(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145228
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057490
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳川 安友美
(72)【発明者】
【氏名】金井 隆宏
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA17
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC02
5F157AC26
5F157BB23
5F157BB24
5F157CD44
5F157CE05
5F157CE10
5F157CE41
5F157CF42
5F157CF44
5F157DB37
(57)【要約】
【課題】基板の下面の汚染を抑制すること。
【解決手段】基板処理装置は、基板を保持した状態で前記基板を回転させる回転保持部と、前記基板が回転された状態で前記基板の上面及び下面に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板の前記上面及び前記下面に前記処理液が供給された後に、前記基板が回転された状態で前記基板の前記上面及び前記下面に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、少なくとも、前記下面に供給された前記洗浄液を溜めることができる下面液受けと、前記下面液受けに溜められた前記洗浄液に関する洗浄液情報を検出する検出部と、検出された前記洗浄液に関する洗浄液情報に基づいて、次に行う処理を決定する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持した状態で前記基板を回転させる回転保持部と、
前記基板が回転された状態で前記基板の上面及び下面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板の前記上面及び前記下面に前記処理液が供給された後に、前記基板が回転された状態で前記基板の前記上面及び前記下面に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
少なくとも、前記下面に供給された前記洗浄液を溜めることができる下面液受けと、
前記下面液受けに溜められた前記洗浄液に関する洗浄液情報を検出する検出部と、
検出された前記洗浄液に関する洗浄液情報に基づいて、次に行う処理を決定する制御部と、
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記洗浄液情報として、前記下面液受けに溜められた前記洗浄液のpHを検出し、
前記制御部は、検出された前記洗浄液の前記pHと、前記洗浄液のpHに基づく基準値とを比較して、前記次に行う処理を決定する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記洗浄液情報として、前記下面液受けに溜められた前記洗浄液に含まれる前記処理液の濃度、又は、前記下面液受けに溜められた前記洗浄液に含まれるパーティクルの濃度、又は、前記下面液受けに溜められた前記洗浄液の色のうち、ひとつ以上を検出し、
前記制御部は、前記処理液の前記濃度と第1の基準値とを比較するか、又は、前記パーティクルの前記濃度と第2の基準値とを比較するか、又は、前記色と所定の基準色に基づく値とを比較し、比較結果に基づいて前記次に行う処理を決定する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記洗浄液のpHに基づく前記基準値に、検出された前記洗浄液の前記pHが合致しない場合、前記下面に前記洗浄液が供給される時間を長くする制御を実行する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記洗浄液のpHに基づく前記基準値に、検出された前記洗浄液の前記pHが合致しない場合、前記洗浄液供給部によって前記下面に供給される前記洗浄液の流量を多くする制御を実行する、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板の前記下面に向けて洗浄液を噴射する洗浄液噴射部と、
気体を噴射する気体噴射部と、を更に備え、
前記制御部は、前記洗浄液のpHに基づく前記基準値に、検出された前記洗浄液の前記pHが合致しない場合、前記洗浄液噴射部から噴射される洗浄液に対して前記気体を噴射するように前記気体噴射部を制御する、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記回転保持部の周囲に設けられた第1のカップ体と、
前記第1のカップ体と、前記回転保持部との間に設けられ、前記洗浄液供給部により前記基板の下面に供給された洗浄液であって前記基板から飛散した洗浄液を受ける第2のカップ体と、を更に備え、
前記下面液受けの内部は、前記第2のカップ体に連通していて、前記下面液受けには、前記第2のカップ体により受けられた洗浄液が溜められる、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記回転保持部の上面を覆うカバーを更に備え、
前記カバーの上面には、前記基板の前記下面に供給され、前記下面から前記カバーの上面に落ちた洗浄液が流れる排液孔が形成され、
前記下面液受けは、前記排液孔に接続され、前記下面液受けには、前記排液孔から排出される洗浄液が溜められる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板を保持した状態で回転させる工程と、
前記基板が回転した状態で前記基板の上面及び下面に処理液を供給する工程と、
前記基板の前記上面及び前記下面に前記処理液が供給された後に、前記基板が回転した状態で前記基板の前記上面及び前記下面に洗浄液を供給する工程と、
少なくとも、前記下面に供給された前記洗浄液が溜められる下面液受けに溜められた前記洗浄液に関する洗浄液情報を検出する工程と、
検出された前記洗浄液に関する洗浄液情報に基づいて、処理工程を制御する工程と、
