(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014506
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】密封装置、密封装置の取付方法、及び密封装置の取り外し方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/08 20060101AFI20240125BHJP
F16J 13/14 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16J15/08 A
F16J13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117386
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 優
(72)【発明者】
【氏名】興梠 和樹
【テーマコード(参考)】
3J040
3J046
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040AA13
3J040AA15
3J040BA05
3J040FA01
3J040HA03
3J046AA13
3J046BB04
3J046BC15
3J046CA01
(57)【要約】
【課題】貫通孔から外れ難く、かつ貫通孔からの取り外し作業の作業性を高めることのできる密封装置、密封装置の取付方法、及び密封装置の取り外し方法を提供する。
【解決手段】貫通孔310を塞ぐ密封装置であって、貫通孔310に圧入されると共に、貫通孔310の内周面に対して、筒状部110の外周面が密着するように構成される有底筒状の密封装置本体100と、筒状部110の開口部から差し込まれることで筒状部110の内周面に嵌合されて、筒状部110を外周面側に向かって押圧する嵌合状態と、前記嵌合状態の位置からずれて筒状部110への押圧を解除する非嵌合状態とを取り得るように構成される補強部材200と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を塞ぐ密封装置であって、
前記貫通孔に圧入されると共に、前記貫通孔の内周面に対して、筒状部の外周面が密着するように構成される有底筒状の密封装置本体と、
前記筒状部の開口部から差し込まれることで前記筒状部の内周面に嵌合されて、前記筒状部を外周面側に向かって押圧する嵌合状態と、前記嵌合状態の位置からずれて前記筒状部への押圧を解除する非嵌合状態とを取り得るように構成される補強部材と、
を備えることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記補強部材は、前記筒状部の内周面に嵌合される筒状の嵌合部を備えることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記補強部材は、前記嵌合部から径方向内側に向かって突出する突出部を備えることを特徴とする請求項2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記突出部は内向きフランジ部であることを特徴とする請求項3に記載の密封装置。
【請求項5】
前記筒状部は、
前記開口部側に配され、前記補強部材が嵌合される小筒部と、
前記開口部よりも底側に配され、かつ前記小筒部の内径よりも、その内径が大きな大筒部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項6】
前記補強部材は円盤状の部材であることを特徴とする請求項5に記載の密封装置。
【請求項7】
貫通孔の内周面に対して、筒状部の外周面が密着するように構成される有底筒状の密封装置本体を、前記貫通孔に圧入する工程と、
前記筒状部を外周面側に向かって押圧する嵌合状態と、前記嵌合状態の位置からずれて前記筒状部への押圧を解除する非嵌合状態とを取り得るように構成される補強部材を、前記筒状部の開口部から差し込むことで前記筒状部の内周面に嵌合する工程と、
を有することを特徴とする密封装置の取付方法。
【請求項8】
請求項7に記載の密封装置の取付方法により前記貫通孔に取り付けられた密封装置の取り外し方法であって、
前記補強部材は、前記筒状部の内周面に嵌合される筒状の嵌合部を有しており、
工具を前記補強部材の一部に引っ掛けて、前記補強部材を前記筒状部から取り外す工程と、
前記密封装置本体を前記貫通孔から引く抜く工程と、
を有することを特徴とする密封装置の取り外し方法。
【請求項9】
前記補強部材は、前記嵌合部から径方向内側に向かって突出する突出部を備えており、前記工具を前記突出部または前記嵌合部の端部に引っ掛けて、前記補強部材を前記筒状部から取り外すことを特徴とする請求項8に記載の密封装置の取り外し方法。
