IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウシオ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図1
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図2A
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図2B
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図3
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図4
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図5
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図6
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図7A
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図7B
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図8
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図9
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図10
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図11
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図12
  • 特開-植物育成装置および植物育成方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145041
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】植物育成装置および植物育成方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20241004BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20241004BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
A01G7/00 601Z
A01G31/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057271
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】松田 僚三
(72)【発明者】
【氏名】阿部 亮二
(72)【発明者】
【氏名】大和田 樹志
(72)【発明者】
【氏名】大原 明
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩太
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AA03
2B022AB20
2B022DA01
2B022DA15
2B022DA17
2B022DA19
2B022DA20
2B314PD52
2B314PD57
2B314PD58
2B314PD59
(57)【要約】
【課題】コストを抑えつつ、効率的に植物を育成することができる植物育成装置および植物育成方法を提供する。
【解決手段】植物育成装置100は、人工光により植物を育成する。植物育成装置100は、植物200を取り囲む閉鎖空間を形成する筐体40と、植物200に人工光を照射する人工光源10と、を備える。筐体40は、人工光に対して光透過性を有する。人工光源10は、筐体40外に配置され、筐体40を介して人工光を植物200に照射する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工光により植物を育成する植物育成装置であって、
前記植物を取り囲む閉鎖空間を形成する筐体と、
前記植物に前記人工光を照射する人工光源と、を備え、
前記筐体は、前記人工光に対して光透過性を有し、
前記人工光源は、前記筐体外に配置され、前記筐体を介して前記人工光を前記植物に照射する
ことを特徴とする植物育成装置。
【請求項2】
前記人工光源は、発光面を前記筐体の側面に対向させて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の植物育成装置。
【請求項3】
前記筐体は、特定方向に配列された前記植物を列ごとに取り囲んでいることを特徴とする請求項1に記載の植物育成装置。
【請求項4】
前記筐体に設けられ、前記筐体内に空気を供給する給気口と、
前記筐体に設けられ、前記筐体内の空気を排出する排気口と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の植物育成装置。
【請求項5】
前記給気口は、前記筐体の上部および下部のうち一方に設けられ、
前記排気口は、前記筐体の上部および下部のうち他方に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の植物育成装置。
【請求項6】
空気を送風し、前記筐体内に空気の流れを形成する送風部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の植物育成装置。
【請求項7】
前記送風部は、ファンを備えることを特徴とする請求項6に記載の植物育成装置。
【請求項8】
前記送風部は、前記筐体内の温度、湿度、風量およびCO濃度の少なくとも1つを制御する空調制御部を備えることを特徴とする請求項6に記載の植物育成装置。
【請求項9】
前記筐体外に配置され、前記筐体内の前記植物に供給する液肥を収容する液肥収容部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の植物育成装置。
【請求項10】
前記液肥収容部に収容された液肥の温度を検出するセンサと、
