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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014507
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ロキソプロフェンを配合する外用液剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20240125BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240125BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240125BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K47/44
A61K47/10
A61K9/08
A61K47/12
A61P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117387
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】390009656
【氏名又は名称】同仁医薬化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成冨 駿
(72)【発明者】
【氏名】奥山 泰久
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB31
4C076CC05
4C076DD37
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076EE53
4C076FF11
4C076FF36
4C076FF52
4C076FF56
4C076FF61
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA83
4C206NA03
4C206NA08
4C206NA09
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】安全性、使用感、経皮吸収性、安定性、及び、生産性に優れたロキソプロフェンナトリウム含有外用液剤を提供すること。
【解決手段】ロキソプロフェンナトリウム水和物、ハッカ油、イソプロパノール、精製水及びpH調節剤を含有する外用組成物を容器に充填した外用液剤であって、外用組成物中のハッカ油の含有量が0.5~4質量%、イソプロパノールの含有量が30~60質量%であり、外用組成物のpHが5~8である外用液剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェンナトリウム水和物、ハッカ油、イソプロパノール、精製水及びpH調節剤を含有する外用組成物を容器に充填した外用液剤であって、外用組成物中のハッカ油の含有量が0.5~4質量%、イソプロパノールの含有量が30~60質量%であり、外用組成物のpHが5~8である外用液剤。
【請求項2】
外用組成物中のロキソプロフェンナトリウム水和物の含有量が0.5~3質量%である請求項1記載の外用液剤。
【請求項3】
外用組成物の20℃における粘度が80.0mPa・s以下である請求項1に記載の外用液剤。
【請求項4】
容器が、開口部にポリウレタンの塗布部スポンジを有する塗布栓を備えたものである請求項1~3のいずれかに記載の外用液剤。
【請求項5】
容器がボトル、キャップ、ポリウレタンの塗布部スポンジを有する塗布栓からなり、塗布部スポンジの平均気孔径が40~100μmである請求項4に記載の外用液剤。
【請求項6】
塗布部スポンジの厚みが1~3mmであり、面積が10~1000mm2である請求項5に記載の外用液剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェンナトリウム含有外用液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェンナトリウムは、優れた消炎鎮痛作用を有し、経口剤だけでなく、外用剤としても臨床の場で広く用いられている。ロキソプロフェンを経皮的に吸収させ、局所作用を目的とした外用剤としては、パップ剤、テープ剤、ゲル剤、液剤(ローション剤)、ポンプスプレー液剤などの様々な剤形が用いられている。これらの中で、液剤(ローション剤)は、塗布容器を使用して簡単に様々な部位に塗布しやすいだけでなく、べたつきが非常に少ない、皮膚を密封してしまうパップやテープ剤に比べ皮膚刺激や蒸れがない、塗布時に直ちに衣服を着られるなど使用感に優れることから、ロキソプロフェンナトリウム含有外用液剤のメリットは大きい。
【0003】
