(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145224
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】測量装置、測量システム、測量方法及び測量プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057483
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】西 義弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇
(57)【要約】
【課題】2点を結ぶ直線からのずれ量を簡単に測定することができる測量装置、測量システム、測量方法及び測量プログラムを提供することを目的する。
【解決手段】測量装置30は、測量部52と、設定部54と、ずれ量算出部56とを備える。測量部52は、測量対象位置Aを測量する。設定部54は、測量部52による測量結果から、第1の基準位置B1と第2の基準位置B2とを設定する。ずれ量算出部56は、測量部52による測量結果のうち、第1の基準位置B1と第2の基準位置B2との両方と異なる位置である確認位置Cに関して、第1の基準位置B1と第2の基準位置B2とを結ぶ直線状の基準線Lから当該確認位置Cまでのずれ量Dを算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量対象位置を測量する測量部と、
前記測量部による測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する設定部と、
前記測量部による測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出するずれ量算出部とを備える、測量装置。
【請求項2】
前記測量対象位置の測量結果は、それぞれ装置本体からの相対位置を示す、請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記ずれ量算出部は、水平方向のうち、前記基準線と直行する方向に関し、前記確認位置のずれ量を算出する、請求項1に記載の測量装置。
【請求項4】
前記確認位置のずれ量が、公差内か否かどうかを判定する判定部をさらに備える、請求項1に記載の測量装置。
【請求項5】
前記ずれ量算出部で、前記確認位置のずれ量が算出されるとき、前記第1の基準位置及び前記第2の基準位置の少なくとも一方と、当該確認位置との比高差を算出する比高差算出部をさらに備える、請求項1に記載の測量装置。
【請求項6】
測量装置と、情報処理端末とが通信可能に接続される測量システムであって、
前記測量装置は、
測量対象位置を測量する測量部と、
前記測量部による測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する設定部と、
前記測量部による測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出するずれ量算出部とを備え、
前記情報処理端末は、
前記測量装置で得られる各種情報を表示する表示部を備える、測量システム。
【請求項7】
測量装置における測量方法であって、
測量部が、測量対象位置を測量する測量工程と、
設定部が、前記測量工程による測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する設定工程と、
ずれ量算出部が、前記測量工程による測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出するずれ量算出工程とを含む、測量方法。
【請求項8】
測量装置で実行される測量プログラムであって、
測量対象位置を測量する測量ステップと、
前記測量ステップによる測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する設定ステップと、
