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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145045
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】魚の品質判定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/12 20060101AFI20241004BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241004BHJP
   G06T 7/11 20170101ALI20241004BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N33/12
G06T7/00 350C
G06T7/11
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057275
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】320005501
【氏名又は名称】株式会社電通
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(74)【代理人】
【識別番号】100220423
【弁理士】
【氏名又は名称】榊間 城作
(72)【発明者】
【氏名】志村 和広
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
5L096BA03
5L096BA18
5L096DA02
5L096FA02
5L096GA34
5L096HA09
5L096HA11
5L096KA04
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】 熟練者でなくても魚の品質を容易に判定することのできる魚の品質判定システムを提供する。
【解決手段】 魚の品質判定システムは、魚の尾の断面を撮影した画像データと、当該画像データにおける魚の身の領域との関係を、機械学習により分析する第1機械学習部と、判定対象の魚の尾の断面の画像データを、ユーザ装置から取得するデータ取得部と、第1機械学習部で分析した関係に基づいて、データ取得部で取得した判定対象の魚の尾の断面の画像データを入力として、判定対象の魚の身の領域を推定して推定結果を出力する第1推定部と、第1推定部による推定結果に基づいて、判定対象の魚の尾の断面の画像データから魚の身以外の領域がトリミングされたトリミング画像データを生成する生成部と、トリミング画像データを用いて判定対象の魚の品質を判定する品質判定部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚の尾の断面を撮影した画像データと、当該画像データにおける魚の身の領域との関係を、機械学習により分析する第1機械学習部と、
判定対象の魚の尾の断面の画像データを、ユーザ装置から取得するデータ取得部と、
前記第1機械学習部で分析した関係に基づいて、前記データ取得部で取得した前記判定対象の魚の尾の断面の画像データを入力として、前記判定対象の魚の身の領域を推定して推定結果を出力する第1推定部と、
前記第1推定部による前記推定結果に基づいて、前記判定対象の魚の尾の断面の画像データから魚の身以外の領域がトリミングされたトリミング画像データを生成する生成部と、
前記トリミング画像データを用いて前記判定対象の魚の品質を判定する品質判定部と、
を備える、魚の品質判定システム。
【請求項2】
前記トリミング画像データと、前記トリミング画像データにおける脂身の領域との関係を、機械学習により分析する第2機械学習部と、
前記第2機械学習部で分析した関係に基づいて、前記トリミング画像データを入力として、脂身の領域を推定して推定結果を出力する第2推定部と、
前記第2推定部による前記推定結果に基づいて、前記トリミング画像データに占める脂身の領域の割合を判定する脂身判定部と、
をさらに備える、請求項1に記載の魚の品質判定システム。
【請求項3】
前記トリミング画像データと、鮮度との関係を、機械学習により分析する第3機械学習部と、
前記第2機械学習部で分析した関係に基づいて、前記トリミング画像データを入力として、鮮度を推定して推定結果を出力する第3推定部と、
前記第3推定部による前記推定結果に基づいて、鮮度を判定する鮮度判定部と、
をさらに備える、請求項2に記載の魚の品質判定システム。
【請求項4】