ロキソプロフェンナトリウムを含む外用液剤としては、今日までも種々のものが提案されている。すなわち、ポリプロピレン製のロールオン容器に充填されたロキソプロフェンナトリウム、メントール、エタノール、水を含有する外用消炎鎮痛剤(特許文献1)、抗酸化剤としてトコフェロール酢酸エステルを配合したロキソプロフェンナトリウム水和物、15重量%のイソプロパノール、及びl-メントールを含有するメントールの析出による白濁が生じない外用塗布剤溶液(特許文献2)、ポリエチレン製の容器に収容されるロキソプロフェンナトリウム水和物、メントール、エタノール、水、及び1,3-ブチレングリコールを含有するローション剤(特許文献3)、ロキソプロフェン及び製剤全体の0.1~60重量%のイソプロパノールと、更に、l-メントール又はトコフェロール酢酸エステルとを含有する液剤又はゲル剤である皮膚外用剤(特許文献4)、首曲がり容器に充填されたロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩とメントール、炭素数1~4のアルコール好ましくはエタノール、並びに水を含有する外用剤(特許文献5、特許文献6)、ロキソプロフェン又はその塩及びテルペン類とクロルフェニラミン又はその塩、ジフェンヒドラミン又はその塩、多価アルコールから選ばれる1種以上を含有する組成物(特許文献7)、ロキソプロフェン又はその塩、イソプロパノール及び飽和高級脂肪酸塩を含む外用塗布剤(特許文献8)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-63961号公報
【特許文献2】特開2015-27971号公報
【特許文献3】国際公開第2017/111167号
【特許文献4】特開2017-200909号公報
【特許文献5】特開2019-119686号公報
【特許文献6】特開2019-119743号公報
【特許文献7】特開2020-203933号公報
【特許文献8】特許第6189668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら外用液剤は、皮膚に塗布したときの乾燥が遅かったり、べたつきや刺激性を感じたりして安全性や使用感が十分満足できるものではないという問題があった。また、白濁が生じて安定性に問題が生じたり、経皮吸収性が低く十分な薬効が得られないこともあった。通常様々な製剤添加物を添加することで、これらの問題を解決してきていた。しかし、液剤を構成する製剤添加物の成分数が多いと製造工程が煩雑になったり、品質を維持するために多大な労力が必要になったりした。そこで、できるだけ外用液を構成する添加剤の成分数を少なくして、乾燥が早く、塗布感等の使用感に優れるとともに、安全で安定性と経皮吸収性に優れ、簡便に製造できる外用液剤の開発が望まれていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、安全性、使用感、経皮吸収性、安定性、及び生産性に優れたロキソプロフェンナトリウム含有外用液剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは鋭意研究を行った結果、ロキソプロフェンナトリウム水和物、ハッカ油、イソプロパノール、精製水、pH調節剤を配合して外用組成物を調製し、そのpHを特定の範囲に調整することによって、製剤添加物の成分数が少ないにもかかわらず使用感に優れ、安全性、経皮吸収性、安定性にも優れた外用製剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[6]を提供するものである。
[1]ロキソプロフェンナトリウム水和物、ハッカ油、イソプロパノール、精製水及びpH調節剤を含有する外用組成物を容器に充填した外用液剤であって、外用組成物中のハッカ油の含有量が0.5~4質量%、イソプロパノールの含有量が30~60質量%であり、外用組成物のpHが5~8である外用液剤。
[2]外用組成物中のロキソプロフェンナトリウム水和物の含有量が0.5~3質量%である[1]記載の外用液剤。
[3]外用組成物の20℃における粘度が80.0mPa・s以下である[1]又は[2]に記載の外用液剤。
[4]容器が、開口部にポリウレタンの塗布部スポンジを有する塗布栓を備えた容器に充填されたものである[1]~[3]のいずれかに記載の外用液剤。
[5]容器がボトル、キャップ、塗布部スポンジを有する塗布栓からなり、塗布部スポンジの平均気孔径が40~100μmである[4]に記載の外用液剤。
[6]塗布部スポンジの厚みが1~3mmであり、面積が10~1000mm2である[5]に記載の外用液剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、安全性、経皮吸収性、使用感、生産性及び安定性等が向上し、ロキソプロフェンナトリウム水和物の薬理効果を安全かつ最大限に発揮し得る使いやすい外用液剤を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例3におけるロキソプロフェンナトリウムの皮膚透過量を示すグラフである。
