(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145028
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電動配膳車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/00 20060101AFI20241004BHJP
A47B 31/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B62B3/00 G
B62B3/00 D
A47B31/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057250
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹也
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA11
3D050BB11
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG03
(57)【要約】
【課題】障害物との衝突を抑制可能な電動配膳車を実現する。
【解決手段】電動配膳車10は、配膳用の貯蔵物を収容する貯蔵庫本体14と、貯蔵庫本体14の下方に設けられ、電動駆動される駆動輪16Aと、駆動輪16Aを操作するためのハンドル21であって、ハンドル軸22周りに回動するハンドル21と、制御部28と、を備え、制御部28は、駆動輪16Aの目標進行速度をハンドル21の回動角度の二乗に比例するように制御する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配膳用の貯蔵物を収容する貯蔵庫本体と、
前記貯蔵庫本体の下方に設けられ、電動駆動される駆動輪と、
前記駆動輪を操作するためのハンドルであって、ハンドル軸周りに回動するハンドルと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記駆動輪の目標進行速度を前記ハンドルの回動角度の二乗に比例するように制御する電動配膳車。
【請求項2】
前記駆動輪は、前進方向及び後退方向に進むように回転可能に設けられ、
前記ハンドルは、前記貯蔵庫本体の前記前進方向の端部に設けられており、
前記駆動輪は、前記ハンドルが初期位置から前記ハンドル軸周りに正方向に回動するとき、前記前進方向に進む一方、前記ハンドルが初期位置から前記ハンドル軸周りに逆方向に回動するとき、前記後退方向に進むものとされ、
前記制御部は、前記ハンドルが前記逆方向に回動する場合に、前記駆動輪の前記目標進行速度が前記ハンドルの前記回動角度の二乗に比例するように制御する請求項1に記載の電動配膳車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電動配膳車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院等で使用される電動配膳車において、特に大型で重量の大きいものは補助電動機能を有することが知られており、その一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の配膳車は、電動式の駆動輪を備えており、ハンドル操作に応じて駆動輪のモータの回転方向及び速度が制御される。より詳しくは、駆動輪は、ハンドルの前方、又は後方への回転角度の大きさに比例した速度で前進、又は後進駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動配膳車は、大型で高さが大きいことが一般的であり、使用者の視界が車両本体によって遮られることがある。これにより、使用者は移動方向に存在する障害物を視認できず、電動配膳車を誤って障害物に衝突させてしまう懸念がある。
【0005】
本願明細書に記載の技術は上記のような実情に基づいて完成されたものであって、障害物との衝突を抑制可能な電動配膳車を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願明細書に記載の技術に関わる電動配膳車は、配膳用の貯蔵物を収容する貯蔵庫本体と、前記貯蔵庫本体の下方に設けられ、電動駆動される駆動輪と、前記駆動輪を操作するためのハンドルであって、ハンドル軸周りに回動するハンドルと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記駆動輪の目標進行速度を前記ハンドルの回動角度の二乗に比例するように制御する。
