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特開2024-145046改質ガスのプラズマ改質方法、及びプラズマ改質システム
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  • 特開-改質ガスのプラズマ改質方法、及びプラズマ改質システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145046
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】改質ガスのプラズマ改質方法、及びプラズマ改質システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20241004BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B01J19/08 E
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057276
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】関口 秀紀
【テーマコード(参考)】
2G084
4G075
【Fターム(参考)】
2G084AA18
2G084BB36
2G084CC14
2G084CC34
2G084DD12
2G084DD42
2G084FF13
2G084HH02
2G084HH05
2G084HH09
2G084HH25
2G084HH30
2G084HH42
2G084HH52
4G075AA03
4G075AA62
4G075BA05
4G075CA26
4G075CA47
4G075EB41
4G075EC21
4G075FA08
4G075FB02
4G075FB06
(57)【要約】
【課題】大気圧においてプラズマを用いて2種以上の原子から構成されるガスを2種以上のガスに改質する改質ガスのプラズマ改質方法、及びプラズマ改質システムを提供する。
【解決手段】改質ガスのプラズマ改質方法においては、プラズマ化手段60の臨んだ経路50に希ガスを供給する希ガス供給ステップS2と、希ガスに対してプラズマ化手段60を用いて希ガスプラズマを生成する希ガスプラズマ生成ステップS3と、経路50に改質ガスを供給し希ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させる希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップS4と、経路50への希ガスの供給を止めて希ガス・改質ガス混合プラズマを改質ガスプラズマへ移行させ、改質ガスプラズマを用いて改質対象である改質ガスの改質を行う改質ステップS5を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質対象である改質ガスをプラズマ化することにより改質する改質方法であって、プラズマ化手段の臨んだ経路に希ガスを供給する希ガス供給ステップと、
前記希ガスに対して前記プラズマ化手段を用いて希ガスプラズマを生成する希ガスプラズマ生成ステップと、
前記経路に前記改質ガスを供給し前記希ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させる希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップと、
前記経路への前記希ガスの供給を止めて前記希ガス・改質ガス混合プラズマを改質ガスプラズマへ移行させ、前記改質ガスプラズマを用いて改質対象である前記改質ガスの改質を行う改質ステップとを有することを特徴とする改質ガスのプラズマ改質方法。
【請求項2】
前記改質ステップの後に、前記経路の下流側に有した分岐経路に改質した後の改質後ガスを導き、前記改質後ガスを取り出す改質後ガス分離ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の改質ガスのプラズマ改質方法。
【請求項3】
前記改質後ガス分離ステップの後に、改質した前記改質後ガスを利用対象に供給する改質後ガス供給ステップを有することを特徴とする請求項2に記載の改質ガスのプラズマ改質方法。
【請求項4】
前記改質ステップで前記改質ガスプラズマを用いて前記改質ガスの改質を行っている状態で、前記経路へ前記希ガスを供給し前記改質ガスプラズマを前記希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させる第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップと、前記経路への前記改質ガスの供給を止めて前記希ガスプラズマに移行させる第2希ガスプラズマ生成ステップと、前記希ガスの供給を止める希ガス供給停止ステップとを有することを特徴とする請求項1に記載の改質ガスのプラズマ改質方法。
【請求項5】
前記第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップの前で、前記経路の下流側に有した分岐経路への改質後ガスの供給を停止することを特徴とする請求項4に記載の改質ガスのプラズマ改質方法。
【請求項6】
前記第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップの前に、改質した前記改質後ガスを改質後ガスの利用対象に供給することを停止する改質後ガス供給停止ステップを有することを特徴とする請求項4に記載の改質ガスのプラズマ改質方法。
【請求項7】
前記第2希ガスプラズマ生成ステップで前記希ガスプラズマに移行した後に、前記プラズマ化手段の機能を停止することを特徴とする請求項4に記載の改質ガスのプラズマ改質方法。
【請求項8】
少なくとも前記希ガスプラズマ生成ステップと前記改質ステップで、前記希ガスプラズマと前記改質ガスプラズマの生成状態を検出して前記プラズマ化手段の機能を調整することを特徴とする請求項1に記載の改質ガスのプラズマ改質方法。
【請求項9】
