(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145249
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】液体センサ
(51)【国際特許分類】
G01F 23/263 20220101AFI20241004BHJP
【FI】
G01F23/263
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057522
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中津 彰
(72)【発明者】
【氏名】夏原 悠佑
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AB02
2F014AC04
2F014EA10
(57)【要約】
【課題】液体の種類及び質に拘わらずより高精度に液位を検出可能な液体センサを提供する。
【解決手段】液体センサは、少なくとも一部分が液体に浸漬された状態で液位を検出する。液体センサは、基板を備える。基板には複数の電極が形成されている。複数の電極に含まれる第1の一対の電極によって第1電極部が構成されている。複数の電極に含まれる第2の一対の電極によって第2電極部が構成されている。基板には孔が形成されている。第1の一対の電極は、孔によって形成された基板の内周面に形成されている。液体センサが液体に浸漬された状態で、第2電極部は第1電極部よりも下方に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部分が液体に浸漬された状態で液位を検出する液体センサであって、
基板を備え、
前記基板には複数の電極が形成されており、
前記複数の電極に含まれる第1の一対の電極によって第1電極部が構成されており、
前記複数の電極に含まれる第2の一対の電極によって第2電極部が構成されており、
前記基板には孔が形成されており、
前記第1の一対の電極は、前記孔によって形成された前記基板の内周面に形成されており、
前記液体センサが前記液体に浸漬された状態で、前記第2電極部は前記第1電極部よりも下方に位置する、液体センサ。
【請求項2】
前記第1電極部における第1静電容量、及び、前記第2電極部における第2静電容量の各々を検出する検出回路をさらに備え、
前記検出回路は、前記第1及び第2静電容量に基づいて前記液位を検出する、請求項1に記載の液体センサ。
【請求項3】
前記検出回路は、前記第1静電容量を前記第2静電容量に基づいて補正し、補正後の前記第1静電容量に基づいて前記液位を検出する、請求項2に記載の液体センサ。
【請求項4】
前記検出回路は、前記第1静電容量に基づいて前記液位を検出し、検出された前記液位を前記第2静電容量に基づいて補正する、請求項2に記載の液体センサ。
【請求項5】
前記検出回路は、前記第2静電容量に基づいて前記液体センサにおける異常を検出する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の液体センサ。
【請求項6】
前記複数の電極に含まれる第3の一対の電極によって第3電極部が構成され、
前記第3の一対の電極は、前記内周面に形成されており、
前記液体センサが前記液体に浸漬された状態で、前記第3電極部は前記第1電極部よりも下方に位置し、
前記検出回路は、前記第3電極部における第3静電容量を検出し、
前記検出回路は、前記第3静電容量に基づいて前記液体センサにおける異常を検出する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の液体センサ。
【請求項7】
前記基板には前記第2電極部と前記検出回路とを電気的に接続する配線が形成されており、
前記配線の少なくとも一部は、前記第1の一対の電極に沿って延びており、
前記配線の少なくとも一部は、前記基板の内層に形成されている、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の液体センサ。
【請求項8】
前記基板に実装された温度センサをさらに備え、
前記検出回路は、前記温度センサの検出結果に応じて動作状態を切り替える、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の液体センサ。
【請求項9】
前記基板に実装された温度センサをさらに備え、
