(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145233
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20241004BHJP
H02K 11/25 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 G
B25F5/00 A
H02K11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057498
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 健
(72)【発明者】
【氏名】今吉 正英
(72)【発明者】
【氏名】谷本 英之
(72)【発明者】
【氏名】武久 真之
【テーマコード(参考)】
3C064
5H611
【Fターム(参考)】
3C064AA06
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA01
3C064BA06
3C064BA33
3C064BB02
3C064BB42
3C064BB43
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA11
3C064CA33
3C064CA34
3C064CA55
3C064CA77
3C064CA78
3C064CA82
3C064CB09
3C064CB17
3C064CB32
3C064CB36
3C064CB37
3C064CB39
3C064CB63
3C064CB71
3C064CB84
3C064CB85
3C064CB91
3C064DA02
3C064DA31
3C064DA91
5H611AA03
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB04
5H611SS01
5H611TT02
(57)【要約】
【課題】コスト増や大型化を抑制可能な作業機を提供する。
【解決手段】作業機1において、モータ結線回路46を構成するリレーの公称耐熱温度(以下「リレー耐熱温度」)は、インバータ回路47のスイッチング素子Q1~Q6の公称耐熱温度(以下「FET耐熱温度」)よりも高い。作業機1は、スイッチング素子Q1~Q6の温度が所定温度(高温保護閾値)を超えるとき、リレーの温度がリレー耐熱温度より低くなるよう構成される。こうした構成のもと、作業機1は、リレーの温度監視のための専用のサーミスタを有さず、演算部80は、スイッチング素子Q1~Q6の温度がFET耐熱温度を超えないようにする制御により、間接的にリレーの温度がリレー耐熱温度を超えないように制御するよう構成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルを有するモータと、
第1スイッチ部を有し、前記複数のコイルに電流を供給するインバータ回路と、
前記複数のコイルの結線切替用の第2スイッチ部と、
前記第1スイッチ部および前記第2スイッチ部を制御する制御部と、
前記第1スイッチ部の温度を検出する温度検出部と、を有し、
前記第2スイッチ部の公称耐熱温度は前記第1スイッチ部の公称耐熱温度よりも高く、
前記制御部は、前記第1スイッチ部の温度が所定温度以上になると、第2スイッチ部を介した電流が流れないように制御する、作業機。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1スイッチ部の温度が所定温度以上になると、前記第1スイッチ部をオフにする、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1スイッチ部の温度が所定温度以上になると、前記第2スイッチ部をオフにする、請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記第1スイッチ部の温度が前記所定温度以上になるとき、前記第2スイッチ部の温度が前記第2スイッチ部の公称耐熱温度より低い、請求項1に記載の作業機。
【請求項5】
前記第2スイッチ部の温度上昇の勾配が、前記第1スイッチ部の温度上昇の勾配よりも緩やかである、請求項1に記載の作業機。
【請求項6】
冷却風を発生するファンを有し、
前記第1スイッチ部が前記第2スイッチ部よりも前記冷却風の風上に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項7】
前記第1スイッチ部が前記モータよりも前記冷却風の風上に位置する、請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記モータは、ステータコア及びインシュレータを含み、
前記モータの軸方向において前記インシュレータの一方側の端部に配置され、前記第2スイッチ部を搭載した基板を有し、
前記第2スイッチ部を冷却した後の冷却風が前記基板と前記インシュレータとの間の空間を通って前記ステータコアの内側に流れる、請求項6に記載の作業機。
【請求項9】
前記モータを収容するモータハウジングを有し、
前記第1スイッチ部が前記モータハウジングの外部に設けられる、請求項1に記載の作業機。
【請求項10】
複数のコイルを有するモータと、
第1スイッチ部を有し、前記複数のコイルに電流を供給するインバータ回路と、
前記複数のコイルの結線切替用の第2スイッチ部と、
冷却風を発生するファンと、を有し、
前記第1スイッチ部が前記第2スイッチ部よりも前記冷却風の風上に位置する、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、接続される電源の種類(電源電圧)に応じてモータの巻線の結線方式を直列結線と並列結線に切替可能にした作業機としての電動工具を開示する。また、特許文献1は、結線方式を切り替えるためのリレーを搭載した基板をモータの端部(固定子の端部)に取り付けることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リレーにも耐熱温度があり、温度保護が必要である。しかし、リレーの温度保護専用に温度検出素子を設けると、コスト増や、温度検出素子の実装のための基板の大型化、ひいては作業機の大型化の恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、コスト増や大型化を抑制可能な作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
複数のコイルを有するモータと、