改質対象である改質ガスをプラズマ化することにより改質する改質システムであって、希ガスを供給する希ガス供給源と、前記希ガスの供給量を制御する希ガス流量制御手段と、前記改質ガスを供給する改質ガス供給源と、前記改質ガスの供給量を制御する改質ガス流量制御手段と、前記希ガス及び前記改質ガスの供給される経路と、前記経路に臨ませたプラズマ化手段と、前記プラズマ化手段を制御するプラズマ化制御手段と、前記希ガス流量制御手段、前記改質ガス流量制御手段、及び前記プラズマ化制御手段を統合的に制御する統合制御手段とを備え、前記統合制御手段が、前記経路に希ガスを供給し希ガスプラズマを生成させ、前記経路に前記改質ガスを供給して希ガス・改質ガス混合プラズマへ移行させ、前記希ガスの供給を停止して改質ガスプラズマを生成し改質対象である前記改質ガスを改質する制御を行うことを特徴とする改質ガスのプラズマ改質システム。
【請求項10】
前記経路の下流側に切替手段を介して改質した後の改質後ガスを取り出す分岐経路を備えたことを特徴とする請求項9に記載の改質ガスのプラズマ改質システム。
【請求項11】
前記分岐経路を前記改質後ガスの利用対象とする利用対象機器に接続することを特徴とする請求項10に記載の改質ガスのプラズマ改質システム。
【請求項12】
前記統合制御手段が、前記改質ガスプラズマを用いて前記改質ガスの改質を行っている状態で前記経路へ前記希ガスを供給し、前記改質ガスプラズマを前記希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成し、前記経路への前記改質ガスの供給を止めて前記希ガスプラズマに移行させ、前記希ガスの供給を止める制御を行うことを特徴とする請求項9に記載の改質ガスのプラズマ改質システム。
【請求項13】
前記統合制御手段が、前記第2希ガス・改質ガス混合プラズマが生成される前に、前記経路の下流側に有した分岐経路への前記改質後ガスの供給を停止する制御を行うことを特徴とする請求項12に記載の改質ガスのプラズマ改質システム。
【請求項14】
前記統合制御手段が、前記第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成の前に、改質した前記改質後ガスを利用対象機器に供給することを停止する制御を行うことを特徴とする請求項12に記載の改質ガスのプラズマ改質システム。
【請求項15】
前記統合制御手段が、前記希ガスプラズマに移行した以降で、前記プラズマ化手段の機能を停止する制御を行うことを特徴とする請求項12に記載の改質ガスのプラズマ改質システム。
【請求項16】
前記統合制御手段が、前記希ガスプラズマの生成状態を検出して前記プラズマ化手段の機能を調整する制御を行うことを特徴とする請求項9に記載の改質ガスのプラズマ改質システム。
【請求項17】
前記希ガスプラズマ、前記希ガス・改質ガス混合プラズマ、及び前記改質ガスプラズマの少なくとも1つの生成状態を検出する発光検出手段を備えたことを特徴とする請求項9の改質ガスのプラズマ改質システム。
【請求項18】
前記プラズマ化手段が、マイクロ波を利用した放電用電極を有したマイクロ波放電器であり、前記放電用電極を前記経路に臨ませ、前記放電用電極の基部を同心円状に円筒絶縁体で取り囲んだ構成を有することを特徴とする請求項9に記載の改質ガスのプラズマ改質システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質対象である改質ガスをプラズマ化することにより改質する改質ガスのプラズマ改質方法、及びプラズマ改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境保全等を目的として、大気汚染物質や燃料等のガスを改質することが行われている。
ここで、特許文献1には、燃料改質器は流入したアンモニアガス(燃料ガス)の少なくとも一部を改質して水素ガスを生成し、圧力センサは燃料改質器での改質前のガス圧力P1を検出し燃料改質器での改質後のガス圧力P2を検出し、制御装置は圧力比P2/P1または圧力差P2-P1に基づいて燃料改質器でのアンモニアガスの改質割合を制御する内燃機関の燃料改質装置が開示されている。
また、特許文献2には、改質器は尿素水タンクからの尿素水を基にアンモニアを生成し生成されたアンモニアを基に水素を生成し、還元触媒は改質器で生成されたアンモニアを利用してシリンダ内からの排出ガスに含まれる窒素酸化物を浄化し、改質器で生成されたアンモニア及び改質器で生成された水素は燃料用アンモニア供給管を通って吸気管内へ供給され、シリンダ内ではインジェクタから噴射されたガソリンとともに燃料用アンモニア供給管を通って供給されたアンモニア及び水素を燃焼させるエンジンシステムが開示されている。
また、特許文献3には、燃料改質装置は、改質前の燃料ガスが供給されキャビティ内で所定の周波数のマイクロ波が共振する共振容器と、キャビティ内で共振する周波数のマイクロ波を発生させる電磁波発生電源と、電磁波発生電源で発生したマイクロ波をキャビティ内へ放射する電磁波放射器と、キャビティ内に配置された放電用電極とを備え、放電用電極近傍にてキャビティ内のマイクロ波の電界強度を局所的に高めることで発生するプラズマ放電によりキャビティ内に供給された燃料ガスを改質し、放電用電極はプラズマ放電の連続的な発生に対する耐熱性を有する耐熱電極により構成されている内燃機関の燃料改質装置が開示されている。
また、特許文献4には、燃料改質器は供給されたアンモニアガスを部分的に改質して水素ガスを生成し、ガスコンプレッサは燃料改質器から供給されたアンモニアガス及び水素ガスを加圧してアンモニアガスを液化することで水素ガスから分離し、アンモニアインジェクタはガスコンプレッサで水素ガスから分離されたアンモニアを吸気管内へ噴射し、水素インジェクタはガスコンプレッサでアンモニアから分離された水素ガスを吸気管内へ噴射するエンジンシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-97422号公報
【特許文献2】特開2009-97419号公報
【特許文献3】特開2009-97420号公報
【特許文献4】特開2009-97421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直流、低周波、高周波、RF(radio frequency)電源等を用いたプラズマ源が開発されているが、電源が高価である。一方、安価な電源として、マグネトロンを用いたマイクロ波プラズマ源が開発されているが、方形導波管とガス流通経路を用いており、方形導波管の形状やガス流通経路の配置等、設計・製作が難しく、マイクロ波プラズマ装置自体が大きくなる。また、希ガス以外を直接プラズマ化するには高エネルギー(大電力)が必要となる。
