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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145126
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】トレーラ
(51)【国際特許分類】
   B60D 1/155 20060101AFI20241004BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60D1/155
B62D53/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057375
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】310013141
【氏名又は名称】東邦車輛株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金澤 謙二
(72)【発明者】
【氏名】夏井 紀緒
(72)【発明者】
【氏名】若沢 典生
(72)【発明者】
【氏名】城田 育夫
(72)【発明者】
【氏名】時田 宗一
(72)【発明者】
【氏名】福田 祥太
(57)【要約】
【課題】コンテナ脱着車によりコンテナを前方から積み下ろしすることができるトレーラを提供する。
【解決手段】前後に延びる主桁を底部に有し底部後端に走行ローラを有するコンテナを積載可能で貨物車両に牽引されるトレーラにおいて、前輪及び後輪を有し前記コンテナを積載する車台と、前記車台の前部に設けられ前記貨物車両に連結するドローバとを備え、前記ドローバは、前記貨物車両に連結するための基本形態、及び前記基本形態よりも前記車台の前端から前方への突出量が小さい退避形態に変態可能な可変構造であるトレーラを提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に延びる主桁を底部に有し底部後端に走行ローラを有するコンテナを積載可能で貨物車両に牽引されるトレーラにおいて、
前輪及び後輪を有し前記コンテナを積載する車台と、
前記車台の前部に設けられ前記貨物車両に連結するドローバとを備え、
前記ドローバは、前記貨物車両に連結するための基本形態、及び前記基本形態よりも前記車台の前端から前方への突出量が小さい退避形態に変態可能な可変構造である
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項2】
請求項1のトレーラにおいて、
前記ドローバは、
前記車台に取り付けられた基部と、前記基部に対して左右の少なくとも一方に旋回可能に連結された本体部とを有し、
前記基本形態では、前記本体部が前方に延び、
前記退避形態では、前記本体部が左右いずれかに延びる
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項3】
請求項1のトレーラにおいて、
前記ドローバは、
前記車台に取り付けられた基部と、前記基部に対し下方に回動可能に連結されたアームと、前記アームに回動可能に連結された本体部とをする多関節屈曲構造であり、
前記基本形態では、前記アーム及び前記本体部が前方に延び、
前記退避形態では、前記アームが下方に延び、前記本体部が前記アームに対して屈曲する
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項4】
請求項3のトレーラにおいて、
前記本体部は、前記アームに連結された支持部と、前記支持部にスライド可能に支持されたスライド部とを有していることを特徴とするトレーラ。
【請求項5】
請求項1のトレーラにおいて、
前記車台は、
前記コンテナの走行ローラが走行する走行面と、
前記コンテナの主桁を受ける支持ローラと、
前記走行面の後端の後側に隣接するローラピットとを備え、
前記支持ローラは、回転軸が前記ローラピットより前側に位置するように配置されている
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項6】
請求項5のトレーラにおいて、
前記支持ローラは、少なくとも一部が前記後輪の後縁よりも前側に位置するように配置されている
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項7】
請求項5のトレーラにおいて、
前記走行面は、後端部に前記ローラピットに向かって下るスロープを有している