第1スイッチ部を有し、前記複数のコイルに電流を供給するインバータ回路と、
前記複数のコイルの結線切替用の第2スイッチ部と、
前記第1スイッチ部および前記第2スイッチ部を制御する制御部と、
前記第1スイッチ部の温度を検出する温度検出部と、を有し、
前記第2スイッチ部の公称耐熱温度は前記第1スイッチ部の公称耐熱温度よりも高く、
前記制御部は、前記第1スイッチ部の温度が所定温度以上になると、第2スイッチ部を介した電流が流れないように制御する。
【0007】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
複数のコイルを有するモータと、
第1スイッチ部を有し、前記複数のコイルに電流を供給するインバータ回路と、
前記複数のコイルの結線切替用の第2スイッチ部と、
冷却風を発生するファンと、を有し、
前記第1スイッチ部が前記第2スイッチ部よりも前記冷却風の風上に位置する。
【0008】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コスト増や大型化を抑制可能な作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係る作業機1の一部を断面として左側面図。
【
図2】(A)は、
図1のA-A断面図。(B)は、
図2(A)のB部拡大図。
【
図3】作業機1におけるモータ30及びその周辺構成の斜視図。
【
図6】作業機1のステータ基板27を左方から見た図。
【
図8】(A)は、
図7のモータ結線回路46の回路図。(B)は、
図7のモータ結線回路46をステータ45側とステータ基板27側とに分けて示した回路図。
【
図10】ステータコイル37の結線をデルタ結線として作業機1を無負荷状態で連続運転した場合における、インバータ回路47のスイッチング素子(FET)の温度、リレーRY1~RY3(デルタ結線用リレー)の温度、及び気温の実測値の時間変化を示すグラフ。
【
図11】ステータコイル37の結線をデルタ結線として作業機1で高負荷作業を断続的に繰り返した場合における、インバータ回路47のスイッチング素子(FET)の温度、リレーRY1~RY3(デルタ結線用リレー)の温度、及び気温の実測値の時間変化を示すグラフ。
【
図12】(A)は、リレー28の鉄芯55がステータ基板27の表面と垂直な場合における、リレー28のリレーコイル56が発生する磁力線と、リレー28と回転検出用のホールIC29との相対配置を示す図。(B)は、リレー28の鉄芯55がステータ基板27の表面と平行な場合における、リレー28のリレーコイル56が発生する磁力線と、リレー28と回転検出用のホールIC29との相対配置を示す図。
【
図13】(A)は、本発明の実施形態2に係る作業機におけるモータ結線回路の回路図。(B)は、
図13(A)のモータ結線回路をステータ側とステータ基板側とに分けて示した回路図。
【
図14】(A)は、本発明の実施形態3に係る作業機におけるモータ結線回路の回路図。(B)は、本発明の実施形態4に係る作業機におけるモータ結線回路の回路図。
【
図15】本発明におけるモータ結線回路46の変形例であって、ステータ基板上に同相間を接続する回路を設けた構成を示す図。
【
図16】本発明におけるモータ結線回路46の変形例であって、インバータ回路を搭載するインバータ基板23にリレーを設けた構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
図1~
図12は、本発明の実施形態1に係る作業機1に関する。
図1及び
図2(A)により、作業機1における互いに直交する前後、上下、左右方向を定義する。作業機1は、卓上切断機(卓上丸鋸)である。
【0012】
作業機1は、ベース2、ターンテーブル3、フェンス4を有する。ベース2及びターンテーブル3は、ベース部を構成する。ベース2は、作業台等に載置される。ターンテーブル3は、ベース2の中央部に埋設され、上下方向と平行な回動軸によってベース2に対して回動可能である。ターンテーブル3の上面は、木材等の被加工材を載置する載置面(ベース面)となる。ベース2の上面とターンテーブル3の上面は、互いに略面一となる。フェンス4は、ベース2の上面に設けられる。フェンス4に被加工材を当接させることにより、安定した切断作業が可能となる。
【0013】
作業機1は、ホルダ5を有する。ホルダ5は、ターンテーブル3の後端部に傾斜軸6を介して連結され、ターンテーブル3の後端部から上方に立ち上がる。傾斜軸6は、ターンテーブル3の上面と略平行かつ切断刃20の側面と平行なシャフトである。傾斜軸6の軸心とターンテーブル3の上面は、上下方向において略同一位置にある。ホルダ5は、ターンテーブル3に対して、傾斜軸6を中心に左右の少なくとも一方に所定角度、例えば45度の範囲で傾斜可能である。図示しないクランプレバーにより、ホルダ5の傾斜位置の固定、解除が可能である。
【0014】
作業機1は、切断部10を有する。切断部10は、ホルダ5の上部に、揺動軸9を介して連結され、前上方向に延出する。揺動軸9は、切断刃20の回転軸と略平行なシャフトである。切断部10は、揺動軸9を中心に上下に揺動可能である。揺動軸9の周囲には、ホルダ5に対して切断部10を上方に付勢する図示しないスプリングが設けられる。
図1は、切断部10が揺動上限位置にある状態を示す。切断部10は、ホルダ5に対して図示しないスライドレールを介して連結され、当該スライドレールの支持によりホルダ5に対して前後方向にスライド可能である。
【0015】
切断部10は、ギヤケース(ソーカバー)11及びハウジング12を有する。ギヤケース11は、例えばアルミ等の金属製である。ギヤケース11は、切断刃20の上部外周を覆う。ハウジング12は、例えば樹脂成形体であり、ギヤケース11に連結され、ギヤケース11の左方に位置する。ハウジング12は、ハンドルハウジング13及びモータ収容部17を有する。
【0016】
ハンドルハウジング13のグリップ部には、作業者がモータ30の起動、停止を切替え可能なトリガスイッチ14(駆動操作部)が設けられる。モータ収容部17の後部は、電池パック装着部16であり、電池パック15を着脱可能に装着できる。作業機1は、電池パック15の電力で動作する。
図2(A)に示すように、モータ収容部17は、モータハウジング21とカバー22とをネジ止め等により互いに組み合わせたものである。
【0017】
モータハウジング21は、中心軸方向が左右方向と平行な非分割の筒体である。モータハウジング21の左側の開口をカバー22が覆う。モータハウジング21は、モータ30とステータ基板27とを収容する。カバー22の左面には、後述のファン50の発生する冷却風を取り込むための吸気口18(風窓)が設けられる。
