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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145025
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20241004BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20241004BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60N2/75
B60N2/68
A47C7/54 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057246
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 崇大
(72)【発明者】
【氏名】若山 周平
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】福田 直慶
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB02
3B087DC01
3B087DC02
(57)【要約】
【課題】シートバックフレームに対して所定の荷重が入力されたときのアームレストの脱離を抑制する。
【解決手段】シートバックフレーム6に接合されてアームレストフレーム7を保持するアームレストブラケット10,20は、回動軸30が挿通される回動軸穴11,21と、アームレストフレーム7の回動範囲を規制する規制部12,22と、回動軸穴11,21及び規制部12,22とシートバックフレーム6に対するアームレストブラケット10,20の接合部分の間に設けられた変形部15,16・25,26と、を備え、変形部15,16・25,26は、シートバックフレーム6に対して所定の荷重が加わった場合におけるアームレスト5の移動時に、当該アームレスト5に追従するように変形する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれとして利用されるシートバックと、
前記シートバックに、前記シートバックに沿った位置と前方に展開した状態との間で回動自在に設けられたアームレストと、を含んで構成された乗物用シートであって、
前記アームレストは、骨格となるアームレストフレームを有し、
前記シートバックは、骨格となるシートバックフレームと、前記シートバックフレームに接合されて前記アームレストフレームを保持するアームレストブラケットと、を有し、
前記アームレストフレームは、前記アームレストブラケットに対し、回動軸を介して回動自在に取り付けられ、
前記アームレストブラケットは、
前記回動軸が挿通される回動軸穴と、
前記アームレストフレームの回動範囲を規制する規制部と、
前記回動軸穴及び前記規制部と、前記シートバックフレームに対する前記アームレストブラケットの接合部分と、の間に設けられた変形部と、を備え、
前記変形部は、前記シートバックフレームに対して所定の荷重が加わった場合における前記アームレストの移動時に、当該アームレストに追従するように変形することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記アームレストブラケットは、前記変形部を挟んで一方側と他方側のそれぞれに設けられて前記アームレストブラケットを補強する第一補強部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第一補強部は、前記アームレストブラケットの縁部に沿って形成されたフランジであることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記アームレストブラケットは、前記変形部と対向する位置に設けられて前記アームレストブラケットを補強する第二補強部を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記変形部と前記第二補強部は、上下方向に隣り合って配置されていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記変形部は、前記アームレストブラケットの上部に設けられた上側変形部と、前記アームレストブラケットの下部に設けられた下側変形部と、を有し、
前記上側変形部と前記下側変形部は、同一直線上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記第二補強部は、前記上側変形部と前記下側変形部との間に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記アームレストブラケットは、前記アームレストフレームの幅方向一端部を保持する第一ブラケットと、前記アームレストフレームの幅方向他端部を保持する第二ブラケットと、を有し、
