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特開2024-145057ガスバリア性コート材、積層体、包装材、および、積層体の製造方法
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  • 特開-ガスバリア性コート材、積層体、包装材、および、積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145057
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ガスバリア性コート材、積層体、包装材、および、積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20241004BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20241004BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241004BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241004BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09D175/04
B32B9/00 A
B32B27/40
B32B27/10
B32B29/00
C09D7/61
C09D7/63
C08G18/10
C08G18/76 014
C08G18/75 010
C08G18/32 003
C08G18/08 019
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057293
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祥子
(72)【発明者】
【氏名】矢木 徹
(72)【発明者】
【氏名】中川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】吉村 寿洋
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AC00A
4F100AH02A
4F100AH03A
4F100AH06A
4F100AK25C
4F100AK51A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CC00A
4F100DG10B
4F100EH46A
4F100EJ08A
4F100EJ42
4F100EJ67A
4F100GB15
4F100JD02A
4F100JD03
4F100JD04
4F100JK17
4F100JM01C
4F100YY00A
4J034BA06
4J034CA02
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
4J034CA17
4J034CA22
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC01
4J034CC03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA13
4J034HA14
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC73
4J034JA42
4J034QB19
4J034QC05
4J034RA05
4J034RA06
4J038DG051
4J038DG261
4J038DG281
4J038GA06
4J038HA506
4J038HA526
4J038HA546
4J038JC34
4J038KA08
4J038MA08
4J038MA09
4J038MA10
4J038NA08
4J038PA06
4J038PA07
4J038PA19
4J038PB04
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える積層体を得ることができるガスバリア性コート材、そのガスバリア性コート材を使用して得られる積層体、その積層体を含有する包装材、および、その積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】ガスバリア性コート材は、ガスバリア性樹脂と添加剤とを含有する。ガスバリア性樹脂は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含有する。添加剤は、層状無機化合物と、シランカップリング剤とを含有する。層状無機化合物1質量部に対するシランカップリング剤の含有量が、0.03質量部以上2.7質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性樹脂と添加剤とを含有するガスバリア性コート材であって、
前記ガスバリア性樹脂は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含有し、
前記添加剤は、層状無機化合物と、シランカップリング剤とを含有し、
前記層状無機化合物1質量部に対する前記シランカップリング剤の含有量が、0.03質量部以上2.7質量部以下である、ガスバリア性コート材。
【請求項2】
前記ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応生成物を含有し、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応生成物を含有し、
前記ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含有し、
前記活性水素基含有成分は、炭素数2~6の短鎖ジオールと、アニオン性基を含有する活性水素化合物とを含有する、請求項1に記載のガスバリア性コート材。
【請求項3】
前記アニオン性基を含有する活性水素化合物が、カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物を含有し、
前記シランカップリング剤が、
前記カルボキシ基と反応可能なエポキシ基と、
前記層状無機化合物と反応可能なアルコキシシリル基と
を含有する、請求項2に記載のガスバリア性コート材。
【請求項4】
前記層状無機化合物1質量部に対する前記シランカップリング剤の含有量が、0.3質量部以上1.1質量部以下である、請求項3に記載のガスバリア性コート材。
【請求項5】
基材と、前記基材の少なくとも一方側に配置されるガスバリア層とを備え、
前記ガスバリア層は、請求項1に記載のガスバリア性コート材の硬化膜を含有する、
積層体。
【請求項6】
前記基材が、紙基材である、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記基材と前記ガスバリア層との間に、目止め層が介在されている、請求項5に記載の積層体。
【請求項8】
前記ガスバリア層の乾燥質量が、2.5g/m以上である、請求項5に記載の積層体。
【請求項9】
請求項5に記載の積層体を含有する、包装材。
【請求項10】
請求項1に記載のガスバリア性コート材を、基材の少なくとも一方側に塗布する塗布工程と、
前記ガスバリア性コート材の塗膜を100℃以上で1時間以上加熱し、前記ガスバリア性コート材の硬化膜を形成する硬化工程と
を備える、積層体の製造方法。
【請求項11】
前記基材が、紙基材であり、
前記積層体の製造方法は、
前記塗布工程の前に、前記基材の少なくとも一方側の表面に、目止め層を形成する目止め層形成工程を備え、
前記塗布工程では、前記目止め層の少なくとも一方側の表面に、前記ガスバリア性コート材を塗布する
、請求項10に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性コート材、積層体、包装材、および、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材とガスバリア層とを備える積層体が、広く知られている。ガスバリア層は、例えば、優れた酸素バリア性を有する。そのため、積層体は、例えば、包装材分野において、好適に使用されている。
【0003】
積層体は、例えば、基材の表面に、ガスバリア性コート材を塗布および乾燥させ、ガスバリア層を形成することによって、形成される。
【0004】
例えば、以下の方法で得られる積層体が、提案されている。この方法では、まず、エチレン含有量8モル%のポリビニルアルコール系重合体水溶液(PVA系重合体溶液)を準備する。また、この方法では、3gの天然モンモリロナイトと、0.9gのシランカップリング剤(γ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)とを混合し、シラン変性無機層状化合物の分散剤を得る。次いで、この方法では、PVA系重合体溶液と、シラン変性無機層状化合物の分散剤とを混合し、コート液を得る。その後、コート液を、セロハン紙のプライマー処理面に塗布し、70℃で5分乾燥させ、130℃で2分熱処理する。これにより、コートフィルム(積層体)を得る(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-268184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、積層体には、優れた酸素バリア性に加えて、優れた水蒸気バリア性を有することが、要求されている。とりわけ、基材が紙である場合には、積層体が折り曲げられる場合がある。そのため、積層体が折り曲げられた場合にも、積層体には、優れた酸素バリア性と、優れた水蒸気バリア性とが、要求される。
【0007】
より具体的には、積層体が折り曲げ後にも、積層体の酸素透過量(20℃、80%RH)が、50(cc/m・day・atm)未満であり、かつ、積層体の水蒸気透過量(40℃、90%RH)が50(g/m・day)未満であることが、要求される。
【0008】
本発明は、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える積層体を得ることができるガスバリア性コート材、そのガスバリア性コート材を使用して得られる積層体、その積層体を含有する包装材、および、その積層体の製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、ガスバリア性樹脂と添加剤とを含有するガスバリア性コート材であって、前記ガスバリア性樹脂は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含有し、前記添加剤は、層状無機化合物と、シランカップリング剤とを含有し、前記層状無機化合物1質量部に対する前記シランカップリング剤の含有量が、0.03質量部以上2.7質量部以下である、ガスバリア性コート材を、含んでいる。
【0010】
本発明[2]は、前記ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応生成物を含有し、前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応生成物を含有し、前記ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含有し、前記活性水素基含有成分は、炭素数2~6の短鎖ジオールと、アニオン性基を含有する活性水素化合物とを含有する、上記[1]に記載のガスバリア性コート材を、含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記アニオン性基を含有する活性水素化合物が、カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物を含有し、前記シランカップリング剤が、前記カルボキシ基と反応可能なエポキシ基と、前記層状無機化合物と反応可能なアルコキシシリル基とを含有する、上記[2]に記載のガスバリア性コート材を、含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、前記層状無機化合物1質量部に対する前記シランカップリング剤の含有量が、0.3質量部以上1.1質量部以下である、上記[3]に記載のガスバリア性コート材を、含んでいる。
【0013】
本発明[5]は、基材と、前記基材の少なくとも一方側に配置されるガスバリア層とを備え、前記ガスバリア層は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のガスバリア性コート材の硬化膜を含有する、積層体を、含んでいる。
【0014】
本発明[6]は、前記基材が、紙基材である、上記[5]に記載の積層体を、含んでいる。
【0015】
本発明[7]は、前記基材と前記ガスバリア層との間に、目止め層が介在されている、上記[5]または[6]に記載の積層体を、含んでいる。
【0016】