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項8】
請求項5のトレーラにおいて、
前記走行面は、前端部に前方に下るスロープを有しており、
前記スロープは、少なくとも一部が前記前輪の前縁よりも後側に位置するように配置されている
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項9】
前後に延びる主桁を底部に有し底部後端に走行ローラを有するコンテナを積載可能で貨物車両に牽引されるトレーラにおいて、
前輪及び後輪を有し前記コンテナを積載する車台と、
前記車台の前部に設けられ前記貨物車両に連結するドローバとを備え、
前記車台は、
前記コンテナの走行ローラが走行する走行面と、
前記コンテナの主桁を受ける支持ローラと、
前記走行面の後端の後側に隣接するローラピットとを備え、
前記支持ローラは、回転軸が前記ローラピットより前側に位置するように配置されている
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項10】
請求項9のトレーラにおいて、
前記支持ローラは、少なくとも一部が前記後輪の後縁よりも前側に位置するように配置されている
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項11】
請求項9のトレーラにおいて、
前記走行面は、後端部に前記ローラピットに向かって下るスロープを有している
ことを特徴とするトレーラ。
【請求項12】
請求項9のトレーラにおいて、
前記走行面は、前端部に前方に下るスロープを有しており、
前記スロープは、少なくとも一部が前記前輪の前縁よりも後側に位置するように配置されている
ことを特徴とするトレーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ脱着車等の貨物車両に連結するトレーラに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタにトレーラを連結し、トラクタとトレーラにそれぞれコンテナを積載し複数のコンテナを輸送する場合がある。トレーラの前部には、トラクタと連結するためのドローバと呼ばれる連結部材が存在する。ドローバには、トラクタ及びトレーラの旋回走行時に、トラクタに積載されたコンテナとトレーラに積載されたコンテナとが干渉しないようにするだけの前後長が確保されている。このドローバと干渉することから、コンテナ脱着車を用いてトレーラにコンテナを積み込む場合、コンテナ脱着車をトレーラのデッキ部分に前方から接近させることができない。そのため、特許文献1に記載されているように、トレーラの後部にコンテナ脱着車を接近させ、コンテナ脱着車からトレーラに後方からコンテナを移載するのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-5967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンテナ脱着車は、トラクタを兼ねる場合もある。コンテナ脱着車でトレーラを牽引する場合、コンテナを積載したコンテナ脱着車をトレーラに対して連結又は連結解除するとき、コンテナ脱着車はトレーラの前部に後向きに対向する。対して、コンテナ脱着車によりトレーラに対してコンテナを積み降ろしするときには、コンテナ脱着車はトレーラの後部に後向きに対向させなければならない。この場合、コンテナ脱着車をトレーラの前側から後側に、又は後側から前側に回り込ませる必要があり、しかも回り込みの過程でコンテナ脱着車を切り返して反転させなければならず、トレーラの周囲にコンテナ脱着車を動かすための広いスペースを要し、作業効率の面でも課題がある。
【0005】
本発明の目的は、コンテナ脱着車によりコンテナを前方から積み下ろしすることができるトレーラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、前後に延びる主桁を底部に有し底部後端に走行ローラを有するコンテナを積載可能で貨物車両に牽引されるトレーラにおいて、前輪及び後輪を有し前記コンテナを積載する車台と、前記車台の前部に設けられ前記貨物車両に連結するドローバとを備え、前記ドローバは、前記貨物車両に連結するための基本形態、及び前記基本形態よりも前記車台の前端から前方への突出量が小さい退避形態に変態可能な可変構造であるトレーラを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンテナ脱着車によりコンテナを前方から積み下ろしすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るトレーラをコンテナ脱着車に接近させた状態を表す図
