(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145062
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】自動係船方法、及び自動係船システム
(51)【国際特許分類】
B63B 21/04 20060101AFI20241004BHJP
B63B 21/00 20060101ALI20241004BHJP
B63B 21/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B63B21/04 B
B63B21/00 A
B63B21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057305
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】國分 健太郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】岸壁や桟橋に設けられている既存の係留手段に係留索を自動で繋げることのできる自動係船方法、及び自動係船システムを提供する。
【解決手段】岸壁等の係留手段を認識して近接させ距離が距離閾値以内かを判断する距離判断ステップS2と、距離閾値以内の場合に係留索発射手段の係留手段に対する3次元的な位置のずれ及び角速度についての発射条件が発射条件閾値以内かを判断する発射条件判断ステップS4と、発射条件閾値以内の場合に対象点に係留索が到達するよう係留索発射手段の角度と方向及び発射速度を調整し係留索を発射する係留索発射ステップS6と、対象点から係留索を移動させて係留手段に係止させる係止ステップS7と、係留索に張力を付与し繰り出し長さ及び張力が係留索状態閾値以内かを判断し調整する係留索状態判断ステップS8-2を有し、船舶を係留手段に自動的に係船する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を岸壁又は桟橋に設けられた係留手段に係留索を用いて自動的に係船をする方法であって、
前記岸壁又は前記桟橋の前記係留手段を認識して近接させ、前記係留手段と前記船舶との距離が距離閾値以内かを判断する距離判断ステップと、
前記距離が前記距離閾値以内の場合に、前記船舶に搭載した係留索発射手段の前記係留手段に対する3次元的な位置のずれ及び角速度についての発射条件が発射条件閾値以内かを判断する発射条件判断ステップと、
前記発射条件が前記発射条件閾値以内の場合に前記係留手段を避けた周辺の対象点に前記係留索が到達するよう前記係留索発射手段の角度と方向及び発射速度を調整し前記係留索を発射する係留索発射ステップと、
発射された前記係留索の前記周辺の前記対象点から前記係留索を移動させて前記係留手段に係止させる係止ステップと、
前記係留索に張力を付与し、前記係留索の繰り出し長さ及び前記係留索の張力が係留索状態閾値以内かを判断し調整する係留索状態判断ステップを有し、前記船舶を前記係留手段に自動的に係船することを特徴とする自動係船方法。
【請求項2】
前記係留手段の位置を検知し、前記係留手段の近傍の前記岸壁又は前記桟橋に前記船舶を接近させる接近ステップを前記距離判断ステップの前に有することを特徴とする請求項1に記載の自動係船方法。
【請求項3】
前記係留索発射ステップの前に、前記係留手段の近傍の安全性を確認する発射前安全性確認ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の自動係船方法。
【請求項4】
前記距離が前記距離閾値を超える、前記発射条件が前記発射条件閾値を超える、又は前記係留索の前記張力が前記係留索状態閾値を超える場合に、各ステップの前に戻り再度、各ステップを実行することを特徴とする請求項1に記載の自動係船方法。
【請求項5】
前記係留索に付与した張力を緩め、前記係留索の繰り出し長さ及び張力が係留索解除閾値以内かを判断し調整する係留索解除判断ステップと、前記係留手段に係止された前記係留索を自動的に外す係止自動解除ステップと、前記係留索を前記船舶に収容するように巻き取る係留索収容ステップと、前記係留索の繰り出し長さが収容閾値以内かを判断し調整する収容判断ステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の自動係船方法。
【請求項6】
前記収容判断ステップの後に、前記係留索が前記船舶に収容されたことを検知し、前記岸壁又は前記桟橋から前記船舶を離岸又は離桟させる離岸ステップを有することを特徴とする請求項5に記載の自動係船方法。
【請求項7】
前記収容判断ステップで前記係留索の収容を判断した後に、前記係留索を前記係留索発射手段に再装着する再装着ステップを有することを特徴とする請求項5に記載の自動係船方法。
【請求項8】
前記係留索解除判断ステップの前に、前記係留手段の近傍の安全性を確認する解除前安全性確認ステップを有することを特徴とする請求項5に記載の自動係船方法。
【請求項9】
前記係留索の前記繰り出し長さ及び前記張力が前記係留索解除閾値を超える場合は、前記係留索解除閾値以内となるように前記繰り出し長さを増して前記張力をさらに緩めること、前記係留索の繰り出し長さが前記収容閾値を超える場合は、収容閾値以内となるように前記係留索をさらに巻き取ることを特徴とする請求項5に記載の自動係船方法。
【請求項10】
船舶を岸壁又は桟橋に設けられた係留手段に係留索を用いて自動的に係船をするシステムであって、
前記岸壁又は前記桟橋の前記係留手段を認識する対象物認識手段と、
前記係留手段と前記船舶との距離を計測する距離計測手段と、
前記船舶に搭載した係留索発射手段と、
前記船舶に搭載した前記係留索発射手段の前記係留手段に対する3次元的な位置のずれ及び角速度を検出する状態検出手段と、