【請求項10】
請求項7に記載の密封装置の取付方法により前記貫通孔に取り付けられた密封装置の取り外し方法であって、
前記筒状部は、前記開口部側に配され、前記補強部材が嵌合される小筒部と、前記開口部よりも底側に配され、かつ前記小筒部の内径よりも、その内径が大きな大筒部とを有しており、
前記小筒部に嵌合された状態の前記補強部材を押し込んで、前記大筒部に収容させる工程と、
前記密封装置本体を前記貫通孔から引く抜く工程と、
を有することを特徴とする密封装置の取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置、密封装置の取付方法、及び密封装置の取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種部品を収容するハウジングなどに設けられる貫通孔を塞ぐための密封装置が知られている。
図9は従来技術に係る密封装置の使用状態を示す模式的断面図である。密封装置600は、筒状部610と底部620とを有する有底筒状の部材である。このように構成される密封装置600は、ハウジング300に設けられた貫通孔310に圧入される。これにより、貫通孔310の内周面に対して、筒状部610の外周面が密着することによって、貫通孔310が塞がれた状態となる。
【0003】
ここで、使用環境によっては、ハウジング300の内部圧力が高くなる場合がある。この場合、密封装置600の貫通孔310に対する圧入力を高くする必要がある。その一方で、使用環境によっては、メンテナンスなどにおいて、密封装置600を貫通孔310から取り外す必要がある場合もある。この場合、圧入力を高くするほど、密封装置600の取り外し作業が困難になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、貫通孔から外れ難く、かつ貫通孔からの取り外し作業の作業性を高めることのできる密封装置、密封装置の取付方法、及び密封装置の取り外し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
本発明の密封装置は、
貫通孔を塞ぐ密封装置であって、
前記貫通孔に圧入されると共に、前記貫通孔の内周面に対して、筒状部の外周面が密着するように構成される有底筒状の密封装置本体と、
前記筒状部の開口部から差し込まれることで前記筒状部の内周面に嵌合されて、前記筒状部を外周面側に向かって押圧する嵌合状態と、前記嵌合状態の位置からずれて前記筒状部への押圧を解除する非嵌合状態とを取り得るように構成される補強部材と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、補強部材が密封装置本体の筒状部に嵌合された状態においては、筒状部が外周面側に向かって押圧されるので、密封装置を貫通孔に強固に固定させることができる。また、補強部材を非嵌合状態にすることで、補強部材による筒状部への押圧が解除されることで、筒状部の貫通孔に対する固定力を低下させることができる。
【0009】
前記補強部材は、前記筒状部の内周面に嵌合される筒状の嵌合部を備えるとよい。
【0010】
また、前記補強部材は、前記嵌合部から径方向内側に向かって突出する突出部を備える
とよい。
【0011】
これにより、工具を突出部に引っ掛けながら取り外せるので、補強部材を密封装置本体から容易に取り外すことができる。
【0012】
前記突出部は内向きフランジ部であるとよい。
【0013】
また、前記筒状部は、
前記開口部側に配され、前記補強部材が嵌合される小筒部と、
前記開口部よりも底側に配され、かつ前記小筒部の内径よりも、その内径が大きな大筒部と、
を有することも好適である。
【0014】
このような構成を採用すれば、小筒部に嵌合された補強部材を押し込んで、大筒部に収容させることで、補強部材による筒状部への押圧を解除させることができる。
【0015】
また、前記補強部材は円盤状の部材であるとよい。
【0016】
また、本発明の密封装置の取付方法は、
貫通孔の内周面に対して、筒状部の外周面が密着するように構成される有底筒状の密封装置本体を、前記貫通孔に圧入する工程と、
前記筒状部を外周面側に向かって押圧する嵌合状態と、前記嵌合状態の位置からずれて前記筒状部への押圧を解除する非嵌合状態とを取り得るように構成される補強部材を、前記筒状部の開口部から差し込むことで前記筒状部の内周面に嵌合する工程と、
を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の密封装置の取り外し方法は、
上記の密封装置の取付方法により前記貫通孔に取り付けられた密封装置の取り外し方法であって、
前記補強部材は、前記筒状部の内周面に嵌合される筒状の嵌合部を有しており、
工具を前記補強部材の一部に引っ掛けて、前記補強部材を前記筒状部から取り外す工程と、