【0007】
また、前記駆動輪は、前進方向及び後退方向に進むように回転可能に設けられ、前記ハンドルは、前記貯蔵庫本体の前記前進方向の端部に設けられており、前記駆動輪は、前記ハンドルが初期位置から前記ハンドル軸周りに正方向に回動するとき、前記前進方向に進む一方、前記ハンドルが初期位置から前記ハンドル軸周りに逆方向に回動するとき、前記後退方向に進むものとされ、前記制御部は、前記ハンドルが前記逆方向に回動する場合に、前記駆動輪の前記目標進行速度が前記ハンドルの前記回動角度の二乗に比例するように制御してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本願明細書に記載の技術によれば、障害物との衝突を抑制可能な電動配膳車を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】制御ボックス内を露出させた状態における
図2の要部拡大図
【
図5】制御ボックス内の前後用検知機構を拡大した斜視図
【
図6】ハンドルの回動角度とフォトセンサとの関係を示す図
【
図7】前進方向の移動についてハンドルの回動角度と駆動輪の目標進行速度との関係を示すグラフ
【
図8】後退方向の移動についてハンドルの回動角度と駆動輪の目標進行速度との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
実施形態1に係る電動配膳車10について
図1から
図8を参照して説明する。なお、一部の図に示した符号F、B、L、R、U、Dはそれぞれ、電動配膳車10の前後方向における前方、後方、正面から見たときの幅方向(左右方向)における左方、右方、鉛直方向(上下方向)の上方、下方を示している。
【0011】
電動配膳車10は、
図1及び
図2に示すように、全体として直方体状をなしており、調理した配膳用の食品(貯蔵物の一例)を収容して運搬するために用いられる。電動配膳車10はおおまかには、貯蔵物を収容する貯蔵庫本体14と、貯蔵庫本体14の開口を開閉する扉13と、貯蔵庫本体14の上方に配置される機械室15と、貯蔵庫本体14の前面下部、及び後面下部に取り付けられるハンドル21と、ハンドル21の回動方向及び回動角度を検知するハンドル検知機構30等を収容する制御ボックス20と、を備える。
【0012】
ハンドル21、及び制御ボックス20は、貯蔵庫本体14の前面(前進方向の端部の一例)及び後面(後退方向の端部の一例)にそれぞれ1つずつ設けられている。使用者は、前面又は後面のいずれかのハンドル21を操作することで、電動配膳車10を移動できるが、本実施形態では前面のハンドル21の操作によって電動配膳車10を前方(前進方向の一例)または後方(後退方向の一例)に移動させる場合について例示する。
【0013】
貯蔵庫本体14は断熱箱体であって、
図1に示すように、その内部は2つの断熱壁14Aによって前後方向に3つの部屋に分割されている。また3つの部屋はそれぞれ、仕切壁により前後2つに仕切られており、合計6室が形成されている。貯蔵庫本体14内の6室は、後方から順に温蔵室11A、冷蔵室12A、温蔵室11B、冷蔵室12B、温蔵室11C、及び冷蔵室12Cとなっている。温蔵室11A、11B、11Cは、暖気の供給を受けて食品を温蔵し、冷蔵室12A、12B、12Cは、冷気の供給を受けて食品を冷蔵する。また隣り合う温蔵室11A、11B、11Cと冷蔵室12A、12B、12Cとの組に対してそれぞれ、観音開き式の扉13が1対ずつ取り付けられている。
【0014】
温蔵室11A、11B、11C内と冷蔵室12A,12B、12C内には、複数段にわたって棚が取り付けられている。温食と冷食とが区分けして載置されたトレイが、仕切壁を貫通しつつ棚に載せられると、一つのトレイ上の温食が温蔵室11A、11B、11Cに、冷食が冷蔵室11A、11B、11Cにそれぞれ収容されて、温蔵及び冷蔵されるようになっている。
【0015】
機械室15には、温蔵室11A、11B、11Cを加熱する加熱装置、冷蔵室12A、12B、12Cを冷却する冷却装置、並びに加熱装置及び冷却装置を制御する第1制御部が収容されている。加熱装置は、例えばコードヒータを加熱する駆動部、及び加熱用ファンによって構成される。コードヒータは、温蔵室11A、11B、11Cの側面に張られた加熱用パネルに配線されている。加熱用ファンを駆動すると、加熱用パネルの通気口から暖気が温蔵室11A、11B、11Cに吹き出されて温蔵室11A、11B、11C内が加熱される。冷却装置は、例えば既知の冷凍サイクルを構成する機器類、及び冷却用ファンによって構成される。冷却装置を駆動すると、冷気が冷蔵室12A、12B、12Cに吹き出されて冷蔵室12A、12B、12C内が冷却される。
