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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014524
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ワーク保持装置及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20240125BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20240125BHJP
   B24B 41/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B23Q3/06 303F
B23Q3/06 303G
B23Q3/06 304G
B24B41/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117414
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】直居 薫
【テーマコード(参考)】
3C016
3C034
【Fターム(参考)】
3C016CA07
3C016CB07
3C016CB13
3C016CC02
3C016CE02
3C034AA07
3C034BB01
3C034BB22
3C034BB73
(57)【要約】
【課題】構造が簡単なワーク保持装置を提供すること。
【解決手段】ワークWの外周面Wbに対して転動可能に摺接するようにワーク保持体14に回転可能に支持された転動ローラ30と、転動ローラ30の回転軸線Crが、ワーク保持体14の回転軸線Ctと平行な状態を基準として、ワーク保持体14に同軸的に保持されたワークWと転動ローラ30との接触点とを通るワークWの半径線R周りに所定の角度をもって傾斜している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の外周面を有するワークを、ワーク保持体に保持するためのワーク保持装置であって、
前記ワークの外周面に対して転動可能に摺接するように前記ワーク保持体に回転可能に支持された少なくとも1個の転動ローラを有し、
前記転動ローラの回転軸線は、前記ワーク保持体の回転軸線と平行な状態を基準として、前記ワーク保持体に同軸的に保持された前記ワークと前記転動ローラとの接触点とを通る前記ワークの半径線周りに所定の角度をもって傾斜しているワーク保持装置。
【請求項2】
前記転動ローラは前記ワーク保持体の回転軸線周りに等間隔をおいた少なくとも3箇所に設けられている請求項1に記載のワーク保持装置。
【請求項3】
前記転動ローラは前記ワークの前記外周面に対した離接方向に変位可能に設けられ、
前記転動ローラを前記ワークの前記外周面に接触する接触方向に付勢する付勢部材を有する請求項1又は2に記載のワーク保持装置。
【請求項4】
前記ワーク保持体に揺動可能に設けられた少なくとも1個の揺動レバーを有し、前記揺動レバーは前記ワークの前記外周面に対して前記ワークの径方向に離接する方向に変位する一端部を含み、
前記転動ローラは前記揺動レバーの前記一端部に回転可能に設けられている請求項1に記載のワーク保持装置。
【請求項5】
前記揺動レバーは、前記ワーク保持体の回転軸線周りに等間隔をおいた少なくとも3箇所に揺動可能に設けられている請求項4に記載のワーク保持装置。
【請求項6】
前記揺動レバーを介して、前記転動ローラを前記ワークの前記外周面に接触する方向に付勢する付勢部材を有する請求項4又は5に記載のワーク保持装置。
【請求項7】
前記揺動レバーが、前記一端部に対して、揺動中心よりも半径方向外側に位置する他端部を有し、前記揺動レバーの隣り合う前記他端部同士がリンク要素により互いに連結されている請求項5に記載のワーク保持装置。
【請求項8】
隣り合う前記揺動レバーの、前記ワーク保持体の回転軸線周りの中間位置において、前記ワーク保持体に回動可能に設けられた中間アームと、
前記中間アームと当該中間アームに隣り合う前記揺動レバーとを枢動可能に互いに連結したリンク要素とを有する請求項5に記載のワーク保持装置。
【請求項9】
前記転動ローラはエラストマにより構成された外周部を有する請求項1又は2に記載のワーク保持装置。