図2】本発明の第1実施形態に係るトレーラの平面図
図3】本発明の第1実施形態に係るトレーラの左側面図
図4】本発明の第1実施形態に係るトレーラの背面図
図5】本発明の第1実施形態に係るトレーラのデッキの斜視図
図6】本発明の第1実施形態に係るトレーラのドローバの平面図
図7】本発明の第1実施形態に係るトレーラのドローバの左側面図
図8】コンテナ脱着車から本発明の第1実施形態に係るトレーラにコンテナを移載する様子を表す図
図9】コンテナ脱着車から本発明の第1実施形態に係るトレーラにコンテナを移載する様子を表す図
図10】コンテナ脱着車から本発明の第1実施形態に係るトレーラにコンテナを移載する様子を表す図
図11】コンテナ脱着車から本発明の第1実施形態に係るトレーラにコンテナを移載する様子を表す図
図12】コンテナ脱着車から本発明の第1実施形態に係るトレーラにコンテナを移載する様子を表す図
図13】本発明の第2実施形態に係るトレーラのドローバの左側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
(第1実施形態)
-コンテナ脱着車-
図1は本発明の一実施形態に係るトレーラをコンテナ脱着車に接近させた状態を表す図である。以下の説明において、図1中の左右をトレーラやコンテナ脱着車の前後とする。なお、以下の実施形態においては、トレーラを牽引する貨物車両(トラクタ)としてコンテナ脱着車を用いる場合を例に挙げて説明するが、本発明に係るトレーラは、例えば粉粒体運搬車や飼料運搬車等、コンテナ脱着車以外の貨物車両のトレーラとしても適用可能である。
【0011】
図1に示したトレーラ1は、コンテナ脱着車Vの後部に接近した状態で、コンテナ脱着車Vに搭載されたコンテナ荷役装置Vhにより、コンテナ脱着車VからコンテナCを移載され、また積載したコンテナCをコンテナ脱着車Vへ移載される。トレーラ1は、貨物車両に連結され牽引される。コンテナ脱着車Vは貨物車両の一例である。
【0012】
コンテナ脱着車Vは、車枠Vf、サブフレームVs、コンテナ荷役装置Vh、ガイドローラVr等を備えている。車枠Vfは、サブフレームVsを搭載し支持している。サブフレームVsは、コンテナ荷役装置Vhを支持している。コンテナ荷役装置Vhは、L字型のアームVaを前後にスライドさせたり前後に旋回させたりしてコンテナCの積み降ろしをする。ガイドローラVrは、サブフレームVsの後端に左右一対が設けられており、コンテナ脱着車Vに対して積み降ろしされるコンテナCの主桁Cgをガイドする。
【0013】
-コンテナ-
コンテナ脱着車Vやトレーラ1に積載されるコンテナCは、上部が開口した箱状の容器であり、後面はリヤゲートCwで構成される。リヤゲートCwは下開き型であり、上部のヒンジを介して下部が回動しコンテナCの後部開口を開閉する。コンテナCの底部には、前後方向に延びる左右一対の主桁Cgが下方に突出して設けられている。左右の主桁Cgは、縦長の矩形断面の棒状の部材であり、互いに平行に前後方向に延在している。主桁CgはコンテナCの全長に亘る。これら主桁Cgは、コンテナCの補強材であると共に、コンテナ脱着車VのガイドローラVrやトレーラ1の支持ローラ8で受けられる。そのため、左右の主桁Cgの左右の間隔は、ガイドローラVrや支持ローラ8の左右の間隔に合わせて設定されている。コンテナCの前面の上部には、荷役アームAのフックに係脱するバー状の係合部Cbが備わっている。また、コンテナCの底部の前部には左右一対の支持脚Clが固定され、コンテナCの底部の後端には左右一対の走行ローラCrが回転可能に取付けられている。支持脚Cl及び走行ローラCrは、いずれも主桁Cgに対して左右方向の外側に位置しており、主桁Cgの下面よりも下方に突出している。走行ローラCrと支持脚Clで水平面に接地した状態で、コンテナCは実質水平となる。
【0014】
-トレーラ-
図2図1のトレーラの平面図、図3は左側面図、図4は背面図である。図5はトレーラのデッキの斜視図、図6はトレーラのドローバの平面図、図7は左側面図である。
【0015】
これらの図に示すように、トレーラ1は、前輪2及び後輪3を有しコンテナCを積載する車台4と、車台4の前部に設けられて貨物車両に連結されるドローバ5とを備えている。トレーラ1には、1つのコンテナCが積載可能である。
【0016】