前記係留手段を避けた周辺の対象点に前記係留索が到達するよう前記係留索発射手段の角度と方向及び発射速度を調整する発射調整手段と、
発射された前記係留索の前記周辺の前記対象点から前記係留索を移動させて前記係留手段に係止させる係留索移動係止手段と、
前記係留索の繰り出しと巻き上げを行うとともに張力を付与するリール手段と、
前記係留索の繰り出し長さ及び前記係留索の張力を検出する係留索状態検出手段と、
システムを制御する制御手段とを備え、前記船舶を前記係留手段に自動的に係船することを特徴とする自動係船システム。
【請求項11】
前記係留索が端部に係止環を有し、前記係留索移動係止手段が、前記係留索の前記係止環を移動させて下部に導く漏斗状の係留索案内部を有し、前記係留索移動係止手段の下部に前記係止環を捕獲/解放する捕獲解放機構を有し、前記捕獲解放機構が前記係留手段に係止された補助索の端部に設けたフック機構を収納可能に構成され、前記係留索発射手段から発射された前記係留索の前記係止環を前記係留索案内部を通って前記捕獲解放機構に導き、前記捕獲解放機構で前記係止環を前記フック機構に係合させて前記係止環を捕獲し、前記係船を自動的に行うことを特徴とする請求項10に記載の自動係船システム。
【請求項12】
前記制御手段が、前記捕獲解放機構を作動させることにより、前記フック機構から前記係止環を解放し、前記係船を自動的に解除することを特徴とする請求項11に記載の自動係船システム。
【請求項13】
前記係留索移動係止手段が、前記係留索発射手段から発射され前記岸壁又は前記桟橋の前記対象点に到達した前記係留索を認識し把持する把持部と、自走して把持した前記係留索を前記係留手段の所に移動させる移動部と、前記係留索を前記係留手段に係止/解除する係止解除部を有し、前記係船を自動的に行うことを特徴とする請求項10に記載の自動係船システム。
【請求項14】
前記制御手段による指示に基づいて、前記係留索移動係止手段が、前記係止解除部により前記係留手段に係止された前記係留索の係止を解除し、前記係船を自動的に解除することを特徴とする請求項13に記載の自動係船システム。
【請求項15】
前記船舶に前記係留索の繰り出しと巻き上げを行うとともに張力を付与する第1リール手段と、第2リール手段を設け、前記第1リール手段と前記第2リール手段に把持された前記係留索を前記係留索発射手段から発射し、前記係留手段を超えて前記岸壁又は前記桟橋の前記対象点に到達した前記係留索を前記第1リール手段と前記第2リール手段の少なくとも一方で巻き上げることにより前記係留索を移動させて前記係留手段に係止させ、前記第1リール手段と前記第2リール手段の少なくとも一方が前記係留索移動係止手段を兼ねることにより前記係船を自動的に行うことを特徴とする請求項10に記載の自動係船システム。
【請求項16】
前記制御手段による指示に基づいて、前記係留索に係留索同士の接続及び切り離しを自在に行う着脱自在手段を設け、前記係船を行った状態で前記第2リール手段の近傍に位置する前記着脱自在手段を自動的に切り離し、少なくとも前記第1リールを巻き上げることにより前記係留索を前記船舶に回収し、前記係船を自動的に解除することを特徴とする請求項15に記載の自動係船システム。
【請求項17】
前記着脱自在手段として、前記第1リール手段から伸びる前記係留索の端部及び前記第2リール手段から伸びる前記係留索の端部に対となる係止機構を有し、前記船舶に第3リール手段を設け、前記第3リール手段から伸びる補助索の端部を、前記第2リール手段から伸びる前記係留索の前記係止機構に着脱自在に構成し、前記第3リール手段を巻き上げることにより、前記係止機構を解放可能に構成したことを特徴とする請求項16に記載の自動係船システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶を岸壁又は桟橋に設けられた係留手段に係留索を用いて自動的に係船する自動係船方法、及び自動係船システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運航船の研究開発が進められているが、離着桟時の係船用の綱の取り回しは手動で行われている。係船は、船舶から係留索を陸に渡して、その先端を桟橋のボラードに巻き付けることにより実施される。
ここで、特許文献1には、脚部及び水平面内で旋回自在なアーム部を有したホーサブームと、ロープを巻いたドラムと、制御装置を有しており、制御装置が、船舶からの無線信号でホーサブームを旋回し、ロープを懸吊したアーム部の端部を船舶上に移動する制御を行うように構成した係船装置が開示されている。
また、特許文献2には、船にアームコラムを介して旋回可能に装着されるとともにアームコラムに揺動可能に取付けられたアームと、アームの先端部に取付けられた索取り付けフックと、索取り付けフックにアイスプライスで係止される係船索と、係船索を捲き取り可能な係船ウインチとをそなえ、アームの振り出し用旋回駆動モータをアームコラムに取付けアームの揺動用の動力駆動シリンダーをアームとアームコラムとの間に介設し、係船ウインチの回転駆動モータを係船ウインチに装着して、旋回駆動モータ、動力駆動シリンダーおよび回転駆動モータのいずれをも遠隔操作により制御できるように構成した係船索の繰り出し装置が開示されている。
また、特許文献3には、係船索を巻取り、巻戻しする巻取ドラムと、巻取ドラムを回転駆動し、遠隔制御が可能な電動駆動源からなる索巻取り手段と、係船索を外部に繰出す繰出し機構と、繰出し機構を駆動し、遠隔制御が可能な電動駆動源からなる索繰出し手段とを備えた係船装置と、係船装置の電源駆動源を遠隔制御するための制御手段と、係船索の状況を監視する監視システムとからなる係船制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-26086号公報
【特許文献2】特開平6-99881号公報