【請求項10】
前記転動ローラはクラウン形状を有する請求項9に記載のワーク保持装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載のワーク保持装置と、
前記ワーク保持体に載置されたワークと接触して前記ワークの加工を行う加工具とを有する加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持装置及び加工装置に関し、更に詳細には、工作機械等の加工装置において、ワークをワーク保持体に保持するためのワーク保持装置及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面研削盤において、被研削物であるワークをワークテーブルに保持する保持装置としては、通電による励磁により、ワークを磁気的にワークテーブルに吸着して保持するマグネットチャックによるものが知られている。(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-202275号公報
【特許文献2】特開2021-137950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マグネットチャック等の電磁吸着式のワーク保持装置は、ワーク保持体やその周辺の構造が複雑になり、メンテナンスに時間を要する。また、電磁吸着式のワーク保持装置はセラミックスのような非磁性体のワークを保持することができない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、構造が簡単で、メンテナンス性がよいワーク保持装置を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、非磁性体のワークをも保持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によるワーク保持装置は、円形の外周面(Wb)を有するワーク(W)を、ワーク保持体(14)に保持するためのワーク保持装置(10)であって、前記ワークの外周面に対して転動可能に摺接するように前記ワーク保持体に回転可能に支持された少なくとも1個の転動ローラ(30)を有し、前記転動ローラの回転軸線(Cr)は、前記ワーク保持体の回転軸線(Ct)と平行な状態を基準として、前記ワーク保持体に同軸的に保持された前記ワークと前記転動ローラとの接触点とを通る前記ワークの半径線(R)周りに所定の角度をもって傾斜している。
【0007】
この構成によれば、転動ローラによってワーク保持体に対するワークの保持が行われるから、構造が簡単で、メンテナンス性がよい。また、この構成によれば、非磁性体のワークをも保持することができる。
【0008】
上記ワーク保持装置において、前記転動ローラは前記ワーク保持体の回転軸線周りに等間隔をおいた少なくとも3箇所に設けられている。
【0009】
この構成によれば、ワーク保持体に偏荷重が作用することがない。
【0010】
上記ワーク保持装置において、前記転動ローラは前記ワークの前記外周面に対した離接方向に変位可能に設けられ、前記転動ローラが前記ワークの前記外周面に接触する接触方向に付勢する付勢部材(48)を有する。
【0011】
この構成によれば、ワークの外周面に転動ローラの接触が確実に行われる。
【0012】
上記ワーク保持装置において、前記ワーク保持体に揺動可能に設けられた少なくとも1個の揺動レバーを有し、前記揺動レバーは前記ワークの前記外周面に対して前記ワークの径方向に離接する方向に変位する一端部を含み、前記転動ローラは前記揺動レバーの前記一端部に回転可能に設けられている。
【0013】
この構成によれば、ワーク保持体に対する転動ローラの配置の自由度が増大する。
【0014】
上記ワーク保持装置において、前記揺動レバーは、前記ワーク保持体の回転軸線周りに等間隔をおいた少なくとも3箇所に揺動可能に設けられている。
【0015】
この構成によれば、ワーク保持体に偏荷重が作用することがない。
【0016】
上記ワーク保持装置において、前記揺動レバーを介して、前記転動ローラを前記ワークの前記外周面に接触する接触方向に付勢する付勢部材(48)を有する。
【0017】
この構成によれば、ワークの外周面に転動ローラの接触が確実に行われる。
【0018】
