IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 不二製油株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145227
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】チーズ様食品
(51)【国際特許分類】
   A23C 20/00 20060101AFI20241004BHJP
   A23D 7/01 20060101ALI20241004BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
A23C20/00
A23D7/01
A23L5/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057488
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 雄亮
【テーマコード(参考)】
4B001
4B026
4B035
【Fターム(参考)】
4B001AC07
4B001AC17
4B001AC26
4B001AC40
4B001AC46
4B001BC01
4B001BC07
4B001BC08
4B001EC04
4B026DC06
4B026DG02
4B026DK03
4B026DK04
4B026DK10
4B026DL01
4B026DL03
4B026DL08
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B026DX03
4B035LC16
4B035LE05
4B035LG01
4B035LG02
4B035LG07
4B035LG11
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG51
4B035LK13
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP43
4B035LP55
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、シュレッドなどが可能な成形加工適性を有し、さらに加熱により良好な糸引き性を有し、かつ、加熱後の油分離が抑制された、チーズ様食品を提供することを課題とする。
【解決手段】(a)~(d)の全てを満たすことを特徴とするチーズ様食品とする。
(a)レンネットカゼインを含有する。
(b)リン酸二水素ナトリウムを含有する。
(c)コハク酸モノグリセリド、HLB1であるショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の乳化剤を含有する。
(d)油脂を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(d)の全てを満たすチーズ様食品。
(a)レンネットカゼインを含有する。
(b)リン酸二水素ナトリウムを含有する。
(c)コハク酸モノグリセリド、HLB1であるショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の乳化剤を含有する。
(d)油脂を含有する。
【請求項2】
更に、(e)を満たす、請求項1に記載のチーズ様食品。
(e)カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム、及びカゼインナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上を含有する。
【請求項3】
(a)レンネットカゼインを3~33質量%含有する、請求項1又は2に記載のチーズ様食品。
【請求項4】
(b)リン酸二水素ナトリウムを0.1~4.3質量%含有する、請求項1又は2に記載のチーズ様食品。
【請求項5】
(c)コハク酸モノグリセリド、HLB1であるショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の乳化剤を0.01~2質量%含有する、請求項1又は2に記載のチーズ様食品。
【請求項6】
(a)レンネットカゼイン、及び、(e)カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム、及びカゼインナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上の総量が、チーズ様食品中3~33質量%である、請求項2に記載のチーズ様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ様食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チーズとは、牛・水牛・羊・山羊・ヤクなどからとれる乳を原料とし、凝固や発酵などの加工をしてつくられる食品(乳製品)の一種であり、そのまま食する以外に、他の食品と組み合わせて用いられることも多く、例えばピザやパスタ、グラタン、リゾット、チーズフォンデュ等々、様々な料理に用いられ、その需要は年々増加している。
【0003】
チーズは他の食品と組み合わされて用いられる場合、加熱調理されることが多く、加熱時の糸引き性を有することが好ましい。
さらに、ピザやグラタン等に用いられるチーズは、調理の際の使いやすさや加熱調理時の溶けやすさから、ブロック状のチーズを削ったり、スライスしたりといった成形チーズとして利用されることが多く、シュレッドできるような成形加工適性も求められている。
【0004】
チーズ類の糸引き性改良手段の1つとして、レンネットないしはレンネット反応を施したカゼイン素材であるレンネットカゼインの利用が挙げられる。
チーズ類の糸引き性に関する出願としては、例えば特許文献1~3が存在する。特許文献1では、「原料ナチュラルチーズの配合量が全体の20~60重量%の「チーズフード」または「乳等を主要原料とする食品」であって、加熱時の糸引き性が100mm以上であることを特徴とするチーズ様食品」に関して記載されている。特許文献2では、「レンネットカゼインおよび寒天を含み、チーズを含まない原料を混合する工程、得られた混合物を加熱・溶融し、pHを調整する工程、を含むチーズ様食品の製造方法」について記載されている。
