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特開2024-145225電気自動車の被牽引時の発電防止機構及び該機構を用いた電気自動車の牽引方法
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  • 特開-電気自動車の被牽引時の発電防止機構及び該機構を用いた電気自動車の牽引方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145225
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電気自動車の被牽引時の発電防止機構及び該機構を用いた電気自動車の牽引方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20241004BHJP
   B60K 17/30 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K17/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057484
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】堀江 信也
(72)【発明者】
【氏名】木立 大介
(72)【発明者】
【氏名】安東 幸希
(72)【発明者】
【氏名】菅野 薫
(72)【発明者】
【氏名】中岡 彦太郎
【テーマコード(参考)】
3D043
3D235
【Fターム(参考)】
3D043AA05
3D043AA10
3D043AB01
3D043CA01
3D235BB13
3D235BB43
3D235CC12
3D235FF35
3D235HH61
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気自動車の被牽引時に該電気自動車の車軸の回転を電動モータに伝達しない簡単な構成の電気自動車の被牽引時の発電防止機構及び発電防止機構を用いた牽引方法を提供すること。
【解決手段】走行動力源としての電動モータ11-1、11-2と、該電動モータの回転力を減速部12-1、12-2を介して車軸20-1、20-2、22-1、22-2に伝達する動力伝達軸24-1、24-2、26-1、26-2と、車軸と共に回転する車輪14-1、14-2、16-1、16-2と、を有する電気自動車の被牽引時の発電防止機構において、車軸20-1、20-2、22-1、22-2と減速部12-1、12-2との間に、車軸と減速部とを連結又は非連結の状態に切替え可能な切替え部18が設けられ、電気自動車の牽引は、切替え部18によって車軸と減速部の連結を解除して、車軸の回転力が動力伝達軸に伝達されない状態で行われることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行動力源としての電動モータと、該電動モータの回転力を減速部を介して車軸に伝達する動力伝達軸と、前記車軸と共に回転する車輪と、を有する電気自動車の被牽引時の発電防止機構において、
前記電気自動車の前面部又は後面部に被牽引時に用いられる棒状連結部材が挿入可能であり、該挿入された前記棒状連結部材が係止される棒状連結部材受け部と、
前記車軸と前記減速部との間に設けられ、前記棒状連結部材の前記棒状連結部材受け部への前記挿入動作時に、前記車軸と前記減速部とを非連結状態とし、前記棒状連結部材の抜取り動作時に前記車軸と前記減速部とを連結状態とする切替え部と、
を有することを特徴とする電気自動車の被牽引時の発電防止機構。
【請求項2】
前記切替え部は、
前記動力伝達軸と共に回転するスプライン軸と、前記車軸と共に回転し、前記スプライン軸が嵌合可能なボスと、で構成され、
前記切替え部の切替え動作は、前記棒状連結部材の前記挿入動作に伴い、前記スプライン軸が前記ボスから離脱し、前記棒状連結部材の前記抜取り動作により嵌合することで行われることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の被牽引時の発電防止機構。
【請求項3】
前記電気自動車は、前記電動モータ、前記動力伝達軸、前記減速部、前記車軸及び前記切替え部を、車両の前後にそれぞれ前輪用、後輪用として有しており、前記切替え部は、
前記挿入動作及び抜取り動作時に前記前輪側の切替え部と前記後輪側の切替え部の双方を同時に切り替えるリンク機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気自動車の被牽引時の発電防止機構。
【請求項4】
請求項1に記載の電気自動車の被牽引時の発電防止機構を用いた電気自動車の牽引方法であって、
