(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145220
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20241004BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057479
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】福島 啓介
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD08
4F202AD29
4F202AG03
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB13
4F202CK84
4F202CN01
4F202CQ06
4F206AD08
4F206AD29
4F206AG03
4F206JA03
4F206JB13
4F206JF05
4F206JF23
4F206JL02
4F206JM04
4F206JM05
4F206JN12
4F206JN25
4F206JQ81
4F206JW23
(57)【要約】
【課題】加飾体を備えた樹脂製品を最小工程をもって適切に得られるようにする。
【解決手段】可動型2と固定型3との間に一定の長さ分の加飾体Fを位置させる第一ステップと、前記加飾体Fを一定の温度に加熱する第二ステップと、前記加熱を行いながら又は前記加熱後に負圧作用部に負圧を作用させて前記加飾体Fを前記可動型2に吸着させる第三ステップと、前記金型1を前記加飾体Fの厚さ相当分の隙間を開けた半閉状態として一つの前記製品Mを構成する前記樹脂Rの大部分を注入する第四ステップと、前記第四ステップ後に、金型1を全閉状態として、前記可動型2に形成された刃体2fと前記固定型3に形成された刃体3dとの共働により前記加飾体Fを所定の形状に切断し且つ前記形状となった前記加飾体Fの縁部を前記製品成形空間4側に誘導すると共に、前記ゲート3bより前記製品Mを構成する前記樹脂Rの残量を注入する第五ステップとを含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品成形空間に臨んだ可動型の内面に、加熱により軟化する性質を持った樹脂製のフィルム状又はシート状をなす加飾体を密着させた状態で、固定型に設けられたゲートより前記製品成形空間内に溶融した樹脂を注入して、前記加飾体を備えた樹脂製品を生成する前記樹脂製品の製造方法であって、
金型を開状態として、前記可動型と前記固定型との間に一定の長さ分の前記加飾体を位置させる第一ステップと、
前記第一ステップ後に、前記可動型と前記固定型との間に位置された前記加飾体を一定の温度に加熱する第二ステップと、
前記加熱を行いながら又は前記加熱後に、前記可動型における前記製品成形空間となる領域外に形成させた負圧作用部に負圧を作用させて前記加飾体を前記可動型に密着させる第三ステップと、
前記第三ステップ後に、前記金型を前記可動型と前記固定型との間に前記加飾体の厚さ相当分の隙間を開けた半閉状態として、前記ゲートより前記製品成形空間に対し一つの前記製品を構成する前記樹脂の大部分を注入する第四ステップと、
前記第四ステップ後に、金型を全閉状態として、前記可動型に形成された刃体と前記固定型に形成された刃体との共働により前記加飾体を所定の形状に切断し且つ前記形状となった前記加飾体の縁部を前記製品成形空間側に誘導すると共に、前記ゲートより前記製品成形空間に対し前記製品を構成する前記樹脂の残量を注入する第五ステップとを含む、樹脂製品の製造方法。
【請求項2】