前記測量ステップによる測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出するずれ量算出ステップとをコンピュータに実行させるための測量プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測量装置、測量システム、測量方法及び測量プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場等において、杭打ち工事が行われることがある。杭打ち工事の一例としては、べた基礎に対してアンカーボルトを打ち込む工事が挙げられる。杭打ち工事により打ち込まれる杭は、一方向に並べて打ち込まれるのであれば、直線状に並べられるのが好ましい。そのため、杭打ち工事により打ち込まれた杭については、直線状に配置されているかどうか確認されることがある。このように、建設現場等に関し、物品が直線状に配置されているか否かの確認方法として、2通りの方法が挙げられる。1つ目の方法としては、巻き尺等のアナログ方式の測定器具を用いる方法が挙げられる。2つ目の方法としては、下記特許文献1開示されるトータルステーション、つまり、測量装置を用いての方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1つ目の測定方法では、測定器具の端部の固定に加え、測定器具の撓みを防止する必要がある。そのため、寸法の測定を行う際、様々な手間が生じる。また、2つ目の測定方法では、測量を行う前提として測量装置を既知の位置に設置する等して測量装置の座標を確定させる器械設置を行う必要があり、これも手間と時間を要することとなる。
【0005】
本開示は、上記実情を鑑みてなされたものであり、2点を結ぶ直線からのずれ量を簡単に測定することができる測量装置、測量システム、測量方法及び測量プログラムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本開示に係る測量装置は、測量部と、設定部と、ずれ量算出部とを備える。前記測量部は、測量対象位置を測量する。前記設定部は、前記測量部による測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する。前記ずれ量算出部は、前記測量部による測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出する。
【0007】
上記した目的を達成するために、本開示に係る測量システムは、測量装置と、情報処理端末とが通信可能に接続され、前記測量装置は、測量部と、設定部と、ずれ量算出部とを備え、前記情報処理端末は、表示部を備える。前記測量部は、測量対象位置を測量する。前記設定部は、前記測量部による測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する。前記ずれ量算出部は、前記測量部による測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出する。前記表示部は、前記測量装置で得られる各種情報を表示する。
【0008】
上記した目的を達成するために、本開示に係る測量方法は、測量工程と、設定工程と、ずれ量算出工程とを含む。測量工程では、測量対象位置を測量する。前記設定工程では、前記測量工程による測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する。前記ずれ量算出工程では、前記測量工程による測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出する。
【0009】
上記した目的を達成するために、本開示に係る測量プログラムは、測量ステップと、設定ステップと、ずれ量算出ステップとをコンピュータに実行させる。前記測量ステップでは、測量対象位置を測量する。前記設定ステップでは、前記測量ステップによる測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する。前記ずれ量算出ステップでは、前記測量ステップによる測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、2点を結ぶ直線からのずれ量を簡単に測定することができる測量装置、測量システム、測量方法及び測量プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の測量システムの構成の一例を示す概略図である。
【
図2】本実施形態の測量装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の測量システムを用いて、測量対象位置を測量する様子を示す概略図である。
【
図4】本実施形態の測量システムを用いて、基準線と、確認位置とのずれ量を算出する様子を示す概略図である。
【
図5】本実施形態の第1の基準位置と、確認位置との比高差を算出する様子を示す概略図である。
【
図6】本実施形態のメニュー画面の一例を示す概略図である。
【
図7】本実施形態の設定画面の一例を示す概略図である。
【