特許文献3は、「溶融塩と乳化剤とを併用して製造されるチーズ類において、乳化剤がW/O型用乳化剤であり、脂肪含有率が4~23重量%であることを特徴とする低脂肪チーズ類」について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-159906号公報
【特許文献2】国際公開2020/218428号
【特許文献3】特開平6-276936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3は、レンネットを利用する糸引き性を有するチーズ類に関する出願であるが、その効果は不十分であり、より良好な糸引き性を有するチーズ類が求められている。さらに、糸引き性に加え、ピザやグラタン等に用いられるシュレッドできるような成形加工適性を有するチーズ類が求められているが、糸引き性および成形加工適性を兼ね備えることは困難であった。
また、チーズ類に含有する油脂の量が多いと加熱後に油分離が生じる場合があり、チーズらしい食感が失われやすく、歯ごたえのない食感になる場合がある。
【0007】
かかる状況に鑑みて、本発明は、シュレッドなどが可能な成形加工適性を有し、さらに加熱により良好な糸引き性を有し、かつ、加熱後の油分離が抑制された、チーズ様食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
なお、特許文献1は、「原料ナチュラルチーズの配合量が全体の20~60重量%の「チーズフード」または「乳等を主要原料とする食品」」を必須とするため、本発明を完成させる上で参考とはならなかった。特許文献2は、「寒天」を必須としていた。また、特許文献3は「W/O型用乳化剤」を必須としていた。よって、特許文献2~3は、本発明とは解決手段が異なっており、本発明を完成させる上で参考とはならなかった。
【0009】
本発明者らは、シュレッドなどが可能な成形加工適性を有し、さらに加熱により良好な糸引き性を有し、かつ、加熱後の油分離が抑制された、チーズ様食品を提供することが出来れば、更なる市場の拡大につながるのではないかと、鋭意検討を重ねた。その結果、蛋白質として(a)レンネットカゼイン、溶融塩として(b)リン酸二水素ナトリウム、乳化剤として(c)コハク酸モノグリセリド、HLB1であるショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の乳化剤、および(d)油脂を含有することで、前記課題を解決し本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、
(1)下記(a)~(d)の全てを満たす、チーズ様食品、
(a)レンネットカゼインを含有する、
(b)リン酸二水素ナトリウムを含有する、
(c)コハク酸モノグリセリド、HLB1であるショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の乳化剤を含有する、
(d)油脂を含有する、
(2)更に、(e)を満たす、(1)に記載のチーズ様食品、
(e)カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム、及びカゼインナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上を含有する、
(3)(a)レンネットカゼインを3~33質量%含有する、(1)又は(2)に記載のチーズ様食品、
(4)(b)リン酸二水素ナトリウムを0.1~4.3質量%含有する、(1)又は(2)に記載のチーズ様食品、
(5)(c)コハク酸モノグリセリド、HLB1であるショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の乳化剤を0.01~2質量%含有する、(1)又は(2)に記載のチーズ様食品、
(6)(a)レンネットカゼイン、及び、(e)カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム、及びカゼインナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上の総量が、チーズ様食品中3~33質量%である、(2)に記載のチーズ様食品、
に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、シュレッドなどが可能な成形加工適性を有し、さらに加熱により良好な糸引き性を有し、かつ、加熱後の油分離が抑制された、チーズ様食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(チーズ様食品)
本発明に係るチーズ様食品は、油脂類、水分、蛋白質、溶融塩及び乳化剤を含有する、水中油型乳化物の食品のことを言う。本発明におけるチーズ様食品は、蛋白質として(a)レンネットカゼイン、溶融塩として(b)リン酸二水素ナトリウム、乳化剤として(c)コハク酸モノグリセリド、HLB1であるショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の乳化剤、および(d)油脂を含有することを特徴とするものである。かかる成分を含有することにより、シュレッドなどが可能な成形加工適性を有し、さらに加熱により良好な糸引き性を有し、かつ、加熱後の油分離が抑制された、チーズ様食品を得ることができる。
以下に、本発明に係るチーズ様食品について、詳細を説明する。
【0013】
(蛋白質)
本発明のチーズ様食品は、蛋白質としてレンネットカゼインを含有することを特徴とする。レンネットカゼインの含量は、チーズ様食品中3~33質量%であることが好ましく、より好ましくは4~30質量%であり、さらに好ましくは5~25質量%である。すなわち、下限は3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上又は6.5質量%以上などとすることができる。また、上限が、33質量%以下、30質量%以下、28質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下又は10質量%以下などとすることができる。
【0014】