を含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の洗浄では、歩留まり向上のために、基板の上面(表面)だけでなく下面(裏面)に付着したパーティクルも軽減することが要求される場合がある。そのため、基板を回転させつつ、基板の上面及び下面のそれぞれに処理液を供給し、基板の両面を同時に処理(液処理)する基板処理装置がある。かかる基板処理装置は、液処理を実行した後に、基板上の処理液を洗い流すための洗浄液(例えば純水)を基板の両面に供給するリンス処理(洗浄処理)を実行する。そして、基板処理装置は、リンス処理を実行した後に、基板を乾燥させるドライ処理(乾燥処理)を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リンス処理において、基板の下面の処理液を十分に洗い流すことができず、基板の下面に処理液が残留してしまう場合がある。この場合、基板の下面が処理液により汚染されてしまうことがある。
【0005】
また、液処理において、処理液が、基板を保持する保持部材が固定されているカバーに落下する場合がある。カバーに処理液が付着したままドライ処理が実行されると、気流の乱れで、処理液が飛散し、基板の下面に処理液が付着することがある。この場合も、基板の下面が処理液により汚染されてしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板の下面の汚染を抑制することができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一態様に係る基板処理装置は、基板を保持した状態で前記基板を回転させる回転保持部と、前記基板が回転された状態で前記基板の上面及び下面に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板の前記上面及び前記下面に前記処理液が供給された後に、前記基板が回転された状態で前記基板の前記上面及び前記下面に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、少なくとも、前記下面に供給された前記洗浄液を溜めることができる下面液受けと、前記下面液受けに溜められた前記洗浄液に関する洗浄液情報を検出する検出部と、検出された前記洗浄液に関する洗浄液情報に基づいて、次に行う処理を決定する制御部と、を備える。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一態様に係る基板処理方法は、基板を保持した状態で回転させる工程と、前記基板が回転した状態で前記基板の上面及び下面に処理液を供給する工程と、前記基板の前記上面及び前記下面に前記処理液が供給された後に、前記基板が回転した状態で前記基板の前記上面及び前記下面に洗浄液を供給する工程と、少なくとも、前記下面に供給された前記洗浄液が溜められる下面液受けに溜められた前記洗浄液に関する洗浄液情報を検出する工程と、検出された前記洗浄液に関する洗浄液情報に基づいて、処理工程を制御する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、基板の下面の汚染を抑制することができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の基板処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る基板処理装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の変形例に係る基板処理装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る基板処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例に係るノズル固定部材の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る基板処理装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明の各実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各実施形態及び各変形例は、矛盾が生じない範囲で、適宜組み合わせることができる。
図1は、第1の実施形態の基板処理装置100の構成の一例を示す図である。
【0012】
基板処理装置100は、基板Wを回転させながら、基板Wの上面(表面)及び下面(裏面)のそれぞれに処理液(薬液)を供給(吐出)することにより基板Wの両面を液処理する。例えば、基板処理装置100は、処理液Lとしてフッ酸及びオゾン水を交互に繰り返し基板Wの両面に供給する。そして、基板処理装置100は、液処理を実行した後に、基板Wを回転させながら、基板Wの上面及び下面のそれぞれに洗浄液(例えば純水)を供給することにより基板Wの両面をリンス処理(洗浄処理)する。そして、基板処理装置100は、リンス処理を実行した後に、基板Wを高速回転させて、基板W上の洗浄液を振り切ることにより、基板Wを乾燥させるドライ処理を実行する。
【0013】
図1に示すように、基板処理装置100は、回転保持部10、ノズル固定部材30、上面処理液ノズル40、下面処理液ノズル50、下面気体ノズル60、排液管70、第1のカップ体80、上面液受け81、第2のカップ体82、下面液受け83、バルブ84、排液流路85、pH計86及び制御部200を備える。
【0014】
回転保持部10は、載置台11、動力伝達体13、制御モータ14、回転テーブル15、支持筒部17、ブッシュ19a,19b、保持部材20、テーパ部材21、係合ピン22、保持筒23、カバー25を有する。載置台11は、上面液受け81と、下面液受け83とを支持する。載置台11の中心部には、貫通孔12が設けられている。貫通孔12の内部には、円筒状の動力伝達体13が設けられている。動力伝達体13は、駆動手段である制御モータ14によって回転駆動される。制御モータ14は、筒状の固定子14aと、筒状の回転子14bとを有する。回転子14bは、固定子14a内に回転可能に挿入されている。
【0015】