本発明[8]は、さらに、前記ガスバリア層の乾燥質量が、2.5g/m以上である、上記[5]~[7]のいずれか一項に記載の積層体を、含んでいる。
【0017】
本発明[9]は、上記[5]~[8]のいずれか一項に記載の積層体を含有する、包装材を、含んでいる。
【0018】
本発明[10]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のガスバリア性コート材を、基材の少なくとも一方側に塗布する塗布工程と、前記ガスバリア性コート材の塗膜を、100℃以上で1時間以上加熱し、前記ガスバリア性コート材の硬化膜を形成する硬化工程とを備える、積層体の製造方法を、含んでいる。
【0019】
本発明[11]は、前記基材が、紙基材であり、前記積層体の製造方法は、前記塗布工程の前に、前記基材の少なくとも一方側の表面に、目止め層を形成する目止め層形成工程を備え、前記塗布工程では、前記目止め層の少なくとも一方側の表面に、前記ガスバリア性コート材を塗布する、上記[10]に記載の積層体の製造方法を、含んでいる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガスバリア性コート材は、ガスバリア性樹脂と添加剤とを含有する。そして、ガスバリア性樹脂は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含有する。さらに、添加剤が、層状無機化合物と、シランカップリング剤とを、所定割合で含有する。そのため、上記のガスバリア性コート材によれば、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える積層体を得ることができる。
【0021】
本発明の積層体は、上記のガスバリア性コート材を使用して得られる。そのため、上記の積層体は、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える。
【0022】
本発明の積層体は、上記の積層体を含有するため、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える。
【0023】
本発明の積層体の製造方法では、上記のガスバリア性コート材が使用される。そのため、上記の積層体の製造方法によれば、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.ガスバリア性コート材
ガスバリア性コート材は、ガスバリア性樹脂と添加剤とを含有する。より具体的には、ガスバリア性コート材は、ガスバリア性樹脂および添加剤が水分散されてなる水系ディスパージョンである。
【0026】
(1)ガスバリア性樹脂
ガスバリア性樹脂は、所定値以下の酸素透過度を有する樹脂である。より具体的には、ガスバリア性樹脂からなる厚み10μmのフィルムの酸素透過度は、例えば、室温下において、1(cc/m・day・atm)以下である。なお、酸素透過度は、JIS K7126(2006年)B法に準拠して、酸素透過度測定装置(MOCON社、OX-TRAN2/22H)を使用して、測定される。測定条件は、20℃および80%RH(相対湿度)である。
【0027】
ガスバリア性樹脂は、必須成分として、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含有する。ガスバリア性樹脂は、さらに、任意成分として、その他のガスバリア性樹脂を含有できる。その他のガスバリア性樹脂は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を除くガスバリア性樹脂である。その他のガスバリア性樹脂としては、例えば、ガスバリア性アクリル樹脂およびガスバリア性ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。その他のガスバリア性樹脂の含有割合は、ガスバリア性樹脂の総量に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、0質量%である。つまり、ガスバリア性樹脂は、好ましくは、その他のガスバリア性樹脂を含有せず、ガスバリア性ポリウレタン樹脂からなる。
【0028】
なお、ガスバリア性樹脂は、例えば、ガスバリア性樹脂の水分散液(水系ディスパージョン)として、製造される。例えば、ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、ポリウレタンディスパージョン(PUD)として製造される。
【0029】
ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、上記の所定値以下の酸素透過度を有する樹脂である。より具体的には、ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応生成物を含有し、好ましくは、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応生成物からなる。イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との反応生成物を含有し、好ましくは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との反応生成物からなる。
【0030】
すなわち、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との一次反応生成物が、イソシアネート基末端プレポリマーである。そして、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との二次反応生成物が、ガスバリア性ポリウレタン樹脂である。
【0031】
[ポリイソシアネート成分]
ポリイソシアネート成分は、酸素バリア性および水蒸気バリア性の向上を図る観点から、例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含有する。
【0032】
キシリレンジイソシアネート(XDI)としては、例えば、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-XDI)、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)、および、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-XDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。キシリレンジイソシアネート(XDI)として、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)、および、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-XDI)が挙げられ、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)が挙げられる。
【0033】
水添キシリレンジイソシアネート(別名:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(HXDI)としては、例えば、1,2-水添キシリレンジイソシアネート(1,2-HXDI)、1,3-水添キシリレンジイソシアネート(1,3-HXDI)、および、1,4-水添キシリレンジイソシアネート(1,4-HXDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)として、好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネート(1,3-HXDI)、および、1,4-水添キシリレンジイソシアネート(1,4-HXDI)が挙げられ、より好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネート(1,3-HXDI)が挙げられる。
【0034】
また、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート誘導体および/または水添キシリレンジイソシアネート誘導体が含まれる。誘導体としては、例えば、多量体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール付加体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、および、カルボジイミド変性体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0035】
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、単量体が挙げられ、より好ましくは、キシリレンジイソシアネートの単量体が挙げられ、さらに好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)の単量体が挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネート成分は、必要に応じて、その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)を含有できる。
【0037】
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く。)、芳香族ポリイソシアネート、および、芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く。)が挙げられる。
【0038】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。鎖状脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。また、鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ジイソシアネートの上記誘導体が含まれる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0039】
脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く。)としては、例えば、脂環族ジイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く。)が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、および、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。また、脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、脂環族ジイソシアネートの上記誘導体が含まれる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0040】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。また、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネートの上記誘導体が含まれる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0041】
芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く。)としては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く。)が挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。また、芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートの上記誘導体が含まれる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0042】
その他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。その他のポリイソシアネートとして、好ましくは、脂環族ポリイソシアネート、より好ましくは、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネート成分として、酸素バリア性および水蒸気バリア性の向上を図る観点から、とりわけ好ましくは、キシリレンジイソシアネート(XDI)と、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)との併用が挙げられる。
【0044】
キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、80質量%以上である。また、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、95質量%以下、さらに好ましくは、90質量%以下である。
【0045】
その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上である。また、その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、20質量%以下である。
【0046】
[活性水素基含有成分]
活性水素基含有成分は、活性水素基を含有する有機化合物である。活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられ、好ましくは、水酸基が挙げられる。
【0047】
活性水素基含有成分は、酸素透過量および水蒸気透過量を低減する観点から、例えば、炭素数2~6の短鎖ジオールを含有する。また、活性水素基含有成分は、水分散性を向上する観点から、例えば、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、および/または、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物を含有する。好ましくは、活性水素基含有成分は、水分散性を向上する観点から、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物を含有する。すなわち、活性水素基含有成分は、好ましくは、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物を含有する。
【0048】
炭素数2~6の短鎖ジオールは、1分子中に2つの水酸基を有する、炭素数2~6の有機化合物である。短鎖ジオールとしては、例えば、炭素数2~6のアルカンジオール、炭素数2~6のエーテルジオール、および、炭素数2~6のアルケンジオールが挙げられる。炭素数2~6のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、および、1,4-シクロヘキサンジオールが挙げられる。炭素数2~6のエーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。炭素数2~6のアルケンジオールとしては、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ガスバリア性の観点から、好ましくは、炭素数2~6のアルカンジオールが挙げられ、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0049】
炭素数2~6の短鎖ジオールの含有割合は、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部以上である。炭素数2~6の短鎖ジオールの含有割合は、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0050】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、1分子中に1つ以上のアニオン性基と2つ以上の活性水素基とを併有する有機化合物である。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基(カルボン酸基)およびスルホ基(スルホン酸基)が挙げられ、好ましくは、カルボキシ基が挙げられる。活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられ、好ましくは、水酸基が挙げられる。
【0051】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。つまり、アニオン性基を含有する活性水素化合物は、好ましくは、カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物を含有し、好ましくは、カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物からなる。
【0052】
カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、1分子中に1つのカルボキシ基と2つ以上の水酸基とを併有する有機化合物が挙げられ、好ましくは、1分子中に1つのカルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物が挙げられる。1分子中に1つのカルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物としては、例えば、カルボキシ基含有ジオールが挙げられる。カルボキシ基含有ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシアルカン酸が挙げられる。ジヒドロキシアルカン酸としては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、および、2,2-ジメチロール吉草酸が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。水分散性の観点から、好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0053】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物の含有割合は、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上である。また、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物の配合割合は、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0054】
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、1分子中に1つ以上のノニオン性基と2つ以上の活性水素基とを併有する有機化合物である。ノニオン性基としては、例えば、片末端封止ポリオキシエチレン基が挙げられる。すなわち、ノニオン性基は、片末端がアルコキシ基(例えば、炭素数1~4のアルコキシ基)により封止されたポリオキシエチレン基であると定義される。片末端が封止されず、両末端に水酸基を有するポリオキシエチレン基(すなわち、ポリオキシエチレングリコール)は、上記のポリオール化合物であって、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物に含まれない。活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられ、好ましくは、水酸基が挙げられる。
【0055】
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、より具体的には、片末端封止(片末端アルコキシ封止)ポリオキシエチレングリコール、および、ノニオン側鎖含有ポリオールが挙げられ、好ましくは、ノニオン側鎖含有ポリオールが挙げられる。ノニオン側鎖含有ポリオールとしては、例えば、ノニオン側鎖含有ジオールが挙げられる。ノニオン側鎖含有ジオールとしては、例えば、片末端アルコキシ封止ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールが挙げられる。これらノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、公知の方法で調製される。ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または2種類以上併用できる。ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0056】
活性水素基含有成分は、さらに、その他の低分子量ポリオールを含有できる。その他の低分子量ポリオールは、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオールである。その他の低分子量ポリオールとしては、例えば、炭素数7以上のジオール、および、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0057】
炭素数7以上のジオールは、1分子中に2つの水酸基を有する、炭素数7以上の有機化合物である。炭素数7以上のジオールとしては、例えば、炭素数7~20のアルカンジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、および、ビスフェノールAが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0058】
3価以上の低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を3つ以上有し、比較的低分子量の有機化合物である。比較的低分子量とは、分子量50以上650以下を示す。なお、低分子量ポリオールが分子量分布を有する場合、分子量は、GPC測定によるポリスチレン換算の数平均分子量を示す。3価以上の低分子量ポリオールとしては、例えば、3価アルコール、4価アルコール、5価アルコール、6価アルコール、7価アルコール、および、8価アルコールが挙げられる。3価以上の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価アルコールおよび4価アルコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、および、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールが挙げられる。4価アルコールとしては、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、および、ジグリセリンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0059】
その他の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0060】
その他の低分子量ポリオールの含有割合は、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、例えば、0質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上である。その他の低分子量ポリオールの含有割合は、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、8質量部以下である。
【0061】
また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの総量100質量部に対して、炭素数2~6の短鎖ジオールの含有割合が、例えば、80質量部以上、好ましくは、85質量部以上、より好ましくは、90質量部以上である。また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの総量100質量部に対して、炭素数2~6の短鎖ジオールの含有割合が、例えば、98質量部以下、好ましくは、95質量部以下である。また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの総量100質量部に対して、その他の低分子量ポリオールの含有割合が、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上である。また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの総量100質量部に対して、その他の低分子量ポリオールの含有割合が、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0062】
さらに、活性水素基含有成分は、さらに、高分子量ポリオールを含有できる。高分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物(重合物)である。高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、650を超過し、例えば、20000以下である。なお、数平均分子量は、GPC測定によるポリスチレン換算の数平均分子量を示す。高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用される。ガスバリア性の観点から、好ましくは、活性水素基含有成分は、高分子量ポリオールを含有しない。
【0063】
