(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145148
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物、フィルム、フィルムセット、光導波路、光電気複合基板、および電子部品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241004BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20241004BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20241004BHJP
C08K 5/15 20060101ALI20241004BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241004BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08L101/00
G02B6/12
C08L79/08 Z
C08K5/15
C08G73/10
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057398
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕馬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】松原 由奈
【テーマコード(参考)】
2H147
4F071
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
2H147AA01
2H147BG02
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4J043YA23
4J043ZA51
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4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】埋込性が向上した光導波路クラッドを得ることが可能な樹脂組成物およびフィルムを提供する。
【解決手段】光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物であって、前記樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(10rad/sec)が、1.0×10
3Pa・s以上1.0×10
5Pa・s以下である、樹脂組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(10rad/sec)が、1.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したとき、複素粘度η*(10rad/sec)が最小となる温度が、70℃以上180℃以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:100rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(100rad/sec)が、0.1×102Pa・s以上5.0×104Pa・s以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:1rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(1rad/sec)が、1.0×104Pa・s以上8.0×105Pa・s以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物からなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’が0.1GPa以上3.0GPa以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物からなる硬化物の動的粘弾性測定装置(DMA)によりtanδのトップピークから算出されるガラス転移温度が、150℃以上400℃以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ポリイミド樹脂(A)と、環状エーテル構造を有する化合物(B)とを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
硬化剤(C)をさらに含む、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
光導波路クラッドに用いることが可能なフィルムであって、
樹脂層を備え、
前記樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(10rad/sec)が、1.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下である、フィルム。
【請求項10】
前記樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したとき、複素粘度η*(10rad/sec)が最小となる温度が、70℃以上180℃以下である、請求項9に記載のフィルム。
【請求項11】
前記樹脂層の、測定周波数:100rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(100rad/sec)が、0.1×102Pa・s以上5.0×104Pa・s以下である、請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項12】
前記樹脂層の、測定周波数:1rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(1rad/sec)が、1.0×104Pa・s以上8.0×105Pa・s以下である、請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項13】
前記樹脂層を硬化してなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’が0.1GPa以上3.0GPa以下である、請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項14】
前記樹脂層を硬化してなる硬化物の動的粘弾性測定装置(DMA)によりtanδのトップピークから算出されるガラス転移温度が、150℃以上400℃以下である、請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項15】
さらに、基材フィルムを備え、
前記基材フィルム上に前記樹脂層が設けられた、請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項16】
前記基材フィルムを構成する樹脂が、ポリイミド、およびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含む、請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
前記フィルムがドライフィルムである、請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項18】
光導波路クラッドに用いることが可能なフィルムセットであって、
第1のフィルムと、第2のフィルムとを含み、
前記第1のフィルム、および前記第2のフィルムの少なくとも一方が、請求項9または10に記載のフィルムである、フィルムセット。
【請求項19】
第1のクラッド層と、コア層と、第2のクラッド層とが、この順で積層された光導波路であって、
前記第1のクラッド層、および前記第2のクラッド層の少なくとも一方が、請求項1または2に記載の樹脂組成物を含む、光導波路。
【請求項20】
基板と、
前記基板上に設けられた請求項19に記載の光導波路と、を備える、光電気複合基板。
【請求項21】
請求項20に記載の光電気複合基板を備える、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、フィルム、フィルムセット、光導波路、光電気複合基板、および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器において、情報の大容量化、情報通信速度の高速化等の、より高度な情報通信を実現できる部材が求められており、そのような部材の一つとして光電気複合基板が検討されている。
【0003】
光電気複合基板は、例えば、基板上に光導波路が設けられたものが挙げられる。
光導波路の技術としては、例えば、特許文献1~3に記載の技術が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、ポリマーからなるコア層とポリマーからなるクラッド層とを基板上に積層して形成された光導波路において、前記基板の面に平行な方向から前記コア層を挟むクラッド層より屈折率の小さなクラッド層で前記基板の面に垂直な方向から前記コア層を挟んだことを特徴とする光導波路が記載されている。
特許文献1に記載の光導波路によれば、複屈折の大きなポリイミドを用いてもPDLが小さく作製が容易で低損失な光導波路を提供し、更にこの導波路を用いて特性の優れた光集積回路や光モジュールを提供できることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、絶縁層の表面に実装用パッドを有する電気配線が形成されているフレキシブル回路基板と、上記実装用パッドに実装された素子と、上記絶縁層の裏面側に積層された光導波路とを備えた光電気混載基板であって、上記フレキシブル回路基板が、絶縁層の裏面にも電気配線が形成されたフレキシブル両面回路基板であり、その裏面側の電気配線のうち、少なくとも上記実装用パッドに対応する部分に、金属製補強層がめっき形成され、その金属製補強層に、上記光導波路が当接した状態になっていることを特徴とする光電気混載基板が記載されている。