【0018】
切断部10は、モータ30を有する。モータ30は、ここでは4極6スロットのブラシレスモータである。モータ30は、モータ軸31、ロータコア32、ロータマグネット33、ステータコア34、左インシュレータ35、右インシュレータ36、ステータコイル37を有する。
【0019】
モータ軸31は、切断刃20の側面と垂直に延びる。モータ軸31の左部は、左軸受26に支持される。左軸受26は、モータハウジング21の軸受保持部25に保持される。モータ軸31の右部は、右軸受51に支持される。
【0020】
ロータコア32は、略円筒形状であってモータ軸31の周囲に設けられ、モータ軸31と一体に回転する。ロータマグネット33は、ロータコア32に挿入保持される。ロータマグネット33は、ロータコア32の周方向に例えば90度間隔で4個設けられる。
図5に示すように、ロータコア32の左端面に、センサマグネット42が設けられる。センサマグネット42は4個あり、それぞれロータマグネット33と同じ周方向位置に設けられる。センサマグネット42の磁極面は、ロータコア32側の面とその反対側の面である。センサマグネット42の発生する磁界は後述のホールIC29で検出される。ロータコア32、ロータマグネット33及びセンサマグネット42は、モータ30のロータを構成する。
【0021】
ステータコア34は、モータハウジング21に保持される。
図9に示すように、ステータコア34は、ヨーク部62とティース部63とを有する。ヨーク部62は、ロータコア32を同軸に囲む筒状部(円筒状部)である。ティース部63は、ヨーク部62から径方向内側に突出する。ティース部63は、ステータコア34の周方向に例えば60度間隔で6個設けられる。各ティース部63にステータコイル37が巻回される。ステータコイル37はU相、V相、W相の各々に2個ずつあり、
図8(A),(B)、
図9では各ステータコイル37をU相ステータコイルU1、U2、V相ステータコイルV1、V2、W相ステータコイルW1、W2として区別している。
【0022】
左インシュレータ35は、例えば樹脂成形体であって、ステータコア34の左方に設けられ、ステータコイル37とステータコア34との間に介在する。
図4に示すように、左インシュレータ35は、ステータコア34の左方において、同相のステータコイル37同士をモータ軸31の周方向に渡す渡り線40のガイドとなる。左インシュレータ35は、後述のコネクトプレート41を保持する。右インシュレータ36は、例えば樹脂成形体であって、ステータコア34の右方に設けられ、ステータコイル37とステータコア34との間に介在する。ステータコア34、左インシュレータ35、右インシュレータ36、ステータコイル37、コネクトプレート41は、モータ30のステータを構成する。
【0023】
モータ30の回転、すなわちモータ軸31の回転は、巻掛け伝動機構52によって前方に伝達され、さらに減速機構53によって減速されて切断刃20に伝達される。
【0024】
切断部10は、第2基板としてのステータ基板27を有する。
図3に示すように、ステータ基板27は、左インシュレータ35に例えば3本のネジ38によって固定され、モータ軸31と垂直な姿勢で支持される。ステータ基板27は、モータ30のステータよりも小径の略円板形状である。
【0025】
ステータ基板27の左面には、5個のリレー28が設けられる。
図8(A),(B)では、5つのリレーをリレーRY1~RY5として区別している。
図5に示すように、リレー28は、磁性体芯としての鉄芯55に巻かれたリレーコイル56に電流を流すことで発生する磁界により板バネ58に設けられた鉄片57がリレーコイル56に引き寄せられ、鉄片57と一体に動作する可動接点59を固定接点60に接触させてオンとなる(電流経路を導通させる)構成である。リレーコイル56への電流を止めると、板バネ58の弾性力により可動接点59が固定接点60から離れ、リレー28はオフとなる。リレー28は、ここではスルーホール実装型である。すなわち、リレー28の端子は、ステータ基板27のスルーホールを貫通してはんだ付け等によりステータ基板27に電気的に接続される。リレー28にはリレーコイル56に電流を流すための端子が2つ、導通と遮断を切り替えたい電流路に接続するための端子が2つ設けられており、計4つの端子がステータ基板27に接続されるように構成される。なお、端子の図示は省略する。
【0026】
図5及び
図6に示すように、ステータ基板27の右面、すなわちステータ基板27のうちリレー28が搭載された面の反対面には、磁気センサとしてのホールIC29が設けられる。ホールIC29は、モータ軸31の径方向においてリレー28より内側に位置する。なお、
図6はステータ基板27の左面を見たものであるが、ステータ基板27の右面に設けられたホールIC29を破線にて示している。ホールIC29は、モータ軸31の周方向に60度間隔で3個設けられる。本実施の形態におけるホールIC29は、ステータ基板27に対して垂直な方向(左右方向)の磁界を検知するように構成されている。より具体的には、本実施の形態におけるホールIC29は、ステータ基板27に対して垂直な方向の磁束密度によって、当該磁束密度の大きさに応じた大きさの電圧を出力するように構成されている。
【0027】
ステータ基板27とステータコイル37との電気的な接続は、
図3、
図4、
図6に示す金属製のコネクトプレート41によって行われる。コネクトプレート41は、例えばヒュージング端子である。コネクトプレート41は、左インシュレータ35に例えば一体成形により保持される。なお、コネクトプレート41は、インシュレータとは別体として構成し、相互に組み付けるようにして構成してもよい。コネクトプレート41は、モータ軸31の周方向に例えば60度間隔で6個設けられる。なお、
図3では、各コネクトプレート41はステータコイル37を巻きつけ又は引っ掛けて挟持する前の開いた状態で示される。
図4に示すように、各コネクトプレート41には、同相のステータコイル37同士を接続する渡り線40やステータコイル37の端部が巻きつけ又は引っ掛けられる。各コネクトプレート41は、
図4に示すように閉じられた状態でステータ基板27に電気的に接続される。
図6及び
図9では、6個のコネクトプレート41を、対応するステータコイル37の相に合わせ、コネクトプレート41U1、41U2、41V1、41V2、41W1、41W2として区別している。また、