活性水素基含有成分は、好ましくは、炭素数2~6の短鎖ジオールと、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物とからなるか、または、炭素数2~6の短鎖ジオールと、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物と、3価以上の低分子量ポリオールとからなる。活性水素基含有成分は、より好ましくは、炭素数2~6の短鎖ジオールと、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物と、3価以上の低分子量ポリオールとからなる。
【0064】
イソシアネート基末端プレポリマーを合成する方法は、特に制限されない。例えば、上記した各成分を、所定の当量比で配合し、反応させる。
【0065】
より具体的には、活性水素基含有成分中の活性水素基(水酸基およびアミノ基)に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、1を超過し、好ましくは、1.1以上である。また、活性水素基含有成分中の活性水素基(水酸基およびアミノ基)に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、20以下、好ましくは、10以下である。
【0066】
[イソシアネート基末端プレポリマー]
イソシアネート基末端プレポリマーの合成では、公知の重合方法が採用される。重合方法としては、例えば、バルク重合および溶液重合が挙げられる。反応性を調整する観点から、重合方法として、好ましくは、溶液重合が採用される。バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して反応させる。反応温度は、例えば、75~85℃である。反応時間は、例えば、1~20時間である。溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を、有機溶剤中で配合して反応させる。反応温度は、例えば、20~80℃である。反応時間は、例えば、1~20時間である。有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。また、上記重合では、必要に応じて、触媒を添加できる。触媒としては、例えば、アミン系触媒および有機金属触媒が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。なお、触媒の添加量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0067】
また、イソシアネート基末端プレポリマーの合成では、上記重合を、反応生成液のイソシアネート基濃度が、所定のイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度に達するまで、継続させる。その後、必要に応じて、公知の除去方法で、反応生成液から、未反応のポリイソシアネート成分を除去する。除去方法としては、例えば、蒸留および抽出が挙げられる。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
【0068】
イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、例えば、4質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、6質量%以上である。また、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、17質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下である。
【0069】
また、イソシアネート基末端プレポリマーの平均イソシアネート基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.9以上、より好ましくは、2.0以上である。また、イソシアネート基末端プレポリマーの平均イソシアネート基数は、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
【0070】
上記のイソシアネート基末端プレポリマーが、アニオン性基を含有する活性水素化合物に由来するアニオン性基を有している場合、中和剤によって、イソシアネート基末端プレポリマーを中和し、アニオン性基の塩を形成させる。
【0071】
中和剤としては、慣用の塩基が挙げられる。塩基として、具体的には、有機塩基および無機塩基が挙げられる。なお、塩基は、ルイス塩基を示す。有機塩基は、有機成分を含むルイス塩基である。有機塩基としては、例えば、3級アミンおよび2級アミンが挙げられる。3級アミンとしては、例えば、トリアルキルアミンおよびアルカノールアミンが挙げられる。トリアルキルアミンとしては、例えば、炭素数1~4のトリアルキルアミンが挙げられる。そのようなトリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミンおよびトリエチルアミンが挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンが挙げられる。2級アミンとしては、例えば、複素環式アミンが挙げられる。複素環式アミンとしては、例えば、モルホリンが挙げられる。これら有機塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。無機塩基は、無機成分からなるルイス塩基である。無機塩基としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、および、アルカリ土類金属炭酸塩が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムが挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが挙げられる。アルカリ金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩としては、例えば、炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。これら無機塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。これらの中和剤は、単独使用または2種類以上併用できる。中和剤として、好ましくは、有機塩基が挙げられ、より好ましくは、3級アミンが挙げられ、さらに好ましくは、トリアルキルアミンが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリエチルアミン(TEA)が挙げられる。
【0072】
中和剤の添加量は、アニオン性基1当量に対して、例えば、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上である。また、中和剤の添加量は、アニオン性基1当量に対して、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1.0当量以下である。
【0073】
次いで、この方法では、イソシアネート基末端プレポリマー(一次反応生成物)と、鎖伸長剤とを反応させて、ガスバリア性ポリウレタン樹脂(二次反応生成物)を得る。例えば、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、水中で反応させることにより、ガスバリア性ポリウレタン樹脂が生成するとともに水分散される。
【0074】
[鎖伸長剤]
鎖伸長剤は、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長反応させる有機化合物である。鎖伸長剤は、複数の活性水素基を有している。
【0075】
鎖伸長剤としては、例えば、ポリアミンおよびアミノアルコールが挙げられる。ポリアミンとしては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、および、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンが挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミンおよびトリレンジアミンが挙げられる。芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-キシリレンジアミンおよび1,4-キシリレンジアミンが挙げられる。脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパンおよび1,3-ジアミノペンタンが挙げられる。ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。ポリオキシアルキレンエーテルジアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンが挙げられる。アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールおよび2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノールが挙げられる。
【0076】
また、鎖伸長剤としては、例えば、第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられる。第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランおよびN-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。さらに、鎖伸長剤としては、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられる。第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0077】
鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用できる。鎖伸長剤として、好ましくは、アミノアルコールが挙げられ、より好ましくは、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールが挙げられる。
【0078】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させる方法は、特に制限されない。例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させる。次いで、イソシアネート基末端プレポリマーが分散された水に、鎖伸長剤を添加し、水中で、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長させる。イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させる方法は、特に制限されない。例えば、水を撹拌しながら、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加する。この場合、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水が、100~1000質量部である。その後、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水を撹拌しながら、その水中に、鎖伸長剤を滴下する。この場合、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.8~1.2である。鎖伸長反応は、例えば、常温にて完結する。反応完結までの時間は、例えば、0.1~10時間である。また、この方法では、固形分濃度を調整するために、反応完結後、有機溶剤および/または水を除去できる。また、この方法では、固形分濃度を調整するために、反応完結後、水を添加できる。
【0079】
[一次水系ディスパージョン]
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応により、ガスバリア性ポリウレタン樹脂が得られる。より具体的には、上記の水中における鎖伸長反応によって、ガスバリア性ポリウレタン樹脂の一次水系ディスパージョン(以下、一次ポリウレタンディスパージョン、一次PUD)が得られる。
【0080】
一次ポリウレタンディスパージョン(一次PUD)は、後述する添加剤を含有せず、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含有する水分散体である。なお、ガスバリア性樹脂が、その他のガスバリア性樹脂を含有する場合も、好ましくは、ガスバリア性樹脂は、一次水系ディスパージョンとして、調製される。
【0081】
ガスバリア性ポリウレタン樹脂のウレタン基・ウレア基濃度は、例えば、30質量%以上、好ましくは、34質量%以上、より好ましくは、38質量%以上である。また、ガスバリア性ポリウレタン樹脂のウレタン基・ウレア基濃度は、例えば、50質量%以下、好ましくは、46質量%以下、より好ましくは、42質量%以下である。なお、ガスバリア性ポリウレタン樹脂のウレタン基・ウレア基濃度は、原料成分の仕込み比から算出できる。