【特許文献3】特開2005-153595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明は、岸壁に係船装置を設置する必要があるが、新しい装置の新設にはコストが掛かるため、普及は難しい。
特許文献2記載の発明は、船にアーム等を設置する必要があるが、新しい装置の新設にはコストが掛かるため、普及は難しい。また、船からアームを伸ばすのは、船体重心からアームの先端までの距離が大きいため、船体が動揺している場合には、アーム先端の変位が大きくなり、係留索のボラードへの巻き付けは困難となる事が容易に予想される。
特許文献3記載の発明は、係留索の巻取りと繰出しを制御するものであるが、係留索をボラードに係止する作業も含めて自動化しようとするものではない。
そこで本発明は、岸壁や桟橋に設けられている既存のボラード等の係留手段に係留索を自動で繋げることのできる自動係船方法、及び自動係船システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載に対応した自動係船方法においては、船舶を岸壁又は桟橋に設けられた係留手段に係留索を用いて自動的に係船をする方法であって、岸壁又は桟橋の係留手段を認識して近接させ、係留手段と船舶との距離が距離閾値以内かを判断する距離判断ステップと、距離が距離閾値以内の場合に、船舶に搭載した係留索発射手段の係留手段に対する3次元的な位置のずれ及び角速度についての発射条件が発射条件閾値以内かを判断する発射条件判断ステップと、発射条件が発射条件閾値以内の場合に係留手段を避けた周辺の対象点に係留索が到達するよう係留索発射手段の角度と方向及び発射速度を調整し係留索を発射する係留索発射ステップと、発射された係留索の周辺の対象点から係留索を移動させて係留手段に係止させる係止ステップと、係留索に張力を付与し、係留索の繰り出し長さ及び係留索の張力が係留索状態閾値以内かを判断し調整する係留索状態判断ステップを有し、船舶を係留手段に自動的に係船することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、係船時の係留索の取り回しを自動で行い、岸壁や桟橋に設けられている既存の係留手段に係留索を繋げ、自動的に係船することができる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、係留手段の位置を検知し、係留手段の近傍の岸壁又は桟橋に船舶を接近させる接近ステップを距離判断ステップの前に有することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、岸壁又は桟橋に船舶を接近させることで、さらに係留手段に船舶を近接させることが容易にできる。
【0007】
請求項3記載の本発明は、係留索発射ステップの前に、係留手段の近傍の安全性を確認する発射前安全性確認ステップを有することを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、発射した係留索が人や存在物に当たってしまうこと等を防止できる。
【0008】
請求項4記載の本発明は、距離が距離閾値を超える、発射条件が発射条件閾値を超える、又は係留索の張力が係留索状態閾値を超える場合に、各ステップの前に戻り再度、各ステップを実行することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、係留手段への係留索の自動係止を確実に行うことができる。
【0009】
請求項5記載の本発明は、係留索に付与した張力を緩め、係留索の繰り出し長さ及び張力が係留索解除閾値以内かを判断し調整する係留索解除判断ステップと、係留手段に係止された係留索を自動的に外す係止自動解除ステップと、係留索を船舶に収容するように巻き取る係留索収容ステップと、係留索の繰り出し長さが収容閾値以内かを判断し調整する収容判断ステップをさらに有することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、離岸時又は離桟時の係留索の取り外しと収容を自動で行うことができる。
【0010】
請求項6記載の本発明は、収容判断ステップの後に、係留手段が船舶に収容されたことを検知し、岸壁又は桟橋から船舶を離岸又は離桟させる離岸ステップを有することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、係留索の収容を検知して安全に離岸又は離桟して出港することができる。
【0011】
請求項7記載の本発明は、収容判断ステップで係留索の収容を判断した後に、係留索を係留索発射手段に再装着する再装着ステップを有することを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、係留索を次の係船時の発射に備えた状態にすることができる。
【0012】
請求項8記載の本発明は、係留索解除判断ステップの前に、係留手段の近傍の安全性を確認する解除前安全性確認ステップを有することを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、取り外し時に係留索が人や存在物に当たってしまうこと等を防止できる。
【0013】
請求項9記載の本発明は、係留索の繰り出し長さ及び張力が係留索解除閾値を超える場合は、係留索解除閾値以内となるように繰り出し長さを増して張力をさらに緩めること、係留索の繰り出し長さが収容閾値を超える場合は、収容閾値以内となるように係留索をさらに巻き取ることを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、係留索の繰り出し長さ及び張力を係留索解除閾値以内に早期に収めることができ、係留索の解除や収容を迅速にすることができる。
【0014】