車台4は、トレーラフレーム6、走行面7、支持ローラ8、ローラピット9を備えている。トレーラフレーム6、走行面7、支持ローラ8、ローラピット9は、左右一対ずつ設けられている。
【0017】
左右のトレーラフレーム6は、例えば断面I字型の高強度な鋼材で構成されて前後方向に延在する棒状の部材である。左右のトレーラフレーム6は、複数のクロスメンバで連結されている。トレーラフレーム6の前部下面には、鉛直な回転軸周りに回動自在なドーリーとも呼ばれる旋回体10が設けられている。この旋回体10の下部に、サスペンションを介して上記の前輪2が連結されており、前輪2がトレーラフレーム6に対して左右に揺動可能である。また、トレーラフレーム6の後部下面には、サスペンションを介して上記の後輪3が連結されている。トレーラフレーム6に対する後輪3の向きは不変である。本実施形態では、前輪2及び後輪3のうち前輪2のみが左右に揺動する構成であるが、この点は車格等により適宜変更可能である。前輪2の上方はトレーラフレーム6の側面に固定されたフロントフェンダ11により覆われ、後輪3の上方はトレーラフレーム6の側面に固定されたリアフェンダ12により覆われる。また、トレーラフレーム6には、前輪2と後輪3との間をカバーするサイドガード13が設けられている。さらに、トレーラフレーム6の後端にはリヤバンパ14が設けられる。
【0018】
左右のトレーラフレーム6の上部には、それぞれ前後に延びるデッキ15が支持されている。デッキ15は、前後方向の位置によって厚みが異なっている。具体的には、デッキ15の下面は面一であるのに対し、上面の高さが前後方向の位置によって異なっている。デッキ15の前部16は、それよりも後側の本体部17に比べて薄く、前部16の上面は本体部17の上面よりも高さが低い。本体部17の上面が上記の走行面7である。走行面7は、コンテナCの積み降ろし時にコンテナCの走行ローラCrが走行する路面を構成する。走行面7は、前方に下るスロープ7aを前端部に有している。スロープ7aは、デッキ15の前部16の上面に接続している。このスロープ7aは、少なくとも一部が前輪2の前縁2a(図3)よりも後側に位置するように配置されている。本実施形態ではスロープ7aの全部が前輪2の前縁2a(図3)よりも後側に位置しており、スロープ7aの大部分(半分以上)が前輪2の回転中心よりも後側に位置している。また、走行面7は、ローラピット9に向かって下るスロープ7bを後端部に有している。スロープ7a,7bを除く走行面7は、トレーラ1が水平地に設置した状態で水平となる。スロープ7a,7bは、傾斜角(スロープ7a,7bを除く走行面7に対してなす角度)が45度以下(例えば10度程度)の緩斜面である。左右の走行面7の左右方向の内側の縁部には、走行面7を走行するコンテナCの走行ローラCrを案内する軌条7cが上方に突出して設けられている。
【0019】
左右の支持ローラ8は、トレーラ1に積載されたコンテナCの主桁Cgを受けるローラである。これら支持ローラ8は、左右の走行面7の間において、回転軸(回転中心線)がローラピット9の前縁よりも前側に位置するように配置されている。本実施形態では、図2に示したように支持ローラ8の全部がローラピット9の前縁よりも前側に位置し、図3に示したように支持ローラ8の全部又は一部(本実施形態では一部)が後輪3の後縁3aよりも前側に位置している。
【0020】
ローラピット9は、走行面7を走破したコンテナCの走行ローラCrが落ち込む空間(例えば孔又は窪み)であり、走行面7の後端、つまりスロープ7bの後端の後側に隣接する。ローラピット9の後側には、コンテナCの走行ローラCrの車止めの役割を果たすローラストッパ21が設けられている。ローラストッパ21は、左右のトレーラフレーム6の後端を連結するクロスメンバ19の前面に設けられている。
【0021】
なお、左右の走行面7の左右方向の内側の縁部には、コンテナCの主桁Cgが着座する左右の座部18が前後2箇所ずつ備わっている。左側の座部18と支持ローラ8は、走行面7と平行に延びる同一直線状に位置する。同じく右側の座部18と支持ローラ8も、走行面7と平行に延びる同一直線状に位置する。
【0022】
また、上記クロスメンバ19には、左右一対の跳上防止爪20が取り付けられている。これら跳上防止爪20は、先端を前方に向けて延びており、前方から積み込まれるコンテナCの爪穴(不図示)に挿し込まれ、積載されたコンテナCの後部の跳ね上がりを防止する。本実施形態では、固定式の跳上防止爪20をトレーラフレーム6の後端位置に配置した構成を例示したが、跳上防止爪20を可動式にしてトレーラ1の前後方向の中間位置に設ける場合もある。