前記トリミング画像データの色情報を用いて前記判定対象の魚の鮮度を判定する鮮度判定部をさらに備える、請求項2に記載の魚の品質判定システム。
【請求項5】
前記品質判定部は、前記脂身判定部が判定した脂身の割合と、前記鮮度判定部が判定した鮮度と、に基づいて前記判定対象の魚の品質を判定する、請求項3又は4に記載の魚の品質判定システム。
【請求項6】
魚の品質判定システムで実行される方法であって、
魚の尾の断面を撮影した画像データと、当該画像データにおける魚の身の領域との関係を、機械学習により分析する第1機械学習ステップと、
判定対象の魚の尾の断面の画像データを、ユーザ装置から取得するデータ取得ステップと、
前記第1機械学習ステップで分析した関係に基づいて、前記データ取得ステップで取得した前記判定対象の魚の尾の断面の画像データを入力として、前記判定対象の魚の身の領域を推定して推定結果を出力する第1推定ステップと、
前記第1推定ステップによる前記推定結果に基づいて、前記判定対象の魚の尾の断面の画像データから魚の身以外の領域がトリミングされたトリミング画像データを生成する生成ステップと、
前記トリミング画像データを用いて前記判定対象の魚の品質を判定する品質判定ステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
コンピュータに、請求項6に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚(特に、マグロ)の品質を判定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚介類の鮮度を評価する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、従来から、魚の卸売市場などで、マグロの尾の断面をみて、マグロの品質が判定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-286262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
魚(特に、マグロ)の尾の断面からマグロの品質を判定するには、長年の経験が必要であり、かなりの熟練者でなければ、マグロの品質を判定することは困難であった。特に、非冷凍(生)の状態で切断された魚の尾の断面は、冷凍の状態で切断された魚の断面に比べ、凹凸の多い粗い状態であるため、その断面からマグロの品質を判定することは、より一層困難であった。そのため、誰でも(熟練者でなくても)、非冷凍の魚の品質を容易に判定することができるシステムの開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、熟練者でなくても魚の品質を容易に判定することができる魚の品質判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る魚の品質判定システムは、魚の尾の断面を撮影した画像データと、当該画像データにおける魚の身の領域との関係を、機械学習により分析する第1機械学習部と、判定対象の魚の尾の断面の画像データを、ユーザ装置から取得するデータ取得部と、前記第1機械学習部で分析した関係に基づいて、前記データ取得部で取得した前記判定対象の魚の尾の断面の画像データを入力として、前記判定対象の魚の身の領域を推定して推定結果を出力する第1推定部と、前記第1推定部による前記推定結果に基づいて、前記判定対象の魚の尾の断面の画像データから魚の身以外の領域がトリミングされたトリミング画像データを生成する生成部と、前記トリミング画像データを用いて前記判定対象の魚の品質を判定する品質判定部と、を備える。
【0007】
この構成によれば、機械学習を用いて魚の身の領域を推定し、この推定結果に基づいて生成されたトリミング画像データに基づいて判定対象の魚の品質を判定するので、品質の判定に際してノイズとなる、魚の尾の断面の画像データにおける魚の身の領域以外の領域(脊椎骨の領域や背景領域)の影響を抑制して精度よく魚の品質を判定することができる。これにより、熟練者でなくても魚の品質を容易に判定することができる。
【0008】
第2態様に係る魚の品質判定システムは、第1態様に係る魚の品質判定システムにおいて、前記トリミング画像データと、前記トリミング画像データにおける脂身の領域との関係を、機械学習により分析する第2機械学習部と、前記第2機械学習部で分析した関係に基づいて、前記トリミング画像データを入力として、脂身の領域を推定して推定結果を出力する第2推定部と、前記第2推定部による前記推定結果に基づいて、前記トリミング画像データに占める脂身の領域の割合を判定する脂身判定部と、をさらに備える。