上記ワーク保持装置において、前記揺動レバーが、前記一端部に対して、揺動中心よりも半径方向外側に位置する他端部(26B)を有し、前記揺動レバーの隣り合う前記他端部同士が、前記ワークの前記外周面の半径方向外側にて延在するリンク要素(42、44)により互いに連結されている。
【0019】
この構成によれば、ワーク保持体上のワークの回転軸線がワーク保持体の回転軸線に合致する心出しが自動的に行われる。
【0020】
上記ワーク保持装置において、隣り合う前記揺動レバーの、前記ワーク保持体の回転軸線周りの中間位置において、前記ワーク保持体に回動可能に設けられた中間アームと、前記中間アームと当該中間アームに隣り合う前記揺動レバーとを枢動可能に互いに連結したリンク要素(42、44)とを有する。
【0021】
この構成によれば、ワーク保持体上のワークの回転軸線がワーク保持体の回転軸線に合致する心出しが自動的に行われると共に、ワーク保持装置の小型化が図られる。
【0022】
上記ワーク保持装置において、前記転動ローラはエラストマにより構成され外周部(30C)を有する。
【0023】
この構成によれば、エラストマの弾性のもとに、ワークの外周面に対する転動ローラの接触が確実に行われる。
【0024】
上記ワーク保持装置において、前記転動ローラはクラウン形状を有する。
【0025】
この構成によれば、ワークの母線に対する転動ローラの母線の平行度が高くなくても、傾きの成分を生じることなく転動ローラがワークの外周面に押し付けられる。
【0026】
本発明の一つの実施形態による加工装置は、上述の実施形態によるワーク保持装置と、前記ワーク保持体に載置されたワークと接触して前記ワークの加工を行う加工具とを有す。
【0027】
この構成によれば、ワーク保持装置を含む加工装置の構造が簡単になり、併せてメンテナンス性がよくなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によるワーク保持装置によれば、構造が簡単で、メンテナンス性がよい。また、本発明によるワーク保持装置は非磁性体のワークをも保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明によるワーク保持装置及び加工装置の一つの実施形態を示す斜視図
図2】本実施形態によるワーク保持装置の平面図
図3】本実施形態によるワーク保持装置の転動ローラの傾斜を示す斜視図
図4】本実施形態によるワーク保持装置の作用を説明する説明図(正面図)
図5】本実施形態によるワーク保持装置に用いられる転動ローラの一つの実施形態の拡大断面図
図6】本実施形態によるワーク保持装置に用いられる転動ローラの他の実施形態の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明によるワーク保持装置を平面研削盤(加工装置)に適用した実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
図1及び図2に示されているように、ワーク保持装置10は、基台12と、基台12上に鉛直な回転軸線Ct周りに回転可能に設けられたワーク保持体14とを有する。
【0032】
ワーク保持体14は、円盤形状の回転テーブルであり、ワークWを載置される平らな水平な上面15Aを有するワーク載置台15及びワーク載置台15の径方向外方に設けられた棚部17を有する。
【0033】
ワーク保持体14は、基台12に取り付けられた電動機16(図3図4参照)によって、上面15Aに直交する鉛直な回転軸線Ct周りに、基台12に対して所定の向きに、本実施形態では図1及び図2で見て時計廻り方向に回転駆動される。
【0034】
ワークWは、円盤形状であり、ワーク載置台15の上面15Aに面状に接触する平らな下面Wa及び円形の外周面(円周面)Wbを有する。ワークWは、自身の中心軸線Cwがワーク保持体14の回転軸線Ctに対して同軸的になるように、ワーク載置台15の上面15A上に配置される。ワークWは磁性体及び非磁性体の何れであってもよい。
【0035】
ワーク載置台15の上方には、水平な回転軸18に支持された砥石車20(図1参照)が配置されている。回転軸18の中心軸線Cgはワーク保持体14の回転軸線Ctに直交する水平方向に延在している。砥石車20は、回転工具であり、回転軸18を回転駆動する電動機(不図示)により回転軸18の中心軸線Cg周りに、回転軸18の正面視で、時計廻り方向に回転駆動される。