図8】本実施形態の測定画面の一例を示す概略図である。
【
図9】本実施形態の結果表示画面の一例を示す概略図である。
【
図10】本実施形態の測量装置の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.本実施形態の測量システム
図1は、本実施形態の測量システム1の構成の一例を示す概略図である。また、
図1は、測量システム1を構成するユーザ端末10の電気的構成の一例を示すブロック図でもある。
【0013】
測量システム1は、ユーザ端末10及び測量装置30を含み、これらは、近距離無線通信により互いに通信可能に接続される。ただし、ユーザ端末10及び測量装置30は、移動体通信網のような汎用の通信網を介して互いに通信可能に接続されてもよいし、ネットワークを介して互いに通信可能に接続されてもよいし、有線で直接的に接続されてもよい。
【0014】
ユーザ端末10は、所有者のパーソナルデバイスであって、情報処理端末である。また、本実施形態では、ユーザ端末10は、測量装置30の遠隔操作端末として機能する。ユーザ端末10の一例として、スマートフォン、タブレットコンピュータ及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。
【0015】
ユーザ端末10は、制御部12、表示部14、操作部16及び通信部18等を含む。また、制御部12は、バス等の回路20を介して、表示部14、操作部16及び通信部18の各々と電気的に接続される。
【0016】
ユーザ端末10の制御部12は、コンピュータであり、具体的には、CPU(Central Processing Unit)(図示は省略)及びそのCPUが直接的にアクセス可能な記憶部(図示は省略)を含む。また、記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ及びSSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを含む。
【0017】
ユーザ端末10の制御部12が備える記憶部には、ユーザ端末10の各種コンポーネントを制御するためのプログラム及びデータが記憶される。また、例えば、ユーザ端末10の記憶部には、測量装置30に制御コマンドを送信し、測量装置30で得られる各種情報を取得し、表示するためのアプリケーション等が記憶される。
【0018】
表示部14は、汎用のディスプレイである。操作部16は、ユーザ端末10に設けられるハードウェアキー(操作キー)である。また、操作部16としては、入力装置及びタッチパネル等が用いられてもよい。入力装置としては、例えば、キーボード及びポインティングデバイス等が挙げられる、
【0019】
また、操作部16としては、タッチパネルが用いられる場合、タッチパネルは、表示部14の表示面上に設けられ、各種操作キーの全てないし一部が、ソフトウェアキーとして、表示部14に表示される。なお、タッチパネル及び表示部14は、タッチパネルディスプレイとして、一体的に形成されていてもよい。
【0020】
通信部18は、通信モジュールないし有線又は無線で接続するための通信回路を含む。例えば、通信部18には、Bluetooth(登録商標)による近距離無線通信を行うための通信回路及びアンテナ等が含まれる。
【0021】
図2は、本実施形態の測量装置30の電気的構成の一例を示すブロック図である。測量装置30は、三次元空間における測量対象位置Aの位置を測量するための装置である。測量装置30としては、例えば、トータルステーションが用いられる。
【0022】
測量装置30は、制御部32、駆動部34、姿勢検出部36、測距部38、表示部40、操作部42及び通信部44等を含む。また、制御部32は、バス等の回路46を介して、駆動部34、姿勢検出部36、測距部38、表示部40、操作部42及び通信部44等の各々と電気的に接続される。
【0023】
測量装置30の制御部32は、ユーザ端末10の制御部12と同様に、コンピュータであり、具体的には、CPU(Central Processing Unit)(図示は省略)及び記憶部50を含み、記憶部50には、測量装置30の各種コンポーネントを制御するためのプログラム及びデータが記憶される。
【0024】
また、記憶部50は、ポール90の測設点に対する設置面から、そのポール90に設けられるプリズム92までの距離を示す補正情報が補正用データ(図示は省略)として記憶される。さらに、この補正用データは、必要に応じて更新又は生成することができる。例えば、ユーザ端末10からの指示に応じて、補正用データが更新される。
【0025】
