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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145175
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】空調表示装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/50 20180101AFI20241004BHJP
【FI】
F24F11/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057428
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 眞由美
(72)【発明者】
【氏名】坂井 昌由加
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA73
3L260GA11
(57)【要約】
【課題】室内空間の快適性の評価結果を居住者が認識し易いように表示する。
【解決手段】空調表示装置は、室内空間の画像を取得する室内画像取得部2と、室内空間の快適性の度合を示す情報を推定する快適性情報取得部3と、快適性情報取得部3が快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、室内画像取得部2が取得した画像上の位置に変換して、変換後の座標の位置に快適性の度合いを表現するマークを配置した画像を生成する画像生成処理部4と、室内空間の画像上に、画像生成処理部4が生成したマークの画像が重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して表示する快適性情報表示部6を備える。画像生成処理部4は、快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほどマークが一定方向を向くように画像を生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間の画像を取得するように構成された室内画像取得部と、
前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定するように構成された快適性情報取得部と、
前記快適性情報取得部が前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記室内画像取得部が取得した画像上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成するように構成された画像生成処理部と、
前記室内画像取得部が取得した室内空間の画像上に、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像が重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して表示するように構成された快適性情報表示部とを備え、
前記画像生成処理部は、前記快適性情報取得部が取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成することを特徴とする空調表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の空調表示装置において、
前記室内画像取得部が取得した室内空間の画像上に、前記第1のマークの前記一定方向を認識し易くするための第2のマークを配置した画像を生成するように構成された補助画像生成処理部をさらに備え、
前記快適性情報表示部は、前記室内画像取得部が取得した室内空間の画像上に、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像と前記補助画像生成処理部が生成した第2のマークの画像とが重ねて表示されるように、これら3枚の画像を合成して表示することを特徴とする空調表示装置。
【請求項3】
室内空間に画像を投影する範囲である2次元の投影空間を確定するように構成された表示位置確定部と、
前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定するように構成された快適性情報取得部と、
前記快適性情報取得部が前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記表示位置確定部が確定した投影空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成するように構成された画像生成処理部と、
前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像を前記室内空間の壁面、床面または天井面に投影するように構成された快適性情報表示部とを備え、
前記画像生成処理部は、前記快適性情報取得部が取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成することを特徴とする空調表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の空調表示装置において、
前記表示位置確定部が確定した投影空間上に、前記第1のマークの前記一定方向を認識し易くするための第2のマークを配置した画像を生成するように構成された補助画像生成処理部をさらに備え、
前記快適性情報表示部は、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像と前記補助画像生成処理部が生成した第2のマークの画像とが重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して前記室内空間の壁面、床面または天井面に投影することを特徴とする空調表示装置。
【請求項5】
MRデバイスを装着したユーザが前記MRデバイスの透過型の表示パネルを通して見る室内空間の範囲である2次元の視野空間を確定するように構成された室内領域認識部と、
前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定するように構成された快適性情報取得部と、
前記快適性情報取得部が前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記室内領域認識部が確定した視野空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成するように構成された画像生成処理部と、
前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像を前記MRデバイスの透過型の表示パネルに表示させるように構成された快適性情報表示部とを備え、
