(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145237
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】高圧直流マイクログリッドおよび高圧直流マイクログリッドの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20241004BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02J7/34 J
H02J7/34 B
H02J7/35 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057504
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 充弘
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 尊衛
(72)【発明者】
【氏名】中原 瑞紀
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA05
5G503DA07
5G503DA15
5G503DA17
5G503DA18
5G503GB03
5G503GD06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】災害時に蓄電池によるバックアップの際、最小限の負荷を動作させる場合でも、DC/DCコンバータの損失蓄電池の放電量を低減する高圧直流マイクログリッド及びその制御方法を提供する。
【解決手段】高圧直流マイクログリッド100において、負荷用DC/DCコンバータ30は、高圧直流ライン10側が直列に接続される複数の負荷用DC/DCコンバータモジュール301~304と、電池用DC/DCコンバータ40に、高圧直流ライン側が直列に接続される複数の電池用DC/DCコンバータモジュール401~4を備え、高圧直流ライン側にバイパススイッチ311~4,411~4を備え、電池用DC/DCコンバータは、高圧直流ラインから交流系統20が遮断されるとき、負荷の消費電力が大きいほど高圧直流電圧を高く制御し、高圧直流電圧が高いほど電池用DC/DCコンバータモジュールが備えるオン状態のバイパススイッチの数を減少させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧直流ラインと、交流系統の交流電圧を高圧直流電圧に変換して前記高圧直流ラインに出力するAC/DCコンバータと、前記高圧直流電圧を変換して負荷に給電する負荷用DC/DCコンバータと、前記高圧直流電圧を変換して蓄電池を充放電する電池用DC/DCコンバータとを備えた高圧直流マイクログリッドであって、
前記負荷用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ライン側が直列に接続される複数の負荷用DC/DCコンバータモジュールを備え、
前記電池用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ライン側が直列に接続される複数の電池用DC/DCコンバータモジュールを備え、
前記負荷用DC/DCコンバータモジュールと前記電池用DC/DCコンバータモジュールは、それぞれ前記高圧直流ライン側にバイパススイッチを備え、
前記電池用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ラインから前記交流系統が遮断されるとき、前記負荷の消費電力が大きいほど前記高圧直流電圧を高く制御し、かつ、高圧直流電圧が高いほど前記電池用DC/DCコンバータモジュールが備えるオン状態のバイパススイッチの数を減少させることを特徴とする高圧直流マイクログリッド。
【請求項2】
前記負荷用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ラインから前記交流系統が遮断されるとき、前記高圧直流電圧が高いほど前記負荷用DC/DCコンバータモジュールが備えるオン状態の前記バイパススイッチの数を減少させる
ことを特徴とする請求項1に記載の高圧直流マイクログリッド。
【請求項3】
前記AC/DCコンバータと前記負荷用DC/DCコンバータと前記電池用DC/DCコンバータを制御する制御装置を備え、
前記負荷用DC/DCコンバータは、前記制御装置に送信する電圧要求値を計算するための電圧要求値演算部を備え、
前記電圧要求値演算部は、前記負荷の消費電力が大きいほど前記電圧要求値を大きくし、かつ、前記制御装置は、前記電圧要求値を電圧指令値として前記電池用DC/DCコンバータに送信し、
前記電池用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ラインから前記交流系統が遮断されるとき、前記電圧指令値に基づいて前記高圧直流電圧を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の高圧直流マイクログリッド。
【請求項4】
前記電圧要求値演算部は、所定の周期で前記電圧要求値を更新するものであって、
前記負荷用DC/DCコンバータの入力電流が、第一電流閾値より小さければ前記電圧要求値を減少させ、前記負荷用DC/DCコンバータの入力電流が、前記第一電流閾値より大きく設定された第二電流閾値より大きければ前記電圧要求値を増大させることを特徴とする請求項3に記載の高圧直流マイクログリッド。
【請求項5】
前記負荷用DC/DCコンバータは、前記負荷用DC/DCコンバータモジュールの温度を観測し、
前記電圧要求値演算部は、前記負荷用DC/DCコンバータモジュールの前記温度が高いほど前記第一電流閾値と前記第二電流閾値を小さく設定する
ことを特徴とする特徴とする請求項4に記載の高圧直流マイクログリッド。
【請求項6】
高圧直流ラインと、交流系統の交流電圧を高圧直流電圧に変換して前記高圧直流ラインに出力するAC/DCコンバータと、前記高圧直流電圧を変換して負荷に給電する負荷用DC/DCコンバータと、前記高圧直流電圧を変換して蓄電池を充放電する電池用DC/DCコンバータとを備えた高圧直流マイクログリッドの制御方法であって、
前記負荷用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ライン側が直列に接続される複数の負荷用DC/DCコンバータモジュールを備え、
前記電池用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ライン側が直列に接続される複数の電池用DC/DCコンバータモジュールを備え、
前記負荷用DC/DCコンバータモジュールと前記電池用DC/DCコンバータモジュールは、それぞれ前記高圧直流ライン側にバイパススイッチを備え、
前記電池用DC/DCコンバータは、
前記高圧直流ラインから前記交流系統が遮断されるとき、前記負荷の消費電力が大きいほど前記高圧直流電圧を高く制御し、かつ、高圧直流電圧が高いほど前記電池用DC/DCコンバータモジュールが備えるオン状態のバイパススイッチの数を減少させるステップを有する
ことを特徴とする高圧直流マイクログリッドの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧直流マイクログリッドおよび高圧直流マイクログリッドの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光、風力、波力等の再生可能エネルギ(以下、再エネという)を有効利用できる送配電形態としてマイクログリッド(小規模電力網)が注目されている。マイクログリッドの中でも直流マイクログリッドは、直流デバイスである太陽電池や蓄電池との親和性が高く、交流マイクログリッドと比べて交直変換の損失が発生しない利点を持つ。
既存の交流による送電システムでは、高圧化によって電流を低減することで、損失やシステムコストを低減している。直流マイクログリッドにおいても、例えば市町村のような広範囲への送配電を考える場合、高圧化によって同様のメリットを享受できると考えられる。なお、本発明が想定する高圧とは、HV(High Voltage)だけでなくMV(Medium Voltage)と呼ばれる数kVから数10kV程度の電圧レベルも含むものとする。
【0003】
高圧直流マイクログリッドは、太陽電池、蓄電池、負荷などの要素がDC/DCコンバータを介して高圧直流ラインに接続される。DC/DCコンバータの高圧直流ライン側の端子(以下、入力端子という)には、上述のレベルの高電圧が印加される。このようなDC/DCコンバータの実現方法として、特許文献1に記載のハイブリッドバッテリシステムがある。特許文献1に記載の装置は、複数のDC/DCコンバータモジュール(以下、モジュールという)の入力端子を直列に接続する。これにより、高圧直流ラインの電圧が分圧されるため、各モジュールには低耐圧の部品を適用できる。