【0016】
車輪16は、
図1及び
図2に示すように、貯蔵庫本体14が載置される台座19の底面に取り付けられている。車輪16は、モータ18によって駆動される電動式の駆動輪16Aと、動力駆動されない自在輪16B、16Cと、からなる。自在輪16B、16Cは、台座19の底面において前側と後側にそれぞれ設けられている。駆動輪16Aは、自在輪16B、16Cの間であって後方寄りの位置に設けられている。各車輪16A、16B、16Cは、左右一対ずつ設けられている。
【0017】
電動配膳車10は、バッテリを備え、充電されたバッテリから電力が供給されることで、モータ18が回転駆動する。モータ18は、
図2に示すように、2つの駆動輪16Aの間に取り付けられ、各駆動輪16Aに対して1つずつ設けられている。以下、左側、及び右側の駆動輪16Aをそれぞれ左駆動輪16A1、右駆動輪16A2と呼ぶことがある。また左駆動輪16A1用、及び右駆動輪16A2用のモータ18をそれぞれ、左モータ18A1、及び右モータ18A2と呼ぶことがある。
【0018】
制御ボックス20は、
図2に示すように、上部の傾斜面上に操作部23及び表示部24が配置されている。操作部23は、モータ18へのバッテリからの電源供給をオンオフするためのキースイッチ等を含む。表示部24は、バッテリの電池残量を表示するランプ等を含む。操作部23及び表示部24は、タッチパネル機能を有する表示装置として一体的に設けられていても構わない。
【0019】
ハンドル21は、制御ボックス20の上部を取り囲むように逆U字状をなし、ハンドル軸22を中心に前後方向について時計回り方向(
図1の矢線A方向)、又は反時計回り(
図1の矢線B方向)に回動可能に設けられている。ハンドル軸22は直線状をなし、ハンドル21と接続される左右両端部以外は制御ボックス20内に収容されている。またハンドル21及びハンドル軸22は、回動軸25(
図4)を中心に左右方向について時計回り方向(
図2の矢線R方向)、又は反時計回り(
図2の矢線L方向)に回動可能とされる。回動軸25は、制御ボックス20内に前後方向に延在している。
【0020】
制御ボックス20の内部には、
図3に示すように、ハンドル21の操作を検知するためのハンドル検知機構30、並びにハンドル検知機構30の検出結果に基づいて左モータ18A1、及び右モータ18A2を個別に制御する第2制御部28(具体的にはマイコン)が少なくとも収容されている。ハンドル検知機構30は、ハンドル21の前後方向についての回動操作を検知する前後用検知機構30Aと、ハンドル21の左右方向についての回動操作を検知する左右用検知機構30Bと、を含む。前後用検知機構30Aは、ハンドル21の前後方向の回動操作に対して、回動方向が前方または後方のいずれであるかであるかと、その回動角度と、を検知する。左右用検知機構30Bは、ハンドル21の左右方向の回動操作に対して、左右用検知機構30Bにおいて左方または右方のいずれの回動方向であるかと、その回動角度と、を検知する。
【0021】
第2制御部28は、両検知機構30A、30Bの検知結果に基づいてハンドル21の回動方向及び回動角度を算出し、算出結果に対応した駆動信号を左モータ18A1、及び右モータ18A2に個別に送信する。これにより、左駆動輪16A1、及び右駆動輪16A2の回転方向と回転速度とが個別に制御される。
【0022】
前後用検知機構30A、及び左右用検知機構30Bはそれぞれ、
図4に示すように、ハンドル軸22の下方において回動軸25の左方、及び右方に設けられている。前後用検知機構30A及び左右用検知機構30Bの基本的な構造は同じであるため、以下では、前後用検知機構30Aについて詳しく説明する。また、ハンドル21の回動方向について前方を正方向(
図1の矢線Aで示す時計回り方向)、後方を逆方向(
図1の矢線Bで示す反時計回り方向)とする。
【0023】
前後用検知機構30Aは、
図4及び
図5に示すように、カム部材31Aと、被検知板32Aと、フォトセンサ34A(検出器の一例)と、ポテンショメータ36A(可変抵抗器の一例)と、を有する。カム部材31Aは、複数のシャフトからなり、一端部側がハンドル軸22と接続され、他端部側が被検知板32A及びポテンショメータ36Aと接続されている。カム部材31Aは、ハンドル軸22の回動を被検知板32A及びポテンショメータ36Aに伝達する。
【0024】
被検知板32Aは、
図5に示すように、円の外周部の一部が直線的に切除された欠円形状をなし、カム部材31Aに対してハンドル軸22と反対側に固定されている。被検知板32Aは、一端が外周縁に開口した直線状のスリット32A1を有する。被検知板32Aは、ハンドル21の前後方向の回動に伴いハンドル軸22が回動すると連動して回動する。これにより、スリット32A1の位置が変化するようになっている。