また、レンネットカゼインに加え、更に、カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム、及びカゼインナトリウムからなる群から選ばれる1種以上のカゼインを含有することが好ましい。レンネットカゼインに加え、カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム、及びカゼインナトリウムからなる群から選ばれる1種以上のカゼインを併用する場合は、総量としてチーズ様食品中3~33質量%であることが好ましく、より好ましくは4~30質量%であり、さらに好ましくは5~25質量%である。カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム、及びカゼインナトリウムからなる群から選ばれる1種以上のカゼインの含量は、チーズ様食品中0.5~5質量%が好ましい。より好ましくは、下限が0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1質量%以上又は1.5質量%以上などとすることができる。また、好ましくは上限が、4.5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下又は3質量%以下などとすることができる。
【0015】
(溶融塩)
本発明のチーズ様食品は、溶融塩としてリン酸二水素ナトリウムを含有することを特徴とする。リン酸二水素ナトリウムの含量は、チーズ様食品中0.1~4.3質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~4質量%であり、さらに好ましくは0.8~3.5質量%、最も好ましくは1~3質量%である。すなわち、好ましくは、下限が0.1質量%、0.3質量%、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1質量%以上又は1.1質量%以上などとすることができる。また、好ましくは上限が、4.3質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、2質量%以下、1.9質量%以下、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下又は1.4質量%以下などとすることができる。
【0016】
(乳化剤)
本発明のチーズ様食品は、乳化剤を使用する必要がある。乳化剤としては、コハク酸モノグリセリド、HLB1であるショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種以上を使用することを特徴とする。特に、本発明ではコハク酸モノグリセリドであることが好ましい。前記した乳化剤の含量は、チーズ様食品中0.01~2質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~1.5量%であり、さらに好ましくは0.1~1質量%である。すなわち、好ましくは、下限が0.02質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上又は0.1質量%以上などとすることができる。また、好ましくは上限が、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.3質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下又は0.5質量%以下などとすることができる。前記した特定の乳化剤を所定量使用することで、チーズ様食品の加熱後の油分離を抑制し、よりチーズらしい外観及び食感であるチーズ様食品を得ることができる。
なお、前記した乳化剤は、特に制限はなく、主に市販品を使用することができる。例えば、コハク酸モノグリセリド(理研ビタミン株式会社製「ポエムB-30」、HBL5.5)、ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカル株式会社製「リョートーシュガーエステルP170」、HLB1)、ソルビタン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製「ポエムS-320YN」)などを例示できる。
【0017】
(油脂)
本発明のチーズ様食品は、油脂を含有する。該油脂は、上昇融点が20~50℃である油脂を含有することが好ましい。より好ましくは上昇融点が25~40℃、更に好ましくは27~38℃、最も好ましくは30~37℃である油脂を含有することが、加工適性、口溶け、食感の点から好ましい。
【0018】
また、本発明のチーズ様食品は風味、口溶け、食感の点から、油脂のSFC(固体脂含量)が10℃で45%以上かつ20℃で15%以上が好ましく、より好ましくは、10℃でのSFCが50%以上、20℃でのSFCが25%以上であり、さらに好ましくは、10℃でのSFCが53%以上、20℃でのSFCが26%以上であり、さらにより好ましくは、10℃でのSFCが55%以上、20℃でのSFCが27%以上であることが加工適性の点から好ましい。
【0019】
さらに、上記の油脂の中でもP2O型トリグリセリドを8%以上、より好ましくは10%以上含むものが、チーズ様食品の成形加工適性の点から好ましい。P2O(但し、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を示す)型トリグリセリドは、トリグリセリド分子内における脂肪酸の位置異性体を限定するものではなく、1,3-パルミトイル,2-オレイルグリセリンと1,2-パルミトイル,3-オレイルグリセリンの双方を意味する。P2O型トリグリセリドは、パーム油を分別して得られるパームオレインを更に分別して得られるパーム油中融点部を使用するのが好ましいが、それらを硬化したり、あるいはオレイン酸、パルミチン酸を含む油脂のエステル交換等によっても得ることができる。
【0020】
また、本発明におけるチーズ様食品の油脂の含量は、上記油脂以外の原料中に含まれる脂質も含めた脂質含量として、10~50質量%含有することが好ましく、より好ましくは15~45質量%、さらに好ましくは20~40質量%含有することが好ましい。上記の油分において、油脂がより良好な結晶のネットワークを形成し、酸処理澱粉の老化が進行することで、チーズ様食品の成形加工適性が得られると考えられる。