前記電気自動車の牽引は、
前記電気自動車の前記棒状連結部材受け部に前記棒状連結部材を挿入することで前記車軸と前記減速部とを非連結状態として行われ、
牽引終了時に、前記棒状連結部材の抜取り動作を行い前記車軸と前記減速部とを連結状態とすることを特徴とする電気自動車の牽引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の被牽引時の発電防止機構及び該機構を用いた電気自動車の牽引方法、特に電気自動車が牽引車で牽引される際に該牽引対象の車両での発電を防止する電気自動車の被牽引時の発電防止機構及び該機構を用いた電気自動車の牽引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の電動モータは車輪と連結されていることから、電動モータが停止中に車輪が回転されると、電動モータも回転することとなり、その回転により発電作用が生じる。この様な意図しない発電作用が生じた場合、すなわち、車輪の回転により電動モータが回転し逆起電力が発生した場合、その逆起電力が電動モータや高電圧部品に直接印加されるので、電動モータや高電圧部品に損傷が生じる恐れがある。したがって、電気自動車を牽引車で牽引する時は、牽引される電気自動車の車輪が回転されないように配慮する必要がある。
【0003】
そのため、電気自動車は、牽引する際は駆動輪を持ち上げて牽引する必要がある。すなわち、図5に示すように電気自動車52は牽引車50の荷台に載せて運搬するか(図5(a))、又は駆動輪を台車54に載せて牽引する(図5(b))ことになっている。このようにすれば、電動モータで発電が行われることが回避される。
【0004】
特許文献1では、同じく車両の牽引時における逆起電力の発生を防止する技術が開示されている。この車両では、電気モータ及び駆動輪間の動力伝達回路に、発進用変速段の確立のために係合する一方向クラッチと、発進用変速段以外の変速段の確立のために係合する変速クラッチがトランスミッションに設けられている。そして、このトランスミッションの中にさらにクラッチ手段を設け、このクラッチ手段により電動モータの回転軸と車軸の連結関係を解除することのできる構成が開示されている。
【0005】
特許文献2では、インバータ装置及び交流電動発電機の間を開閉器によって電気的に遮断し、被牽引走行により交流電動発電機の回転子が回転されて逆起電力が発生しても、交流電動発電機及びインバータ装置に短絡電流が流れることがないように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3522827号公報
【特許文献2】特開2008-182842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、クラッチ手段により車輪と電動モータ間の回転伝達を遮断している。この構成により回転伝達は確実に抑えられるが、トランスミッションにクラッチ手段を設けるためにトランスミッションの構造が複雑で大掛かりとなる。特許文献2では、開閉器によりインバータ装置と交流電動発電機の間を電気的に遮断しているが、開閉器により電気的に遮断しても、交流電動発電機により発電が行われているので、ケーブルや高電圧部品などに悪影響を及ぼす可能性が残っている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気自動車の被牽引時に該電気自動車の車軸の回転を電動モータに伝達しない簡単な構成の電気自動車の被牽引時の発電防止機構及び該機構を用いた電気自動車の牽引方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気自動車の被牽引時の発電防止機構の一実施の形態は、
走行動力源としての電動モータと、該電動モータの回転力を減速部を介して車軸に伝達する動力伝達軸と、前記車軸と共に回転する車輪と、を有する電気自動車の被牽引時の発電防止機構において、
前記電気自動車の前面部又は後面部に被牽引時に用いられる棒状連結部材が挿入可能であり、該挿入された前記棒状連結部材が係止される棒状連結部材受け部と、
前記車軸と前記減速部との間に設けられ、前記棒状連結部材の前記棒状連結部材受け部への前記挿入動作時に、前記車軸と前記減速部とを非連結状態とし、前記棒状連結部材の抜取り動作時に前記車軸と前記減速部とを連結状態とする切替え部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気自動車の被牽引時の発電防止機構及び該機構を用いた電気自動車の牽引方法によれば、簡単な構造により、電気自動車を牽引する際に、接地されて回転する車輪の回転が電動モータには伝達されず、電動モータによる発電は防止される。したがって、電気自動車の牽引を安全且つ安心して行うことが可能であり、電気自動車の種々の搭載部品の損傷も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電気自動車の被牽引時の発電防止機構の一実施の形態に係り、通常走行時の概略構成図である。