前記第四ステップにおいて、さらに、前記負圧作用部に負圧を作用させるようにしてなる、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルム状又はシート状をなす加飾体によって覆われた意匠面を有する樹脂製品の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状又はシート状をなす加飾体によって覆われた意匠面を有する樹脂製品を製造する方法としては、予めトリミングした加飾体をインサート物とするインサート成形が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、金型をいわばプレスとして利用して加飾体をトリミングしながら金型の製品成形空間内に溶融した樹脂を注入して前記のような樹脂製品を製造する方法も知られているところである(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4261977号公報
【特許文献2】特許第3316809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の樹脂製品を、金型を全閉状態(型締状態)とするときに金型をいわばプレスとして利用して前記加飾体をトリミングしながら金型の製品成形空間内に溶融した樹脂を注入することで、最小工程をもってより適切に得られるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、樹脂製品の製造方法を、製品成形空間に臨んだ可動型の内面に、加熱により軟化する性質を持った樹脂製のフィルム状又はシート状をなす加飾体を密着させた状態で、固定型に設けられたゲートより前記製品成形空間内に溶融した樹脂を注入して、前記加飾体を備えた樹脂製品を生成する前記樹脂製品の製造方法であって、
金型を開状態として、前記可動型と前記固定型との間に一定の長さ分の前記加飾体を位置させる第一ステップと、
前記第一ステップ後に、前記可動型と前記固定型との間に位置された前記加飾体を一定の温度に加熱する第二ステップと、
前記加熱を行いながら又は前記加熱後に、前記可動型における前記製品成形空間となる領域外に形成させた負圧作用部に負圧を作用させて前記加飾体を前記可動型に密着させる第三ステップと、
前記第三ステップ後に、前記金型を前記可動型と前記固定型との間に前記加飾体の厚さ相当分の隙間を開けた半閉状態として、前記ゲートより前記製品成形空間に対し一つの前記製品を構成する前記樹脂の大部分を注入する第四ステップと、
前記第四ステップ後に、金型を全閉状態として、前記可動型に形成された刃体と前記固定型に形成された刃体との共働により前記加飾体を所定の形状に切断し且つ前記形状となった前記加飾体の縁部を前記製品成形空間側に誘導すると共に、前記ゲートより前記製品成形空間に対し前記製品を構成する前記樹脂の残量を注入する第五ステップとを含む、ものとした。
【0007】
前記第四ステップにおいて、さらに、前記負圧作用部に負圧を作用させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、前記樹脂製品を、金型をいわばプレスとして利用して前記加飾体をトリミングしながら金型の製品成形空間内に溶融した樹脂を注入することで、最小工程をもって適切に得られるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる製造方法により生成される製品と打ち抜かれた部分を前記製品の一部とさせた加飾体の残りの部分とを示した斜視構成図である。
【
図2】
図2は、前記製造方法に利用される金型の一例を示した斜視構成図である。
【
図3】
図3は、前記金型を構成する可動型の斜視構成図である。
【
図4】
図4は、前記金型を構成する固定型の斜視構成図である。
【
図5】
図5は、クランプ体の斜視構成図であり、
図5(b)はクランプ体を可動型との間で加飾体を挟持する面部側から見て示している。
【
図6】
図6は、前記製造方法の第一ステップを模式的に示す説明図である。
【
図7】
図7は、前記製造方法の第二ステップを模式的に示す説明図である。
【
図8】
図8は、前記製造方法の第三ステップを模式的に示す説明図である。
【
図9】
図9は、前記製造方法の第四ステップを模式的に示す説明図である。
【
図10】
図10は、前記製造方法の第五ステップを模式的に示す説明図である。
【
図11】
図11は、前記製造方法の第五ステップ後の工程を模式的に示す説明図である。
【
図12】
図12は、前記製造方法の