【0021】
本発明のチーズ様食品は、植物性油脂以外の油脂として、バター、生クリームなどに由来する乳脂などを少量含有することもでき、チーズ様食品の風味を向上させることができる。また、チーズ様食品中にナチュラルチーズ及び/又はプロセスチーズを含有させることもできる。少量のナチュラルチーズ及び/又はプロセスチーズを含有させることにより、よりチーズ様食品の風味を向上させることができる。
また、本発明のチーズ様食品は、バター、ナチュラルチーズ及びプロセスチーズからなる群より選ばれる1以上を含まず、0質量%とすることもできる。バター、ナチュラルチーズ及びプロセスチーズからなる群より選ばれる1以上が0質量%であっても、シュレッドなどが可能な成形加工適性を有し、さらに加熱により良好な糸引き性を有し、かつ、加熱後の油分離が抑制された、チーズ様食品を提供することができる。
【0022】
(酸処理澱粉)
本発明のチーズ様食品は酸処理澱粉を含有することが好ましい。酸処理澱粉とは未処理の澱粉を塩酸や硫酸等の酸で処理した加工澱粉であり、エンドウ由来、馬鈴薯由来、タピオカ由来、米由来、ワキシーコーン由来、コーン由来などの酸処理澱粉を使用することができ、これらの中でもチーズ様食品の加工適性の点から原料由来では、エンドウ由来、馬鈴薯由来の酸処理澱粉を用いることが好ましい。また、チーズ様食品調製時における調合粘度の点からはエンドウ由来の酸処理澱粉を用いることが最も好ましい。
本発明においては、酸処理澱粉をチーズ様食品中に好ましくは3~20質量%、より好ましくは4~16質量%、更に好ましくは5~12質量%含有することが好ましい。
【0023】
(水分)
本発明のチーズ様食品で用いることができる水分としては、飲用に適する限り特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラルウォーター等を用いることができる。本発明のチーズ様食品の水分含量は、上記水以外の原料中に含まれる水分も含めた水分含量として、40~80質量%が好ましく、43~70質量%がより好ましく、44~60質量%がさらに好ましい。
【0024】
(その他の成分)
その他の成分では、公知の添加剤として、乳酸等のpH調整剤等を使用することができる。さらに本発明のチーズ様食品は、風味付与の目的でミルクフレーバー、チーズフレーバーなどの香料、各種香辛料、フルーツピューレやジャム類、甘味付与の目的でスクラロース、アスパルテーム、ステビアなどの甘味料、また着色の目的でベータカロチンやパプリカ色素、アナトー色素などの着色料を使用することができる。また、日持ち向上の目的で、グリシン、酢酸ナトリウム、卵白リゾチームなどの日持ち向上剤を使用することもできる。
【0025】
(pH)
本発明のチーズ様食品のpHは、5.5以上5.8以下のpHであることが好ましい。より好ましくはpH5.5~5.7、更に好ましくはpH5.5~5.6にすることが好ましい。その際、該チーズ様食品には、原料を混合した後のpH又は乳酸発酵物の発酵停止時のpHによっては、必要により乳酸やクエン酸等の有機酸、あるいは逆にアルカリ剤を添加し、適宜目的とするpHに調整することが好ましい。
【0026】
(チーズ様食品の製造)
本発明のチーズ様食品の製造方法としては、例えば、油脂、レンネットカゼイン、酸処理澱粉、食塩、溶融塩、乳化剤、pH調整剤、香料、色素および水が混合された水中油型乳化物を予備乳化、均質化した後、殺菌及び冷却の工程を経て製造することができる。予備乳化の際、有機酸やアルカリ性塩を用いてpHを5.5~5.8に調整するが、水中油型乳化物を乳酸発酵することによりpHを調整することもできる。
【0027】
(シュレッド性)
本発明のチーズ様食品は、良好なシュレッド性を示す。
チーズ様食品のシュレッド性の評価方法は以下の方法で行う。
ハンディシュレッダー(Presto 02910 Salad Shooter Electric Slicer)にて4℃におけるチーズ様食品200gをシュレッドし、その回収率をシュレッド性(%)として評価する。シュレッド性が60%以上であるものを、シュレッド性を示すとする。
【0028】
(糸引き性)
本発明のチーズ様食品は、加熱による良好な糸引き性を示す。
チーズ様食品の糸引き性の評価方法は以下の方法で行う。
(1)まず、シュレッド状に成形したチーズ様食品20gをアルミ皿(直径40mm、高さ35mm)に移し、オーブントースター750Wで3分30秒加熱。
(2)ステンレス製のスプーンでチーズ様食品を持ち上げ、アルミ皿中のチーズ様食品の表面とスプーンの先端との距離を測定し、10回測定した中で最大の距離が20cm以上であるものを、糸引き性を示すとする。
【0029】
(硬さ)
本発明のチーズ様食品は、5℃におけるレオメーター(ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)による硬さが250g~1000g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec)であることが好ましく、より好ましくは400g~900g/19.6mmであり、さらに好ましくは450g~800g/19.6mmの硬さであることが好ましい。かかる硬さを有するチーズ様食品は、調理に適した形状に成形することができる成形加工に適した物性となる。
なお、レオメーター(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec)にて、5cm角の立方体の形状に切り出したチーズ様食品の上面から24mm進入時の荷重を計測するものとする。
【0030】
(成形チーズ様食品)
さらに本発明のチーズ様食品は上記の物性を有することにより、調理に適した形状に成形することができる成形加工適性を有し、押出成形機などを用いて押出成形された、糸引き性が良好な成形チーズ様食品を提供することが可能となる。
【0031】
本発明のチーズ様食品は、油圧装置、押出シリンダー、成形ノズル、カット装置を含む製造装置において、あらかじめ品温調整されたブロック状のチーズ様食品を、成形ノズル室に投入し、油圧装置により、押出シリンダーに圧力を加えることで、成形ノズルから押し出されたチーズ様食品を適当な長さでカットすることにより、「チップ状」成形チーズ様食品を得ることができる。