【0009】
この構成によれば、トリミング画像データを入力データとして用いた機械学習により、魚の脂身の領域を推定し、この推定結果に基づいて、トリミング画像データに占める脂身の領域の割合を判定するので、魚の尾の断面の画像データに、非冷凍の魚を切断した際に生じる凹凸形状が含まれる場合であっても、精度よく脂身の領域の割合を判定することができる。これにより、熟練者でなくても魚の品質(脂身の割合)を容易に判定することができる。
【0010】
第3態様に係る魚の品質判定システムは、第1又は第2態様に係る魚の品質判定システムにおいて、前記トリミング画像データと、鮮度との関係を、機械学習により分析する第3機械学習部と、前記第2機械学習部で分析した関係に基づいて、前記トリミング画像データを入力として、鮮度を推定して推定結果を出力する第3推定部と、前記第3推定部による前記推定結果に基づいて、鮮度を判定する鮮度判定部と、をさらに備える。
【0011】
この構成によれば、トリミング画像データを入力データとして用いた機械学習により、魚の鮮度を推定し、この推定結果に基づいて、魚の鮮度を判定するので、魚の尾の断面の画像データに、非冷凍の魚を切断した際に生じる凹凸形状が含まれる場合であっても、精度よく魚の鮮度を判定することができる。これにより、熟練者でなくても魚の品質(鮮度)を容易に判定することができる。
【0012】
第4態様に係る魚の品質判定システムは、第1から第3態様のいずれかに係る魚の品質判定システムにおいて、前記トリミング画像データの色情報を用いて前記判定対象の魚の鮮度を判定する鮮度判定部をさらに備える。
【0013】
この構成によれば、トリミング画像データの色情報を用いて判定対象の魚の鮮度を判定するので、魚の尾の断面の画像データに、非冷凍の魚を切断した際に生じる凹凸形状が含まれる場合であっても、精度よく魚の鮮度を判定することができる。これにより、熟練者でなくても魚の品質(鮮度)を容易に判定することができる。
【0014】
第5態様に係る魚の品質判定システムは、第3又は第4態様に係る魚の品質判定システムにおいて、前記品質判定部は、前記脂身判定部が判定した脂身の割合と、前記鮮度判定部が判定した鮮度と、に基づいて前記判定対象の魚の品質を判定する。
【0015】
この構成によれば、脂身の割合と鮮度とに基づいて、判定対象の魚の品質を判定することができる。これにより、熟練者でなくても魚の品質を容易に判定することができる。
【0016】
第6態様に係る方法は、魚の品質判定システムで実行される方法であって、魚の尾の断面を撮影した画像データと、当該画像データにおける魚の身の領域との関係を、機械学習により分析する第1機械学習ステップと、判定対象の魚の尾の断面の画像データを、ユーザ装置から取得するデータ取得ステップと、前記第1機械学習ステップで分析した関係に基づいて、前記データ取得ステップで取得した前記判定対象の魚の尾の断面の画像データを入力として、前記判定対象の魚の身の領域を推定して推定結果を出力する第1推定ステップと、前記第1推定ステップによる前記推定結果に基づいて、前記判定対象の魚の尾の断面の画像データから魚の身以外の領域がトリミングされたトリミング画像データを生成する生成ステップと、前記トリミング画像データを用いて前記判定対象の魚の品質を判定する品質判定ステップと、を含む。
【0017】
この方法によっても、上記のシステムと同様に、機械学習を用いて魚の身の領域を推定し、この推定結果に基づいて生成されたトリミング画像データに基づいて判定対象の魚の品質を判定するので、品質の判定に際してノイズとなる、魚の尾の断面の画像データにおける魚の身の領域以外の領域(脊椎骨の領域や背景領域)の影響を抑制して精度よく魚の品質を判定することができる。これにより、熟練者でなくても魚の品質を容易に判定することができる。
【0018】
第7態様に係るプログラムは、コンピュータに、第6態様に係る方法を実行させるためのプログラムである。
【0019】
このプログラムによっても、上記のシステムと同様に、機械学習を用いて魚の身の領域を推定し、この推定結果に基づいて生成されたトリミング画像データに基づいて判定対象の魚の品質を判定するので、品質の判定に際してノイズとなる、魚の尾の断面の画像データにおける魚の身の領域以外の領域(脊椎骨の領域や背景領域)の影響を抑制して精度よく魚の品質を判定することができる。これにより、熟練者でなくても魚の品質を容易に判定することができる。
【0020】