【0023】
また、デッキ15の前部16の左右方向の外側には、可倒式ストッパ22が設けられている。トレーラ1にコンテナCが積載されると、左右の可倒式ストッパ22にコンテナCの支持脚Clが対向する。支持脚Clの側面には凹部が設けられており、トレーラ1にコンテナCが積載された状態で可倒式ストッパ22を起立させると、可倒式ストッパ22が支持脚Clの凹部に嵌り込み、コンテナCの前部を拘束する。また、可倒式ストッパ22は、倒伏した姿勢とすることで、トレーラ1に対して積み降ろしする際に前後に走行するコンテナCに干渉することがない。
【0024】
また、左右のデッキ15の前部16の間には、例えば空圧で起伏するコンテナロック23が設けられている。コンテナロック23の左右には、左右方向の外側に突き出す爪23aが備わっている。トレーラ1にコンテナCが積載されると、左右の爪23aに、コンテナCの主桁Cgの内側側面に設けられた爪穴(不図示)が対向する。従って、トレーラ1にコンテナCが積載された状態でコンテナロック23を作動させると、主桁Cgの爪穴に爪23aが挿し込まれ、コンテナCの前部を拘束する。トレーラ1に対してコンテナCの積み降ろしをする際、主桁Cgの爪穴から爪23aが引き抜かれ、コンテナCの主桁Cgに干渉しない位置まで傾倒する。
【0025】
その他、図示していないが、トレーラ1には、積載されたコンテナCの前面を押さえる可倒式のフロントストッパが設けられる場合もある。
【0026】
-ドローバ-
図6はトレーラ1に備えられたドローバ5の平面図、図7は左側面図である。
【0027】
ドローバ5は、トラクタとなる貨物車両にトレーラ1を連結するために、貨物車両の後部の連結部に連結される連結部材である。このドローバ5は、貨物車両に連結するための基本形態、及びこの基本形態よりも車台4の前端(本実施形態ではデッキ15の前端)から前方への突出量が小さい退避形態に変態可能な可変構造である。具体的には、ドローバ5は、車台4(具体的には旋回体10)に取り付けられた基部31と、基部31に対して左右の少なくとも一方に旋回可能に連結された本体部32とを有している。図6に示したように本体部32が前方に延びる形態がドローバ5の基本形態であり、図2に二点鎖線で示したように本体部32が左右いずれかに延びる形態がドローバ5の退避形態である。
【0028】
基部31は、左右に延びるピン38を介して旋回体10に上下に揺動可能に連結されており、旋回体10の旋回機構により前輪2と共に左右に揺動可能である。旋回体10に対する基部31の上下の揺動は、図示しないストッパピンによりロック可能である。
【0029】
本体部32は、前後に長い強度部材であり、基端が上下に延びるピン33を介して基部31に対して左右に揺動可能に連結されている。本体部32は、先端を左に向けた状態から右に向けた状態まで180度程度旋回可能である。本体部32の先端にはリング34が設けられており、このリング34を貨物車両の連結装置に連結することでトレーラ1と貨物車両が連結される。特に図示していないが、トレーラ1にはチェーンが備わっており、貨物車両で牽引される際には、ドローバ5に加え、チェーンによっても貨物車両に連結される。
【0030】
また、基部31及び本体部32は、ロックピン35で互いに固定される(本体部32の揺動がロックされる)。ロックピン35を挿入するピン穴36は、基部31にはピン33を中心に3つ(ピン33の前方、右方、左方)設けられており、本体部32に1つ(不図示)設けられている。図6では、基部31におけるピン33の前方のピン穴36と本体部32のピン穴36にロックピン35を通し、基本形態で基部31に対して本体部32を固定した状態を表している。この状態からロックピン35を抜き取り、本体部32を左右のいずれかに旋回させ、基部31におけるピン33の左又は右のピン穴36と本体部32のピン穴36にロックピン35を通すことで、退避形態で基部31に対して本体部32が固定される。
【0031】
退避形態時においては、基本形態時に比べ、車台4の前端(本実施形態ではデッキ15の前端)から前方へのドローバ5の突出量が大幅に(少なくとも半分以下に)減少する。本実施形態の場合、退避形態時にはドローバ5の本体部32の全部が基部31の前端よりも後方に位置し、退避形態時のドローバ5の車台4の前端から前方への突出量は例えば基本形態時の1/4程度である。
【0032】