前記画像生成処理部は、前記快適性情報取得部が取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成することを特徴とする空調表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の空調表示装置において、
前記室内領域認識部が確定した視野空間上に、前記第1のマークの前記一定方向を認識し易くするための第2のマークを配置した画像を生成するように構成された補助画像生成処理部をさらに備え、
前記快適性情報表示部は、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像と前記補助画像生成処理部が生成した第2のマークの画像とが重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して前記MRデバイスの透過型の表示パネルに表示させることを特徴とする空調表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の空調表示装置において、
前記第1のマークの方向を変化させるユーザによる操作を受け付けるように構成された方向操作入力部と、
前記方向操作入力部が受け付けたユーザによる方向操作を前記室内空間の空調に対する操作要求指示に変換して出力するように構成された操作指示出力部とをさらに備えることを特徴とする空調表示装置。
【請求項8】
室内空間の画像を取得する第1のステップと、
前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定する第2のステップと、
前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記第1のステップで取得した画像上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成する第3のステップと、
前記第1のステップで取得した室内空間の画像上に、前記第3のステップで生成した第1のマークの画像が重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して表示する第4のステップとを含み、
前記第3のステップは、前記第2のステップで取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成するステップを含むことを特徴とする空調表示方法。
【請求項9】
室内空間に画像を投影する範囲である2次元の投影空間を確定する第1のステップと、
前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定する第2のステップと、
前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記第1のステップで確定した投影空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成する第3のステップと、
前記第3のステップで生成した第1のマークの画像を前記室内空間の壁面、床面または天井面に投影する第4のステップとを含み、
前記第3のステップは、前記第2のステップで取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成するステップを含むことを特徴とする空調表示方法。
【請求項10】
MRデバイスを装着したユーザが前記MRデバイスの透過型の表示パネルを通して見る室内空間の範囲である2次元の視野空間を確定する第1のステップと、
前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定する第2のステップと、
前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記第1のステップで確定した視野空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成する第3のステップと、
前記第3のステップで生成した第1のマークの画像を前記MRデバイスの透過型の表示パネルに表示させる第4のステップとを含み、
前記第3のステップは、前記第2のステップで取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成するステップを含むことを特徴とする空調表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間の快適性の評価結果を表示する空調表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物内空調の対象となる居住環境の温熱快適性は、体感温度で示される温度感、暑い/寒いといった居住者の温冷感、室内環境への不満足度/満足度などで評価される。そこで、快適性の分布状況の表示方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された表示方法は、実態評価を適用する際の室内環境管理画面に、実態評価での評価結果に加え、一律の基準での空調制御状態(空調状態)を示す一律評価での評価結果を、比較可能なように同時に表示するものである。これにより、居住者の感じ方の実態に合った快適性評価結果を提示しながら、空調システム不具合の発見が遅れるなどの支障が発生する可能性を低減できる。
【0004】
ただし、特許文献1に開示された表示方法は、設備管理者が監視する室内環境管理画面などに情報を表示することを想定しており、空調の運用管理に有効活用できる情報を設備管理者に提供することを目的としているので、空調の運用管理の専門家ではない居住者に情報を提供することを想定していない。
【0005】
居住者に快適性の状況を認識させるようにすれば、居住者の適切な操作行動が促進されることが期待できる。したがって、室内空間の快適性の状況を表す情報を居住者が認識し易いように提供することは重要なことであり、常に改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-196616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、室内空間の快適性の評価結果を居住者が認識し易いように表示することができる空調表示装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空調表示装置は、室内空間の画像を取得するように構成された室内画像取得部と、前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定するように構成された快適性情報取得部と、前記快適性情報取得部が前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記室内画像取得部が取得した画像上