【0004】
また、このように複数のモジュールを用いる構成では、高圧直流ラインの定格電圧や負荷の定格消費電力などが変わった場合でも、モジュールの直列または並列接続数を変えることで対応することができ、新たにモジュールを設計及び製作する必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直流マイクログリッドは、通常時では交流系統に接続され、電力を授受している。一方、災害によって交流系統が停電した場合、直流マイクログリッドは交流系統から遮断され、グリッド内の蓄電池による自立動作(バックアップ動作)へと移行する。
災害時では、必要最小限の負荷を動作させることが想定される。DC/DCコンバータでは、負荷率が小さい場合、定格動作時と比べて効率が低下する可能性がある。上述のように複数のモジュールを用いる構成のDC/DCコンバータを利用する場合、各モジュールの負荷が小さくなり(「軽負荷」)、モジュールの変換効率の低下が懸念される。このことは、蓄電池の放電量を増大させ、蓄電池によるバックアップ時間が短縮されることを意味する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、災害時に蓄電池によるバックアップの際、最小限の負荷を動作させる場合でも、DC/DCコンバータの損失ひいては蓄電池の放電量を低減することができ、バックアップ時間を延長できる高圧直流マイクログリッドおよび高圧直流マイクログリッドの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による高圧直流マイクログリッドは、高圧直流ラインと、交流系統の交流電圧を高圧直流電圧に変換して前記高圧直流ラインに出力するAC/DCコンバータと、前記高圧直流電圧を変換して負荷に給電する負荷用DC/DCコンバータと、前記高圧直流電圧を変換して蓄電池を充放電する電池用DC/DCコンバータとを備えた高圧直流マイクログリッドであって、前記負荷用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ライン側が直列に接続される複数の負荷用DC/DCコンバータモジュールを備え、前記電池用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ライン側が直列に接続される複数の電池用DC/DCコンバータモジュールを備え、前記負荷用DC/DCコンバータモジュールと前記電池用DC/DCコンバータモジュールは、それぞれ前記高圧直流ライン側にバイパススイッチを備え、前記電池用DC/DCコンバータは、前記高圧直流ラインから前記交流系統が遮断されるとき、前記負荷の消費電力が大きいほど前記高圧直流電圧を高く制御し、かつ、高圧直流電圧が高いほど前記電池用DC/DCコンバータモジュールが備えるオン状態のバイパススイッチの数を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、災害時に蓄電池によるバックアップの際、最小限の負荷を動作させる場合でも、DC/DCコンバータの損失ひいては蓄電池の放電量を低減することができ、バックアップ時間を延長できる高圧直流マイクログリッドおよび高圧直流マイクログリッドの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドのシステム構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドのモジュールの回路構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドの一部のバイパススイッチをオンにした状態の負荷用DC/DCを示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドのDC/DC制御装置のブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドの制御装置のブロック図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドのDC/DC制御装置のブロック図である。
【
図7】
図4のDC/DC制御装置の処理や演算に関するフローチャートである。
【
図8】
図5の制御装置の処理や演算に関するフローチャートである。
【
図9】
図6のDC/DC制御装置の処理や演算に関するフローチャートである。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドの変形例1のシステム構成図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドの変形例2のシステム構成図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドのDC/DC制御装置のブロック図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドのDC/DC制御装置において、I
DLからN
L_minを計算するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
[高圧直流マイクログリッドのシステム構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る高圧直流マイクログリッドのシステム構成図である。
高圧直流マイクログリッド100は、太陽光発電や風力発電システム等に使用される。太陽光発電システムの場合、太陽光パネルから供給された直流電力を交流電力に変換し、外部の負荷または商用電源系統に供給する。
【0012】
図1に示すように、高圧直流マイクログリッド100は、高圧直流ライン10を備える。高圧直流ライン10は、AC/DCコンバータ21とスイッチ22を介して交流系統20に接続される。交流系統20は、三相交流であっても、単相交流であってもよい。
図1では、図面を簡略化するために、交流系統20とスイッチ22、スイッチ22とAC/DCコンバータ21をそれぞれ1本の線で接続した表記とする。同様の理由から、
図1において直流配線についても1本の線で示す場合がある。
【0013】
AC/DCコンバータ21は、交流系統20の電圧を変換して高圧直流ライン10の電圧(以下、高圧直流電圧VDHという)を制御する。AC/DCコンバータ21の回路方式については任意であるが、例えばMMC(Modular Multilebel Converter)などのマルチレベル電力変換回路がある。電圧レベルの例として、交流系統20は6.6kVの三相交流系統であり、VDHの定格値(VDH_rated)を12kVに設定することが考えられる。AC/DCコンバータ21は、交流6.6kVを直流12kVに変換する。
【0014】
スイッチ22は、高圧直流ライン10と交流系統20を接続または遮断する。スイッチ22として、遮断器など送配電に用いるスイッチが適用される。また、複数種類のスイッチの組み合わせによって構成されてもよい。なお、後述のようにスイッチ22をオフにして交流系統20から高圧直流マイクログリッド100を遮断するとき、AC/DCコンバータ21は停止状態となるように制御される。
【0015】
高圧直流ライン10には、負荷用DC/DCコンバータ30を介して負荷31が接続される。負荷用DC/DCコンバータ30は、V
DHを変換して、負荷31に直流電力を供給する。
図1では、図面を簡略化するために、負荷31を1つのブロックで示したが、負荷31は、複数の負荷の集合体であってもよい。また、負荷31は、インバータと交流負荷を組み合わせた負荷を含んでいてもよい。
【0016】
負荷用DC/DCコンバータ30は、複数のDC/DCコンバータモジュール(以下、モジュールという)を備え、各モジュールの入力端子は直列に接続される。このような接続によって、V
DHが各モジュールで分圧される。これにより、各モジュールに低耐圧の部品を適用できる。
図1では、4台のモジュール301~304をそれぞれ1個のブロックで示した。しかし、モジュール301と302の間、および、モジュール303と304の間にもそれぞれモジュールが存在する。
図1では、各モジュールにおける負荷側の端子(以下、出力端子)を全て並列に接続した。
【0017】
<モジュール台数の設定>
ここで、モジュール台数(NL_sum)は、上述のVDH_ratedとモジュールの定格入力電圧VDL_ratedを考慮して決定される。例えば、VDH_rated=12kV、VDL_rated=600Vとするとき、NL_sumは20台であればよい。モジュールの定格電力(POL_rated)は、NL_sumと負荷31の定格電力(以下、定格負荷電力PL_ratedという)を考慮して決定される。