請求項10記載に対応した自動係船システムにおいては、船舶を岸壁又は桟橋に設けられた係留手段に係留索を用いて自動的に係船をするシステムであって、岸壁又は桟橋の係留手段を認識する対象物認識手段と、係留手段と船舶との距離を計測する距離計測手段と、船舶に搭載した係留索発射手段と、船舶に搭載した係留索発射手段の係留手段に対する3次元的な位置のずれ及び角速度を検出する状態検出手段と、係留手段を避けた周辺の対象点に係留索が到達するよう係留索発射手段の角度と方向及び発射速度を調整する発射調整手段と、発射された係留索の周辺の対象点から係留索を移動させて係留手段に係止させる係留索移動係止手段と、係留索の繰り出しと巻き上げを行うとともに張力を付与するリール手段と、係留索の繰り出し長さ及び係留索の張力を検出する係留索状態検出手段と、システムを制御する制御手段とを備え、船舶を係留手段に自動的に係船することを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、係船時の係留索の取り回しを自動で行い、岸壁や桟橋に設けられている既存の係留手段を利用し、自動的に係留索を繋げて係船することができる。
【0015】
請求項11記載の本発明は、係留索が端部に係止環を有し、係留索移動係止手段が、係留索の係止環を移動させて下部に導く漏斗状の係留索案内部を有し、係留索移動係止手段の下部に係止環を捕獲/解放する捕獲解放機構を有し、捕獲解放機構が係留手段に係止された補助索の端部に設けたフック機構を収納可能に構成され、係留索発射手段から発射された係留索の係止環を係留索案内部を通って捕獲解放機構に導き、捕獲解放機構で係止環をフック機構に係合させて係止環を捕獲し、係船を自動的に行うことを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、岸壁側又は桟橋側に係留索案内部や捕獲解放機構等を設けるだけで、係留手段への係留索の自動係止を確実に行うことができる。
【0016】
請求項12記載の本発明は、制御手段が、捕獲解放機構を作動させることにより、フック機構から係止環を解放し、係船を自動的に解除することを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、離岸時又は離桟時に係留手段からの係留索の取り外しを自動で行うことができる。
【0017】
請求項13記載の本発明は、係留索移動係止手段が、係留索発射手段から発射され岸壁又は桟橋の対象点に到達した係留索を認識し把持する把持部と、自走して把持した係留索を係留手段の所に移動させる移動部と、係留索を係留手段に係止/解除する係止解除部を有し、係船を自動的に行うことを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、岸壁側又は桟橋側の係止作業を移動式ロボット等に行わせ既存の係留手段を利用し、自動的に係留索を繋げることができる。
【0018】
請求項14記載の本発明は、制御手段による指示に基づいて、係留索移動係止手段が、係止解除部により係留手段に係止された係留索の係止を解除し、係船を自動的に解除することを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、離岸時又は離桟時に係留手段からの係留索の取り外しを移動式ロボット等に自動で行わせることができる。
【0019】
請求項15記載の本発明は、船舶に係留索の繰り出しと巻き上げを行うとともに張力を付与する第1リール手段と、第2リール手段を設け、第1リール手段と第2リール手段に把持された係留索を係留索発射手段から発射し、係留手段を超えて岸壁又は桟橋の対象点に到達した係留索を第1リール手段と第2リール手段の少なくとも一方で巻き上げることにより係留索を移動させて係留手段に係止させ、第1リール手段と第2リール手段の少なくとも一方が係留索移動係止手段を兼ねることにより係船を自動的に行うことを特徴とする。
請求項15に記載の本発明によれば、岸壁又は桟橋に係留索移動係止手段を備えなくても既存の係留手段を利用し、船舶側だけの設備で係船を自動的に完了させることができる。
【0020】
請求項16記載の本発明は、制御手段による指示に基づいて、係留索に係留索同士の接続及び切り離しを自在に行う着脱自在手段を設け、係船を行った状態で第2リール手段の近傍に位置する着脱自在手段を自動的に切り離し、少なくとも第1リールを巻き上げることにより係留索を船舶に回収し、係船を自動的に解除することを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、離岸時又は離桟時における係留手段からの係留索の取り外しと回収を船舶側から自動で行うことができる。
【0021】
請求項17記載の本発明は、着脱自在手段として、第1リール手段から伸びる係留索の端部及び第2リール手段から伸びる係留索の端部に対となる係止機構を有し、船舶に第3リール手段を設け、第3リール手段から伸びる補助索の端部を、第2リール手段から伸びる係留索の係止機構に着脱自在に構成し、第3リール手段を巻き上げることにより、係止機構を解放可能に構成したことを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、補助索を利用して離岸時又は離桟時に係留手段から係留索の係止機構を解放することにより自動で取り外すことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の自動係船方法によれば、係船時の係留索の取り回しを自動で行い、岸壁や桟橋に設けられている既存の係留手段に係留索を繋げ、自動的に係船することができる。
【0023】
また、係留手段の位置を検知し、係留手段の近傍の岸壁又は桟橋に船舶を接近させる接近ステップを距離判断ステップの前に有する場合には、岸壁又は桟橋に船舶を接近させることで、さらに係留手段に船舶を近接させることが容易にできる。