前記密封装置本体を前記貫通孔から引く抜く工程と、
を有することを特徴とする。
【0018】
前記補強部材は、前記嵌合部から径方向内側に向かって突出する突出部を備えており、前記工具を前記突出部または前記嵌合部の端部に引っ掛けて、前記補強部材を前記筒状部から取り外すとよい。
【0019】
更に、本発明の密封装置の取り外し方法は、
上記の密封装置の取付方法により前記貫通孔に取り付けられた密封装置の取り外し方法であって、
前記筒状部は、前記開口部側に配され、前記補強部材が嵌合される小筒部と、前記開口部よりも底側に配され、かつ前記小筒部の内径よりも、その内径が大きな大筒部とを有しており、
前記小筒部に嵌合された状態の前記補強部材を押し込んで、前記大筒部に収容させる工程と、
前記密封装置本体を前記貫通孔から引く抜く工程と、
を有することを特徴とする。
【0020】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、密封装置を貫通孔から外れ難くすることができ、かつ貫通孔からの密封装置の取り外し作業の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明の実施例1に係る密封装置の平面図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例1に係る密封装置の模式的断面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例1に係る密封装置の取付方法の説明図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例1に係る密封装置の取り外し方法の説明図である。
【
図5】
図5は本発明の実施例2に係る密封装置の平面図である。
【
図6】
図6は本発明の実施例2に係る密封装置の模式的断面図である。
【
図7】
図7は本発明の実施例2に係る密封装置の取付方法の説明図である。
【
図8】
図8は本発明の実施例2に係る密封装置の取り外し方法の説明図である。
【
図9】
図9は従来技術に係る密封装置の使用状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下に示す密封装置においては、E-Axleなど、ギアやモーターなどの部品を備える装置において、これらの部品を収容するハウジングに設けられる貫通孔を塞ぐために好適に用いることができる。特に、E-Axleにおいては、メンテナンスなどにおいて、密封装置を取り外す必要性があることから、本発明の密封装置を好適に用いることができる。ただし、本発明の密封装置は、このような装置に限らず、各種装置におけるハウジング等に設けられた貫通孔を塞ぐために用いることができる。特に、ハウジングの内部圧力が高くなり、かつ、装置のメンテナンス時に貫通孔から密封装置を取り外す必要が生じる使用環境において、本発明の密封装置を好適に用いることができる。
【0024】
(実施例1)
図1~
図4を参照して、本発明の実施例1に係る密封装置、密封装置の取付方法、及び密封装置の取り外し方法について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る密封装置の平面図である。
図2は本発明の実施例1に係る密封装置の模式的断面図であり、
図1中のAA断面図に相当する。
図3は本発明の実施例1に係る密封装置の取付方法の説明図であり、密封装置の取付工程図である。なお、
図3においては、各種部材を模式的断面図にて示している。
図4は本発明の実施例1に係る密封装置の取り外し方法の説明図であり、密封装置の取り外し工程図である。なお、
図4においては、各種部材を模式的断面図にて示している。
【0025】
<密封装置>
図1及び
図2を参照して、本実施例に係る密封装置10の構成について説明する。密封装置10は、密封装置本体100と、補強部材200とを備えている。密封装置本体100は、筒状部110と、底部120とを有する有底筒状の部材である。補強部材200は、筒状の嵌合部210と、嵌合部210から径方向内側に向かって突出する突出部としての内向きフランジ部220とを備えている。これら密封装置本体100と補強部材200は、金属などの剛性の高い材料により構成される。
【0026】
<密封装置の取付方法>
図3を参照して、本実施例に係る密封装置10の取付方法について説明する。本実施例に係る密封装置10は、ハウジング300に設けられた貫通孔310に取り付けられることで、貫通孔310を塞ぐために用いられる。本実施例に係る密封装置本体100は、貫通孔310に圧入されると共に、貫通孔310の内周面に対して、筒状部110の外周面が密着するように構成されている。本実施例においては、貫通孔310の内周面は円柱面により構成されており、筒状部110は円筒状の部分により構成されている。ここで、貫通孔310の内径よりも、筒状部110の外径の方が大きくなるように構成されている。なお、貫通孔310の端部には、密封装置本体100を圧入し易くするために、テーパ面311が設けられている。