図6に示すように、ステータ基板27には6個のコネクトプレート41とそれぞれ電気的に接続される導通部27U1、27U2、27V1、27V2、27W1、27W2が形成されている。これらの導通部27U1~W2は、半田等の接続手段によってそれぞれコネクトプレート41U1~W2と電気的に接続され、固定されている。
【0028】
切断部10は、第1基板としてのインバータ基板23及びそれを収容保持する基板ケース24を有する。基板ケース24は軸受保持部25の左方に位置する。インバータ基板23は、軸受保持部25の左方においてモータ軸31と垂直な姿勢で基板ケース24内に保持される。インバータ基板23及び基板ケース24は、モータハウジング21より左方に位置し、モータ軸31の軸方向から見てモータハウジング21の左側の開口よりも大きい寸法を有する。
図2(A),(B)に示すように、インバータ基板23の左面には、ステータコイル37への通電用のスイッチング素子49が設けられる。スイッチング素子49は、
図7に示すインバータ回路47を構成するFET等のスイッチング素子Q1~Q6に対応する。なお、
図3ではスイッチング素子49の図示は省略している。また、インバータ基板23には
図7に示す演算部80を構成するマイクロコントローラ等の回路部品も搭載されるが、
図3ではそれら回路部品の図示を省略している。スイッチング素子Q1~Q6は、第1スイッチ部の例示である。
【0029】
インバータ基板23とステータ基板27とは、
図6に示すU相電源線43U、V相電源線43V、W相電源線43Wによって電気的な接続される。U相電源線43Uは、インバータ基板23上における、
図7に示すスイッチング素子Q1、Q4の相互接続部から延びて、ステータ基板27に電気的に接続される。V相電源線43Vは、インバータ基板23上における、
図7に示すスイッチング素子Q2、Q5の相互接続部から延びて、ステータ基板27に電気的に接続される。W相電源線43Wは、インバータ基板23上における、
図7に示すスイッチング素子Q3、Q6の相互接続部から延びて、ステータ基板27に電気的に接続される。すなわちU相電源線43U、V相電源線43V、W相電源線43Wは、
図7に示すように、インバータ回路47のU相、V相、W相のそれぞれからモータ結線回路46に延びる3つの電力供給用配線である。
【0030】
切断部10は、ファン50を有する。ファン50は、遠心ファンであり、ステータコア34の右方においてモータ軸31に設けられ、モータ軸31と一体に回転する。ファン50の発生する冷却風の流れを
図2(A)に矢印で示す。冷却風は、カバー22の吸気口18からカバー22内に入り、インバータ基板23及びスイッチング素子49を冷却し、その後、インバータ基板23の右方に回り込んでステータ基板27及びリレー28を冷却し、更にモータ30を冷却してファン50に吸い込まれる。すなわち、リレー28は、スイッチング素子49よりも冷却風の下流側に位置する。
図2(B)に示すステータ基板27の中央部の貫通孔44の内縁とモータ軸31の外周面との間の隙間、及び、
図3に示す左インシュレータ35の左端部の切欠39とステータ基板27との間の隙間は、ステータ基板27及びリレー28を冷却した後の冷却風がモータ30側に流れる風路となる。ファン50に吸い込まれた冷却風は、遠心方向に流れ、ハウジング12の内壁にガイドされて右方に流れ、図示しない排気口からハウジング12の外部に排気される。切欠39はモータ軸31の回転方向で、少なくとも一部がリレー28と同じ位置にあるように構成される。すなわち、切欠39は各リレー28に対応した位置にそれぞれ配置されている。こうすることで、切欠39を通る空気がリレー28に当たりやすくなり、リレー28を好適に冷却することができる。なお、本実施形態では切欠39は計6か所設けられている。
【0031】
図7は、作業機1の回路ブロック図である。
図8(A),(B)は、
図7のモータ結線回路46の具体的構成を示す。モータ結線回路46は、U相ステータコイルU1、U2、V相ステータコイルV1、V2、W相ステータコイルW1、W2、及びリレーRY1~RY5を含む。リレーRY1~RY5は、U相ステータコイルU1、U2、V相ステータコイルV1、V2、及びW相ステータコイルW1、W2の結線(以下「ステータコイル結線」)をデルタ結線とスター結線(Y結線)との間で切り替える結線切替部であり、第2スイッチ部の例示である。リレーRY1~RY5の公称耐熱温度(以下「リレー耐熱温度」)は、インバータ回路47のスイッチング素子Q1~Q6の公称耐熱温度(以下「FET耐熱温度」)よりも高い。デルタ結線とスター結線は異なるモータ駆動特性を有しており、作業形態や作業機の種類に応じ、制御体系のなかでそれぞれをどのように適用するかは適宜調整される。例えば、低負荷のときはデルタ結線で、高負荷のときはスター結線で駆動するようにしてもよい。
【0032】
ステータコイル結線を第1結線としてのデルタ結線とする場合には、リレーRY1~RY3がオン(導通状態)、リレーRY4、RY5がオフ(遮断状態)となる。ステータコイル結線を第2結線としてのスター結線とする場合にはリレーRY1~RY3がオフ(遮断状態)、リレーRY4、RY5がオン(導通状態)となる。渡り線40は、同相のコイルを接続する回路として機能する。
図8、9に示すように、渡り線40には、U相のコイル同士を接続する第1U相渡り線40U1及び第2U相渡り線40U2、V相のコイル同士を接続する第1V相渡り線40V1及び第2V相渡り線40V2、W相のコイル同士を接続する第1W相渡り線40W1及び第2W相渡り線40W2が含まれる。同相のステータコイル同士を接続する渡り線40及び各コネクトプレート41は、デルタ結線の場合とスター結線の場合に両方において電流経路として使用される(導通状態となる)。すなわち、渡り線40及び各コネクトプレート41は共通接続部の例示である。リレーRY1~RY3は、デルタ結線用リレーであり、第1接続部の例示である。リレーRY4、RY5は、スター結線用リレーであり、第2接続部の例示である。
【0033】
インバータ回路47は、電池パック15の出力する直流を交流に変換してモータ結線回路46に供給する。インバータ回路47は、三相ブリッジ接続されたFETやIGBT等のスイッチング素子Q1~Q6を含む。上述したが、スイッチング素子Q1~Q6は、第1スイッチ部の例示である。抵抗48は、モータ結線回路46に流れる電流(以下「モータ電流」)の経路に設けられる。電流検出回路71は、抵抗48での電圧降下によりモータ電流を検出し、演算部80に送信する。電圧検出回路72は、電池パック15の出力電圧(以下「電池電圧」)を検出し、演算部80に送信する。操作量検出回路73は、トリガスイッチ14のオンオフ及び操作量を検出し、演算部80に送信する。
【0034】