第8態様に係る記憶媒体は、第7態様に係るプログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記憶媒体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熟練者でなくても魚の品質を容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態における品質判定システムのブロック図である。
図2】本発明の実施の形態における魚の品質判定システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施の形態における非冷凍の魚(マグロ)の尾の断面の画像データの一例である。
図4】本発明の実施の形態におけるトリミング画像データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態の魚の品質判定システムについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、マグロの品質判定システムの場合を例示する。
【0024】
本発明の実施の形態の品質判定システムの構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の品質判定システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、品質判定システム1は、サーバ装置2と、ユーザ装置3で構成されている。サーバ装置2とユーザ装置3は、ネットワーク4で互いに通信可能に接続されている。例えば、サーバ装置2は、品質判定サービスの提供者が所有するクラウドサーバ等であり、ユーザ装置3は、品質判定サービスの利用者が所有するスマートフォン等である。
【0025】
図1に示すように、サーバ装置2は、第1機械学習部201と、第1入力部202と、第1推定部203、第2機械学習部204と、第2入力部205と、第2推定部206と、第3機械学習部207と、第3入力部208と、第3推定部209と、生成部210と、脂身判定部211と、鮮度判定部212と、品質判定部213と、データ取得部214と、記憶部215と、を備えている。
【0026】
第1機械学習部201は、魚の尾の断面を撮影した画像データ(図3参照)と、当該画像データにおける魚の身の領域との関係を、機械学習により分析する。この機械学習には、ニューラルネットワークによるディープラーニング等の任意の手法が用いられる。
【0027】
例えば、ニューラルネットワークであれば、マグロの尾の断面の画像データを入力層に入力し、その画像データにおける身の領域に関するデータを出力層から出力するように構成する。そして、入力層に入力するデータと出力層から出力されるデータとが紐付けられた分析用データ(教師データ)を用いた教師あり学習によって、ニューラルネットワークのニューロン間の重み付け係数が最適化される。マグロの尾の断面の画像データにおける身の領域に関するデータの教師データとしては、例えば、熟練者がそのマグロの尾の断面の画像データに領域別にラベルを付したデータが用いられる。
【0028】
第1入力部202には、判定対象のマグロの尾の断面の画像データが入力される。判定対象のマグロの尾の断面の画像データは、例えば各地の水産工場でマグロの尾の断面を撮影することによって取得される。
【0029】
第1推定部203は、第1機械学習部201で分析した関係に基づいて、第1入力部202で入力された判定対象のマグロの尾の断面の画像データを入力として、判定対象のマグロの尾の断面の画像データにおける身の領域に関するデータを推定して出力する。例えば、上記のニューラルネットワークであれば、判定対象のマグロの尾の断面の画像データを入力層に入力し、その判定対象のマグロの尾の画像データにおける身の領域に関するデータを推定して出力(推定結果)を出力層から出力することにより、判定対象のマグロの尾の断面の画像データにおける身の領域に関するデータの推定が行われる。
【0030】
第2機械学習部204は、後述の生成部210が生成したトリミング画像データ(図4参照)と、当該トリミング画像データにおける脂身の領域との関係を、機械学習により分析する。この機械学習には、ニューラルネットワークによるディープラーニング等の任意の手法が用いられる。
【0031】
例えば、ニューラルネットワークであれば、トリミング画像データを入力層に入力し、その画像データにおける脂身の領域に関するデータを出力層から出力するように構成する。そして、入力層に入力するデータと出力層から出力されるデータとが紐付けられた分析用データ(教師データ)を用いた教師あり学習によって、ニューラルネットワークのニューロン間の重み付け係数が最適化される。トリミング画像データにおける脂身の領域に関するデータの教師データとしては、例えば、熟練者がそのトリミング画像データに領域別にラベルを付したデータが用いられる。