前記第一ブラケットに設けられた前記変形部と、前記第二ブラケットに設けられた前記変形部は、シート前後方向において異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等を始めとする各種の乗物において、後方に、例えば後部座席や荷室等の空間がある状態で設置される乗物用シートが知られている。
特許文献1における乗物用シートは、シートバックフレームに接合されたアームレストブラケットによってアームレストを保持する構成となっている。また、アームレストの側面には、回転軸となるピンが側方に突出して設けられ、アームレストブラケットには、当該ピンを差し込むための切欠が形成されている。そして、アームレストは、アームレストブラケットの切欠を通じてピンの挿入及び離脱が可能になっており、これによってシートバックからの着脱がしやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-112576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、後方に空間がある状態で設置された乗物用シートの場合、後方空間から、シートバックに対し、例えば人がぶつかったり荷物がぶつかったりして所定の荷重の入力があると、シートバックフレームが変形することがある。そして、このようにシートバックフレームが変形してしまうと、シートバックフレームに接合されたアームレストブラケットと、このアームレストブラケットによって保持されるアームレストの取付状態にも影響を及ぼすことが考えられる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、シートバックフレームに対して所定の荷重が入力されたときのアームレストの脱離を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、背もたれとして利用されるシートバックと、
前記シートバックに、前記シートバックに沿った位置と前方に展開した状態との間で回動自在に設けられたアームレストと、を含んで構成された乗物用シートであって、
前記アームレストは、骨格となるアームレストフレームを有し、
前記シートバックは、骨格となるシートバックフレームと、前記シートバックフレームに接合されて前記アームレストフレームを保持するアームレストブラケットと、を有し、
前記アームレストフレームは、前記アームレストブラケットに対し、回動軸を介して回動自在に取り付けられ、
前記アームレストブラケットは、
前記回動軸が挿通される回動軸穴と、
前記アームレストフレームの回動範囲を規制する規制部と、
前記回動軸穴及び前記規制部と、前記シートバックフレームに対する前記アームレストブラケットの接合部分と、の間に設けられた変形部と、を備え、
前記変形部は、前記シートバックフレームに対して所定の荷重が加わった場合における前記アームレストの移動時に、当該アームレストに追従するように変形することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗物用シートにおいて、
前記アームレストブラケットは、前記変形部を挟んで一方側と他方側のそれぞれに設けられて前記アームレストブラケットを補強する第一補強部を更に備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の乗物用シートにおいて、
前記第一補強部は、前記アームレストブラケットの縁部に沿って形成されたフランジであることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の乗物用シートにおいて、
前記アームレストブラケットは、前記変形部と対向する位置に設けられて前記アームレストブラケットを補強する第二補強部を更に備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の乗物用シートにおいて、
前記変形部と前記第二補強部は、上下方向に隣り合って配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の乗物用シートにおいて、
前記変形部は、前記アームレストブラケットの上部に設けられた上側変形部と、前記アームレストブラケットの下部に設けられた下側変形部と、を有し、
前記上側変形部と前記下側変形部は、同一直線上に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の乗物用シートにおいて、
前記第二補強部は、前記上側変形部と前記下側変形部との間に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記アームレストブラケットは、前記アームレストフレームの幅方向一端部を保持する第一ブラケットと、前記アームレストフレームの幅方向他端部を保持する第二ブラケットと、を有し、