【0082】
一次水系ディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。また、一次水系ディスパージョンの固形分濃度は、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0083】
一次水系ディスパージョンのpHは、例えば、5以上、好ましくは、6以上である。また、一次水系ディスパージョンのpHは、例えば、11以下、好ましくは、10以下である。
【0084】
一次水系ディスパージョンの平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上、より好ましくは、50nm以上である。また、一次水系ディスパージョンの平均粒子径は、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、200nm以下である。
【0085】
(2)添加剤
[必須添加剤]
添加剤は、必須成分として、層状無機化合物と、シランカップリング剤とを含有する。以下、層状無機化合物およびシランカップリング剤を、必須添加剤と総称する。
【0086】
[層状無機化合物]
層状無機化合物は、ガスバリア層(後述)の酸素バリア性を向上させる充填剤である。層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、および、非膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。層状無機化合物として、ガスバリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
【0087】
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなる粘土鉱物である。膨潤性の層状無機化合物は、単位結晶層間に溶媒が配位および/または吸収して、膨潤する性質を有する。膨潤性の層状無機化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。膨潤性の層状無機化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩、カオリナイト族粘土鉱物、アンチゴライト族粘土鉱物、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物、および、マイカ族粘土鉱物が挙げられる。含水ケイ酸塩としては、例えば、フィロケイ酸塩鉱物が挙げられる。カオリナイト族粘土鉱物としては、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイトおよびナクライトが挙げられる。アンチゴライト族粘土鉱物としては、例えば、アンチゴライトおよびクリソタイルが挙げられる。スメクタイト族粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトおよびスチブンサイトが挙げられる。バーミキュライト族粘土鉱物としては、例えば、バーミキュライトが挙げられる。マイカ族粘土鉱物としては、例えば、雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトおよび合成マイカが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用できる。膨潤性の層状無機化合物として、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物、マイカ族粘土鉱物、および、合成マイカが挙げられ、より好ましくは、合成マイカが挙げられる。
【0088】
層状無機化合物の平均粒径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上である。また、層状無機化合物の平均粒径は、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、3μm以下である。
【0089】
層状無機化合物のアスペクト比は、例えば、50以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、200以上である。また、層状無機化合物のアスペクト比は、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2000以下である。
【0090】
層状無機化合物は、固形分100%として使用されてもよく、また、層状無機化合物を溶剤に分散させた分散液として使用されてもよい。好ましくは、層状無機化合物は、層状無機化合物を溶剤に分散させた分散液として使用される。溶剤の種類は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。分散液の固形分濃度は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0091】
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤は、ガスバリア性樹脂と層状無機化合物とを架橋させる架橋剤である。シランカップリング剤としては、例えば、ガスバリア性樹脂と反応可能であり、かつ、層状無機化合物と反応可能であるシランカップリング剤が、選択される。
【0092】
より具体的には、シランカップリング剤は、好ましくは、ガスバリア性ポリウレタン樹脂が有する置換基と反応可能な反応性基を含有する。
【0093】
例えば、ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、アニオン性基を含有する活性水素化合物に由来するアニオン性基を含有する。好ましくは、ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物に由来するカルボキシ基を含有する。
【0094】
そこで、シランカップリング剤は、好ましくは、アニオン性基と反応可能な反応性基を含有し、より好ましくは、カルボキシ基と反応可能な反応性基を含有する。反応性基として、より具体的には、エポキシ基が挙げられる。
【0095】
なお、ガスバリア性ポリウレタン樹脂において、アニオン性基は、上記の中和剤により中和されている。しかし、中和剤は、後述する加熱によって、脱離される。そのため、ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、後述するように加熱されることによって、遊離のアニオン性基を含有する。そこで、シランカップリング剤は、好ましくは、反応性基を含有する。より具体的には、シランカップリング剤は、好ましくは、ガスバリア性ポリウレタン樹脂のカルボキシ基と反応可能なエポキシ基を、含有する。
【0096】
また、シランカップリング剤は、通常、アルコキシシリル基を含有する。アルコキシシリル基は、加水分解し、シラノール基を生じさせる。一方、層状無機化合物は、例えば、表面に水酸基を含有する。そして、シランカップリング剤のシラノール基と、層状無機化合物の水酸基とは、縮合(シラノール縮合)可能である。つまり、シランカップリング剤は、層状無機化合物と反応可能なアルコキシシリル基を含有する。
【0097】
このようなシランカップリング剤として、より具体的には、エポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を含有するトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。エポキシ基を含有するトリアルコキシシラン化合物としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、および、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。また、エポキシ基含有シランカップリング剤は、市販品として入手可能である。市販品としては、例えば、商品名KBM-403(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、商品名KBE-403(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、商品名KBM-402(3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)、商品名KBE-402(3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)、および、商品名KBM-303(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)(以上、信越化学社製)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0098】
エポキシ基含有シランカップリング剤のエポキシ当量は、例えば、100g/eq以上、好ましくは、200g/eq以上である。また、エポキシ基含有シランカップリング剤のエポキシ当量は、例えば、1000g/eq以下、好ましくは、500g/eq以下である。
【0099】
[任意添加剤]
添加剤は、上記の必須添加剤(層状無機化合物およびシランカップリング剤)に加えて、その他の添加剤(以下、任意添加剤)を含有できる。任意添加剤としては、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、増粘抑制剤、硬化剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料および結晶核剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。任意添加剤の添加量および添加のタイミングは、任意添加剤の種類に応じて、適宜設定される。
【0100】
(3)二次水系ディスパージョン
二次水系ディスパージョンにおいて、ガスバリア性樹脂および添加剤の含有割合は、積層体の酸素透過量、水蒸気透過量および耐屈曲性に応じて、適宜設定される。
【0101】
例えば、固形分基準(乾燥質量基準)で、ガスバリア性樹脂の含有割合は、ガスバリア性樹脂、層状無機化合物、および、シランカップリング剤の総量に対して、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、65質量%以上である。また、ガスバリア性樹脂の含有割合は、ガスバリア性樹脂、層状無機化合物、および、シランカップリング剤の総量に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは、85質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、75質量%以下である。
【0102】
また、固形分基準(乾燥質量基準)で、層状無機化合物の含有割合は、ガスバリア性樹脂、層状無機化合物、および、シランカップリング剤の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、15質量%以上である。また、層状無機化合物の含有割合は、ガスバリア性樹脂、層状無機化合物、および、シランカップリング剤の総量に対して、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。
【0103】
また、固形分基準(乾燥質量基準)で、シランカップリング剤の含有割合は、ガスバリア性樹脂、層状無機化合物、および、シランカップリング剤の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上である。また、シランカップリング剤の含有割合は、ガスバリア性樹脂、層状無機化合物、および、シランカップリング剤の総量に対して、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。
【0104】
そして、ガスバリア性コート材では、層状無機化合物に対するシランカップリング剤の割合が、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性の向上を図る観点から、所定範囲に調整される。
【0105】
より具体的には、シランカップリング剤の含有量が、層状無機化合物の含有量1質量部に対して、0.03質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上、より好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、0.7質量部以上、とりわけ好ましくは、0.8質量部以上である。また、シランカップリング剤の含有量が、層状無機化合物の含有量1質量部に対して、2.7質量部以下、好ましくは、2.5質量部以下、より好ましくは、2.0質量部以下、さらに好ましくは、1.5質量部以下、とりわけ好ましくは、1.1質量部以下である。