【0032】
第2入力部205には、判定対象のマグロのトリミング画像データが入力される。判定対象のマグロのトリミング画像データは、後述の生成部210により生成されたものである。
【0033】
第2推定部206は、第2機械学習部204で分析した関係に基づいて、第2入力部205で入力された判定対象のマグロのトリミング画像データを入力として、当該トリミング画像データにおける脂身の領域に関するデータを推定して出力する。例えば、上記のニューラルネットワークであれば、判定対象のマグロのトリミング画像データを入力層に入力し、その判定対象のマグロのトリミング画像データにおける脂身の領域に関するデータを推定して出力(推定結果)を出力層から出力することにより、判定対象のマグロのトリミング画像データにおける脂身の領域に関するデータの推定が行われる。
【0034】
第3機械学習部207は、後述の生成部210が生成したトリミング画像データ(図4参照)と、魚の鮮度との関係を、機械学習により分析する。この機械学習には、ニューラルネットワークによるディープラーニング等の任意の手法が用いられる。
【0035】
例えば、ニューラルネットワークであれば、トリミング画像データを入力層に入力し、そのトリミング画像データに対応する鮮度に関するデータを出力層から出力するように構成する。そして、入力層に入力するデータと出力層から出力されるデータとが紐付けられた分析用データ(教師データ)を用いた教師あり学習によって、ニューラルネットワークのニューロン間の重み付け係数が最適化される。トリミング画像データに対応する鮮度に関するデータの教師データとしては、例えば、熟練者がそのトリミング画像データに鮮度のラベル(例えば、1~5のランク(1が最も鮮度が低く、5が最も鮮度が高い))を付したデータが用いられる。
【0036】
第3入力部208には、判定対象のマグロのトリミング画像データが入力される。判定対象のマグロのトリミング画像データは、後述の生成部210により生成されたものである。
【0037】
第3推定部209は、第3機械学習部207で分析した関係に基づいて、第3入力部208で入力された判定対象のマグロのトリミング画像データを入力として、当該トリミング画像データに対応する鮮度に関するデータを推定して出力する。例えば、上記のニューラルネットワークであれば、判定対象のマグロのトリミング画像データを入力層に入力し、その判定対象のマグロのトリミング画像データに対応する鮮度に関するデータを推定して出力(推定結果)を出力層から出力することにより、判定対象のマグロのトリミング画像データに対応する鮮度に関するデータの推定が行われる。
【0038】
生成部210は、第1推定部203による推定結果(魚の尾の断面の画像データにおける魚の身の領域に関するデータ)に基づいて、判定対象の魚の尾の断面の画像データから魚の身以外の領域(脊椎骨の領域及び背景領域)がトリミングされたトリミング画像データを生成する。図4は、生成部210が生成したトリミング画像データの一例を示す図である。図4に示すように、生成部210は、魚の尾の断面の画像データから、断面の中央部分に位置する脊椎骨の領域と背景領域をトリミングしたトリミング画像データを生成する。生成部210が生成したトリミング画像データは、第2入力部205及び第3入力部208に入力される。
【0039】
脂身判定部211は、第2推定部206による推定結果(トリミング画像データにおける脂身の領域に関するデータ)に基づいて、トリミング画像データに占める脂身の領域の割合(含有率)を判定する。例えば、トリミング画像データ(魚の身の領域の画像データ)の全面積に対する脂身の領域の面積の割合を脂身の含有率としてもよい。
【0040】
鮮度判定部212は、第3推定部209による推定結果(トリミング画像データに対応する魚の鮮度)に基づいて、判定対象の魚の鮮度を判定する。ここで、鮮度判定部212は、第3推定部209が推定した鮮度をそのまま採用してもよいし、第3推定部209が出力した数値を所定の数値範囲に正規化した値を鮮度として判定してもよい。
【0041】
なお、鮮度判定部212は、第3推定部209の推定結果を用いることなく、トリミング画像データのHSVの色情報から鮮度を判定するようにしてもよい。例えば、魚の身の断面の色は、鮮度が高いほど鮮やかな赤色を呈するため、鮮度判定部212は、トリミング画像データから赤色(Hue:0~60度、及び、300~360度)を抽出し、その彩度(0~100%)を求めた後、求めた彩度を、所定の数値範囲(例えば、1~5)に正規化した値を鮮度として判定するようにしてもよい。