図2】本発明の外用液剤に用いる容器の好適な一態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の外用液剤は有効成分であるロキソプロフェンナトリウム水和物を含有する外用組成物とこれを充填する容器から構成される。ロキソプロフェンナトリウム水和物(一般名)は、化学名:Monosodium 2-{4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl}propanoate dihydrate、分子式:C1517NaO・2HO、分子量304.31の非ステロイド性消炎・鎮痛剤(NSAIDs)である。医療用医薬品としては、「変形性関節症、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛」の疾患並びに症状の消炎・鎮痛を効能又は効果として用い、一般用医薬品としては、「腰痛、肩こりに伴う肩の痛み、関節痛、筋肉痛、腱鞘炎(手・手首の痛み)、肘の痛み(テニス肘など)、打撲、捻挫」を効能・効果として用いる。
本発明の外用液剤は、このロキソプロフェンナトリウム水和物を外用組成物中0.5~3質量%含有することが好ましく、1~2質量%がより好ましく、特に好ましくは1.13質量%(無水物として1質量%)である。
【0012】
本発明に用いる外用組成物は、上記ロキソプロフェンナトリウム水和物の他に、ハッカ油、イソプロパノール、精製水及びpH調節剤を含有する。本発明の外用液剤に用いる好適な容器の一態様として、開口部にスポンジ状塗布部を設けたものが例示される。一般的に外用液剤では、ポリマーなどによって粘性を上げることで、塗布時の液だれが抑制されている。しかし、ポリマーを使用すると、塗り込んだ際にスポンジ塗布部や肌表面に成分が析出することがある。またロキソプロフェンナトリウムは酸性条件下で類縁体を形成する可能性がある。そのため、本発明に用いる外用組成物には、多価アルコール、セルロース誘導体、合成高分子系増粘剤などの上記以外の製剤添加物は使用感や安定性等を損ねる場合があることから、配合しないことが好ましい。
【0013】
本発明に用いるハッカ油は、ハッカの地上部を水蒸気蒸留して得た油を冷却し、固形分を除去した精油である。ハッカ油としては、メントールを30.0質量%以上を含むものが好ましく、35.0質量%以上であるものがさらに好ましく、特に39.0質量%以上であることが好ましい。また、本発明に用いるハッカ油は、旋光度-17.0~-36.0°であるものが好ましく、-18.0~-30.0°であるものがさらに好ましく、特に-19.0~-25.0°の範囲にあることが好ましい。さらに、本発明に用いるハッカ油の酸価は1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。
ハッカ油の含有量は、外用組成物中0.5~4質量%であることが好ましく、1~3質量%であることがさらに好ましく、特に1.5~2.5質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明に用いる外用組成物は、さらにイソプロパノール及び精製水を含有する。イソプロパノールは、外用組成物中30~60質量%であることが好ましく、35~50質量%であることがさらに好ましく、特に40~45質量%であることがさらに好ましい。また、精製水は、外用組成物中40~70質量%であることが好ましく、50~65質量%であることがさらに好ましく、特に55~60質量%であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明に用いる外用組成物は、更にpH調節剤を含有し、所定のpHの範囲に調整する。本発明に用いる外用組成物のpHは、皮膚刺激性及び安定性等の観点から、5~8であることが好ましく、より好ましくは5~7であり、更に好ましくは5.5~6.5の範囲に調節することが好ましい。ここで、pHはガラス電極式水素イオン濃度指示計で測定した値をいう。
【0016】
pH調節剤は、外用組成物のpHを上記の範囲に調節することができ得るものであれば特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸等の無機のpH調節剤、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、サリチル酸等の有機酸又はそれらの塩が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、酸性のpH調節剤と塩基性のpH調節剤を用いて緩衝作用を有する組合せとしてもよい。
本発明で用いるpH調節剤の好ましい具体例としては、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸を挙げることができ、特に、好ましい具体例としては、使用感、生産性等の観点から乳酸を挙げることができる。