【0027】
密封装置10の取付工程においては、まず、上記のように構成される密封装置本体100が貫通孔310に圧入される。
図3(a)は密封装置本体100の圧入直前の様子を示し、同図(b)は密封装置本体100の圧入後の様子を示している。なお、
図3中、下側がハウジング300の内部(装置内部)である。
【0028】
密封装置本体100のみが貫通孔310に圧入された状態においては、密封装置本体100を貫通孔310から取り外し易いように、密封装置本体100の貫通孔310に対する固定力(押圧力)は比較的弱めに設定されている。すなわち、嵌合代が少なめに設定されている。
【0029】
補強部材200は、密封装置本体100の筒状部110の開口部から差し込まれることで筒状部110の内周面に嵌合される。そして、この補強部材200は、筒状部110を外周面側に向かって押圧する嵌合状態と、この嵌合状態の位置からずれて筒状部110への押圧を解除する非嵌合状態とを取り得るように構成されている。また、補強部材200は、筒状部110の内周面に嵌合される筒状の嵌合部210と、嵌合部210から径方向内側に向かって突出する突出部としての内向きフランジ部220とを備えている。補強部材200の嵌合部210は円筒状の部分により構成されている。そして、筒状部110の内径よりも嵌合部210の外径の方が大きくなるように構成されている。これにより、嵌合部210によって、筒状部110に対して、全周に亘って外周面側に向かって略均一に押圧することができる。なお、嵌合部210の外周面の先端側には、筒状部110に差し込みやすいようにテーパ面211が設けられている。なお、本実施例では、テーパ面211を採用する場合を示したが、嵌合部210を筒状部110に差し込みし易くするためには、先細りする傾斜面であれば、テーパ面に限らず、断面で見た場合に曲線となるような傾斜面で構成してもよい。
【0030】
密封装置本体100が貫通孔310に圧入された後に、上記のように構成された補強部材200が筒状部110の開口部から差し込まれて、筒状部110の内周面に嵌合される。
図3(c)は補強部材200の嵌合直前の様子を示し、同図(d)は補強部材200が嵌合された後の様子を示している。
【0031】
補強部材200が筒状部110に嵌合された状態においては、密封装置本体100の貫通孔310に対する固定力(押圧力)が強固になるように設定されている。すなわち、補強部材200が筒状部110に嵌合されると、筒状部110が外周面側に拡がるような力が加えられることで、実質的に、嵌合代が大きくなるように設定されている。
【0032】
<密封装置の取り外し方法>
図4を参照して、本実施例に係る密封装置10の取り外し方法について説明する。本実施例においては、補強部材200を密封装置本体100の筒状部110から取り外すための工具400が、補強部材200の一部に引っ掛けられる(
図4(a)参照)。この場合、工具400を嵌合部210の先端に引っ掛けることもできるが、本実施例の場合には内
向きフランジ部220に引っ掛けた方が作業を行い易い。そして、工具400によって、てこの原理を利用するなどして、補強部材200が密封装置本体100から取り外される(同図(b)参照)。補強部材200が密封装置本体100から取り外されることで、密封装置本体100の貫通孔310に対する固定力(押圧力)は低下する。
【0033】
その後、密封装置本体100が貫通孔310から引き抜かれることで、密封装置10の取り外し作業が終了する。なお、密封装置本体100を貫通孔310から引き抜く作業は従来と同様の方法を採用することができる。例えば、専用治具を用いて引き抜くことができる。この場合、密封装置本体100に専用治具を引っ掛けるための凹部や凸部を設ける構成を採用することもできる。
【0034】
<本実施例に係る密封装置の優れた点>
本実施例に係る密封装置10によれば、補強部材200が密封装置本体100の筒状部110に嵌合された状態においては、筒状部110が外周面側に向かって押圧されるので、密封装置10を貫通孔310に強固に固定させることができる。これにより、ハウジング300の内部圧力が高くなる使用環境であっても、貫通孔310から密封装置10が抜け落ちてしまうことを抑制することができる。
【0035】
また、本実施例においては、補強部材200を非嵌合状態にする(本実施例の場合、補強部材200を密封装置本体100から取り外す)ことで、補強部材200による筒状部110への押圧が解除される。これにより、筒状部110の貫通孔310に対する固定力を低下させることができる。従って、密封装置本体100を貫通孔310から容易に引き抜くことができる。従って、貫通孔310からの密封装置10の取り外し作業の作業性を高めることができる。