動力伝達体13は、下端が回転子14bの上面に接触していて、接触部分がネジにより固定されている。これにより、動力伝達体13は、回転子14bと一体的に回転するように設けられている。なお、制御モータ14は、制御部200によって回転速度が制御される。
【0016】
動力伝達体13の上端には、回転テーブル15が取り付けられている。回転テーブル15は、円盤状の下板15aと上板15bとを重ね合わせて形成されている。下板15aと上板15bとの中心部分には、動力伝達体13の内部空間に連通する貫通孔16が形成されている。
【0017】
回転テーブル15の上板15bの周辺部には、周方向に所定間隔で支持筒部17が一体に形成されている。本実施形態においては、60度間隔で6つの支持筒部17(
図1においては、2つだけ示す)が形成されている。回転テーブル15の下板15aの支持筒部17に対応する部分には、貫通孔18が形成されている。
【0018】
支持筒部17と貫通孔18とには、それぞれブッシュ19a,19bが嵌め合わせて装着されている。ブッシュ19a,19bには、保持部材20が回転可能に支持されている。保持部材20は、軸部20aと頭部20bとを有する。軸部20aは、ブッシュ19a,19b内に挿入され、ブッシュ19a,19bによって支持されている。頭部20bは、軸部20aの上端部に一体に形成された、軸部20aより大径の部材である。
【0019】
頭部20bの上端面には、軸部20aの回転中心から偏心した位置に、テーパ部材21が設けられている。テーパ部材21のテーパ面21aの傾斜方向上端部には、係合ピン22が突出して設けられている。なお、以降の説明においては、テーパ部材21と係合ピン22とを総称して、保持機構ということがある。
【0020】
保持部材20は、回転可能に設けられている。各保持部材20に設けられたテーパ部材21には、半導体ウェーハなどの基板Wの裏面における周縁部がテーパ面21aに載置される。この状態で、各保持部材20を所定方向に回転させると、テーパ部材21が偏心回転する。テーパ部材21が偏心回転すると、基板Wの周縁部がテーパ面21aに沿って上昇し、基板Wの外周面が係合ピン22に当接する。これにより、基板Wは6個の保持部材20によって回転テーブル15に一体的に保持される。また、保持部材20を上述した所定方向と逆方向に回転させると、係合ピン22が基板Wの外周面から離れる方向に偏心回転する。これにより、基板Wは6個の保持部材20から解放される。
【0021】
動力伝達体13の内部には、保持筒23が挿通されている。保持筒23は、基板処理装置100の本体に固定されている。保持筒23の上端には、ノズル固定部材30が固定されている。
【0022】
カバー25は、回転テーブル15の上面および外周面を覆うように回転テーブル15と一体に設けられている。カバー25は、回転テーブル15の外周面を覆う側面25aと、回転テーブル15に保持された基板Wの裏面に対向する上面25bとを備える。上面25bは、円板状であり、平面視において、上面25bの中心には、貫通孔25cが形成されている。
【0023】
保持機構(テーパ部材21と係合ピン22)は、基板Wの面がカバー25の上面25bと平行となるように、カバー25の上面25bと間隔を空けて基板Wを保持する。
【0024】
上面処理液ノズル40は、基板Wの上面に処理液L又は洗浄液を供給する。例えば、薬液処理を実行する場合には、上面処理液ノズル40は、基板Wの上面の回転中心部分又は回転中心部分付近にフッ酸及びオゾン水等の処理液Lを吐出する。例えば、上面処理液ノズル40は、フッ酸及びオゾン水を交互に繰り返し基板Wの上面に吐出する。また、リンス処理を行う場合には、上面処理液ノズル40は、基板Wの上面の回転中心部分又は回転中心部分付近に純水等の洗浄液を吐出する。上面処理液ノズル40には、処理液Lが貯留された処理液タンクから配管を介して処理液が供給される。また、上面処理液ノズル40には、洗浄液が貯留された洗浄液タンクから配管を介して洗浄液が供給される。
【0025】
ノズル固定部材30は、下面処理液ノズル50及び下面気体ノズル60を固定する部材である。ノズル固定部材30は、カバー25の貫通孔25cの下方に設けられている。ノズル固定部材30は、上述したように保持筒23の上端に固定されている。保持筒23は、動力伝達体13から切り離されているため、回転テーブル15が回転しても、ノズル固定部材30は回転しない。ノズル固定部材30には、上部から下部にゆくにつれて小径となる逆円錐形状の凹部31が形成されている。ノズル固定部材30の凹部31には、下面処理液ノズル50及び、下面気体ノズル60が設けられている。ノズル固定部材30が固定されているため、ノズル固定部材30の凹部31に設けられた下面処理液ノズル50及び下面気体ノズル60も回転しない。
【0026】
本実施形態においては、複数の下面処理液ノズル50が、凹部31の逆円錐形状の斜面に、円周状に設けられている。複数の下面処理液ノズル50は、例えば、それぞれ、フッ酸、オゾン水、洗浄液(純水)を吐出するノズルである。また、1つの下面気体ノズル60が、凹部31の逆円錐形状の斜面に設けられている。
【0027】
下面処理液ノズル50は、基板Wが回転している状態で、基板Wの下面に処理液L又は洗浄液を供給する。例えば、エッチングを行う場合、すなわち、薬液処理を実行する場合には、下面処理液ノズル50は、基板Wの下面の回転中心部分又は回転中心部分付近にフッ酸やオゾン水等の処理液Lを吐出する。例えば、下面処理液ノズル50は、フッ酸とオゾン水とを交互に繰り返し基板Wの下面に吐出する。また、リンス処理を行う場合には、下面処理液ノズル50は、基板Wの下面の回転中心部分又は回転中心部分付近に純水等の洗浄液を吐出する。下面処理液ノズル50には、処理液Lが貯留された処理液タンクから配管を介して処理液Lが供給される。また、下面処理液ノズル50には、洗浄液が貯留された洗浄液タンクから配管を介して洗浄液が供給される。
【0028】
下面気体ノズル60は、基板Wが回転している状態で、基板Wの下面の回転中心部分又は回転中心部分付近に窒素ガス等の気体を供給する。下面気体ノズル60は、下面気体ノズル60に窒素ガス等の気体を供給する気体供給源に配管を介して接続されており、下面気体ノズル60には気体供給源から気体が供給される。
【0029】