図2】本発明の電気自動車の被牽引時の発電防止機構の一実施の形態に係り、車両牽引時の概略構成図である。
図3図1の切替え部の詳細説明図である。
図4図2の切替え部の詳細説明図である。
図5】電気自動車の牽引の方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電気自動車の被牽引時の発電防止機構及び該機構を用いた電気自動車の牽引方法の一実施の形態について図面に基づいて詳述する。本発明の実施の形態に係る発電防止機構が適用される電気自動車としては、走行動力源としての電動モータと、該電動モータの回転動力を減速部を介して車軸に伝達する動力伝達軸と、車軸と共に回転する車輪とを、車両の前後にそれぞれ前輪用、後輪用として有しているものが用いられている。
【0013】
図1は、本発明の電気自動車の牽引時の発電防止機構10の一実施の形態に係り、主に電気自動車の動力伝達系について示している。電気自動車の前輪14-1、14-2及び後輪16-1、16-2は、それぞれ電動モータ11-1、11-2により駆動される構成になっている。すなわち、前輪14-1、14-2及び後輪16-1、16-2は、それぞれ減速部12-1、12-2を介して電動モータ11-1、11-2の動力が伝達されるように、前輪14-1、14-2及び後輪16-1、16-2は減速部12-1、12-2からそれぞれ延出する動力伝達軸24-1、24-2及び26-1、26-2に接続されている。
【0014】
また、車両の前面部には、車両の牽引の際に必要な棒状連結部材であるアイボルト13が挿入されるアイボルト受け部15が設けられている。アイボルト13は螺入されながらアイボルト受け部15内に挿入され係止される。
【0015】
本発明の発電防止機構10では、前輪14-1、14-2側の減速部12-1と車軸20-1、20-2との間、後輪16-1、16-2側の減速部12-2と車軸22-1、22-2との間には、アイボルト13のアイボルト受け部15への挿入動作時及び抜き取り時に、車軸20-1、20-2、22-1、22-2と減速部12-1、12-2とを非連結状態、連結状態に切り替えるための切替え部18が設けられている。
【0016】
すなわち、前輪14-1、14-2の車軸20-1、20-2は、それぞれ切替え部18、18に接続され、切替え部18、18は、減速部12-1から延出する動力伝達軸24-1、24-2に接続されている。同様に、後輪16-1、16-2の車軸22-1,22-2は、それぞれ切替え部18、18に接続され、切替え部18、18は、減速部12-2から延出する動力伝達軸26-1、26-2に接続されている。
【0017】
切替え部18の詳細は図3で述べるが、切替え部18は、動力伝達軸24-1、24-2、26-1、26-2の回転を車軸20-1、20-2、22-1、22-2に伝達するか又は遮断する機能を有する。換言すれば、切替え部18は、電気自動車の車軸20-1、20-2、22-1、22-2と動力伝達軸24-1、24-2、26-1、26-2と、を連結又は非連結状態とするものである。
【0018】
アイボルト13のアイボルト受け部15への挿入動作及び抜取り動作に基づく切替え部18の切り替えは、合計4つの切替え部18について、これを同時に行うことができる様にリンク機構が設けられている。すなわち車軸20-1、20-2、22-1、22-2と動力伝達軸24-1、24-2、26-1、26-2との非連結又は連結が全てリンクされる。
【0019】
なお、駆動輪が前輪14-1、14-2又は後輪16-1、16-2だけの場合には、このようなリンク機構は設けられず、その場合、アイボルト13のアイボルト受け部15への挿入動作により、直接、車軸20、22と減速機12とが非連結状態とされる。
【0020】
上記リンク動作における前輪14-1、14-2について説明すると、まず回転軸を有する円板部材28が取り付けられ、この円板部材28に右側連結棒32-1と左側連結棒32-2が取り付けられている。同様に、後輪16-1、16-2についても回転軸を有する円板部材30が取り付けられ、この円板部材30に右側連結棒34-1と左側連結棒34-2が取り付けられている。
【0021】