前記センサによる検出値に基づいて、前記液肥収容部に収容された液肥の温度を制御する液肥制御部と、をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の植物育成装置。
【請求項11】
前記筐体および前記液肥収容部をそれぞれ複数備え、
前記液肥収容部は、複数の前記筐体のそれぞれに対応して前記筐体の底面の一部に対向して配置され、
前記筐体の底面の残りの一部に、前記筐体内に空気を供給する給気口および前記筐体内の空気を排出する排気口のいずれか一方が設けられ、
前記筐体の上面に、前記給気口および前記排気口の他方が設けられる
ことを特徴とする請求項9に記載の植物育成装置。
【請求項12】
前記人工光源は、発光素子と、前記発光素子が配置された支持基板と、を備え、
前記液肥収容部は、前記液肥を収容する収容容器を備え、
前記支持基板と前記収容容器に収容された前記液肥とに接触し、前記人工光源の熱を前記液肥に放熱する放熱部をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の植物育成装置。
【請求項13】
前記放熱部は、前記支持基板の端部であり、前記液肥に浸漬されていることを特徴とする請求項12に記載の植物育成装置。
【請求項14】
前記放熱部は、前記支持基板の一部が接触された前記収容容器であることを特徴とする請求項12に記載の植物育成装置。
【請求項15】
前記収容容器は、金属により構成されていることを特徴とする請求項14に記載の植物育成装置。
【請求項16】
前記放熱部は、前記収容容器内に配置され、前記支持基板の少なくとも一部と前記液肥とに接触する放熱板であることを特徴とする請求項12に記載の植物育成装置。
【請求項17】
前記液肥収容部により収容されている前記液肥を冷却する冷却部をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の植物育成装置。
【請求項18】
人工光により植物を育成する植物育成方法であって、
前記人工光に対して光透過性を有する筐体によって前記植物を取り囲む閉鎖空間を形成し、前記筐体の外から、前記筐体を介して前記人工光を前記植物に照射する
ことを特徴とする植物育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工光により植物を育成する植物育成装置および植物育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に人口増の傾向にあり、2050年までに世界人口は90億人に達すると予測されている。そのため、将来は食料不足の問題の懸念がある。
このような食料不足への対応の一つとして、農作物を増産し、一年中安定に収穫できるようにすることが期待されている。特に、動物性たんぱく質の代替としての植物性たんぱく質の確保は重要な課題である。
【0003】
農作物の増産および安定収穫を実現するための方策として、施設園芸農業や植物工場が検討されてきている。更に植物工場においては、従来の農業のように広大な土地が確保できなくても比較的狭い空間で農作物を安定量生産することが可能な、垂直農業の採用も検討されている。
植物工場においては、人工光源から農作物に照射される光合成のための光の強度や、植物育成空間における温度、湿度、二酸化炭素(CO)濃度、風速といった環境条件、植物成長のための肥料成分といった各パラメータを制御することが可能である。そのため、農作物の周年生産を行うことができ、農作物の生産性を飛躍的に高めることが可能である。
例えば特許文献1は、太陽光を用いずにLED光などの人工光を照射して植物を栽培する閉鎖型植物工場を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5330162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の閉鎖型植物工場では、植物体を生育させるための植物栽培容器棚が配設された部屋には、植物体に光を照射する照明棚が配設されており、照明棚も含めた部屋全体の温度、湿度、CO濃度を制御している。そのため、LED等の光源の徐熱をしながら、植物にとって適した環境となるように部屋の空調を制御する必要があり、空調制御に係るランニングコストがかかる。
そこで、本発明は、コストを抑えつつ、効率的に植物を育成することができる植物育成装置および植物育成方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る植物育成装置の一態様は、人工光により植物を育成する植物育成装置であって、前記植物を取り囲む閉鎖空間を形成する筐体と、前記植物に前記人工光を照射する人工光源と、を備え、前記筐体は、前記人工光に対して光透過性を有し、前記人工光源は、前記筐体外に配置され、前記筐体を介して前記人工光を前記植物に照射する。
このように、筐体によって植物の栽培空間と光源(人工光源)の放熱空間とを分離するので、植物の栽培空間が光源からの熱の影響を受けにくい構成とすることができる。したがって、栽培空間を植物にとって適した環境にする場合に、光源の徐熱をしながら空調制御するなどの必要がなく、植物に特化した環境制御が可能となる。したがって、コストを抑えつつ、効率的に植物を育成することができる。
【0007】
また、上記の植物育成装置において、前記人工光源は、発光面を前記筐体の側面に対向させて配置されてよい。
この場合、植物の側方から光(人工光)を照射することができ、植物の上部のみならず植物の下部に位置する葉に対しても適切な光量の光を照射することができる。そのため、効率良く植物を育成することができる。
【0008】
さらに、上記の植物育成装置において、前記筐体は、特定方向に配列された前記植物を列ごとに取り囲んでよい。
この場合、列ごとに植物の栽培空間の環境制御を行うことができる。また、各列の間に光源を設置することも可能となるため、植物の光合成効率を適切に向上させることができる。
【0009】
また、上記の植物育成装置は、前記筐体に設けられ、前記筐体内に空気を供給する給気口と、前記筐体に設けられ、前記筐体内の空気を排出する排気口と、をさらに備えてよい。
この場合、筐体内に空気を流すことができ、植物の光合成効率を向上させることができる。
【0010】
さらに、上記の植物育成装置において、前記給気口は、前記筐体の上部および下部のうち一方に設けられ、前記排気口は、前記筐体の上部および下部のうち他方に設けられてよい。