また、ノズル固定部材30に形成された凹部31の底部には、排液部を形成する排液口70aが形成されている。排液口70aには、排液管70の一端が接続されている。排液管の他端は、吸引ポンプに接続されている。下面処理液ノズル50から吐出され、基板Wの下面によって跳ね返された処理液L又は洗浄液の一部は、凹部31内に滴下する。凹部31内に滴下された処理液L又は洗浄液は、ノズル固定部材30に形成された凹部31の壁面(円錐の斜面)によって、排液口70aに導かれ、排液管70から排出される。
【0030】
カバー25の周囲には、第1のカップ体80及び第2のカップ体82が設けられている。第1のカップ体80及び第2のカップ体82は、上部の径が概ね窄まるように屈曲された筒状体である。第1のカップ体80が外側、第2のカップ体82が内側となるように同心円状に配置されている。
【0031】
第1のカップ体80は、その下方が開口していて、上面液受け81の内部と連通している。また、第2のカップ体82は、その下方が開口していて、下面液受け83の内部に連通している。
【0032】
第1のカップ体80と、第2のカップ体82とは、図示しない駆動機構により、昇降可能に設けられている。基板Wに対する薬液処理からドライ処理までの一連の処理工程の間、第1のカップ体80と、第2のカップ体82とは、駆動機構により上昇して、
図1に示す位置(処理位置)に位置づけられる。そして、基板Wに対するドライ処理が終了した後に、第1のカップ体80と、第2のカップ体82とは、駆動機構により下降して、待機位置に位置づけられる。
【0033】
ここで、基板Wの下面に供給された処理液L又は洗浄液は、基板Wの回転によって、基板Wの外周方向に流れ、基板Wの外周端部から下方へ飛散する。また、基板Wの下面に供給された処理液L又は洗浄液の一部は、基板Wの外周端部に到達する前に、カバー25の上面25bに落下する。カバー25の上面25bに落下した処理液L又は洗浄液は、カバー25の回転によって、外方に飛散する。このため、第2のカップ体82の処理位置とは、このような基板Wの下面に供給されて飛散した処理液L又は洗浄液を受けることができる位置である。また、第2のカップ体82の処理位置とは、基板Wの上面に供給されて飛散した処理液L又は洗浄液が、第2のカップ体82より上方に向かう位置である。例えば、第2のカップ体82の処理位置は、第2のカップ体82の上端(第2のカップ体82の内壁の上端)の高さが、保持機構に保持された基板Wの高さよりわずかに低い位置から、保持機構の係合ピン22の上端の高さ位置までの範囲に設定される。より好ましくは、第2のカップ体82の処理位置は第2のカップ体82の上端の高さが、保持機構に保持された基板Wの上面の高さと同じになる位置である。第2のカップ体82の内壁によって受けられた処理液L又は洗浄液は、第2のカップ体82の内壁を伝って下方に落ち、下面液受け83に流入する。
【0034】
また、基板Wの上面に供給された処理液L又は洗浄液は、基板Wの回転によって、基板Wの外周方向に流れる。外周まで流れた処理液L又は洗浄液は、係合ピン22に当たるため、斜め上方に跳ねるように飛散する。このため、第1のカップ体80の処理位置とは、基板Wの上面に供給されて飛散した処理液L又は洗浄液を受けることができる位置である。つまり、第1のカップ体80の処理位置とは、第1のカップ体80の上端の高さ位置が、処理位置にある第2のカップ体82の上端の高さ位置よりも上に離間した位置に設定される。第1のカップ体80の内壁によって受けられた処理液L又は洗浄液は、第1のカップ体80の内壁を伝って下方に落ち、上面液受け81に流入する。
【0035】
このように、基板Wと第1のカップ体80との間に第2のカップ体82を設け、基板Wに対して処理液L及び洗浄液が供給されている間、第1のカップ体80と第2のカップ体82とを上述した処理位置に位置づけることで、基板Wの上面に供給された処理液L及び洗浄液と、下面に供給された処理液L及び洗浄液とを分離して回収することができる。
【0036】
上面液受け81は、その底面に排液口が設けられ、排液流路と接続されている。上面液受け81に流入した処理液L又は洗浄液は、この排液流路から排出される。また、下面液受け83は、その底面に排液口が設けられ、排液流路85の一端と接続されている。排液流路85の他端は、上面液受け81に接続された廃液流路の途中に合流するように接続されている。下面液受け83に流入した処理液L又は洗浄液は、排液流路85内を流れ、上面液受け81に接続された廃液流路から排出される。また、排液流路85の途中にはバルブ84が設けられている。バルブ84を閉じることにより、下面液受け83に流入した処理液L又は洗浄液を、下面液受け83の内部に溜めることができる。また、バルブ84を開くことにより、下面液受け83に流入した処理液L又は洗浄液を排出することができる。
【0037】
pH計86は、下面液受け83内の下部に設けられ、下面液受け83に溜められた洗浄液のpHを計測する。
【0038】
制御部200は、基板処理装置100の各部を制御する。制御部200は、基板処理装置100の各種の機能を実現するべく、プログラムを実行するプロセッサと、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。制御部200は、回転保持部10、上面処理液ノズル40、下面処理液ノズル50、下面気体ノズル60、第1のカップ体80、第2のカップ体82、バルブ84及びpH計86等を制御する。
【0039】
以上のような本実施形態の基板処理装置100の動作を
図2のフローチャートを参照して説明する。
図2は、第1の実施形態に係る基板処理装置100が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下のような手順により基板Wを処理する基板処理方法も、本実施形態の一態様である。
図2に示す処理の前に、基板Wは、回転保持部10により保持され、回転している。また、
図2に示す処理が終了すると、基板Wの回転が停止され、基板Wは回転保持部10から解放されて搬出される。
【0040】
基板処理装置100は、薬液処理を実行する(ステップS101)。具体的には、基板Wが回転している状態で、下面処理液ノズル50から基板Wの下面に対して処理液Lを供給するとともに、上面処理液ノズル40から基板Wの上面に対して処理液Lを供給する。