【0106】
また、ガスバリア性樹脂の含有量が、層状無機化合物の含有量1質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、3質量部以上、さらに好ましくは、4質量部以上、とりわけ好ましくは、4.5質量部以上である。また、ガスバリア性樹脂の含有量が、層状無機化合物の含有量1質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、8質量部以下、とりわけ好ましくは、5質量部以下である。
【0107】
また、ガスバリア性ポリウレタン樹脂がカルボキシ基を含有し、かつ、シランカップリング剤がエポキシ基を含有する場合には、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性の向上を図る観点から、好ましくは、カルボキシ基に対するエポキシ基の当量比(エポキシ基/カルボキシ基)が、調整される。
【0108】
例えば、ガスバリア性ポリウレタン樹脂のカルボキシ基に対する、シランカップリング剤のエポキシ基の当量比(エポキシ基/カルボキシ基)は、例えば、0.5以上、好ましくは、0.8以上である。また、ガスバリア性ポリウレタン樹脂のカルボキシ基に対する、シランカップリング剤のエポキシ基の当量比(エポキシ基/カルボキシ基)は、例えば、2.0以下、好ましくは、1.5以下である。
【0109】
ガスバリア性樹脂と添加剤との混合方法は、特に制限されない。例えば、まず、上記の添加剤(層状無機化合物およびシランカップリング剤)の分散液を調製する。添加剤(層状無機化合物およびシランカップリング剤)の分散液は、特に制限されず、公知の方法で調製される。例えば、水に、添加剤(層状無機化合物およびシランカップリング剤)を添加し、混合および撹拌する。これにより、添加剤(層状無機化合物およびシランカップリング剤)の分散液が得られる。添加剤の分散液の固形分濃度は、適宜設定される。
【0110】
次いで、添加剤の分散液と、上記の一次水系ディスパージョンとを混合する。これにより、ガスバリア性樹脂および必須添加剤を含有する水系ディスパージョン(二次水系ディスパージョン)が得られる。
【0111】
例えば、ガスバリア性樹脂がガスバリア性ポリウレタン樹脂からなる場合、上記の方法により、ガスバリア性ポリウレタン樹脂および必須添加剤を含有するポリウレタンディスパージョン(二次ポリウレタンディスパージョン、二次PUD)が得られる。
【0112】
上記の二次水系ディスパージョンは、好ましくは、ガスバリア性コート材として使用される。換言すると、ガスバリア性コート材は、好ましくは、上記の二次水系ディスパージョンからなる。
【0113】
また、ガスバリア性コート材の固形分濃度を調整するために、公知の方法で、二次水系ディスパージョンから水を除去できる。また、この方法では、ガスバリア性コート材の固形分濃度を調整するために、二次水系ディスパージョンに、水を添加できる。
【0114】
ガスバリア性コート材の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。また、ガスバリア性コート材の固形分濃度は、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0115】
上記のガスバリア性コート材は、ガスバリア性樹脂を含有する。そのため、上記のガスバリア性コート材は、優れたガスバリア性を有するコート層(ガスバリア層)を形成できる。そのため、上記のガスバリア性コート材は、好ましくは、紙基材用ガスバリア性コート材として、使用される。
【0116】
2.積層体およびその製造方法
(1)積層体
図1において、積層体1は、基材2と、基材2の厚み方向における少なくとも一方側(紙面上側)に配置されるガスバリア層4とを備えている。
【0117】
また、上記の積層体1は、さらに、任意の層として、基材2とガスバリア層4との間に介在される目止め層3を、備えることができる。図1において、積層体1は、目止め層3を備えている。
【0118】
また、上記の積層体1は、さらに、任意の層として、ガスバリア層4の厚み方向における少なくとも一方側(紙面上側)に配置されるヒートシール層5を、備えることができる。図1において、積層体1は、ヒートシール層5を備えている。
【0119】
つまり、図1において、積層体1は、基材2と、目止め層3と、ガスバリア層4と、ヒートシール層5とを、厚み方向他方側(紙面下側)から一方側(紙面上側)に向かって、順に備えている。以下、積層体1の製造方法について、詳述する。
【0120】
(2)積層体の製造方法
[基材準備工程]
この方法では、まず、基材2を準備する(基材準備工程)。基材2は、特に制限されず、例えば、プラスチック基材、繊維基材、金属基材およびセラミック基材が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。基材2として、好ましくは、プラスチック基材および繊維基材が挙げられる。
【0121】
プラスチック基材は、例えば、プラスチックからなるフィルムである。プラスチックとしては、例えば、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられ、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびセルロース樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。熱可塑性樹脂として、好ましくは、ポリオレフィン樹脂およびポリエステル樹脂が挙げられる。また、プラスチック基材としては、例えば、無延伸基材、一軸延伸基材および二軸延伸基材が挙げられ、好ましくは、二軸延伸基材が挙げられる。繊維基材としては、例えば、紙基材、布基材、および、樹木基材が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0122】
なお、基材2は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、基材2は、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、蒸着処理、コロナ放電処理およびアンカーコート処理が挙げられる。基材2の形状は、例えば、シート状、ボトル状およびカップ状が挙げられる。
【0123】
基材2として、好ましくは、繊維基材が挙げられ、より好ましくは、紙基材が挙げられる。紙基材は、紙から形成される基材である。紙基材としては、例えば、パルプを抄造した紙が挙げられる。パルプとしては、例えば、天然パルプおよび合成パルプが挙げられる。紙基材として、より具体的には、例えば、グラシン紙、塗工紙、片艶クラフト紙、ロール紙およびカップ原紙が挙げられる。基材2は、単層の紙であってもよく、また、多層の紙であってもよい。紙基材は、積層体1の用途に応じて、適宜選択される。
【0124】
基材2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上である。また、基材2の厚みは、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0125】
また、基材2が紙基材である場合、紙基材の坪量は、例えば、20g/m以上、好ましくは、30g/m以上である。また、紙基材の坪量は、例えば、400g/m以下、好ましくは、300g/m以下である。
【0126】
[目止め層形成工程]
次いで、この方法では、基材2の少なくとも一方側の表面に、目止め層3を形成する(目止め層形成工程)。より具体的には、後述する塗布工程の前に、目止め層3を形成する。
【0127】
目止め層3は、基材2(好ましくは、紙基材)に対するガスバリア性コート材の含浸を抑制するために、基材2に積層される。また、目止め層3は、基材2の表面の凹凸を吸収し、表面を平滑化させるために、基材2に積層される。目止め層3は、基材2の少なくとも一方側の表面に配置される。目止め層3は、基材2の両面に配置されていてもよい。目止め層3は、好ましくは、基材2の一方側の表面にのみ、配置される。
【0128】
目止め層3は、例えば、目止め樹脂を含有する。より具体的には、目止め層3は、例えば、目止め樹脂を含むコート材(以下、目止め性コート材)を、基材2の表面に塗布および乾燥させることにより、形成される。
【0129】
目止め性コート材としては、特に制限されず、公知の目止め樹脂を含むコート材が挙げられる。より具体的には、目止め性コート材としては、例えば、目止め樹脂を溶剤に溶解させて得られる溶液、および、目止め樹脂を溶剤に分散させて得られる分散液が挙げられる。
【0130】
目止め樹脂は、基材2に対するガスバリア性コート材の含浸を抑制する樹脂である。目止め樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびセルロース樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。目止め樹脂として、好ましくは、ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0131】
溶剤としては、特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルが挙げられる。これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0132】
目止め性コート材として、より具体的には、目止め樹脂および溶剤を含有する樹脂ディスパージョンおよび樹脂エマルジョンが、挙げられる。
【0133】
目止め性コート材の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。また、目止め性コート材の固形分濃度は、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0134】
目止め性コート材の塗布方法は、特に制限されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法およびエアナイフコート法が挙げられる。目止め性コート材の乾燥条件は、特に制限されない。例えば、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上である。また、乾燥温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、1秒以上、好ましくは、30秒以上である。また、乾燥時間は、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0135】
これにより、目止め層3が形成される。目止め層3の量(乾燥質量)は、例えば、1g/m以上、好ましくは、3g/m以上である。また、目止め層3の量(乾燥質量)は、例えば、30g/m以下、好ましくは、15g/m以下である。
【0136】
[ガスバリア層形成工程]
次いで、この方法では、目止め層3の少なくとも一方側の表面に、ガスバリア層4を形成する(ガスバリア層形成工程)。
【0137】
ガスバリア層4は、ガスバリア性を有する層である。なお、ガスバリア性とは、酸素の透過率を低下させる性質である。より具体的には、ガスバリア層4は、所定値以下の酸素透過度を有するガスバリア性樹脂からなる。例えば、厚み10μmのガスバリア層4の酸素透過度は、例えば、室温下において、1(cc/m・day・atm)以下である。なお、酸素透過度は、JIS K7126(2006年)B法に準拠して、酸素透過度測定装置(MOCON社、OX-TRAN2/22H)を使用して、測定される。測定条件は、20℃および80%RH(相対湿度)である。
【0138】
ガスバリア層4は、例えば、基材2の一方側において、目止め層3の表面に配置される。つまり、基材2に対して目止め層3が配置される側において、目止め層3の表面に、ガスバリア層4が配置される。ガスバリア層4は、目止め層3とともに、基材2の両面に配置されていてもよい。ガスバリア層4は、好ましくは、目止め層3とともに、基材2の一方側の表面にのみ、配置される。
【0139】
ガスバリア層4は、例えば、上記のガスバリア性コート材の硬化膜を含有し、好ましくは、ガスバリア性コート材の硬化膜からなる。より具体的には、ガスバリア層4は、上記のガスバリア性コート材の塗膜を、加熱および硬化させることによって、形成される。
【0140】
ガスバリア層4を形成するには、まず、基材2の少なくとも一方側(目止め層3の少なくとも一方側)において、ガスバリア性コート材を塗布する(塗布工程)。
【0141】
より具体的には、塗布工程では、目止め層3の少なくとも一方側の表面に、ガスバリア性コート材を、塗布する。
【0142】
ガスバリア性コート材の塗布方法は、特に制限されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法およびエアナイフコート法が挙げられる。