成形チーズ様食品の好ましい形状としては、例えば、断面形状が、一片の長さが3.5~7mm程度の正方形、あるいは直径が5~10mm程度の円形で、長さが10~30mm程度の棒状あるいは円柱状であり、より好ましくは、直径6~8mmの円形で、長さが15~20mm程度の「チップ状」が、さまざまな調理に適した形状として好ましい。
【0032】
(加熱後の油分離)
さらに、本発明のチーズ様食品は、加熱後に油分離せず良好な外観を有するものである。本発明におけるチーズ様食品を、ピザなどの食品にトッピングし、加熱した場合において、加熱後の油分離が抑制されることで、チーズらしい外観を有することができる。さらに、加熱後の油分離が抑制されることで、チーズらしい良好な風味および食感を有するチーズ様食品を提供することができるものである。
【0033】
以下に実施例を記載する。以下「%」及び「部」は特に断りのない限り「質量%」及び「質量部」を意味するものとする。
【実施例0034】
○pHの測定
pHの測定は、チーズ様食品をシュレッドしたものと等量のイオン交換水を用いて、十分に攪拌及び混合し、懸濁液の状態で測定した。
【0035】
○硬さ
硬さは、製造後7日目の実施例及び比較例で得られたチーズ様食品を5cm角の立方体の形状に切り出し、5℃におけるレオメーター(ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)で、直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/secの条件で測定した。なお、5cm角の立方体の上面から24mm進入時における最大荷重を計測した。硬さが250g~1000g/19.6mmである範囲を合格品質とした。
【0036】
○シュレッド性の評価
ハンディシュレッダー(Presto 02910 Salad Shooter Electric Slicer)にて4℃における実施例及び比較例の各サンプル200gをシュレッドし、その回収率をシュレッド性(%)として評価した。シュレッド性が60%以上のものを合格品質とした。
【0037】
○糸引き性の評価
(1)シュレッド状に成形したチーズ様食品20gをアルミ皿(直径40mm、高さ35mm)に移し、オーブントースター750Wで3分30秒加熱した。
(2)ステンレス製のスプーンでチーズ様食品を持ち上げ、アルミ皿中のチーズ様食品の表面とステンレス製のスプーンの先端との距離を測定し、10回測定した中で最大の距離が20cm以上であるものを、糸引き性を示すとし、合格品質とした。
【0038】
○加熱後の油分離
加熱後の油分離は、「○糸引き性の評価」の際のオーブントースター加熱直後に、目視で油の分離の有無を確認した。油分離のないものを「良好」、油分離があるものを「不良」と評価した。油分離がなく「良好」であるサンプルを合格品質とした。
【0039】
○チーズ様食品の調製
(実施例1)
精製パーム油(上昇融点37℃/SFC:10℃で55%、20℃で27%/P2O型トリグリセリド含量30%)32.2部、エンドウマメ由来の酸処理澱粉8.5部、食塩0.6部、水47.16部、リン酸二水素ナトリウム1.2部、レンネットカゼイン9.8部、コハク酸モノグリセリド0.24部、乳酸を含むpH調整剤0.3部を55℃で10分間調合し、さらに100Kg/cmの圧力下で均質化した。
均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80~90℃で加熱殺菌、充填し、トンネルフリーザーにて急冷後、冷蔵庫でエージングを行い、実施例1のチーズ様食品を得た。
得られた実施例1のチーズ様食品の脂質含量は32.2%、蛋白質含量は8.0%、水分は48.0%、pHは5.65であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが661g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性78.9%、糸引き性90cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0040】
(実施例2)
実施例1のレンネットカゼインを8.8部使用し、更にカゼインカルシウム1.0部使用する以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、実施例2のチーズ様食品を得た。
得られた実施例2のチーズ様食品の脂質含量は32.2%、蛋白質含量は8.1%、水分は48.0%、pHは5.67であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが780g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性93.1%、糸引き性81cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0041】
(実施例3)
実施例1のレンネットカゼインを7.8部使用し、更にカゼインカルシウム2.0部使用する以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、実施例3のチーズ様食品を得た。
得られた実施例3のチーズ様食品の脂質含量は32.2%、蛋白質含量は8.1%、水分は48.0%、pHは5.62であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが545g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性95.4%、糸引き性50cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0042】
(実施例4)
実施例1のレンネットカゼインを6.8部使用し、更にカゼインカルシウム3.0部使用する以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、実施例4のチーズ様食品を得た。