【0041】
そして、基板処理装置100は、リンス処理を実行する(ステップS102)。具体的には、基板Wが回転している状態で、下面処理液ノズル50から基板Wの下面に対して洗浄液を供給するとともに、上面処理液ノズル40から基板Wの上面に対して洗浄液を供給する。なお、上述したように、基板Wの下面に供給された洗浄液の一部は、基板Wの外周端部に到達する前にカバー25の上面25bに落下する。したがって、基板Wのリンス処理においては、カバー25の上面25bもリンス(洗浄)される。
【0042】
そして、制御部200は、リンス処理が開始されてから所定時間経過後に、バルブ84を閉める(ステップS103)。これにより、下面液受け83に流入した、基板Wの下面に供給された洗浄液が、下面液受け83に溜められる。
【0043】
そして、pH計86は、下面液受け83に溜められた洗浄液のpHを計測する(ステップS104)。
【0044】
そして、制御部200は、計測されたpHが基準値に合致しているか否かを判定する(ステップS105)。この判定により、基板Wの下面のリンス処理が十分であるか否かを判定する。ここで、基準値とは、洗浄液のpHに基づいて決定した値である。また、基準値は、一定の範囲を有する値としてもよい。より具体的には、基準値とは、洗浄液のpHと同じpH、又は洗浄液のpHに近いpHの範囲とすることができる。ステップS105において、制御部200は、pH計86により計測されたpHによる判定結果に基づいて、次に行う処理を決定する。ステップS105では、制御部200は、pH計86により計測されたpHが基準値に合致しているか否かを判定する。例えば、洗浄液が純水である場合、洗浄液のpHは「7.0」である。処理液Lがフッ酸である場合、洗浄液に基づく基準値は、例えば、pHが「6.7」以上「7.0」以下の範囲である。
【0045】
制御部200は、計測されたpHが、基準値の範囲内である場合、計測されたpHが基準値に合致していると判定する。また、制御部200は、計測されたpHが、基準値の範囲内ではない場合、計測されたpHが基準値に合致していないと判定する。
【0046】
そして、制御部200は、計測されたpHが基準値に合致していると判定した場合(ステップS105:Yes)、次に行う処理としてドライ処理を決定する。また、制御部200は、下面処理液ノズル50からの洗浄液の吐出を停止するとともに、上面処理液ノズル40からの洗浄液の吐出を停止する。
【0047】
ステップS106では、基板処理装置100は、ドライ処理を実行する。具体的には、基板Wの回転を継続することで、基板Wの回転によって、基板Wに付着した洗浄液を振り切って除去する。また、下面気体ノズル60からは、基板Wの下面の回転中心部分又は回転中心部分付近に気体を供給する。これにより、基板Wの回転による洗浄液の振り切りに加えて、気体の流れによっても、基板Wの下面に付着した洗浄液を除去できる。その後、下面気体ノズル60からの気体の供給を停止し、
図2に示す処理を終了する。
【0048】
一方、制御部200は、計測されたpHが基準値に合致していないと判定した場合(ステップS105:No)、バルブ84を開く(ステップS107)。バルブ84が開かれると、ステップS102に戻り、リンス処理を継続する。すなわち、制御部200は、リンス処理を行う時間を追加するように制御する。そして、基板処理装置100は、ステップS103以降の処理を再び実行する。
【0049】
以上、第1の実施形態に係る基板処理装置100について説明した。上述した基板処理装置100では、回転保持部10は、基板Wを保持した状態で基板Wを回転させる。そして、下面処理液ノズル50及び上面処理液ノズル40は、基板Wが回転された状態で基板Wの上面及び下面に処理液を供給する。下面処理液ノズル50及び上面処理液ノズル40は、処理液供給部の一例である。
【0050】
そして、基板Wの上面及び下面に処理液が供給された後に、下面処理液ノズル50及び上面処理液ノズル40は、基板Wが回転された状態で基板Wの上面及び下面に洗浄液を供給する。下面処理液ノズル50及び上面処理液ノズル40は、洗浄液供給部の一例でもある。また、下面液受け83には、基板Wの下面に供給された洗浄液が溜められる。
【0051】
そして、pH計86は、下面液受け83に溜められた洗浄液に関する洗浄液情報として、下面液受け83に溜められた洗浄液のpHを検出する。pH計86は、検出部の一例である。また、下面液受け83に溜められた洗浄液のpHは、下面液受け83に溜められた洗浄液に関する洗浄液情報の一例である。
【0052】
そして、制御部200は、検出された洗浄液に関する洗浄液情報に基づいて、次に行う処理を決定する。具体的には、制御部200は、下面液受け83に溜められた洗浄液のpHと、洗浄液のpHに基づく基準値とを比較して、次に行う処理を決定する。
【0053】
制御部200は、洗浄液のpHに基づく基準値に、下面液受け83に溜められた洗浄液のpHが合致しない場合、基板Wの下面に洗浄液が供給される時間を長くする制御を実行する。このように、基板処理装置100は、リンス処理において基板Wの下面に供給された洗浄液のみを回収し、回収された基板Wの下面の洗浄液のpHが、洗浄液の元々のpHと同等になるまで、継続してリンス処理を行う。すなわち、制御部200は、洗浄液のpH(洗浄液情報の一例)に基づいて、基板Wの下面に洗浄液を供給する時間を決定する。これにより、リンス処理が不十分な状態で、次のドライ処理に進むことがなくなる。したがって、基板Wの下面と、カバー25の上面25bとに処理液Lが残留することを抑えられる。したがって、ドライ処理中に基板Wとカバー25との間の空間において気流が乱れても、汚染源となる処理液は除去されているため、基板Wの汚染を抑制することができる。したがって、第1の実施形態に係る基板処理装置100によれば、基板Wの汚染を抑制することができる。
【0054】