駆動部34は、電気的に制御可能であって、鉛直方向及び水平方向に回転駆動するアクチュエータである。また、駆動部34は、測距部38と機械的に連結する。つまり、駆動部34によれば、測距部38の指向方向が変更可能とされる。
【0026】
姿勢検出部36は、測距部38の水平角及び鉛直角の検出が可能な回転角センサ(エンコーダ)である。また、姿勢検出部36は測量装置30の傾斜角を検出する傾斜測定器(チルトセンサ)を有していてもよい。姿勢検出部36によれば、測距部38の指向方向が検出可能とされる。
【0027】
測距部38は、測距光をターゲットTに向けて出射する送光部(図示は省略)及びターゲットTにより反射された測距光を受光する受光部(図示は省略)を含む。測距部38としては、例えば、光波距離計が用いられる。これらのことから、測距部38によれば、測量装置30からターゲットTまでの斜距離の測定が可能とされる。なお、本実施形態では、ポール90に設けられるプリズム92がターゲットTとされ、このターゲットTの位置は、ポール90が測設点に設置することで設定される。
【0028】
本実施形態では、姿勢検出部36で検出される測距部38の回転角(水平角及び鉛直角)及び測距部38で測定される斜距離を用いることで、三次元座標系における測量対象位置Aの座標が取得可能とされる。具体的には、姿勢検出部36で検出される測距部38の回転角及び測距部38で測定される斜距離を用いることで、三次元座標系におけるターゲットTの座標を取得し、その測量結果が示す鉛直方向の座標を、上述した補正用データを用いて、シフトさせることで、測量対象位置Aの座標が取得可能とされる。
【0029】
また、例えば、測量対象位置Aの位置が測量装置30に対する相対位置として扱われるのであれば、三次元座標系における測量装置30を原点とした場合の測量対象位置Aの座標が取得されるため、測量装置30から測量対象位置Aまでの斜距離、測量装置30から測量対象位置Aまでの鉛直方向に関する距離(水平距離)及び測量装置30から測量対象位置Aまでの水平方向に関する距離(水平距離)を簡単に特定することができる。
【0030】
表示部40、操作部42及び通信部44については、表示部14、操作部16及び通信部18と同様である。なお、図示は省略するが、測量装置30は、他にもターゲットTを追尾するためのコンポーネント等も備える。例えば、測量装置30は、ターゲットTに向けて追尾光を照射する追尾光送光部や、ターゲットTにより反射された追尾光の一部を受光する追尾光受光部を備える。
【0031】
上述したように、記憶部50には、測量装置30の各種コンポーネントを制御するためのプログラムや、データが記憶されており、制御部32は、CPUがプログラムを実行することで、測量部52、設定部54、ずれ量算出部56、判定部58及び比高差算出部60として機能する。以下、測量部52等について、
図3、
図4及び
図5も参照して説明する。
【0032】
図3は、本実施形態の測量システム1を用いて、測量対象位置Aを測量する様子を示す概略図である。
図4は、本実施形態の測量システム1を用いて、基準線Lと、確認位置Cとのずれ量D(いわゆる出入り量)を算出する様子を示す概略図である。
図5は、本実施形態の第1の基準位置B1と、確認位置Cとの比高差Hを算出する様子を示す概略図である。
【0033】
測量部52は、駆動部34、姿勢検出部36、測距部38及び上述した補正用データ等を用いて、測量対象位置Aを測量する。測量部52による測量結果は、測量データ70として記憶部50に記憶される。そのため、記憶部50には、複数の測量データ70が記憶されることがある。
図3に示す例では、測量部52により、第1の位置P1及び第2の位置P2が測量対象位置Aとして測量される。なお、このように、測量装置30で測量を用いて測量が行われる場合、その測量装置30は、三脚等の固定部材を用いて地面に設置される。
【0034】
また、本実施形態において器械設置を行わずに測量部52で測量対象位置Aを測量する場合、測量対象位置Aは、測量装置30に対する相対位置として扱われる。そのため、このような場合、測量データ70は、三次元座標系における測量装置30の装置本体(厳密には器械点)を原点とした場合の測量対象位置Aの座標を示す。
【0035】
設定部54は、測量データ70を参照し、測量部52による測量対象位置Aの測量結果から、第1の基準位置B1及び第2の基準位置B2を設定する。測量データ70が三次元座標系における測量装置30の装置本体を原点とした場合の測量対象位置Aの座標を示す場合、第1の基準位置B1及び第2の基準位置B2も同様に、測量装置30の装置本体を原点とした場合の測量対象位置Aの座標を示す。