この場合、筐体内において上下方向(植物の成長方向)に空気を流すことができる。植物が密集していたり背丈が高かったりする場合、水平方向には空気が流れにくく、上流側と下流側とで植物の成長に差が出てしまうおそれがあるが、空気の流れの方向を上下方向にすることで、筐体内に均一に空気の流れを作ることができ、植物体ごとの成長に差を抑制することができる。
【0011】
また、上記の植物育成装置は、空気を送風し、前記筐体内に空気の流れを形成する送風部をさらに備えてよい。上記の植物育成装置において、前記送風部は、ファンを備えてよい。
この場合、筐体内に積極的に空気を流すことができる。
【0012】
また、上記の植物育成装置において、前記送風部は、前記筐体内の温度、湿度、風量およびCO濃度の少なくとも1つを制御する空調制御部を備えてよい。
この場合、筐体内を植物にとって適した環境に調整することができる。また、筐体によって植物の栽培空間と光源の放熱空間とが分離されており、光源の徐熱をしながら空調制御する必要がないため、空調に係るコストを低減させることができる。
【0013】
さらに、上記の植物育成装置は、前記筐体外に配置され、前記筐体内の前記植物に供給する液肥を収容する液肥収容部をさらに備えてよい。
この場合、植物の栽培空間と液肥空間とを分離することができるので、液肥による栽培空間の湿度への影響を回避することができる。そのため、栽培空間を植物にとって適した環境する場合には、植物に特化した環境制御が可能となる。
【0014】
また、上記の植物育成装置は、前記液肥収容部に収容された液肥の温度を検出するセンサと、前記センサによる検出値に基づいて、前記液肥収容部に収容された液肥の温度を制御する液肥制御部と、をさらに備えてよい。
この場合、植物の育成に適した温度の液肥を植物に供給することができる。また、植物の栽培空間と液肥空間とが分離されているため、液肥に特化した温度制御を行うことができる。
【0015】
また、上記の植物育成装置は、前記筐体および前記液肥収容部をそれぞれ複数備え、前記液肥収容部は、複数の前記筐体のそれぞれに対応して前記筐体の底面の一部に対向して配置され、前記筐体の底面の残りの一部に、前記筐体内に空気を供給する給気口および前記筐体内の空気を排出する排気口のいずれか一方が設けられ、前記筐体の上面に、前記給気口および前記排気口の他方が設けられてよい。
このように、液肥収容部を筐体ごとにそれぞれ独立して配置することで、筐体の底面に給気口または排気口を設ける領域を確保することができる。筐体の側面からの空気の出入りをなくすことができるため、複数の筐体を水平方向にそれぞれ近接させて配置することができ、省スペースでの大量栽培を実現することができる。
【0016】
さらにまた、上記の植物育成装置において、前記人工光源は、発光素子と、前記発光素子が配置された支持基板と、を備え、前記液肥収容部は、前記液肥を収容する収容容器を備え、前記支持基板と前記収容容器に収容された前記液肥とに接触し、前記人工光源の熱を前記液肥に放熱する放熱部をさらに備えてよい。
この場合、液肥を利用して光源の熱を放熱することができるので、光源からの空間への放熱量を低減させることができる。そのため、光源からの熱が植物の栽培空間へ与える影響をより適切に低減させることができる。
【0017】
また、上記の植物育成装置において、前記放熱部は、前記支持基板の端部であり、前記液肥に浸漬されていてよい。
この場合、光源からの熱を、直接、液肥に逃がすことができる。
【0018】
また、上記の植物育成装置において、前記放熱部は、前記支持基板の一部が接触された前記収容容器であってよい。
この場合、光源からの熱を、液肥の収容容器を介して液肥に逃がすことができる。また、支持基板を液肥に浸漬させなくてもよいため、支持基板が液肥によって腐食されたりショートされたりするおそれもない。
【0019】
さらに、上記の植物育成装置において、前記収容容器は、金属により構成されていてよい。
この場合、光源からの熱を、液肥の収容容器が効率的に液肥に伝達ことができる。
【0020】
また、上記の植物育成装置において、前記放熱部は、前記収容容器内に配置され、前記支持基板の少なくとも一部と前記液肥とに接触する放熱板であってよい。
この場合、例えば収容容器が熱伝導率の低い材料から構成される場合であっても、光源からの熱を、放熱板を介して液肥に逃がすことができる。また、支持基板を液肥に浸漬させなくてもよいため、支持基板が液肥によって腐食されたりショートされたりするおそれもない。
【0021】
さらに、上記の植物育成装置は、前記液肥収容部により収容されている前記液肥を冷却する冷却部をさらに備えてよい。
この場合、光源からの熱を吸収した液肥を適切に冷却することができ、液肥の温度上昇を抑えることができる。
【0022】
また、本発明に係る植物育成方法の一態様は、人工光により植物を育成する植物育成方法であって、前記人工光に対して光透過性を有する筐体によって前記植物を取り囲む閉鎖空間を形成し、前記筐体の外から、前記筐体を介して前記人工光を前記植物に照射する。
このように、筐体によって植物の栽培空間と光源(人工光源)の放熱空間とを分離するので、植物の栽培空間が光源からの熱の影響を受けにくくすることができる。したがって、栽培空間を植物にとって適した環境にする場合に、光源の徐熱をしながら空調制御するなどの必要がなく、植物に特化した環境制御が可能となる。したがって、コストを抑えつつ、効率的に植物を育成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、コストを抑えつつ、効率的に植物を育成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態における植物育成装置の概略構成例を示す模式図である。
図2A】人工光源の構成例を示す側面図である。
図2B図2Aの人工光源のA方向矢視図である。
図3】防熱部材を備える人工光源の構成例である。
図4】人工光源の別の構成例である。
図5】筐体の一例を示す側面図である。
図6】従来の上方照射の栽培例を示す側面図である。
図7A】従来の側方照射の栽培例を示す上面図である。
図7B】従来の側方照射の栽培例を示す側面図である。
図8】液肥収容部の構成例を示す図である。
図9】筐体の多段配置例である。
図10】配管の接続例である
図11】液肥を利用した光源の放熱例を示す図である。
図12】液肥を利用した光源の放熱例の別の例を示す図である。