特許文献2に記載の光電気混載基板によれば、フレキシブル回路基板の絶縁層に、接着剤層を介することなく、金属製補強層が密着され、その金属製補強層により、素子実装時の押圧荷重による変形を抑制した状態で素子が適正に実装されている光電気混載基板が提供できることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、ポリイミド等の樹脂からなる絶縁層1の表裏面に銅箔21が形成された基材を準備し、その基材に、光路用の貫通孔1aおよびビアホール1bを形成する点が記載されている(特許文献2の段落0023参照)。そして、金属製補強層Mを形成したフレキシブル両面回路基板Eが記載されている(特許文献2の段落0028参照)。フレキシブル両面回路基板Eには、上記基材が含まれる。
さらに、特許文献2には、フレキシブル両面回路基板Eの裏面側に、裏面側の電気配線2Bを被覆する金属製補強層Mに当接した状態で、アンダークラッド層6を形成することが記載されており、アンダークラッド層6の成形材料としては、例えば、感光性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる点が記載されている(特許文献2の段落0029参照)。特許文献2の
図4~
図6によれば、アンダークラッド層6の成形材料が、金属製補強層Mを形成したフレキシブル両面回路基板Eに形成されている凹部に充填されていることが理解できる。
【0007】
特許文献3には、基板の両面に導体回路と絶縁層とが積層形成されたリジッド部と、1つまたは複数の屈曲可能なフレックス部とが一体化してなる光電気配線板であって、前記リジッド部には、光学素子および/または光学素子を実装したパッケージ基板を搭載するための外部接続端子が形成されており、前記フレックス部の少なくとも1つには、光配線が形成されていることを特徴とする光電気配線板が記載されている。
特許文献3の光電気配線板によれば、配線板のサイズを大きくすることなく、大容量情報の処理や情報の高速処理を好適に行うことができると記載されている。
【0008】
特許文献3に記載のリジッド部は、光信号通過領域が形成されており、前記光信号通過領域は、その内部に樹脂組成物が充填されていることが記載されている(特許文献3の請求項4および請求項5参照)。さらに、光信号通過領域は、リジッド部を構成する全ての基板および絶縁層を貫通するように形成されていることが記載されている(特許文献3の請求項6参照)。
【0009】
さらに、特許文献3には、光導波路フィルム250と、その周囲の樹脂層(絶縁層)221aとからなる基板221が記載されており、樹脂層221aは光信号通過領域242a、242bの一部を構成する点が記載されている(特許文献3の段落0033参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-119659号公報
【特許文献2】特開2014-238455号公報
【特許文献3】特開2006-140233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の光電気複合基板に関する技術において、基板に形成された凹部、基板に形成された貫通孔に対して、樹脂組成物を充填した光電気複合基板が知られている(特に、特許文献2、特許文献3を参照)。
【0012】
光電気複合基板の製造工程として、例えば、ビアが形成された基板と、光導波路クラッド用のフィルムとを一体化する工程が挙げられる。この工程において、基板に形成されたビアを、光導波路クラッドによって埋め込む必要がある。すなわち、光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物およびフィルムには、ビアに光導波路クラッドを十分に埋め込むことを可能とする特性が求められている(以下、「埋込性」とは、ビアに光導波路クラッドをどの程度埋め込むことができるかの特性を意味する)。
【0013】
本発明は上記事情を鑑みなされたものであり、埋込性が向上した光導波路クラッドを得ることが可能な樹脂組成物およびフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、以下に示す樹脂組成物、フィルム、フィルムセット、光導波路、光電気複合基板、および電子部品が提供される。
【0015】
[1]
光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(10rad/sec)が、1.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下である、樹脂組成物。
[2]
前記樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したとき、複素粘度η*(10rad/sec)が最小となる温度が、70℃以上180℃以下である、前記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:100rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(100rad/sec)が、0.1×102Pa・s以上5.0×104Pa・s以下である、前記[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:1rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(1rad/sec)が、1.0×104Pa・s以上8.0×105Pa・s以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記樹脂組成物からなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’が0.1GPa以上3.0GPa以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記樹脂組成物からなる硬化物の動的粘弾性測定装置(DMA)によりtanδのトップピークから算出されるガラス転移温度が、150℃以上400℃以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
ポリイミド樹脂(A)と、環状エーテル構造を有する化合物(B)とを含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
硬化剤(C)をさらに含む、前記[7]に記載の樹脂組成物。
[9]
光導波路クラッドに用いることが可能なフィルムであって、
樹脂層を備え、
前記樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(10rad/sec)が、1.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下である、フィルム。
[10]
前記樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したとき、複素粘度η*(10rad/sec)が最小となる温度が、70℃以上180℃以下である、前記[9]に記載のフィルム。
[11]
前記樹脂層の、測定周波数:100rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(100rad/sec)が、0.1×102Pa・s以上5.0×104Pa・s以下である、前記[9]または[10]に記載のフィルム。
[12]
前記樹脂層の、測定周波数:1rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(1rad/sec)が、1.0×104Pa・s以上8.0×105Pa・s以下である、前記[9]~[11]のいずれかに記載のフィルム。
[13]
前記樹脂層を硬化してなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’が0.1GPa以上3.0GPa以下である、前記[9]~[12]のいずれかに記載のフィルム。
[14]
前記樹脂層を硬化してなる硬化物の動的粘弾性測定装置(DMA)によりtanδのトップピークから算出されるガラス転移温度が、150℃以上400℃以下である、前記[9]~[13]のいずれかに記載のフィルム。
[15]
さらに、基材フィルムを備え、
前記基材フィルム上に前記樹脂層が設けられた、前記[9]~[14]のいずれかに記載のフィルム。
[16]
前記基材フィルムを構成する樹脂が、ポリイミド、およびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含む、前記[15]に記載のフィルム。
[17]
前記フィルムがドライフィルムである、前記[9]~[16]のいずれかに記載のフィルム。
[18]
光導波路クラッドに用いることが可能なフィルムセットであって、
第1のフィルムと、第2のフィルムとを含み、
前記第1のフィルム、および前記第2のフィルムの少なくとも一方が、前記[9]~[17]のいずれかに記載のフィルムである、フィルムセット。
[19]
第1のクラッド層と、コア層と、第2のクラッド層とが、この順で積層された光導波路であって、
前記第1のクラッド層、および前記第2のクラッド層の少なくとも一方が、前記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、光導波路。
[20]
基板と、
前記基板上に設けられた前記[19]に記載の光導波路と、を備える、光電気複合基板。
[21]
前記[20]に記載の光電気複合基板を備える、電子部品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、埋込性が向上した光導波路クラッドを得ることが可能な樹脂組成物およびフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の光電気複合基板の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0019】
図1は、本実施形態の光電気複合基板の構造の一例を模式的に示した断面図である。なお、図は簡略図で、実際の寸法比率とは一致していない。