【0025】
フォトセンサ34Aは、
図5に示すように、二股状の検知体を有し、検知体が被検知板32Aのスリット32A1の回動域を挟むように配設されている。フォトセンサ34Aの二股状の検知体には、対向面に一対の発光素子と受光素子とが設けられており、フォトセンサ34Aは、スリット32A1の有無による受光素子への入光状態の変化に基づきオンオフする。フォトセンサ34Aは、例えばオープンコレクタ方式とされ、ハンドル21がニュートラル位置の範囲にある場合、第2制御部28にオン信号を出力し、非ニュートラル位置の範囲にある場合、第2制御部28にオフ信号を出力する。
【0026】
ニュートラル位置の範囲は、
図6に示すように、正方向(
図1の矢線Aで示す時計回り方向)については、ハンドル21に回動力が付与されていない初期位置θ0から前進ニュートラル閾値角度θ1までの範囲とされる。また逆方向(
図1の矢線Bで示す反時計回り方向)については、初期位置θ0から後退ニュートラル閾値角度θ2までの範囲とされる。また、非ニュートラル位置の範囲は、正方向については、前進ニュートラル閾値角度θ1からハンドル21の前進操作限界角度θ3までの範囲とされ、後退方向については、後退ニュートラル閾値角度θ2からハンドル21の後退操作限界角度θ4までの範囲とされる。本実施形態において、前進操作限界角度θ3は約68.5°であり、後退操作限界角度θ4は約9°となるように、ハンドル21の回動可能な範囲が機械的に規定されている。
【0027】
ポテンショメータ36Aは、
図5に示すように、カム部材31Aのハンドル軸22と反対側の端部に設けられている。ポテンショメータ36Aは、内部に抵抗素子を有し、抵抗素子上をカム部材31Aの接触子が移動することで抵抗値(出力電圧)が変動する。ポテンショメータ36Aは、ハンドル21の回動角度に基づき、0から5Vの範囲のアナログ信号を第2制御部28に出力する。
【0028】
上記した構成によれば、使用者は、電動配膳車10を前進方向に移動させたい場合、ハンドル21を引いて正方向に回動させると、前後用検知機構30Aのフォトセンサ34Aによって回動方向が正方向であることが検知されると共に、ポテンショメータ36Aによってその回動角度が検知される。第2制御部28は、これらの検知結果に基づき、左モータ18A1(左駆動輪16A1)、及び右モータ18A2(右駆動輪16A2)を前進方向に進むように正方向の通電状態にすると共に、回動角度に応じた回転数となるように電圧を付与する。
【0029】
より詳しくは、第2制御部28は、
図7に示すように、左駆動輪16A1及び右駆動輪16A2の目標進行速度がハンドル21の回動角度に比例するように、左モータ18A1及び右モータ18A2に電圧を付与して、これらの回転数を制御する。このようにすれば、電動配膳車10は、ハンドル21の回動角度にほぼ比例した速度で前進方向に進む。なお、実際の電動配膳車10の進行速度は、車輪16が接触する床面の形状及び材質によって多少の変動はあるものの、目標進行速度に倣い、ハンドル21の回動角度にほぼ比例した速度となる。
【0030】
また使用者は、電動配膳車10を前進方向に移動させつつ左方向に旋回させたい場合(使用者の視線が前進方向を向いている場合の右旋回に対応)、ハンドル21を正方向に回動させつつ、左方向(
図2の矢線Lで示す反時計回り方向)にも回動させる。これにより、上記した制御に加えて、第2制御部28は、左右用検知機構30Bの検知結果に基づき、左方向の回動角度に応じた分だけ右モータ18A2(右駆動輪16A2)の回転速度が、左モータ18A1(左駆動輪16A1)の回転速度より大きくなるように、これらに電圧を付与する。その結果、右モータ18A2(右駆動輪16A2)の回転速度は、左モータ18A1(左駆動輪16A1)の回転速度に比べてハンドル21の回動角度に応じた差分だけ大きくなり、電動配膳車10の前進時に左方向の旋回が助勢される。また、電動配膳車10を前進方向に移動させつつ右方向に旋回させる場合(使用者の視線が前進方向を向いている場合の左旋回に対応)、使用者がハンドル21を正方向に回動させつつ、右方向(
図2の矢線Rで示す時計回り方向)にも回動させると、第2制御部28は、上記した制御を左右逆に行う。これにより、電動配膳車10の前進時に左方向への旋回が助勢される。
【0031】