【0042】
品質判定部213は、脂身判定部211が判定した脂身の割合(含有率)と、鮮度判定部212が判定した鮮度と、に基づいて判定対象の魚の品質を判定する。例えば、鮮度が高く、より脂の乗ったマグロほど価値が高いことから、鮮度が高く、脂身の割合が高いほど、品質が高くなるように品質を判定する。
【0043】
データ取得部214は、判定対象のマグロの尾の断面の画像データを、ユーザ装置3から取得する。
【0044】
記憶部215には、ユーザ装置3から取得した画像データや、生成部210が生成したトリミング画像データが記憶される。また、記憶部215には、第1推定部203、第2推定部206、第3推定部209から出力された推定結果が記憶される。
【0045】
次に、ユーザ装置3について説明する。図1に示すように、ユーザ装置3は、撮影部301と、データ入力部302と、表示部303と、記憶部304を備えている。
【0046】
撮影部301は、ユーザ装置3のカメラ機能によって実現され、マグロの尾の断面を撮影することにより、マグロの尾の断面の画像データが生成される(図3参照)。なお、生成されたマグロの尾の断面の画像データには、撮影日のデータが紐づけられていてもよい。
【0047】
データ入力部302は、各種のデータを入力する機能を備えている。データ入力部302からは、判定対象のマグロに関する情報(例えば、判定対象の魚の識別情報、重量、漁場、漁船名等)が入力される。
【0048】
表示部303は、各種のデータを表示する機能を備えている。表示部303には、脂身判定部211が判定した脂身の割合(含有率)、鮮度判定部212が判定した鮮度、及び、品質判定部213が判定した魚の品質のうち少なくとも一つが表示される。なお、表示部303がタッチパネル機能を備えている場合には、表示部303はデータ入力部302を兼ねることができる。
【0049】
記憶部304には、撮影部301が撮影したマグロの画像データや、データ入力部302を介して入力された情報が記憶される。また、記憶部304には、サーバ装置2から出力された魚の脂身の割合(含有率)、鮮度、品質に関するデータが記憶される。
【0050】
以上のように構成された品質判定システム1について、図2のシーケンス図を参照してその動作を説明する。
【0051】
図2に示すように、本実施の形態の品質判定システム1では、まず、サーバ装置2の第1機械学習部201で、マグロの尾の断面の画像データと、その画像データにおける身の領域との関係を、予め機械学習により分析しておく(S10)。
【0052】
また、サーバ装置2の第2機械学習部204で、トリミング画像データと、トリミング画像データにおける脂身の領域との関係を、予め機械学習により分析しておく(S11)。
【0053】
また、サーバ装置2の第3機械学習部207で、トリミング画像データと、トリミング画像データに対応する鮮度との関係を、予め機械学習により分析しておく(S12)。
【0054】
ユーザ装置3においてマグロの尾の断面の画像が撮影されると(S13)、ユーザ装置3は、マグロの尾の断面の画像データをサーバ装置2に送信する(S14)。
【0055】
サーバ装置2は、ユーザ装置3からマグロの尾の断面の画像データを受信すると、第1推定部203によりマグロの身の領域を推定する(S15)。
【0056】
そして、サーバ装置2は、第1推定部203が推定した推定結果(マグロの身の領域に関するデータ)を用いて、生成部210によってトリミング画像データを生成する(S16)。
【0057】
次に、サーバ装置2は、ステップS16で生成したトリミング画像データを入力データとして、第2推定部206によって、脂身の領域を推定する(S17)。
【0058】
そして、サーバ装置2は、第2推定部206が推定した推定結果(トリミング画像データにおける脂身の領域に関するデータ)を用いて、脂身判定部211によって、マグロの脂身の領域の割合(含有率)を判定する(S18)。
【0059】
次に、サーバ装置2は、ステップS16で生成したトリミング画像データを入力データとして、第3推定部209によって、判定対象のマグロの鮮度を推定する(S19)。
【0060】
そして、サーバ装置2は、第3推定部209が推定した推定結果又はトリミング画像データの色情報を用いて、鮮度判定部212によって、判定対象のマグロの鮮度を判定する(S20)。
【0061】
また、サーバ装置2は、脂身判定部211によって判定した脂身の割合(含有率)と、鮮度判定部212が判定した鮮度とに基づいて、品質判定部213によって、判定対象のマグロの品質を判定する(S21)。
【0062】