前輪14-1、14-2の円板部材28が車両の後方に回転されると、右側連結棒32-1は車両の左側にスライドし、左側連結棒32-2は車両の右側にスライドする。後輪16-1、16-2の円板部材30も同様に車両の後方に回転されると、右側連結棒34-1は車両の左側にスライドし、左側連結棒34-2は車両の右側にスライドする。そして、前輪14-1、14-2と後輪16-1、16-2の円板部材28、30が同時に回転されるように、前輪14-1、14-2の円板部材28と後輪16-1、16-2の円板部材30は、棒状部材41により連結されている。この棒状部材41を車両の後方にスライドすると、前輪14-1、14-2の円板部材28と後輪16-1、16-2の円板部材30は同時に回転する。棒状部材41は、付勢手段36により車両前方側に付勢されており、後方へのスライドを解除すると元に戻り、それぞれの円板部材28、30は元の状態に戻る。
【0022】
前輪14-1、14-2の右側連結棒32-1と左側連結棒32-2、後輪16-1、16-2の右側連結棒34-1と左側連結棒34-2は、詳細は図3で述べるが、それぞれ、切替え部18を構成している可動シャフト42を車両の左側又は右側にスライドできるように、可動シャフト42に設けられた爪部46に係止されている。
【0023】
なお、駆動輪が後輪16-1、16-2だけの場合には、アイボルト13のアイボルト受け部15への挿入動作により、連結棒34が左又は右にスライドすることで、可動シャフト42が左又は右にスライドする。これによって、車軸22と減速機12とが非連結状態とされる。
【0024】
図2は、牽引時における発電防止機構10の概略構成図であり、上記リンク機構の起動について示されている。電気自動車のリンク機構の棒状部材41は、アイボルト13が牽引のためにアイボルト受け部15に挿入されることにより車両の後方にスライドされる。すなわち、アイボルト13の挿入動作によって、リンク機能の棒状部材41が車両の後方にスライドされる構成になっている。
【0025】
棒状部材41が後方にスライドされると、前輪14-1、14-2の円板部材28及び後輪16-1、16-2の円板部材30が後方に回転し、前輪14-1、14-2及び後輪16-1、16-2の右側連結棒32-1、34-1は車両左側に、前輪14-1、14-2及び後輪16-1、16-2の左側連結棒32-2、34-2は、車両の右側にスライドする。このスライドにより、車両の前進方向の左側にある切替え部18においては可動シャフト42は、車両の右側にスライドする。車両の前進方向の右側にある切替え部18においては可動シャフト42は、車両の左側にスライドする。
【0026】
図3は、図1に示した切替え部18の詳細説明図である。上述の様に切替え部18は4つ設けられており、全て同じ構造を有している。ここでは車両の左後輪16-2側に設置された切替え部18について説明する。
【0027】
切替え部18は、筐体(図示していない)内に第1固定シャフト40、可動シャフト42、第2固定シャフト44が取り付けられている。第2固定シャフトは車軸22-2に直結している。第1固定シャフト40は、減速部12-2から延出する動力伝達軸26-2に直結している。可動シャフト42は、第1固定シャフト40と第2固定シャフト44の間で車両の左右方向にスライド可能に構成され、このスライドは、左側連結棒34-2により行われる。
【0028】
可動シャフト42は、第1固定シャフト40及び第2固定シャフト44に嵌合するようにスプライン軸構造を有しており、第1固定シャフト40及び第2固定シャフト44は、可動シャフト42のスプライン軸に嵌合するボス構造を有している。したがって、車軸22-2と減速部12-2との連結又は非連結が、スプライン軸とボスという機械的な構成の離脱又は嵌合のみにより行われる。これにより、簡単な機械構造で、車軸22-2と減速部12-2、さらに動力伝達軸26-2との連結又は非連結を容易に行うことができる。
【0029】
なお、可動シャフト42を車両の左右方向にスライド可能にするため、可動シャフト42には爪部46、左側連結棒34-2には爪部46に係止する係止部47が設けられている。
【0030】
図4は、図2に示した切替え部18の詳細説明図である。同様に、ここでは車両の左後輪側に設置された切替え部材18について説明する。
【0031】
切替え部18の可動シャフト42は、被牽引時、左側連結棒34-2が車両の右側にスライドことにより車両の右側にスライドする。これにより、第1固定シャフト40と可動シャフト42は嵌合状態、可動シャフト42と第2固定シャフトは離脱状態となる。その結果、車輪16-2が回転しても、この回転は動力伝達軸26-2に伝達されず、したがって電動モータも回転せず、発電することが防止される。
【0032】