図11に示される工程後の工程を模式的に示す説明図である。
【
図13】
図13は、前記第三ステップにおける金型の要部を拡大して示した断面構成図である。
【
図14】
図14は、前記第四ステップにおける金型の要部を拡大して示した断面構成図である。
【
図15】
図15は、前記第五ステップにおける金型の要部を拡大して示した断面構成図である。
【
図16】
図16は、検討例の金型の要部を拡大して示した断面構成図であり、(a)図は金型開状態の検討例の要部を、(b)図は金型閉状態の検討例の要部を、それぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1ないし
図16に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。
【0011】
この実施の形態にかかる樹脂製品Mの成形方法は、フィルム状又はシート状をなす加飾体Fによって覆われた意匠面Maを有する製品Mを、金型1を全閉状態(型締状態)とするときに金型1をいわばプレスとして利用して前記加飾体Fをトリミングしながら金型1の製品成形空間4内に溶融した樹脂Rを注入することで、最小工程をもって適切に得られるようにするものである。
すなわち、この実施の形態にかかる成形方法は、加飾体Fを予めトリミングする工程を必要とせず、また、このようにトリミングした加飾体Fをインサート物として金型1内にセットする工程を必要としないものであり、インサート成形とは異なるものである。
【0012】
前記製品Mは、可動型2の内面2aによって成形される意匠面Maと、固定型3における可動型2の内面2aに向き合う面3aによって成形される非意匠面Maとを持つ。
かかる成形方法は、前記全閉状態において前記可動型2と固定型との間に形成される製品成形空間4に臨んだ可動型2の内面2aに、加熱により軟化する性質を持った樹脂製のフィルム状又はシート状をなす加飾体Fを密着させた状態で、固定型に設けられたゲートより前記製品成形空間4内に溶融した樹脂Rを注入して、前記加飾体Fによって覆われた意匠面Maを備えた樹脂製品Mを生成するものである。
【0013】
図示の例では、前記製品Mは、長方形の板状を呈している(
図1参照)。一面が意匠面Maとなり、他面が非意匠面Maとなっている。加飾体Fは、意匠面Maと、この意匠面Maと非意匠面Maとの間に亘る厚さ側の端面Mcの全体を覆うように備えられている。製品Mにおけるこのように備えられる加飾体F以外の部分は、前記樹脂Rによって構成される。
【0014】
加飾体Fには、熱可塑性樹脂Rからなるベース層Fbと保護層Fdとの間に、印刷層Fcを備えた構造のものを用いることができる。保護層Fdに透明又は透光性を備えさせることで、印刷層Fcの模様などが意匠面Maに表れるようにする。ベース層Fbは、加飾体F以外の製品Mの部分を構成する前記樹脂Rとの接着性の良い材料から構成する。印刷層Fcは、ベース層Fb側及び保護層Fd側のいずれかの側に印刷して備えられる。
加飾体Fとしては、典型的には、0.1mmないし1mmの範囲のものが用いられる。
【0015】
図2ないし
図5に、製造装置を構成する金型1(成形型)の一例を示す。製造装置はかかる金型1と、図示しない装置基台と、図示しない射出成形機とを備えて構成される。
金型1は可動型2と固定型3とを備える。可動型2は凹部2bを、固定型3は後述の半閉状態及び全閉状態においてこの凹部2bに納まる凸部3cを備えている。この半閉状態及び全閉状態において凹部2bと凸部3cとの間に形成される空間が前記製品Mの製品成形空間4となる。固定型3の凸部3cの中央にはゲート3bが形成され、固定型3にはこのゲート3bを通じて前記製品成形空間4に溶融樹脂Rを注入する前記射出成形機が接続される。
図示の例では、可動型2は水平方向に移動して固定型3への接離を繰り返すように図示しない装置基台に支持されるようになっている。装置基台には可動型2の駆動機構が備えられる。
可動型2の移動方向は必要に応じて変えて構わない。例えば、可動型2は上下方向に移動して固定型3への接離を繰り返すようにしても構わない。