また、第1の実施形態では、基板処理装置100は、下面処理液ノズル50により基板Wの下面に供給された洗浄液であって基板Wから飛散された洗浄液を受ける第2のカップ体82を備える。第2のカップ体82には、下面液受け83が連通していて、下面液受け83には、第2のカップ体82により受けられた洗浄液が溜められる。このような第2のカップ体82が用いられることにより、基板Wの上面に供給された洗浄液と、下面に供給された洗浄液とを分離して溜めることができる。すなわち、下面液受け83は、基板Wの上面に供給された洗浄液が混ざることなく、基板Wの下面に供給された洗浄液を溜めることができる。これにより、重力によって洗浄液が落ちるため、リンス処理が不十分になりやすい基板Wの下面に供給された洗浄液について、精度よくpHを計測することができる。
【0055】
なお、pH計86によるpHの測定結果に影響が出ない範囲内で、または、わずかな影響が出る範囲内で、下面液受け83に、基板Wの上面に供給された洗浄液が流入してもよい。すなわち、下面液受け83には、基板Wの下面に供給された洗浄液のみが溜められることが好ましいが、pH計86によるpHの測定結果に大きな影響が出ない範囲内で、基板Wの上面に供給された洗浄液が混ざってもよい。したがって、下面液受け83には、少なくとも、基板Wの下面に供給された洗浄液が溜められればよい。
【0056】
また、基板Wの下面に供給された洗浄液の大半が、第2のカップ体82に受けられて、下面液受け83に溜められればよい。すなわち、基板Wの下面に供給された洗浄液がすべて第2のカップ体82に受けられて、下面液受け83に回収されることが好ましいが、洗浄液の一部は、第1のカップ体80によって受けられてもよい。下面液受け83に溜められた洗浄液によって、基板Wの下面及びカバー25の上面25bのリンス処理が十分か否か判定できればよい。
【0057】
(第1の実施形態の変形例)
なお、基板処理装置100は、計測されたpHが基準値に合致していない場合に、リンス処理を継続(リンス処理時間を追加)するが、この追加されたリンス処理において、下面処理液ノズル50から吐出される洗浄液の流量を所定量だけ増加させてもよい。そこで、このような変形例を第1の実施形態の変形例として説明する。
【0058】
以下の第1の実施形態の変形例に係る基板処理装置100の説明では、主に、第1の実施形態に係る基板処理装置100と異なる点について説明する。また、以下の第1の実施形態の変形例に係る基板処理装置100の説明では、第1の実施形態に係る基板処理装置100の構成と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0059】
図3は、第1の実施形態の変形例に係る基板処理装置100が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3に示す第1の実施形態の変形例に係るステップS101~S107における処理は、
図2に示す第1の実施形態に係るステップS101~S107における処理と同様の処理である。
【0060】
ステップS108において、制御部200は、リンス処理において下面処理液ノズル50から吐出される洗浄液の流量を所定量だけ増加させるように、制御情報を更新する。この制御情報は、下面処理液ノズル50を制御するための情報である。
【0061】
そして、戻ったステップS102において、基板処理装置100がリンス処理を実行(継続)するが、制御部200は、更新された制御情報に基づいて、吐出される洗浄液の流量を所定量だけ増加させるように下面処理液ノズル50を制御する。すなわち、制御部200は、基板Wの下面に供給される洗浄液の流量を多くする制御を実行する。これにより、基板Wの下面及びカバー25の上面25bにおける洗浄能力を向上させることができる。
【0062】
このとき、制御部200は、計測されたpHによって、基板Wの下面に洗浄液が供給される時間の増加量を決定してもよい。また、制御部200は、計測されたpHによって、基板Wの下面に供給される洗浄液の流量の増加量を決定してもよい。
【0063】
また、第2のカップ体82は、基板Wに対する薬液処理からドライ処理までの一連の処理工程の間、上昇して処理位置に位置づけられるとしたが、少なくとも洗浄液が供給されている間、処理位置に位置していればよい。すなわち、基板Wに対して処理液Lが供給されている間は、第2のカップ体82は、待機位置に位置づけられていてもよい。この場合、基板Wの上面に供給された処理液Lと、下面に供給された処理液Lとは、第1のカップ体80に受けられて、上面液受け81に回収される。その後、洗浄液の供給を開始する前に、第2のカップ体82を上昇させて、処理位置に位置付け、基板Wの下面に供給された洗浄液を第2のカップ体82の内壁で受けるように、駆動機構を制御すればよい。
【0064】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、基板処理装置100が、第2のカップ体82を用いて、下面液受け83に、基板Wの下面に供給された洗浄液のみを溜めさせる例について説明した。しかしながら、基板処理装置は、第2のカップ体82を用いずに、下面液受けに、基板Wの下面に供給された洗浄液のみを溜めさせてもよい。そこで、このような実施形態を第2の実施形態として説明する。
【0065】
以下の第2の実施形態に係る基板処理装置101の説明では、主に、第1の実施形態に係る基板処理装置100と異なる点について説明する。また、以下の第2の実施形態に係る基板処理装置101の説明では、第1の実施形態に係る基板処理装置100の構成と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0066】
図4は、第2の実施形態の基板処理装置101の構成の一例を示す図である。
図4に示す、第2の実施形態に係る基板処理装置101は、第2のカップ体82を備えていない点で、
図1に示す第1の実施形態に係る基板処理装置100と異なる。また、第2の実施形態に係る基板処理装置101は、第1のカップ体80と、上面液受け81と、下面液受け83と、の代わりに、カップ体80aと、上面液受け81aと、下面液受け83aとを備えている点で、第1の実施形態に係る基板処理装置100と異なる。また、第2の実施形態に係る基板処理装置101は、カバー25に排液孔27が形成されている点で、第1の実施形態に係る基板処理装置100と異なる。
【0067】
カバー25の周囲には、カップ体80aが設けられている。カップ体80aは、上部の径が概ね窄まるように屈曲された筒状体である。カップ体80aの下方には、上面液受け81aが設けられている。カップ体80aは、その下方が開口していて、下面液受け83aの内部と連通している。