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成するように構成された画像生成処理部と、前記室内画像取得部が取得した室内空間の画像上に、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像が重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して表示するように構成された快適性情報表示部とを備え、前記画像生成処理部は、前記快適性情報取得部が取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の空調表示装置の1構成例は、前記室内画像取得部が取得した室内空間の画像上に、前記第1のマークの前記一定方向を認識し易くするための第2のマークを配置した画像を生成するように構成された補助画像生成処理部をさらに備え、前記快適性情報表示部は、前記室内画像取得部が取得した室内空間の画像上に、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像と前記補助画像生成処理部が生成した第2のマークの画像とが重ねて表示されるように、これら3枚の画像を合成して表示することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の空調表示装置は、室内空間に画像を投影する範囲である2次元の投影空間を確定するように構成された表示位置確定部と、前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定するように構成された快適性情報取得部と、前記快適性情報取得部が前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記表示位置確定部が確定した投影空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成するように構成された画像生成処理部と、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像を前記室内空間の壁面、床面または天井面に投影するように構成された快適性情報表示部とを備え、前記画像生成処理部は、前記快適性情報取得部が取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の空調表示装置の1構成例は、前記表示位置確定部が確定した投影空間上に、前記第1のマークの前記一定方向を認識し易くするための第2のマークを配置した画像を生成するように構成された補助画像生成処理部をさらに備え、前記快適性情報表示部は、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像と前記補助画像生成処理部が生成した第2のマークの画像とが重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して前記室内空間の壁面、床面または天井面に投影することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の空調表示装置は、MRデバイスを装着したユーザが前記MRデバイスの透過型の表示パネルを通して見る室内空間の範囲である2次元の視野空間を確定するように構成された室内領域認識部と、前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定するように構成された快適性情報取得部と、前記快適性情報取得部が前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記室内領域認識部が確定した視野空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成するように構成された画像生成処理部と、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像を前記MRデバイスの透過型の表示パネルに表示させるように構成された快適性情報表示部とを備え、前記画像生成処理部は、前記快適性情報取得部が取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の空調表示装置の1構成例は、前記室内領域認識部が確定した視野空間上に、前記第1のマークの前記一定方向を認識し易くするための第2のマークを配置した画像を生成するように構成された補助画像生成処理部をさらに備え、前記快適性情報表示部は、前記画像生成処理部が生成した第1のマークの画像と前記補助画像生成処理部が生成した第2のマークの画像とが重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して前記MRデバイスの透過型の表示パネルに表示させることを特徴とするものである。
また、本発明の空調表示装置の1構成例は、前記第1のマークの方向を変化させるユーザによる操作を受け付けるように構成された方向操作入力部と、前記方向操作入力部が受け付けたユーザによる方向操作を前記室内空間の空調に対する操作要求指示に変換して出力するように構成された操作指示出力部とをさらに備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の空調表示方法は、室内空間の画像を取得する第1のステップと、前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定する第2のステップと、前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記第1のステップで取得した画像上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成する第3のステップと、前記第1のステップで取得した室内空間の画像上に、前記第3のステップで生成した第1のマークの画像が重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して表示する第4のステップとを含み、前記第3のステップは、前記第2のステップで取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成するステップを含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の空調表示方法は、室内空間に画像を投影する範囲である2次元の投影空間を確定する第1のステップと、前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定する第2のステップと、前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記第1のステップで確定した投影空