【0024】
また、係留索発射ステップの前に、係留手段の近傍の安全性を確認する発射前安全性確認ステップを有する場合には、発射した係留索が人や存在物に当たってしまうこと等を防止できる。
【0025】
また、距離が距離閾値を超える、発射条件が発射条件閾値を超える、又は係留索の張力が係留索状態閾値を超える場合に、各ステップの前に戻り再度、各ステップを実行する場合には、係留手段への係留索の自動係止を確実に行うことができる。
【0026】
また、係留索に付与した張力を緩め、係留索の繰り出し長さ及び張力が係留索解除閾値以内かを判断し調整する係留索解除判断ステップと、係留手段に係止された係留索を自動的に外す係止自動解除ステップと、係留索を船舶に収容するように巻き取る係留索収容ステップと、係留索の繰り出し長さが収容閾値以内かを判断し調整する収容判断ステップをさらに有する場合には、離岸時又は離桟時の係留索の取り外しと収容を自動で行うことができる。
【0027】
また、収容判断ステップの後に、係留手段が船舶に収容されたことを検知し、岸壁又は桟橋から船舶を離岸又は離桟させる離岸ステップを有する場合には、係留索の収容を検知して安全に離岸又は離桟して出港することができる。
【0028】
また、収容判断ステップで係留索の収容を判断した後に、係留索を係留索発射手段に再装着する再装着ステップを有する場合には、係留索を次の係船時の発射に備えた状態にすることができる。
【0029】
また、係留索解除判断ステップの前に、係留手段の近傍の安全性を確認する解除前安全性確認ステップを有する場合には、取り外し時に係留索が人や存在物に当たってしまうこと等を防止できる。
【0030】
また、係留索の繰り出し長さ及び張力が係留索解除閾値を超える場合は係留索解除閾値以内となるように繰り出し長さを増して張力をさらに緩め、係留索の繰り出し長さが収容閾値を超える場合は収容閾値以内となるように係留索をさらに巻き取る場合には、係留索の繰り出し長さ及び張力を係留索解除閾値以内に早期に収めることができ、係留索の解除や収容を迅速にすることができる。
【0031】
本発明の自動係船システムによれば、係船時の係留索の取り回しを自動で行い、岸壁や桟橋に設けられている既存の係留手段を利用し、自動的に係留索を繋げて係船することができる。
【0032】
また、係留索が端部に係止環を有し、係留索移動係止手段が、係留索の係止環を移動させて下部に導く漏斗状の係留索案内部を有し、係留索移動係止手段の下部に係止環を捕獲/解放する捕獲解放機構を有し、捕獲解放機構が係留手段に係止された補助索の端部に設けたフック機構を収納可能に構成され、係留索発射手段から発射された係留索の係止環を係留索案内部を通って捕獲解放機構に導き、捕獲解放機構で係止環をフック機構に係合させて係止環を捕獲し、係船を自動的に行う場合には、岸壁側又は桟橋側に係留索案内部や捕獲解放機構等を設けるだけで、係留手段への係留索の自動係止を確実に行うことができる。
【0033】
また、制御手段が、捕獲解放機構を作動させることにより、フック機構から係止環を解放し、係船を自動的に解除する場合には、離岸時又は離桟時に係留手段からの係留索の取り外しを自動で行うことができる。
【0034】
また、係留索移動係止手段が、係留索発射手段から発射され岸壁又は桟橋の対象点に到達した係留索を認識し把持する把持部と、自走して把持した係留索を係留手段の所に移動させる移動部と、係留索を係留手段に係止/解除する係止解除部を有し、係船を自動的に行う場合には、岸壁側又は桟橋側の係止作業を移動式ロボット等に行わせ既存の係留手段を利用し、自動的に係留索を繋げることができる。
【0035】
また、制御手段による指示に基づいて、係留索移動係止手段が、係止解除部により係留手段に係止された係留索の係止を解除し、係船を自動的に解除する場合には、離岸時又は離桟時に係留手段からの係留索の取り外しを移動式ロボット等に自動で行わせることができる。
【0036】
また、船舶に係留索の繰り出しと巻き上げを行うとともに張力を付与する第1リール手段と、第2リール手段を設け、第1リール手段と第2リール手段に把持された係留索を係留索発射手段から発射し、係留手段を超えて岸壁又は桟橋の対象点に到達した係留索を第1リール手段と第2リール手段の少なくとも一方で巻き上げることにより係留索を移動させて係留手段に係止させ、第1リール手段と第2リール手段の少なくとも一方が係留索移動係止手段を兼ねることにより係船を自動的に行う場合には、岸壁又は桟橋に係留索移動係止手段を備えなくても既存の係留手段を利用し、船舶側だけの設備で係船を自動的に完了させることができる。
【0037】
また、制御手段による指示に基づいて、係留索に係留索同士の接続及び切り離しを自在に行う着脱自在手段を設け、係船を行った状態で第2リール手段の近傍に位置する着脱自在手段を自動的に切り離し、少なくとも第1リールを巻き上げることにより係留索を船舶に回収し、係船を自動的に解除する場合には、離岸時又は離桟時における係留手段からの係留索の取り外しと回収を船舶側から自動で行うことができる。
【0038】
また、着脱自在手段として、第1リール手段から伸びる係留索の端部及び第2リール手段から伸びる係留索の端部に対となる係止機構を有し、船舶に第3リール手段を設け、第3リール手段から伸びる補助索の端部を、第2リール手段から伸びる係留索の係止機構に着脱自在に構成し、第3リール手段を巻き上げることにより、係止機構を解放可能に構成した場合には、補助索を利用して離岸時又は離桟時に係留手段から係留索の係止機構を解放することにより自動で取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態による自動係船方法における着岸又は着桟時のフロー図
【