前記第一ブラケットに設けられた前記変形部と、前記第二ブラケットに設けられた前記変形部は、シート前後方向において異なる位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、シートバックフレームに対して所定の荷重が加わった場合におけるアームレストの移動時に、アームレストブラケットの変形部が、アームレストに追従するように変形し、アームレストが、アームレストブラケットから脱離することを抑制できる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、アームレストブラケットのうち変形部が設けられた位置が変形しやすくなり、アームレストが、アームレストブラケットから脱離することを抑制しやすくなる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、比較的簡易な構造によってアームレストブラケットの剛性を向上できる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、アームレストブラケットのうち変形部が設けられた位置が更に変形しやすくなり、アームレストが、アームレストブラケットから脱離することを一層抑制しやすくなる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、変形部と第二補強部とが上下に並ぶことになり、アームレストブラケットのうち変形部が設けられた位置が更に変形しやすくなる。また、アームレストブラケットの変形を上下方向においてチューニングしやすくなる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、上側変形部と下側変形部が同一直線上に配置されているので、アームレストブラケットは、上側変形部と下側変形部が配置された箇所の周囲で変形しやすくなる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、上側変形部と第二補強部と下側変形部が上下に並ぶことになり、アームレストブラケットの上部と下部が更に変形しやすくなる。また、アームレストブラケットの変形を上下方向においてチューニングしやすくなる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、第一ブラケットと第二ブラケットで、変形量が異なるものとなるように調整を行うことができるので、シートバックフレームに対して所定の荷重が加わってアームレストが移動する場合の移動量を幅方向においてチューニングしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】アームレストを備えた乗物用シートを示す斜視図である。
図2】アームレストが展開した状態の乗物用シートを示す斜視図である。
図3】シートバックフレーム及びアームレストフレームを示す斜視図である。
図4】左右のアームレストブラケットの周囲を示す拡大斜視図である。
図5】左右のアームレストブラケットに形成された変形部の位置について説明するための拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0024】
図1図2において符号1は、人が着座する乗物用シートを示す。この乗物用シート1は、乗用車における車体の床に設置されるシートとされている。ただし、これに限られるものではなく、バスやトラック等の他の自動車におけるシートでもよいし、鉄道や船舶、航空機等の自動車以外の乗り物におけるシートでもよい。
【0025】
乗物用シート1は、2人掛けのベンチシートであり、本実施形態においては運転席よりも後方に設けられている。また、図示しない1人掛けのシートと左右に並べて設けられるものとする。つまり、乗物用シート1は、乗物に設けられたときに、図示しない1人掛けのシートが隣接して並べられて設けられることで3人掛けのシートを形成している。ただし、これに限られるものではなく、乗物用シート1は、3人掛けのベンチシートであってもよい。
また、本実施形態の乗物用シート1は、後方に、ある程度の広さの空間が形成された状態で車体に設置されている。乗物用シート1の後方空間は、例えば後部座席との間に形成される空間や荷室とされている。
【0026】
このような乗物用シート1は、人の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、下端部がシートクッション2に支持された背もたれとなるシートバック3と、シートバック3に設けられて人の頭部を支持する2つのヘッドレスト4と、シートバック3に設けられて、前方に展開したときに人の腕部を支持するアームレスト5と、を備えている。
なお、アームレスト5は、2人掛けの本実施形態の乗物用シート1と、1人掛けの乗物用シートが左右に並べられて配置され、3人掛けのシートが形成されたときに、真ん中に位置する座席の背もたれとして利用される。