また、特許文献1~4は、大気圧においてガスを改質するものではない。
そこで本発明は、大気圧において、プラズマを用いて、2種以上の原子から構成されるガスを2種以上のガスに改質することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載に対応した改質ガスのプラズマ改質方法においては、改質対象である改質ガスをプラズマ化することにより改質する改質方法であって、プラズマ化手段の臨んだ経路に希ガスを供給する希ガス供給ステップと、希ガスに対してプラズマ化手段を用いて希ガスプラズマを生成する希ガスプラズマ生成ステップと、経路に改質ガスを供給し希ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させる希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップと、経路への希ガスの供給を止めて希ガス・改質ガス混合プラズマを改質ガスプラズマへ移行させ、改質ガスプラズマを用いて改質対象である改質ガスの改質を行う改質ステップとを有することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、大気圧において、プラズマを用いて、2種以上の原子から構成されるガスを2種以上のガスに改質することができる。また、先に希ガスプラズマを生成した後、改質ガスの供給を開始し、希ガス・改質ガス混合プラズマを経て改質ガスプラズマへ移行させるため、改質前の改質ガスの漏洩を無くすことができる。希ガスは漏洩したとしても不活性ガスであり、地球環境に直接悪影響を与えない。
【0006】
請求項2記載の本発明は、改質ステップの後に、経路の下流側に有した分岐経路に改質した後の改質後ガスを導き、改質後ガスを取り出す改質後ガス分離ステップを有することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、希ガスの混入していない改質後ガスを取り出して有効利用することができる。
【0007】
請求項3記載の本発明は、改質後ガス分離ステップの後に、改質した改質後ガスを利用対象に供給する改質後ガス供給ステップを有することを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、利用対象において希ガスの混入していない改質後ガスを有効利用することができる。
【0008】
請求項4記載の本発明は、改質ステップで改質ガスプラズマを用いて改質ガスの改質を行っている状態で、経路へ希ガスを供給し改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させる第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップと、経路への改質ガスの供給を止めて希ガスプラズマに移行させる第2希ガスプラズマ生成ステップと、希ガスの供給を止める希ガス供給停止ステップとを有することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、改質ガスの改質を停止させるに当り、生成している改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて改質ガスの供給を止め、さらに希ガスプラズマへ移行させた後、希ガスの供給を止めるため、改質後ガスの漏洩を無くすことができる。
【0009】
請求項5記載の本発明は、第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップの前で、経路の下流側に有した分岐経路への改質後ガスの供給を停止することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、分岐経路には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが分岐経路に流れることを防止できる。
【0010】
請求項6記載の本発明は、第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップの前に、改質した改質後ガスを改質後ガスの利用対象に供給することを停止する改質後ガス供給停止ステップを有することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、利用対象には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが利用対象に流れることを防止できる。
【0011】
請求項7記載の本発明は、第2希ガスプラズマ生成ステップで希ガスプラズマに移行した後に、プラズマ化手段の機能を停止することを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、希ガスだけが流れる状態にして機能を停止し、プラズマ化手段の不要な稼働を防止して省エネに資することができる。
【0012】
請求項8記載の本発明は、少なくとも希ガスプラズマ生成ステップと改質ステップで、希ガスプラズマと改質ガスプラズマの生成状態を検出してプラズマ化手段の機能を調整することを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、プラズマの生成状態を検出した結果に基づいて調整することができる。
【0013】
請求項9記載に対応した改質ガスのプラズマ改質システムにおいては、改質対象である改質ガスをプラズマ化することにより改質する改質システムであって、希ガスを供給する希ガス供給源と、希ガスの供給量を制御する希ガス流量制御手段と、改質ガスを供給する改質ガス供給源と、改質ガスの供給量を制御する改質ガス流量制御手段と、希ガス及び改質ガスの供給される経路と、経路に臨ませたプラズマ化手段と、プラズマ化手段を制御するプラズマ化制御手段と、希ガス流量制御手段、改質ガス流量制御手段、及びプラズマ化制御手段を統合的に制御する統合制御手段とを備え、統合制御手段が、経路に希ガスを供給し希ガスプラズマを生成させ、経路に改質ガスを供給して希ガス・改質ガス混合プラズマへ移行させ、希ガスの供給を停止して改質ガスプラズマを生成し改質対象である改質ガスを改質する制御を行うことを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、大気圧において、プラズマを用いて、2種以上の原子から構成されるガスを2種以上のガスに改質することができる。また、先に希ガスプラズマを生成した後、改質ガスの供給を開始し、希ガス・改質ガス混合プラズマを経て改質ガスプラズマへ移行させるため、改質前の改質ガスの漏洩を無くすことができる。希ガスは漏洩したとしても不活性ガスであり、地球環境に直接悪影響を与えない。