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成する第3のステップと、前記第3のステップで生成した第1のマークの画像を前記室内空間の壁面、床面または天井面に投影する第4のステップとを含み、前記第3のステップは、前記第2のステップで取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成するステップを含むことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の空調表示方法は、MRデバイスを装着したユーザが前記MRデバイスの透過型の表示パネルを通して見る室内空間の範囲である2次元の視野空間を確定する第1のステップと、前記室内空間の環境計測値に基づいて前記室内空間の快適性の度合を示す情報を推定する第2のステップと、前記快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、前記第1のステップで確定した視野空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に前記快適性の度合いを表現する第1のマークを配置した画像を生成する第3のステップと、前記第3のステップで生成した第1のマークの画像を前記MRデバイスの透過型の表示パネルに表示させる第4のステップとを含み、前記第3のステップは、前記第2のステップで取得した情報が示す快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、前記第1のマークが一定方向を向くように画像を生成するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、室内画像取得部と快適性情報取得部と画像生成処理部と快適性情報表示部とを設けることにより、拡張現実の要素を取り入れて情報を表示する構成において、室内空間の快適性の評価結果をユーザ(居住者)が認識し易いように表示することができる。本発明では、画像を見たユーザの適切な操作行動が促進されることが期待できる。
【0018】
また、本発明では、表示位置確定部と快適性情報取得部と画像生成処理部と快適性情報表示部とを設けることにより、室内空間の壁面などに表示する構成において、室内空間の快適性の評価結果をユーザが認識し易いように表示することができる。
【0019】
また、本発明では、室内領域認識部と快適性情報取得部と画像生成処理部と快適性情報表示部とを設けることにより、MRデバイスを活用する構成において、室内空間の快適性の評価結果をユーザが認識し易いように表示することができる。
【0020】
また、本発明では、補助画像生成処理部を設けることにより、ユーザの適切な操作行動をより効果的に促すことができる。
【0021】
また、本発明では、方向操作入力部と操作指示出力部とを設けることにより、室内空間の空調に対する要求を、空調のコントローラに送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る空調表示装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る空調表示装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の第1の実施例に係る空調表示装置の表示例を示す図である。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係る空調表示装置の表示例を示す図である。
図5図5は、本発明の第1の実施例に係る空調表示装置の表示例を示す図である。
図6図6は、本発明の第2の実施例に係る空調表示装置の構成を示すブロック図である。
図7図7は本発明の第2の実施例に係る空調表示装置の動作を説明するフローチャートである。
図8図8は、本発明の第2の実施例において室内空間の壁面に投影された画像の例を示す図である。
図9図9は、本発明の第3の実施例に係る空調表示装置の構成を示すブロック図である。
図10図10は、本発明の第3の実施例に係る空調表示装置の動作を説明するフローチャートである。
図11図11は、本発明の第3の実施例においてユーザがMRデバイスを通して見る室内空間と、室内空間に重なるようにして表示されるマークの画像の例を示す図である。
図12図12は、本発明の第3の実施例においてユーザがMRデバイスを通して見る室内空間と、室内空間に重なるようにして表示されるマークの画像の別の例を示す図である。
図13図13は、本発明の第1~第3の実施例に係る空調表示装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[発明の原理1]
本発明は、室内空間の快適性の状況を表す情報を、室内空間の具体的な位置の認識と併せて表示する。具体的には、室内空間の壁面、床面、天井面などに直接表示したり(プロジェクション)、拡張現実(AR:Augmented Reality)や複合現実(MR:Mixed Reality)の要素を取り入れて表示したりする。これにより、室内空間の具体的な位置を視認することが容易になるので、表示する画像に認識し易さの要素を加える必要がある。室内空間の快適性の分布状況を想定した場合、複数の画像を並べる表示になることに、発明者は着眼した。
【0024】
そして、快適性の度合いを表現する棒状画像などのマークを複数表示し、例えば快適性が好ましい状況にある場合は、棒状画像が一定方向に向くように規定することに、発明者は想到した。例えば、好ましい方向は棒状画像を立てる側とする。
【0025】
室内空間が空調されていれば、全般的には棒状画像は縦方向などの一定の傾向になる筈である。複数の棒状画像が多くなれば、あるいは窓枠などの背景の縦方向の線があれば、デザイン心理学的な効果も現れ易くなり、一定の傾向に注目させる効果に繋がる。その結果、逆に棒状画像の方向が一致しない度合で、室内空間の快適性が好ましい状況から外れていることを認識し易くなる。なお、デザイン心理学的な効果については、例えば文献I「BB STONEデザイン心理学研究所著,日比野治雄監修,“よくわかるデザイン心理学”,日刊工業新聞社,2020年」で説明されている。
【0026】
[発明の原理2]
一定の傾向を認識することで、逆に方向が一致しない度合を認識し易くなるのであれば、表示されている棒状画像を立てたくなるというナッジの効果が期待できる。ナッジの効果については、文献Iで説明されている。したがって、棒状画像を立てさせる操作を、適切な操作行動というように規定すれば、適切な操作行動を促すことができる。
【0027】
そこで、棒状画像の一定の傾向をより認識させる補助画像をさらに加えることが有効であることに、発明者は想到した。例えば、棒状画像を立てたくなる心理にするために、縦方向の直線を認識させる補助画像を加えればよい。これにより、主観的輪郭などの効果を得やすくできる。主観的輪郭については、文献Iや、特許第6086263号公報で説明されている。