前記検出回路は、前記温度センサの検出結果に基づいて前記第1静電容量及び前記第2静電容量の少なくとも一方を補正する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の液体センサ。
【請求項10】
角度センサをさらに備え、
前記検出回路は、検出された前記液位を前記角度センサの検出結果に基づいて補正する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の液体センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-131273号公報(特許文献1)は、液体センサを開示する。この液体センサは、少なくとも一部分が液体に浸漬された状態で液位を検出する。この液体センサは基板を備えており、基板には孔が形成されている。孔によって形成された基板の内周面には、第1電極と、第1電極と向き合う第2電極とが形成されている。第1及び第2電極間の静電容量は、液位に応じて変化する。この液体センサにおいては、第1及び第2電極間の静電容量に基づいて液位が検出される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている液体センサにおいては、一対の電極間の静電容量に基づいて液位が検出される。しかしながら、例えば液体の種類又は質によって、液体の誘電率は異なる。すなわち、仮に液位が同じであっても、液体の種類又は質が異なれば、一対の電極間の静電容量は異なり得る。したがって、液体の種類又は質次第で、上記特許文献1に開示されている液体センサによる液位の検出精度は低下する。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、液体の種類又は質に拘わらずより高精度に液位を検出可能な液体センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う液体センサは、少なくとも一部分が液体に浸漬された状態で液位を検出する。液体センサは、基板を備える。基板には複数の電極が形成されている。複数の電極に含まれる第1の一対の電極によって第1電極部が構成されている。複数の電極に含まれる第2の一対の電極によって第2電極部が構成されている。基板には孔が形成されている。第1の一対の電極は、孔によって形成された基板の内周面に形成されている。液体センサが液体に浸漬された状態で、第2電極部は第1電極部よりも下方に位置する。
【0007】
この液体センサにおいては、液体センサが液体に浸漬された状態で、第2電極部が第1電極部よりも下方に位置する。したがって、第1電極部の少なくとも一部が液体に浸漬されている場合には、第2電極部の全体が液体に浸漬されている。例えば、第1電極部における静電容量の変化に基づいて液位が検出される場合に、液体センサによって検出可能な範囲内に液位が存在するときは、第2電極部の全体が液体に浸漬されている。第2電極部の全体が液体に浸漬されているため、第2電極部における静電容量に基づいて液体毎の誘電率の違いが検出され得る。したがって、この液体センサによれば、液体毎の誘電率の違いを考慮した上でより高精度に液位を検出することができる。
【0008】
上記液体センサは、第1電極部における第1静電容量、及び、第2電極部における第2静電容量の各々を検出する検出回路をさらに備えてもよく、検出回路は、第1及び第2静電容量に基づいて液位を検出してもよい。
【0009】
この液体センサによれば、第1及び第2静電容量に基づいて液位が検出されるため、例えば、第1静電容量のみに基づいて液位が検出される場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【0010】
上記液体センサにおいて、検出回路は、第1静電容量を第2静電容量に基づいて補正し、補正後の第1静電容量に基づいて液位を検出してもよい。
【0011】
この液体センサによれば、第1静電容量が第2静電容量に基づいて補正され、補正後の第1静電容量に基づいて液位が検出されるため、例えば、第1静電容量のみに基づいて液位が検出される場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【0012】
上記液体センサにおいて、検出回路は、第1静電容量に基づいて液位を検出し、検出された液位を第2静電容量に基づいて補正してもよい。
【0013】