図1に示すように、光電気複合基板200は、基板110上に光導波路100が設けられる。光導波路100は、第1のクラッド層20と、コア層30と、第2のクラッド層40とが、この順で積層されている。光導波路100には、発光素子側のミラー50と、受光素子側のミラー60とが形成されている。基板110には、ビア140(140a、140b)が形成されている(なお、
図1に示すビア140は、第1のクラッド層20により埋め込まれている状態である)。基板110の光導波路100側とは反対側に、発光素子120と、受光素子130が設けられている。
【0020】
基板110上に光導波路100を設けるとき、例えば、ビア140が形成された基板110と、第1のクラッド層20を形成するためのフィルムを積層し、加温、加圧によって一体化する工程を含む。一体化する工程において、ビア140を、第1のクラッド層20によって埋め込む必要がある。
【0021】
本発明者らの検討によれば、従来の光導波路クラッドを形成するための材料では、基板に形成されたビアに光導波路クラッドを十分に埋め込むことができず、光導波路クラッドの基板側とは反対側の面(すなわち、光導波路クラッドのコア層側)に凹みが生じたり、ビア内にボイドが発生したりする場合があることを見出した。そして、光電気複合基板に上述した凹みやボイドが発生すると、凹みやボイドの界面において光損失が発生することを見出した。
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、埋込性が向上した光導波路クラッドを得ることが可能な樹脂組成物およびフィルムを提供するものである。
【0022】
図1を用いて、光電気複合基板200における光の伝搬経路について具体的に説明する。発光素子120の発光部から出射した光は、基板110に形成されたビア140a内を通過し、発光素子側のミラー50に入射することによって、コア層30内を伝送した後、受光素子側のミラー60に入射し、基板110に形成されたビア140b内を通過し、受光素子130へと入射する。なお、
図1中の矢印は光の伝搬を模式的に記載したものである。
【0023】
光電気複合基板を電子部品に実装する際に、例えば、リフローはんだ付けプロセス等の、光電気複合基板が高温(例えば、230℃~270℃)下にさらされる工程を含む場合がある。本発明者らの検討によれば、従来の光電気複合基板において、光電気複合基板が高温下にさらされることにより、光導波路が熱収縮する場合があることを見出した。このような光導波路の熱収縮がおこることにより、ミラーの位置ずれが発生する場合があることを見出した。そして、ミラーの位置ずれが発生すると、想定している光路によって光伝搬をすることができず、正常な光伝搬ができなくなることを見出した。
さらに、本発明によれば、熱収縮が抑制された光導波路を得ることが可能な樹脂組成物およびフィルムを提供できる。
【0024】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、光導波路クラッドに用いることが可能な樹脂組成物であって、樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(10rad/sec)が、1.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下である。
【0025】
上述したように、埋込性が向上した光導波路クラッドを得ることが可能な樹脂組成物が求められている。
ここで、本発明者らは樹脂組成物からなる樹脂層の100℃における複素粘度η*(10rad/sec)を特定の範囲とすることにより、埋込性が向上することを初めて見出した。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物からなる樹脂層の、100℃における複素粘度η*(10rad/sec)は、好ましくは2.0×103Pa・s以上、より好ましくは3.0×103Pa・s以上、さらに好ましくは4.0×103Pa・s以上、さらに好ましくは5.0×103Pa・s以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは9.5×104Pa・s以下、より好ましくは9.3×104Pa・s以下、さらに好ましくは9.0×104Pa・s以下、さらに好ましくは8.8×104Pa・s以下である。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したとき、複素粘度η*(10rad/sec)が最小となる温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
【0028】
本実施形態の樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:100rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(100rad/sec)は、好ましくは0.1×102Pa・s以上、より好ましくは0.3×102Pa・s以上、さらに好ましくは0.5×102Pa・s以上、さらに好ましくは0.7×102Pa・s以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは5.0×104Pa・s以下、より好ましくは3.0×104Pa・s以下、さらに好ましくは1.0×104Pa・s以下、さらに好ましくは9.0×103Pa・s以下である。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物からなる樹脂層の、測定周波数:1rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(1rad/sec)は、好ましくは1.0×104Pa・s以上、より好ましくは3.0×104Pa・s以上、さらに好ましくは4.0×104Pa・s以上であり、そして、好ましくは8.0×105Pa・s以下、より好ましくは7.5×105Pa・s以下である。
【0030】
ここで、本実施形態の樹脂組成物において、複素粘度を測定するときの測定用サンプルは、例えば、実施例に記載の方法により得ることができる。
樹脂組成物がワニス状である場合、例えば、ワニス状の樹脂組成物を、基材フィルム上に塗布、乾燥することによりフィルム状の樹脂組成物を得たのちに、実施例に記載の方法により測定用サンプルを得ることができる。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物からなる樹脂層の複素粘度η*は、例えば、樹脂組成物を構成する樹脂の種類、重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度、樹脂組成物の構成成分の含有割合等を調整することにより、所望の数値範囲に調整することができる。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物からなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’は、光導波路の熱収縮をより抑制させる観点から、好ましくは0.1GPa以上、より好ましくは0.2GPa以上、さらに好ましくは0.3GPa以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば、3.0GPa以下である。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物からなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’は、例えば、樹脂組成物を構成する樹脂の種類、重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度、樹脂組成物の構成成分の含有割合等を調整することにより、所望の数値範囲に調整することができる。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物からなる硬化物のガラス転移温度(Tg)は、光導波路の熱収縮をより抑制させる観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば、400℃以下である。
ここで、ガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定装置(DMA)によりtanδのトップピークから算出されるガラス転移温度を意味する。
【0035】
上述した樹脂組成物からなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’およびガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の方法により算出することができる。
具体的には、樹脂組成物からなる硬化物に対して、動的粘弾性測定装置を用いて、窒素雰囲気下、周波数1Hz、引張りモード、サンプル間距離1cm、昇温速度5℃/分の条件で30℃から400℃まで加熱し、温度に対する貯蔵弾性率E’およびtanδを測定する。得られた貯蔵弾性率E’より、樹脂組成物からなる硬化物の200℃の貯蔵弾性率E’を算出する。また、得られたtanδのトップピークより、樹脂組成物からなる硬化物のガラス転移温度(Tg)を算出する。
ここで、樹脂組成物からなる硬化物とは、樹脂組成物が完全に硬化している状態(Cステージ)の硬化物を意味する。
樹脂組成物が完全に硬化している状態(Cステージ)であるかを判断する方法としては、例えば、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)により、硬化反応に関与する官能基(例えば、環状エーテル構造中のCO基)由来のピーク強度の増減が一定であるかを確認する方法が挙げられる。
樹脂組成物を硬化する方法は特に限定されず、例えば、樹脂組成物を加熱する方法、樹脂組成物を光照射する方法、樹脂組成物を加熱しながら光照射する方法等が挙げられるが、好ましくは樹脂組成物を大気下、180℃、2時間加熱する方法である。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物の形状は特に限定されず、例えば、フィルム状、膜状、ワニス状、シート状等の形状が挙げられる。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物の構成成分は特に限定されないが、好ましくはポリイミド樹脂(A)と、環状エーテル構造を有する化合物(B)とを含み、より好ましくはポリイミド樹脂(A)と、環状エーテル構造を有する化合物(B)と、硬化剤(C)とを含む。