上述の例に対して、PL_rated=1000kWであるとき、POL_ratedは50kWであればよい。なお、後記する高圧直流マイクログリッド100の動作を説明する際、上述の数値例を用いる。
【0018】
各モジュール301~304は、入力端子にバイパススイッチ311~314を備える。
図1では、図示した4台のモジュール301~304に対して、バイパススイッチ311~314をそれぞれ示した。バイパススイッチ311~314として、スイッチング素子、機械式スイッチのいずれを用いてもよい。
【0019】
負荷用DC/DCコンバータ30は、モジュール301~304やバイパススイッチ311~314を制御し、また、負荷用DC/DCコンバータ30は、後述する制御装置50と通信するためのDC/DC制御装置32を備える。
図1では、モジュール304とバイパススイッチ314に対する制御信号を示したが、他のモジュール、バイパススイッチとも同様に制御信号を送受信する。なお、
図1において1本の矢印で示した信号は、複数の信号や情報を含む場合がある。この表記方法については、
図2以下でも同様である。
【0020】
高圧直流ライン10には、電池用DC/DCコンバータ40を介して蓄電池群41が接続される。蓄電池群41は、複数の蓄電池によって構成され、その数については任意である。
図1では、4個の蓄電池431~434をそれぞれ1個のブロックで示した。電池用DC/DCコンバータ40は、V
DHを変換して、蓄電池を充電または放電する。
【0021】
電池用DC/DCコンバータ40は、負荷用DC/DCコンバータ30と同様に複数のモジュール401~404を備え、各モジュール401~404の入力端子は直列に接続される。
図1では、4台のモジュール401~404をそれぞれ1個のブロックで示した。
図1では、各モジュール401~404における蓄電池側の端子(以下、出力端子という)をそれぞれ1個の蓄電池に接続した。
【0022】
<モジュール台数の設定>
モジュール台数(NB_sum)は、負荷用DC/DCコンバータ30の場合と同様に、VDH_ratedとモジュールの定格入力電圧(VDB_rated)を考慮して決定される。モジュールの定格電力(POB_rated)は、NB_sumと蓄電池群41の定格充放電電力(PB_rated)を考慮して決定される。後に動作を説明する際、数値例としてVDB_rated=600V、NB_sum=20、PB_rated=1000kW、POB_rated=50kWを用いる。
【0023】
電池用DC/DCコンバータ40の各モジュール401~404は、負荷用DC/DCコンバータ30と同様に、入力端子にバイパススイッチ411~414を備える。
図1では、図示した4台のモジュール401~404に対して、バイパススイッチ411~414をそれぞれ示した。電池用DC/DCコンバータ40は、負荷用DC/DCコンバータ30と同様に、DC/DC制御装置42を備える。
【0024】
高圧直流マイクログリッド100は、負荷用DC/DCコンバータ30などの機器を制御するための制御装置50を備える。制御装置50は、DC/DC制御装置32と42の上位制御装置となる。
図1では、制御装置50が送受信する制御信号として、交流系統20に関する検出信号(DS
AC)、スイッチ22の制御信号(CS
sw)、高圧直流マイクログリッド100の動作モード信号(以下、動作モード信号S
modeという)、V
DHの要求値(以下、電圧要求値V
DH_req)、V
DHの指令値(以下、電圧指令値V
DH_comという)を示した。これらの信号の詳細については後記する。
【0025】
DC/DC制御装置32と42、制御装置50の実現方法については任意であるが、一例として基板上に電子回路として実装する方法がある。基板には、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロコンピュータ、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのデバイスが搭載される。特に、制御装置50については、複数の機器を制御するため、複数の基板またはデバイスで構成してもよい。また、DC/DC制御装置32と42を制御装置50に集約してもよい。
【0026】
高圧直流ライン10には、太陽光発電や風力発電といった再エネ電源が接続される。高圧直流マイクログリッド100は、大規模な再エネ電源を接続して有効利用するための送配電形態である。本実施形態では、主に負荷と蓄電池に着目するため、
図1では再エネ電源の図示を省略した。また、高圧直流マイクログリッド100は、リレーなどの制御部品、ヒューズなどの保護部品、電圧や電流を検出するためのセンサ、ノイズフィルタを備えていてもよい。
【0027】
[DC/DCコンバータモジュール301の回路構成]
図2は、高圧直流マイクログリッド100のモジュール301の回路構成図である。
図1に示す4台のモジュール301~304は、同一構成を採るため、モジュール301を代表して説明する。
図2に示すように、モジュール301は、4個のスイッチング素子によるフルブリッジ回路331Aと331B、トランス341、コンデンサ351Aと351B、電圧検出器361Aと361B、および電流検出器371Aと371Bを備える。
【0028】
フルブリッジ回路331Aと331Bは、トランス341によって入力側と出力側が絶縁されるため、
図1のように複数のモジュールの入力端子を直列に接続できる。
図2では、スイッチング素子としてMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を示したが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他種のスイッチング素子を利用してもよい。モジュール301は、さらに、コンデンサ、リアクトル、スイッチ類、ヒューズやサージプロテクタなどの保護部品、ノイズフィルタを備えていてもよい。
【0029】
ここで、負荷用DC/DCコンバータ30におけるモジュールの入力電圧、入力電流をそれぞれV
DL、I
DLと定義する。また、出力電圧、出力電流をそれぞれV
OL、I
OLと定義する。
図2では、モジュール301を対象としており、負荷用DC/DCコンバータ30における1番目のモジュールという意味でこれらの記号に1の添字を付加した。これらの電圧や電流は、上述の電圧検出器361Aと361Bや電流検出器371Aと371Bにより検出され、検出された電圧値や電流値は、DC/DC制御装置32に送信される。
【0030】
<各制御信号の定義>
負荷用DC/DCコンバータ30のモジュール(フルブリッジ回路)とバイパススイッチ311に対する制御信号をそれぞれCS
DL、CS
SLと定義する。
図2では、上述のV
DLなどと同じ表記方法用いて、モジュール301(フルブリッジ回路331Aと331B)とバイパススイッチ311の制御信号をそれぞれCS
DL1、CS
SL1とした。
【0031】
以上の構成によって、モジュール301は、VDL1を変換してVOL1またはIOL1を制御できる。なお、トランスを利用したDC/DCコンバータであれば、例えばフルブリッジ回路の代わりにハーフブリッジ回路を用いるなど、他の回路方式を利用してもよい。また、電池用DC/DCコンバータ40のモジュールについても、上述と同様の構成を適用できる。すなわち、負荷用DC/DCコンバータ30と電池用DC/DCコンバータ40とでモジュールを共通化してもよい。
【0032】
<入力電圧、入力電流、各制御信号の定義>
電池用DC/DCコンバータ40におけるモジュールの入力電圧、入力電流をそれぞれVDB、IDBと定義する。また、出力電圧、出力電流をそれぞれVOB、IOBと定義する。電池用DC/DCコンバータ40のモジュールは、VDBを変換してVOBまたはIOBを制御でき、また、VOBを変換してVDBまたはIOBを制御できる。電池用DC/DCコンバータ40におけるモジュールとバイパススイッチの制御信号をそれぞれCSDB、CSSBと定義する。
【0033】
[バイパススイッチ311によるモジュールの台数制御]
本実施形態では、負荷用DC/DCコンバータ30や電池用DC/DCコンバータ40において、一部のバイパススイッチをオンにし、対応するモジュールを停止することでモジュールの台数制御を行う。
以下では、負荷用DC/DC30を例に台数制御について説明するが、電池用DC/DC40に対しても同様の制御が適用される。
【0034】
図3は、一部のバイパススイッチをオンにした状態の負荷用DC/DCコンバータ30を示す図である。
図3では、バイパススイッチ311と312、および、これらの間に存在するバイパススイッチがオンである。これらに対応するモジュールの入力電圧(V