この液体センサによれば、第1静電容量に基づいて液位が検出され、検出された液位が第2静電容量に基づいて補正されるため、例えば、第1静電容量のみに基づいて液位が検出される場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【0014】
上記液体センサにおいて、検出回路は、第2静電容量に基づいて液体センサにおける異常を検出してもよい。
【0015】
液体センサにおいて異常が生じていない場合における第2静電容量の範囲は予め分かる。すなわち、第2静電容量を参照することによって、液体センサにおいて何らかの異常が生じていることが比較的高精度に検出され得る。この液体センサによれば、第2静電容量に基づいて液体センサにおける異常が検出されるため、液体センサにおける異常を比較的高精度に検出することができる。
【0016】
上記液体センサにおいて、複数の電極に含まれる第3の一対の電極によって第3電極部が構成されてもよく、第3の一対の電極は、基板の内周面に形成されてもよく、液体センサが液体に浸漬された状態で、第3電極部は第1電極部よりも下方に位置してもよく、検出回路は、第3電極部における第3静電容量を検出してもよく、検出回路は、第3静電容量に基づいて液体センサにおける異常を検出してもよい。
【0017】
液体センサにおいて異常が生じていない場合における第3静電容量の範囲は予め分かる。すなわち、第3静電容量を参照することによって、液体センサにおいて何らかの異常が生じていることが比較的高精度に検出され得る。この液体センサによれば、第3静電容量に基づいて液体センサにおける異常が検出されるため、液体センサにおける異常を比較的高精度に検出することができる。
【0018】
上記液体センサにおいて、基板には第2電極部と検出回路とを電気的に接続する配線が形成されてもよく、配線の少なくとも一部は、第1の一対の電極に沿って延びてもよく、配線の少なくとも一部は、基板の内層に形成されてもよい。
【0019】
第2電極部と検出回路とを接続する配線が第1の一対の電極に沿って延びている場合に、配線が基板上に形成されていると、第2静電容量が液位の影響を受け得る。この液体センサによれば、配線の少なくとも一部が基板の内層に形成されているため、第2静電容量に対する液位の影響を抑制することができる。
【0020】
上記液体センサは、基板に実装された温度センサをさらに備えてもよく、検出回路は、温度センサの検出結果に応じて動作状態を切り替えてもよい。
【0021】
この液体センサにおいては、温度に応じて動作状態が切り替えられる。したがって、この液体センサによれば、例えば、予め定められた温度範囲から温度が外れた場合に検出動作が停止することによって製品劣化を抑制することができる。
【0022】
上記液体センサは、基板に実装された温度センサをさらに備えてもよく、検出回路は、温度センサの検出結果に基づいて第1静電容量及び第2静電容量の少なくとも一方を補正してもよい。
【0023】
温度に応じて電極間の距離が変化する等の理由により、第1及び第2電極部の各々における静電容量は温度の影響を受ける。この液体センサにおいては、第1静電容量及び第2静電容量の少なくとも一方が温度センサの検出結果に基づいて補正される。したがって、この液体センサによれば、第1静電容量及び第2静電容量の少なくとも一方に対する温度の影響が考慮されるため、温度の影響が考慮されない場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【0024】
上記液体センサは、角度センサをさらに備えてもよく、検出回路は、検出された液位を角度センサの検出結果に基づいて補正してもよい。
【0025】
この液体センサによれば、検出された液位が角度センサの検出結果に基づいて補正されるため、液体センサの傾きが考慮されない場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、液体の種類又は質に拘わらずより高精度に液位を検出可能な液体センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】
図1のII-II断面を模式的に示す図である。
【
図4】
図3のIV-IV断面を模式的に示す図である。
【
図6】基板の製造手順を示すフローチャートである。
【
図7】液体センサにおける液位の検出手順を説明するための図である。
【
図8】液体センサにおいて用いられる補正係数Δε
rの考え方について説明するための図である。
【
図9】液体センサにおける液位の検出手順を示すフローチャートである。
【