以下、本実施形態の樹脂組成物の好ましい各構成成分について説明する。
【0038】
<ポリイミド樹脂(A)>
本実施形態の樹脂組成物中に含まれるポリイミド樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは20質量部以上、より好ましくは23質量部以上、さらに好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは28質量部以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは65質量部以下である。
【0039】
本実施形態のポリイミド樹脂(A)は、揮発成分によるボイド等を抑制する観点から、分子内にイミド環構造を含むことが好ましい。分子内にイミド環構造を含むことにより、樹脂組成物を硬化する際に、揮発成分(例えば、水分等)の発生を抑制することができるため、ビア内の揮発成分由来のボイド等を抑制できると本発明者らは考えている。
【0040】
本実施形態のポリイミド樹脂(A)のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。
ポリイミド樹脂(A)のイミド化率は、ポリイミド樹脂(A)中に含まれるイミド基のモル数をIMとし、ポリイミド樹脂(A)中に含まれるアミド基のモル数をAMとしたとき、{IM/(IM+AM)}×100(%)で表されるイミド化率を意味する。
イミド化率は、例えば、NMRスペクトルにおける、アミド基に対応するピークの面積およびイミド基に対応するピークの面積等から求めることができる。別の例として、イミド化率は、赤外吸収スペクトルにおける、アミド基に対応するピークの面積およびイミド基に対応するピークの面積等から求めることができる。
【0041】
本実施形態のポリイミド樹脂(A)は、フッ化ポリイミドを含むことが好ましい。フッ化ポリイミドとは、フッ素原子を含むポリイミドを意味する。
本実施形態のポリイミド樹脂(A)がフッ化ポリイミドを含むことにより、有機溶剤への溶解性がより向上するため、ワニス状の樹脂組成物を得やすくなる。
フッ化ポリイミド中のフッ素原子の量(質量比率)は、有機溶剤への溶解性をより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは28質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0042】
本実施形態のフッ化ポリイミドは、下記一般式(a)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0043】
【0044】
一般式(a)中、Xは2価の有機基であり、Yは4価の有機基であり、XおよびYの少なくとも一方は、フッ素原子を有する。
【0045】
一般式(a)中、Xの2価の有機基および/またはYの4価の有機基は、光導波路の熱収縮をより抑制させる観点から、芳香環構造を含むことが好ましく、ベンゼン環構造を含むことがより好ましい。
一般式(a)中、Xの2価の有機基および/またはYの4価の有機基は、有機溶剤への溶解性をより向上させる観点から、XおよびYの両方が、フッ素原子含有基であることが好ましい。
一般式(a)中、Xの2価の有機基および/またはYの4価の有機基は、好ましくは、2~6個のベンゼン環が、単結合または2価の連結基を介して結合した構造を有する。ここでの2価の連結基としては、アルキレン基、フッ化アルキレン基、エーテル基などを挙げることができる。アルキレン基およびフッ化アルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
一般式(a)中、Xの2価の有機基の炭素数は、例えば6~30である。
一般式(a)中、Yの4価の有機基の炭素数は、例えば6~20である。
一般式(a)中、2つのイミド環は、それぞれ、5員環であることが好ましい。
【0046】
本実施形態のフッ化ポリイミドは、下記一般式(aa)で表される構造単位を含むことがより好ましい。
【0047】
【0048】
一般式(aa)中、Y'は、単結合またはアルキレン基を表し、Xは、一般式(a)におけるXと同義であり、XおよびY'の少なくとも一方は、フッ素原子を有する。
【0049】
一般式(aa)中、Y'のアルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。Y'のアルキレン基の水素原子の一部または全部は、フッ素原子で置換されていることが好ましい。Y'のアルキレン基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3である。
一般式(aa)中、XおよびY'の両方が、フッ素原子含有基であることが好ましい。
【0050】
本実施形態のポリイミド樹脂(A)の屈折率は、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは1.58以下、より好ましくは1.56以下、さらに好ましくは1.55以下、さらに好ましくは1.54以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、1.50以上である。
ポリイミド樹脂(A)の屈折率は、アッベ屈折率計を用いて、23℃、589nmの条件下で測定される屈折率を意味する。
【0051】
本実施形態のポリイミド樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、光導波路の熱収縮をより抑制させる観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは7,000以上、さらに好ましくは10,000以上、さらに好ましくは30,000以上、さらに好ましくは40,000以上であり、そして、有機溶剤への溶解性をより向上させる観点から、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、さらに好ましくは130,000以下、さらに好ましくは110,000以下である。
重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。
【0052】
本実施形態のポリイミド樹脂(A)は、例えば、(i)まず、ジアミンと酸二無水物とを反応(縮重合)させてポリアミドを合成し、(ii)その後、そのポリアミドをイミド化させ(閉環反応させ)ることにより得ることができる。具体的な反応条件は、例えば、公知の条件とすることができる。
【0053】
本実施形態のポリイミド樹脂(A)を合成するときの原料のジアミンとしては、例えば、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル(3,4'-ODA)、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジメチルベンジジン、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2'-ビス(p-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(トリフルオロメトキシ)ベンジジン(TFMOB)、2,2'-ビス(ペンタフルオロエトキシ)ベンジジン(TFEOB)、2,2'-トリフルオロメチル-4,4'-オキシジアニリン(OBABTF)、2-フェニル-2-トリフルオロメチル-ビス(p-アミノフェニル)メタン、2-フェニル-2-トリフルオロメチル-ビス(m-アミノフェニル)メタン、2,2'-ビス(2-ヘプタフルオロイソプロポキシ-テトラフルオロエトキシ)ベンジジン(DFPOB)、2,2-ビス(m-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6-FmDA)、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,6-ビス(トリフルオロメチル)-1,4-ジアミノベンゼン(2TFMPDA)、1-(3,5-ジアミノフェニル)-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンタン、3,5-ジアミノベンゾトリフルオリド(3,5-DABTF)、3,5-ジアミノ-5-(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、3,5-ジアミノ-5-(ヘプタフルオロプロピル)ベンゼン、2,2'-ジメチルベンジジン(DMBZ)、2,2',6,6'-テトラメチルベンジジン(TMBZ)、3,6-ジアミノ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテン(6FCDAM)、3,6-ジアミノ-9-トリフルオロメチル-9-フェニルキサンテン(3FCDAM)、3,6-ジアミノ-9,9-ジフェニルキサンテン等が挙げられる。
ジアミンは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0054】
本実施形態のポリイミド樹脂(A)を合成するときの原料の酸二水物としては、例えば、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、無水ピロメリット酸無水物(PMDA)、ジフェニルエーテル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジフェニルスルホン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、ジフェニルメタン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)プロパン、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(6FDA)等が挙げられる。
酸二水物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0055】
本実施形態のポリイミド樹脂(A)は、一種のポリイミド樹脂であってもよいし、二種以上のポリイミド樹脂を含んでいてもよい。