図13】液肥を利用した光源の放熱例の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、人工光により植物を育成する植物育成装置について説明する。本実施形態における植物育成装置は、例えば植物工場内に配置される。
ここで、上記植物は、例えば豆類(未成熟/種実)などの農作物とすることができる。
【0026】
図1は、本実施形態における植物育成装置100の概略構成例を示す模式図である。
植物育成装置100は、例えば植物工場内に配置される。
植物工場内には、不図示の栽培ラックが配置される。当該栽培ラックは、植物200を取り囲む閉鎖空間を形成する筐体40を収納する棚である。植物200は、筐体40内の閉鎖空間を栽培空間として栽培される。なお、栽培ラックは、筐体40を複数収納することができる。
植物200は、栽培パネル50によって支持されている。栽培パネル50は、植物200を保持する板状部材である。栽培パネル50には、植物200を植栽するための1つ以上の貫通孔が設けられている。
【0027】
栽培パネル50の上側は、植物200の茎が伸び、葉が広がるように伸長するための空間であって、植物200の葉や茎の大部分が露出する地上部空間210である。一方、栽培パネル50の下側は、液肥収容部31、植物200の茎の下部および根(主根、側根など)が配置され、根に養液(液肥)32が供給される地下部空間220である。
液肥収容部31は、植物200に供給する液肥32を収容する収容容器であり、液肥32が供給および排出可能に構成されている。液肥収容部31への液肥32の供給および排出は、液肥収容部31に接続された液肥制御部30により行われる。
【0028】
本実施形態における植物育成装置100は、植物200の地上部空間210において、筐体40に取り囲まれた植物200に対して、植物200の側方から人工光を照射する。
具体的には、植物育成装置100は、植物200の光合成等に利用される人工光を放射する光源(人工光源)10を備える。光源10は、植物200の成長方向(図1のZ方向)に対して直交する方向(図1ではY方向)において筐体40を挟んで対向配置されており、植物200の地上部空間210において、植物200の成長方向に対して両側方から人工光を照射する。
【0029】
筐体40は、植物200の地上部空間210において、植物200を取り囲み、閉鎖空間を形成する。なお、筐体40の形状および大きさは特に限定されない。また、筐体40内で栽培される植物200の株の数も特に限定されない。
筐体40は、光源10から放射される人工光に対して光透過性を有する部材により構成されている。例えば筐体40は、人工光を透過するガラス部材、アクリル部材やPET部材等の透明樹脂部材などから構成することができる。
このような構成により、光源10から放射された人工光は、筐体40を透過して植物200の両側方から照射される。
【0030】
なお、植物200が配置される栽培ラックは、固定式であっても可動式であってもよい。栽培ラックが可動式である場合、光源10は、固定されていてもよいし、栽培ラックとともに移動する構成であってもよい。また、植物200が栽培される筐体40は、水平方向(X方向、Y方向)に並べて配置されてよく、また、上下方向(Z方向)に多段に配置されてもよい。
さらに、植物育成装置100は、植物200の上方に配置された光源(人工光源)を備えてもよい。この場合、植物200の上方からも人工光が照射されうる。
【0031】
〔人工光源〕
光源10は、筐体40外において、その発光面が筐体40の側面(図1ではX-Z平面と平行な面)に対向するように配置され、植物200の側方から人工光を照射する。
植物は、成長につれ上下方向に伸長する。光源を植物の上方に設置し、植物の上方から光を照射した場合、光は、まず植物の最上部にある葉に到達する。しかしながら、最上部の葉の内側や当該葉の下側(植物の下部)には、光は到達しづらい。すなわち、光が確実に照射される植物の上部に位置する葉に比べ、当該光照射される葉と重なり合った葉や、当該光照射される葉の下側に配置される葉に到達する光の光量は低下する。そのため、とりわけ背丈の高い植物の場合、内側の葉(茎に近い側の葉)や植物の下側の葉における光合成が行われにくいという問題が生じうる。
【0032】
本実施形態のように、植物200の成長方向(Z方向)に対して側方から人工光を照射する構成とすることで、植物200の上部のみならず植物200の下部に位置する葉に対しても適切な光量の光を照射することができる。
【0033】
光源10は、例えば図2Aに示すように、平板状の支持体(支持基板)11上に複数の発光素子であるLED12が配置された面発光源であってよい。LED12は、主として光が放出されるLEDチップ12aと、不図示の給電装置から供給される電力をLEDチップ12aに給電するためのLED基板12bと、を備える。
これら複数のLED12は、図2B図2AにおけるA方向矢視図を示すように、支持基板11上に格子状に配置することができる。支持基板11は、例えばアクリル板やアルミニウム板などであってよい。
【0034】
光源10においては、LEDチップ12aから光が放出され、LED基板12bからはLEDチップ12aへの電力供給に伴い熱が放熱される。すなわち、光が放出される発光方向13と放熱方向14とは、互いに反対方向となる。そのため、図1に示すように、光源10の熱による筐体40内の空間の加熱はしにくい。なお、光源10の放熱空間は、外気に通じる空間であってよい。
複数のLED12は、互いに波長が異なる光を放出するものであってもよい。また、植物200の育成段階に応じて、適宜異なる波長の光を照射するようにしてもよい。
【0035】
なお、光源10の構成は、図2Aおよび図2Bに示す構成に限定されない。
例えば図3に示すように、支持基板11におけるLED12が配置される面とは反対側の面に、ヒートシンク等の放熱部材15を配置してもよい。
【0036】
また、LED12を支持する支持体は、上記のような平板状に限定されるものではなく、支持体表面が曲面部を有していてもよい。例えば図4に示すように、光源10は、波板状の支持基板11a上に複数のLED12が配置された構成であってもよい。
図4に示すように、波板状の支持基板11aの場合、平板状の支持基板11と比較してLED設置面の表面積が増加するので、LED12をより多く設置することが可能となる。また、LED12からの熱が放熱される面の表面積も増加するので、LED12の数が増加しても、効率良く放熱することが可能となる。