温度検出素子としてのサーミスタ75は、インバータ基板23に設けられ、スイッチング素子Q1~Q6のいずれかの近傍に位置し、当該スイッチング素子の温度(以下「FET温度」)に応じた信号を出力する。温度検出回路74は、サーミスタ75の信号により当該スイッチング素子の温度を検出し、演算部80に送信する。なお、スイッチング素子Q1~Q6は、互いに同一の素子であってオン抵抗や耐熱温度などが共通し、温度変化が実質的に同じになる。このため、スイッチング素子Q1~Q6のうち1つの温度変化を監視すれば足りる。
【0035】
回転子位置検出回路76は、ホールIC29からの出力信号(電圧)によりモータ30のロータ回転位置を検出し、演算部80に送信する。回転数検出回路77は、回転子位置検出回路76の出力信号によりモータ30の回転数(以下「モータ回転数」)を検出し、演算部80に送信する。リレー駆動回路78は、演算部80の制御に従いリレー28(リレーRY1~RY5)のオンオフを制御する。制御信号出力回路79は、演算部80の制御に従いインバータ回路47のスイッチング素子Q1~Q6のオンオフを制御する。
【0036】
演算部80は、作業機1の全体の動作を制御する制御部である。演算部80は、モータ電流、電池電圧、トリガスイッチ14のオンオフ及び操作量、FET温度、ロータ回転位置、モータ回転数を監視しながら、トリガスイッチ14の操作に応じて、制御信号出力回路79を介してインバータ回路47の駆動を制御(PWM制御)し、モータ30の駆動を制御する。
【0037】
演算部80は、モータ電流が過負荷保護作動条件(過電流保護作動条件)を満たすとトリガスイッチ14がオンの状態でもスイッチング素子Q1~Q6を全てオフにしてモータ30への電力供給を停止する過負荷保護機能(過電流保護機能)を有する。過負荷保護作動条件は、例えばモータ電流が過負荷保護閾値(過電流保護閾値)以上になることである。
【0038】
演算部80は、FET温度が高温保護作動条件を満たすとトリガスイッチ14がオンの状態でもスイッチング素子Q1~Q6を全てオフにしてモータ30への電力供給を停止する高温保護作動機能を有する。高温保護作動条件は、例えばFET温度が所定温度(高温保護閾値)以上になることである。
【0039】
過負荷保護機能及び高温保護作動機能において、スイッチング素子Q1~Q6を全てオフにしてモータ30への電力供給を停止することは、リレーRY1~RY5を介した電流が流れない(リレーRY1~RY5への通電が遮断される)ように制御することの例示である。演算部80は、スイッチング素子Q1~Q6を全てオフにすることに替えて又は加えてリレーRY1~RY5を全てオフにしてもよい。すなわち第1スイッチ部としてのスイッチング素子Q1~Q6と第2スイッチ部としてのリレーRY1~RY5は、それぞれモータ30への電力供給を遮断する手段として機能させることが可能である。
【0040】
モータ30の駆動時には、FET温度もリレーRY1~RY5の温度(以下「リレー温度」)も上昇する。このため、FET温度を監視してFET温度がFET耐熱温度を超えないようにする制御と、リレー温度を監視してリレー温度がリレー耐熱温度を超えないようにする制御と、の双方を行うことが考えられる。しかし、FET温度監視用のサーミスタ75とリレー温度監視用のサーミスタとを別々に設けると、コスト増や、サーミスタ実装のためのステータ基板27の大型化、ひいては作業機1の大型化の恐れがある。
【0041】
そこで作業機1は、リレー温度がリレー耐熱温度に達する前に、FET温度が高温保護作動条件を満たすよう構成する。すなわち、FET温度が所定温度(高温保護閾値)を超えるとき、リレー温度がリレー耐熱温度より低くなるよう構成する。こうした構成のもと、作業機1ではリレー温度監視のための専用のサーミスタを設けず、演算部80は、FET温度がFET耐熱温度を超えないようにする制御により、間接的にリレー温度がリレー耐熱温度を超えないように制御する。
【0042】
図8(A),(B)に示すように、U相ステータコイルU1、U2は互いに並列接続され、V相ステータコイルV1、V2は互いに並列接続され、W相ステータコイルW1、W2は互いに並列接続される。これらの並列接続は、第1U相渡り線40U1、第2U相渡り線40U2、第1V相渡り線40V1、第2V相渡り線40V2、第1W相渡り線40W1、第2W相渡り線40W2によって行われる。
図8(B)は、各相のステータコイルの並列接続(並列結線)が、ステータ45側で完結していること、すなわちステータ基板27の導電パターン(配線パターン)によらずに成立していることを示す。これにより、コネクトプレート41が6個で済み、またステータ基板27の導電パターンの複雑化、またはステータ基板27の大型化が抑制される。
【0043】
図9を用いて、ステータ45の巻線過程を説明する。本図の例では、ステータコイルとなる線材の巻き始め部分をコネクトプレート41U2に絡め、ステータコイルU2を巻き、
図9における時計回り方向に180度引き回し、コネクトプレート41U1に引っ掛け、ステータコイルU1を巻き、
図9における時計回り方向に180度引き回し、コネクトプレート41U2に引っ掛ける。これによりU相ステータコイルU1、U2が互いに並列接続状態となる。
【0044】
続いて、コネクトプレート41U2に引っ掛けた線材を
図9における時計回り方向に60度引き回し、コネクトプレート41W1に引っ掛け、ステータコイルW1を巻き、
図9における時計回り方向に180度引き回し、コネクトプレート41W2に引っ掛け、ステータコイルW2を巻き、
図9における時計回り方向に180度引き回し、コネクトプレート41W1に引っ掛ける。これによりW相ステータコイルW1、W2が互いに並列接続状態となる。
【0045】
続いて、コネクトプレート41W1に引っ掛けた線材を
図9における時計回り方向に60度引き回し、コネクトプレート41V2に引っ掛け、ステータコイルV2を巻き、
図9における時計回り方向に180度引き回し、コネクトプレート41V1に引っ掛け、ステータコイルV1を巻き、
図9における反時計回り方向に180度引き回し、巻き終わり部分をコネクトプレート41V2に絡める。これによりV相ステータコイルV1、V2が互いに並列接続状態となる。
【0046】
以上の巻線工程は図示しない自動巻線機により行える。続いて、線材の不要部分(
図9中の二点鎖線部分)、すなわちコネクトプレート41U2、W1の間を渡す部分、及びコネクトプレート41W1、41V2の間を渡す部分を切断し除去する。これにより
図8(B)のステータ45の破線内に示される接続が完成する。同相のステータコイル同士を接続する渡り線40及び各コネクトプレート41は、共通接続部の例示である。上記の巻線工程において、いずれのステータコイルから巻き始めるかは特に限定されない。