【0036】
第1基準位置データ72は、第1の基準位置B1の座標を示すデータであり、第2基準位置データ74は、第2の基準位置B2の座標を示すデータである。
図3に示すように、設定部54によれば、例えば、第1の位置P1が第1の基準位置B1に設定され、第2の位置P2が第2の基準位置B2に設定される。また、第1の基準位置B1及び第2の基準位置B2に関しては、例えば、ユーザ端末10の操作部42に対する操作に応じて設定される。
【0037】
ずれ量算出部56は、測量部52での測量対象位置Aの測量結果のうち、第1の基準位置B1と、第2の基準位置B2との両方と異なる位置である確認位置Cに関して、
図4に示すように、第1の基準位置B1と、第2の基準位置B2とを結ぶ直線状の基準線Lから確認位置Cまでのずれ量Dを算出する。
【0038】
また、基準線Lについては、具体的には、鉛直方向(z方向)から見た場合に、第1の基準位置B1と、第2の基準位置B2とを結んでいれば、鉛直方向における位置は、特に限定されない。
【0039】
また、ずれ量算出部56は、具体的に、水平方向(xy方向)に関し、基準線Lから確認位置Cまでのずれ量Dを算出する。さらに具体的には、ずれ量算出部56は、水平方向のうち、基準線Lと直行する方向に関し、基準線Lから確認位置Cまでのずれ量Dを算出する。つまり、ずれ量算出部56により算出される確認位置Cのずれ量Dは、最短とされる。
【0040】
なお、確認位置Cが複数存在する場合、各確認位置Cに関し、ずれ量Dが算出される。そのため、例えば、確認位置Cの測量が繰り返し行われる場合、上述したように、確認位置Cごとにずれ量Dが算出される。
【0041】
このように、ずれ量算出部56により、確認位置Cに関する基準線Lからのずれ量Dが算出される際、確認位置Cの座標を示す測量データ70、第1基準位置データ72及び第2基準位置データ74が参照される。また、ずれ量算出部56により、算出される確認位置Cのずれ量Dは、ずれ量データ76として記憶部50に記憶される。なお、確認位置Cに対応する測量結果が複数存在する場合、ずれ量算出部56は、各確認位置Cに関するずれ量Dを算出し、複数のずれ量データ76が記憶部50に記憶される。
【0042】
本実施形態の制御部32は、主に確認位置Cに関する基準線Lからのずれ量Dを測定する出入り量測定モードを少なくとも有している。出入り量測定モードに関し、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0043】
図3では、建築現場において杭が直線状に並べられているかを確認する場合を示している。この場合の測量手順としては、作業者は、第1の基準位置B1としたい杭(第1の杭E1)が打たれている位置を第1の位置P1として測量する。その後、第2の基準位置B2としたい杭(第2の杭E2)が打たれている位置を第2の位置P2として測量する。なお、ずれ量Dの測定に関する各種位置は、杭に限られるものではなく、任意の位置でよい。
【0044】
また、作業者は、ユーザ端末10を操作することで、第1の位置P1を第1の基準位置B1、第2の位置P2を第2の基準位置B2として設定し、その後、
図4に示すように、第1の杭E1及び第2の杭E2の両方と異なる杭(第3の杭E3)を確認位置Cとして測量する。測量装置30のずれ量算出部56は、第1の基準位置B1の水平方向に関する座標x1及びy1と、第2の基準位置B2の水平方向に座標x2及びy2と、確認位置Cの水平方向に座標x3及びy3とに基づいて、水平方向での確認位置Cの基準線Lからのずれ量Dを算出する。
【0045】
また、本実施形態では、確認位置Cのずれ量Dに対して、公差が設定される。
図2に示す公差データ78は、ずれ量Dの公差を示すデータである。
【0046】
判定部58は、ずれ量データ76及び公差データ78を参照することで、確認位置Cのずれ量Dが公差内か否かを判定する。なお、判定部58の判定結果は、判定結果データ80として記憶部50に記憶される。
【0047】
また、本実施形態では、ずれ量算出部56で、確認位置Cのずれ量Dが算出される場合、比高差算出部60により、
図5に示すように、第1の基準位置B1と、確認位置Cとの比高差Hが算出される。
【0048】
すなわち、本実施形態では、出入り量測定モードにおいて、ずれ量算出部56により、確認位置Cのずれ量Dが算出されるのであれば、比高差算出部60により、確認位置Cと、第1の基準位置B1との比高差Hも併せて算出される。
【0049】