なお、図6及び図7では図示省略してあるが、ドローバ5には、キャスタ付きのスタンド37(図3)が備わっている。スタンド37は、通常時はキャスタを後方に向けた姿勢で地面から離された状態であるが、トレーラ1とトラクタとを連結したり連結解除したりする際、スタンド37を立てハンドル37aを回してスタンド37を伸ばしていくことで、重量物であるドローバ5を持ち上げることができる。
【0033】
-トレーラへのコンテナの積み込み手順-
図8図12はコンテナ脱着車Vからトレーラ1にコンテナCを移載する様子を表す図である。一例として、トラクタに牽引されて積込作業場に運ばれてきた空荷のトレーラ1に対し、コンテナ脱着車VによりコンテナCを積み込む場合の作業手順を、図1及び図8図12を用いて説明する。
【0034】
トレーラ1にコンテナCを積み込む場合、トレーラ1のドローバ5を退避形態にする必要がある。この場合、まずトレーラ1のドローバ5がトラクタに連結された状態のままスタンド37を立て、ハンドル37aを回してリング34がトラクタの連結部から離脱可能な位置までドローバ5を持ち上げる。こうしてトラクタとトレーラ1との連結が解除されたら、トラクタを移動させる。トラクタを移動させたら、ドローバ5の基部31の上下揺動をストッパピン(不図示)でロックし、ドローバ5の退避形態への移行に備えてスタンド37を格納する(図3に実線で示したように地面から離れた状態とする)。但し、スタンド37のキャスタの接地面が滑らかである場合、スタンド37は接地したままでも良い。
【0035】
その後、ロックピン35を抜き、ドローバ5の本体部32を左右のいずれかに旋回させて基本形態から退避形態に移行させ、抜き取ったロックピン35を再度挿し込んで退避形態で本体部32を固定する。
【0036】
次に、図1に示したように、コンテナCを積載したコンテナ脱着車Vをトレーラ1の前部に接近させ、コンテナ脱着車Vとトレーラ1とを同じ方向に向けてタンデムに並べる。コンテナ脱着車Vの後部とトレーラ1の前部が対面した状態である。
【0037】
図1のようにコンテナ脱着車Vとトレーラ1とをタンデムに並べたら、図8に示したようにコンテナ荷役装置VhのアームVaを後方にスライドさせてコンテナCを後方に押し出す。コンテナCは、コンテナ脱着車V上で主桁CgをガイドローラVrにガイドされて後方にスライドする。
【0038】
コンテナCを後方にスライドさせたら、図9に示したようにコンテナ荷役装置VhのアームVaを後方に旋回させ、コンテナCをトレーラ1に接触させる。コンテナCは、ガイドローラVrを支点に持ち上がりつつ後方へ移動し、まず走行ローラCrでトレーラ1の走行面7に接触する。その際、コンテナCの走行ローラCrは、まずアームVaの旋回開始により走行面7の前側のスロープ7aに着地する(図9)。
【0039】
更にコンテナ荷役装置VhのアームVaが後方に旋回すると、図10のようにコンテナCの走行ローラCrがトレーラ1の走行面7を走行し後方に移動する。
【0040】
その後、コンテナCの走行ローラCrは走行面7を走行し切ると、図11に示したようにローラピット9(図5)に落ち込み、これと同時にコンテナCの主桁Cgがトレーラ1の支持ローラ8で受けられる。コンテナCの後方の支持点が走行ローラCrから支持ローラ8に変更され、走行ローラCrが走行面7を通過しても、コンテナCの後部の支持点が走行面7の範囲に止まる。
【0041】
そして、コンテナCは最終的に主桁Cgが座部18に着座した状態となる(図12)。この状態に移行する際、トレーラ1の跳上防止爪20がコンテナCの爪穴(不図示)に挿し込まれ、コンテナCの後部の浮き上がりが防止された状態となる。こうしてコンテナCをトレーラ1に移載したら、アームVaとコンテナCとの連結を解除し、コンテナ脱着車Vを前進させる。更に、可倒式ストッパ22やコンテナロック23の爪23aでコンテナCの前部を固定することにより、トレーラ1に対してコンテナCが拘束された状態となる。
【0042】
コンテナ脱着車V又はその他の貨物車両にトレーラを連結する場合、上記と逆の手順でドローバ5を基本形態に戻し、ドローバ5及びチェーンを貨物車両に連結する。
【0043】
トレーラ1からコンテナCを降ろす手順は、概ね以上と逆の手順である。
【0044】
-効果-
(1)本実施形態によれば、ドローバ5が、貨物車両に連結するための基本形態から、基本形態よりも車台4の前端から前方への突出量が小さい退避形態(図2の二点鎖線)に変態可能である。そのため、ドローバ5を退避形態にすることで、トレーラ1の前部にコンテナ脱着車Vの後部を十分に接近させることができる。これにより、コンテナ脱着車Vによりトレーラ1に対し、コンテナCを前方から積み下ろしすることができる。そのため、従来のようにコンテナ脱着車をトレーラの前後に回り込ませたり方向転換したりする必要がなくなり、コンテナ脱着車Vからトレーラ1へのコンテナCの移載に必要な作業スペースを大きく減少させることができる。必要な作業スペースは、例えば従来の1割程度で足りる。また、コンテナ脱着車Vの回り込みに伴う切り返しや方向転換が不要になるため、作業効率も大きく向上する。