本発明では、pH調節剤の含有量は、外用組成物中0.05~2質量%であることが好ましく、0.1~1.5質量%であることがさらに好ましく、特に0.15~1質量%であることが好ましい。pH調節剤として乳酸を用いた場合には、外用組成物中0.05~0.5質量%であることが好ましく、0.1~0.3質量%であることがさらに好ましく、特に0.2質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明の外用液剤は、上記の製剤添加物のほか、通常医薬品に用いることのできる医薬品添加物、例えば、着色剤、香料、防腐剤、可溶化剤、安定剤、界面活性剤、保存剤などから選ばれる1種以上を添加することもできる。構成成分の数を増やさないため、なるべく添加しないほうが好ましい。これらの添加剤の具体例は、医薬品添加物事典2021(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社)、薬食発1204第1号(薬事行政法令)、及び、日本医薬品添加物協会のwebサイト(http://www.jpec.gr.jp/)に記載されている。
【0018】
本発明の外用液剤は、上記の外用組成物を容器に充填することで供される。容器の好適な一態様として、開口部に塗布部スポンジを有する塗布栓を備えた容器を例示でき、例えば、図2に示すとおり、外用組成物を収容する容器本体であるボトル2、塗布栓を覆うキャップ1、塗布部スポンジ3を有する塗布栓4からなる容器であり、容器に充填された外用組成物が塗布部スポンジを通過して容器外に排出されることで皮膚に適用される。容器の材質は、安定性や使用感に関係し、特に、皮膚に直接接触する塗布栓の塗布部スポンジの材質は使用感に影響を及ぼす。塗布部スポンジの材質として、ポリウレタンを用いることが好ましい。この塗布部スポンジの平均気孔径は、10~150μmであることが望ましく、特に40~100μmであることが好ましい。本明細書において、平均気孔径とは、電子顕微鏡によって測定される値を意味する。またスポンジの厚みは、通常1~3mmの範囲にあり、1.5~2.5mmであることが好ましく、特に2mmであることが好ましい。また、塗布部スポンジの面積は特に限定されるものでないが、適用のしやすさ、使用感等を考慮すると、通常10~1000mm2の範囲であり、100~600mm2であることが好ましく、特に300~400mm2であることが好ましい。
さらに、ボトル、キャップ、塗布栓(塗布部を除く)の材質は、塩化ビニール、アクリロニトリル・スチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどが好ましく、特に、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0019】
本発明に用いる外用組成物の製造法は特に限定されないが、一般的には精製水、ハッカ油、イソプロパノール等の液体成分を混合し、これにロキソプロフェンナトリウム水和物を溶解させ、pH調節剤を添加してpHを調節し、これを容器に充填することにより製造することが好ましいが、製剤機器の特性等に合わせ、他の方法により製造することもできる。
【0020】
本発明の外用組成物の粘度は、使用感及び上記塗布部スポンジを有する塗布栓を備えた容器を用いた場合の目詰まりの抑制等の観点から、20℃での粘度が80mP・s以下であることが好ましく、40mP・s以下であることがより好ましく、20mP・s以下であることが特に好ましく、さらに10mP・s以下であることがより好ましい。本明細書において、外用組成物の粘度は、B型粘度計を用いて、粘度によって選択された適切なスピンドル、回転数で2分間回転させたときに測定される値を意味する。
【0021】
本発明の外用液剤の特に好ましい一実施形態として、ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13質量%、ハッカ油2質量%、イソプロパノール40質量%、精製水56.67質量%、乳酸0.2質量%からなり、pHが5.5~6.5、粘度が20mP・s以下である外用組成物を、塗布栓の材質がポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートであり、スポンジ状塗布部が平均気孔径40~100μm、厚み2mm、面積300~400mm2のポリウレタンで形成されたものを示すことができる。
【実施例0022】
次に実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
製造例1
外用組成物の調製(1):
表1~3に示す組成の外用組成物を調製した。精製水の一部とイソプロピルアルコールの混合物を撹拌した後、ハッカ油(メントール含有量:41.5%、旋光度:-20.9°、酸価:0.2)とロキソプロフェンナトリウム水和物を溶解させ均一に撹拌した後、pH調節剤でpHを約6に調整し、残りの精製水をもって全量100gとして外用組成物を得た。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
製造例2
外用組成物の調製(2)
表4~5に示す組成の外用組成物を調製した。精製水の一部とイソプロピルアルコールの混合物を撹拌した後、pH調節剤を除くロキソプロフェンナトリウム水和物とその他の成分を溶解させ均一に撹拌した後、pH調節剤でpHを調整し、残りの精製水をもって全量100gとして外用組成物を得た。
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
試験例1:外用組成物の使用感