そして、サーバ装置2は、判定結果(脂身の割合、鮮度及び品質のうち少なくとも一つ)をユーザ装置3に送信する。
【0063】
このような本実施の形態の品質判定システム1によれば、魚の尾の断面を撮影した画像データと、当該画像データにおける魚の身の領域との関係を、機械学習により分析する第1機械学習部201と、判定対象の魚の尾の断面の画像データを、ユーザ装置から取得するデータ取得部214と、第1機械学習部で分析した関係に基づいて、データ取得部214で取得した判定対象の魚の尾の断面の画像データを入力として、判定対象の魚の身の領域を推定して推定結果を出力する第1推定部203と、第1推定部203による推定結果に基づいて、判定対象の魚の尾の断面の画像データから魚の身以外の領域がトリミングされたトリミング画像データを生成する生成部210と、トリミング画像データを用いて判定対象の魚の品質を判定する品質判定部213と、を備えるので、品質の判定に際してノイズとなる、魚の尾の断面の画像データにおける魚の身の領域以外の領域(脊椎骨の領域や背景領域)の影響を抑制して精度よく魚の品質を判定することができる。これにより、熟練者でなくても魚の品質を容易に判定することができる。
【0064】
また、本実施の形態の品質判定システム1によれば、脂身の割合(含有率)の判定と鮮度の判定に機械学習を用いたので、魚の尾の断面の画像データに、非冷凍の魚を切断した際に生じる凹凸形状が含まれる場合であっても、精度よく、脂身の割合(含有率)や鮮度を判定することができ、結果として、魚の品質の精度よく判定することができる。これにより、熟練者でなくても魚の品質をより容易に判定することができる。
【0065】
以上、本実施の形態について説明したが、本明細書で述べた各機能部の任意の一部または全部をプログラムによって実現するようにしてもよい。本明細書で言及したプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に非一時的に記録して頒布されてもよいし、インターネットなどの通信回線(無線通信も含む)を介して頒布されてもよいし、任意の端末にインストールされた状態で頒布されてもよい。
【0066】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形例を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0067】
例えば、本明細書において1台の装置(あるいは部材、以下同じ)として説明されるもの(図面において1台の装置として描かれているものを含む)を複数の装置によって実現してもよい。逆に、本明細書において複数の装置として説明されるもの(図面において複数の装置として描かれているものを含む)を1台の装置によって実現してもよい。あるいは、ある装置(例えばサーバ)に含まれるとした手段や機能の一部または全部が、他の装置(例えばユーザ端末)に含まれるようにしてもよい。
【0068】
また、本明細書に記載された事項の全てが必須の要件というわけではない。特に、本明細書に記載され、特許請求の範囲に記載されていない事項は任意の付加的事項ということができる。
【0069】
なお、本出願人は本明細書の「先行技術文献」欄の文献に記載された文献公知発明を知っているにすぎず、本発明は必ずしも同文献公知発明における課題を解決することを目的とするものではないことにも留意されたい。本発明が解決しようとする課題は本明細書全体を考慮して認定されるべきものである。例えば、本明細書において、特定の構成によって所定の効果を奏する旨の記載がある場合、当該所定の効果の裏返しとなる課題が解決されるということもできる。ただし、必ずしもそのような特定の構成を必須の要件とする趣旨ではない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明にかかる魚の品質判定システムは、熟練者でなくても魚の品質を容易に判定することができるという効果を有し、マグロの品質判定システム等として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 品質判定システム
2 サーバ装置
201 第1機械学習部
202 第1入力部
203 第1推定部
204 第2機械学習部
205 第2入力部
206 第2推定部
207 第3機械学習部
208 第3入力部
209 第3推定部
210 生成部
211 脂身判定部
212 鮮度判定部
213 品質判定部
214 データ取得部
215 記憶部
3 ユーザ装置
301 撮影部
302 データ入力部
303 表示部
304 記憶部
4 ネットワーク
図1
図2
図3
図4