得られた実施例4のチーズ様食品の脂質含量は32.2%、蛋白質含量は8.2%、水分は48.0%、pHは5.68であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが484g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性95.9%、糸引き性24cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0043】
(実施例5)
実施例1のレンネットカゼインを6.8部使用し、更にカゼインマグネシウム3.0部使用する以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、実施例5のチーズ様食品を得た。
得られた実施例5のチーズ様食品の脂質含量は32.2%、蛋白質含量は8.2%、水分は48.0%、pHは5.75であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが569g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性97.4%、糸引き性77cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0044】
(比較例1)
精製パーム油(上昇融点37℃/SFC:10℃で55%、20℃で27%/P2O型トリグリセリド含量30%)30.24部、エンドウマメ由来の酸処理澱粉8.44部、食塩0.59部、水49.07部、リン酸二水素ナトリウム0.79部、カゼインナトリウム9.82部、コハク酸モノグリセリド0.24部、乳酸を含むpH調整剤0.81部を55℃で10分間調合し、さらに100Kg/cmの圧力下で均質化した。
均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80~90℃で加熱殺菌、充填し、トンネルフリーザーにて急冷後、冷蔵庫でエージングを行い、比較例1のチーズ様食品を得た。
得られた比較例1のチーズ様食品の脂質含量は30.2%、蛋白質含量は9.1%、水分は49.5%、pHは5.76であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが282g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性が38%と低く、さらに糸引き性6cmと糸引き性を有さなかった。
【0045】
(比較例2)
比較例1のカゼインナトリウムの代わりにカゼインマグネシウム9.82部使用する以外は、比較例1の配合及び製法と同様にして、比較例2のチーズ様食品を得た。
得られた比較例2のチーズ様食品の脂質含量は30.8%、蛋白質含量は9.0%、水分は49.5%、pHは6.25であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが263g/19.6mm(直径5mm円プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性が15%と低く、さらに糸引き性2.5cmと糸引き性を有さなかった。
【0046】
(比較例3)
精製パーム油(上昇融点37℃/SFC:10℃で55%、20℃で27%/P2O型トリグリセリド含量30%)32.3部、エンドウマメ由来の酸処理澱粉8.47部、食塩0.59部、水47.26部、リン酸二水素ナトリウム1.18部、カゼインカルシウム9.85部、コハク酸モノグリセリド0.24部、乳酸を含むpH調整剤0.11部を55℃で10分間調合し、さらに100Kg/cmの圧力下で均質化した。
均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80~90℃で加熱殺菌、充填し、トンネルフリーザーにて急冷後、冷蔵庫でエージングを行い、比較例3のチーズ様食品を得た。
得られた比較例3のチーズ様食品の脂質含量は32.3%、蛋白質含量は8.6%、水分は49.2%、pHは5.57であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが553g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性が41%と低く、さらに糸引き性5cmと糸引き性を有さなかった。
【0047】
(比較例4)
精製パーム油(上昇融点37℃/SFC:10℃で55%、20℃で27%/P2O型トリグリセリド含量30%)32.23部、エンドウマメ由来の酸処理澱粉8.45部、食塩0.59部、水47.16部、リン酸二水素ナトリウム1.18部、カゼインナトリウム6.88部、レンネットカゼイン2.95部、コハク酸モノグリセリド0.24部、乳酸を含むpH調整剤0.32部を55℃で10分間調合し、さらに100Kg/cmの圧力下で均質化した。
均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80~90℃で加熱殺菌、充填し、トンネルフリーザーにて急冷後、冷蔵庫でエージングを行い、比較例4のチーズ様食品を得た。
得られた比較例4のチーズ様食品の脂質含量は32.2%、蛋白質含量は8.7%、水分は47.7%、pHは5.6であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが581g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
比較例4はシュレッド性68.7%であった。また、糸引き性5cmと糸引き性を有さなかった。
【0048】
(実施例6)
実施例1の精製パーム油(上昇融点37℃/SFC:10℃で55%、20℃で27%/P2O型トリグリセリド含量30%)を31.2部、水47.06部、リン酸二水素ナトリウム1.3部使用し、更にカゼインカルシウム1.0部使用する以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、実施例6のチーズ様食品を得た。
得られた実施例6のチーズ様食品の脂質含量は31.2%、蛋白質含量は9.0%、水分は48.0%、pHは5.75であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが630g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性89.6%、糸引き性40cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0049】