【0068】
基板Wに対する薬液処理からドライ処理までの一連の処理工程の間、カップ体80aは、図示しない駆動機構により上昇して、
図4に示す位置(処理位置)に位置づけられる。そして、基板Wへのドライ処理が終了した後に、カップ体80aは、駆動機構により下降して、待機位置に位置づけられる。
【0069】
ここで、上述した第1の実施形態と同様に、回転する基板Wの上面から飛散する処理液L及び洗浄液は、係合ピン22に当たり斜め上方に跳ねる。このため、カップ体80aの処理位置は、斜め上方に跳ねた処理液L及び洗浄液を受けることができる位置である。カップ体80aが受けた処理液L及び洗浄液は、カップ体80aの内壁を伝って下方に落ち、上面液受け81aに流入する。これにより、上面液受け81aには、基板Wの上面に供給された処理液L及び洗浄液が溜められる。
【0070】
また、カバー25には、排液孔27が形成されている。排液孔27は、基板Wの下面に供給された処理液L又は洗浄液を回収するための流路である。排液孔27の一端は、例えば、カバー25の上面25bの中心から外周端までの間において、中心よりも外周端に近い位置に設けられる。すなわち、上面25bの径方向において、上面25b中心と排液孔27とまでの距離よりも、排液孔27と上面25bの外周端との距離の方が小さい。排液孔27の他端は、例えば、カバー25の側面25aに設けられ、下面液受け83aに接続されている。排液孔27には、基板Wの下面に供給された処理液L及び洗浄液であって、排液孔27が設けられた位置よりも内周側で、カバー25上に落ちた処理液L及び洗浄液が流れる。そして、排液孔27の他端を介して処理液L及び洗浄液が下面液受け83aに流入する。これにより、下面液受け83aには、基板Wの下面に供給された処理液L及び洗浄液が溜められる。このような基板処理装置101においても、下面液受け83aに溜められた洗浄液のpHを計測することで、基板Wの下面のリンス処理が十分であるか否かを判定する点は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0071】
以上、第2の実施形態に係る基板処理装置101について説明した。第2の実施形態に係る基板処理装置101では、カバー25の上面25bには、基板Wの下面に供給され、基板Wの下面からカバー25の上面に落ちた洗浄液が流れる排液孔27が形成されている。下面液受け83aは、排液孔27に接続され、下面液受け83aには、排液孔27から排出される洗浄液が溜められる。したがって、第2の実施形態に係る基板処理装置101は、第2のカップ体82を用いることなく、下面液受けに、基板Wの下面に供給された洗浄液のみを溜めさせることができる。これにより、基板処理装置101においても、リンス処理が不十分な状態で、次のドライ処理に進むことがなくなる。したがって、上述した第1の実施形態と同様に、第2の実施形態に係る基板処理装置101においても基板Wの汚染を抑制することができる。
【0072】
(変形例)
様々な変形例について説明する。上述した各実施形態では、基板処理装置100,101が、計測されたpHが基準値に合致していない場合(ステップS105:No)、リンス処理を継続する場合について説明した。しかしながら、基板処理装置100,101が、計測されたpHが基準値に合致していない場合(ステップS105:No)、リンス処理を継続することに加えて、ノズル固定部材30の凹部31を洗浄する凹部リンス処理を実行してもよい。そこで、このような変形例について
図5及び
図6を参照して説明する。
【0073】
図5は、変形例に係るノズル固定部材30aの構成の一例を示す図である。
図5に示すように、ノズル固定部材30aには、下面処理液ノズル50(図示せず)、下面気体ノズル60、及び、洗浄液噴射ノズル28が固定されている。
【0074】
洗浄液噴射ノズル28は、洗浄液を基板Wの下面に向けて噴射する。洗浄液噴射ノズル28が、ノズル固定部材30aに形成された逆円錐の斜面に設けられている。洗浄液噴射ノズル28は、下面気体ノズル60から噴射される気体が、洗浄液噴射ノズル28から噴射される洗浄液の液柱に当たる位置に設けられる。
【0075】
図6は、変形例に係る基板処理装置100,101が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6に示す変形例に係るステップS101~S107における処理は、
図2に示す第1の実施形態に係るステップS101~S107における処理と同様の処理である。
【0076】
ステップS109では、基板処理装置100,101は、リンス処理に加えて凹部リンス処理を実行する。凹部リンス処理について説明する。凹部リンス処理は、ノズル固定部材30aに形成された凹部31及び凹部31周辺を洗浄する処理である。例えば、
図5に示すように、制御部200は、洗浄液を噴射するように洗浄液噴射ノズル28を制御するとともに、洗浄液噴射ノズル28から噴射される洗浄液の液柱に対して気体を噴射するように下面気体ノズル60を制御する。これにより、洗浄液の液柱が気体により砕かれ、洗浄液が飛散される。飛散された洗浄液により、ノズル固定部材30aに形成された凹部31及び凹部31周辺が洗浄される。この結果、ノズル固定部材30aに形成された凹部31及び凹部31周辺に付着した処理液Lを除去することができる。凹部31の斜面に処理液L(薬液)が付着していると、この処理液Lが凹部31の斜面を流れ落ち、下面処理液ノズル50から吐出される洗浄液に混入することがある。そこで、凹部31及び凹部31周辺を洗浄することで、基板Wのリンス処理における洗浄効率を向上させることができる。
【0077】
また、上述した各実施形態及び各変形例では、基板処理装置100,101が、処理液としてフッ酸及びオゾン水、洗浄液として純水を用いて、pH計86を下面液受け83に溜められた洗浄液に関する洗浄液情報を検出する検出部として用いる場合について説明した。フッ酸のような強酸性薬液と、純水のような中性の洗浄液とが用いられる場合、pH計86による管理方法が適している。しかしながら、処理内容に応じて、下面液受け83,83aに溜められた洗浄液に含まれる処理液Lの濃度、下面液受け83,83aに溜められた洗浄液に含まれるパーティクルの濃度、又は、下面液受け83,83aに溜められた洗浄液の色を各種のセンサ(検出部)を用いて検出してもよい。そして、制御部200が、処理液Lの濃度と第1の基準値とを比較するか、パーティクルの濃度と第2の基準値とを比較するか、又は、洗浄液の色と所定の基準色とを比較し、比較結果に基づいて次に行う処理を決定してもよい。