【0056】
<環状エーテル構造を有する化合物(B)>
本実施形態の環状エーテル構造を有する化合物(B)は、好ましくはエポキシ樹脂、およびオキセタン化合物からなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含み、より好ましくはエポキシ樹脂を一種または二種以上含む。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物中に含まれる環状エーテル構造を有する化合物(B)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは35質量部以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。
【0058】
本実施形態の環状エーテル構造を有する化合物(B)は、分子内に脂環構造を含むことが好ましい。ここで、環状エーテル構造を有する化合物(B)が、分子内に脂環構造を含むとは、環状エーテル構造以外に脂環構造を含むことを意味する。ただし、本実施形態の脂環構造は、環状エーテルと脂肪族環とが縮合した縮合環構造、および環状エーテルと脂肪族環とがスピロ結合原子により結合したスピロ環構造を含むものとする。
脂環構造における、環の員数は特に限定されないが、4員環以上10員環以下が好ましく、4員環以上8員環以下がより好ましく、5員環または6員環がさらに好ましく、6員環がさらに好ましい。
【0059】
本実施形態の環状エーテル構造を有する化合物(B)は、分子内に2個以上の環状エーテル構造を含むことが好ましく、分子内に2個または3個の環状エーテル構造を含むことがより好ましい。
【0060】
本実施形態の環状エーテル構造を有する化合物(B)は、樹脂組成物を製造する際の取り扱い性の観点から、23℃で液状であることが好ましい。
【0061】
本実施形態の環状エーテル構造を有する化合物(B)の屈折率は、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは1.55以下、より好ましくは1.53以下、さらに好ましくは1.52以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、1.45以上である。
環状エーテル構造を有する化合物(B)の屈折率は、アッベ屈折率計を用いて、23℃、589nmの条件下で測定される屈折率を意味する。
【0062】
本実施形態の環状エーテル構造を有する化合物(B)は、一種の環状エーテル構造を有する化合物であってもよいし、二種以上の環状エーテル構造を有する化合物を含んでいてもよい。
【0063】
<硬化剤(C)>
本実施形態の硬化剤(C)は、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤、アミン系化合物等を用いることができる。
【0064】
本実施形態の樹脂組成物中に含まれる硬化剤(C)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、そして、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、さらに好ましくは6.0質量部以下、さらに好ましくは5.5質量部以下である。
【0065】
本実施形態の硬化剤(C)は、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
カチオン重合開始剤は、熱カチオン重合開始剤、光カチオン重合開始剤が挙げられ、その中でも、好ましくは熱カチオン重合開始剤である。
熱カチオン重合開始剤は、例えば、スルホニウム塩型重合開始剤、ヨードニウム塩型重合開始剤等を含み、スルホニウム塩型重合開始剤を含むことが好ましい。
光カチオン重合開始剤は、例えば、スルホニウム塩型重合開始剤、ヨードニウム塩型重合開始剤等を含む。
【0066】
本実施形態の硬化剤(C)は、イミダゾール系化合物を含むことが好ましい。イミダゾール系化合物とは、イミダゾール環構造を含む化合物を意味し、例えば、イミダゾールの水素が炭化水素基等に置換された化合物である。
【0067】
本実施形態の硬化剤(C)は、一種の硬化剤であってもよいし、二種以上の硬化剤を含んでいてもよい。
【0068】
<界面活性剤(D)>
本実施形態の樹脂組成物は、埋込性をより向上させる観点から、界面活性剤(D)をさらに含むことが好ましい。
界面活性剤(D)は、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を含み、シリコーン系界面活性剤を含むことが好ましい。
本実施形態の界面活性剤(D)は、一種の界面活性剤でもよいし、二種以上の界面活性剤を含んでいてもよい。
【0069】
本実施形態の樹脂組成物中に含まれる界面活性剤(D)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.07質量部以上であり、そして、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下、さらに好ましくは0.7質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。
【0070】
<有機溶剤(E)>
本実施形態の樹脂組成物は、有機溶剤(E)を含んでいてもよい。本実施形態の樹脂組成物が有機溶剤(E)を含むと、ワニス状の樹脂組成物とすることができる。
【0071】
本実施形態の有機溶剤(E)は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロプレングリコールメチルーn-プロピルエーテル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
本実施形態の有機溶剤(E)は、単独の有機溶剤でもよいし、二種以上の有機溶剤を含んでいてもよい。
【0072】
本実施形態の樹脂組成物が、有機溶剤(E)を含む場合、樹脂組成物中の全固形分(不揮発成分)の濃度が、樹脂組成物の粘度を適切に制御する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、そして、樹脂組成物中の各成分を十分に溶解させる観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0073】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、硬化助剤、レベリング剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。その他の成分の含有量は適宜量である。
【0074】
本実施形態の樹脂組成物は熱カチオン重合開始剤を含む場合、光カチオン重合開始剤などの感光剤を含まなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物は熱カチオン重合開始剤を含む場合、本実施形態の樹脂組成物中の感光剤の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、例えば1.0質量部未満であり、0.5質量部未満であってもよく、0.3質量部未満であってもよく、0.1質量部未満であってもよく、0.0質量部であってもよい。
【0075】
本実施形態の樹脂組成物中のポリイミド樹脂(A)および環状エーテル構造を有する化合物(B)の合計含有量は、樹脂組成物中の樹脂成分の合計含有量を100質量%としたとき、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
本実施形態の樹脂組成物中のポリイミド樹脂(A)および環状エーテル構造を有する化合物(B)の合計含有量は、樹脂組成物中の全成分の合計含有量を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば99質量%以下である。
【0076】
本実施形態の樹脂組成物中のポリイミド樹脂(A)、環状エーテル構造を有する化合物(B)、硬化剤(C)、界面活性剤(D)、および有機溶剤(E)の合計含有量は、樹脂組成物中の全成分の合計含有量を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0077】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、各成分を混合することにより得られる。
フィルム状の本実施形態の樹脂組成物は、例えば、ワニス状の樹脂組成物を、基材フィルム上に塗布、乾燥することにより得られる。
【0078】
[フィルム]
本実施形態のフィルムは、光導波路クラッドに用いることが可能なフィルムであって、樹脂層を備え、樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(10rad/sec)が、1.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下である。
【0079】
上述したように、埋込性が向上した光導波路クラッドを得ることが可能なフィルムが求められている。
ここで、本発明者らは樹脂層の100℃における複素粘度η*(10rad/sec)を特定の範囲とすることにより、フィルムの埋込性が向上することを初めて見出した。
【0080】
本実施形態のフィルムにおいて、樹脂層の100℃における複素粘度η*(10rad/sec)は、好ましくは2.0×103Pa・s以上、より好ましくは3.0×103Pa・s以上、さらに好ましくは4.0×103Pa・s以上、さらに好ましくは5.0×103Pa・s以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは9.5×104Pa・s以下、より好ましくは9.3×104Pa・s以下、さらに好ましくは9.0×104Pa・s以下、さらに好ましくは8.8×104Pa・s以下である。
【0081】
本実施形態のフィルムにおいて、樹脂層の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したとき、複素粘度η*(10rad/sec)が最小となる温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
【0082】