【0027】
また、乗物用シート1は、乗物用シート1の骨格となるシートフレームと、シートフレームに設けられたクッションパッドと、クッションパッド及びシートフレームを覆う表皮と、によって構成されている。
シートフレームは、シートクッション2の骨格となるクッションフレームと、シートバック3の骨格となるシートバックフレーム6と、ヘッドレスト4の骨格となるヘッドレストフレーム及びピラーと、アームレスト5の骨格となるアームレストフレーム7と、を備えている。
【0028】
シートバック3のうち、アームレスト5が設けられる位置には、アームレスト5が格納される凹部3aが形成されている。
凹部3aは、シートバックフレーム6のうち、アームレスト5が配置される位置を避けてクッションパッドが設けられることによって形成されている。換言すれば、シートバックフレーム6にクッションパッドを設ける場合は、アームレスト5が配置される位置を避けて設けられており、クッションパッドが設けられていない箇所が、アームレスト5が格納される凹部3aとされている。
【0029】
アームレスト5は、図1図2に示すように、シートバック3に対し、シートバック3に沿った位置と前方に展開した位置との間で回動自在となるように設けられている。
すなわち、アームレスト5は、シートバック3に沿って配置されることで、シートバック3と共に背もたれとして利用され、前方に展開することでアームレストとして利用される。そのため、アームレストフレーム7には、当該アームレストフレーム7を包むようにしてクッションパッドが設けられ、その上で表皮によって覆われている。これにより、アームレスト5は、背もたれとして利用される場合も、アームレストとして利用される場合も、クッションパッドが緩衝材として機能することになる。
【0030】
シートバック3の骨格となるシートバックフレーム6は、図3図5に示すように、左右のバックサイドフレーム6aとアッパーフレーム6bからなる略コ字型のメインフレームと、当該メインフレームの下端部間に架け渡されたロアフレーム6cと、アッパーフレーム6bとロアフレーム6cとの間に架け渡されたセンターフレーム6dと、左右のバックサイドフレーム6aとセンターフレーム6dとの間に架け渡された複数の受圧部材6eと、を有する。
センターフレーム6dは、アッパーフレーム6b及びロアフレーム6cの長さ方向中心よりも、やや左側に寄った位置に配置されている。
【0031】
アームレスト5の骨格となるアームレストフレーム7は、図3図5に示すように、左右のサイドフレーム7aと、略コ字型のアッパーフレーム7bと、アッパーフレーム7bにおける左右のフレーム間に架け渡された複数の受圧部材7cと、を有する。
そして、このようなアームレストフレーム7は、シートバックフレーム6に接合された複数のアームレストブラケット10,20によって保持されている。
【0032】
より詳細に説明すると、複数のアームレストブラケットには、左側に位置してアームレストフレーム7の左側端部を保持する第一ブラケット10と、右側に位置してアームレストフレーム7の右側端部を保持する第二ブラケット20と、が含まれている。すなわち、左右一対のアームレストブラケット10,20によって、アームレストフレーム7が保持されている。
そして、第一ブラケット10は、左側に位置するバックサイドフレーム6aの下端部における右側面に対して溶接等により接合され、第二ブラケット20は、センターフレーム6dの下端部における左側面に対して溶接等により接合されている。
【0033】
アームレストフレーム7は、左右のアームレストブラケット10,20に対し、回動軸30及びストッパー部材31を介して回動自在に取り付けられている。
回動軸30及びストッパー部材31は、いずれも円筒状に形成された棒材であり、左右のアームレストブラケット10,20間に架け渡されて設けられている。
また、これら回動軸30及びストッパー部材31は、互いに平行に配置されており、長さ方向両端部同士が、連結部32によって連結されている。これによって、ストッパー部材31は、回動軸30と連動して動作し、回動軸30の回転に伴って円弧状に移動する動作を行うようになっている。
【0034】
まず、第一ブラケット10は、金属製の板材を加工して形成されたものであり、左側に位置するバックサイドフレーム6aの下端部からシート前方に向かって突出している。
突出方向の先端部には、回動軸30の左側端部が挿通される回動軸穴11が貫通形成されているとともに、その回動軸穴11に隣り合って、ストッパー部材31が挿通される円弧状の規制穴12が貫通形成されている。
規制穴12は、回動軸穴11の上方から下方にかけて略C字状に形成されている。ストッパー部材31が規制穴12の上端縁に当たっているときに、アームレスト5は前方に展開しており、ストッパー部材31が規制穴12の下端縁に当たっているときに、アームレスト5は凹部3aに格納されている。