【0143】
また、この方法では、必要に応じて、ガスバリア性コート材を乾燥させる。乾燥条件は、特に制限されない。例えば、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上である。また、乾燥温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、1秒以上、好ましくは、30秒以上である。また、乾燥時間は、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0144】
これにより、ガスバリア性コート材の塗膜(未硬化塗膜)が得られる。次いで、この方法では、ガスバリア性コート材の塗膜(未硬化塗膜)を加熱し、ガスバリア性コート材の硬化膜を形成する(硬化工程)。
【0145】
より具体的には、硬化工程では、ガスバリア性コート材の塗膜を加熱し、ガスバリア性樹脂および層状無機化合物と、シランカップリング剤とを反応させる。
【0146】
加熱条件は、ガスバリア性樹脂および層状無機化合物と、シランカップリング剤とが反応する条件であれば、特に制限されない。
【0147】
例えば、加熱温度が、比較的高温(例えば、150℃以上)である場合には、加熱時間は、比較的短時間(例えば、10分未満)であってもよい。このような場合、加熱温度は、例えば、150℃以上、好ましくは、180℃以上、より好ましくは、200℃以上である。また、加熱温度は、例えば、300℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、加熱時間は、例えば、1秒以上、好ましくは、10秒以上である。また、加熱時間は、例えば、10分未満、好ましくは、5分以下、より好ましくは、1分以下である。
【0148】
また、加熱時間が、比較的長時間(例えば、10分以上)である場合には、加熱温度が、比較的低温(例えば、150℃未満)であってもよい。このような場合、加熱温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、より好ましくは、100℃以上である。また、加熱温度は、例えば、150℃未満、好ましくは、130℃以下である。また、加熱時間は、例えば、10分以上、好ましくは、30分以上、より好ましくは、1時間以上である。また、加熱時間は、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下、より好ましくは、3時間以下である。
【0149】
上記の加熱により、シランカップリング剤が、ガスバリア性ポリウレタン樹脂および層状無機化合物と反応する。より具体的には、ガスバリア性ポリウレタン樹脂が、カルボキシ基を含有し、シランカップリング剤が、エポキシ基を含有する場合、上記の加熱によって、カルボキシ基とエポキシ基とが反応(エステル縮合)する。また、上記の加熱によって、層状無機化合物の水酸基と、シランカップリング剤のアルコキシシリル基とが、反応(シラノール縮合)する。これにより、シランカップリング剤が、ガスバリア性ポリウレタン樹脂および層状無機化合物と反応し、これらを架橋させる。
【0150】
シランカップリング剤の反応率は、ガスバリア性および耐屈曲性の観点から、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上である。また、シランカップリング剤の反応率は、作業性の観点から、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。なお、シランカップリング剤の反応率は、例えば、上記の反応性基(例えば、エポキシ基)の消失率として、後述する実施例に準拠して測定される。
【0151】
上記の反応により、ガスバリア性コート材の塗膜が熱硬化し、ガスバリア層4としての硬化膜が得られる。
【0152】
ガスバリア層4は、必要に応じて、エージングされる。エージング温度(硬化温度)は、例えば、20℃以上、好ましくは、40℃以上である。また、エージング温度(硬化温度)は、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。エージング時間(硬化時間)は、例えば、1時間以上、好ましくは、10時間以上である。また、エージング時間(硬化時間)は、例えば、7日間以下、好ましくは、3日間以下である。
【0153】
ガスバリア層4の量(乾燥質量)は、例えば、1.0g/m以上、好ましくは、2.0g/m以上、より好ましくは、2.5g/m以上である。ガスバリア層4の量(乾燥質量)は、例えば、10g/m以下、好ましくは、7g/m以下である。
【0154】
[ヒートシール層形成工程]
次いで、この方法では、必要に応じて、ガスバリア層4の少なくとも一方側の表面に、ヒートシール層5を形成することができる(ヒートシール層形成工程)。
【0155】
ヒートシール層5は、ヒートシール性を有する樹脂層である。ヒートシール層5は、ガスバリア層4の表面に配置される。つまり、基材2に対してガスバリア層4が配置される側において、ガスバリア層4の表面に、ヒートシール層5が配置される。ヒートシール層5は、ガスバリア層4とともに、基材2の両面に配置されていてもよい。ヒートシール層5は、好ましくは、ガスバリア層4とともに、基材2の一方側の表面にのみ、配置される。
【0156】
ヒートシール層5は、例えば、ヒートシール性樹脂を含有する。より具体的には、ヒートシール層5は、例えば、ヒートシール性樹脂を含むコート材(以下、ヒートシール性コート材)を、ガスバリア層4に塗布および乾燥させることにより、形成される。
【0157】
ヒートシール性樹脂は、互いにヒートシール(熱融着)可能な樹脂である。ヒートシール性樹脂としては、特に制限されず、公知のヒートシール性樹脂が使用される。ヒートシール性樹脂として、より具体的には、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、および、ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0158】
ヒートシール性樹脂は、例えば、溶剤に溶解および/または分散された溶液および/または分散液として、調製される。例えば、ヒートシール性樹脂は、溶剤中で合成される。これにより、ヒートシール性樹脂の溶液および/または分散液が得られる。
【0159】
溶剤としては、特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルが挙げられる。これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。目止め性コート材の固形分濃度は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0160】
ヒートシール性コート材として、より具体的には、ポリオレフィン樹脂を含有するポリオレフィンディスパージョン、アクリル樹脂を含有するアクリルエマルジョン、および、ポリウレタン樹脂を含有するポリウレタンディスパージョンが挙げられる。ヒートシール性コート材として、好ましくは、ポリオレフィンディスパージョンが挙げられる。
【0161】
ヒートシール性コート材は、添加剤を含有することができる。つまり、ヒートシール性コート材は、上記のヒートシール性樹脂と、添加剤とを含有できる。添加剤としては、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、結晶核剤、および、硬化剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0162】
ヒートシール性コート材の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。また、ヒートシール性コート材の固形分濃度は、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0163】
ヒートシール性コート材の塗布方法は、特に制限されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法およびエアナイフコート法が挙げられる。ガスバリア性コート材の乾燥条件は、特に制限されない。例えば、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上である。また、乾燥温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、1秒以上、好ましくは、30秒以上である。また、乾燥時間は、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0164】
これにより、ヒートシール層5が形成される。ヒートシール層5の量(乾燥質量)は、ガスバリア性とヒートシール性との両立を図る観点から、設定される。
【0165】
より具体的には、ヒートシール性の観点から、ヒートシール層5の量(乾燥質量)は、例えば、1.0g/m以上、好ましくは、1.0g/m超過、より好ましくは、1.1g/m以上、さらに好ましくは、1.5g/m以上、とりわけ好ましくは、1.8g/m以上である。また、ガスバリア性の観点から、ヒートシール層5の量(乾燥質量)は、例えば、7.0g/m以下、好ましくは、5.0g/m未満、より好ましくは、4.9g/m以下、さらに好ましくは、4.0g/m以下、とりわけ好ましくは、3.5g/m以下である。
【0166】
以上の方法で、積層体1が製造される。積層体1の合計厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上である。また、積層体1の合計厚みは、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0167】
3.作用効果
上記のガスバリア性コート材は、ガスバリア性樹脂と添加剤とを含有する。そして、ガスバリア性樹脂は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含有する。さらに、添加剤が、層状無機化合物と、シランカップリング剤とを、所定割合で含有する。そのため、上記のガスバリア性コート材によれば、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える積層体1を得ることができる。
【0168】
また、上記の積層体1は、上記のガスバリア性コート材を使用して得られる。そのため、上記の積層体は、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える。
【0169】
また、上記の積層体1の製造方法では、上記のガスバリア性コート材が使用される。そのため、上記の積層体1の製造方法によれば、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える積層体1を得ることができる。とりわけ、上記の積層体1の製造方法によれば、基材が紙基材であっても、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える積層体1(紙基材ベース積層体)を得ることができる。そのため、上記の積層体1の製造方法は、好ましくは、紙基材ベース積層体の製造において、使用される。
【0170】
4.用途
上記のガスバリア性コート材、積層体1、および、積層体1の製造方法は、酸素バリア性、水蒸気バリア性および耐屈曲性を要求される各種産業分野において、好適に使用される。より具体的には、積層体1は、包装材として、好適に使用される。すなわち、包装材は、好ましくは、上記の積層体1を含有し、より好ましくは、上記の積層体1からなる。
【0171】
このような包装材は、上記の積層体1を含有するため、折り曲げ後において、所定以上の酸素バリア性と、所定以上の水蒸気バリア性とを兼ね備える。
【0172】
5.変形例
上記した積層体1では、目止め層3が、基材2とガスバリア層4との間に介在されているが、目止め層3は、基材2とガスバリア層4との間に介在されていなくともよい。例えば、基材2の種類、および、ガスバリア層4の種類に応じて、目止め層3を省略してもよい。
【0173】
また、積層体1は、目的および用途に応じて、ヒートシール層5を備えていなくともよい。また、積層体1が、ヒートシール層5を備える場合、ヒートシール層5は、上記のように、ガスバリア層4に直接積層されていてもよい。また、ヒートシール層5は、ガスバリア層4に、公知の接着剤により接着されていてもよい。つまり、ガスバリア層4とヒートシール層5との間に、接着剤層(図示せず)が介在されていてもよい。また、ヒートシール層5に代替して、または、ヒートシール層5とともに、任意の機能層が、ガスバリア層4に積層されていてもよい。
【実施例0174】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0175】
1.紙基材
準備例1
紙基材として、片艶(晒)クラフト紙(製品名;銀竹、日本製紙製、坪量67g/m)を準備した。
【0176】
