利息計上処理を含んでいる。利息計上処理は、融資情報に基づいて利息を計上する処理である。利息は、融資情報及び各評価者による個別評価額に基づいて計上される。利息計上処理において計上された利息は、T13の返済金から評価者に支払われる(T14)。残高管理処理は、T13の返済金のうち、評価者に支払われた利息を除いた残額により融資情報における融資残高を更新する処理である。S63の返済処理は、返済の期間中、継続して実行される。
【0050】
以上説明した本実施形態によると、各評価者から取得した情報が示す個別評価額の合計が財産の評価額として決定される。したがって、金銭的な財産の評価が簡便且つ迅速に行われると共に、複数の評価者による直接の評価が反映されることで適切な評価がなされる。あるいは、財産の評価額があらかじめ決められた上で、各評価者から取得した情報に基づいて各評価者における個別評価額が決定される。したがって、評価者ごとの金銭的な財産の評価が簡便且つ迅速に行われる。
【0051】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
例えば、上述の実施形態では、
図4のS23において、契約書への電子署名が、記憶部310に記憶された権利者及び情報開示先となった評価者双方の秘密鍵に基づいてメインサーバ300において実行されている。これに対し、電子署名が権利者PC100及び評価者PC200においてなされてもよい。例えば、必要事項が記入された契約書の電子文書がメインサーバ300から権利者PC100へと送信され、権利者PC100において権利者の電子署名がその電子文書になされた後に、権利者の電子署名がなされた電子文書がメインサーバ300を通じて評価者PC200へと送信され、評価者PC200においてさらに評価者の電子署名がその電子文書になされてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、
図3のS4において各評価者による個別評価額に対応する情報として口数が取得される。これに対し、個別評価額を直接示す数値(5万(円)、10万(円)等)が個別評価額に対応する情報として取得されてもよい。
【0054】
また、上述の実施形態では、
図3のS4において第1~第3の態様のいずれかにより評価者による評価が取得される。これに対し、第1~3の態様のうちいずれか複数の態様により評価が取得されてもよい。この場合、ある態様において取得される評価額と別の態様において取得される評価額とが異なることが考えられる。これらの互いに異なる評価額の中で最大額又は最少額がユーザに対してシステムから出力されること(本発明の評価額出力処理に対応する)が好ましい。最大額が出力されるか最少額が出力されるかは、融資の目的や背景に応じてユーザによって適宜選択されるようにシステムが構成されているとよい。また、両方の額が出力されてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、融資管理システム1の評価対象が、知的財産等の無体財産の他、動産及び不動産を問わず、各種の有体財産のいずれであってもよいとしている。このような融資管理システム1の評価対象には「企業」が含まれる。企業が対象となる場合、権利者は企業自身となり、権利者情報に含まれる財産情報としては、企業情報(財務情報や知的資産に関する各種の情報を含む)が記憶部310に格納されることになる。その他については、融資管理システム1が上記同様に構成され、融資管理システム1による上記同様の処理が実行される。なお、企業に関する評価結果が、M&Aに当たっての企業価値評価等、融資以外の目的に利用されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 融資管理システム
100 権利者PC
200 評価者PC
300 メインサーバ
310 記憶部