一つの製品Mを成形するにあたっては、前記駆動機構の制御により、可動型2は、固定型3に接しない基準位置(金型1は開状態/
図6参照)から固定型3との間に前記加飾体Fの厚さ相当分の隙間を開けた第一位置(金型1は半閉状態/
図9参照)まで往動して一旦停止し、この後所定の時間後に固定型3に接する第二位置(金型1は全閉状態/
図10参照)まで往動し、この後所定の時間後に前記基準位置(
図11参照)に復動するようになっている。
前記射出成形機は、前記第一位置での停止中に一つの前記製品Mを構成する前記樹脂Rの大部分を前記射出成形機から注入し、前記第二位置での停止中に前記樹脂Rの残量を前記射出成形機から注入するように、制御される。
【0016】
この実施の形態にかかる製造方法は、以下の第一ないし第五のステップを含むものである。なお、
図6ないし
図12は、かかる製造方法の各ステップを理解しやすいようにその要旨を模式的に示したものであり、
図2ないし
図5および
図13ないし
図15に示される前記金型1と形状及び構造を一致させるように表現したものではなく、また、加飾体Fの厚みも誇張して表現している。
【0017】
(第一のステップ)
第一のステップは、金型1を開状態として、ロール状に用意された前記加飾体Faから一定の長さ分の前記加飾体Fを送り出して、前記可動型2と前記固定型3との間にこの一定の長さ分の前記加飾体Fを位置させる工程である。
図示の例では、可動型2はクランプ体5を備えている。クランプ体5は、可動型2をその移動方向前方側から見た状態において枠状をなし、その枠内空間5aに可動型2の凹部2bを位置させるように備えられ、かつ、前記凹部2bの外方において可動型2との間で加飾体Fを挟む挟持位置(
図6)と可動型2との間に加飾体Fを抵抗なく通過させる非挟持位置(
図12)との間での水平方向への移動を可能とした状態で可動型2に支持されている。
かかるクランプ体5は、可動型2に水平方向に移動可能に備えられた図示しない支持ピンによって可動型2側に支持されている。
図示の例では、クランプ体5の上辺部には、加飾体Fの供給側となる上方に延びる遮蔽板5bが一体に備えられており、下記の第二のステップにおいてヒーター体6によって作用される熱が、加飾体Fにおける次順位で成形される製品Mを構成する領域に作用されないようにしている。
クランプ体5を非挟持位置にした状態からロール状に用意された前記加飾体Fから一定の長さ分の前記加飾体Fを可動型2とクランプ体5との間に送り出して可動型2と固定型3との間に一つの製品Mの意匠面Maを構成し得る加飾体Fを供給した後、クランプ体5を挟持位置(
図6参照)に移動させることで、可動型2に加飾体Fを保持させる。
図示の例では、クランプ体5における可動型2に向けられた面部5cには、前記枠内空間5aを囲繞する周回リブ5dが形成されており、挟持位置においてこの周回リブ5dにおいて加飾体Fに対する挟持力を集中させて加飾体Fにおける前記枠内空間5aに位置される領域に一定の張力を作用させるようになっている。これによって、下記の第五のステップにおいて加飾体Fを切断し易くしている。
加飾体Fは、前記凹部2bを垂直方向において覆い、かつ、前記凹部2bを水平方向において覆う幅を備えている。
【0018】
なお、前記加飾体Fをロール状に用意するにあたっては、前記印刷層Fcの傷付き及び異物付着を防ぐ観点から、前記保護層Fdの側が巻回内側となるようにすることが好ましい。
【0019】
また、前記加飾体Fが帯電していると、塵埃が付着して、この付着箇所において製品Mの意匠面Maに凹みが生じる場合がある。これを防ぐ観点からは、第一に送り出された加飾体Fにイオナイザーから得られるイオンを吹きかけて(ブロア)除電を行うこと、第二に製造装置における金型1の配置空間を陽圧に保つようにしてこの配置空間内に塵埃が入り込まないようにすることが好ましい。
【0020】
(第二のステップ)
第二のステップは、前記第一ステップ後に、前記可動型2と前記固定型3との間に位置された前記加飾体Fを一定の温度に加熱する工程である。
図示の例では、開状態にある可動型2と固定型3との間に、少なくとも前記クランプ体5の枠内空間5aを覆う面積をもったヒーター体6を移送し、このヒーター体6によって所定の時間クランプ体5によって保持された加飾体Fを加熱するようにしている(