【0047】
図10は、ステータコイル結線をデルタ結線として作業機1を無負荷状態で連続運転した場合におけるFET温度、リレーRY1~RY3(デルタ結線用リレー)の温度(以下「デルタ用リレー温度」)、及び気温の実測値の時間変化を示すグラフである。
図10においてFET温度が最初に一時的に急上昇しているのは、モータ30の起動電流によるものである。FET温度69及びデルタ用リレー温度は、共に時間の経過と共に上昇したが、それぞれ250秒あたりで頭打ちとなった。これは、電流が流れることによる発熱と、ファン50の発生する冷却風による冷却と、が釣り合って平衡状態になるためである。温度が上昇しているとき及び平衡状態のいずれにおいても、FET温度はデルタ用リレー温度よりも高くなるように構成される。図示は省略するが、ステータコイル結線をスター結線とした場合におけるFET温度とリレーRY4、RY5の温度(以下「スター用リレー温度」)との関係も
図10と同様の傾向となる。
【0048】
図11は、ステータコイル結線をデルタ結線として作業機1で高負荷作業を断続的に繰り返した場合におけるFET温度、デルタ用リレー温度、及び気温の実測値の時間変化を示すグラフである。
図11において、FET温度は、高負荷作業中に上昇し、作業停止中に低下するという温度変化を繰り返しながら、時間平均値が上昇した。デルタ用リレー温度は、FET温度より低い温度において小さな上下を繰り返しながら上昇した。図示は省略するが、ステータコイル結線をスター結線とした場合におけるFET温度とスター用リレー温度との関係も
図11と同様の傾向となる。
【0049】
図10及び
図11に示すように、いずれの場合も(特に所定時間を超えて作業を行った場合には)デルタ用リレー温度はFET温度よりも低くなるように構成される。またスター用リレー温度とFET温度との間にも同様である。本実施の形態では、リレー耐熱温度がFET耐熱温度よりも高く設定されており、これによってリレー温度がリレー耐熱温度に達する前にFET温度が高温保護作動条件を満たすように構成されている。これにより、FET温度が所定温度(高温保護閾値)を超えるときリレー温度がリレー耐熱温度より低いため、リレーに対する温度保護が働くこととなる。
【0050】
図12(A)は、リレー28の鉄芯55の延在方向がステータ基板27の表面と垂直なリレーコイル56(本実施形態のリレーコイル)が発生する磁界(以下「リレー磁界」)の磁力線と、リレー28と回転検出用のホールIC29との相対配置を示す図である。
図12(A)に示すリレー28とホールIC29との相対配置は、
図5に示すリレー28とホールIC29との相対配置に対応する。
【0051】
ホールIC29は、ステータ基板27の表面と垂直な方向(以下「基板垂直方向」)の磁界を検出し、ステータ基板27の表面と平行な方向(以下「基板平行方向」)の磁界は検出しない。具体的には、ホールIC29は基板垂直方向の磁界に反応して電圧を出力するように構成され、基板平行方向の磁界では電圧を出力しない。このため、リレー磁界の基板垂直方向成分が大きい位置にホールIC29を配置すると、ホールIC29の出力信号が意図せぬ変化を起こす懸念がある。すなわち、本来ホールIC29はセンサマグネット42の磁界のみに基づいて出力信号(のレベル)が変化するように構成させたいところだが、センサマグネット42とは反対側に位置するリレー28から発せられるリレー磁界によりホールIC29を通過する磁界の大きさや向きなどが変化してしまい、センサマグネット42の位置に応じた正しい出力信号が発せられなくなる恐れがある。この場合、誤動作を引き起こすことが懸念される。
【0052】
図12(A)の配置例では、ホールIC29は、鉄芯55の軸方向視(左右方向視)において鉄芯55の存在範囲外に位置する。また、ホールIC29は、基板垂直方向から見て(左右方向視で)リレー28の存在範囲外に位置する。こうした配置によれば、鉄芯55がステータ基板27の表面と垂直な場合において、ホールIC29の位置でのリレー磁界の基板垂直方向成分が小さくなり、ホールIC29の出力信号の意図せぬ変化が抑制され、誤動作のリスクが抑制される。ホールIC29とリレー28の相対配置は、リレー磁界によるホールIC29の出力信号への影響が実質的に無視できる範囲内に収まるような相対配置であればよい。例えば、ホールIC29は、鉄芯55の軸方向視において鉄芯55の存在範囲外(又はリレーコイル56の存在範囲外)かつ基板垂直方向から見てリレー28の存在範囲内に位置してもよい。なお、本実施の形態におけるリレー28はスルーホール実装型であり、ステータ基板27の右面(モータ30側の面)にリレー28の端子が突出し、そこで半田付けが行われるため、リレー28の実装面の裏側には半田付けの領域が発生することとなる。そして、この領域にホールIC29が位置する場合、組み立て工程において不具合が発生する恐れがあるほか、リレー28をステータ基板27へ固定する前にホールIC29をステータ基板27に固定する必要性が生じることで組み立て性の悪化を招く恐れがある。本実施の形態では、基板垂直方向から見てリレー28の存在範囲外(重複しない位置)にホールICが位置するため、このような不具合を抑制することができる。
【0053】
図12(B)は、鉄芯55がステータ基板27の表面と平行なリレー28を使用した場合におけるリレー28とホールIC29との相対配置と、リレー磁界の磁力線を示す図である。
図12(B)の配置例では、ホールIC29の少なくとも一部は、鉄芯55の軸方向視において鉄芯55の存在範囲内に位置する。ホールIC29は、基板垂直方向から見てリレー28の存在範囲内(又は鉄芯55もしくはリレーコイル56の存在範囲内)に位置する。ホールIC29は、ステータ基板27のうちリレー28が搭載された面の反対面に搭載される。こうした配置によれば、鉄芯55がステータ基板27の表面と平行な場合において、ホールIC29の位置でのリレー磁界の基板垂直方向成分が小さくなり、ホールIC29の出力信号の意図せぬ変化が抑制され、誤動作のリスクが抑制される。すなわち、磁界の検出方向が鉄芯55の延在方向と(概ね)平行となる場合には基板垂直方向から見てリレー28とホールIC29が重複しないように配置すればよく、磁界の検出方向が鉄芯55の延在方向と(概ね)垂直となる場合には基板垂直方向から見てリレー28とホールIC29が重複するように配置すればよい。なお、ステータ基板27の表面と平行な方向の磁界を検出するホールICの場合でも上記関係を適用することで不具合の発生を抑制できる。なお、