【0045】
(2)上記の通り、車台4には、コンテナCの走行ローラCrが走行する走行面7の後側に隣接するローラピット9が備わっており、ローラピット9よりも回転軸が前側に位置するようにコンテナCの主桁Cgを受ける支持ローラ8が配置されている。仮にローラピット9がなく走行面7がトレーラ1の後端付近まで続く構成であると、走行面7を走行する走行ローラCrは後輪3を超え、コンテナCの積み込み終了直前の時点においてコンテナCの荷重が後輪3を超えた位置に集中し、トレーラ1の前輪2が浮きかねない。
【0046】
それに対し、本実施形態では、前述した通り、コンテナCの積み込み終了前にコンテナCの走行ローラCrがローラピット9に落ち込み、ローラピット9よりも前側に配置した支持ローラ8でコンテナCの主桁Cgが受けられる状態に移行する。これによりコンテナCの支持点がトレーラ1の後端付近まで移動することが防止され、トレーラ1の前輪2の浮き上がりを抑制することができる。
【0047】
特に、本実施形態において、支持ローラ8は前後位置の範囲が後輪3と重なる位置に配置されているので、コンテナCの支持点が後輪3の後縁3aを超えて後方に移動することを避けることができる。
【0048】
(3)走行面7の後端部にローラピット9に向かって下るスロープ7bを有しているので、コンテナCの走行ローラCrがローラピット9に落ち込む際にスロープ7bを下るので、主桁Cgが円滑に支持ローラ8に着地する。これにより、コンテナCの支持点が走行ローラCrから支持ローラ8に切り換わる際の衝撃を和らげることができる。
【0049】
(4)仮に走行面7の前端のスロープ7aがなく、コンテナ脱着車Vからトレーラ1にコンテナCを移載する際、コンテナ荷役装置VhのアームVaの旋回開始時に車台4の前端付近(例えばデッキ15の前部16)に走行ローラCrが接触する場合、次のような課題が生じ得る。
【0050】
例えば、コンテナ脱着車Vからトレーラ1にコンテナCを移載するためにアームVaによりコンテナCを後方にスライドさせる際(図8)、デッキ15の前部16と本体部17とで上面の高さに差がないと、前部16の上面がコンテナCの走行ローラCrの下縁よりも高くなる可能性がある。その場合、デッキ15の前部16の前端にローラCrが引っ掛かって乗り上げられず、トレーラ1へのコンテナCの移載が困難になる。
【0051】
仮にコンテナCをトレーラ1に積み込むことができても、デッキ15の前部16と本体部17とで上面の高さに差がない場合、トレーラ1に積み込まれたコンテナCの支持脚Clがデッキ15の前部16に接触し、コンテナCの主桁Cgがトレーラ1の座部18に着座しない。
【0052】
それに対し、本実施形態においては、走行面7の前端部に前方に下るスロープ7aが備わっており、このスロープ7aの少なくとも一部が前輪2の前縁2aよりも後側に位置している。このようにスロープ7aを設け、デッキ15の前部16の上面をデッキ15の本体部17の上面(スロープ7a,7bを除く走行面7)に対して低くすることで、アームVaの旋回開始時にデッキ15の前部16の上面に走行ローラCrが接触することを抑制し、走行ローラCrを安定的にスロープ7aに着地させ、滑らかにスロープ7aの後に続く走行面7に導くことができる。これにより、コンテナ脱着車Vからトレーラ1へのコンテナCの移載を安定して行うことができる。また、コンテナCの支持脚Clとデッキ15の前部16の上面との接触を抑制し、トレーラ1の座部18でコンテナCの主桁Cgを確りと受けることができる。
【0053】
また、トレーラ1はドローバ5及び旋回体10が備わっている前側が重いため、本実施形態のようにトレーラ1に対して前方からコンテナCを積み込む場合、コンテナCの積載開始時にコンテナCの走行ローラCrが着地する位置が重要である。そこで、本実施形態においては、トレーラ1に対してコンテナ脱着車Vが所定位置に停車した状態でコンテナCの移載をする場合に、コンテナCの走行ローラCrが最初に接地するスロープ7aを前輪2の近傍に設けている。コンテナCの荷重がトレーラ1の前端付近にかかることが抑制され、コンテナ脱着車Vからトレーラ1へのコンテナCの移載動作が安定的に行える。特に、本実施形態において、スロープ7aの前部が前輪2の前縁2aより後側に位置するため、コンテナCの荷重が前輪2の前縁2aよりも前方に集中することを避けることができる。