図2】同自動係船方法における離岸又は離桟時のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態による自動係船方法、及び自動係船システムについて説明する。
図1は自動係船方法における着岸又は着桟時のフロー図、
図2は自動係船方法における離岸又は離桟時のフロー図、
図3は自動係船システムの機能構成図である。
自動係船方法及び自動係船システムは、船舶2を岸壁又は桟橋3(以下、「岸壁等」ということもある。)に設けられたボラード等の係留手段1に係留索10を用いて自動的に係船させる。
【0041】
図3に示すように、自動係船システムは、岸壁等3に設けられている係留手段1を認識する対象物認識手段20と、係留手段1と船舶2との距離を計測する距離計測手段30と、係留索10を発射するボーガン式等の係留索発射手段40と、係留索発射手段40の係留手段1に対する3次元的な位置のずれ及び角速度を検出する状態検出手段50と、係留索発射手段40の角度と方向及び発射速度を調整する発射調整手段60と、係留索10を移動させて係留手段1に係止させる係留索移動係止手段70と、係留索10の繰り出しと巻き上げを行うとともに張力を付与するリール手段80と、係留索10の繰り出し長さ及び係留索10の張力を検出する係留索状態検出手段90と、通信部を有する制御手段100を備える。
係留索移動係止手段70は岸壁等3に設置され、係留索10、対象物認識手段20、距離計測手段30、係留索発射手段40、状態検出手段50、発射調整手段60、リール手段80、係留索状態検出手段90、及び制御手段100は船舶2に搭載されている。
【0042】
着岸又は着桟時のフローについて説明する。
図1に示すように、入港指示が出されると、制御手段100は、係留手段1の位置を対象物認識手段20により認識(検知)し、係留手段1の近傍の岸壁等3に船舶2を接近させる(S1:接近ステップ)。対象物認識手段20は、カメラや画像判別部等により構成することができる。
また、制御手段100は、岸壁等3の係留手段1を認識し、係留手段1に船舶2を近接させ、距離計測手段30により取得される係留手段1と船舶2との距離が距離閾値以内か否かを判断する(S2:距離判断ステップ)。
制御手段100は、距離判断ステップS2において係留手段1と船舶2との距離が距離閾値を超えると判断した場合は、接近ステップS1に戻り、船舶2を岸壁等3に更に接近させる。
【0043】
制御手段100は、距離判断ステップS2において距離が距離閾値以内であると判断した場合は、発射調整手段60により係留索発射手段40の角度と方向を調整する(S3:発射角度等調整ステップ)。
また、制御手段100は、状態検出手段50により取得される係留索発射手段40の係留手段1に対する3次元的な位置のずれ及び角速度についての発射条件が発射条件閾値以内か否かを判断する(S4:発射条件判断ステップ)。状態検出手段50は、ジャイロセンサ等により構成することができる。
発射条件判断ステップS4において発射条件が発射条件閾値を超えると判断した場合は、発射角度等調整ステップS3に戻り、係留索発射手段40の角度と方向を更に調整する。
【0044】
制御手段100は、発射条件判断ステップS4において発射条件が発射条件閾値内であると判断した場合は、係留手段1から所定範囲内に人が居ないかなど、係留手段1の近傍の安全性をカメラ画像等により確認する(S5:発射前安全性確認ステップ)。
制御手段100は、発射前安全性確認ステップS5において係留手段1の近傍の安全性が確認できない場合は、発射角度等調整ステップS3に戻り、係留索発射手段40の角度と方向を更に調整する。
そして、制御手段100は、発射前安全性確認ステップS5において係留手段1の近傍の安全性が確認できた場合は、発射調整手段60により係留手段1を避けた周辺の対象点に係留索10が到達するよう係留索発射手段40の角度と方向及び発射速度を調整し、係留索発射手段40により係留索10を発射する(S6:係留索発射ステップ)。
【0045】
また、制御手段100は、対象点に向けて発射され岸壁等3に到達した係留索10を係留索移動係止手段70により移動させて係留手段1に係止させる(S7:係止ステップ)。
制御手段100は、係留索10が巻回されているリール手段80により係留索10に張力の付与と調整を行い(S8-1:張力調整ステップ)、係留索10の繰り出し長さ及び係留索10の張力が係留索状態閾値以内か否かを判断する(S8-2:係留索状態判断ステップ)。
制御手段100は、係留索状態判断ステップS8-2において係留索10の繰り出し長さ又は係留索10の張力が係留索状態閾値を超えると判断した場合は、張力調整ステップS8-1に戻り、リール手段80により係留索10の繰り出し長さ及び張力の調整を再度行う。
また、係留索状態判断ステップS8-2において係留索10の張力がゼロに近いなど、係留手段1への係留索10の係止が失敗したと見做せる場合は、係止ステップS7へ戻り、係留索移動係止手段70により再度係留索10を移動させて係留手段1に係止させる。
【0046】
そして、制御手段100は、係留索状態判断ステップS8-2において係留索10の繰り出し長さ及び係留索10の張力が係留索状態閾値以内であると判断した場合は、係船が完了したとして自動係船作業を終了する。このように、係船時の係留索10の取り回しを自動で行い、岸壁や桟橋に設けられている既存の係留手段1に自動的に係留索10を繋げ、岸壁側や桟橋側に人手を必要とせずに係船することができる。これにより、港湾労働の省力化が図られ、港湾労働者不足問題の解消にも繋がる。
また、係留手段1の位置を検知し、係留手段1の近傍の岸壁等3に船舶2を接近させる接近ステップS1を有することで、さらに係留手段1に船舶2を近接させることが容易となる。
また、係留索発射ステップS6の前に、係留手段1の近傍の安全性を確認する発射前安全性確認ステップS5を有することで、発射した係留索10が人や存在物に当たってしまうこと等を防止し安全性を高めることができる。