なお,ARの背景画像に依存して縦方向が認識しにくくなる場合において、補助画像により正しい縦方向を示すことになるので、縦方向の誤認識を低減する効果も期待できる。
【0028】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。本実施例は、ARの要素を取り入れて情報を表示する例であり、スマートフォンを表示用デバイスとして活用する例として説明する。つまり、一連の構成要素や処理は、スマートフォンのアプリケーションとして実現されるものとする。
【0029】
図1は本実施例に係る空調表示装置の構成を示すブロック図である。空調表示装置1は、室内空間の画像を取得する室内画像取得部2と、室内空間の環境計測値に基づいて室内空間の快適性の度合を示す情報を推定する快適性情報取得部3と、快適性情報取得部3が快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、室内画像取得部2が取得した画像上の位置に変換して、変換後の座標の位置に快適性の度合いを表現するマークを配置した画像を生成する画像生成処理部4と、室内画像取得部2が取得した室内空間の画像上に、マークの一定方向を認識し易くするための補助マークを配置した画像を生成する補助画像生成処理部5と、室内画像取得部2が取得した室内空間の画像上に、画像生成処理部4が生成した画像と補助画像生成処理部5が生成した画像とが重ねて表示されるように、これら3枚の画像を合成して表示する快適性情報表示部6と、表示されたマークの方向を変化させるユーザによる操作を受け付ける方向操作入力部7と、方向操作入力部7が受け付けたユーザによる方向操作を室内空間の空調に対する操作要求指示に変換して出力する操作指示出力部8とを備えている。
【0030】
室内画像取得部2と快適性情報取得部3と画像生成処理部4と快適性情報表示部6とは、発明の原理1に対応し、補助画像生成処理部5は、発明の原理2に対応し、方向操作入力部7と操作指示出力部8とは、発明の原理1、2に対応する追加機能を実現する。
【0031】
図2は本実施例の空調表示装置1の動作を説明するフローチャートである。室内画像取得部2は、室内空間の画像を取得する(図2ステップS100)。本実施例のように空調表示装置1をスマートフォンによって実現する場合、室内画像取得部2は、スマートフォンのカメラによって撮影された画像を取得する。
【0032】
快適性情報取得部3は、室内空間の環境計測値に基づいて、室内空間の温熱快適性の度合を示す情報を取得する(図2ステップS101)。
本実施例では、室内空間に環境計測デバイス(温湿度センサ)が設置されていることが望ましい。快適性情報取得部3は、室内空間に設置された環境計測デバイスから室内環境計測値(温度、湿度など)を例えば無線通信によって受信し、受信した室内環境計測値と室内空間における環境計測デバイスの既知の3次元座標とを関連付けて環境量として保持する。
【0033】
快適性情報取得部3は、取得した環境量に基づいて、室内空間の温度分布と湿度分布とを推定する。温度分布と湿度分布を推定する方法については、例えば文献「三浦太樹他,“在室者の温熱快適性把握のためのスポット室温予測手法”,第24回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集,2016年」や特開2017-194231号公報に開示されている。そして、快適性情報取得部3は、室内空間を予め定められた分割ルールに従って例えば3次元メッシュ分割で分割し、分割した領域内の温度分布と湿度分布とに基づいて、室内空間の温熱快適性の度合を示す情報を、分割した領域毎に推定する。
【0034】
温熱快適性の度合を示す情報としては、例えばPMV(予測平均温冷感申告:Predicted Mean Vote)がある。PMVの算出方法は、国際規格で定められている。PMVの算出に必要なパラメータ値が温度分布と湿度分布から取得できない場合は、従来行われている方法、つまりパラメータ値に一般的な代表値を使用すればよく、パラメータ値を算出方法の情報と共に快適性情報取得部3に予め設定しておけばよい。
【0035】
PMVの算出には、空気温度、湿度、放射温度、風速、着衣量、代謝量の6要素の値が必要となる。空気温度と湿度とは温度分布と湿度分布から取得できる。例えばデスクワークが主の夏季の静穏環境のオフィスでは、一般的に放射温度を空気温度と等しい値とし、風速を0.1[m/s]、着衣量を0.6[clo]、代謝量を1.0[met]と設定しておけばよい。
【0036】
画像生成処理部4は、快適性情報取得部3が温熱快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を室内画像取得部2が取得した画像上の位置に変換し、快適性情報取得部3が推定した情報に基づいて、変換後の位置に温熱快適性の度合いを表現するマークを配置した快適性表現画像を生成する(図2ステップS102)。
【0037】
具体的には、画像生成処理部4は、ワールド座標系における空調表示装置1の座標と、空調表示装置1のカメラがどこを向いているかを示す注視点座標とを取得する。空調表示装置1をスマートフォンによって実現する場合には、スマートフォンが有する測位手段(例えばGNSS(Global Navigation Satellite System))によって空調表示装置1の3次元座標を取得できる。
【0038】
また、空調表示装置1をスマートフォンによって実現する場合には、スマートフォンが有するセンサによって空調表示装置1の姿勢情報(ヨー、ロール、ピッチ)を取得できるので、空調表示装置1のカメラが向いている方向を推定できる。画像生成処理部4は、空調表示装置1の3次元座標と、カメラが向いている方向と、室内空間の壁面と床面と天井面の既知の3次元座標とから、空調表示装置1のカメラが室内空間のどこを向いているかを示す注視点座標を推定することが可能である。
【0039】
画像生成処理部4は、空調表示装置1の3次元座標と注視点座標とカメラの既知の画角とカメラの既知の焦点距離と既知の画面のサイズとに基づいて、室内画像取得部2が取得した画像の範囲である2次元の視野空間を求め、快適性情報取得部3が温熱快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を示す3次元座標を視野空間上の座標に変換して、変換後の座標の位置に室内空間の温熱快適性の度合いを表現するマークを配置する。このようなマークの配置を、快適性情報取得部3が温熱快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置毎に行う。
【0040】
本実施例では、室内空間の温熱快適性の度合いを表現するマークを棒状画像とする。画像生成処理部4は、快適性情報取得部3が取得した情報が示す温熱快適性の度合いが好ましい状況にある場合ほど、表示される棒状画像が一定方向(本実施例では画像生成処理部4が視野空間に対応して生成した画像における垂直方向)を向くようにする。