【0037】
また、光源10は、円筒形の発光面を有するランプ光源を複数並列に並べた構成であってもよい。
【0038】
光源10の発光面の大きさおよび形状は、光の被照射面となる筐体40側面の大きさおよび形状と同等であってよい。この場合、光源10は、筐体40の側面の全面に均一または略均一に人工光を照射することができる。
なお、図1に示す植物育成装置100においては、光源10を、植物200を挟んでY方向に対向配置しているが、光源10は、植物200に対して一方の側のみに配置してもよい。
【0039】
〔空調システム〕
本実施形態における植物育成装置100は、空気を送風し、筐体40内に空気の流れを形成する送風部としての空調システムを備えることができる。
空調システムは、図1に示すように、空調制御部20と、給気配管21と、排気配管22と、を備える。給気配管21および排気配管22は、筐体40に設けられた給気口41および排気口42にそれぞれ接続されている。
空調制御部20は、筐体40内の栽培空間を、植物200の育成に適した状態に調整する。具体的には、空調制御部20は、筐体40内の温度、湿度、風量および二酸化炭素(CO)濃度が植物200の育成に適した状態となるように調整された空気を送出する。
【0040】
空調制御部20によって送り出された空気は、給気配管21を通って筐体40に設けられた給気口41から筐体40内に供給される。給気口41から供給された空気は、筐体40内を通って、筐体40に設けられた排気口42から排気され、排気配管22を通って空調制御部20に戻される。このように、空調システムは、筐体40内に空気を流し、気流循環を行っている。
筐体40内には、筐体40内の温度、湿度、風量および二酸化炭素(CO)濃度をそれぞれ検出する不図示のセンサが設けられていてよい。この場合、空調制御部20は、当該センサの検出値に基づいて、筐体40内の温度、湿度、風量および二酸化炭素(CO)濃度が所定の状態となるように給気配管21に送出する空気の温度、湿度、風量および二酸化炭素(CO)濃度を調整することができる。
【0041】
本実施形態において、熱源となる光源10は、筐体40の外部に配置されており、光源10は筐体40外で放熱する。このように、植物200の栽培空間と光源10の放熱空間とが分離されており、植物200の栽培空間は光源10からの熱の影響を受けにくい。そのため、空調制御部20は、光源10の徐熱をしながら筐体40内の空調を制御する必要がなく、その分の電力消費コストを削減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、給気口41は筐体40における下部に設けられ、排気口42は筐体40における上部に設けられている。具体的には、給気口41は筐体40の底面に設けられ、排気口42は筐体40の上面に設けられている。
そのため、給気口41から供給された空気は、筐体40内を下から上へ向かって流れて排気される。
【0043】
ここで、給気口41および排気口42は、X方向に所定の長さ(例えば筐体40と同等の長さ)を有する開口であってよい。もしくは、給気口41および排気口42は、X方向に所定の間隔で離隔して形成された複数の開口であってよい。このような構成により、例えば図5に示すように、筐体40がX方向に配列された複数株(ここでは6株)の植物200を取り囲んでおり、筐体40がX方向に長い直方体形状である場合でも、筐体40内に均一に空気を流すことができる。
なお、給気口41および排気口42の形状、大きさ、数および形成位置は、適宜設定することが可能である。例えば、給気口41は、図1において、液肥収容部31を挟んでY方向の両側に形成されていてもよい。
【0044】
また、図5に示すように、空調システムは、給気ファン23および排気ファン24を備えてよい。給気ファン23は、例えば給気配管21と筐体40との接続口に設けることができる。また排気ファン24は、例えば排気配管22と筐体40との接続口に設けることができる。この場合、筐体40内に積極的に空気を流すことができる。
なお、給気ファン23および排気ファン24の設置位置は、図5に示す位置に限定されない。給気ファン23および排気ファン24は、筐体40内に所望の空気の流れを形成できる位置に設置されていればよく、例えば筐体40内に設置されていてもよい。また、空調システムは、給気ファン23および排気ファン24のいずれか一方のみを備える構成であってもよい。
【0045】
従来、図6に示すように、植物200の光合成等に利用される光を放出する光源110は、植物200が育成される植物工場内空間における植物200の上方に配置され、植物200の上方から光を照射していた。また、植物200の下方には液肥収容部131が配置され、植物200に液肥が供給される。
光源110は、X方向のみならずY方向に配列された複数の植物200へ光を照射するために、比較的大きな形状を有し、植物200の栽培空間において上下方向に空気を流せる構成にはなっていない。そのため、従来、図6の矢印で示すように、植物200の成長方向に対して側方から空気を流すことで、栽培空間内の環境制御を行っていた。
【0046】
しかしながら、植物200が背丈の高くなる植物である場合、植物200が成長するにつれて空気が流れにくくなり、排気口付近の環境を適切に制御できなくなり得る。また、図6に示すように、栽培空間内に光源110が配置されている場合、供給された空気は、光源110の熱を取り込みながら流れるため、とりわけ栽培空間がX方向に長い空間である場合には、給気口側と排気口側とで大きな温度勾配ができてしまう。
排気口付近の温度を最適な温度とするために、栽培空間に供給する空気の温度を下げたり風量を上げたりすることも考えられるが、その場合、今度は給気口付近の環境が、植物200にとって適した環境にならないという問題が生じ得る。
【0047】
植物200の成長には適した風量があり、風量によって光合成効率が変わり得る。例えば、空気が動いていない状態では、植物200の葉の表面に存在するCO濃度が低い空気の層(葉面境界層)が厚くなり、光合成効率が低下してしまう。葉の表面に風を当てることで、葉の表面の葉面境界層を破壊する(無くす)ことができ、光合成効率を向上させることができる。ただし、風量が大きすぎても、植物200にストレスがかかり、光合成効率が低下してしまう。
植物200の光合成効率を上げるためには、植物200にとって適した風量で、均一な空気の流れを作ることが重要である。
【0048】