また、距離判断ステップS2において距離が距離閾値を超えると判断した場合は接近ステップS1に戻り、発射条件判断ステップS4において発射条件が発射条件閾値を超えると判断した場合は発射角度等調整ステップS3に戻り、係留索状態判断ステップS8-2において係留索10の張力が係留索状態閾値を超えると判断した場合は張力調整ステップS8-1又は係止ステップS7に戻るというように、距離が距離閾値を超える、発射条件が発射条件閾値を超える、又は係留索10の張力が係留索状態閾値を超える場合に、各ステップの前に戻り、再度各ステップを実行することで、確実に係留手段1へ係留索10を自動係止させることができる。
【0047】
次に、離岸又は離桟時のフローについて説明する。
図2に示すように、出航指示が出されると、制御手段100は、リール手段80により係留索10に付与した張力を緩めるように調整し(S9-1:張力弛緩調整ステップ)、係留索10の繰り出し長さ及び張力が係留索解除閾値以内かを判断する(S9-2:係留索解除判断ステップ)。
制御手段100は、係留索解除判断ステップS9-2において係留索10の繰り出し長さ又は張力が係留索解除閾値を超えると判断した場合は、張力弛緩調整ステップS9-1に戻り、リール手段80により係留索10に付与した張力を緩めるように再度調整する。
このとき、係留索10の繰り出し長さ及び張力が係留索解除閾値を超える場合は、係留索解除閾値以内となるように繰り出し長さを増して張力をさらに緩め、係留索10の繰り出し長さが収容閾値を超える場合は、収容閾値以内となるように係留索10をさらに巻き取る。これにより、係留索10の繰り出し長さ及び張力を係留索解除閾値以内に早期に収めることができ、係留索10の解除や収容を迅速に行うことができる。
【0048】
制御手段100は、係留索解除判断ステップS9-2において係留索10の繰り出し長さ及び張力が係留索解除閾値以内であると判断した場合、係留手段1から所定範囲内に人が居ないかなど、係留手段1の近傍の安全性をカメラ画像等により確認する(S10:解除前安全性確認ステップ)。これにより、取り外し時に係留索10が人や存在物に当たってしまうこと等を防止し安全性を高めることができる。
制御手段100は、解除前安全性確認ステップS10において係留手段1の近傍の安全性が確認できない場合は、張力弛緩調整ステップS9-1に戻り、リール手段80により係留索10に付与した張力を緩めるように再度調整する。
【0049】
制御手段100は、解除前安全性確認ステップS10において係留手段1の近傍の安全性が確認できた場合は、係留手段1に係止された係留索10を自動的に外す(S11:係止自動解除ステップ)。
また、制御手段100は、リール手段80により係留索10を船舶2に収容するように巻き取る(S12:係留索収容ステップ)。
また、制御手段100は、係留索10の繰り出し長さが収容閾値以内か否かを判断する(S13:収容判断ステップ)。これにより、離岸時又は離桟時の係留索10の取り外しと収容を自動で行うことができる。
制御手段100は、収容判断ステップS13において係留索10の繰り出し長さが収容閾値を超えると判断した場合は、係留索収容ステップS12に戻り、リール手段80により係留索10を船舶2に収容するように巻き取って係留索10の繰り出し長さを調整する。
【0050】
制御手段100は、収容判断ステップS13において係留索10の繰り出し長さが収容閾値以内であると判断した場合は、リール手段80により係留索10が船舶2に収容されたことを検知する(S14:収容検知ステップ)と、係留索10を係留索発射手段40に再装着する(S15:再装着ステップ)。これにより、係留索10を次の係船時の発射に備えた状態にすることができる。
その後、制御手段100は、岸壁等3から船舶2を離岸又は離桟させる(S16:離岸ステップ)。これにより、岸壁側や桟橋側に人手を必要とせずに、係留索10の収容を検知して安全に離岸又は離桟して出港することができる。
【0051】
図4は係留索の先端部を示す図、
図5は係留索移動係止手段の一例を示す図である。
係留索10の先端側の端部には係止環(アイボルト又はアイプレート)11が設けられている。
図5(a)には係留索移動係止手段70の全体を示し、
図5(b)は
図5(a)の下部を拡大して示している。係留索移動係止手段70には、内部に、係止環11を移動させて自らの下部に導く漏斗状の係留索案内部71、及び外部に、係止環11に付随する係留索10の通過する溝機構72が設けられると共に、係止環11を捕獲及び解放する捕獲解放機構73が下部に設けられている。捕獲解放機構73は、係留手段1に係止された補助索110の端部に設けたフック機構111を収納可能である(
図5(b)参照)。捕獲解放機構73には、補助索110のフック機構111に接続されている索73bの巻き取りと延出を行う回転部73aが設けられている。
係留索発射手段40から対象点に向けて発射された係留索10の係止環11は、係留索案内部71を通って捕獲解放機構73に導かれ、捕獲解放機構73に至った係止環11は、フック機構111に係合する。
図5(c)は、補助索110のフック機構111に係留索10の係止環11を係止した状態を示している。
このように、係留索10が端部に係止環11を有し、係留索移動係止手段70が、係留索10の係止環11を移動させて下部に導く漏斗状の係留索案内部71及び溝機構72を有し、係留索移動係止手段70の下部に係止環11を捕獲/解放する捕獲解放機構73を有し、捕獲解放機構73が係留手段1に係止された補助索110の端部に設けたフック機構111を収納可能に構成され、係留索発射手段40から発射された係留索10の係止環11を係留索案内部71を通って捕獲解放機構73に導き、捕獲解放機構73で係止環11をフック機構111に係合させて係止環11を捕獲し、係船を自動的に行うことにより、岸壁等3側に係留索案内部71や捕獲解放機構73等を設けるだけで、係留手段1への係留索10の自動係止を確実に行うことができる。