【0036】
なお、本実施例においては、工具400を補強部材200の突出部(内向きフランジ部220)に引っ掛けながら、補強部材200を密封装置本体100から容易に取り外すことができる。また、本実施例においては、密封装置本体100の貫通孔310への圧入力を低く抑えることができるので、貫通孔310の内周面や密封装置本体100の外周面に傷がついてしまうことも抑制することができる。
【0037】
なお、本実施例においては、突出部が内向きフランジ部220により構成される場合を示した。しかしながら、工具400を引っ掛けやすくするために設ける突出部については、内向きフランジ部に限定されることはない。すなわち、突出部については、嵌合部210から径方向内側に向かって突出する構成であれば、全周に亘って突出する構成でなくても、部分的に突出する部分により構成を採用することもできる。また、工具400を嵌合部210の先端に引っ掛けることもできるので、突出部を有していない補強部材を採用することもできる。つまり、補強部材が円筒状の嵌合部のみからなる構成を採用することもできる。
【0038】
(実施例2)
図5~
図8を参照して、本発明の実施例2に係る密封装置、密封装置の取付方法、及び密封装置の取り外し方法について説明する。
図5は本発明の実施例2に係る密封装置の平面図である。
図6は本発明の実施例2に係る密封装置の模式的断面図であり、
図5中のBB断面図に相当する。
図7は本発明の実施例2に係る密封装置の取付方法の説明図であり、密封装置の取付工程図である。なお、
図7においては、各種部材を模式的断面図にて示している。
図8は本発明の実施例2に係る密封装置の取り外し方法の説明図であり、密封装置の取り外し工程図である。なお、
図8においては、各種部材を模式的断面図にて示している。
【0039】
<密封装置>
図5及び
図6を参照して、本実施例に係る密封装置10Xの構成について説明する。密封装置10Xは、密封装置本体100Xと、補強部材200Xとを備えている。密封装置本体100Xは、筒状部110Xと、底部120とを有する有底筒状の部材である。本実施例に係る筒状部110Xは、底部120とは反対側の開口部側に配され、補強部材200Xが嵌合される小筒部111と、開口部よりも底側に配され、補強部材200Xが非嵌合状態で、その内側に収容される大筒部112とを一体に有している。大筒部112の内径は、小筒部111の内径よりも大きい。そして、補強部材200Xは、円盤状の部材により構成されている。これら密封装置本体100Xと補強部材200Xは、金属などの剛性の高い材料により構成される。
【0040】
<密封装置の取付方法>
図7を参照して、本実施例に係る密封装置10Xの取付方法について説明する。本実施例に係る密封装置10Xは、ハウジング300に設けられた貫通孔310に取り付けられることで、貫通孔310を塞ぐために用いられる。本実施例に係る密封装置本体100Xは、貫通孔310に圧入されると共に、貫通孔310の内周面に対して、筒状部110Xにおける大筒部112の外周面が密着するように構成されている。本実施例においては、貫通孔310の内周面は円柱面により構成されており、筒状部110Xは、小筒部111と大筒部112とを一体に有する段差付きの円筒状の部分により構成されている。ここで、貫通孔310の内径よりも、大筒部112の外径の方が大きくなるように構成されている。なお、貫通孔310の端部には、密封装置本体100Xを圧入し易くするために、テーパ面311が設けられている。
【0041】
密封装置10Xの取付工程においては、まず、上記のように構成される密封装置本体100Xが貫通孔310に圧入される。
図7(a)は密封装置本体100Xの圧入直前の様子を示し、同図(b)は密封装置本体100Xの圧入後の様子を示している。なお、
図7中、下側がハウジング300の内部(装置内部)である。
【0042】
密封装置本体100Xのみが貫通孔310に圧入された状態においては、密封装置本体100Xを貫通孔310から取り外し易いように、密封装置本体100Xの貫通孔310に対する固定力(押圧力)は比較的弱めに設定されている。すなわち、嵌合代が少なめに設定されている。
【0043】