【0014】
請求項10記載の本発明は、経路の下流側に切替手段を介して改質した後の改質後ガスを取り出す分岐経路を備えたことを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、希ガスの混入していない改質後ガスを取り出して有効利用することができる。
【0015】
請求項11記載の本発明は、分岐経路を改質後ガスの利用対象とする利用対象機器に接続することを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、利用対象機器において希ガスの混入していない改質後ガスを有効利用することができる。
【0016】
請求項12記載の本発明は、統合制御手段が、改質ガスプラズマを用いて改質ガスの改質を行っている状態で経路へ希ガスを供給し、改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成し、経路への改質ガスの供給を止めて希ガスプラズマに移行させ、希ガスの供給を止める制御を行うことを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、改質ガスの改質を停止させるに当り、生成している改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて改質ガスの供給を止め、さらに希ガスプラズマへ移行させた後、希ガスの供給を止めるため、改質後ガスの漏洩を無くすことができる。
【0017】
請求項13記載の本発明は、統合制御手段が、第2希ガス・改質ガス混合プラズマが生成される前に、経路の下流側に有した分岐経路への改質後ガスの供給を停止する制御を行うことを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、分岐経路には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが分岐経路に流れることを防止できる。
【0018】
請求項14記載の本発明は、統合制御手段が、第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成の前に、改質した改質後ガスを利用対象機器に供給することを停止する制御を行うことを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、利用対象機器には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが利用対象機器に流れることを防止できる。
【0019】
請求項15記載の本発明は、統合制御手段が、希ガスプラズマに移行した以降で、プラズマ化手段の機能を停止する制御を行うことを特徴とする。
請求項15に記載の本発明によれば、希ガスだけが流れる状態にして機能を停止し、プラズマ化手段の不要な稼働を防止して省エネに資することができる。
【0020】
請求項16記載の本発明は、統合制御手段が、希ガスプラズマの生成状態を検出してプラズマ化手段の機能を調整する制御を行うことを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、プラズマの生成状態を検出した結果に基づいて調整することができる。
【0021】
請求項17記載の本発明は、希ガスプラズマ、希ガス・改質ガス混合プラズマ、及び改質ガスプラズマの少なくとも1つの生成状態を検出する発光検出手段を備えたことを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、プラズマの生成状態を発光検出手段により確認することができる。
【0022】
請求項18記載の本発明は、プラズマ化手段が、マイクロ波を利用した放電用電極を有したマイクロ波放電器であり、放電用電極を経路に臨ませ、放電用電極の基部を同心円状に円筒絶縁体で取り囲んだ構成を有することを特徴とする。
請求項18に記載の本発明によれば、放電用電極の基部からのマイクロ波の放電を防止し、放電用電極の先端からマイクロ波を放電することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の改質ガスのプラズマ改質方法によれば、大気圧において、プラズマを用いて、2種以上の原子から構成されるガスを2種以上のガスに改質することができる。また、先に希ガスプラズマを生成した後、改質ガスの供給を開始し、希ガス・改質ガス混合プラズマを経て改質ガスプラズマへ移行させるため、改質前の改質ガスの漏洩を無くすことができる。希ガスは漏洩したとしても不活性ガスであり、地球環境に直接悪影響を与えない。
【0024】
また、改質ステップの後に、経路の下流側に有した分岐経路に改質した後の改質後ガスを導き、改質後ガスを取り出す改質後ガス分離ステップを有する場合には、希ガスの混入していない改質後ガスを取り出して有効利用することができる。
【0025】
また、改質後ガス分離ステップの後に、改質した改質後ガスを利用対象に供給する改質後ガス供給ステップを有する場合には、利用対象において希ガスの混入していない改質後ガスを有効利用することができる。
【0026】
また、改質ステップで改質ガスプラズマを用いて改質ガスの改質を行っている状態で、経路へ希ガスを供給し改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させる第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップと、経路への改質ガスの供給を止めて希ガスプラズマに移行させる第2希ガスプラズマ生成ステップと、希ガスの供給を止める希ガス供給停止ステップとを有する場合には、改質ガスの改質を停止させるに当り、生成している改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて改質ガスの供給を止め、さらに希ガスプラズマへ移行させた後、希ガスの供給を止めるため、改質後ガスの漏洩を無くすことができる。