【0052】
出港時は、制御手段100が、捕獲解放機構73を作動させることにより、フック機構111から係止環11を解放し、係船を自動的に解除する。
図5(d)は、索73bを回転部73aに巻き取ることによりフック機構111から係留索10の係止環11を解放した状態を示している。これにより、離岸時又は離桟時に係留手段1からの係留索10の取り外しを自動で行うことができる。
【0053】
図6は係留索移動係止手段の他の例を示す図である。
係留索移動係止手段70は、移動式ロボットとしており、係留索発射手段40から発射され岸壁等3の対象点に到達した係留索10を認識する認識部73と、係留索10を把持する把持部74と、把持した係留索10を係留手段1の所に移動させるとき等の自走に用いるタイヤ又は無限軌道等の移動部75と、係留索10を係留手段1に係止/解除する係止解除部を有し、係船を自動的に行う。係止解除部は把持部74が兼ねている。また、係留索移動係止手段70である移動式ロボットは、通信部を有する制御手段100も備えている。
係留索移動係止手段70を移動式ロボットとすることにより、岸壁側又は桟橋側の係止作業を移動式ロボットに行わせ、既存の係留手段1を利用して自動的に係留索10を繋げることができる。
また、係留索移動係止手段70である移動式ロボットは、制御手段100による指示に基づいて、係留手段1に係止された係留索10の係止を係止解除部により解除し、係船を自動的に解除する。これにより、離岸時又は離桟時に係留手段1からの係留索10の取り外しを移動式ロボットに自動で行わせることができる。
【0054】
図7はリール手段の一例を示す図、
図8はリール手段と対象点の例を示す図である。
本例では、リール手段80として、係留索10の繰り出しと巻き上げを行うとともに張力を付与する第1リール手段81及び第2リール手段82と、補助索110の繰り出しと巻き上げを行う第3リール手段83が船舶2に設けられている。
第1リール手段81に後端が把持された第1係留索12の先端側は、第2リール手段82に後端が把持された第2係留索13の先端側と接続されている。
本例のリール手段80を用いる場合、対象点は、船舶2から見て係留手段1を超えた位置に設定する。
係留索発射手段40から対象点に向けて発射され係留手段1を超えて岸壁等3の対象点に到達した係留索10を、第1リール手段81と第2リール手段82の少なくとも一方で巻き上げることにより、係留索10を引き寄せるように移動させて係留手段1に係止させる。このように、第1リール手段81と第2リール手段82の少なくとも一方は、係留索移動係止手段70を兼ねている。これにより、岸壁等3には係留索移動係止手段70を備えなくても既存の係留手段1を利用し、船舶2側だけの設備で係船を自動的に完了させることができる。
【0055】
第1係留索12と第2係留索13は着脱自在手段120により接続されている。
着脱自在手段120は、制御手段100による指示に基づいて、第1係留索12と第2係留索13との接続及び切り離しを自在に行う。
制御手段100は、係船を行った状態で第2リール手段82の近傍に位置する着脱自在手段120を自動的に切り離し、少なくとも第1リールを巻き上げることにより係留索10を船舶2に回収し、係船を自動的に解除する。これにより、離岸時又は離桟時における係留手段1からの係留索10の取り外しと回収を船舶2側から自動で行うことができる。
【0056】
図9は
図8の丸A部分に用いられている着脱自在手段の構成図である。
着脱自在手段120として、第1リール手段81から伸びる第1係留索12の先端側の端部と、第2リール手段82から伸びる第2係留索13の先端側の端部に、対となる係止機構を有する。係止機構は、第1係留索12の端部に設けられた係止環11と、第2係留索13の端部に設けられたフック12からなる。
フック12のU字部分には接続部12aが延設されており、第3リール手段83から伸びる補助索110の端部は、接続部12aへの着脱が自在であるように構成されている。
図9に示す状態において、第3リール手段83により補助索110を巻き上げると、補助索110が船舶2側へ引かれることにより、係止機構の係止環11がフック12から抜けて解放される。このように、補助索110を利用して離岸時又は離桟時に係留手段1から係留索10の係止機構を解放することにより自動で取り外すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、自動運航船や無人運航船の自動離着岸等へ適用することができる。また、一般の船舶であっても岸壁又は桟橋側の省人化のために利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 係留手段
2 船舶
3 岸壁又は桟橋(岸壁等)
10 係留索
11 係止環
20 対象物認識手段
30 距離計測手段
40 係留索発射手段
50 状態検出手段
60 発射調整手段
70 係留索移動係止手段
71 係留索案内部
72 溝機構
73 捕獲解放機構
74 把持部
75 移動部
80 リール手段
81 第1リール手段
82 第2リール手段
83 第3リール手段
90 係留索状態検出手段
100 制御手段
110 補助索
111 フック機構
120 着脱自在手段
S1 接近ステップ
S2 距離判断ステップ
S4 発射条件判断ステップ
S5 発射前安全性確認ステップ
S6 係留索発射ステップ
S7 係止ステップ
S8-2 係留索状態判断ステップ
S9-2 係留索解除判断ステップ
S10 解除前安全性確認ステップ
S11 係止自動解除ステップ
S12 係留索収容ステップ
S13 収容判断ステップ
S15 再装着ステップ
S16 離岸ステップ