DL)はゼロになる。DC/DC制御装置32は、これらのモジュールを停止させる。一方、バイパススイッチ313と314、および、これらの間に存在するバイパススイッチがオフである。高圧直流電圧(V
DH)はこれらに対応するモジュールで分圧される。DC/DC制御装置32は、これらのモジュールを動作させて負荷31に給電する。以下では、動作させるモジュールを動作モジュール、停止させるモジュールを停止モジュールとそれぞれ記す。
【0035】
ここで、動作中の全てのモジュールで出力電力(POL)が等しい場合を考える。負荷31の消費電力(以下、負荷電力PL)が同じ条件では、動作モジュール台数少ないほど、各動作モジュールの負荷率は大きくなる。しかし、VDHが同じ条件では、動作モジュール台数が少ないほど、各動作モジュールの入力電圧(VDL)が高くなる。そこで、本実施形態では、後述のようにVDHを変化させることで、台数および負荷率の制御を行いつつ、各動作モジュールでVDLが定格値(VDL_rated)を超えないようにする。
【0036】
AC/DCコンバータ21の回路方式にも依存するが、高圧直流ライン10が交流系統20に接続される場合、VDHは基本的に定格値VDH_ratedに制御される。そのため、VDHを変化させて台数制御を行うことは難しいと考えられる。一方、高圧直流ライン10が交流系統20から遮断される場合、電池用DC/DCコンバータ40によってVDHを変化させることができる。電池用DC/DCコンバータ40においても一部のバイパススイッチをオンにすれば、VDHをVDH_ratedに対して極端に低くすることも可能である。
【0037】
従来技術では、災害時においてPLが小さくなることで、モジュールの負荷率も小さくなることが課題であった。本実施形態では、高圧直流ライン10が交流系統20から遮断される場合に、台数制御による負荷率調整を行うことで、この課題を解決することができる。
【0038】
[DC/DC制御装置32]
図4は、高圧直流マイクログリッド100のDC/DC制御装置32のブロック図である。
図4では、V
DLを1本の矢印で示したが、全モジュールの入力電圧がDC/DC制御装置32に入力される。V
OL、I
OL、CS
SL、CS
DLについても同様である。なお、DC/DC制御装置32の処理や演算に関するフローチャートについては、
図7で後記する。
図4に示すように、DC/DC制御装置32は、モジュール制御部321と、負荷電力演算部(以下、P
L演算部という)322と、電圧要求値演算部(以下、V
DH_req演算部という)323と、必要台数演算部(以下、N
L_min演算部という)324と、高圧直流電圧演算部(以下、V
DH演算部という)325と、定格値(V
DL_rated)326と、バイパス制御部327と、を備える。
【0039】
<モジュール制御部321>
モジュール制御部321は、V
OLまたはI
OLのフィードバック制御演算を行い、結果としてモジュールの制御信号(CS
DL)を生成する。V
OLまたはI
OLの指令値は、モジュール制御部321の中に入力されていると考える。
図4では省略したが、V
DLやI
DLをフィードバック制御演算に利用してもよい。
【0040】
モジュール制御部321には、バイパススイッチ制御信号CSSLが入力される。モジュール制御部321は、CSSLからどのバイパススイッチがオンであるかを認識し、対応するモジュールを停止させるようにCSDLを生成する。
【0041】
<PL演算部322>
PL演算部322は、VOLとIOLからモジュールの出力電力(POL)を計算し、全てのモジュールについてPOLの合計値(以下、合計出力電力POL_sumという)を計算する。POL_sumは負荷消費電力(PL)に当たる。計算されたPOL_sumは、VDH_req演算部323で利用される。
【0042】
なお、停止モジュールについてはモジュールの出力電力(P
OL)がゼロであるため、(P
OL)の演算を省略してもよい。
図2では、モジュール301のV
OLとI
OLをそれぞれV
OL1とI
OL1とした。このような表記を利用して、後記
図7でP
OL_
sumを計算する箇所では、P
OL_
sumをゼロに初期化した後、P
OLn=V
OLn×I
OLnとP
OL_sum=P
OL_sum+P
OLnの演算をn=1からN
L_sumまで繰り返すループ構成とした。
【0043】
<V
DH_req演算部323>
V
DH_req演算部323は、N
L_min演算部324と、乗算器324fと、を有する。N
L_min演算部324は、P
L_rated324a、除算器324b、V
DL_rated324c、乗算器324d、および整数化部324eを有する。
V
DH_req演算部323は、乗算器324fよりN
L_min演算部324の出力N
L_minにV
DL_rated326を乗算することでV
DH_reqを計算する。計算されたV
DH_reqは、制御装置50(
図1)に送信される。
【0044】
VDH_req演算部323は、POL_sumを用いて電圧要求値(VDH_req)を計算する。まず、VDH_req演算部323は、必要台数演算部(以下、NL_min演算部)において、PLを供給するという点で最低限必要となるモジュール台数(以下、必要台数NL_min)を計算する。ここでは、動作モジュールのVDLが定格値(VDL_rated)を超えるか否かについては考えない。具体的には、負荷用DC/DC30の負荷率(POL_sum/PL_rated)にモジュール合計台数(NL_sum)を乗算し、結果の小数点以下を切り上げることでNL_minが計算される。なお、上述の通りPL_ratedは定格負荷電力である。次に、NL_minにVDL_ratedを乗算することでVDH_reqを計算する。
【0045】
後述するように、VDHはVDH_reqに従って制御されるため、動作モジュール台数をNL_minとした場合であっても、動作モジュールのVDLがVDL_ratedを超えることはない。計算されたVDH_reqは、制御装置50に送信される。POL_sumすなわちPLが大きいほど、NL_minとVDH_reqも大きくなる。上述のようにVDHはVDH_reqに従って制御されるため、PLが大きいほどVDHは高くなる。
【0046】
<NL_min演算部324>
NL_min演算部324は、PLを供給する点で最低限必要となるモジュール台数(以下、必要台数NL_minという)を計算する。ここでは、動作モジュールのVDLが定格値(VDL_rated)326を超えるか否かについては考えない。具体的には、NL_min演算部324は、負荷用DC/DCコンバータ30の負荷率(POL_sum/PL_rated)(除算器324bによる除算)にモジュール合計台数(NL_sum)324cを乗算(乗算器324dによる乗算)し、整数化部324eが結果の小数部を切り上げることでNL_minを計算する。なお、上述の通りPL_ratedは定格負荷電力である。
【0047】
<VDH演算部325>
VDH演算部325は、全てのモジュールについてVDLを合計する。これはVDHを計算することに相当するため、計算結果をVDH_calと定義する。なお、DC/DC制御装置32がVDHを直接検出してVDH_calに代えてもよい。また、DC/DC制御装置32に電圧指令値(VDH_com)を入力して、VDH_comをVDH_calに代えてもよい。これらの場合、VDH演算部324は不要となる。
【0048】
<バイパス制御部327>
バイパス制御部327は、除算器327a、整数化部327b、およびバイパスユニット選択部327cを有する。
バイパス制御部327は、VDH演算部325のVDH_calを定格値(VDL_rated)326で除し(除算器327aによる除算)、整数化部327bが結果の小数部を切り上げることで動作モジュール台数(NL_ope)を計算する。バイパスユニット選択部327cは、計算された動作モジュール台数(NL_ope)に基づいてCSSLを生成する。すなわち、バイパス制御部327は、VDH_calをVDL_ratedで除算し、結果の小数部を切り上げて整数化することでNL_opeを計算する。停止モジュール台数(NL_stop)は、NL_sum-NL_opeとなる。バイパス制御部327は、NL_stopのバイパススイッチをオンにするようにCSSLを生成する。なお、どのバイパススイッチをオンにするかについては任意である。
【0049】
上述のように、VDHはVDH_reqに従って制御されるため、定常状態においてNL_opeはNL_minと一致する。VDH_calすなわちVDHが高くなるほど、NL_minとNL_opeは大きくなり、これによって負荷用DC/DC30はオン状態のバイパススイッチの数を減少させる。
【0050】
[制御装置50]