【0027】
また、第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップの前で、経路の下流側に有した分岐経路への改質後ガスの供給を停止する場合には、分岐経路には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが分岐経路に流れることを防止できる。
【0028】
また、第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップの前に、改質した改質後ガスを改質後ガスの利用対象に供給することを停止する改質後ガス供給停止ステップを有する場合には、利用対象には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが利用対象に流れることを防止できる。
【0029】
また、第2希ガスプラズマ生成ステップで希ガスプラズマに移行した後に、プラズマ化手段の機能を停止する場合には、希ガスだけが流れる状態にして機能を停止し、プラズマ化手段の不要な稼働を防止して省エネに資することができる。
【0030】
また、少なくとも希ガスプラズマ生成ステップと改質ステップで、希ガスプラズマと改質ガスプラズマの生成状態を検出してプラズマ化手段の機能を調整する場合には、プラズマの生成状態を検出した結果に基づいて調整することができる。
【0031】
また、本発明の改質ガスのプラズマ改質システムによれば、大気圧において、プラズマを用いて、2種以上の原子から構成されるガスを2種以上のガスに改質することができる。また、先に希ガスプラズマを生成した後、改質ガスの供給を開始し、希ガス・改質ガス混合プラズマを経て改質ガスプラズマへ移行させるため、改質前の改質ガスの漏洩を無くすことができる。希ガスは漏洩したとしても不活性ガスであり、地球環境に直接悪影響を与えない。
【0032】
また、経路の下流側に切替手段を介して改質した後の改質後ガスを取り出す分岐経路を備えた場合には、希ガスの混入していない改質後ガスを取り出して有効利用することができる。
【0033】
また、分岐経路を改質後ガスの利用対象とする利用対象機器に接続する場合には、利用対象機器において希ガスの混入していない改質後ガスを有効利用することができる。
【0034】
また、統合制御手段が、改質ガスプラズマを用いて改質ガスの改質を行っている状態で経路へ希ガスを供給し、改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成し、経路への改質ガスの供給を止めて希ガスプラズマに移行させ、希ガスの供給を止める制御を行う場合には、改質ガスの改質を停止させるに当り、生成している改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて改質ガスの供給を止め、さらに希ガスプラズマへ移行させた後、希ガスの供給を止めるため、改質後ガスの漏洩を無くすことができる。
【0035】
また、統合制御手段が、第2希ガス・改質ガス混合プラズマが生成される前に、経路の下流側に有した分岐経路への改質後ガスの供給を停止する制御を行う場合には、分岐経路には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが分岐経路に流れることを防止できる。
【0036】
また、統合制御手段が、第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成の前に、改質した改質後ガスを利用対象機器に供給することを停止する制御を行う場合には、利用対象機器には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが利用対象機器に流れることを防止できる。
【0037】
また、統合制御手段が、希ガスプラズマに移行した以降で、プラズマ化手段の機能を停止する制御を行う場合には、希ガスだけが流れる状態にして機能を停止し、プラズマ化手段の不要な稼働を防止して省エネに資することができる。
【0038】
また、統合制御手段が、希ガスプラズマの生成状態を検出してプラズマ化手段の機能を調整する制御を行う場合には、プラズマの生成状態を検出した結果に基づいて調整することができる。
【0039】
また、希ガスプラズマ、希ガス・改質ガス混合プラズマ、及び改質ガスプラズマの少なくとも1つの生成状態を検出する発光検出手段を備えた場合には、プラズマの生成状態を発光検出手段により確認することができる。
【0040】
また、プラズマ化手段が、マイクロ波を利用した放電用電極を有したマイクロ波放電器であり、放電用電極を経路に臨ませ、放電用電極の基部を同心円状に円筒絶縁体で取り囲んだ構成を有する場合には、放電用電極の基部からのマイクロ波の放電を防止し、放電用電極の先端からマイクロ波を放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の実施形態による改質ガスのプラズマ改質システムの機能構成図
図2】同プラズマ化手段の構成図
図3】同プラズマ化制御手段の構成例を示す図
図4-1】同改質ガスのプラズマ改質方法のフロー図
図4-2】同改質ガスのプラズマ改質方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の実施形態による改質ガスのプラズマ改質方法、及びプラズマ改質システムについて説明する。
図1は改質ガスのプラズマ改質システムの機能構成図である。
改質ガスのプラズマ改質システムは、改質対象である改質ガスをプラズマ化することにより改質する改質システムであって、希ガスを供給する希ガスボンベ等の希ガス供給源10と、希ガスの供給量を制御する希ガス流量制御手段20と、改質ガスを供給する改質ガスボンベ等の改質ガス供給源30と、改質ガスの供給量を制御する改質ガス流量制御手段40と、希ガス及び改質ガスが供給されるガス管等の経路50と、経路50に臨ませた改質器としてのプラズマ化手段60と、プラズマ化手段60を制御するマイクロ波制御器等のプラズマ化制御手段70と、希ガス流量制御手段20、改質ガス流量制御手段40、及びプラズマ化制御手段70を統合的に制御する統合制御器等の統合制御手段80と、経路50の下流側に位置する流れ方向制御器等の切替手段90と、切替手段90に接続された分岐経路100と、プラズマの生成状態を検出する発光検出手段110を備える。