本実施形態のフィルムにおいて、樹脂層の、測定周波数:100rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(100rad/sec)は、好ましくは0.1×102Pa・s以上、より好ましくは0.3×102Pa・s以上、さらに好ましくは0.5×102Pa・s以上、さらに好ましくは0.7×102Pa・s以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは5.0×104Pa・s以下、より好ましくは3.0×104Pa・s以下、さらに好ましくは1.0×104Pa・s以下、さらに好ましくは9.0×103Pa・s以下である。
【0083】
本実施形態のフィルムにおいて、樹脂層の、測定周波数:1rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*(1rad/sec)は、好ましくは1.0×104Pa・s以上、より好ましくは3.0×104Pa・s以上、さらに好ましくは4.0×104Pa・s以上であり、そして、好ましくは8.0×105Pa・s以下、より好ましくは7.5×105Pa・s以下である。
【0084】
ここで、本実施形態のフィルムにおいて、複素粘度を測定するときの測定用サンプルは、例えば、実施例に記載の方法により得ることができる。
【0085】
本実施形態のフィルムにおいて、樹脂層の複素粘度η*は、例えば、樹脂層を構成する樹脂の種類、重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度、樹脂層の構成成分の含有割合等を調整することにより、所望の数値範囲に調整することができる。
【0086】
本実施形態のフィルムにおいて、樹脂層を硬化してなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’は、光導波路の熱収縮をより抑制させる観点から、好ましくは0.1GPa以上、より好ましくは0.2GPa以上、さらに好ましくは0.3GPa以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば、3.0GPa以下である。
【0087】
本実施形態のフィルムにおいて、樹脂層を硬化してなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’は、例えば、樹脂層を構成する樹脂の種類、重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度、樹脂層の構成成分の含有割合等を調整することにより、所望の数値範囲に調整することができる。
【0088】
本実施形態のフィルムにおいて、樹脂層を硬化してなる硬化物のガラス転移温度(Tg)は、光導波路の熱収縮をより抑制させる観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば、400℃以下である。
ここで、ガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定装置(DMA)によりtanδのトップピークから算出されるガラス転移温度を意味する。
【0089】
上述したフィルムの樹脂層を硬化してなる硬化物の、200℃における貯蔵弾性率E’およびガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の方法により算出することができる。
具体的には、樹脂層を硬化してなる硬化物に対して、動的粘弾性測定装置を用いて、窒素雰囲気下、周波数1Hz、引張りモード、サンプル間距離1cm、昇温速度5℃/分の条件で30℃から400℃まで加熱し、温度に対する貯蔵弾性率E’およびtanδを測定する。得られた貯蔵弾性率E’より、樹脂層を硬化してなる硬化物の200℃の貯蔵弾性率E’を算出する。また、得られたtanδのトップピークより、樹脂層を硬化してなる硬化物のガラス転移温度(Tg)を算出する。
ここで、樹脂層を硬化してなる硬化物とは、樹脂層を構成する樹脂組成物が完全に硬化している状態(Cステージ)の硬化物を意味する。
樹脂組成物が完全に硬化している状態(Cステージ)であるかを判断する方法としては、例えば、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)により、硬化反応に関与する官能基(例えば、環状エーテル構造中のCO基)由来のピーク強度の増減が一定であるかを確認する方法が挙げられる。
樹脂層を硬化する方法は特に限定されず、例えば、樹脂層を加熱する方法、樹脂層を光照射する方法、樹脂層を加熱しながら光照射する方法等が挙げられるが、好ましくは樹脂層を大気下、180℃、2時間加熱する方法である。
【0090】
本実施形態のフィルムにおいて、樹脂層は、好ましくは本実施形態の樹脂組成物により形成される。
【0091】
本実施形態の樹脂層の厚みは、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、そして、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0092】
本実施形態のフィルムは、好ましくはドライフィルムである。
【0093】
本実施形態のフィルムの厚みは、フィルムの取り扱い性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらに好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、そして、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらに好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、さらに好ましくは130μm以下である。
【0094】
本実施形態のフィルムは、さらに基材フィルムを備え、基材フィルム上に樹脂層が設けられることが好ましい。
基材フィルムとしては、例えば、樹脂フィルムを用いることができる。
基材フィルムを構成する樹脂は特に限定されないが、ポリイミド、およびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0095】
本実施形態の基材フィルムの厚みは、フィルムの取り扱い性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上、好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
【0096】
本実施形態の基材フィルムは、帯電防止処理、離型処理等の表面処理がされていてもよい。
【0097】
本実施形態のフィルムは、さらにカバーフィルムを備えていてもよい。カバーフィルムは、樹脂層と直に接するように設けられていることが好ましい。
本実施形態のフィルムが基材フィルムを備える場合、カバーフィルムは、樹脂層の基材フィルムとは反対側の面に設けられていることが好ましい。
カバーフィルムは特に限定されないが、例えば、OPPカバーフィルムを用いることができる。
【0098】
本実施形態のフィルムは、例えば、本実施形態のワニス状の樹脂組成物を、基材フィルム上に塗布、乾燥することにより得られる。塗布する方法としては、例えば、ピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーター装置を用いて直接塗布する方法、スクリーン印刷などの印刷方法が挙げられる。
【0099】
[フィルムセット]
本実施形態のフィルムセットは、第1のフィルムと、第2のフィルムとを含み、第1のフィルム、および第2のフィルムの少なくとも一方が、本実施形態のフィルムである。
本実施形態のフィルムセットは、第1のフィルム、および第2のフィルムの両方が、本実施形態のフィルムであることが好ましい。
【0100】
[光導波路]
本実施形態の光導波路について、
図1を用いて説明する。
本実施形態の光導波路100は、第1のクラッド層20と、コア層30と、第2のクラッド層40とがこの順で積層された光導波路であって、第1のクラッド層20、および第2のクラッド層40の少なくとも一方が、本実施形態の樹脂組成物を含む。
本実施形態の光導波路は、第1のクラッド層20、および第2のクラッド層40の両方が、本実施形態の樹脂組成物を含むことが好ましい。
【0101】
光導波路100が、基板110上に設けられる場合、第1のクラッド層20が基板110側となることが好ましい。
第1のクラッド層20が基板110側となる場合、第1のクラッド層20および第2のクラッド層40の好ましい厚みは以下の通りである。
第1のクラッド層20の厚みは、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、そして、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
第2のクラッド層40の厚みは、光導波路の熱収縮をより抑制させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上であり、そして、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0102】
コア層30を形成する材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物から形成される。
コア層30を形成するための樹脂は、例えば、公知の光導波路のコアに用いられる樹脂を用いることができるが、環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましく、ノルボルネン系樹脂を含むことがより好ましい。
コア層30を形成するための樹脂組成物は、酸化防止剤、光酸発生剤等を含んでいてもよい。
【0103】
コア層30の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0104】
コア層30は、導波路パターンが形成されていてもよい。導波路パターンを形成する方法としては、例えば、露光法、エッチング法、複製法等が挙げられる。
【0105】
光導波路100は、ミラーが形成されていてもよく、発光素子側のミラー50および受光素子側のミラー60が形成されていてもよい。ミラーを形成する方法は、例えば、レーザー加工等により傾斜面を形成する方法が挙げられる。