【0041】
また、画像生成処理部4は、快適性情報取得部3が取得した情報が示す不快の度合いが強いほど、一定方向から傾くようにする。具体的には、画像生成処理部4は、「暑い」という度合いが強いほど棒状画像が垂直方向から右に傾くようにし、「寒い」という度合いが強いほど棒状画像が垂直方向から左に傾くようにする。
【0042】
一方、補助画像生成処理部5は、室内画像取得部2が取得した画像の範囲である2次元の視野空間上に、棒状画像の上記一定方向を認識し易くするための補助マークを配置した画像を生成する(図2ステップS103)。
【0043】
画像生成処理部4が生成した画像における垂直方向を一定方向とする場合、縦方向の直線を認識させる補助マークとして、垂直方向を向くように配置されるダミーの棒状画像や、縦縞模様の画像などが有効である。補助画像生成処理部5は、予め定められた配置ルールに従って補助マークを配置する。配置ルールでは、補助マークの位置、間隔、個数、色等が定義されている。
【0044】
快適性情報表示部6は、室内画像取得部2が取得した室内空間の画像上に、画像生成処理部4が生成したマークの画像と補助画像生成処理部5が生成した補助マークの画像とが重ねて表示されるように、これら3枚の画像を合成して表示する(図2ステップS104)。
【0045】
方向操作入力部7は、空調表示装置1の画面に表示されたマークの方向を変化させるユーザ(居住者)による操作(空調に対する要求)を受け付ける(図2ステップS105)。空調表示装置1がスマートフォンの場合には、スマートフォンのタッチパネル機能付きの表示器21に画像が表示されているので、表示されているマークにユーザが指で触れた状態で、指をひねって向きを変えるような操作をすれば、ユーザの要求を空調表示装置1に入力することが可能である。
【0046】
操作指示出力部8は、方向操作入力部7が受け付けたユーザによる方向操作を空調に対する操作要求指示に変換して出力する(図2ステップS106)。
例えば表示された画面でマーク(棒状画像)が右側に傾いている場合は、「暑い」という評価結果を示している。ユーザは、室内空間が快適になるようにマークを操作する(マークを垂直方向に立てる)ことで、暑さを緩和する要求を入力することが可能である。反対に、マークが左側に傾いている場合は、「寒い」という評価結果を示している。ユーザは、マークを垂直方向に立てる操作を行うことで、寒さを緩和する要求を入力することが可能である。
【0047】
操作指示出力部8は、ユーザが右側に傾いているマークを垂直方向に立てる操作をした場合、室内空間の空調のコントローラに対して室温設定値を下げる指示信号を送信する。空調表示装置1をスマートフォンによって実現する場合には、指示信号を無線通信によって送信することになる。指示信号には、室温設定値の予め定められた下げ幅を指定する情報が含まれていてもよい。あるいは、室温設定値を下げる指示だけをコントローラに送信し、コントローラが指示に応じて室温設定値を所定の温度幅だけ下げるようにしてもよい。
【0048】
また、操作指示出力部8は、ユーザが左側に傾いているマークを垂直方向に立てる操作をした場合、コントローラに対して室温設定値を上げる指示信号を送信する。指示信号には、室温設定値の予め定められた上げ幅を指定する情報が含まれていてもよい。あるいは、室温設定値を上げる指示だけをコントローラに送信し、コントローラが指示に応じて室温設定値を所定の温度幅だけ上げるようにしてもよい。
【0049】
空調表示装置1は、ユーザから例えばアプリケーションの終了指示があるまで(図2ステップS107においてYES)、ステップS100~S106の処理を実行する。
ユーザが空調表示装置1のカメラの向きを変えると、表示される画像も変化することは言うまでもない。
【0050】
図3は、空調表示装置1の表示例を示す図である。空調表示装置1の画面には、空調表示装置1が取得した室内空間(オフィス)の画像が表示されている。室内空間の6箇所について室内空間の温熱快適性の度合を示すPMVが推定され、その6箇所に対応する画像上の位置に6個のマーク10(棒状画像)が表示されている。PMVの推定結果が暑く感じる側であるほどマーク10が右側に傾いており、寒く感じる側であるほどマーク10が左側に傾いている。ただし、マーク10を傾ける度合は適宜設計変更するべき事項である。
【0051】
複数のマーク10や室内空間の窓枠などの背景の縦方向の線により、全般的に縦方向が一定の傾向になる。その結果、逆に方向が一致しない度合で、温熱快適性が好ましい状況から外れていることを認識し易くなる。表示されているマーク10にユーザが指で触れた状態で、指をひねって向きを変えるような操作をすれば、ユーザの要求を空調表示装置1に入力することが可能である。
【0052】
なお、図3では、表示を分かり易くするためにマーク10を黒で描画しているが、マーク10の位置の局所的室温(温度分布から得られた推定値)を、マーク10の色で表すようにしてもよい。
【0053】
図4は、図3の表示例にさらに、補助マーク11としてダミーの棒状画像を加えた表示例を示している。矩形の板状のパネルに棒状画像が規則正しく並んでいるような錯視効果(主観的輪郭)を狙ったものであり、図3の場合よりも縦方向に規則正しさを感じさせることで、快適側への操作を促進する効果(ナッジ効果)が期待できる。
【0054】
図5は、図3の表示例にさらに、補助マーク11として縦縞模様の透過画像を加えた表示例である。矩形の板状のパネルを拡張現実ARの要素として表示し、図3の場合よりも縦方向に規則正しさを感じさせることで、快適側への操作を促進する効果(ナッジ効果)が期待できる。
【0055】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、室内空間の壁面などに直接表示するプロジェクションの例であり、建物内に固定設置するタイプのプロジェクタなどを活用する例として説明する。つまり、一連の構成要素や処理は、プロジェクタおよびこれと連携する情報処理装置として実現されるものとする。
【0056】
図6は本実施例に係る空調表示装置の構成を示すブロック図である。本実施例の空調表示装置1aは、室内空間に画像を投影する範囲である2次元の投影空間を確定する表示位置確定部9と、快適性情報取得部3と、快適性情報取得部3が快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、表示位置確定部9が確定した投影空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に快適性の度合いを表現するマークを配置した画像を生成する画像生成処理部4aと、表示位置確定部9が確定した投影空間上に、マークの一定方向を認識し易くするための補助マークを配置した画像を生成する補助画像生成処理部5aと、画像生成処理部4aが生成した画像と補助画像生成処理部5aが生成した画像とが重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成して室内空間の壁面、床面または天井面に投影する快適性情報表示部6aと、方向操作入力部7aと、操作指示出力部8と、プロジェクタ22とを備えている。