希ガス流量制御手段20、改質ガス流量制御手段40、及びプラズマ化制御手段70は、それぞれ統合制御手段80と通信ケーブル120で接続されている。プラズマ化制御手段70とプラズマ化手段60は同軸ケーブル等の電力伝送手段130で接続されている。
希ガス流量制御手段20と改質ガス流量制御手段40には、流量制御器を用いている。流量制御器は、オン/オフ型と流量調節型のいずれであってもよい。
【0043】
統合制御手段80は、経路50を介しプラズマ化手段60に希ガスを供給して希ガスプラズマを生成させ、経路50を介しプラズマ化手段60に改質ガスを供給して希ガス・改質ガス混合プラズマへ移行させ、希ガスの供給を停止して改質ガスプラズマを生成し改質対象である改質ガスを改質する制御を行う。これにより、大気圧において、プラズマを用いて、2種以上の原子から構成されるガスを2種以上のガスに改質することができる。また、先に希ガスプラズマを生成した後、改質ガスの供給を開始し、希ガス・改質ガス混合プラズマを経て改質ガスプラズマへ移行させるため、改質前の改質ガスの漏洩を無くすことができる。希ガスは漏洩したとしても不活性ガスであり、地球環境に直接悪影響を与えない。
改質ガス(改質対象のガス)は、例えば、アンモニア、メタン、又は二酸化炭素であるが、これに限定されるものではなく、有機化合物やGHG(Greenhouse Gas)等も回収や貯蔵ができれば、改質や分解することが可能である。
使用可能な希ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等が挙げられる。これらの希ガスはどれもプラズマ化しやすい。また、この中ではアルゴンが最も安価である。
【0044】
切替手段90は、希ガス又は希ガスと改質後のガスの混合ガスが流出するガス流出口91と、改質後のガスが流出するガス流出口92を有する。ガス流出口92には、改質した後の改質後ガスを取り出す分岐経路100の一端が接続されており、これにより、希ガスの混入していない改質後ガスを取り出して有効利用することができる。
改質ガスをアンモニアとした場合の改質後ガスの使用例としては、アンモニアを100%改質した際に生成される水素と窒素において、水素は燃焼器や燃料電池に利用することができ、アンモニアを一部改質した際に生成される水素及び未改質アンモニアは燃焼器に利用することができる。また、改質ガスをメタンとした場合の改質後ガスの使用例としては、メタンを100%改質した際に生成される水素と炭素において、水素は燃焼器や燃料電池に、炭素は工業用材料として利用することができる。さらに、改質ガスを二酸化炭素とした場合の改質後ガスの使用例としては、二酸化炭素を100%改質した際に生成される酸素と一酸化炭素と炭素は工業用材料として利用することができる。
【0045】
分岐経路100の他端は、改質後ガスの利用対象とする利用対象機器140に接続している。これにより、利用対象機器140において希ガスの混入していない改質後ガスを有効利用することができる。
例えば、アンモニアやメタン改質後ガスにおける水素は、エンジンやタービン等の燃焼器や燃料電池等の利用対象機器140においての使用が想定される。また、メタン改質後ガスにおける炭素や二酸化炭素改質後ガスにおける一酸化炭素、炭素又は酸素は工業用途での利用が想定される。
【0046】
統合制御手段80は、改質ガスプラズマを用いて改質ガスの改質を行っている状態で経路50へ希ガスを供給し、改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成し、経路50への改質ガスの供給を止めて希ガスプラズマに移行させ、希ガスの供給を止める制御を行う。このように、改質ガスの改質を停止させるに当り、生成している改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて改質ガスの供給を止め、さらに希ガスプラズマへ移行させた後、希ガスの供給を止めることにより、改質後ガスの漏洩を無くすことができる。
【0047】
また、統合制御手段80は、第2希ガス・改質ガス混合プラズマが生成される前に、経路50の下流側に有した分岐経路100への改質後ガスの供給を停止する制御を行う。これにより、分岐経路100には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが分岐経路100に流れることを防止できる。
【0048】
また、統合制御手段80は、第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成の前に、改質した改質後ガスを改質後ガス利用機等の利用対象機器140に供給することを停止する制御を行う。これにより、利用対象機器140には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが利用対象機器140に流れることを防止できる。
【0049】
また、統合制御手段80は、後述する第2希ガスプラズマ生成ステップS10で希ガスプラズマに移行した以降で、プラズマ化手段60の機能を停止する制御を行う。これにより、希ガスだけが流れる状態にして機能を停止し、プラズマ化手段60の不要な稼働を防止して省エネに資することができる。
【0050】
また、統合制御手段80は、希ガスプラズマの生成状態を検出してプラズマ化手段60の機能を調整する制御を行う。これにより、プラズマの生成状態を検出した結果に基づいて調整することができる。
【0051】
発光検出手段110は、統合制御手段80と通信ケーブル120で接続されており、希ガスプラズマと、希ガス・改質ガス混合プラズマと、改質ガスプラズマの少なくとも1つの生成状態を検出する。これにより、プラズマの生成状態を発光検出手段により確認することができる。
【0052】
図2はプラズマ化手段の構成図である。
プラズマ化手段60は、マイクロ波を利用するマイクロ波放電器であり、同軸ケーブル等の電力伝送手段130を接続するパネルマウント同軸コネクタ64の中心導体に放電用電極(金属棒:タングステン棒等の耐熱金属棒)65が圧入されており、放電用電極65の周囲にはガス流通経路としての石英管等の円筒絶縁体(誘電体)68を有する。