【0036】
砥石車20は、回転軸18を回転可能に支持する砥石台(不図示)により、ワークWに対して研削代を与えるために上下方向に移動可能であると共にワークWに対するトラバース移動のためにワーク保持体14の半径方向(砥石車20の軸線方向)の移動可能である。つまり、砥石車20は、加工装置の加工具であり、ワーク載置台15に載置されたワークWと接触してワークWの研削加工を行う。
【0037】
棚部17はワーク載置台15の外方を取り囲むように延在する円環形状の水平な上面17Aを有する。棚部17の上面17Aには、ワーク保持体14の回転軸線Ct周りに等間隔(120度間隔)をおいた3箇所に、軸体24が鉛直に植設されている。各軸体24には、揺動レバー26が、対応する軸体24の中心軸線周りに、換言すると、ワーク保持体14の回転軸線Ctと平行な軸線周りに揺動可能に設けられている。
【0038】
揺動レバー26は軸体24よりもワーク載置台15に近い側に位置する内端(一端部)26A及び軸体24よりもワーク載置台15から離れた側に位置する外端(他端部)26Bを含む。
【0039】
各揺動レバー26の内端26Aにはローラ軸28によって転動ローラ30がローラ軸28の中心軸線Cr周りに回動可能に取り付けられている。各ローラ軸28と対応する軸体24との間のレバー長は互いに等しい。
【0040】
尚、ローラ軸28の中心軸線Crは転動ローラ30の回転軸線と同一であるから、これより以降、ローラ軸28の中心軸線Crを転動ローラ30の回転軸線Crと呼ぶことがある。
【0041】
各転動ローラ30は、互いに同径であり、図5に示されているように、ローラ軸28が貫通する軸孔30Aを有する金属製のボス部材30Bと、ボス部材30Bの外周部に固定されたエラストマ製の円環状の外周部材30Cとを有する。
【0042】
各転動ローラ30は、軸体24を揺動中心とした揺動レバー26の揺動(回動)により、ワーク載置台15の径方向に、換言すると、ワーク載置台15上のワークWの径方向に変位する。これにより、各転動ローラ30はワーク載置台15上のワークWの外周面Wbに対して同ワークWの径方向に離接する方向に変位する。
【0043】
各転動ローラ30の外周面はワーク載置台15上に載置されたワークWの外周面Wbに径方向に対向している。各転動ローラ30は、外周面をもってワークWの外周面Wbに摺接し、ワークWとの相対的な回転変位により中心軸線Cr周りに転動する。各転動ローラ30とワークWとの接触点は、軸体24の位置よりも、ワーク載置台15上のワークWとの回転変位に対して同回転変位の進み側(回転方向進み側)に位置している。
【0044】
内端26Aが軸体24よりもワーク保持体14の回転方向進み側にあることにより、各揺動レバー26はワークWの周方向の相対的な変位に対して後傾する向きに傾斜する。
【0045】
各転動ローラ30の回転軸線Crは、図3に示されているように、ワーク保持体14の回転軸線Ctと平行な状態を基準(基準線Bで示す)として、ワーク保持体14に同軸的に保持されたワークWと転動ローラ30との接触点Aを通るワークWの半径線Rの周りに所定の角度θをもって傾斜している。つまり、基準線Bと回転軸線Crとがなす角度が所定の角度θである。
【0046】
つまり、各転動ローラ30の回転軸線Crとワーク保持体14の回転軸線Ctとは、換言すると、回転軸線Crとワーク載置台15上のワークWの中心軸線Cwとは、平行でなく且つ交わることがないねじれの関係にある。
【0047】
各転動ローラ30の回転軸線Crの傾斜方向は、転動ローラ30に対するワークWの回転変位の方向に対して、ワークWをワーク載置台15の上面15Aに押し付ける方向に定められている。本実施形態では、転動ローラ30に対するワークWの回転変位の方向が反時計廻り方向であるとして、各転動ローラ30の回転軸線Crの傾斜方向は、図4に示されているように、転動ローラ30に対するワークWの回転変位により転動ローラ30が回転軸線Cr周りに時計廻り方向に転動した際に転動ローラ30に作用する、回転軸線Crに直交する方向のベクトルを有する回転力Faが、ワークWの下面Waをワーク載置台15の上面15Aに押し付ける下向きのベクトルの分力Fbを生じる方向である。
【0048】