なお、このように、確認位置Cと、第1の基準位置B1との比高差Hが算出される場合、確認位置Cに対応する測量データ70及び第1基準位置データ72が参照される。また、このような場合、確認位置Cと、第1の基準位置B1との比高差Hを示す比高差データ82が記憶部50に記憶される。
【0050】
図5は、
図4に示す測量装置30等を別の角度から見た場合の概略図でもある。
図5に示す例では、測量装置30の比高差算出部60は、出入り量測定モードとして、第1の基準位置B1の鉛直方向に関する座標z1と、確認位置Cの鉛直方向に座標z3とに基づいて、第1の基準位置B1と、確認位置Cとの比高差Hを算出する。
【0051】
なお、本実施形態の比高差算出部60では、確認位置Cと、第2の基準位置B2との比高差Hが算出されてもよい。また、比高差算出部60では、確認位置Cと、各基準位置との比高差Hが算出されてもよい。つまり、本実施形態の比高差算出部60については、第1の基準位置B1及び第2の基準位置B2の少なくとも一方と、確認位置Cとの比高差を算出するともいえる。
【0052】
さらに、本実施形態では、確認位置Cに関する比高差Hについても、ずれ量Dと同様に予め公差が設定され、判定部58で、比高差Hがその公差内か否かが判定されてもよい。
【0053】
また、
図3~
図5に示す例では、ユーザ端末10及びターゲットTの位置が離れているが、実際には、作業者は、一方の手でポール90を測設点に手で設置し、他方の手でユーザ端末10を操作し、測量装置30を遠隔操作することができる。つまり、本実施形態の測量システム1では、一人でも簡単に、確認位置Cのずれ量D等を測定することができる。
【0054】
さらに、制御部32は、測量データ70、第1基準位置データ72、第2基準位置データ74、ずれ量データ76、判定結果データ80等の各種データを通信部44を介して、ユーザ端末10に送信する送信部(図示は省略)としても機能する。そのため、ユーザ端末10の表示部14では、各データに対応する情報、例えば、確認位置Cに関するずれ量Dが視認可能に表示される。
【0055】
2.操作画面例
図6は、本実施形態のメニュー画面100の一例を示す図である。例えば、ユーザ端末10が測量装置30と通信可能に接続され、かつ、ユーザ端末10にインストールされている所定のアプリケーションが起動されると、メニュー画面100がユーザ端末10の表示部14に表示される。
【0056】
メニュー画面100には、測定アイコン102が設けられる。測定アイコン102には、測量装置30を出入り量測定モードとする機能が割り当てられる。なお、
図6に示すように、測定アイコン102は、他のアイコンと共に表示されてもよい。測定アイコン102が操作されると、設定画面120(
図7参照)がユーザ端末10の表示部14に表示される。
【0057】
図7は、本実施形態の設定画面120の一例を示す図である。設定画面120は、測量対象位置Aの位置を測量し、第1の基準位置B1及び第2の基準位置B2を設定するための画面である。設定画面120には、計測アイコン122、計測アイコン124及びOKアイコン126が設けられる。
【0058】
計測アイコン122には、測量部52で測量対象位置Aを測量し、設定部54で第1の基準位置B1を設定する機能が割り当てられる。そのため、計測アイコン122が操作されると、上述したように、測量部52による測量対象位置Aの測量及び設定部54による第1の基準位置B1の設定が実施される。
【0059】
計測アイコン124には、測量部52で測量対象位置Aを測量し、設定部54で第2の基準位置B2を設定する機能が割り当てられる。そのため、計測アイコン124が操作されると、上述したように、測量部52による測量対象位置Aの測量及び設定部54による第2の基準位置B2の設定が実施される。
【0060】
なお、計測アイコン122及び計測アイコン124については、繰り返しの操作が可能であり、例えば、計測アイコン122が繰り返し操作されると、測量部52で測量対象位置Aが再測量され、第1の基準位置B1が再設定される。
【0061】
OKアイコン126には、第1の基準位置B1及び第2の基準位置B2の設定を終了する機能が割り当てられる。OKアイコン126が操作されると、測定画面140(
図8参照)がユーザ端末10の表示部14に表示される。
【0062】
図8は、本実施形態の測定画面140の一例を示す図である。測定画面140は、確認位置Cのずれ量Dを測定するための画面である。測定画面140には、計測アイコン142、追加アイコン144及び結果アイコン146が設けられる。
【0063】