そして、上記の問題は、図7Aおよび図7Bに示すように、植物200を挟んでY方向に対向配置された光源110から植物200に光を照射する側方照射の場合でも、植物200の成長方向に対して側方から空気を流す場合には同様に生じ得る。なお、図7Aは側方照射の場合の栽培空間の上面図、図7Bは側方照射の場合の側面図である。
したがって、上記従来の植物200の成長方向に対して側方から空気を流す空調制御では、給気口側の植物200と排気口側の植物200とで成長の差が出やすい。
【0049】
そこで、本実施形態では、植物200の成長方向(上下方向)に空気を流す空調制御を行う。
そのために、筐体40によって、特定方向(X方向)に配置された植物200を列ごとに取り囲み、複数存在する筐体40にそれぞれ対応して液肥収容部31を配置する。つまり、液肥収容部31を筐体40ごとに分割して配置する。そして、筐体40の底面の一部に液肥収容部31を対向配置させ、筐体40の底面の残りの領域に給気口41を形成する。これにより、複数の液肥収容部31のうち、隣接する液肥収容部31の間に給気口41を設けることができ、植物200の栽培空間に下方から空気を供給することが可能となる。
【0050】
また、光源10を植物200の側方に配置し、筐体40の上面に排気口42を形成する。これにより、植物200の栽培空間の下方から供給された空気を、上方から適切に排気することができる。
このように、植物200の栽培空間における空気の流れを下方から上方へ向かう方向とすることで、筐体40内において背丈の高い植物200が密集栽培されている場合であっても、均一な空気の流れを形成することができる。そのため、植物200にとって適した風量を維持しながら、栽培空間の温度を均一化することができる。その結果、株単位での植物間の成長の差を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態のように、筐体40がX方向に長い直方体形状であり、光源10の発光面が筐体40の側面の大きさおよび形状に対応した大きさおよび形状を有する場合、光源10の発光面における上下方向(Z方向)の長さは、当該発光面における上下方向に直交する方向(X方向)の長さよりも短い。つまり、植物200の栽培空間における空気の流れを下方から上方へ向かう方向とすることは、光源10の発光面の短辺方向に空気を流すことになる。
本実施形態では、光源10は筐体40外に配置されており、植物200の栽培空間と光源10の放熱空間とは分離されているが、光源10と筐体40との距離や光源10からの放熱量によっては、筐体40における光の被照射面は光源10からの熱の影響を受け得る。筐体40における光の被照射面の短辺方向に空気を流すようにすることで、給気口41側と排気口42側とで大きな温度勾配ができてしまうことを抑制することができる。
【0052】
また、暖かい空気は上昇するため、植物200の栽培空間における空気の流れを下方から上方へ向かう方向とすることで、筐体40内のあたたかい空気を拡散させることなく排気することができる。
【0053】
〔液肥収容部〕
図1に戻って、液肥収容部31は、液肥配管33によって液肥制御部30に接続されており、液肥制御部30によって、液肥収容部31への液肥32の供給および排出が制御される。液肥収容部31は、筐体40外において、複数の筐体40にそれぞれ対応して配置されている。
【0054】
図8は、液肥収容部31の構成例を示す図である。
栽培ラック300は、水平配置される支持枠301と、支持枠302に支持される複数の支持板302と、を備える。複数の支持板302は、それぞれY方向に伸び、X方向に所定間隔に離間して並列配置される。なお、栽培ラック300の形状は、上記に限定されるものではない。
【0055】
複数の液肥収容部31は、栽培ラック300の支持板301上においてX方向に伸び、Y方向に所定間隔に離間して配置される。
液肥収容部31上には、植物を支持する栽培パネル50が配置される。この図8では、X方向に延在する1つの液肥収容部31上に、3つの栽培パネル50を配置した例を示している。この場合、栽培パネル50間には、植物を植栽するための貫通孔が設けられていない隙間用パネル51を配置してよい。
なお、図8では図示を省略しているが、栽培パネル50は、すべての液肥収容部31上に配置してよい。
【0056】
複数の液肥収容部31は、X方向における一端側と他端側とでそれぞれ連結されており、複数の液肥収容部31への液肥32の供給および複数の液肥収容部31からの液肥32の排出を一括で行うことが可能であってよい。この場合、複数の液肥収容部31のX方向両端において複数の液肥収容部31を連結する連結部に、それぞれ液肥配管33が接続される。
また、本実施形態における植物栽培装置100は、液肥収容部31に収容された液肥32の温度を検出するセンサ31aを備えてよい。そして、液肥制御部30は、センサ31aによる検出値に基づいて、液肥収容部31に収容された液肥32の温度を植物に適した温度に制御してよい。なお、センサ31aの取付位置は特に限定されない。
【0057】
複数の液肥収容部31の上には、図9に示すように、それぞれ筐体40が配置される。また、隣接する筐体40の間には、それぞれ光源10が配置される。つまり、隣接する液肥収容部31の間に、それぞれ光源10が配置される。
このとき、図8に示すように、X方向において、複数(ここでは3つ)の光源10を所定間隔に離間して配置してもよい。ただし、光源10の配置は上記に限定されない。例えば、光源10は、X方向における液肥収容部31の一端から他端まで隙間なく配置されてよい。
【0058】
図9は、植物200を上下に多段に配置した場合の配置例である。
植物栽培室500には、床501から天井502に亘ってビニールカーテンなどの仕切り材210が設置されており、当該仕切り材210によって、植物栽培室500は給気空間511と排気空間512とに区画されている。
給気空間511は、空調制御部20によって調整された空気を栽培空間に供給するための空間であり、図1に示す給気配管21に対応する。排気空間512は、栽培空間から排気された空気を空調制御部20に戻すための空間であり、図1の排気配管22に対応する。
【0059】