(比較例5)
精製パーム油(上昇融点37℃/SFC:10℃で55%、20℃で27%/P2O型トリグリセリド含量30%)31.2部、エンドウマメ由来の酸処理澱粉8.44部、食塩0.59部、水47.1部、クエン酸ナトリウム1.32部、レンネットカゼイン9.81部、カゼインカルシウム0.98部、コハク酸モノグリセリド0.24部、乳酸を含むpH調整剤0.32部を55℃で10分間調合し、さらに100Kg/cmの圧力下で均質化した。
均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80~90℃で加熱殺菌、充填し、トンネルフリーザーにて急冷後、冷蔵庫でエージングを行い、比較例5のチーズ様食品を得た。
得られた比較例5のチーズ様食品の脂質含量は31.2%、蛋白質含量は8.9%、水分は48.1%、pHは5.62であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが604g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
比較例5はシュレッド性98.1%であった。また、糸引き性0cmと糸引き性を有さなかった。
【0050】
(比較例6)
比較例5のクエン酸ナトリウムに代え、ポリリン酸ナトリウム1.32部使用する以外は、比較例5の配合及び製法と同様にして、比較例6のチーズ様食品を得た。
得られた比較例6のチーズ様食品の脂質含量は31.2%、蛋白質含量は8.9%、水分は48.1%、pHは6.03であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが641g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
比較例6はシュレッド性95.2%であった。また、糸引き性0cmと糸引き性を有さなかった。
【0051】
(実施例7)
精製パーム油(上昇融点37℃/SFC:10℃で55%、20℃で27%/P2O型トリグリセリド含量30%)35.15部、エンドウマメ由来の酸処理澱粉7.46部、食塩0.59部、水44.24部、リン酸二水素ナトリウム1.24部、レンネットカゼイン9.82部、カゼインカルシウム0.98部、コハク酸モノグリセリド0.24部、乳酸を含むpH調整剤0.28部を55℃で10分間調合し、さらに100Kg/cmの圧力下で均質化した。
均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80~90℃で加熱殺菌、充填し、トンネルフリーザーにて急冷後、冷蔵庫でエージングを行い、実施例7のチーズ様食品を得た。
得られた実施例7のチーズ様食品の脂質含量は35.1%、蛋白質含量は8.9%、水分は45.2%、pHは5.8であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが266g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性67.3%、糸引き性80cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0052】
(実施例8)
精製パーム油(上昇融点37℃/SFC:10℃で55%、20℃で27%/P2O型トリグリセリド含量30%)35.2部、エンドウマメ由来の酸処理澱粉7.4部、食塩0.59部、水44.24部、リン酸二水素ナトリウム1.24部、レンネットカゼイン9.83部、カゼインカルシウム1部、コハク酸モノグリセリド0.2部、乳酸を含むpH調整剤0.3部を55℃で10分間調合し、さらに100Kg/cmの圧力下で均質化した。
均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80~90℃で加熱殺菌、充填し、トンネルフリーザーにて急冷後、冷蔵庫でエージングを行い、実施例8のチーズ様食品を得た。
得られた実施例8のチーズ様食品の脂質含量は35.2%、蛋白質含量は8.9%、水分は45.1%、pHは5.7であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが508g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性95.9%、糸引き性50cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0053】
(実施例9)
実施例8のコハク酸モノグリセリドを0.1部、水を44.34部使用する以外は、実施例8の配合及び製法と同様にして、実施例9のチーズ様食品を得た。
得られた実施例9のチーズ様食品の脂質含量は35.2%、蛋白質含量は8.9%、水分は45.1%、pHは5.63であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが520g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性95.7%、糸引き性40cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0054】
(実施例10)
実施例8のコハク酸モノグリセリド0.2部を、HLB1のショ糖脂肪酸エステルA(三菱ケミカル株式会社製「リョートーシュガーエステルP170」)0.24部に代えて、水を44.2部使用する以外は、実施例8の配合及び製法と同様にして、実施例10のチーズ様食品を得た。
得られた実施例10のチーズ様食品の脂質含量は35.2%、蛋白質含量は8.9%、水分は45.1%、pHは5.66であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが809g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性97%、糸引き性40cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0055】