他の3つの切替え部18についても同様である。すなわち、牽引時、各車輪14-1、14-2、16-1、16-2の車軸24-1、24-2、26-1、26-2と動力伝達軸24-1、24-2、26-1、26-2は切替え部18により非連結状態とされ、各車輪が回転しても電動モータ11-1、11-2には回転が伝達されない。したがって、通常の牽引方法で全輪を接地させ回転させながら牽引しても、電動モータでの発電は起きない。その結果、高電圧の発生も起きないことから高電圧部品、電動モータの保護が図られる。
【0033】
電気自動車を牽引するためにアイボルト13をアイボルト受け部15に挿入すると、リンク機構が作動され、前輪14-1、14-2及び後輪16-1、16-2の双方の切替え部18、18が操作される。これにより、4輪を接地させた状態での牽引が可能となる。すなわち、4輪駆動車において前輪14-1、14-2側及び後輪16-1、16-2側で、切替え部18によりそれぞれの車軸20、22と減速部12との間では、車軸20と減速部12とが非連結の状態に切り替えられているので、4輪が回転しても電動モータにその回転が伝達されることがない。
【0034】
更に、電気自動車を牽引する際には、牽引車と被牽引車とを繋ぐためのアイボルト13のアイボルト受け部15への挿入係止動作が行われるが、この動作によって、車軸20-1、20-2、22-1、22-2と減速部12-1、12-2とが機械的に非連結状態となるので、牽引時に牽引される電気自動車の車輪14-1、14-2、16-1、16-2の回転が生じたとしても、その回転力は、減速部12-1、12-2、さらに動力伝達軸24-1、24-2、26-1、26-2には伝達されない。したがって、アイボルト13のアイボルト受け部15への挿入係止動作という牽引時に常に行われる動作により、本発明の特徴である車軸20-1、20-2、22-1、22-2と減速部12-1、12-2の切り離しが同時に行われるので、切替え動作が簡単で且つ間違いなく迅速に行われる。
【0035】
また、本発明の電気自動車の牽引方法は、電気自動車の被牽引時の発電防止機構を用いた電気自動車の牽引方法であって、電気自動車の牽引は、電気自動車の棒状連結部材受け部15に棒状連結部材13を挿入することで車軸20、22と減速部12とを非連結状態として行われ、牽引終了時に、棒状連結部材13の抜取り動作を行い車軸20、22と減速部12とを連結状態とすることを特徴とする。
【0036】
これにより、接地されて回転する車輪14、16の回転が電動モータ11には伝達されず、電動モータ11による発電は防止される。したがって、電気自動車の牽引を安全且つ安心して行うことが可能であり、電気自動車の種々の搭載部品の損傷も防止される。
【0037】
本実施形態の電気自動車の牽引時の発電防止機構及び該機構を用いた電気自動車の牽引方法によれば、この方法によれば、電気自動車を牽引する際に、切替え部18によって当該電気自動車の車軸20-1、20-2、22-1、22-2と動力伝達軸24-1、24-2、26-1、26-2とを非連結状態とすることで、電動モータに繋がれている車輪が接地されて牽引されその車輪が回転した場合でも、その車輪の回転が電動モータ11-1、11-2には伝達されず、電動モータでの発電作用が生じることがない。すなわち、車輪が回転しても切替え部でその回転による回転力の伝達が遮断される。したがって、電気自動車は牽引車に載せなくても、また電気自動車の電動モータに繋がっている車輪を台車に載せるという作業を行うことなく通常の牽引が可能となる。これにより、電気自動車の通常の牽引が可能であり、牽引作業の低コスト化、簡単化が図られる。
【0038】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、リンク機構は、円板部材28、30、棒状部材41、右側連結棒32-1、34-1、左側連結棒32-2、34-2を有して構成したが、円板部材28、30は、円形に拘らず三角形であっても良い。また、切替え部18の可動シャフト42をスライトさせるために、可動シャフト42に爪部46、連結棒32、34に係止部47を設けたがこの構成に限らない。
【符号の説明】
【0039】
10 発電防止機構
12-1、12-2 減速部
14-1、14-2 前輪
13 アイボルト(棒状連結部材)
15 アイボルト受け部(棒状連結部材受け部)
16-1、16-2 後輪
18 切替え部
20-1、20-2 車軸(前輪)
22-1、22-2 車軸(後輪)
24-1、24-2 動力伝達軸(前輪)
26-1、26-2 動力伝達軸(後輪)
28 円板部材(前輪)
30 円板部材(後輪)
32-1 左側連結棒(前輪)
32-2 右側連結棒(前輪)
34-1 左側連結棒(後輪)
34-2 右側連結棒(後輪)
40 第1固定シャフト
41 棒状部材
42 可動シャフト
44 第2固定シャフト
46 爪部
47 係止部
50 牽引車
52 電気自動車
54 台車
図1
図2
図3
図4
図5