製造例1、製造例2で調製した外用組成物について、10人のパネルが左右の腕に各検体2検体ずつ1gを塗布し、官能評価を相対的に行い、その平均に基づき、(i)べたつき、(ii)液の乾燥速度、(iii)乾燥後の液残り、(iv)塗布しやすさ、(v)塗布直後の効果感(vi)塗布時の皮膚への刺激の各項目の使用感を評価した。(i)~(iv)は1~6の6段階で評点をつけ、その平均値が1以上3未満の場合×、3以上5未満の場合を△、5以上の場合を〇とした。(v)~(vi)は1~8の8段階で評点をつけ、その平均値が1以上3未満の場合を×、3以上5未満の場合を-、5以上7未満の場合を△、7以上の場合を〇とした。その結果を表6に示した。また評点平均値の区分に応じた各使用感の項目の評価を以下に示す。
・べたつき「感じない(〇)、やや感じる(△)、感じる(×)」
・液の乾燥速度「速い(〇)、普通(△)、遅い(×)」
・乾燥後の剤残り「なし(〇)、わずかにあり(△)、あり(×)」
・塗布しやすさ「しやすい(〇)、ややしにくい(△)、しにくい(×)」
・塗布直後の効果感「強く感じる(〇)、感じる(△)、弱く感じる(―)、感じない(×)」
・塗布時の皮膚への刺激「感じない(〇)、弱く感じる(△)、感じる(―)、強く感じる(×)」
【0031】
【表6】
【0032】
実施例の外用組成物はいずれも使用感に優れ、実施例1-13、1-14、1-15の外用組成物は、特に塗布時の使用感が優れていることが示された。また、実施例の外用組成物はいずれも塗布に伴う皮膚刺激もなく安全性に優れていた。
【0033】
試験例2:外用製剤の使用感
実施例1-13の外用組成物を平均気孔径が異なる塗布部スポンジを有する塗布栓を備えた容量25gである容器に充填し外用液剤を得た。容器は、ボトル(ポリプロピレン)、キャップ(ポリプロピレン)、塗布栓(ポリエチレン)であり、塗布部スポンジ(ポリウレタン)は厚さ2mm、面積約3.6mmである(図2参照)。得られた外用液剤を用いて、スポンジ状塗布部を上腕部に接触させて塗布し、下記の項目の使用感について、10人のパネルが左右の腕に各検体2検体ずつ1gを塗布し、官能評価を相対的に行い、1~6の6段階で評点をつけ、その平均値が1以上3未満の場合×、3以上5未満の場合を△、5以上の場合を〇とした。その結果を表7に示した。また評点平均値の区分に応じた各使用感の項目の評価を以下に示す。
・液だれ「なし(〇)、わずかにあり(△)、あり(×)」
・目詰まり「なし(〇)、わずかにあり(△)、あり(×)」
・肌触り「良い(〇)、普通(△)、悪い(×)」
【0034】
【表7】
【0035】
平均気孔径80μmのポリウレタンスポンジを使用した場合、平均気孔径250μmのポリウレタンスポンジを使用した場合と比較して、明らかに液だれが抑制されていることが分かった。また、平均気孔径80μmと平均気孔径250μmのポリウレタンスポンジを使用した場合で、その肌触りを比較したところ、明らかに平均気孔径80μmのポリウレタンスポンジが優れているという結果であった。
一般的に外用液剤では、液だれ等を防ぐ目的でポリマーが添加されることが多いが、製造コストの低減、製造工程の簡略化、不純物の生成、並びに液の粘度によるスポンジの目詰まりの可能性等を考慮すると、液剤を構成する添加剤の成分数は少ないほうがよいと言え、平均気孔径80μmのポリウレタンスポンジを使用することにより、少ない成分数で使用感に優れた製剤を発明することに成功した。
【0036】
試験例3
安定性試験
実施例1-13、実施例1-16、比較例1-11、比較例1-12の外用組成物を40℃で6ケ月保存し、ろ過した後、経時安定性を評価した。ロキソプロフェンナトリウムの含有量を高速液体クロマトグラフィーで測定し、含有量の理論値を100%としたときの製造直後(初期)及び6か月保存後の残存量(%)を求め、99~100%を「〇」、90~98%を「△」、90%未満を「×」として評価した。性状は肉眼で観察し、無色澄明である場合を「〇」、固形成分の析出又は白濁が見られる場合を「×」として評価した。その結果を表8に示した。
【0037】
【表8】
【0038】
実施例1-13、1-16は、40℃で6ケ月保存した後においても含量の低下、変色や成分の分離・沈殿の析出などの性状の変化は認められず、経時安定性に優れていた。一方で、pH域が低い比較例1-11、比較例1-12では含量の低下や成分の析出又は液の白濁が見られた。
【0039】
試験例4
経皮吸収性試験
実施例1-13及び比較例1-2の外用組成物を用いて以下の条件で皮膚透過試験を実施し、塗布後6、12及び24時間後のロキソプロフェンをHPLC法により測定して、皮膚透過量を測定した。結果を図1に示す。
セル:縦型拡散セル
有効幕面積:1.0cm
レシーバー溶液:生理食塩液
体積:8.0mL
サンプル体積:0.2 mL
温度:32℃
皮膚:ヘアレスラット (HWY/Slc) 皮膚
【0040】
実施例1-13の外用組成物は、高い皮膚透過性を示し、ロキソプロフェンの経皮吸収性に優れていることが認められた。
【符号の説明】
【0041】
1:キャップ
2:ボトル
3:塗布部スポンジ
4:塗布栓

図1
図2