【0054】
なお、コンテナCの積載開始時におけるコンテナCの走行ローラCrの着地位置に関連した重量バランスの観点では、スロープ7aは前輪2と後輪3との間に位置していることがより好ましいが、仮にスロープ7aの全部が前輪2よりも後方に位置する構成とすると、トレーラ1に積み込まれたコンテナCの主桁Cgの前部が大幅に浮いた支持状態になってしまい、コンテナCの安定性が確保できなくなる。そこで、本実施形態においては、走行面7の前端のスロープ7aを前輪2の近傍に設け、良好な上記重量バランスとコンテナ積載時の安定した支持状態とを両立させている。
【0055】
(第2実施形態)
図13は本発明の第2実施形態に係るトレーラのドローバの左側面図である。図13において、第1実施形態と同一の又は対応する要素には既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施形態が第1実施形態と相違する点は、ドローバ5が、基部31に対し下方に回動可能に連結されたアーム41を有し、本体部32がアーム41に回動可能に連結された多関節屈曲構造である点である。また、本実施形態の本体部32は、アーム41に連結された支持部32aと、支持部32aにスライド可能に支持されたスライド部32bとを有している。本実施形態のドローバ5は、基本形態では、アーム41及び本体部32が前方に延びた姿勢をとり、退避形態では、アーム41が下方に回動し、本体部32がアーム41に対して屈曲し後方に移動する姿勢をとる。図13では、基本形態と退避形態を合わせて図示してある。
【0057】
ドローバ5のアーム41は、左右に延びるピン42により基端が基部31に連結されている。ピン42は基部31に備わっている。基本形態において基部31に対するアーム41の下方への揺動は、ストッパピン43によりロックされている。
【0058】
ドローバ5における本体部32の支持部32aは、左右に延びるピン44によりアーム41の前端に回動可能に連結されている。
【0059】
なお、本実施形態のドローバ5には、エアチャンバ45が備わっている。エアチャンバ45はドローバ5を駆動するアクチュエータとして機能する。エアチャンバ45のエアを抜くとエアチャンバ45のロッドが縮んでドローバ5が降下し(退避形態に移行し)、エアチャンバ45にエアを入れるとエアチャンバ45のロッドが伸びてドローバ5が上昇する(基本形態に移行する)。
【0060】
その他の構成について、第1実施形態のトレーラ1と本実施形態のトレーラ1は同様である。
【0061】
本実施形態において、ドローバ5を退避形態に移行させる場合、まずストッパピン(不図示)を抜き、トラクタを後進させてドローバ5のスライド部32bを後方へスライドさせ(図13の直線矢印参照)、ドローバ保持用のターンバックル(不図示)を巻き上げてトラクタの連結部から離脱可能な位置までドローバ5を持ち上げ、トラクタを前進させてトレーラ1とトラクタとの連結を解除する。その後、エアチャンバ45のエアを抜いてドローバ5を退避形態に移行させる(図13の円弧矢印参照)。
【0062】
本実施形態においても、ドローバ5を退避形態に移行させることでトレーラ1の前部にコンテナ脱着車Vの後部を十分に接近させることができ、コンテナ脱着車Vによりトレーラ1に対してコンテナCを前方から積み下ろしすることができる。
【0063】
なお、ドローバ5のスライド部32bのスライド機構を省略しても、ドローバ5の多関節屈曲構造のみでドローバ5を後退させることができるが、スライド機構を組み合わせることで、左右の前輪2の間のスペースを利用して車台4の前端からのドローバ5の突出量をより効果的に抑制することができる。
【0064】
また、走行面7のスロープ7a,7bやローラピット9、支持ローラ8のレイアウトによる第1実施形態のその他の効果についても、本実施形態により同様に得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1…トレーラ、2…前輪、2a…前輪の前縁、3…後輪、3a…後輪の後縁、4…車台、5…ドローバ、7…走行面、8…支持ローラ、9…ローラピット、7a,7b…スロープ、31…基部、32…本体部、32a…支持部、32b…スライド部、41…アーム、C…コンテナ、Cg…主桁、Cr…走行ローラ、V…コンテナ脱着車(貨物車両)
図1
図2
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図13