計測アイコン142には、確認位置Cを測量する機能が割り当てられる。そのため、計測アイコン142が操作されると、確認位置Cが測量され、その結果が測量データ70として記憶される。なお、計測アイコン142については、繰り返しの操作が可能であり、例えば、計測アイコン142が繰り返し操作されると、確認位置Cが再測量される。
【0064】
追加アイコン144には、確認位置Cを追加する機能が割り当てられる。追加アイコン144が操作されると、計測アイコン142と同様のアイコンが別途、測定画面140に設けられる。すなわち、追加アイコン144が操作され、複数の計測アイコン142が測定画面140に設けられる場合、連続して確認位置Cを測量することができる。また、この場合、複数の確認位置Cに関し、それぞれ、ずれ量Dの測定が可能とされる。
【0065】
結果アイコン146には、確認位置Cのずれ量Dを算出する機能が割り当てられる。また、結果アイコン146には、第1の基準位置B1と、確認位置Cとの比高差Hを算出する機能も割り当てられる。そのため、結果アイコン146が操作されると、確認位置Cのずれ量Dが算出される。また、結果アイコン146が操作されると、第1の基準位置B1と、確認位置Cとの比高差Hが算出される。さらに、結果アイコン146が操作されると、結果表示画面160(
図9参照)がユーザ端末10の表示部14に表示される。
【0066】
結果表示画面160には、表示領域162が設けられ、この表示領域162には、確認位置Cのずれ量Dが表示される。また、表示領域162には、第1の基準位置B1と、確認位置Cとの比高差Hが表示される。さらに、表示領域162には、確認位置Cに関するずれ量Dが公差内か否かの判定結果が視認可能に表示される。
図5に示す例では、丸を示す画像164が判定部58による判定結果を示す画像として、表示領域162に表示される。すなわち、
図5に示す結果表示画面160では、確認位置Cのずれ量Dが公差内であることが画像164により視認可能とされる。
【0067】
3.フローチャート
図10は、本実施形態の測量装置30の動作の一例を示すフロー図である。
図10に示すフローは、例えば、ユーザ端末10と測量装置30とが通信可能に接続され、出入り量測定モードにおいて、測量部52で測量対象位置Aの位置が測量されると、開始される。
【0068】
ステップS1では、制御部32は、各基準位置が設定されているか否かを判断する。制御部32は、具体的には、第1の基準位置B1及び第2の基準位置B2が設定されているかどうかを判断する。ステップS1で“NO”であれば、つまり、各基準位置が設定されていないのであれば、制御部32は、ステップS11に処理を進める。一方で、ステップS1で“YES”であれば、つまり、各基準位置が設定されているのであれば、制御部32は、ステップS3に処理を進める。
【0069】
ステップS3では、ずれ量算出部56は、確認位置Cを測量して、確認位置Cのずれ量Dを算出し、ステップS5では、判定部58は、そのずれ量Dが公差内か否かを判定する。ステップS7では、比高差算出部60は、第1の基準位置B1と、確認位置Cとの比高差Hを算出する。ステップS9では、制御部32は、各種算出結果及び判定結果をユーザ端末10に送信する。具体的に、ステップS9では、制御部32は、ステップS3で算出されたずれ量D、ステップS5での判定結果及びステップS7で算出された比高差H等の各種情報をユーザ端末10に送信する。
【0070】
ステップS11では、制御部32は、既に行われたユーザ操作に基づき、第1の基準位置B1を設定するかどうかを判断する。ステップS11“NO”であれば、つまり、第1の基準位置B1を設定しないのであれば、ステップS15で設定部54は、第2の基準位置B2を設定する。一方で、ステップS11“YES”であれば、つまり、第1の基準位置B1を設定するのであれば、ステップS13で設定部54は、第1の基準位置B1を設定する。なお、
図10に示すようなフローチャートは、必要に応じて中断することができる。
【0071】
以上のように本実施形態に係る測量装置30によれば、ずれ量算出部56が、第1の基準位置B1と第2の基準位置B2との両方と異なる位置である確認位置Cに関して、第1の基準位置B1とを結ぶ直線状の基準線Lからその確認位置Cまでのずれ量Dを算出することができる。そのため、2点を結ぶ直線からのずれ量Dを簡単に測定することができる。
【0072】
また、測量対象位置Aの測量結果は、それぞれ装置本体からの相対位置を示すため、測量装置の器械設置を行う必要がなくなり、より効率よく寸法の測定を行うことができる。
【0073】
さらに、ずれ量算出部56は、水平方向のうちの基準線Lと直行する方向に関し、確認位置Cのずれ量Dを算出する。そのため、確認位置Cに関し、最短のずれ量Dを測定することができる。