【0035】
なお、本実施形態においては、ストッパー部材31を規制穴12に挿通し、ストッパー部材31が規制穴12の上下端縁に当たることでアームレストフレーム7の回動範囲を規制しているが、これに限られるものではなく、その他の構成によってアームレストフレーム7の回動範囲を規制してもよい。例えば第一ブラケット10の右側面から突出する上側の突起及び下側の突起と、アームレストフレーム7の端部とが接触することで、アームレストフレーム7の回動範囲を規制してもよい。
【0036】
第一ブラケット10は、上端縁部から前端縁部を介して下端縁部までの間に第一補強部13が設けられている。
本実施形態の第一補強部13は、フランジとされている。すなわち、第一ブラケット10の上端縁部、前端縁部、下端縁部が折曲されてフランジ13が形成され、当該フランジ13が、第一ブラケット10の剛性を向上させる補強部として機能している。
なお、本実施形態の第一補強部13はフランジとされているが、これに限られるものではなく、リブやビード等を設けて第一ブラケット10を補強してもよい。
【0037】
フランジ13は、第一ブラケット10の後端縁部には形成されていないが、第一ブラケット10の後端部側には、当該第一ブラケット10の後端部を左側方に膨出させた第二補強部14が形成されている。第二補強部14は、左側方に膨出しているため、右側面側は凹んだ状態となっている。すなわち、第二補強部14によって、第一ブラケット10の後端部側に凹凸が形成されており、当該凹凸構造によって第一ブラケット10の剛性が向上された状態となっている。
また、第二補強部14は、バックサイドフレーム6aに対する接合面としても機能しており、バックサイドフレーム6aに対して接する部分が溶接等により接合されている。
【0038】
なお、第二補強部14と共に、第一補強部13もバックサイドフレーム6aに対して溶接等により接合されている。すなわち、第一補強部13であるフランジのうち、第一ブラケット10における上端縁部及び下端縁部の後端部側に位置する部位は、バックサイドフレーム6aの外周面に沿って円弧状に形成されて、バックサイドフレーム6aの外周面に接する。そのため、当該バックサイドフレーム6aの外周面に接する部位が溶接等により接合されている。
【0039】
なお、第一ブラケット10のうち第二補強部14が形成された箇所の中央部には、クッションパッド又は表皮の取り付けに用いられる切り起こし部14aが形成されている。
【0040】
第一ブラケット10には、シートバックフレーム6に対して所定の荷重が加わった場合におけるアームレスト5の移動時に、当該アームレスト5に追従するように変形する変形部15,16が形成されている。本実施形態の変形部15,16は、第一ブラケット10のうち、回動軸穴11及び規制穴12と、バックサイドフレーム6aに対する第一ブラケット10の接合部分との間に配置されている。
【0041】
なお、所定の荷重とは、乗物用シート1の後方空間側から受ける荷重であり、例えば乗物の前突時に、後方空間にある荷物等が乗物用シート1のシートバック3に衝突した場合に発生する荷重を指している。
【0042】
本実施形態の変形部は、第一ブラケット10の上部に設けられた上側変形部15と、第一ブラケット10の下部に設けられた下側変形部16と、を有する。
【0043】
上側変形部15は、第一ブラケット10の上端縁部を切り欠いて形成された切欠部であり、第一ブラケット10の上端縁部から下方に向かって略U字型に切り欠き形成されている。
このような上側変形部15は、第一ブラケット10の上端縁部に形成された第一補強部13であるフランジ13を前後に分断している。換言すれば、第一補強部13は、上側変形部15を挟んで前方側と後方側のそれぞれに設けられた状態となっている。
【0044】
また、上側変形部15は、第二補強部14と対向した状態となっている。換言すれば、上側変形部15の延長方向の先には、第二補強部14が配置されている。すなわち、上側変形部15の下方に、第二補強部14が隣り合って設けられている。
【0045】
下側変形部16は、第一ブラケット10の下端縁部を切り欠いて形成された切欠部であり、第一ブラケット10の下端縁部から上方に向かって略U字型に切り欠き形成されている。
このような下側変形部16は、第一ブラケット10の下端縁部に形成された第一補強部13であるフランジ13を前後に分断している。換言すれば、第一補強部13は、下側変形部16を挟んで前方側と後方側のそれぞれに設けられた状態となっている。
【0046】
また、下側変形部16は、第二補強部14と対向した状態となっている。換言すれば、下側変形部16の延長方向の先には、第二補強部14が配置されている。すなわち、下側変形部16の上方に、第二補強部14が隣り合って設けられている。
要するに、第二補強部14は、上側変形部15と下側変形部16との間に設けられていることになる。
【0047】