補強部材200Xは、密封装置本体100Xの筒状部110Xの開口部から差し込まれることで筒状部110Xにおける小筒部111の内周面に嵌合される。そして、この補強部材200Xは、筒状部110Xを外周面側に向かって押圧する嵌合状態と、この嵌合状態の位置からずれて筒状部110Xへの押圧を解除する非嵌合状態とを取り得るように構成されている。本実施例に係る補強部材200Xは、円盤状の部材により構成されている。そして、筒状部110Xにおける小筒部111の内径よりも補強部材200Xの外径の方が大きくなるように構成されている。なお、補強部材200Xの外周面の先端側には、筒状部110Xに差し込みやすいようにテーパ面201が設けられている。なお、本実施例では、テーパ面201を採用する場合を示したが、補強部材200Xを筒状部110Xに差し込みし易くするためには、先細りする傾斜面であれば、テーパ面に限らず、断面で見た場合に曲線となるような傾斜面で構成してもよい。
【0044】
密封装置本体100Xが貫通孔310に圧入された後に、上記のように構成された補強部材200Xが筒状部110Xの開口部から差し込まれて、筒状部110Xにおける小筒部111の内周面に嵌合される。
図7(c)は補強部材200Xの嵌合直前の様子を示し、同図(d)は補強部材200Xが嵌合された後の様子を示している。
【0045】
補強部材200Xが筒状部110Xにおける小筒部111に嵌合された状態においては、密封装置本体100Xの貫通孔310に対する固定力(押圧力)が強固になるように設定されている。すなわち、補強部材200Xが筒状部110Xにおける小筒部111に嵌合されると、筒状部110Xにおける大筒部112が外周面側に拡がるような力が加えられることで、実質的に、嵌合代が大きくなるように設定されている。
【0046】
<密封装置の取り外し方法>
図8を参照して、本実施例に係る密封装置10Xの取り外し方法について説明する。本実施例においては、筒状部110Xにおける小筒部111に嵌合された状態の補強部材200Xが押し込まれることで、補強部材200Xが大筒部112に収容される。例えば、ハンマー500により、補強部材200Xを叩くことで、補強部材200Xを大筒部112に収容させることができる(
図8参照)。これにより、密封装置本体100Xの貫通孔310に対する固定力(押圧力)は低下する。なお、筒状部110Xにおける大筒部112の内径よりも補強部材200Xの外径の方が小さくなるように構成されている。
【0047】
その後、密封装置本体100Xが貫通孔310から引き抜かれることで、密封装置10Xの取り外し作業が終了する。なお、密封装置本体100Xを貫通孔310から引き抜く作業は従来と同様の方法を採用することができる。例えば、専用治具を用いて引き抜くことができる。この場合、密封装置本体100Xに専用治具を引っ掛けるための凹部や凸部を設ける構成を採用することもできる。
【0048】
<本実施例に係る密封装置の優れた点>
本実施例に係る密封装置10Xによれば、補強部材200Xが密封装置本体100Xの筒状部110Xにおける小筒部111に嵌合された状態においては、筒状部110Xにおける大筒部112が外周面側に向かって押圧される。そのため、密封装置10Xを貫通孔310に強固に固定させることができる。これにより、ハウジング300の内部圧力が高くなる使用環境であっても、貫通孔310から密封装置10Xが抜け落ちてしまうことを抑制することができる。
【0049】
また、本実施例においては、補強部材200Xを非嵌合状態にする(本実施例の場合、補強部材200Xを大筒部112に収容させる)ことで、補強部材200Xによる筒状部110Xへの押圧が解除される。これにより、筒状部110Xにおける大筒部112の貫通孔310に対する固定力を低下させることができる。従って、密封装置本体100Xを貫通孔310から容易に引き抜くことができる。従って、貫通孔310からの密封装置10Xの取り外し作業の作業性を高めることができる。
【0050】
なお、本実施例においては、小筒部111に嵌合された補強部材200Xを押し込んで、大筒部112に収容させることで、補強部材200Xによる筒状部110Xへの押圧を解除させることができる。また、本実施例においては、密封装置本体100Xの貫通孔310への圧入力を低く抑えることができるので、貫通孔310の内周面や密封装置本体100Xの外周面に傷がついてしまうことも抑制することができる。
【0051】
上記各実施例においては、貫通孔の内周面が円柱面で構成される場合を示した。そのため、密封装置本体の筒状部は円筒状の部分により構成される。しかしながら、貫通孔の内周面の形状が異なる場合には、密封装置本体の筒状部の形状を貫通孔の内周面の形状に合わせるように構成すればよい。この場合、密封装置本体の筒状部を外周面側に向かって押圧するための補強部材の形状についても、密封装置本体の筒状部の形状に合わせるように構成すればよい。
【符号の説明】
【0052】
10,10X:密封装置
100,100X:密封装置本体
110,110X:筒状部
111:小筒部
112:大筒部
120:底部
200,200X:補強部材
201:テーパ面
210:嵌合部
211:テーパ面
220:内向きフランジ部
300:ハウジング
310:貫通孔
311:テーパ面
400:工具
500:ハンマー