【0078】
例えば、基板処理装置100,101が、下面液受け83,83aに溜められた洗浄液に含まれる処理液Lの濃度を検出する処理液濃度検出センサを備えてもよい。この場合、制御部200は、処理液濃度検出センサにより検出された処理液Lの濃度と、第1の基準値とを比較し、比較結果に基づいて次に行う処理を決定してもよい。
【0079】
例えば、ステップS105において、制御部200は、検出された処理液Lの濃度が第1の基準値に合致しているか否かを判定する。例えば、リンス処理が十分であるときの、下面液受け83,83aに溜められた洗浄液に含まれる処理液Lの濃度の範囲を実験又はシミュレーションにより予め求めておく。そして、実験又はシミュレーションにより予め求められた処理液Lの濃度の範囲を、第1の基準値の範囲とする。そして、制御部200は、検出された処理液Lの濃度が一定の範囲を有する第1の基準値の範囲内であるか否かを判定することにより、検出された処理液Lの濃度が第1の基準値に合致しているか否かを判定する。
【0080】
制御部200は、検出された処理液Lの濃度が、一定の範囲を有する第1の基準値の範囲内である場合、検出された処理液Lの濃度が第1の基準値に合致していると判定する。また、制御部200は、検出された処理液Lの濃度が、一定の範囲を有する第1の基準値の範囲内ではない場合、検出された処理液Lの濃度が第1の基準値に合致していないと判定する。制御部200は、第1の基準値に合致していないと判定したときは、リンス処理を継続する。
【0081】
また、例えば、基板処理装置100,101が、下面液受け83,83aに溜められた洗浄液に含まれるパーティクルの濃度を検出するパーティクル濃度検出センサを備えてもよい。この場合、制御部200は、パーティクル濃度検出センサにより検出されたパーティクルの濃度と、第2の基準値とを比較し、比較結果に基づいて次に行う処理を決定してもよい。
【0082】
例えば、ステップS105において、制御部200は、検出されたパーティクルの濃度が第2の基準値に合致しているか否かを判定する。例えば、リンス処理が十分であるときの、下面液受け83,83aに溜められた洗浄液に含まれるパーティクルの濃度の範囲を実験又はシミュレーションにより予め求めておく。そして、実験又はシミュレーションにより予め求められたパーティクルの濃度の範囲を、第2の基準値の範囲とする。そして、制御部200は、検出されたパーティクルの濃度が一定の範囲を有する第2の基準値の範囲内であるか否かを判定することにより、検出されたパーティクルの濃度が第2の基準値に合致しているか否かを判定する。
【0083】
制御部200は、検出されたパーティクルの濃度が、一定の範囲を有する第2の基準値の範囲内である場合、検出されたパーティクルの濃度が第2の基準値に合致していると判定する。また、制御部200は、検出されたパーティクルの濃度が、一定の範囲を有する第2の基準値の範囲内ではない場合、検出されたパーティクルの濃度が第2の基準値に合致していないと判定する。制御部200は、第2の基準値に合致していないと判定したときは、リンス処理を継続する。
【0084】
また、例えば、基板処理装置100,101が、下面液受け83,83aに溜められた洗浄液の色を検出する検出部を備えてもよい。この場合、制御部200は、色を検出する検出部により検出された洗浄液の色と、所定の基準色とを比較し、比較結果に基づいて次に行う処理を決定してもよい。色検出センサとしては、例えば、色差計や、分光光度計を用いることができる。
【0085】
例えば、ステップS105において、制御部200は、検出された洗浄液の色が基準色の値に合致しているか否かを判定する。例えば、リンス処理が十分であるときの、下面液受け83,83aに溜められた洗浄液の色を示す数値範囲を実験又はシミュレーションにより予め求めておく。そして、実験又はシミュレーションにより予め求められた洗浄液の色の範囲を、所定の基準色の範囲とする。そして、制御部200は、検出された洗浄液の色が一定の範囲を有する基準色の範囲内であるか否かを判定することにより、検出された洗浄液の色が所定の基準色に合致しているか否かを判定する。
【0086】
制御部200は、検出された洗浄液の色が、一定の範囲を有する基準色の範囲内である場合、検出された洗浄液の色が所定の基準色に合致していると判定する。また、制御部200は、検出された洗浄液の色が、一定の範囲を有する所定の基準色の範囲内ではない場合、検出された洗浄液の色が所定の基準色に合致していないと判定する。制御部200は、基準色の値に合致していないと判定したときは、リンス処理を継続する。
【0087】
また、基板処理装置100,101及びその変形例においては、上述したような検出部を複数備えていてもよい。例えば、pH計と、パーティクル濃度検出センサと、処理液濃度検出センサと、液の色を検出する検出部と、の中から、2つ以上を備えていてもよい。また、これら以外の洗浄液情報を検出する検出部をさらに備えていてもよい。
【0088】
また、基板処理装置100,101及びその変形例においては、基板Wの下面に供給された洗浄液を、基板Wの上面に供給された洗浄液とは、分離して回収することを説明したが、これに限らない。分離しなくても、基板Wの下面のリンス処理が十分か否かを判定することができる場合には、分離せずに回収して、上述したような洗浄液情報を検出して、判定してもよい。この場合、第2のカップ体82で、基板Wの上面に供給された洗浄液と、基板Wの下面に供給された洗浄液とを、受けるようにすればよい。
【0089】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10 回転保持部
40 上面処理液ノズル
50 下面処理液ノズル
80 第1のカップ体
81 上面液受け
82 第2のカップ体
83 下面液受け
86 pH計
200 制御部