また、上側変形部15と下側変形部16は、同一直線上に配置されている。ここでいう直線とは、仮想的な直線であり、当該直線は、バックサイドフレーム6aと略平行に伸びているものとする。つまり、上側変形部15と下側変形部16との並び方向とバックサイドフレーム6aの長さ方向とが略平行な状態となっている。
換言すれば、バックサイドフレーム6aの位置(シートバックフレーム6に対する第一ブラケット10の接合部分)から上側変形部15までの間隔と、バックサイドフレーム6aの位置から下側変形部16までの間隔が略等しい。
【0048】
続いて、第二ブラケット20について説明する。ただし、第二ブラケット20は、第一ブラケット10と類似した構成となっているため、共通する要素については説明を省略又は簡略する。
【0049】
第二ブラケット20は、金属製の板材を加工して形成されたものであり、センターフレーム6dの下端部からシート前方に向かって突出している。
突出方向の先端部には、回動軸30の右側端部が挿通される回動軸穴21が貫通形成されているとともに、その回動軸穴21に隣り合って、ストッパー部材31が挿通される円弧状の規制穴22が貫通形成されている。ストッパー部材31が規制穴22の上端縁に当たっているときに、アームレスト5は前方に展開しており、ストッパー部材31が規制穴22の下端縁に当たっているときに、アームレスト5は凹部3aに格納されている。
【0050】
第二ブラケット20は、上端縁部から前端縁部を介して下端縁部までの間に第一補強部23が設けられている。本実施形態の第一補強部23は、フランジとされている。
フランジ23は、第二ブラケット20の後端縁部には形成されていないが、第二ブラケット20の後端部側には、当該第二ブラケット20の後端部を右側方に膨出させた第二補強部24が形成されている。第二補強部24は、右側方に膨出しているため、左側面側は凹んだ状態となっており、このような凹凸構造によって第二ブラケット20の剛性が向上された状態となっている。
また、第二補強部24は、バックサイドフレーム6aに対する接合面としても機能しており、センターフレーム6dに対して接する部分が溶接等により接合されている。
【0051】
なお、第二補強部24と共に、第一補強部23もバックサイドフレーム6aに対して溶接等により接合されている。すなわち、第一補強部23であるフランジのうち、第二ブラケット20における上端縁部及び下端縁部の後端部側に位置する部位は、センターフレーム6dの外周面に沿って円弧状に形成されて、センターフレーム6dの外周面に接する。そのため、当該センターフレーム6dの外周面に接する部位が溶接等により接合されている。
【0052】
第二ブラケット20には、シートバックフレーム6に対して所定の荷重が加わった場合におけるアームレスト5の移動時に、当該アームレスト5に追従するように変形する変形部25,26が形成されている。本実施形態の変形部25,26は、第二ブラケット20のうち、回動軸穴21及び規制穴22と、センターフレーム6dに対する第二ブラケット20の接合部分との間に配置されている。
【0053】
本実施形態の変形部は、第二ブラケット20の上部に設けられた上側変形部25と、第二ブラケット20の下部に設けられた下側変形部26と、を有する。
【0054】
上側変形部25は、第二ブラケット20の上端縁部を略U字型に切り欠いて形成された切欠部であり、第二ブラケット20の上端縁部に形成された第一補強部23であるフランジ23を前後に分断している。換言すれば、第一補強部23は、上側変形部25を挟んで前方側と後方側のそれぞれに設けられた状態となっている。
また、上側変形部25は、第二補強部24と対向し、上側変形部25の下方に、第二補強部24が隣り合って設けられた状態となっている。
【0055】
下側変形部26は、第二ブラケット20の下端縁部を略U字型に切り欠いて形成された切欠部であり、第二ブラケット20の下端縁部に形成された第一補強部23であるフランジ23を前後に分断している。換言すれば、第一補強部23は、下側変形部26を挟んで前方側と後方側のそれぞれに設けられた状態となっている。
また、下側変形部26は、第二補強部24と対向し、下側変形部26の上方に、第二補強部24が隣り合って設けられている。
要するに、第二補強部24は、上側変形部25と下側変形部26との間に設けられていることになる。
【0056】
また、上側変形部25と下側変形部26は、同一直線上に配置されている。ここでいう直線とは、仮想的な直線であり、当該直線は、センターフレーム6dと略平行に伸びているものとする。つまり、上側変形部25と下側変形部26との並び方向とセンターフレーム6dの長さ方向とが略平行な状態となっている。
換言すれば、センターフレーム6dの位置(シートバックフレーム6に対する第二ブラケット20の接合部分)から上側変形部25までの間隔と、センターフレーム6dの位置から下側変形部26までの間隔が略等しい。
【0057】