3個の揺動レバー26は、棚部17に設けられた連結リンク機構32によって隣り合うもの同士が互いに連結されている。連結リンク機構32は、3個の中間アーム36及び3対のリンク要素42、44を有する。棚部17には、隣り合う揺動レバー26の、回転軸線Ct周りの各中間位置に、連結リンク機構32のための鉛直軸34が植設されている。
【0049】
各中間アーム36は鉛直軸34によって棚部17に回動可能に取り付けられた基端36Aを含む。各中間アーム36は基端36Aと遊端36Bとの中間部の両側に設けられた鉛直な枢軸38、40によって隣り合うリンク要素42、44の端部を各々枢動可能に支持している。換言すると、各対のリンク要素42、44は、中間アーム36と当該中間アーム36に隣り合う揺動レバー26の外端26Bとを各々枢軸38、40により枢動可能に互いに連結している。リンク要素42、44はワークWの外周面Wbの半径方向外側にてワークWの略周方向に延在する。
【0050】
連結リンク機構32は、中間アーム36と当該中間アーム36に隣り合う揺動レバー26の外端26Bとを互いに連結する2個のリンク要素42、44とを含むことから、ワーク保持体14を取り囲む略六角形状になり、中間アーム36が無くてワーク載置台15を取り囲む三角形状である場合に比して小さい外郭形状(多角形状)になる。これにより、中間アーム36が無い場合に比してワーク保持装置が小型化される。
【0051】
棚部17には、各中間アーム36の遊端36Bよりもワーク保持体14の回転方向遅れ側(回転方向進み側とは反対側)に所定角度偏倚した位置に、ばね受け部材46が取り付けられている。各ばね受け部材46と対応する中間アーム36の遊端36Bとの間には、付勢部材として圧縮コイルばね48が取り付けられている。
【0052】
各圧縮コイルばね48は、中間アーム36及びリンク要素42、44を介して各揺動レバー26を、軸体24の中心軸線周りに時計廻り方向に互い均等に付勢している。この揺動レバー26の付勢により、各転動ローラ30は、ワークWの外周面Wbに接触する接触方向に付勢され、外周面をワークWの外周面Wbに弾発的に互いに均等に押し付けられる。
【0053】
ワーク載置台15上のワークWは、3個の転動ローラ30が、ワーク載置台15の回転軸線(中心軸線)周りの3箇所に等間隔に配置され、互いに等径で、外周面をもってワークWの外周面Wbに接触し、互いに同長の揺動レバー26を介して連結リンク機構32によって互いに連結されていることにより、自身の中心軸線Cwがワーク保持体14の回転軸線Ctに合致する位置に位置する心出しが自動的に行われる。
【0054】
この心出し状態で、各転動ローラ30は圧縮コイルばね48のばね力によってワークWの外周面Wbに向けて弾発的に互いに均等に押し付けられる。そして、3個の転動ローラ30はワーク保持体14の回転軸線Ct周りに等間隔を設けられているから、ワークWに径方向の偏荷重が作用することがない。
【0055】
次に、転動ローラ30によってワークWをワーク載置台15に押し付ける作用について説明する。
【0056】
ワーク保持体14の回転が停止された状態で、砥石車20が中心軸線Cg周りに時計廻り方向に回転駆動され、砥石車20の降下移動により砥石車20がワーク載置台15上のワークWに接触すると、当該ワークWに、ワーク載置台15に対して中心軸線Cw周りに反時計廻り方向に回転変位させようとする力が働く。これによりワークWがワーク載置台15に対して回転変位する。このワークWの回転変位により、各転動ローラ30は、ワークWの外周面Wbに押し付けられている状態で、回転軸線Cr周りに反時計廻り方向にわずかに転動する。
【0057】
この各転動ローラ30の転動により、各転動ローラ30の中心軸線Crが上述の如く傾斜していることに基づいて、図4に示されている下向きの分力FbがワークWに作用する。これにより、ワークWがワーク載置台15に対してわずかに回転変位した状態で、ワークWの下面Waがワーク載置台15の上面15Aに押し付けられ、ワークWがワーク保持体14に固定される。
【0058】
この後、電動機16によってワーク保持体14が回転軸線Ct周りに時計廻り方向に回転駆動されると、ワークWはワーク保持体14に対して回転変位することはなく、ワーク保持体14と一体的に回転軸線Ct周りに時計廻り方向に回転する。
【0059】
この状態で砥石車20が軸移動することにより、ワークWが研削される。
【0060】
尚、ワークWに対する砥石車20の接触は、ワーク保持体14が回転軸線Ct周りに時計廻り方向に回転駆動され、載置台15上でワークWが同方向に回転している状態下で行われてもよい。