パネルマウント同軸コネクタ64の基部の中心導体円周外側には、放電防止用の円筒絶縁体(誘電体)66としてのPTFEシリンダが配置されている。パネルマウント同軸コネクタ64の中心導体の基部を同心円状に円筒絶縁体(放電防止用)66で取り囲んだ構成を有することにより、パネルマウント同軸コネクタ64の中心導体の基部からの放電を防止し、放電用電極65の先端からマイクロ波を放電することができる。
放電用電極65の先端角度は、90°よりも鋭角とすることにより、放電用電極65の先端にプラズマを生成しやすくする。なお、放電用電極65の先端角度は、生成されるプラズマの大きさにも関係する。また、放電用電極65の長さは、改質ガスのプラズマ生成時に、同軸ケーブル等の電力伝送手段130とパネルマウント同軸コネクタ64のインピーダンスが整合する長さとする。
なお、インピーダンス整合は、パネルマウント同軸コネクタ64からの反射電力を低減し、プラズマ化手段60からパネルマウント同軸コネクタ64へのマイクロ波電力伝送効率を向上させるために必要となる(インピーダンス整合を考慮しないと、パネルマウント同軸コネクタ64からの反射電力が増大し、プラズマ化手段60のマイクロ波電力伝送効率が低下する)。また、円筒絶縁体(放電防止用)66の空間に突出した高さは、放電用電極65の空間に突出した高さの10~20%に設定することが、放電防止、マイクロ波電力伝送効率、及びプラズマ生成の面から望ましい。
パネルマウント同軸コネクタ64には、ガス流入口61とガス流出口62を有する金属製のアダプタ67が取り付けられている。アダプタ67のガス流入口61には管継手(チューブフィッティング)63が取り付けられ、ガス流出口62にはガス流通経路として石英製の円筒絶縁体(誘電体)68が取り付けられている。ガス流入口61には経路50が接続され、ガス流出口62は切替手段90が接続される。また、円筒絶縁体(ガス流通経路用)68は経路50に臨むように配置される。
【0053】
図3はプラズマ化制御手段の構成例を示す図であり、図3(a)は第一の構成例、図3(b)は第二の構成例である。
第一の構成例は、プラズマ化制御手段70として用いられるマイクロ波制御器が、マグネトロン71と、100V,50Hz等の商用電源72と、同軸導波管変換器73と、マグネトロン発振用高電圧発生器74と、マグネトロン71のフィラメント加熱用変圧器75を備えたものである。
第二の構成例は、プラズマ化制御手段70として用いられるマイクロ波制御器が、マグネトロン71と、100V,50Hz等の商用電源72と、同軸導波管変換器73と、可変変圧器76と、MOT(Microwave Oven Transformer)77と、倍電圧回路78を備えたものである。マグネトロン71、MOT77、及び倍電圧回路78は、一般的な電子レンジの構成機器であり、倍電圧回路78には半波倍電圧回路と全波倍電圧回路がある。
第一及び第二の構成例について、プラズマ化手段60のパネルマウント同軸コネクタ64との接続関係は、プラズマ化手段60の入力はパネルマウント同軸コネクタ64(メス)で、同軸導波管変換器73の出力は同軸コネクタ(オス)になっており、直接接続が可能である。また、これらの間に、同軸ケーブル(オス・メスコネクタ付き)を接続することも可能である。
【0054】
このように、マグネトロン71を用いると共に、マグネトロン71から放出するマイクロ波を同軸導波管変換器73を用いてパネルマウント同軸コネクタ64に導き、パネルマウント同軸コネクタ64とアダプタ67を接続し、パネルマウント同軸コネクタ64の中心導体に放電用電極65を取り付け、その周りにガス流通経路として石英管等の円筒絶縁体(誘電体)68を設けることにより、円筒絶縁体(ガス流通経路用)68内のガスに放電用電極65からマイクロ波エネルギーを供給し、ガスをプラズマ化できる設計・製作が容易な棒電極型マイクロ波プラズマ源を用いた、安価なマイクロ波プラズマ生成装置とすることができる。
【0055】
図4-1及び図4-2は改質ガスのプラズマ改質方法のフロー図であり、図4-1はシステム起動から改質後ガス取り出しまでのフローを示し、図4-2は運転中からシステム停止迄のフローを示している。
まず、切替手段90をOFF(順側)とする(S1:一回目流れ方向OFF切替ステップ)。
次に、希ガス流量制御手段(流量制御器)20を開け、プラズマ化手段60の臨んだ経路50に希ガス供給源10内の希ガスを供給する(S2:希ガス供給ステップ)。
次に、プラズマ化制御手段(マイクロ波制御器)70をONにし、希ガスに対してプラズマ化手段60を用いて希ガスプラズマを生成する(S3:希ガスプラズマ生成ステップ)。希ガスプラズマの生成状態は、発光検出手段110を用いた発光確認により検出し、必要に応じてプラズマ化制御手段70を調整する。
プラズマ化制御手段70の入力は、希ガスの供給開始からプラズマ生成までにかけて、徐々に出力を上げても良いが、希ガスがプラズマ化する出力を予め把握できている場合は、希ガスの供給開始直後にその出力まで一気に上げても良い。
【0056】
希ガスプラズマの生成が確認されたら、改質ガス流量制御手段(流量制御器)40を開け、経路50に改質ガス供給源30内の改質ガスを供給し希ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させる(S4:希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップ)。希ガス・改質ガス混合プラズマの生成状態は、発光検出手段110を用いた発光色確認やプラズマ形状変化確認により検出し、必要に応じてプラズマ化制御手段70を調整する。
希ガス・改質ガス混合プラズマを生成するのは、改質ガスを直接プラズマ化するには高出力が必要になる(希ガスと比較し改質ガスの解離・電離エネルギーが大きい)ので、電離エネルギーの小さい希ガスでプラズマを生成し、希ガスプラズマ中を飛び回る電子を改質ガスに衝突させることで、改質ガスもプラズマ化させるためである。すなわち、希ガス以外を直接プラズマ化するには高エネルギー(大電力)が必要となるため、プラズマ化しやすい希ガスプラズマを生成し、その希ガスプラズマ内に改質ガスを流入させることにより、改質ガスを容易にプラズマ化することができる。
なお、希ガス・改質ガス混合プラズマの生成までは、基本的にプラズマ化制御手段70による制御の必要はないが、改質ガス流量は徐々に増加する。