【0057】
図6の例では、他の構成要素と別にプロジェクタ22を記載しているが、表示位置確定部9と快適性情報取得部3と画像生成処理部4aと補助画像生成処理部5aと快適性情報表示部6aと方向操作入力部7aと操作指示出力部8とをプロジェクタ22に設けるようにしてもよい。
【0058】
図7は本実施例の空調表示装置1aの動作を説明するフローチャートである。表示位置確定部9は、室内空間に画像を投影する範囲である2次元の投影空間を確定する(図7ステップS200)。プロジェクタ22を室内空間の特定の方向に向けて設置することで、ワールド座標系におけるプロジェクタ22の3次元座標と、プロジェクタ22がどこを向いているかを示す投影点の3次元座標とは既知の値となる。
【0059】
表示位置確定部9は、プロジェクタ22の3次元座標と、投影点の3次元座標と、プロジェクタ22の画角と、室内空間の壁面と床面と天井面の既知の3次元座標とから、空調表示装置1aがプロジェクタ22によって室内空間の壁面、床面または天井面に画像を投影する範囲である2次元の投影空間を確定することが可能である。
【0060】
快適性情報取得部3は、第1の実施例と同様に、室内空間の環境計測値に基づいて、室内空間の温熱快適性の度合を示す情報を取得する(図7ステップS201)。
【0061】
画像生成処理部4aは、快適性情報取得部3が温熱快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を示す3次元座標を、表示位置確定部9が確定した2次元の投影空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に室内空間の温熱快適性の度合いを表現するマークを配置した快適性表現画像を生成する(図7ステップS202)。
【0062】
このようなマークの配置を、快適性情報取得部3が温熱快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置毎に行う。第1の実施例と同様に、室内空間の温熱快適性の度合いを表現するマークを棒状画像とし、温熱快適性の度合いに応じて棒状画像の方向を変える。
【0063】
一方、補助画像生成処理部5aは、表示位置確定部9が確定した2次元の投影空間上に、棒状画像の上記一定方向を認識し易くするための補助マークを配置した画像を生成する(図7ステップS203)。補助画像生成処理部5aは、予め定められた配置ルールに従って補助マークを配置する。
【0064】
快適性情報表示部6aは、画像生成処理部4aが生成したマークの画像と補助画像生成処理部5が生成した補助マークの画像とが重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成し、合成した画像をプロジェクタ22によって室内空間の壁面、床面または天井面に投影させる(図7ステップS204)。こうして、表示位置確定部9が確定した投影空間の範囲に画像が投影される。
【0065】
方向操作入力部7aは、室内空間の壁面、床面または天井面に投影されたマークの方向を変化させるユーザ(居住者)による操作(空調に対する要求)を受け付ける(図7ステップS205)。ただし、スマートフォンのタッチパネルを活用する場合とは異なり、通常のプロジェクタは表示機能のみに留まる。そこで、特開2022-130496号公報に示されるような入力装置などを活用すればよい。
【0066】
操作指示出力部8は、第1の実施例と同様に、方向操作入力部7aが受け付けたユーザによる方向操作を空調に対する操作要求指示に変換して出力する(図7ステップS206)。
空調表示装置1aは、ユーザから例えばアプリケーションの終了指示があるまで(図7ステップS207においてYES)、ステップS200~S206の処理を実行する。
【0067】
図8は、室内空間の壁面に投影された画像の例を示す図である。室内空間12の3箇所について室内空間の温熱快適性の度合を示すPMVが推定され、その3箇所に対応する投影空間上の位置に3個のマーク10a(棒状画像)が投影されている。第1の実施例と同様に、マーク10aの位置の局所的室温(温度分布から得られた推定値)を、マーク10aの色で表すようにしてもよい。
【0068】
なお、本実施例のように室内空間の壁面、床面または天井面に画像を投影する場合は、継続的に常時投影しなくてもよい。予め決められた時刻に、予め決められた時間だけ投影するなど、適宜調整すればよい。
【0069】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は、MRの例であり、眼鏡型のスマートグラスを表示用デバイス(MRデバイス)として活用する例として説明する。つまり、一連の構成要素や処理は、スマートグラスおよびこれと連携する情報処理装置として実現されるものとする。
【0070】
図9は本実施例に係る空調表示装置の構成を示すブロック図である。本実施例の空調表示装置1bは、MRデバイスを装着したユーザがMRデバイスの透過型の表示パネルを通して見る室内空間の範囲である2次元の視野空間を確定する室内領域認識部20と、快適性情報取得部3と、快適性情報取得部3が快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を、室内領域認識部20が確定した視野空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に快適性の度合いを表現するマークを配置した画像を生成する画像生成処理部4bは、室内領域認識部20が確定した視野空間上に、マークの一定方向を認識し易くするための補助マークを配置した画像を生成する補助画像生成処理部5bと、画像生成処理部4bが生成した画像と補助画像生成処理部5bが生成した画像とが重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成してMRデバイスの透過型の表示パネルに表示させる快適性情報表示部6bと、方向操作入力部7bと、操作指示出力部8と、MRデバイス23とを備えている。
【0071】
図9の例では、他の構成要素と別にMRデバイス23を記載しているが、室内領域認識部20と快適性情報取得部3と画像生成処理部4bと補助画像生成処理部5bと快適性情報表示部6bと方向操作入力部7bと操作指示出力部8とをMRデバイス23に設けるようにしてもよい。
【0072】
図10は本実施例の空調表示装置1bの動作を説明するフローチャートである。室内領域認識部20は、MRデバイス23を装着したユーザが両目の前にあるMRデバイス23の透過型の表示パネル(例えば液晶パネル)を通して見る室内空間の範囲である2次元の視野空間を確定する(図10ステップS300)。