図10】液体センサにおける液位と各静電容量との関係を示す図である。
【
図11】第1異常の検出手順を示すフローチャートである。
【
図12】第2異常の検出手順を示すフローチャートである。
【
図13】第3異常の検出手順を示すフローチャートである。
【
図14】第1の他の実施の形態に従う液体センサにおける液位の検出手順を示すフローチャートである。
【
図15】第1電極部の下端よりも僅かに上方の位置に液面が存在する状態において液位が0とされた場合における液位と各静電容量との関係を示す図である。
【
図16】第2の他の実施の形態に従う液体センサにおける第2異常の検出手順を示すフローチャートである。
【
図17】第3の他の実施の形態に従う液体センサに含まれる基板を模式的に示す平面図である。
【
図18】第3の他の実施の形態に従う液体センサにおける第2異常の検出手順を示すフローチャートである。
【
図19】第4の他の実施の形態に従う液体センサに含まれる基板を模式的に示す平面図である。
【
図20】第5の他の実施の形態に従う液体センサに含まれる基板を模式的に示す平面図である。
【
図21】第5の他の実施の形態に従う液体センサにおける動作手順を示すフローチャートである。
【
図22】第6の他の実施の形態に従う液体センサにおける液位の検出手順を説明するための図である。
【
図23】第6の他の実施の形態に従う液体センサにおける液位の補正手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれている。
【0029】
[1.構成]
<1-1.液体センサの構成>
図1は、本実施の形態に従う液体センサS1の構成を模式的に示す図である。液体センサS1は、例えば、車両等のオイルタンク内に取り付けられ、燃料(オイル)の残量(液位)を電気的に検出するように構成されている。液体センサS1は、少なくとも一部分が燃料等の液体(以下、単に「液体」とも称する。)に浸漬された状態で液位を検出する。
【0030】
図1に示されるように、液体センサS1は、液体センサ本体10と、検出回路20と、ケーブル30とを含んでいる。液体センサ本体10においては、プラグ15内に基板100が収容されている。基板100と検出回路20とは、ケーブル30を介して電気的に接続されている。検出回路20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含んでいる。なお、基板100と検出回路20とは、必ずしもケーブル30を介して接続されている必要はない。例えば、基板100と検出回路20とが同一基板上に実装されることによって基板100と検出回路20とが電気的に接続されてもよい。
【0031】
図2は、
図1のII-II断面を模式的に示す図である。
図2に示されるように、プラグ15は筒状であり、プラグ15内には基板100が収容されている。プラグ15が筒状であるため、液体センサ本体10が液体に浸漬されている状態で、プラグ15内には液体が入り込む。詳細については後述するが、基板100には複数の電極が形成されている。複数の電極に含まれる一対の電極間の静電容量が液体の残量(液位)に応じて変化する。
図1に示す検出回路20は、公知の種々の技術を用いることによって、一対の電極間の静電容量を検出する。検出回路20は、検出された静電容量に基づいて液位を検出する。
【0032】
詳細については後述するが、例えば液体の種類又は質によって、液体の誘電率は異なる。すなわち、仮に液位が同じであっても、液体の種類又は質が異なれば、一対の電極間の静電容量は異なり得る。したがって、液体の種類又は質の違いを考慮することなく、一律に用意された液位と静電容量との関係に基づいて液位が検出される場合には、液位の誤検知が生じ得る。本実施の形態に従う液体センサS1おいては、基板100の構成を工夫することにより、このような問題の影響が抑制されている。次に、基板100の構成について詳細に説明する。
【0033】
<1-2.基板の構成>
図3は、基板100を模式的に示す平面図である。
図4は、
図3のIV-IV断面を模式的に示す図である。
図5は、
図3のV-V断面を模式的に示す図である。
図3、
図4及び
図5を参照して、基板100の形状は、長辺及び短辺を有する略矩形状である。基板100は、いわゆるフッ素樹脂基板である。フッ素樹脂基板が耐候性及び耐薬性に優れるため、基板100は過酷環境での使用に耐え得る。なお、基板100は、必ずしもフッ素基板で構成される必要はないが、例えば、耐薬性に優れた基板で構成されることが好ましい。
【0034】