図12(A),(B)の構成において、センサマグネット42の磁力によって鉄片57は動作しないように十分に離間されて配置されている。換言すれば、リレー28(鉄片57)はリレーコイル56以外の磁界発生要素(センサマグネット42)によってオンオフしないように構成されており、これによって誤動作を抑制することができる。鉄片57はリレー28内部において、センサマグネット42に対して反対側の領域(中心よりも左側)に位置するとよい。
【0054】
本実施形態は、下記の作用効果を奏する。
【0055】
(1)
図8(B)及び
図9に示すように、共通接続部(渡線40及びコネクトプレート41)と、第1接続部(デルタ結線用リレー)、第2接続部(スター結線用リレー)は同一箇所に設けられていない。具体的には、共通接続部はモータ30(インシュレータ35)に設けられ、第1接続部と第2接続部とはステータ基板27に設けられている。本実施の形態ではデルタ結線時とスター結線時とで、同相のコイルは並列接続されるように構成される。この並列接続はインシュレータ35に支持される渡り線40によって成されている。従って、U相ステータコイルU1、U2の並列接続(以下「U相並列接続」)、V相ステータコイルV1、V2の並列接続(以下「V相並列接続」)、W相ステータコイルW1、W2の並列接続(以下「W相並列接続」)が、それぞれステータ基板27の導電パターンによらずステータ45側で完結している。このため、各々の並列接続におけるステータコイル同士の接続をステータ基板27の導電パターンによって構成する場合と比較して、コネクトプレート41の個数が削減され、またステータ基板27の導電パターンの複雑化、または大電流の流れる導電パターンの増加が抑制される。これによりステータ基板27が小型となり、コスト増大や製品の大型化が抑制される。一方、U相並列接続と、V相並列接続と、W相並列接続との間の相互接続形態、すなわちステータコイル結線はステータ45側で固定されないため、ステータ基板27に設けたリレーRY1~RY5によってステータコイル結線を動的に切り替えることができる。
【0056】
(2)
図9に示すように、ステータの巻線工程は、全スロットを一度に巻き終えてから不要部分を切除するものであり、効率が良い。また、コネクトプレート41により、同相のステータコイル同士を接続しつつステータ基板27との電気的な接続も可能なため、部品点数の増大を抑制でき、構造もシンプルになる。
【0057】
(3)
図2(A)に示すように、スイッチング素子49は、リレー28より冷却風の風上に配置される。このため、リレー28を冷却して温度が上がる前の冷却風により発熱の大きいスイッチング素子49を冷却でき、FET温度の上昇を効果的に抑制できる。
【0058】
(4) ステータコア34を保持するモータハウジング21は単一(非分割)の部材である。このため、モータハウジング21が例えば二分割構造の場合と比較して、モータハウジング21の有する軸受保持部25とステータコア34との同軸精度が高められ、モータ軸31とステータコア34との同軸精度が高められる。また、ステータ基板27を小型にすることで、単一部材となる筒型のモータハウジング21に、ステータ基板27とユニット化されたステータ45を挿入することが容易となる。挿入する構成の場合モータハウジング21の内部に挿入用のスペースを確保する必要があるが、ステータ基板27を小型にすることで、当該スペースが小さくなり、モータハウジング21も小さくすることができる。
【0059】
(5) 作業機1は、FET温度が所定温度(高温保護閾値)を超えるとき、リレー温度がリレー耐熱温度より低くなるよう構成される。こうした構成のもと、作業機1は、リレー温度監視のための専用のサーミスタを有さず、演算部80は、FET温度がFET耐熱温度を超えないようにする制御により、間接的にリレー温度がリレー耐熱温度を超えないように制御するよう構成される。このため、リレー温度監視のための専用のサーミスタを設けることによるコスト増や、当該サーミスタを実装するためのステータ基板27の大型化、ひいては作業機1の大型化を抑制できる。
【0060】
(6)
図12(A)に示すように、鉄芯55がステータ基板27の表面と垂直な場合、ホールIC29は、鉄芯55の軸方向視において鉄芯55の存在範囲外に位置し、かつ基板垂直方向から見てリレー28の存在範囲外に位置する。このため、ホールIC29の位置でのリレー磁界の基板垂直方向成分が小さくなり、ホールIC29の出力信号の意図せぬ変化が抑制され、誤動作のリスクが抑制される。なお、ホールIC29が鉄芯55の軸方向視において鉄芯55の存在範囲外(又はリレーコイル56の存在範囲外)かつ基板垂直方向から見てリレー28の存在範囲内に位置する場合でも、リレー磁界によるホールIC29の出力信号への影響が実質的に無視できる範囲内に収まるような相対配置が可能である。
【0061】
(7)
図12(B)に示すように、鉄芯55がステータ基板27の表面と平行な場合、ホールIC29は、鉄芯55の軸方向視において鉄芯55の存在範囲外に位置し、かつ基板垂直方向から見てリレー28の存在範囲内(又は鉄芯55もしくはリレーコイル56の存在範囲内)に位置する。このため、ホールIC29の位置でのリレー磁界の基板垂直方向成分が小さくなり、ホールIC29の出力信号の意図せぬ変化が抑制され、誤動作のリスクが抑制される。
【0062】
(実施形態2)
図13(A)は、本発明の実施形態2に係る作業機におけるモータ結線回路の回路図である。
図13(B)は、
図13(A)のモータ結線回路をステータ側とステータ基板側とに分けて示した回路図である。以下、実施形態1との相違点を中心に説明する。U相ステータコイルU1、U2は互いに直列接続され、V相ステータコイルV1、V2は互いに直列接続され、W相ステータコイルW1、W2は互いに直列接続される。本実施形態における共通接続部には、
図13(B)に示すように、同相コイルを直列に接続するため(直列接続用)の渡り線40U、40V、40Wが含まれる。従って、共通接続部(渡線40)と、第1接続部(デルタ結線用リレー)、第2接続部(スター結線用リレー)とは同一箇所に設けられておらず、すなわち分散して配置されている。本実施形態も、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0063】
(実施形態3)