給気空間511の空気は、例えば、栽培ラック300の支持枠301に設置された給気ファン23によって栽培ラック300内に供給される。栽培ラック300内に供給された空気は、栽培ラック300の支持板302の隙間を通って、筐体40の底面に設けられた給気口41(図9では不図示)から筐体40内に供給される。筐体40内に供給された空気は、筐体40内を上方向に流れて、筐体40の上面に設けられた排気口42(図9では不図示)から排気され、例えば、栽培ラック300の支持枠301に設定された排気ファン24によって排気空間512へ排気される。
ここで、栽培ラック300には、上下の栽培空間40を区画する風制御板25が設けられていてよい。風制御板25を設置することで、下段の筐体40から排気された空気が、上段の筐体40に供給されないようにすることができる。
【0060】
本実施形態において、液肥収容部31は、筐体40の外部に配置されており、植物200の栽培空間と液肥空間とが分離されている。そのため、液肥制御部30は、植物200の栽培空間の温度の影響を受けることなく、独立して液肥32の温度制御を行うことができる。
また、植物200の栽培空間と液肥空間とを分離することで、液肥32による栽培空間の湿度への影響を回避することができる。そのため、空調制御部20は、植物200に特化した空調制御が可能となる。
空気と液体とでは熱伝導率が異なるため、空気と液体とを合わせて温度制御する場合、無駄なエネルギーを要する。本実施形態では、栽培空間内の空気に適した温度制御と、液肥32に適した温度制御とを別々に行うことができるので、電力消費コストを削減することができる。
【0061】
なお、図8に示す例では、複数の液肥収容部31を並列に接続する場合について説明したが、例えば図10に模式的に示すように、複数の液肥収容部31は、液肥制御部30に接続された液肥配管33と、液肥収容部31同士を接続する接続配管34とによって、直列に接続されていてもよい。この場合にも、適切に液肥32を循環させることができる。
また、図10に示すように、給気配管21および排気配管22は、一端が空調制御部20に接続され、他端が複数の筐体40にそれぞれ接続された構成であってよい。このような構成により、空調制御部20から送出された空気は、給気配管21を通って各筐体40内に供給され、各筐体40の内部を通った空気は、排気配管22を通って空調制御部20に戻される。
なお、給気配管21、排気配管22および液肥配管33の接続方法は、図10に示す方法に限定されない。
【0062】
以上説明したように、本実施形態における植物育成装置100は、植物200を取り囲む閉鎖空間を形成する筐体40と、植物200に人工光を照射する光源10と、を備える。ここで、筐体40は、人工光に対して光透過性を有する。光源10は、筐体40外に配置されており、筐体40を介して人工光を植物200に照射する。
つまり、本実施形態における植物育成方法は、人工光に対して光透過性を有する筐体40によって植物200を取り囲む閉鎖空間を形成し、筐体40の外から、筐体40を介して人工光を植物200に照射し、当該人工光により植物200を育成する方法である。
【0063】
このように、筐体40によって植物200の栽培空間と光源10の放熱空間とを分離するので、植物200の栽培空間が光源10からの熱の影響を受けにくい構成とすることができる。したがって、栽培空間を植物200にとって適した環境にするために、光源10の徐熱をしながら空調制御するなどの必要がなく、植物200に特化した環境制御が可能となる。したがって、コストを抑えつつ、効率的に植物200を育成することができる。
【0064】
また、植物育成装置100は、植物200の成長方向(Z方向)に対して側方から光を照射する構成であってよい。この場合、植物200の上部のみならず植物200の下部に位置する葉に対しても適切な光量の光を照射することができるため、効率良く植物を育成することができる。植物200の葉は照射光に向くように育つため、側方からでも効率良く葉に光を照射することができる。
【0065】
また、植物育成装置100は、筐体40の下部に給気口41、筐体40の上部に排気口42を備えるため、筐体40内に空気を流すことができ、植物200の光合成効率を向上させることができる。また、筐体40内において上下方向(植物の成長方向)に空気を流すことができるので、筐体40内に均一に空気の流れを作ることができ、植物体ごとの成長に差を抑制することができる。
【0066】
さらに、植物育成装置100において、筐体40内の植物200に供給する液肥32を収容する液肥収容部31は、筐体40外に配置することができる。
この場合、植物200の栽培空間と液肥空間とを分離することができ、栽培空間と液肥空間との相互作用を抑制することができる。そのため、植物200に特化した環境制御と、液肥32に特化した温度制御が可能となる。
【0067】
以上のように、本実施形態における植物育成装置100では、熱源である人工光源を植物の栽培空間から分離させることで、植物に特化した環境制御が可能になる。そのため、無駄な空調エネルギー費を削減することができる。さらに、液肥空間を植物の栽培空間から分離させることで、液肥の温調エネルギー費も削減することができる。
このように、本実施形態における植物育成装置100では、環境制御に係るコストを抑えつつ、効率的に植物を育成することができる。
【0068】
(変形例)
上記実施形態においては、光源10を筐体40の側面に対向配置し、植物200の側方から光を照射する側方照射を行う場合について説明したが、光源10を筐体40の上面に対向配置して、植物200の上方から光を照射する上方照射を行ってもよい。この場合にも、光源10を筐体40外に配置することで、植物200の栽培空間と光源10の放熱空間とを分離することができる。
また、上記実施形態においては、筐体40は、X方向に配列された植物200を1列ごとに取り囲んでいるが、複数列ごとに取り囲んでもよいし、植物全体を取り囲んでもよい。ただし、側方照射の場合は、光合成効率の観点から、光の照射方向における筐体40の幅は狭い方が好ましく、上記実施形態のように1列ごとに取り囲む方がよい。
【0069】
さらに、上記実施形態においては、筐体40の下部に給気口41を設け、筐体40の上部に排気口42を設けることで、筐体40内の空気の流れる方向を下から上に設定する場合について説明した。しかしながら、空気の流れる方向は特に限定されない。例えば、筐体40の上部に給気口41を設け、筐体40の下部に排気口42を設け、筐体40内の空気の流れる方向を上から下に設定してもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、筐体40の底面に給気口41を設け、筐体40の上面に排気口42を設ける場合について説明したが、給気口41および排気口42の少なくとも一方が筐体40の側面に設けられていてもよい。ただし、筐体40をY方向に並べて配置する場合には、給気口41および排気口42は、それぞれ筐体40の底面および上面に設けられていることが好ましい。