【0106】
光導波路100は、第1のクラッド層20、コア層30、および第2のクラッド層40以外に、光導波路100の良好な性能に影響を与えない範囲で、その他の層を備えていてもよい。
【0107】
[光電気複合基板]
本実施形態の光電気複合基板について、
図1を用いて説明する。
光電気複合基板200は、基板110と、基板110上に設けられた光導波路100と、を備える。
【0108】
基板110は、例えば、プリント基板、フレキシブル基板等が挙げられ、好ましくはフレキシブル基板である。
基板110は、ビア140が形成されていてもよい。
【0109】
光電気複合基板200は、発光素子120、受光素子130等を備えていてもよい。
【0110】
光電気複合基板200は、例えば、(i)基板110上に第1のクラッド層20を形成する、(ii)第1のクラッド層20上にコア層30を形成する、(iii)コア層30上に第2のクラッド層40を形成する、ことにより得られる。
各層を形成する方法としては、例えば、各層を形成するためのフィルムをロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等によって、各層を順番に積層する方法が挙げられる。
【0111】
[電子部品]
本実施形態の電子部品は、本実施形態の光電気複合基板を備える。
本実施形態の電子部品は、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類中の電子部品が挙げられる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、前記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0113】
以下、本実施形態を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0114】
[原料]
まず、実施例および比較例で使用した原料について説明する。
【0115】
<ポリイミド樹脂の合成>
(ポリイミド樹脂(A-1)の合成)
攪拌装置と撹拌翼を備えたガラス製の3Lのセパラブルフラスコに2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル67.3g(0.210モル)および4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物97.7g(0.220モル)およびジメチルアセトアミド495gを仕込んで撹拌し溶解させた。さらに窒素気流下において12時間室温で撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液を得た。
【0116】
得られたポリアミド酸溶液にピリジン16gを添加した後、室温で無水酢酸82gを滴下しながら投入した。その後、さらに液温を20~100℃に保って24時間撹拌を続けてイミド化反応を行い、ポリイミド溶液を得た。
【0117】
得られたポリイミド溶液を、5Lの容積の容器中で撹拌しながら、1,000gのメタノール中に投入してポリイミド樹脂を析出させた。その後、吸引濾過装置を用いて固体のポリイミド樹脂を濾別し、さらに1,000gのメタノールを用いて洗浄を行った。そして、真空乾燥機を用いて100℃で24時間乾燥を行い、さらに200℃で3時間乾燥させ、粉末状のポリイミド樹脂(A-1)を得た。
ポリイミド樹脂(A-1)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は51,000であった。ポリイミド樹脂(A-1)を1H-NMR測定し、ポリイミドの芳香環のピークに対するアミドピークの定量値からイミド化率を計算した結果、イミド化率は99%以上であった。
また、ポリイミド樹脂(A-1)を固形分濃度が25%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した後、膜厚が30μmとなるようにアプリケーターを使用して塗工し、さらにオーブンにて100℃で10分乾燥しポリイミド塗膜を得た。得られた塗膜についてアッベ屈折率計((株)アタゴ製、製品名:NAR-1T SOLID)を使用して23℃、589nmの条件下で屈折率を測定した結果、ポリイミドの屈折率は1.54であった。
【0118】
(ポリイミド樹脂(A-2)の合成)
ポリイミド樹脂(A-1)の合成において、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニルの量を68.9g(0.215モル)とした以外は、ポリイミド樹脂(A-1)の合成と同様にポリマー合成を行い、ポリイミド樹脂(A-2)を得た。
ポリイミド樹脂(A-2)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は101,000であり、ポリイミド樹脂(A-2)のNMR測定によるイミド化率は99%以上であり、さらに、ポリイミド樹脂(A-2)のアッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.54であった。
【0119】
(ポリイミド樹脂(A-3)の合成)
ポリイミド樹脂(A-1)の合成において、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル67.3g(0.210モル)の代わりに、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル57.6g(0.180モル)および2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン15.6g(0.030モル)を用いた以外はポリイミド樹脂(A-1)の合成と同様にポリマー合成を行い、ポリイミド樹脂(A-3)を得た。
ポリイミド樹脂(A-3)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は48,000であり、ポリイミド樹脂(A-3)のNMR測定によるイミド化率は99%以上であり、さらに、ポリイミド樹脂(A-3)のアッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.55であった。
【0120】
(ポリイミド樹脂(A-4)の合成)
ポリイミド樹脂(A-1)の合成において、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物97.7g(0.220モル)の代わりに、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物88.85g(0.200モル)および4,4'-オキシジフタル酸二無水物6.20g(0.020モル)を用いた以外はポリイミド樹脂(A-1)の合成と同様にポリマー合成を行い、ポリイミド樹脂(A-4)を得た。
ポリイミド樹脂(A-4)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は49,000であり、ポリイミド樹脂(A-4)のNMR測定によるイミド化率は99%以上であり、更に、ポリイミド樹脂(A-4)のアッベ屈折率計測定による23℃、589nmの条件下での屈折率は1.55であった。
【0121】
表1および表2における各成分の原料の詳細は以下のとおりである。
【0122】
<ポリマー(A)>
(A-1)上記で合成したポリイミド樹脂(Mw=51,000、イミド化率99%以上、屈折率n=1.54)
(A-2)上記で合成したポリイミド樹脂(Mw=101,000、イミド化率99%以上、屈折率n=1.54)
(A-3)上記で合成したポリイミド樹脂(Mw=48,000、イミド化率99%以上、屈折率n=1.55)
(A-4)上記で合成したポリイミド樹脂(Mw=49,000、イミド化率99%以上、屈折率n=1.55)
(A-5)ゴム系エラストマー(クラレ(株)製、製品名:セプトンQ1250)(Mw=100,000、屈折率n=1.50)(比較例用)
【0123】
【0124】
<環状エーテル構造を有する化合物(B)>
(B-1)セロキサイド2021P(ダイセル(株)製、脂環構造を有するエポキシ樹脂、23℃で液状、屈折率1.51)
(B-2)EHPE-3150(ダイセル(株)製、脂環構造を有するエポキシ樹脂、23℃で固体、屈折率1.51)
(B-3)エピコートYX-8000(三菱化学(株)製、脂環構造を有するエポキシ樹脂、23℃で液状、屈折率1.51)
(B-4)デナコールEX-321L(ナガセケムテックス(株)製、脂肪族エポキシ樹脂、23℃で液状、屈折率1.50)
(B-5)OXT-221(東亞合成(株)製、オキセタン化合物、23℃で液状、屈折率1.50)
【0125】
【0126】
<硬化剤(C)>
(C-1)サンエイド SI-110(三新化学工業(株)製、熱カチオン重合開始剤)
(C-2)サンエイド SI-150(三新化学工業(株)製、熱カチオン重合開始剤)
(C-3)サンエイド SI-B3(三新化学工業(株)製、熱カチオン重合開始剤)
(C-4)キュアゾールC11z(四国化成(株)製、イミダゾール系化合物)
【0127】
<界面活性剤(D)>
(D-1)BYK-333(ビックケミージャパン(株)製、シリコーン系界面活性剤)
(D-2)BYK-361(ビックケミージャパン(株)製、アクリルポリマー系界面活性剤)(比較例用)
【0128】
<有機溶剤(E)>
(E-1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(E-2)プロピレングリコールモノメチルエーテル
(E-3)トルエン
【0129】
[実施例1~9、比較例1、2および参考例2]
(樹脂組成物の作成)
表1および表2に従い配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。その後、その溶液を孔径0.2μmのPTFEフィルターで濾過することで、実施例1~9、比較例1、2および参考例2のワニス状の樹脂組成物をそれぞれ得た。
【0130】
(フィルムの作成)