【0061】
本実施形態のワーク保持装置10は、上述したように、ワーク保持体14に対するワークWの固定が電磁吸着によらないので、ワークWが、磁性体、非磁性体の何れであっても、ワーク保持体14に対するワークWの固定を行うことができる。ワーク保持装置10は、機構学的なものであるから、電磁吸着式や負圧吸着式のものに比して、構造が簡単になり、併せてメンテナンス性がよいものになる。
【0062】
各転動ローラ30は圧縮コイルばね48のばね力によってワークWの外周面Wbに向けて弾発的に押し付けられ、外周部材30Cを構成するエラストマの弾性変形のもとに、ワークWの外周面Wbに弾発的に押し付けられるから、ワークWの外周面Wbに対する各転動ローラ30の摺接が確実になり、セルフセンタリングのもとに、ワークWがワーク保持体14に固定される作用が確実なものになる。
【0063】
各揺動レバー26がワークWの周方向の運動に対して後傾する向きに傾斜していることにより、揺動レバー26とワークWとの相対運動により、圧縮コイルばね48による付勢力が増強される。
【0064】
転動ローラ30の他の実施形態を、図6を参照して説明する。尚、図6において、図5に対応する部分は、図5に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0065】
本実施形態の転動ローラ30は、エラストマによる外周部材30Cが軸端側から軸線方向の中央部に向かうに従って外径が大きくなるクラウン形状をしている。
【0066】
転動ローラ30がクラウン形状であることにより、ワークWの母線(外周面の軸線方向の線分)に対する転動ローラ30の母線の平行度が高くなくても、傾きの成分を生じることなく転動ローラ30がワークWの外周面Wbに押し付けられる。また、転動ローラ30がワークWの外周面Wbに押し付けられた際の外周部材30Cの弾性変形が徐々に大きくなり、ワークWの外周面Wbに対する転動ローラ30の弾発的な押し付けが良好に行われる。
【0067】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0068】
例えば、転動ローラ30の個数は、3個に限られることなく、1個、2個或いは3個以上の複数個であってもよい。転動ローラ30は、ワーク保持体14に、直接に、ワーク保持体14の半径方向に移動且つ中心軸線Cr周りに転動可能に設けられてもよい。
【0069】
付勢部材は、圧縮コイルばね48に限られることなく、転動ローラ30をワークWの外周面Wbに接触する接触方向に付勢する引張コイルばねやその他のばね、空気封入式の空気ばね、アクチュエータ等であってもよい。
【0070】
連結リンク機構32の中間アーム36は必須でなく、隣り合う揺動レバー26がリンク要素によって直接連結されていてもよい。
【0071】
ワーク保持体14にマグネットチャックが組み込まれ、転動ローラ30によるワークWの保持とマグネットチャックによるワークWの保持とが組み合わされてもよい。
【0072】
ワーク保持装置は、平面研削盤におけるワークの保持に限られることはなく、フライス盤等の各種の工作機械におけるワーク保持、その他、各種の産業機械におけるワーク保持に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 :ワーク保持装置
12 :基台
14 :ワーク保持体
15 :ワーク載置台
15A :上面
16 :電動機
17 :棚部
17A :上面
18 :回転軸
20 :砥石車
24 :軸体
26 :揺動レバー
26A :内端(一端部)
26B :外端(他端部)
28 :ローラ軸
30 :転動ローラ
30A :軸孔
30B :ボス部材
30C :外周部材(外周部)
32 :連結リンク機構
34 :鉛直軸
36 :中間アーム
36A :基端
36B :遊端
38 :枢軸
40 :枢軸
42 :リンク要素
44 :リンク要素
46 :ばね受け部材
48 :圧縮コイルばね
A :接触点
B :基準線
Cg :中心軸線
Cr :中心軸線(回転軸線)
Ct :回転軸線
Cw :中心軸線
Fa :回転力
Fb :分力
R :半径線
W :ワーク
Wa :下面
Wb :外周面
θ :角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6