【0074】
さらにまた、判定部58によれば、確認位置Cのずれ量Dが、公差内か否かどうかを判定することができる。そのため、判定部58による判定結果を、例えばユーザ端末10等の外部に送信すれば、その判定結果を報知することができる。
【0075】
また、比高差算出部60によれば、確認位置Cのずれ量Dが算出されるとき、第1の基準位置B1及び第2の基準位置B2の少なくとも一方と、その確認位置Cとの比高差を算出することができる。そのため、基準線の端部の役割を担う2点と、その2点間の任意の点に関し、比高差Hも簡単に測定することができる。
【0076】
さらに、本実施形態に係る測量システム1によれば、測量装置30で得られる各種情報をユーザ端末10の表示部14で確認することができる。つまり、測量システム1によれば、ユーザ端末10で確認位置Cまでのずれ量Dを確認することができる。
【0077】
なお、本実施形態で示した具体的な構成、数値および画面は一例であり、本発明の態様は、本実施形態に示した構成に限定されるものではない。例えば、測量対象位置Aの測量結果を利用した各種項目の算出や、確認位置Cに関するずれ量Dが公差以内かどうかの判定等は、ユーザ端末10側で行われてもよい。
【0078】
また、本実施形態で示したフロー図、つまり、
図7は、一例であり、同じ効果が得られる場合には、各ステップの順番は任意に変更可能である。
【0079】
上記実施形態に係る開示を例示すると以下のとおりである。
[1]
測量対象位置を測量する測量部と、
前記測量部による測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する設定部と、
前記測量部による測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出するずれ量算出部とを備える、測量装置。
[2]
前記測量対象位置の測量結果は、それぞれ装置本体からの相対位置を示す、[1]に記載の測量装置。
[3]
前記ずれ量算出部は、水平方向のうち、前記基準線と直行する方向に関し、前記確認位置のずれ量を算出する、[1]又は[2]に記載の測量装置。
[4]
前記確認位置のずれ量が、公差内か否かどうかを判定する判定部をさらに備える、[1]から[3]のいずれか一項に記載の測量装置。
[5]
前記ずれ量算出部で、前記確認位置のずれ量が算出されるとき、前記第1の基準位置及び前記第2の基準位置の少なくとも一方と、当該確認位置との比高差を算出する比高差算出部をさらに備える、[1]から[4]のいずれか一項に記載の測量装置。
[6]
測量装置と、情報処理端末とが通信可能に接続される測量システムであって、
前記測量装置は、
測量対象位置を測量する測量部と、
前記測量部による測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する設定部と、
前記測量部による測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出するずれ量算出部とを備え、
前記情報処理端末は、
前記測量装置で得られる各種情報を表示する表示部を備える、測量システム。
[7]
測量装置における測量方法であって、
測量部が、測量対象位置を測量する測量工程と、
設定部が、前記測量工程による測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する設定工程と、
ずれ量算出部が、前記測量工程による測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出するずれ量算出工程とを含む、測量方法。
[8]
測量装置で実行される測量プログラムであって、
測量対象位置を測量する測量ステップと、
前記測量ステップによる測量結果から、第1の基準位置と第2の基準位置とを設定する設定ステップと、
前記測量ステップによる測量結果のうち、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置との両方と異なる位置である確認位置に関して、前記第1の基準位置と前記第2の基準位置とを結ぶ直線状の基準線から当該確認位置までのずれ量を算出するずれ量算出ステップとをコンピュータに実行させるための測量プログラム。
【符号の説明】
【0080】
1 測量システム
10 ユーザ端末
30 測量装置
52 測量部
54 設定部
56 ずれ量算出部
58 判定部
60 比高差算出部
A 測量対象位置
B1 第1の基準位置
B2 第2の基準位置
C 確認位置
D ずれ量
H 比高差
T ターゲット