図5は、高圧直流マイクログリッド100の制御装置50のブロック図である。なお、制御装置50の処理や演算に関するフローチャートについては、
図8で後記する。
図5に示すように、制御装置50は、動作モード切替部501と、定格値(V
DH_rated)502と電圧指令値切替部503と、を備える。
動作モード切替部501は、高圧直流マイクログリッド100の動作モードを決定し、動作モード信号(S
mode)を生成する。また、動作モード切替部501は、スイッチ22の制御信号(CS
sw)を生成する。
【0051】
上記動作モードには、交流系統20に接続されるモード(以下、接続モードという)、交流系統20から遮断されて自立動作するモード(以下、遮断モードという)の2通りがある。動作モード切替部501は、接続モードと遮断モードでSmodeをそれぞれ1、0に設定する。通常、高圧直流マイクログリッド100は、接続モードで動作する。このとき、動作モード切替部501は、スイッチ22をオンにすると共に、Smodeを1にする。生成されたSmodeは、電圧指令値切替部503で利用されるだけでなく、AC/DCコンバータ21とDC/DC制御装置42に送信される。
【0052】
動作モード切替部501には、交流系統20に関する検出信号(DSac)が入力される。上記検出信号(DSac)には、交流系統20の電圧や電流の情報が含まれており、動作モード切替部501は、DSacから交流系統20の停電を検出する。動作モード切替部501は、停電を検出した場合、高圧直流マイクログリッド100を遮断モードへと移行させる。すなわち、動作モード切替部501は、スイッチ22をオフにすると共に、Smodeを0にする。なお、動作モード切替部501は、動作モード切替信号を制御装置50の外部から受信してもよい。動作モード切替部501は、動作モード切替信号によって遮断モードへの移行が指示された場合、停電の有無によらずスイッチ22をオフにすると共に、Smodeを0にする。
【0053】
電圧指令値切替部503は、動作モード切替部501からのSmodeに従って電圧指令値(VDH_com)を切り替える。接続モード(Smode=1)では、VDH_comを定格値(VDH_rated)502とする。一方、遮断モード(Smode=0)では、VDH_comをDC/DC制御装置32から送信される電圧要求値(VDH_req)とする。生成されたVDH_comは、AC/DCコンバータ21とDC/DC制御装置42に送信される。なお、制御装置50は、VDH_comの急激な変化を避けるために、電圧指令値切替部502が生成したVDH_comに対して、変化率リミッタ処理を施してもよい。
【0054】
[DC/DC制御装置42]
図6は、高圧直流マイクログリッド100のDC/DC制御装置42のブロック図である。なお、DC/DC制御装置42の処理や演算に関するフローチャートについては、
図9で後記する。また、
図4に示したDC/DC制御装置32と同様の点については、説明を省略する。
DC/DC制御装置42は、モジュール制御部421と、電池残量演算部(以下、SoC(State Of Charge)演算部という)422と、バイパス制御部423と、を備える。
モジュール制御部421は、V
OBまたはI
OBまたはV
DBのフィードバック制御演算を行い、結果としてモジュールの制御信号(CS
DB)を生成する。
【0055】
モジュール制御部421には、V
OB、I
OB、V
DBに加えて、V
DBの指令値(V
DH_com)、動作モード信号(S
mode)、動作モジュール台数(N
B_ope)、バイパススイッチ制御信号CS
SBが入力される。V
OBまたはI
OBの指令値は、モジュール制御部421の中に入力されていると考える。特に、上述の遮断モードにおいて、モジュール制御部421はV
DBのフィードバック制御演算を行う。このとき、全ての動作モジュールにおけるV
DBの指令値をV
DH_com/N
B_opeとすることで、V
DHが全ての動作モジュールで均等に分圧され、V
DHはV
DH_comに制御される。
図8では省略したが、I
DBをフィードバック制御演算に利用してもよい。
【0056】
SoC演算部422は、V
OBとI
OBから各モジュールに対応する蓄電池の残容量(以下、SoCという)を計算する。例えば、V
OBとI
OBから蓄電池の起電力を推定し、起電力とSoCの関係からSoCを求める方法がある。計算されたSoCは、バイパス制御部423で利用される。
図6ではSoCに関する信号を1本の矢印で示したが、この信号には全ての蓄電池のSoC情報が含まれる。
【0057】
バイパス制御部423は、定格値(VDL_rated)423a、除算器423b、整数化部423c、およびバイパスユニット選択部423dを有する。
バイパス制御部423は、モジュール制御部421のVDH_calを定格値(VDL_rated)423aで除し(除算器423bによる除算)、整数化部423cが結果の小数部を切り上げることで動作モジュール台数(NB_ope)を計算する。バイパスユニット選択部327cは、計算された動作モジュール台数(NB_ope)に基づいてCSSBを生成する。すなわち、バイパス制御部423は、VDH_comからNB_opeを計算し、これに基づいてCSSBを生成する。VDBからVDHを計算するか、またはVDHを直接検出して、これをVDH_comの代わりに利用してもよい。
【0058】
動作モジュールの選択において、上述のSoCが利用される。例えば、バイパスユニット選択部423dは、SoCが高い順にNB_ope個の蓄電池を選択する。モジュール制御部421は、選択された蓄電池に対応するモジュールを動作させ、これらに対応するバイパススイッチをオフにする。なお、DC/DC制御装置42は、蓄電池の温度を検出して、これを上述の選択に利用してもよい。
【0059】
以上のように制御装置42を構成することで、電池用DC/DC40はVDHをVDH_comに制御する。また、VDH_comが高いほどNB_opeが大きくなるため、電池用DC/DC40はオン状態のバイパススイッチの数を減少させる。制御装置50の説明で述べたように、遮断モードにおいてVDH_comはVDH_reqになっている。また、DC/DC制御装置32の説明で述べたように、負荷消費電力PLが大きいほどVDH_reqは高くなる。以上から、遮断モードにおいて、電池用DC/DC40はPLが大きいほどVDHを高く制御し、オン状態のバイパススイッチの数を減少させる。
【0060】
以下、上述のように構成された高圧直流マイクログリッド100の動作について説明する。
[DC/DC制御装置32の処理や演算に関するフローチャート]
図7は、
図4のDC/DC制御装置32の処理や演算に関するフローチャートである。
ステップS11でDC/DC制御装置32は、全モジュールのV
OL,I
OL,V
DLを取得する。
ステップS12で、P
OL_
sumを初期化する(P
OL_
sum=0)。
ステップS13で、n=1からn≦N
L_
sumまで、nを+1インクリメント(n++)してP
OL_
sumを演算する。
ステップS14でV
OLnにI
OLnを乗算してP
OLnを求め(P
OLn=V
OLn×I
OLn)、ステップS15でP
OL_
sumにP
OLnを加算する。
【0061】
ステップS16で、(NL_sum×POL_sum)をPL_ratedで除してNL_minを演算し、ステップS17で、NL_minの小数点以下を切り上げる。
ステップS18で、NL_minにVDL_ratedを乗算してVDH_reqを求め、ステップS19で制御装置50にVDH_reqを出力する。
【0062】
ステップS20で、VDH_calを初期化する(VDH_cal=0)。
ステップS21で、n=1からn≦NL_sumまで、nを+1インクリメント(n++)してVDH_calを演算する。
ステップS22でVDH_calにVDLnを加算してVDH_calを求める(VDH_cal=VDH_cal+VDLn)。
【0063】
ステップS23で、VDH_calをVDL_ratedで除してNL_opeを演算し、ステップS24で、NL_opeの小数点以下を切り上げる。
ステップS25でDC/DC制御装置32は、各モジュールのCSSLを生成(バイパスユニット選択)する。
ステップS26でDC/DC制御装置32は、各モジュールのCSDLを生成し、ステップS27で全モジュールにCSDL,CSSLを出力して本フローの処理を終了する。
【0064】
[制御装置50の処理や演算に関するフローチャート]
図8は、
図5の制御装置50の処理や演算に関するフローチャートである。
ステップS31で制御装置50は、DSac,V
DH_reqを取得し、ステップS32で動作モード切替(Smode生成)を行う。
ステップS33で制御装置50は、AC/DC21,DC/DC制御装置32,42に生成したSmodeを出力する。
【0065】