以上のようにして構成された乗物用シート1において、第一ブラケット10に設けられた上側変形部15及び下側変形部16と、第二ブラケット20に設けられた上側変形部25及び下側変形部26は、図5に示すように、シート前後方向において異なる位置に配置されている。すなわち、第一ブラケット10に設けられた上側変形部15及び下側変形部16は、第二ブラケット20に設けられた上側変形部25及び下側変形部26よりも前方に位置している。
換言すれば、シートバックフレーム6(バックサイドフレーム6a)に対する上側変形部15及び下側変形部16の位置と、シートバックフレーム6(センターフレーム6d)に対する上側変形部25及び下側変形部26の位置は、上側変形部15及び下側変形部16の方が、前側に位置している。より詳細に説明すると、第一ブラケット10における上側変形部15と下側変形部16とを結ぶ上記の仮想的な直線を、第一直線とし、第二ブラケット20における上側変形部25と下側変形部26とを結ぶ上記の仮想的な直線を、第二直線とした場合、本実施形態においては、シートバックフレーム6に対する第一直線と第二直線の位置が、シート前後方向において異なっている。
【0058】
第一ブラケット10及び第二ブラケット20は、所定の荷重が入力されて変形する場合に、各変形部15,16・25,26を起点にして変形が生じる。また、第一ブラケット10及び第二ブラケット20は、シートバックフレーム6に対して溶接等により接合されているため、基端部側は変形しにくくなっている。したがって、第一ブラケット10及び第二ブラケット20が変形する場合は、各変形部15,16・25,26よりも前方に位置する部位が、各変形部15,16・25,26よりも後方に位置する部位に対して移動した状態となる。
第一ブラケット10及び第二ブラケット20がこのように変形する場合、第一ブラケット10に設けられた上側変形部15及び下側変形部16は、第二ブラケット20に設けられた上側変形部25及び下側変形部26よりも前方に位置しているので、第一ブラケット10は、第二ブラケット20よりも変形量が小さく、第二ブラケット20は、第一ブラケット10よりも変形量が大きくなる。すなわち、左右のアームレストブラケット10,20がどのように変形するかを事前に把握することができるため、シートバックフレーム6に対して所定の荷重が加わった場合に移動するアームレスト5の移動量を事前に計画することが可能となる。したがって、アームレスト5が移動する場合の移動量を事前にチューニングして、ある程度コントロールすることが可能となる。
【0059】
第一ブラケット10及び第二ブラケット20における各変形部15,16・25,26の位置だけでなく、各変形部15,16・25,26の切欠長さや形状を変更することによっても、アームレスト5が移動する場合の移動量を事前にチューニングすることができる。さらに、本実施形態においては、第一ブラケット10及び第二ブラケット20の上下に変形部15,16・25,26を形成したが、上下のどちらか一方に変形部15(16)・25(26)が形成される構成を採用してもよい。
【0060】
なお、本実施形態においては、アームレストフレーム7が、左右のアームレストブラケット10,20によって保持されるものとしたが、アームレストブラケットの数は一つでもよい。図1図2に示すアームレスト5は、背もたれとしても利用されるため、左右幅方向の寸法が長く設定されているが、人の腕部を支持するためだけに利用される場合は、左右幅方向の寸法はもっと短く(細く)てもよい。そのような細いアームレストが乗物用シートに採用される場合は、アームレストブラケットの数は一つでもよい。この場合、アームレストの骨格となるアームレストフレームも、一つのアームレストブラケットに対応する構成となることは言うまでもない。
【0061】
以上のように構成された乗物用シート1は、後方空間からシートバックフレーム6に対して所定の荷重が入力された場合に、シートバックフレーム6の変形に伴って、アームレストブラケット10,20によって保持されたアームレスト5も移動することになる。
このような場合に、アームレストブラケット10,20は、アームレスト5の移動に追従するように変形する変形部15,16・25,26から最初に変形する。すなわち、変形部15,16・25,26は、アームレストブラケット10,20のうち最も脆弱なポイント(脆弱部)であり、アームレストブラケット10,20が変形するときの起点となる。
そして、アームレストブラケット10,20がこのように変形することで、回動軸30が挿通された回動軸穴11,21の周縁部や、ストッパー部材31が挿通された規制穴12,22の周縁部には、シートバックフレーム6の変形に伴う強い力が掛かりにくくなる。そのため、アームレスト5の骨格となるアームレストフレーム7は、アームレストブラケット10,20から脱離しにくくなる。