基板100の短手方向(以下、単に「短手方向」とも称する。)の略中央であり、かつ、基板100の長手方向(以下、単に「長手方向」とも称する。)の中央より僅かに上方の位置には、孔H1が形成されている。孔H1の形状は、長辺及び短辺を有する略矩形状である。孔H1の長辺は基板100の長辺に沿って延びており、孔H1の短辺は基板100の短辺に沿って延びている。孔H1の周囲には、基板100の内周面101が位置している。
【0035】
基板100には、導電部110、導電部120及び導電部130が形成されている。導電部110,120,130の各々は、例えば、金、銀、銅又はアルミニウム等の導電材料で構成されている。導電部110,120,130の各々は、例えば、フッ素樹脂でコーティングされていてもよい。導電部110は、電極112と、配線111及び配線113と、複数の電極114とを含んでいる。導電部120は、電極122と、配線121とを含んでいる。導電部130は、複数の電極132と、配線131とを含んでいる。
【0036】
導電部110に含まれる電極112は、基板100の内周面101のうち孔H1の一方の長辺に沿って延びる面の全体に形成されている。導電部120に含まれる電極122は、基板100の内周面101のうち孔H1の他方の長辺に沿って延びる面の全体に形成されている。電極112,122は、互いに向き合っている。内周面101のうち孔H1の短辺に沿って延びる各面において、電極112,122は互いに分断されている。電極112,122によって第1電極部E1が構成される。
【0037】
長手方向における電極112,122の各々の長さは長さL1であり、基板100の厚み方向における電極112,122の各々の長さは長さW1である(
図4参照)。また、電極112,122間の長さは長さd1である。電極112,122間の長さd1は、液位が低下した後に、表面張力によって電極112,122間に燃料が滞留しない程度の長さであることが好ましい。
【0038】
なお、電極112は、必ずしも内周面101のうち孔H1の一方の長辺に沿って延びる面の全体に形成されている必要はなく、内周面101のうち孔H1の一方の長辺に沿って延びる面の少なくとも一部分に形成されていればよい。また、電極122は、必ずしも内周面101のうち孔H1の他方の長辺に沿って延びる面の全体に形成されている必要はなく、内周面101のうち孔H1の他方の長辺に沿って延びる面の少なくとも一部分に形成されていればよい。
【0039】
配線111,121の各々は、基板100の主面上に形成されており、長手方向に延びている。配線111は、長手方向における電極112の両端部のうち複数の電極114側と反対側の端部と電気的に接続されていると共に、検出回路20(
図1)と電気的に接続されている。配線121は、長手方向における電極122の両端部のうち複数の電極114側と反対側の端部と電気的に接続されていると共に、検出回路20と電気的に接続されている。
【0040】
液体センサS1(
図1)の使用時に、基板100は、基板100の長辺が液面に垂直な方向に延びるように配置される。液面の高さ(液位)が変化することによって、電極112,122間に位置する液体の量が変化する。その結果、電極112,122間に存在する物質の誘電率が変化し、電極112,122間の静電容量(以下、「第1静電容量」とも称する。)が変化する。検出回路20は、第1静電容量と液位との関係を予め記憶しており、第1静電容量に基づいて液位を検出する。具体的な液位の検出手順については後程詳しく説明する。
【0041】
導電部110に含まれる配線113は、基板100の主面上に形成されており、短手方向に延びる第1部分115と、長手方向に延びる第2部分116とを含んでいる。第1部分115の一方の端部は、長手方向における電極112の両端部のうち配線111側と反対側の端部近傍において電極112と電気的に接続されている。第2部分116は、第1部分115の他方の端部から長手方向における配線111側と反対側に延びている。導電部130に含まれる配線131は、基板100の面上に形成されており、長手方向に延びている。短手方向において、配線121は、配線111と配線131との間に位置している。
【0042】
導電部110に含まれる複数の電極114の各々は、配線113の第2部分116から短手方向における配線131側に延びている。複数の電極114によって第1の櫛歯電極が構成されている。また、導電部130に含まれる複数の電極132の各々は、配線131から短手方向における配線113の第2部分116側に延びている。複数の電極132によって第2の櫛歯電極が構成されている。長手方向において、電極114,132は、一定間隔置きに交互に形成されている(