ステップS34で制御装置50は、Smode=1か否かを判別する。Smode=1の場合(S34:Yes)、ステップS35でVDH_ratedをVDH_comとして(VDH_com=VDH_rated)ステップS37に進む。Smode≠1の場合(S34:No)、ステップS36でVDH_reqをVDH_comとして(VDH_com=VDH_req)、ステップS37に進む。
【0066】
ステップS37で制御装置50は、AC/DC21とDC/DC制御装置42にVDH_comを出力して本フローの処理を終了する。
【0067】
[DC/DC制御装置42の処理や演算に関するフローチャート]
図9は、
図6のDC/DC制御装置42の処理や演算に関するフローチャートである。
ステップS41でDC/DC制御装置42は、全モジュールのV
OB,I
OB,V
DBを取得する。
ステップS42で、n=1からn≦N
B_sumまで、nを+1インクリメント(n++)してSoCを演算する。
ステップS43でV
OBn,I
OBnからSoCnを演算する。
【0068】
ステップS44でDC/DC制御装置42は、制御装置50からVDH_com,Smodeを取得する。
ステップS45でDC/DC制御装置42は、VDH_comをVDB_ratedで除してNB_opeを演算し、ステップS46で、NB_opeの小数点以下を切り上げる。
ステップS47でDC/DC制御装置42は、各モジュールのCSDBを生成(バイパスユニット選択)する。
ステップS48でDC/DC制御装置42は、各モジュールのCSDLを生成し、ステップS49で全モジュールにCSDB,CSSBを出力して本フローの処理を終了する。
【0069】
[高圧直流マイクログリッド100の動作]
高圧直流マイクログリッド100の動作を数値例と共に説明する。
電圧、電力、モジュール台数などのパラメータには、構成の説明で示した数値例を適用する。遮断モードでは、負荷電力(PL)が140kW、すなわち、負荷用DC/DCコンバータ30の負荷率が14%であると仮定する。一方、接続モードにおけるPLの大きさついては任意である。
【0070】
<接続モード>
接続モードでは、制御装置50(
図1)がスイッチ22をオンにする。また、制御装置50は、動作モード信号(S
mode)を1に、電圧指令値(V
DH_com)を定格値(V
DH_rated=12kV)にする。AC/DCコンバータ21は、これらを受信すると、V
DHをV
DH_com(=12 kV)に制御する。
【0071】
DC/DC制御装置32(
図1)において、V
DHの計算値(V
DH_cal)は12kVとなる。負荷用DC/DCコンバータ30におけるモジュールの定格入力電圧(V
DL_rated)は600Vであるため、負荷用DC/DCコンバータ30の動作モジュール台数(N
L_ope)は20と計算される。結果として、負荷用DC/DCコンバータ30において20台全てのモジュールが動作し、また、オンにするバイパススイッチはない。
【0072】
DC/DC制御装置42(
図1)において、V
DH_com=12kVであり、また、電池用DC/DCコンバータ40におけるモジュールの定格入力電圧(V
DB_rated)は600Vであるため、電池用DC/DCコンバータ40の動作モジュール台数(N
B_ope)についても20と計算される。結果として、電池用DC/DCコンバータ40についても20台全てのモジュールが動作し、オンにするバイパススイッチはない。
【0073】
<遮断モード>
遮断モードでは、制御装置50(
図1)がスイッチ22をオフにする。また、制御装置50は、S
modeを0に設定し、DC/DC制御装置32によって計算される電圧要求値(V
DH_req)をV
DH_comとして出力する。
【0074】
電池用DC/DCコンバータ40(
図1)において、DC/DC制御装置42がこれらを受信すると、V
DHがV
DH_com(=V
DH_req)となるように動作モジュールの入力電圧(V
DB)を制御する。一方、AC/DCコンバータ21はS
mode=0によって停止する。
【0075】
DC/DC制御装置32によるVDH_reqの計算について述べる。
上述のように、PLは140kWであるため、POL_sumは140kWと計算される。必要台数(NL_min)は3となり、VDL_rated=600VからVDH_req=1.8kVと計算される。結果として、DC/DC制御装置42には、VDH_com=VDH_req=1.8kVが入力される。
【0076】
DC/DC制御装置42では、VDH_com=1.8kV、VDB_rated=600Vから、NB_ope=3と計算される。結果として、電池用DC/DCコンバータ40における20台のモジュールのうち3台が動作する。また、17台の停止モジュールに対応するバイパススイッチがオンになる。
【0077】
VDHがVDH_com(=1.8kV)に制御されると、DC/DC制御装置32のVDH_calも1.8kVになる。VDH_cal=1.8kV、VDL_rated=600VからNL_ope=3と計算され、負荷用DC/DCコンバータ30においても20台のモジュールのうち3台が動作する。
【0078】
遮断モードでは、VDHが電池用DC/DCコンバータ40によって制御され、PLが大きいほどVDHが高くなる。また、PLが大きいほど負荷用DC/DCコンバータ30と電池用DC/DCコンバータ40の動作モジュール台数がそれぞれ多くなり、オン状態となるバイパススイッチの数が少なくなる。
【0079】
上述の動作説明では、遮断モードにおける負荷用DC/DCコンバータ30の負荷率を14%とした。ここで、遮断モードにおいてもVDHが定格値(VDH_rated=12kV)に制御されたと仮定する。このとき、負荷用DC/DCコンバータ30と電池用DC/DCコンバータ40における全てのモジュールが負荷率14%で動作する。
【0080】
一方、本実施形態では、負荷用DC/DCコンバータ30と電池用DC/DCコンバータ40でそれぞれ3台のモジュールが約93%の負荷率で動作する。このように、負荷率を増大させることで、モジュールの損失を低減できる。災害時に高圧直流マイクログリッド100を交流系統20から遮断するとき、最小限の負荷を動作させることで上述のような軽負荷の状況が発生し得る。本実施形態によれば、このような状況においても、DC/DCコンバータの損失ひいては蓄電池の放電量を低減することでバックアップ時間を延長できる。
【0081】
電池用DC/DCコンバータ40において、動作中のモジュールおよび対応する蓄電池で負荷31に給電しつつ、停止中のモジュールに対応する蓄電池を交換できる。本実施形態による動作を応用すれば、蓄電池群41の各蓄電池でSoCのばらつきが発生した場合、遮断モードで動作させることによって、SoCを調節することもできる。
【0082】
[高圧直流マイクログリッド100の変形例]
<変形例1>
図10は、変形例1の高圧直流マイクログリッド100Aのシステム構成図である。
図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図10に示すように、高圧直流マイクログリッド100Aは、電池用DC/DC44を介して蓄電池群45が接続される。電池用DC/DC44は、電池用制御装置(図示省略)を内部に備えるものとする。蓄電池群45が備える蓄電池の数や接続形態については任意である。
【0083】
電池用DC/DC44は、
図1の電池用DC/DC40と異なり、複数のモジュールを備えていない。電池用DC/DC44は、高耐圧のスイッチング素子などの別の手段を利用することで、V
DHが定格値(V
DH_rated)であってもこれを許容可能な耐圧を備える。
電池用DC/DC44は、
図1の電池用DC/DC40と同様に、電池用DC/DC44には制御装置50からSmodeとV
DH_comが入力され、電池用DC/DC44は遮断モードにおいてV
DHをV
DH_comに制御する。これによって、遮断モードにおいて、電池用DC/DC44はPLが大きいほどVDHを高く制御する。
【0084】
変形例1の高圧直流マイクログリッド100Aは、複数のモジュールで電池用DC/DCを構成可能であるという利点を得ることはできない。しかし、複数のモジュールで構成される負荷用DC/DC30については、遮断モードにおいて軽負荷の状態となった場合、上述の台数制御によってモジュールの損失が低減される。
【0085】
<変形例2>
図11は、変形例2の高圧直流マイクログリッド100Bのシステム構成図である。
図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図11に示すように、高圧直流マイクログリッド100Bは、負荷用DC/DC38を介して負荷31が接続される。負荷用DC/DC38は、負荷用制御装置(図示省略)を内部に備えるものとする。