上記樹脂組成物の作成で得られた実施例1~9、比較例1、2および参考例2の樹脂組成物を、厚み38μmの帯電防止処理をしたポリエチレンテレフタレート基材(ニッパ(株)製、製品名:PET38×1-TR1-ASQ)上に、乾燥後の厚みが表1および表2に記載の樹脂層の厚みとなるようにアプリケーターを用いてワニス塗布した後、100℃で10分間乾燥を行い、最後にOPPカバーフィルム(王子エフテックス(株)製、製品名;E201F-50μm)を樹脂組成物により形成された樹脂層側の表面に貼り付けてフィルムを作成し、実施例1~9、比較例1、2のフィルムを得た。なお、参考例2の樹脂組成物では、フィルムを形成できなかった。
【0131】
[参考例1]
上述の実施例1~9、比較例1、2および参考例2における(樹脂組成物の作成)と同様の方法で、表2に従い配合された、参考例1のワニス状の樹脂組成物をそれぞれ得た。
参考例1のワニス状の樹脂組成物を、厚み25μmのポリイミド基材(UBE(株)製、製品名:ユーピレックス25S)上に乾燥後の厚みが10μmの膜厚となるようにアプリケーターを用いてワニス塗布した後、160℃で10分間乾燥を行い、最後にOPPカバーフィルム(王子エフテックス(株)製、製品名:E201F-50μm)を樹脂組成物により形成された樹脂層側の表面に貼り付けて参考例1のフィルムを得た。
【0132】
[実施例10~18および比較例3]
(コア層形成用ポリマーの合成)
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコーン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中にNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、Ni触媒を十分に撹拌して完全に溶解させ、Ni触媒溶液を得た。Ni触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入して室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、過酢酸水溶液を調製した。次に、過酢酸水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌して、Niの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後に水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、コア層形成用ポリマーを得た。
【0133】
コア層形成用ポリマーの分子量は、GPC測定した結果、Mw=10万、Mn=4万であった。また、コア層形成用ポリマー中の各構造単位のモル比は、NMR測定による同定の結果、ヘキシルノルボルネン構造単位が50モル%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50モル%であった。
【0134】
(コア層形成用樹脂組成物の調製)
精製した上記コア層形成用ポリマー10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメチルシクロヘキサン30g、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製、製品名:Irganox1076)0.01g、オキセタン化合物(東亜合成(株)製、製品名:OXT-212)2.4g、セロキサイド2021P(ダイセル(株)製)0.8g、光酸発生剤(サンアプロ(株)製、製品名:CPI-310B)0.03gを加えて均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、コア層形成用樹脂組成物を得た。
【0135】
(コア層の作製)
得られたコア層形成用樹脂組成物を、離型処理を施したPETフィルム上にアプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が40μmとなるように塗工した。塗工後、45℃の乾燥機に5分間投入し、溶媒を完全に除去して被膜とした。得られた被膜上に、直描型露光機(SCREEN(株)製、製品名:LS-9000)を用いて、露光量100mJ/cm2の紫外線を照射し、長さ9cm、幅50μmのラインアンドスペースを20本作成した。続いて150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には断面が矩形状をなす鮮明な導波路パターン(複数のコア部)が現れているのが確認された。
【0136】
(光電気複合基板の作製)
ステンレス製の板の上に両面銅張積層板を配置し、表3に記載の組み合わせにて、第1のクラッド層、コア層、第2のクラッド層の順に真空ラミネーターで積層し、積層体を得た。その際に基材のPETフィルムおよびOPPカバーフィルムは各種クラッドとコアが接するように適時排除し、ポリイミド基材のドライフィルムはそのまま最外層の基材として使用した。すなわち、得られた積層体の層構成は、「両面銅張積層板/第1のクラッド層/コア層/第2のクラッド層/ポリイミド基材」である。得られた積層体をオーブンにて160℃、2時間の条件で熱処理し、実施例10~18および比較例3の光電気複合基板を得た。
【0137】
[評価]
以下、実施例および比較例に対する評価方法を記載する。
【0138】
<樹脂層の複素粘度η*の測定>
実施例1~9および比較例1、2のフィルムに対して、樹脂組成物により形成された樹脂層の厚みが100μmとなるように、ラミネート機にて温度:30℃、圧力:1.0MPa、時間:120秒の条件で積層して複素粘度測定用のサンプルを得た。より具体的には、2枚のフィルムをラミネート処理して、樹脂層の厚みが50μmであるフィルムを2枚作成した後に、2枚の樹脂層の厚みが50μmであるフィルムをラミネート処理して、樹脂層の厚みが100μmであるサンプルを得た。複素粘度測定用のサンプルを得る際、基材のPETフィルムおよびOPPカバーフィルムは適宜排除した。
複素粘度測定用のサンプルを、粘弾性測定装置((株)アントンパール・ジャパン社製、製品名:MCH302)を用いて、周波数1rad/sec、10rad/sec、100rad/secの3つの周波数条件にて、23℃から200℃まで昇温速度3℃/minの条件で温度を変えながら溶融粘弾性を測定した。得られた結果より各周波数における100℃での複素粘度η*[Pa・s]および周波数10rad/secにおける複素粘度η*が最小となる温度[℃]を算出した。
【0139】
<硬化物の貯蔵弾性率E’およびガラス転移温度(Tg)の測定>
実施例1~9および比較例1、2のフィルムに対して、OPPカバーフィルムを剥がした後、樹脂組成物により形成された樹脂層同士が合わさるように2枚重ねとし、温度:100℃、圧力:0.5MPa、時間:2分の条件でラミネートした。さらに、そのままオーブンにて大気下、180℃で2時間硬化を行った後、両面の基材を剥離してDMA測定用サンプルを得た。
得られたDMA測定用サンプルについて、動的粘弾性測定装置(TA社製、製品名:Q800)を用い、窒素雰囲気下、周波数1Hz、引張りモード、サンプル間距離1cm、昇温速度5℃/分の条件で30℃から400℃まで加熱し、温度に対する貯蔵弾性率E’およびtanδを測定した。得られた貯蔵弾性率E’より、硬化物の200℃の貯蔵弾性率E’[GPa]を読み取った。また、得られたtanδのトップピークより、硬化物のガラス転移温度(Tg)[℃]を読み取った。
【0140】
<埋込性評価>
100μmΦのビア穴が開いた厚さ50μmの両面銅張積層板(CCL)を用意した。実施例1~9および比較例1、2のフィルムのOPPカバーフィルムを剥離し、樹脂組成物により形成された樹脂層側がCCL側にくるように、CCL上に貼り付けた後、ラミネーターにて温度:100℃、圧力:5.0MPa、時間:2分の条件でラミネートを実施した。得られた基板のビア穴について顕微鏡にて観察し、ボイドなく埋め込みできているサンプルをA、一部ボイドはあるが埋め込まれているサンプルをB、埋込みできていないサンプルをCとして評価した。
【0141】
<光損失評価>
実施例10~18および比較例3の光電気複合基板に対して、パターン部の長さが7cmとなるように両側をダイシングにてカットし、光損失評価用サンプルを得た。
光損失評価用サンプルについて、「高分子光導波路の試験方法(JPCA-PE02-05-01S-2008)」の4.6.2.1カットバック方法に準拠して、伝搬損失を評価した。なお、測定には波長850nmの光を用いた。得られた結果より、伝搬損失が1dB未満のサンプルをA、伝搬損失が1dB~3dBのサンプルをB、伝搬損失が3dBを超えたサンプルをCとして評価した。
【0142】
<ミラー角度変化率評価>
実施例10~18および比較例3の光電気複合基板のラインアンドスペース上にポリイミド基材側からエキシマレーザー(波長193nm、OPTEC社製、製品名:ProMaster)にてレーザー強度を7mJ、レーザー発振周波数を250Hz、レーザー光をカットするステンレスマスクの開口部が1mm×1mm、加工台の移動速度を45μm/s、加工台の移動距離を150μmに設定し、角度が約45度となるようにミラー加工を行った。得られたミラーについてレーザー顕微鏡にて測長を行い加工後のミラー角度(角度A)を算出した。続いて、ミラー加工済みの光導波路サンプルをN2リフロー装置にて最大温度250℃で3回処理を行い、再度ミラー角度(角度B)を測定した。リフロー前後のミラー角度の変化率を下記式から算出し、変化率が<1%のサンプルをA、変化率が1~3%のサンプルをB、変化率が3%を超えたサンプルをCとして評価した。
ミラー角度変化率[%]=[(角度A-角度B)/角度A]×100
【0143】
実施例1~9および比較例1、2に対する評価結果を表1および表2にそれぞれ示す。実施例10~18および比較例3に対する評価結果を表3にそれぞれ示す。なお、表中の評価結果の「-」は、未測定であることを意味する。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
表1および表2より、実施例のフィルムは、いずれも埋込性評価が良好であった。すなわち、本実施形態の樹脂組成物およびフィルムによれば、埋込性が向上することが理解できる。
また、表3より、実施例の光電気複合基板は、ミラー角度変形率が小さく、熱収縮を抑制できることが分かった。すなわち、本実施形態の樹脂組成物およびフィルムによれば、光導波路の熱収縮を抑制できることが理解できる。