2.目止め性コート材
準備例2(アクリルエマルジョン)
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、および、温度計を備えた反応容器に、2193質量部のイオン交換水(溶剤)と、2.5質量部のドデシル硫酸ナトリウム(界面活性剤)とを仕込んだ。反応容器の内容物を、撹拌および窒素置換しながら、温度が75℃に至るまで加熱した。
【0177】
反応容器の内温を75℃に維持しながら、反応容器に、7.5質量部の過硫酸カリウム(重合開始剤)を添加し、反応容器の内容物に溶解させた。その後、予め調製したモノマー乳化物を、反応容器に5時間かけて連続的に滴下した。
【0178】
なお、モノマー乳化物は、以下の成分を含有する原料組成物である。
イオン交換水(溶剤) 900質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(界面活性剤) 5質量部
アクリルアミド(原料モノマー) 25質量部
メチルメタクリレート(原料モノマー) 175質量部
2-エチルヘキシルアクリレート(原料モノマー) 1088質量部
メタクリル酸(原料モノマー) 80質量部
スチレン(原料モノマー) 1133質量部
【0179】
モノマー乳化物の滴下が終了した後、反応容器の内容物を、3時間エージングさせた。これにより、原料モノマーを重合させ、(メタ)アクリル樹脂を得た。また、(メタ)アクリル樹脂が水分散されたアクリルエマルジョンを得た。
【0180】
アクリルエマルジョンを常温まで冷却した。その後、アクリルエマルジョンに、イオン交換水およびアンモニア水(中和剤)を添加して、固形分濃度を41質量%に調整し、pHを8.0に調整した。
【0181】
これにより、(メタ)アクリル樹脂が水分散されてなるアクリルエマルジョンを得た。アクリルエマルジョンの平均粒子径は、140nmであった。平均粒子径は、動的光散乱法(測定装置FPAR-1000、大塚電子社製)により測定された(以下同様)。
【0182】
その後、上記のアクリルエマルジョン(固形分濃度41質量%)に、さらに水を添加し、ミキサーで5分混合した。これにより、目止め性コート材(固形分濃度40質量%)を調製した。
【0183】
3.ガスバリア性コート材
実施例1
(1)一次PUD
下記の成分を混合し、窒素雰囲気下、65~70℃で、イソシアネート基濃度(NCO%)が6.11質量%以下になるまで反応させた。これにより、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応生成液を得た。
【0184】
1,3-キシリレンジイソシアネート
(タケネート500、1,3-XDI、三井化学社製)143.2質量部
メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)
(VestanatH12MDI、H12MDI、エボニック社製)25.0質量部
エチレングリコール29.2質量部
トリメチロールプロパン2.7質量部
ジメチロールプロピオン酸14.8質量部
メチルエチルケトン(溶剤)121.6質量部
【0185】
次いで、反応生成液を40℃まで冷却した。次いで、反応生成液にトリエチルアミン(TEA)11.0質量部を添加した。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを中和させた。
【0186】
次いで、ホモディスパーを使用し、反応生成液を、838.0質量部のイオン交換水に分散させた。次いで、得られた分散液にアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。また、鎖伸長反応の反応生成液を、1時間エージングさせた。これにより、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を得た。なお、アミン水溶液は、48.4質量部のイオン交換水と、24.2質量部の2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールとの混合液であった。その後、エバポレーターを使用し、メチルエチルケトンおよびイオン交換水を、反応生成液から留去した。これにより、固形分濃度を30質量%に調整した。
【0187】
以上により、ガスバリア性ポリウレタン樹脂が水分散されてなる一次ポリウレタンディスパージョン(一次PUD)を得た。
【0188】
一次ポリウレタンディスパージョン(一次PUD)のpHは、8.6であった。また、ポリウレタンディスパージョン(一次PUD)の平均粒子径は、58nmであった。
【0189】
(2)二次PUD
57.86質量部の水と、14.02質量部(固形分1.5質量部)の膨潤性の層状無機化合物の分散液(商品名:NTS-10NC、合成マイカ、トピー工業社製、固形分濃度10.7%)と、1.2質量部(固形分1.2質量部)のエポキシ基含有シランカップリング剤(商品名:KBM-403、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製、エポキシ当量236g/eq、固形分濃度100%)とを配合し、これらをミキサーで5分混合した。これにより、添加剤の分散液を得た。
【0190】
なお、層状無機化合物1質量部に対するシランカップリング剤の含有量が、0.8質量部であった。
【0191】
次いで、上記の添加剤の分散液と、24.33質量部(固形分7.3質量部)の一次PUD(固形分30質量%)とを、ミキサーで5分混合した。
【0192】
これにより、ガスバリア性ポリウレタン樹脂と添加剤とが水分散されてなる二次ポリウレタンディスパージョン(二次PUD)を得た。二次PUDの固形分濃度は、10質量%であった。二次PUDを、ガスバリア性コート材として使用した。
【0193】
実施例2~9および比較例1~2
層状無機化合物の固形分の質量と、シランカップリング剤の固形分の質量と、ガスバリア性ポリウレタン樹脂の固形分の質量とが、表1に示す割合となるように、配合処方を変更した。これ以外は、実施例1と同じ方法で、ガスバリア性コート材を得た。
【0194】
比較例3~4
ポリビニルアルコール樹脂(商品名PVA-217、クラレ製、固形分濃度100%)と、常温の水とを30分混合し、混合液を得た。混合液を、徐々に昇温し、90℃で1時間混合し、透明溶液を得た。透明溶液を常温まで放冷した。これにより、固形分濃度10質量%のポリビニルアルコール樹脂水溶液を得た。
【0195】
ガスバリア性ポリウレタン樹脂(一次PUD)に代えて、ポリビニルアルコール樹脂水溶液(固形分濃度10質量%)を使用した。また、層状無機化合物の固形分の質量と、シランカップリング剤の固形分の質量と、ガスバリア性ポリウレタン樹脂の固形分の質量とが、表1に示す割合となるように、配合処方を変更した。これ以外は、実施例1と同じ方法で、ガスバリア性コート材を得た。ガスバリア性コート材の固形分濃度は7質量%であった。
【0196】
比較例5
ガスバリア性ポリウレタン樹脂(一次PUD)に代えて、上記ポリビニルアルコール樹脂水溶液(比較例3~4、固形分濃度10質量%)を使用した。また、エポキシ基含有シランカップリング剤に代えて、アミノ基含有シランカップリング剤(商品名:KBE-903、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、信越化学社製、固形分濃度100%)を使用した。また、層状無機化合物の固形分の質量と、シランカップリング剤の固形分の質量と、ガスバリア性ポリウレタン樹脂の固形分の質量とが、表1に示す割合となるように、配合処方を変更した。これ以外は、実施例1と同じ方法で、ガスバリア性コート材を得た。ガスバリア性コート材の固形分濃度は7質量%であった。
【0197】
4.積層体
実施例10
紙基材(片艶クラフト紙)の艶面に、目止め性コート材(調製例1)を、バーコーターで塗布した。なお、乾燥質量が8g/mとなるように、塗布量を調整した。次いで、目止め性コート材の塗膜を120℃で60秒乾燥させた。これにより、目止め層を形成した。
【0198】
次いで、目止め層の表面に、実施例1のガスバリア性コート材を、バーコーターで塗布した。なお、乾燥質量が2.5g/mとなるように、塗布量を調整した。次いで、ガスバリア性コート材の塗膜を120℃で60秒乾燥させた。その後、ガスバリア性コート材の塗膜を、110℃で1時間加熱した。これにより、層状無機化合物と、シランカップリング剤と、ガスバリア性ポリウレタン樹脂とを反応させ、ガスバリア性コート材の塗膜を熱硬化させた。その結果、目止め層の表面に、ガスバリア層としての硬化膜を形成した。また、硬化膜を、40℃で2日エージングした。これにより、積層体を得た。積層体の層構成は、以下の通りであった。
【0199】
紙基材/目止め層/ガスバリア層
【0200】
なお、目止め層の乾燥質量は、紙基材および目止め層を備える積層体(2層)の合計質量から、紙基材の質量を減算することにより算出した。
【0201】
また、ガスバリア層の乾燥質量は、紙基材、目止め層およびガスバリア層を備える積層体(3層)の合計質量から、紙基材および目止め層を備える積層体(2層)の合計質量を減算することにより算出した。
【0202】
実施例11~18および比較例6~10
表1に記載される組み合わせで、ガスバリア性コート材を使用した。これ以外は、実施例10と同じ方法で、積層体を得た。
【0203】
実施例19
表2に記載されるように、ガスバリア性コート材の塗膜を、110℃で1時間加熱する代わりに、200℃で30秒加熱した。これ以外は、実施例11と同じ方法で、積層体を得た。
【0204】
実施例20
表2に記載されるように、ガスバリア性コート材の塗膜を、110℃で1時間加熱する代わりに、200℃で1分加熱した。これ以外は、実施例11と同じ方法で、積層体を得た。
【0205】
5.評価
(1)積層体の酸素透過量(OTR)
折り曲げ前の積層体の酸素透過量(cc/m・day・atm)を、酸素透過度測定装置(MOCON社、OX-TRAN 2/22H)を使用して、測定した。測定温度は20℃であった。また、相対湿度は80%RHであった。
【0206】
また、25℃において、塗工面(目止め層およびガスバリア層)が内側になるように、積層体を2kg/cmの圧力で10秒間折り曲げた。また、十字の折り目がつくように、折り曲げ方向を90°変更して、再度、積層体を2kg/cmの圧力で10秒間折り曲げた。
【0207】
そして、折り曲げ後の積層体の酸素透過量(cc/m・day・atm)を、上記の条件で測定した。その結果を、表1~表2に示す。
【0208】
(2)積層体の水蒸気透過量(WVTR)
折り曲げ前の積層体の水蒸気透過量(g/m・day)を、水蒸気透過度測定装置(MOCON社、PARMATRAN-W 3/34 G)を使用して、測定した。測定温度は40℃であった。また、相対湿度は90%RHであった。
【0209】
また、25℃において、塗工面(目止め層およびガスバリア層)が内側になるように、積層体を2kg/cmの圧力で10秒間折り曲げた。また、十字の折り目がつくように、折り曲げ方向を90°変更して、再度、積層体を2kg/cmの圧力で10秒間折り曲げた。
【0210】
そして、折り曲げ後の積層体の水蒸気透過量(g/m・day)を、上記の条件で測定した。その結果を、表1~表2に示す。
【0211】
(3)シランカップリング剤の反応率
ガスバリア性コート材の塗膜を、110℃で1時間加熱しなかった以外は、実施例11と同じ方法で、積層体を得た。得られた積層体を、シランカップリング剤が反応していない積層体のサンプル(コントロール)として、使用した。
【0212】
フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR-4700)により、上記のサンプルのガスバリア層の赤外スペクトルを測定した。そして、700cm-1のピーク(2置換芳香環に対応するピーク)の高さ(A1)に対する、910cm-1のピーク(エポキシ基に対応するピーク)の高さ(A2)のIRピーク比(A2/A1)を算出した。
【0213】
また、実施例11、実施例19および実施例20の積層体のガスバリア層の赤外スペクトルを、上記と同じ方法で測定した。また、700cm-1のピークの高さ(A1)に対する、910cm-1のピークの高さ(A2)のIRピーク比(A2/A1)を算出した。
【0214】
なお、コントロールのIRピーク比(A2/A1)は、シランカップリング剤の反応率が0%であり、エポキシ基の残存率が100%である状態を示すと判断した。
【0215】
また、シランカップリング剤の反応率が100%であり、エポキシ基の残存率が0%である場合には、IRピーク比(A2/A1)が0を示すと判断した。
【0216】
そして、コントロールのIRピーク比(A2/A1)に対する、各実施例のIRピーク比(A2/A1)の減少率を、シランカップリング剤の反応率として、算出した。その結果を、表2に示す。
【0217】
【表1】
【0218】
【表2】
【符号の説明】
【0219】
1 積層体
2 基材
3 目止め層
4 ガスバリア層
5 ヒートシール層
図1