図14(A)は、本発明の実施形態3に係る作業機におけるモータ結線回路の回路図である。以下、実施形態1との相違点を中心に説明する。本実施形態では、異相関の接続形態はデルタ結線であり、リレーRY11~RY19により各相の複数のステータコイルの接続形態を直列接続と並列接続との間で切り替える。リレーRY11~RY16をオン、リレーRY17~RY19をオフにすることで、U相ステータコイルU1、U2は互いに並列接続となり、V相ステータコイルV1、V2は互いに並列接続となり、W相ステータコイルW1、W2は互いに並列接続となる。リレーRY11~RY16は第1接続部(直列接続部)の例示である。リレーRY11~RY16をオフ、リレーRY17~RY19をオンにすることで、U相ステータコイルU1、U2は互いに直列接続となりV相ステータコイルV1、V2は互いに直列接続となり、W相ステータコイルW1、W2は互いに直列接続となる。リレーRY17~RY19は第2接続部の例示である。すなわち、本実施形態におけるリレーは、直列と並列を切り替える接続部(直並切替接続部)となる。本実施形態では、異相のステータコイル同士、すなわちU相ステータコイルU1とW相ステータコイルW2、U相ステータコイルU2とV相ステータコイルV2、V相ステータコイルV1とW相ステータコイルW1を接続する渡り線とコネクトプレートが共通接続部を構成しており、これらはインシュレータ35に保持され、各リレーはステータ基板27またはインバータ基板23に保持される。本実施形態も、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0064】
(実施形態4)
図14(B)は、本発明の実施形態4に係る作業機におけるモータ結線回路の回路図である。以下、実施形態1との相違点を中心に説明する。本実施形態では、異相関の接続形態はスター結線であり、リレーRY21~RY29により各相の複数のステータコイルの接続形態を直列接続(第1結線)と並列接続(第2結線)との間で切り替える。リレーRY21~RY26をオン、リレーRY27~RY29をオフにすることで、U相ステータコイルU1、U2は互いに並列接続となり、V相ステータコイルV1、V2は互いに並列接続となり、W相ステータコイルW1、W2は互いに並列接続となる。リレーRY21~RY26をオフ、リレーRY27~RY29をオンにすることで、U相ステータコイルU1、U2は互いに直列接続となりV相ステータコイルV1、V2は互いに直列接続となり、W相ステータコイルW1、W2は互いに直列接続となる。本実施形態では、異相のステータコイル同士、すなわちU相ステータコイルU2とV相ステータコイルV2とW相ステータコイルW2を接続する渡り線とコネクトプレートが共通接続部を構成しており、これらはインシュレータに保持され、各リレーはステータ基板またはインバータ基板23に保持される。本実施形態も、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0065】
なお、上記した実施形態では、共通接続部がモータ30側に、第1接続部(デルタ結線用リレー)、第2接続部(スター結線用リレー)はステータ基板27に設けられるように分散して配置したが、本発明はこれに限られない。
【0066】
図15は、ステータ基板を2枚に増やし、共通接続部を一方に、第1、第2接続部を他方に設ける例である。インシュレータ35への配線が6本と多くなってしまうが、この場合、インシュレータにおける渡り線を保持する部分が不要となるため、モータ30の小型化を図ることができる。
【0067】
図16は、共通接続部はインシュレータ35に設けつつ、第1、第2接続部はインバータ基板23(メイン基板)に配置する構成である。また、本実施形態においては、ベクトル制御によってモータ30を制御することで、ホールICを不要とする構成とした。従って、ステータ基板が不要となり、部品点数の削減を行うことができる。
【0068】
以上、実施形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されない。実施形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0069】
実施形態で具体的な数値として例示したロータの極数やステータのスロット数等は、発明の範囲を何ら限定するものではなく、要求される仕様に合わせて任意に変更できる。結線切替用のリレー28の少なくとも一部は、インバータ基板23に設けられてもよい。モータ30は、センサレス駆動であってもよい。すなわち、ホールIC29は省略されてもよい。この場合、ホールIC29の出力信号がリレー28の発生する磁気に影響を受けるという問題は無いが、リレー28の外部の磁気発生源、例えばロータマグネット33から発せられる磁気の影響によってリレー28のオンオフが切り替わらないよう構成されるとよい。本発明の作業機は、卓上切断機に限定されず、携帯丸鋸等の他の種類の切断機であってもよいし、グラインダ等の他の種類の作業機であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…作業機、2…ベース、3…ターンテーブル、4…フェンス、5…ホルダ、6…傾斜軸、9…揺動軸(シャフト)、10…切断部(ヘッド部)、11…ギヤケース(ソーカバー)、12…ハウジング、13…ハンドルハウジング、14…トリガスイッチ(駆動操作部)、15…電池パック、16…電池パック装着部、17…モータ収容部、18…吸気口、20…切断刃(鋸刃)、21…モータハウジング、22…カバー、23…インバータ基板(第1基板)、24…基板ケース、25…軸受保持部、26…左軸受、27…ステータ基板(第2基板)、28…リレー、29…ホールIC(磁気センサ)、30…モータ、31…モータ軸、32…ロータコア、33…ロータマグネット、34…ステータコア、35…左インシュレータ、36…右インシュレータ、37…ステータコイル、38…ネジ、39…切欠、40…渡り線、41、41U1、41U2、41V1、41V2、41W1、41W2…コネクトプレート、42…センサマグネット、43U、43V、43W…電源線、44…貫通孔、45…ステータ、46…モータ結線回路、47…インバータ回路、48…抵抗、49…スイッチング素子、50…ファン、51…右軸受、52…巻掛け伝動機構、53…減速機構、55…鉄芯(磁性体芯)、56…リレーコイル、58…板バネ、59…可動接点、60…固定接点、62…ヨーク部、63…ティース部、71…電流検出回路、72…電圧検出回路、73…操作量検出回路、74…温度検出回路、75…サーミスタ(温度検出素子)、76…回転子位置検出回路、77…回転数検出回路、78…リレー駆動回路、79…制御信号出力回路、80…演算部(制御部)、RY1~RY5、RY11~RY19、RY21~RY29…リレー、U1、U2…U相ステータコイル、V1、V2…V相ステータコイル、W1、W2…W相ステータコイル。