(実施例11)
実施例8のコハク酸モノグリセリド0.2部を、ソルビタン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製「ポエムS-320YN」)0.24部に代えて、水を44.2部使用する以外は、実施例8の配合及び製法と同様にして、実施例11のチーズ様食品を得た。
得られた実施例11のチーズ様食品の脂質含量は35.2%、蛋白質含量は8.9%、水分は45.1%、pHは5.58であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが531g/19.6mm(直径5mm円盤型プランジャー、テーブルスピード0.8mm/sec、ブルックフィールド・アセット・マネジメント製)であり、成形加工適性を有した。
また、シュレッド性97.6%、糸引き性50cmと糸引き性を有し、良好なチーズ風味を呈した。
【0056】
(比較例7)
実施例8のコハク酸モノグリセリド0.2部に代えて、ポリグリセリン脂肪酸エステルA(坂本薬品工業株式会社製「SYグリスターPS-5S」)0.19部、及びポリグリセリン脂肪酸エステルB(坂本薬品工業株式会社製「SYグリスターMS-5S」)0.05部使用し、さらに水を44.2部使用する以外は、実施例8の配合及び製法と同様にして、比較例7のチーズ様食品を得た。
得られた比較例7のチーズ様食品の脂質含量は35.2%、蛋白質含量は8.9%、水分は45.3%、pHは5.59であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さは、分離したため測定不可であった。
比較例7はシュレッド性88.1%であった。また、糸引き性0cmと糸引き性を有さなかった。
【0057】
(比較例8)
実施例8のコハク酸モノグリセリド0.2部に代えて、HLB16のショ糖脂肪酸エステルB(三菱ケミカル株式会社社製「リョートーシュガーエステルS-1670」)0.24部使用し、さらに水を44.2部使用する以外は、実施例8の配合及び製法と同様にして、比較例8のチーズ様食品を得た。
得られた比較例8のチーズ様食品の脂質含量は35.2%、蛋白質含量は8.9%、水分は45.3%、pHは5.62であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さは、分離したため測定不可であった。
比較例8はシュレッド性91.7%であった。また、糸引き性0cmと糸引き性を有さなかった。
【0058】
(比較例9)
実施例8のコハク酸モノグリセリド0.2部に代えて、HLB5のショ糖脂肪酸エステルC(三菱ケミカル株式会社社製「リョートーシュガーエステルS-570」)0.24部使用し、さらに水を44.2部使用する以外は、実施例8の配合及び製法と同様にして、比較例9のチーズ様食品を得た。
得られた比較例9のチーズ様食品の脂質含量は35.2%、蛋白質含量は8.9%、水分は45.3%、pHは5.56であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さは、分離したため測定不可であった。
比較例9はシュレッド性93.1%であった。また、糸引き性0cmと糸引き性を有さなかった。
【0059】
なお、表中の原料は、以下のものを使用した。
・リン酸二水素ナトリウムは、米山化学工業株式会社製「リン酸二水素ナトリウム(結晶)」を使用した。
・ポリリン酸ナトリウムは、米山化学工業株式会社製「ポリリン酸ナトリウム」を使用した。
・クエン酸ナトリウムは、磐田化学工業株式会社製「クエン酸三ナトリウム(結晶)」を使用した。
・コハク酸モノグリセリドは、理研ビタミン株式会社製「ポエムB-30」を使用した。
・ショ糖脂肪酸エステルAは、三菱ケミカル株式会社社製「リョートーシュガーエステルP170」(HLB1)を使用した。
・ショ糖脂肪酸エステルBは、三菱ケミカル株式会社社製「リョートーシュガーエステルS-1670」(HLB16)を使用した。
・ショ糖脂肪酸エステルCは、三菱ケミカル株式会社社製「リョートーシュガーエステルS-570」(HLB5)を使用した。
・ソルビタン脂肪酸エステルは、理研ビタミン社製「ポエムS-320YN」を使用した。
・ポリグリセリン脂肪酸エステルAは、坂本薬品工業株式会社製「SYグリスターPS-5S」(ペンタステアリン酸ポリグリセリル、HLB 4.5)を使用した。
・ポリグリセリン脂肪酸エステルBは、坂本薬品工業株式会社製「SYグリスターMS-5S」(モノステアリン酸ポリグリセリル、HLB 11.6)を使用した。
・乳酸を含むpH調整剤は、株式会社武蔵野化学研究所「ムサシノ乳酸50」を使用した。
【0060】
表1.(実施例1~5および比較例1~2)(単位:%)
【0061】
表2.(実施例6、7および比較例3~6)(単位:%)
【0062】
表3.(実施例8~11および比較例7~9)(単位:%)
【0063】
5℃における硬さ、シュレッド性の評価、糸引き性の評価、及び、加熱後の油分離の有無の全ての項目で合格品質であるものを、最終合格とした。結果を表4~表6に示した。
【0064】
表4.結果
【0065】
表5.結果
【0066】
表6.結果
【0067】
表4~表6の結果より、実施例1~11は、硬さ、シュレッド性の評価、糸引き性の評価、及び、加熱後の油分離の有無の全ての項目で合格品質であり、シュレッドなどが可能な成形加工適性を有し、さらに加熱により容易に溶融し、かつ良好な糸引き性を有する、チーズ様食品を得ることができた。
さらに、得られたチーズ様食品は、加熱後の油分の分離がない、風味が良好なチーズ風味を呈するチーズ様食品であった。
【0068】
考察
以上の結果より、本発明において、
(a)レンネットカゼインを含有する、
(b)リン酸二水素ナトリウムを含有する、
(c)コハク酸モノグリセリド、HLB1であるショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の乳化剤を含有する、
(d)油脂を含有する、
という(a)~(d)の全てを満たすことを特徴とすることで、シュレッドなどが可能な成形加工適性を有し、さらに加熱により良好な糸引き性を有し、かつ、加熱後の油分離が抑制されたチーズ様食品を提供することができることを見出した。