図5参照)。長手方向における電極114,132間の長さd2は、短手方向における電極112,122間の長さd1よりも短い。
【0043】
複数の電極114(第1の櫛歯電極)及び複数の電極132(第2の櫛歯電極)によって第2電極部E2が構成される。液体センサS1が液体に浸漬された状態で、第2電極部E2は、第1電極部E1よりも下方に位置する。検出回路20は、公知の種々の技術を用いることによって、電極114,132間の静電容量(以下、「第2静電容量」とも称する。)を検出する。基板100において第2電極部E2が設けられている理由については後程詳しく説明する。
【0044】
[2.基板の製造方法]
図6は、基板100の製造手順を示すフローチャートである。
図6に示される処理は、例えば、基板100の製造装置によって実行される。
【0045】
図6を参照して、製造装置は、主面上に配線111,113,121,131、複数の電極114及び複数の電極132がプリントされた基板を準備する(ステップS100)。製造装置は、ルータ又はプレスでの打ち抜き加工によって、基板上に孔H1を形成する(ステップS110)。製造装置は、孔H1の周囲の内周面101にめっき処理を施す(ステップS120)。製造装置は、ルータ又はプレスでの打ち抜き加工により電極112,122間の間隙を形成することによって、電極112,122を分断する(ステップS130)。これにより、基板100が完成する。
【0046】
[3.液位検出の高精度化]
上述のように、液体センサS1においては、第1電極部E1における静電容量(第1静電容量)に基づいて液位が検出される。検出回路20においては、第1静電容量と液位との関係を示す関係式が予め記憶されている。検出回路20において記憶されている関係式は、基準となる液体(以下、「基準液体」とも称する。)に関する第1静電容量と液位との関係を示す。
【0047】
一方、例えば液体の種類又は質によって、液体の誘電率は異なる。第1静電容量と液位との関係は、例えば、以下の式(1)で表わされる。
C=ε0×εr×L×W1/d1 ・・・(1)
【0048】
式(1)において、Cは第1静電容量を示す。ε0は真空の誘電率を示し、εrは液体の比誘電率を示す。Lは、第1電極部E1のうち液体に浸漬されている部分の長手方向の長さ(液位)を示す。W1は基板100の厚みを示し、d1は電極112,122間の長さを示す。
【0049】
式(1)からも分かるように、液体の種類又は質が基準液体と異なり、液体の比誘電率が基準液体の比誘電率と異なる場合には、第1静電容量と液位との関係も変化する。したがって、液体の種類又は質の違いを考慮することなく、一律に関係式に基づいて液位が検出される場合には、液位の誤検知が生じ得る。液体センサS1においては、このような液位の誤検知の発生を抑制するために、液体毎の誘電率の違いが考慮される。
【0050】
図7は、液体センサS1における液位の検出手順を説明するための図である。
図7を参照して、横軸は第1静電容量を示し、縦軸は液位を示す。線LN1は基準液体に関する第1静電容量と液位との関係の一例を示し、線LN2は液位検出の対象となっている液体(以下、「対象液体」とも称する。)に関する第1静電容量と液位との関係の一例を示す。この場合には、線LN1が示す関係が、検出回路20において記憶されている関係式が示す関係に対応する。
【0051】
例えば、実際の対象液体の液位がLV2であったとする。この場合に、液体センサS1においては、第1静電容量としてC1が検出される。第1静電容量としてC1が検出された場合に、一律に関係式に基づいて液位が検出されると、LV1が液位として検出される。実際の液位はLV2であるため、この検出結果は正しくない。そのため、液体センサS1においては、関係式への代入前に第1静電容量の補正が行なわれる。すなわち、液体センサS1においては、第1静電容量として検出されたC1がC2に補正され、補正後の第1静電容量C2を関係式に代入することによって液位が検出される。これにより、液体センサS1においては、正しいLV2が液位として検出される。
【0052】