図7参照)。
典型的には、かかるヒーター体6は、加飾体Fを、摂氏150度程度に加熱させるように制御される。
また、かかるヒーター体6は、待機位置と、前記加熱を可能とする加熱位置との間に亘る移動可能に製造装置に備えられており、前記加熱終了後は可動型2と固定型3との間から抜き出され、所定の待機位置に移送される。
【0021】
(第三ステップ)
第三のステップは、前記加熱を行いながら又は前記加熱後に、前記可動型2における前記製品成形空間4となる領域外に形成させた負圧作用部に負圧を作用させて前記加飾体Fを前記可動型2に密着させる工程である。
図示の例では、可動型2は、前記挟持位置にあるクランプ体5の枠内空間5aに臨む内縁と、前記凹部2bとの間となる箇所に、凹部2bを囲繞する周回溝2cを備えており、この周回溝2cを利用してクランプ体5によって保持された加飾体Fと可動型2との間、より具体的には加飾体Fの保護層Fdと可動側2の凹部2bの内面2aとの間を負圧にするようにしている。
すなわち、図示の例では、かかる周回溝2cが負圧作用部として機能するようになっている。
言い換えれば、前記加飾体Fは可動型2における周回溝2cの形成箇所を覆う幅を有し、前記負圧の作用により可動型2に密着される。
典型的には、真空エジェクタをかかる可動型2の内部に設けた流路2dを通じて前記周回溝2cに接続させるようにする。
図3において符号2eで示すのは周回溝2cの溝底に形成された前記流路2dの端末である。
第二ステップによって加飾体Fは軟化されることから、この第三ステップによって可動型2の内面2a(前記凹部2bの内面)に概ね倣うように加飾体Fを成形することができる。
【0022】
(第四のステップ)
第四のステップは、前記第三ステップ後に、前記金型1を前記可動型2と前記固定型3との間に前記加飾体Fの厚さ相当分の隙間Sを開けた半閉状態(
図9、
図14)として、前記製品成形空間4に対し前記ゲート3bより一つの前記製品Mを構成する前記樹脂Rの大部分を注入する工程である。
図示の例では、可動型2は、凹部2bを囲繞するように後述の刃体2fを備えており、この可動型2の刃体2fと後述の固定型3の刃体3dとの間に、可動型の移動方向x(
図2、
図6、
図13)において前記隙間Sが形成される位置まで、可動型2を移動させた半閉状態において、一つの前記製品Mを構成する前記樹脂Rの大部分を注入するようにしている。
典型的には、一つの前記製品Mを構成する前記樹脂Rの90%程度を、固定型3のゲート3bを通じて前記製品成形空間4に注入する。
第三ステップによって可動型2の内面2a(前記凹部2bの内面)に概ね倣うように成形された加飾体Fは、この第四ステップにより樹脂Rの注入圧により可動型2の内面2aに密着され、特に凹部2bの底面2gと側面2hとが接する入り隅部2iにおいても加飾体Fは可動型2の内面2aに隙間無く密着される。
この第四ステップにおいても前記負圧作用部に負圧を作用させるようすることが好ましい。なお、固定型3の刃体3dを構成する後述の周回リブ3eの傾斜した内面3hを、この周回リブ3eの頂部3fから基部3gに向けて移動するエンドミルにより成形するようにすると、この内面3hに前記頂部3fから基部3gに向けて続く微細な凹みを形成させることができる。このようにしておくと、この微細な凹みを流路として前記半閉状態においても前記負圧を製品成形空間4に作用させやすくなる。
【0023】
溶融樹脂Rの注入により圧力の作用と加熱とにより加飾体Fは少なからず延伸される。図示の例では、固定型3の凸部3cの中央に形成されたゲート3bを中心とした放射方向に樹脂Rが流れ広がり、この樹脂Rの流れにより加飾体Fは少なからず延伸される。しかるに、この第四のステップでは、前記可動型2と前記固定型3との間に前記隙間Sが形成されていることから、この延伸分を前記製品成形空間4外に逃がしながら可動型2の内面2a全体に加飾体Fをエア残留による隙間や後述の皺を生じさせない状態で密着させることができる。