【0057】
希ガス・改質ガス混合プラズマの生成が確認されたら、希ガス流量制御手段20を閉じ、経路50への希ガスの供給を止めて希ガス・改質ガス混合プラズマを改質ガスプラズマへ移行させ、改質ガスプラズマを用いて改質対象である改質ガスの改質を行う(S5:改質ステップ)。これにより、大気圧において、プラズマを用いて、2種以上の原子から構成されるガスを2種以上のガスに改質することができる。また、先に希ガスプラズマを生成した後、改質ガスの供給を開始し、希ガス・改質ガス混合プラズマを経て改質ガスプラズマへ移行させるため、改質前の改質ガスの漏洩を無くすことができる。希ガスは漏洩したとしても不活性ガスであり、地球環境に直接悪影響を与えない。
希ガス・改質ガス混合プラズマの生成から改質ガスプラズマ生成までは、基本的にプラズマ化制御手段70による制御は必要ないが、プラズマ領域の拡大や電力伝送効率の向上のため、プラズマ化制御手段70で出力を調整する場合がある。
【0058】
次に、切替手段90をON(分岐側)とし、経路50の下流側に有した分岐経路100に改質した後の改質後ガスを導き、改質後ガスを取り出す(S6:改質後ガス分離ステップ)。これにより、希ガスの混入していない改質後ガスを取り出して有効利用することができる。
また、改質後ガス分離ステップS6の後に、改質した改質後ガスを利用対象機器(利用対象)140に供給する(S7:改質後ガス供給ステップ)。これにより、利用対象機器140において希ガスの混入していない改質後ガスを有効利用することができる。
【0059】
次に、図4-2に示すように、切替手段90をOFF(順側)とする(S8:二回目流れ方向OFF切替ステップ)。
次に、改質ガスプラズマを用いて改質ガスの改質を行っている状態で、希ガス流量制御手段20を開け、経路50へ希ガス供給源10内の希ガスを供給し改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させる(S9:第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップ)。希ガス・改質ガス混合プラズマの生成状態は、発光検出手段110を用いた発光色確認やプラズマ形状変化確認により検出し、必要に応じてプラズマ化制御手段70を調整する。
【0060】
希ガス・改質ガス混合プラズマの生成が確認されたら、改質ガス流量制御手段40を閉じ、経路50への改質ガスの供給を止めて希ガスプラズマに移行させる(S10:第2希ガスプラズマ生成ステップ)。希ガスプラズマの生成状態は、発光検出手段110を用いた発光確認により検出し、必要に応じてプラズマ化制御手段70を調整する。
希ガスプラズマの生成が確認されたら、プラズマ化手段60をOFFにして機能を停止する(S11:プラズマ化手段停止ステップ)。また、希ガス流量制御手段20を閉じて希ガスの供給を止める(S12:希ガス供給停止ステップ)。このように、プラズマ改質システムを停止させるに当り、生成している改質ガスプラズマを希ガス・改質ガス混合プラズマに移行させて改質ガスの供給を止め、さらに希ガスプラズマへ移行させた後、希ガスの供給を止めることにより、改質後ガスの漏洩を無くすことができる。
【0061】
また、第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップS9の前に、二回目流れ方向OFF切替ステップS8において切替手段90をOFF(順側)にして、経路50の下流側に有した分岐経路100への改質後ガスの供給を停止することにより、分岐経路100には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが分岐経路100に流れることを防止できる。
また、第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップS9の前に、二回目流れ方向OFF切替ステップS8おいて切替手段90をOFF(順側)にして、利用対象機器(利用対象)140への改質後ガスの供給を停止する(改質後ガス供給停止ステップ)ことにより、利用対象機器140には改質後ガスだけを流し、第2希ガス・改質ガス混合プラズマを生成する際に希ガスが利用対象機器140に流れることを防止できる。
また、第2希ガスプラズマ生成ステップS10で希ガスプラズマに移行した後は、プラズマ化手段停止ステップS11においてプラズマ化手段60の機能を停止することにより、希ガスだけが流れる状態にして機能を停止し、プラズマ化手段60の不要な稼働を防止して省エネに資することができる。
また、少なくとも希ガスプラズマ生成ステップS3と改質ステップS5で、希ガスプラズマと改質ガスプラズマの生成状態を検出してプラズマ化手段60の機能を調整することにより、プラズマの生成状態を検出した結果に基づいて調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、大気汚染物質や燃料等のガスを容易にプラズマ化し改質することができるため、大気汚染物質の改質浄化による大気汚染防止、又は炭化水素燃料やアンモニア等の燃料の改質による水素生成等によりガス燃焼器等からのGHG削減に利用できる。また、改質対象である改質ガスを燃料ガスとして扱い、難燃性のアンモニア等をプラズマ化して燃焼させることにも利用できる。
【符号の説明】
【0063】
10 希ガス供給源
20 希ガス流量制御手段
30 改質ガス供給源
40 改質ガス流量制御手段
50 経路
60 プラズマ化手段(マイクロ波放電器)
65 放電用電極
66 円筒絶縁体(放電防止用)
68 円筒絶縁体(ガス流通経路用)
70 プラズマ化制御手段
80 統合制御手段
90 切替手段
100 分岐経路
110 発光検出手段
140 利用対象機器(利用対象)
S2 希ガス供給ステップ
S3 希ガスプラズマ生成ステップ
S4 希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップ
S5 改質ステップ
S6 改質後ガス分離ステップ
S7 改質後ガス供給ステップ
S9 第2希ガス・改質ガス混合プラズマ生成ステップ
S10 第2希ガスプラズマ生成ステップ
S12 希ガス供給停止ステップ
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】