【0086】
負荷用DC/DC38は、
図1の負荷用DC/DC30と異なり、複数のモジュールを備えていない。負荷用DC/DC38は、高耐圧のスイッチング素子などの別の手段を利用することで、V
DHが定格値(V
DH_rated)であってもこれを許容可能な耐圧を備える。
負荷用DC/DC38は、
図1の負荷用DC/DC30と同様に、負荷用DC/DC38は制御装置50にV
DH_reqを出力する。
【0087】
変形例2の高圧直流マイクログリッド100Bは、複数のモジュールで負荷用DC/DCを構成することの利点を得ることはできない。しかし、複数のモジュールで構成される電池用DC/DC40については、遮断モードにおいて軽負荷の状態となった場合、上述の台数制御によってモジュールの損失が低減される。
【0088】
[第1の実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る高圧直流マイクログリッド100(
図1)は、高圧直流ライン10と、交流系統20の交流電圧を高圧直流電圧に変換して高圧直流ライン10に出力するAC/DCコンバータと、高圧直流電圧を変換して負荷に給電する負荷用DC/DCコンバータ30と、高圧直流電圧を変換して蓄電池を充放電する電池用DC/DCコンバータ40とを備えた高圧直流マイクログリッドであって、負荷用DC/DCコンバータ30は、高圧直流ライン10側が直列に接続される複数の負荷用DC/DCコンバータモジュール301~304を備え、電池用DC/DCコンバータ40は、高圧直流ライン10側が直列に接続される複数の電池用DC/DCコンバータモジュール401~404を備え、負荷用DC/DCコンバータモジュール301~304と電池用DC/DCコンバータモジュール401~404は、それぞれ高圧直流ライン10側にバイパススイッチ311~314,411~414を備え、電池用DC/DCコンバータ40は、高圧直流ライン10から交流系統20が遮断されるとき、負荷の消費電力が大きいほど高圧直流電圧を高く制御し、かつ、高圧直流電圧が高いほど電池用DC/DCコンバータモジュール401~404が備えるオン状態のバイパススイッチの数を減少させる。
【0089】
また、高圧直流マイクログリッド100の制御方法では、電池用DC/DCコンバータ40は、高圧直流ライン10から交流系統20が遮断されるとき、負荷の消費電力が大きいほど高圧直流電圧を高く制御し、かつ、高圧直流電圧が高いほど電池用DC/DCコンバータモジュール401~404が備えるオン状態のバイパススイッチの数を減少させるステップ(
図7のステップS4)を有する。
【0090】
災害時に交流系統20が停電した場合、蓄電池を放電してバックアップする。このとき、DC/DCの損失を抑えて電池放電量を低減し、バックアップ可能な時間を延長する。災害時に必要最小限の負荷を稼働する場合、DC/DCの各ユニットが軽負荷となって変換効率が下がる。通常、このような場合、動作させるユニット数を減らす方法が考えられる。しかし、従来例(特許文献1)では、ユニットの直列接続がこの方法の実現を困難にする。
【0091】
本発明者らは、交流系統20から高圧直流ライン10を遮断するような場合には、そもそもDCバス電圧(VDC)を定格に担保する要求がないことに着目した。すなわち、交流系統20から高圧直流ライン10を遮断するとき、DCバス電圧(VDC)を定格より低くし、負荷用DC/DCコンバータモジュール301~304と電池用DC/DCコンバータモジュール401~404は、VDCに応じて一部のDC/DCコンバータモジュールをバイパスする。この場合、負荷の大きさに基づいて負荷用DC/DCコンバータモジュール301~304で動作させるユニット台数とVDC指令値を決定する。電池用DC/DCコンバータモジュール301~304は指令値に従ってVDCを制御する。
【0092】
このようにすることにより、複数のモジュールが直列接続される構成において、ユニット台数低減制御を実現し、DC/DCコンバータにおける各ユニット(DC/DCコンバータモジュール301~304,401~404)の負荷率と効率を上げ、電池放電量を低減することができる。その結果、災害時に蓄電池によるバックアップの際、最小限の負荷を動作させる場合でも、DC/DCコンバータの損失ひいては蓄電池の放電量を低減することができ、バックアップ時間を延長することができる。換言すれば、災害時に軽負荷となった場合でも,DC/DCコンバータの損失を低減でき、蓄電池の寿命を延長できる。
【0093】
また、一部のユニットを停止中に、対応する電池に交換することができる。例えば、動作中のDC/DCモジュールに対応する蓄電池のSoCが減少した場合、動作させるモジュールを交替して、該当モジュールを停止(バイパス)状態とする。これにより、蓄電池によるバックアップを止めることなく、SoCが減少した蓄電池を交換できる。
【0094】
第1の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図1)において、負荷用DC/DCコンバータ30は、高圧直流ライン10から交流系統20が遮断されるとき、高圧直流電圧が高いほど負荷用DC/DCコンバータモジュール301~304が備えるオン状態のバイパススイッチの数を減少させる。
【0095】
このようにすることにより、複数のモジュールが直列接続される構成において、ユニット台数低減制御を実現して、負荷用DC/DCコンバータモジュール301~304の負荷率と効率を上げることができる。その結果、災害時に蓄電池によるバックアップの際、最小限の負荷を動作させる場合でも、負荷用DC/DCコンバータの損失ひいては蓄電池の放電量を低減することができ、バックアップ時間を延長することができる。
【0096】
第1の実施形態に係る工業用マグネトロン100(
図1)において、AC/DCコンバータと負荷用DC/DCコンバータ30と電池用DC/DCコンバータ40を制御する制御装置50を備え、負荷用DC/DCコンバータ30は、制御装置50に送信する電圧要求値を計算するための電圧要求値演算部(V
DH_req演算部)323を備え、電圧要求値演算部323は、負荷の消費電力が大きいほど電圧要求値を大きくし、かつ、制御装置50は、電圧要求値を電圧指令値として電池用DC/DCコンバータ40に送信し、電池用DC/DCコンバータ40は、高圧直流ライン10から交流系統20が遮断されるとき、電圧指令値に基づいて高圧直流電圧を制御する。
【0097】
このようにすることにより、負荷の大きさに基づいて負荷用DC/DCコンバータ40で動作させるユニット台数とVDC指令値を決定するとともに、電池用DC/DCコンバータ40は指令値に従ってVDCを制御するので、DC/DCコンバータにおける各ユニット(DC/DCコンバータモジュール301~304,401~404)の負荷率と効率を上げ、電池放電量を低減することができる。
【0098】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態に係る高圧直流マイクログリッド100のDC/DC制御装置32Aのブロック図である。
図4と同一構成部分には、同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図12のDC/DC制御装置32Aは、
図1の高圧直流マイクログリッド100のDC/DC制御装置32に置き換えて適用できる。
図12のDC/DC制御装置32Aは、
図4のDC/DC制御装置32と下記の点が異なる。
DC/DC制御装置32Aは、V
DH_req演算部323Aにおける必要台数N
L_minの計算に、モジュールの入力電流(I
DL)を利用する。負荷用DC/DCコンバータ30のうち停止モジュールのI
DLはゼロであるため、V
DH_req演算部323では動作モジュールのI
DLを利用する。結果として、計算に利用されるI
DLは、負荷用DC/DCコンバータ30の入力電流(I
DH)と等しくなる。N
L_minの計算には、バイパス制御部325で計算されるN
L_opeも利用される。
図8では、
図4と異なりバイパス制御部325を1個のブロックで示した。このように、N
L_minの計算方法が変わることから、第1の実施形態のP
L演算部322(
図4)は利用されない。
V
DH_req演算部323Aにおいて、N
L_min演算部がI
DLからN
L_minを計算する。
【0099】
図13は、DC/DC制御装置32Aにおいて、I
DLからN
L_minを計算するフローチャートである。
まず、ステップS11でDC/DC制御装置32Aは、現在動作しているモジュール台数N
L_opeの情報を取得する。
ステップS12でDC/DC制御装置32Aは、第一電流閾値I
1を用いて、入力電流(I
DH)が第一電流閾値I
1より小さいか否かを判別する。入力電流(I
DH)が第一電流閾値I