前記のような加飾体Fの延伸分を前記製品成形空間4外に逃がすことができない場合、特に製品Mの端面Mcにおいて加飾体Fに皺を生じさせてしまう。本製造方法によれば、このような皺の発生を効果的に抑止することができる。
【0024】
(第五のステップ)
第五ステップは、前記第四ステップ後に、金型1を全閉状態(
図10、
図15)として、前記可動型2に形成された刃体2fと前記固定型3に形成された刃体3dとの共働により前記加飾体Fを所定の形状に切断し(この切断位置を
図10において一点鎖線で示す。)且つ前記形状となった前記加飾体Fの縁部を前記製品成形空間4側に誘導すると共に、前記ゲート3bより前記製品Mを構成する前記樹脂Rの残量を注入するものである。
【0025】
図示の例では、可動型2の刃体2fは、可動型2における凹部2bにおける可動型2の移動方向に沿った入口側の側面2hと、前記凹部2b外にある凹部囲繞面2jとが接するエッジ状の出隅部2kによって構成されている。すなわち、可動型2の刃体2fは、可動型2の凹部2bの入り口を縁取る周回状をなす。
一方、固定型3の刃体3dは、固定型3の凸部3cにおける前記可動型2の移動方向に直交する向きの頂面3jの縁部を縁取るようにして可動型2側に向けて突き出す周回リブ3eの頂部3fによって構成されている。周回リブ3eにおける凸部3cの側面3k側に位置される外面3iは、可動型2が移動する過程において可動型2の前記入口側の側面2hに摺接される。周回リブ3eにおける前記外面3iに対向する内面3h(製品成形空間4内の面)はこの周回リブ3eの基部3gに向かうにつれて前記外面3iとの間の距離を漸増させる向きに傾斜している。
前記半閉状態から全閉状態まで可動型2が移動される過程で、可動型2との固定型3との間に位置する加飾体Fは前記製品Mにおける可動型2により成形される意匠面Maの全体を覆う形状の打ち抜き部分Fe(
図1参照)と、それ以外の部分Ffに切り分けられる(
図1参照)。
全閉状態においては、可動型2の凹部2b内に固定型3の凸部3cが入り込み、製品成形空間4外において可動型2側に形成される図示しない当接部と固定型3側に形成される図示しない被当接部とが突き当たり、可動型2と固定型4との間に製品Mの外形に整合した製品成形空間4が形成される。
打ち抜き部分Feの縁部となる箇所には前記第四ステップによって皺が生じないようにされ、かつ、切り分けられた後は打ち抜き部分Feの縁部は前記周回リブ3eの内面3hの前記傾斜により、前記固定型3の凸部3cの中央側、すなわち、前記製品成形空間4側(切断位置を基準とした製品成形空間4の内方側)に切断端Fg(
図15参照)を向けるようにして巻き込み状に誘導される。具体的には、打ち抜き部分Feの縁部は打ち抜き部分Feの中心を巡るいすれの位置においても、製品成形空間4側に切断端Fgを向けるようにして屈曲ないしは湾曲された形態となる。
図16に示されるように、前記刃体近傍の金型1の形状が打ち抜き部分Feの縁部を前記のように誘導できない形状であると、この縁部に皺W(
図16(b)参照)を生じさせてしまうが、上記のようにすることでこのような皺Wを抑止することができる。
そして、前記残量となる樹脂Rの注入により前記樹脂Rが可動型2の凹部2bの前記入り口側の側面2hまで行き渡る。前記のように屈曲ないしは湾曲された打ち抜き部分Feの縁部の内側y(
図15参照)にも製品成形空間4の中央側から樹脂がR入り込み行き渡る。これによって、意匠面Maの全体を加飾体Fによって適切に覆った製品Mが得られる。
【0026】
第五ステップ後、金型1は開状態とされ(
図11参照)、製品Mは可動型2と分離し(
図11参照)、製品Mはゲート3bを備えた固定型3に残されるようになっている。製品Mは固定型3に備えさせた押し出しピン7によって固定型3から分離され(
図12参照)、一つの製品Mの成形が終了する。
可動型2と固定型3との間に残された前記打ち抜き部分Feが除かれた加飾体Fは、次の製品Mの成形おける第一ステップにより、金型1の下方に移動される(
図12参照)。
【0027】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0028】
1 金型
2 可動型
2f 刃体
3 固定型
3d 刃体
F 加飾体