一方、使用者は、電動配膳車10を後退方向に移動させたい場合、ハンドル21を押して逆方向に回動させると、前後用検知機構30Aのフォトセンサ34Aによって回動方向が逆方向であることが検知されると共に、ポテンショメータ36Aによってその回動角度が検知される。第2制御部28は、これらの検知結果に基づき、左モータ18A1(左駆動輪16A1)、及び右モータ18A2(右駆動輪16A2)を後退方向に進むように逆方向の通電状態にすると共に、回動角度に応じた電圧を付与する。
【0032】
より詳しくは、第2制御部28は、
図8に示すように、左駆動輪16A1及び右駆動輪16A2の目標進行速度がハンドル21の回動角度の二乗に比例するように、左モータ18A1及び右モータ18A2に電圧を付与して、これらの回転数を制御する。このようにすれば、電動配膳車10は、ハンドル21の回動角度の二乗にほぼ比例した速度で後退方向に進む。なお、実際の電動配膳車10の進行速度は、車輪16が接触する床面の形状及び材質によって多少の変動はあるものの、目標進行速度に倣い、ハンドル21の回動角度にほぼ比例した速度となる。
【0033】
また使用者は、電動配膳車10を後退方向に移動させつつ左方向に旋回させたい場合、ハンドル21を押して逆方向に回動させることに加えて、左方向(
図2の矢線Lで示す反時計回り方向)にも回動させる。これにより、上記した制御に加えて、第2制御部28は、左右用検知機構30Bの検知結果に基づき、回動角度に応じた差分だけ右モータ18A2(右駆動輪16A2)の回転速度が、左モータ18A1(左駆動輪16A1)の回転速度より大きくなるように、これらに電圧を付与する。その結果、右モータ18A2(右駆動輪16A2)の回転速度は左モータ18A1(左駆動輪16A1)の回転速度に比べてハンドル21の回動角度に応じた差分だけ大きくなり、電動配膳車10の後退時に左方向への旋回が助勢される。また、電動配膳車10を後退させつつ右方向に旋回させる場合、第2制御部28は、上記した制御を左右逆に行う。これにより、電動配膳車10の後退時に左方向への旋回が助勢される。
【0034】
次に、本実施形態に係る電動配膳車10の作用効果を説明する。上記したように第2制御部28が駆動輪16Aの目標進行速度を制御することで、使用者がハンドル21を逆方向に回動して電動配膳車10を停止状態から後退方向に移動させる場合、電動配膳車10の進行速度は、ハンドル21の回動角度の二乗にほぼ比例した速度となる。これにより、電動配膳車10が後退方向に進む際の初動の進行速度は、仮に駆動輪16Aの目標進行速度をハンドル21の回動角度に比例するように制御する場合(
図7の前進方向に進む場合と同様に制御する場合)と比べて、低下するようになる。後退時の電動配膳車10の初動の進行速度を低下させることで、ハンドル21に対する電動配膳車10の反応を鈍化させることができる。その結果、電動配膳車10が動き始めてから障害物に達するまでの時間をのばすことができ、使用者が障害物を視認できずに、電動配膳車10が衝突してしまう事態を抑制しやすくなる。
【0035】
一方、ハンドル21の回動角度が大きい場合には、駆動輪16Aの目標進行速度はハンドル21の回動角度に比例するように制御する場合(
図7の前進方向に進む場合と同様に制御する場合)と比べて低下せずに済む。これにより、障害物がないことが確実な場合には、ハンドル21の回動角度を大きくすれば、電動配膳車10を素早く移動することができる。
【0036】
なお本実施形態では、前進方向については、使用者が障害物を容易に視認できるため、駆動輪16Aの目標進行速度をハンドル21の回動角度に比例するように制御するが、前進方向についても駆動輪16Aの目標進行速度をハンドル21の回動角度の二乗に比例するように制御しても構わない。
【0037】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0038】
(1)ハンドル検知機構30の構成は図示に限られず、ハンドル21の回動方向及び回動角度は、他の検知手段によって検出される仕組みであっても構わない。例えば、フォトセンサ34Aでなくマイクロスイッチを用いる構成としてもよい。
【0039】
(2)貯蔵庫本体14の構成(温蔵室11A、11B、11C、及び冷蔵室12A、12B、12Cの数や配置)は限定されず、例えば温蔵室11A、11B、11Cのみ、または冷蔵室12A、12B、12Cのみが形成されていても構わない。加熱装置、及び冷却装置は、必要とされる温冷機能に応じて適宜備えられるものとされる。
【0040】
(3)本技術は、電動配膳車10以外の電動搬送車に対しても広く適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10:電動配膳車、14:貯蔵庫本体、16A:駆動輪、18:モータ、21:ハンドル、22:ハンドル軸、28:第2制御部(制御部)