1より小さい場合(I
DL<I
1)、ステップS13でN
L_min=N
L_ope-1としてステップS17に進む。入力電流(I
DH)が第一電流閾値I
1以上の場合(I
DL≧I
1)、ステップS14に進む。
【0100】
ステップS14でDC/DC制御装置32Aは、第二電流閾値I2を用いて、入力電流(IDH)が第二電流閾値I2より大きいか否かを判別する。入力電流(IDH)が第二電流閾値I2より大きい場合(IDL>I2)、ステップS15でNL_min=NL_ope+1としてステップS17に進む。入力電流(IDH)が第二電流閾値I2以下の場合(IDL≦I2)、ステップS16でNL_min=NL_opeとしてステップS17に進む。すなわち、IDL≧I1の場合、第二電流閾値I2を用いて、IDL>I2であればNL_min=NL_ope+1とする。I2はI1より大きく、かつ、IDLの許容最大値より小さく設定される。IDL≦I2であればNL_min=NL_opeとする。
【0101】
ステップS17では、DC/DC制御装置32Aは、上記ステップS13、ステップS15またはステップS16による判定値を、V
DH_req演算部323Aの出力N
L_minとして本フローの処理を終了する。
図13の処理を所定の周期で繰り返し実行することで、I
DLに応じてN
L_minが更新される。
【0102】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、DC/DC制御装置32AのV
DH_req演算部323Aは、N
L_minにV
DL_ratedを乗算してV
DL_reqを計算する。I
DL<I
1が成立してN
L_min=N
L_ope-1の処理が行われるとき、V
DL_reqは前回値からV
DL_ratedだけ小さい値に更新される。また、I
DL>I
2が成立してN
L_min=N
L_ope+1の処理が行われるとき、V
DL_reqは前回値からV
DL_ratedだけ大きい値に更新される。
図13のフローでは、I
DL<I
1が成立する場合、N
L_opeに1を加算してN
L_minを更新しているが、I
DLとI
1の差分に従って、上述の加算量を変化させてもよい。また、DC/DC制御装置32Aは、モジュールの温度を観測して、温度が高いほど上述の電流閾値I
1、I
2が小さくなるように、これらの閾値を変化させてもよい。
【0103】
以下、上述のように構成された高圧直流マイクログリッド100の動作について説明する。
[高圧直流マイクログリッド100の動作]
第1の実施形態と同様の数値例を用いて、第2の実施形態における高圧直流マイクログリッド100の動作を説明する。
図12に示す負荷用DC/DCコンバータ30Aにおいて、モジュールの定格電力(P
OL_reted)は50kW、定格入力電圧(V
DL_reted)は600Vである。このため、入力電流(I
DL)の定格値(I
DL_rated)は、約83Aとなる。これを踏まえて、上述の電流閾値をI
1=75A、I
2=85Aとそれぞれ設定する。第1の実施形態でも述べたように、接続モードにおいて、V
DHはAC/DCコンバータ21によって定格値(V
DH_reted=12kV)に制御されており、負荷用DC/DCコンバータ30の動作モジュール台数(N
L_ope)は20である。
【0104】
この状態から遮断モードに移行し、負荷消費電力(PL)が140kWまで減少したと仮定する。移行直後では、VDH=12kVであるため、負荷用DC/DCコンバータ30の入力電流(IDH)は約11.7Aとなる。DC/DC制御装置32AのVDH_req演算部323Aで利用されるモジュールの入力電流(IDL)も約11.7Aとなる。VDH_req演算部323Aの処理においてIDL<I1が成立するため、NL_minはNL_ope-1=19に更新される。また、モジュールの定格電圧(VDL_reted)は600Vであるため、電圧要求値(VDL_req)は11.4kVに更新される。第1の実施形態で述べたように、電池用DC/DCコンバータ40は、VDHを20kVから11.4kVへと低下させる。また、NL_ope、電池用DC/DCコンバータ40の動作モジュール台数(NB_ope)は、それぞれ19になる。
【0105】
VDHが11.4kVに低下したため、IDHとIDLはそれぞれ約12.3Aまで増大する。次の制御タイミングにおいて、VDH_req演算部323はNL_ope=19、IDL=12.3Aの条件で同様の処理を実行する。IDL<I1が成立するため、NL_minはNL_ope-1=18に更新され、VDL_reqは10.8kVに更新される。結果として、VDHが10.8kVに低下し、IDHとIDLはそれぞれ約13.0Aまで増大する。以降、詳細については省略するが、処理を行うごとにNL_opeが1台ずつ減少する。これに合わせてVDHは低下し、IDHとIDLはそれぞれ増大する。NL_ope=3となり、IDHとIDLがそれぞれ約77.8Aまで増大すると、IDL<I1、IDL>I2が共に非成立となるため、NL_minはNL_ope=3となり、NL_opeの減少が3台でストップする。結果として、第1の実施形態における遮断モードと同じ状態に至る。
【0106】
[第2の実施形態の効果]
第2の実施形態に係る高圧直流マイクログリッド100のDC/DC制御装置32A(
図12)は、電圧要求値演算部(V
DH_req演算部)323Aが、所定の周期で電圧要求値を更新するものであって、負荷用DC/DCコンバータ30の入力電流が、第一電流閾値(I
1)より小さければ電圧要求値を減少させ、負荷用DC/DCコンバータ30の入力電流が、第一電流閾値(I
1)より大きく設定された第二電流閾値(I
2)より大きければ電圧要求値を増大させる。
【0107】
このようにすることにより、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果、すなわち、DC/DCコンバータにおける各ユニット(DC/DCコンバータモジュール301~304,401~404)の負荷率と効率を上げ、電池放電量を低減することができる。その結果、DC/DCコンバータの損失ひいては蓄電池の放電量を低減することができ、バックアップ時間を延長することができる。
【0108】
さらに、第2の実施形態では、電圧要求値(VDL_req)の演算において負荷用DC/DCコンバータ30の入力電流(IDH)を用いるため、負荷用DC/DCコンバータ30や高圧直流ライン10自体を過電流から保護できる。
【0109】
第2の実施形態に係る高圧直流マイクログリッド100のDC/DC制御装置32A(
図12)において、負荷用DC/DCコンバータ30は、負荷用DC/DCコンバータモジュールの温度を観測し、電圧要求値演算部323は、負荷用DC/DCコンバータモジュール301~304の温度が高いほど第一電流閾値(I
1)と第二電流閾値(I
2)を小さく設定する。
【0110】
このようにすることにより、モジュールの温度によってIDHに関する閾値(I1、I2)を変化させるなど、柔軟な保護制御が可能になる。
【0111】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【0112】
例えば、VDCの要求値を生成する方法の別例として、軽負荷になるほど、VDC要求値が低くなることに着目して、負荷用DC/DCの入力(高圧直流ライン10側)電流が一定となるようにVDC要求値を生成する。これにより、高圧直流ライン10側の過電流を防止しつつ、第1および第2の実施形態の効果、すなわち軽負荷時の損失低減による蓄電池の寿命延長を実現できる。
【0113】
上記各実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0114】
10 高圧直流ライン
20 交流系統
21 AC/DCコンバータ
22 スイッチ
30,38 負荷用DC/DCコンバータ
31 負荷
32,42 DC/DC制御装置
40,44 電池用DC/DCコンバータ
41 蓄電池群
50 制御装置
100,100A,100B 高圧直流マイクログリッド
301~304 負荷用DC/DCコンバータモジュール
401~404 電池用DC/DCコンバータモジュール
311~314,411~414 バイパススイッチ
321,421 モジュール制御部
322 負荷電力演算部(PL演算部)
323 電圧要求値演算部(VDH_req演算部)
324 必要台数演算部(NL_min演算部)
325 高圧直流電圧演算部(VDH演算部)
327,423 バイパス制御部
331A,331B フルブリッジ回路
341 トランス
351A,351B コンデンサ
361A,361B 電圧検出器
371A,371B 電流検出器
422 電池残量演算部
432~434 蓄電池
501 動作モード切替部
502 電圧指令値切替部