【0071】
また、上記実施形態においては、植物育成装置100が空調制御部20を備える場合について説明したが、空調制御部20は備えていなくてもよい。この場合、植物育成装置100は、筐体40に必要な空気を流すことができるファンを備えていればよい。
さらに、上記実施形態においては、植物育成装置100が液肥制御部30を備える場合について説明したが、液肥32の温度制御が不要な場合には、液肥制御部30は備えていなくてもよい。この場合、植物育成装置100は、液肥収容部31に液肥32を補充可能な機構を備えていればよい。
【0072】
さらにまた、上記実施形態においては、光源10の放熱空間は外気に通じる空間であり、光源10の熱を大気に放熱する場合について説明した。しかしながら、植物育成装置100は、光源10の熱を積極的に放熱する機構を備えてもよい。
例えば、植物育成装置100は、液肥32を利用して光源10の熱を放熱する放熱部を備えてよい。液肥32を利用して光源10の熱を放熱することで、光源10からの空間への放熱量を低減させることができる。そのため、光源10からの熱が植物200の栽培空間へ与える影響をより適切に低減させることができる。
【0073】
放熱部は、光源10の支持基板11と液肥収容部31に収容された液肥32とに接触している部材である。放熱部は、例えば、液肥32に浸漬された光源10の支持基板11の端部であってよい。図11に示すように、支持基板11の端部を液肥32に浸漬することで、光源10の熱を、直接、液肥32に逃がすことができる。
なお、この図11では、液肥収容部31内において、支持基板11が液肥収容部31にも接触しているが、支持基板11は、少なくとも液肥32に接触していればよい。
また、この図11では、隣接する筐体40の間に配置される光源10は、支持基板11の両面に発光素子(LED)が配置された構成を有するが、図9に示すように、支持基板11の片面にLEDが配置された構成の光源10であっても、同様に液肥32に浸漬することが可能である。
【0074】
また、液肥制御部30は、液肥タンク内の液肥32の温度を下げるための冷却部30aを備えてよい。この冷却部30aは、例えばチラー方式の水槽用クーラーなどであってよい。これにより、光源10からの熱を吸収した液肥32を適切に冷却することができ、液肥32の温度上昇を抑えることができる。
【0075】
また、放熱部は、例えば、光源10の支持基板11の一部が接触された液肥収容部(収容容器)31であってよい。この場合、図12に示すように、支持基板11は、液肥32に浸漬されない状態で液肥収容部31に接触されてよい。このような構成により、光源10の熱を、液肥収容部31を介して液肥32に逃がすことができる。また、支持基板11を液肥32に浸漬させなくてもよいため、支持基板11が液肥32によって腐食されたりショートされたりするおそれもない。
ここで、液肥収容部31は、例えば金属などの熱伝導率の高い材料により構成されてよい。その場合、より効率良く光源10の熱を液肥32に放熱させることができる。上記金属としては、例えばアルミニウムなどを用いることができる。
【0076】
また、放熱部は、例えば図13に示すように、液肥収容部31内に配置され、支持基板11の少なくとも一部と液肥32とに接触する放熱板35であってよい。この場合、支持基板11は、液肥32に浸漬されない状態で放熱板35に接触されてよい。ここで、放熱板35は、例えば金属などの熱伝導率の高い材料により構成することが好ましい。
このような構成により、液肥収容部31が熱伝導率の高い金属により構成されていない場合であっても、光源10の熱を液肥32に放熱させることが可能である。また、支持基板11を液肥32に浸漬させないため、支持基板11が液肥32によって腐食されたりショートされたりするおそれもない。
【0077】
このように、放熱部により光源10の熱を液肥32へ逃がすことで、放熱空間への光源10の放熱量を低減させることができる。既存の液肥循環を光源10の放熱に利用することができるので、新たに水冷システム等の設置が不要である。そのため、装置の大型化を抑制することができるともに、コストの削減を実現することができる。
【0078】
また、上方照射の場合、筐体40を挟んで上下方向に光源10と液肥収容部31とが配置されるため、筐体40を上下多段に複数配置すると、上段の液肥収容部31と下段の光源10とが上下方向に隣接して配置されることになる。
この場合には、下段の光源10の熱を上段の液肥収容部31に収容された液肥32を利用して放熱してよい。つまり、下段の光源10の支持基板11を屈曲させて上方に伸ばし、上段の液肥収容部31に収容された液肥32に浸漬させたり、下段の光源10の支持基板11と上段の液肥収容部31とを直接または放熱板を介して接触させたりしてもよい。
【0079】
さらに、上記実施形態においては、育成対象の植物200が大豆などの豆類である場合について説明したが、植物200は豆類に限定されるものではなく、人工光により育成可能な植物であればよい。
【0080】
本発明に係る植物育成装置によれば、農作物の増産および安定収穫を実現することができる。このことは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標2「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する」に対応し、また、ターゲット2.1「2030年までに、飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする」に大きく貢献するものである。
【符号の説明】
【0081】
10…人工光源、11…支持基板、12…LED、20…空調制御部、21…給気配管、22…排気配管、23…給気ファン、24…排気ファン、30…液肥制御部、31…液肥収容部、32…液肥、33…液肥配管、34…接続配管、35…放熱板、40…筐体、41…給気口、42…排気口、50…栽培パネル、100…植物育成装置、200…植物、300…栽培ラック
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13