【0073】
具体的には、室内領域認識部20は、ワールド座標系におけるMRデバイス23の座標と、MRデバイス23がどこを向いているかを示す注視点座標とを取得する。MRデバイス23の3次元座標は、MRデバイス23が有する測位手段(例えばGNSS)によって取得できる。また、MRデバイス23が有するセンサによってMRデバイス23の姿勢情報(ヨー、ロール、ピッチ)を取得できるので、MRデバイス23が向いている方向を推定できる。
【0074】
室内領域認識部20は、MRデバイス23の3次元座標と、MRデバイス23が向いている方向と、室内空間の壁面と床面と天井面の既知の3次元座標とから、MRデバイス23が室内空間のどこを向いているかを示す注視点座標を推定することが可能である。
【0075】
続いて、室内領域認識部20は、MRデバイス23の3次元座標と注視点座標とユーザの視野角と、室内空間の壁面と床面と天井面の既知の3次元座標とから、MRデバイス23を装着したユーザがMRデバイス23を通して見る室内空間の範囲である2次元の視野空間を求める。なお、ユーザの視野角としては、既知の値、具体的には人の視野角の標準的な値を使用する。
【0076】
快適性情報取得部3は、第1の実施例と同様に、室内空間の環境計測値に基づいて、室内空間の温熱快適性の度合を示す情報を取得する(図10ステップS301)。
【0077】
画像生成処理部4bは、快適性情報取得部3が温熱快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置を示す3次元座標を、室内領域認識部20が確定した2次元の視野空間上の位置に変換して、変換後の座標の位置に室内空間の温熱快適性の度合いを表現するマークを配置した快適性表現画像を生成する(図10ステップS302)。このようなマークの配置を、快適性情報取得部3が温熱快適性の度合を示す情報を推定した室内空間上の位置毎に行う。
【0078】
第1の実施例と同様に、室内空間の温熱快適性の度合いを表現するマークを棒状画像とし、温熱快適性の度合いに応じて棒状画像の方向を変える。また、室内空間の温熱快適性の度合いを表現するマークの別の例として、人形画像が考えられる。棒状画像の場合と同様に、温熱快適性の度合いに応じて人形画像の方向を変える。
【0079】
補助画像生成処理部5bは、室内領域認識部20が確定した2次元の視野空間上に、棒状画像または人形画像の上記一定方向を認識し易くするための補助マークを配置した画像を生成する(図10ステップS303)。補助画像生成処理部5bは、予め定められた配置ルールに従って補助マークを配置する。
【0080】
快適性情報表示部6bは、画像生成処理部4bが生成したマークの画像と補助画像生成処理部5bが生成した補助マークの画像とが重ねて表示されるように、これら2枚の画像を合成してMRデバイス23の透過型の表示パネルに表示させる(図10ステップS304)。
【0081】
方向操作入力部7bは、表示されたマークの方向を変化させるユーザによる操作(空調に対する要求)を受け付ける(図10ステップS305)。MRデバイス23と連携する情報処理装置としては、特開2022-130496号公報に示されるような入力装置などを活用すればよい。
【0082】
操作指示出力部8は、第1の実施例と同様に、方向操作入力部7bが受け付けたユーザによる方向操作を空調に対する操作要求指示に変換して出力する(図10ステップS306)。
【0083】
空調表示装置1bは、ユーザから例えばアプリケーションの終了指示があるまで(図10ステップS307においてYES)、ステップS300~S306の処理を実行する。
MRデバイス23を装着したユーザが姿勢を変えると、ユーザがMRデバイス23を通して見る室内空間の範囲が変わり、MRデバイス23に表示されるマークの画像も変化することは言うまでもない。
【0084】
図11は、ユーザがMRデバイス23を通して見る室内空間と、室内空間に重なるようにして表示されるマークの画像の例を示す図である。室内空間の8箇所について室内空間の温熱快適性の度合を示すPMVが推定され、その8箇所に対応する視野空間上の位置に8個のマーク10b(棒状画像)が表示されている。
【0085】
図12は、ユーザがMRデバイス23を通して見る室内空間と、室内空間に重なるようにして表示されるマークの画像の別の例を示す図である。室内空間の8箇所について室内空間の温熱快適性の度合を示すPMVが推定され、その8箇所に対応する視野空間上の位置に8個のマーク10b(人形画像)が表示されている。図12のように片足で立つ人間のイメージ画像をマーク10bとすることにより、前述のナッジ効果をさらに促進することが期待できる。
【0086】
なお、図11図12では、表示を分かり易くするためにマーク10bを白で描画しているが、ユーザが認識し易い色であればよく、また第1の実施例と同様に、マーク10bの位置の局所的室温(温度分布から得られた推定値)を、マーク10bの色で表すようにしてもよい。
【0087】
第1~第3の実施例で説明した空調表示装置1,1a,1bは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図13に示す。
【0088】
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インターフェース装置(I/F)302とを備えている。第1の実施例の空調表示装置1の場合、I/F302には、スマートフォンのハードウェア(カメラ、センサ、タッチパネル機能付きの表示器21、測位手段)等が接続される。第2の実施例の空調表示装置1aの場合、I/F302には、プロジェクタ22、方向操作入力部7aと操作指示出力部8のハードウェア等が接続される。第3の実施例の空調表示装置1bの場合、I/F302には、MRデバイス23、方向操作入力部7bと操作指示出力部8のハードウェア等が接続される。
【0089】
本発明の方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1~第3の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、室内空間の快適性を評価して評価結果を表示する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1,1a,1b…空調表示装置、2…室内画像取得部、3…快適性情報取得部、4,4a,4b…画像生成処理部、5,5a,5b…補助画像生成処理部、6,6a,6b…快適性情報表示部、7,7a,7b…方向操作入力部、8…操作指示出力部、9…表示位置確定部、20…室内領域認識部、21…表示器、22…プロジェクタ、23…MRデバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13