第1静電容量の補正には、第2静電容量が用いられる。液体センサS1が液体に浸漬された状態で、第2電極部E2は第1電極部E1よりも下方に位置する。したがって、第1電極部E1の少なくとも一部が液体に浸漬されている場合には、第2電極部E2の全体が液体に浸漬されている。液体センサS1においては、第1静電容量の変化に基づいて液位が検出されるため、液体センサS1によって検出可能な範囲に液位が存在する場合には、第2電極部E2の全体が液体に浸漬されている。
【0053】
検出回路20は、第2電極部E2の全体が「対象液体」に浸漬されている場合の第2静電容量Cbを検出する。一方、検出回路20においては、第2電極部E2の全体が「基準液体」に浸漬されている場合の第2静電容量Caが予め記憶されている。検出回路20は、第2静電容量Caと第2静電容量Cbとの比を算出し、算出された比を補正係数Δεrとして用いることにより第1静電容量の補正を行なう。なお、補正係数Δεrの算出においては、基板100の寄生容量が考慮されてもよいし、基板100の寄生容量が考慮されなくてもよい。
【0054】
図8は、液体センサS1において用いられる補正係数Δε
rの考え方について説明するための図である。
図8を参照して、検出回路20において検出される第2静電容量は、液体を介した電極114,132間の静電容量CX1と、基板100を介した電極114,132間の静電容量(基板100の寄生容量CX2)との和である。補正係数Δε
rの算出において、基板100の寄生容量が考慮される場合には、以下の式(2)に基づいて補正係数Δε
rが算出される。この場合には、寄生容量CX2の値が、例えば、検出回路20に予め記憶されている。
Δε
r=(Ca-CX2)/(Cb-CX2) ・・・(2)
【0055】
一方、補正係数Δεrの算出において、基板100の寄生容量が考慮されない場合には、以下の式(3)に基づいて補正係数Δεrが算出される。
Δεr=Ca/Cb ・・・(3)
【0056】
再び
図7を参照して、検出回路20は、検出された第1静電容量C1に補正係数Δε
rを掛け合わせることによって第1静電容量の補正を行なう。これにより、第1静電容量がC1からC2に補正され、補正後の第1静電容量C2に基づいて液位LV2が検出される。
【0057】
このように、本実施の形態に従う液体センサS1においては、液体センサS1が液体に浸漬された状態で、第2電極部E2が第1電極部E1よりも下方に位置する。液体センサS1によって検出可能な範囲内に液位が存在する場合には、第2電極部E2の全体が液体に浸漬されているため、第2静電容量に基づいて液体毎の誘電率の違いが検出される。したがって、液体センサS1によれば、液体毎の誘電率の違いを考慮した上でより高精度に液位を検出することができる。
【0058】
[4.動作]
<4-1.液位検出動作>
図9は、液体センサS1における液位の検出手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えば、検出回路20によって所定の周期で実行される。
【0059】
図9を参照して、検出回路20は、第1及び第2静電容量を検出する(ステップS200)。具体的には、検出回路20は、導電部110,120間に電圧を印加した状態で第1静電容量を検出し、導電部110,130間に電圧を印加した状態で第2静電容量を検出する。
【0060】
検出回路20は、検出された第2静電容量に基づいて補正係数を算出する(ステップS210)。検出回路20は、算出された補正係数を用いて、ステップS200において検出された第1静電容量を補正する(ステップS220)。検出回路20は、補正後の第1静電容量に基づいて液位を検出する(ステップS230)。具体的には、検出回路20は、補正後の第1静電容量を関係式に代入することによって液位を検出する。
【0061】
このように、液体センサS1においては、第1及び第2静電容量に基づいて液位が検出される。すなわち、液体センサS1においては、液体毎の誘電率の違いが考慮された上で液位検出が行なわれる。したがって、液体センサS1によれば、例えば、第1静電容量のみに基づいて液位が検出される場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【0062】
より具体的には、液体センサS1においては、第1静電容量が第2静電容量に基づいて補正され、補正後の第1静電容量に基づいて液位が検出される。すなわち、液体センサS1においては、液体毎の誘電率の違いを考慮した第1静電容量の補正が行なわれ、補正後の第1静電容量に基づいて液位が検出される。したがって、液体センサS1によれば、例えば、第1静電容量のみに基づいて液位が検出される場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【0063】