【0062】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、シートバックフレーム6に接合されてアームレストフレーム7を保持するアームレストブラケット10,20は、回動軸30が挿通される回動軸穴11,21と、アームレストフレーム7の回動範囲を規制する規制部12,22と、回動軸穴11,21及び規制部12,22とシートバックフレーム6に対するアームレストブラケット10,20の接合部分の間に設けられた変形部15,16・25,26と、を備え、変形部15,16・25,26は、シートバックフレーム6に対して所定の荷重が加わった場合におけるアームレスト5の移動時に、当該アームレスト5に追従するように変形するので、シートバックフレーム6に対して所定の荷重が加わった場合におけるアームレスト5の移動時に、アームレストブラケット10,20の変形部15,16・25,26が、アームレスト5に追従するように変形し、アームレスト5が、アームレストブラケット10,20から脱離することを抑制できる。
【0063】
また、アームレストブラケット10,20は、変形部15,16・25,26を挟んで一方側と他方側のそれぞれに設けられてアームレストブラケット10,20を補強する第一補強部13,23を更に備えるので、アームレストブラケット10,20のうち変形部15,16・25,26が設けられた位置が変形しやすくなり、アームレスト5が、アームレストブラケット10,20から脱離することを抑制しやすくなる。
【0064】
また、第一補強部13,23は、アームレストブラケット10,20の縁部に沿って形成されたフランジであることから、比較的簡易な構造によってアームレストブラケット10,20の剛性を向上できる。
【0065】
また、アームレストブラケット10,20は、変形部15,16・25,26と対向する位置に設けられてアームレストブラケット10,20を補強する第二補強部14,24を更に備えるので、アームレストブラケット10,20のうち変形部15,16・25,26が設けられた位置が更に変形しやすくなり、アームレスト5が、アームレストブラケット10,20から脱離することを一層抑制しやすくなる。
【0066】
また、変形部15,16・25,26と第二補強部14,24は、上下方向に隣り合って配置されているので、変形部15,16・25,26と第二補強部14,24とが上下に並ぶことになり、アームレストブラケット10,20のうち変形部15,16・25,26が設けられた位置が更に変形しやすくなる。また、アームレストブラケット10,20の変形を上下方向においてチューニングしやすくなる。
【0067】
また、変形部15,16・25,26は、アームレストブラケット10,20の上部に設けられた上側変形部15,25と、アームレストブラケット10,20の下部に設けられた下側変形部16,26と、を有し、上側変形部15,25と下側変形部16,26は、同一直線上に配置されているので、アームレストブラケット10,20は、上側変形部15,25と下側変形部16,26が配置された箇所の周囲で変形しやすくなる。
【0068】
また、第二補強部14,24は、上側変形部15,25と下側変形部16,26との間に設けられているので、上側変形部15,25と第二補強部14,24と下側変形部16,26が上下に並ぶことになり、アームレストブラケット10,20の上部と下部が更に変形しやすくなる。また、アームレストブラケット10,20の変形を上下方向においてチューニングしやすくなる。
【0069】
また、アームレストブラケット10,20は、アームレストフレーム7の幅方向一端部を保持する第一ブラケット10と、アームレストフレーム7の幅方向他端部を保持する第二ブラケット20と、を有し、第一ブラケット10に設けられた変形部15,16と、第二ブラケット20に設けられた変形部25,26は、シート前後方向において異なる位置に配置されているので、第一ブラケット10と第二ブラケット20で、変形量が異なるものとなるように調整を行うことができ、シートバックフレーム6に対して所定の荷重が加わってアームレスト5が移動する場合の移動量を幅方向においてチューニングしやすくなる。
【符号の説明】
【0070】
1 乗物用シート
2 シートクッション
3 シートバック
3a 凹部
4 ヘッドレスト
5 アームレスト
6 シートバックフレーム
6a バックサイドフレーム
6b アッパーフレーム
6c ロアフレーム
6d センターフレーム
6e 受圧部材
7 アームレストフレーム
7a サイドフレーム
7b アッパーフレーム
7c 受圧部材
10 第一ブラケット
11 回動軸穴
12 規制部(規制穴)
13 第一補強部(フランジ)
14 第二補強部
14a 切り起こし部
15 上側変形部(変形部)
16 下側変形部(変形部)
20 第二ブラケット
21 回動軸穴
22 規制部(規制穴)
23 第一補強部(フランジ)
24 第二補強部
25 上側変形部(変形部)
26 下側変形部(変形部)
30 回動軸
31 ストッパー部材
32 連結部
図1
図2
図3
図4
図5