<4-2.エラー判定動作>
図10は、液体センサS1における液位と各静電容量との関係を示す図である。
図10を参照して、横軸は液位を示し、縦軸は静電容量を示す。線LN3は液位と第1静電容量との関係を示し、線LN4は液位と第2静電容量との関係を示す。液体センサS1は、正常時に、第1静電容量<第2静電容量という関係が成立するように設計されている。
【0064】
第1静電容量は、液位が0以下である場合にC10である。すなわち、電極112,122間に液体が存在しない場合の第1静電容量がC10である。液位が0以上の範囲においては、液位が高くなる程、第1静電容量が大きくなる。
【0065】
第2静電容量は、液位が0未満であり、かつ、第2電極部E2が液体に全く浸漬されていない状態においてC11である。すなわち、電極114,132間に液体が存在しない場合の第2静電容量がC11である。液位が高くなり、第2電極部E2において液体に浸漬されている範囲が大きくなる程、第2静電容量が大きくなる。第2電極部E2の全体が液体に浸漬された状態における第2静電容量がC13である。第2電極部E2の全体が液体に浸漬された状態における第2静電容量として許容される下限値がC12であり、第2電極部E2の全体が液体に浸漬された状態における第2静電容量として許容される上限値がC14である。
【0066】
このように、液体センサS1においては、
図10に示される関係が成立する。したがって、例えば、第1静電容量≧第2静電容量という関係が成立する場合には、液体センサS1において異常が生じている可能性が高い。この場合には、例えば、電極112,122間に異物が存在する異常(以下、「第1異常」とも称する。)が生じている可能性が高い。
【0067】
また、例えば、第2静電容量<C12という関係が成立する場合には、例えば、第2電極部E2の少なくとも一部が液体に浸漬されていない異常(以下、「第2異常」とも称する。)が生じている可能性が高い。また、例えば、第2静電容量>C14という関係が成立する場合には、対象液体以外の大量の水分が混入している異常(以下、「第3異常」とも称する。)が生じている可能性が高い。これらを踏まえて、液体センサS1においては、以下のエラー判定動作が行なわれる。なお、以下のエラー判定動作は、必ずしも行なわれなくてもよい。
【0068】
図11は、第1異常の検出手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えば、第1及び第2静電容量が検出される度に、検出回路20によって実行される。
【0069】
図11を参照して、検出回路20は、第1静電容量≧第2静電容量という関係が成立するか否かを判定する(ステップS200)。第1静電容量≧第2静電容量という関係が成立しないと判定されると(ステップS200においてNO)、検出回路20は、再び第1及び第2静電容量が検出されるまで待機する。一方、第1静電容量≧第2静電容量という関係が成立すると判定されると(ステップS200においてYES)、検出回路20は、第1異常を検出する(ステップS210)。
【0070】
図12は、第2異常の検出手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えば、第2静電容量が検出される度に、検出回路20によって実行される。
【0071】
図12を参照して、検出回路20は、第2静電容量<第1所定下限値(例えば、
図10におけるC12)という関係が成立するか否かを判定する(ステップS300)。第2静電容量<第1所定下限値という関係が成立しないと判定されると(ステップS300においてNO)、検出回路20は、再び第2静電容量が検出されるまで待機する。一方、第2静電容量<第1所定下限値という関係が成立すると判定されると(ステップS300においてYES)、検出回路20は、第2異常を検出する(ステップS310)。
【0072】
図13は、第3異常の検出手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えば、第2静電容量が検出される度に、検出回路20によって実行される。
【0073】
図13を参照して、検出回路20は、第2静電容量>第1所定上限値(例えば、
図10におけるC14)という関係が成立するか否かを判定する(ステップS400)。第2静電容量>第1所定上限値という関係が成立しないと判定されると(ステップS400においてNO)、検出回路20は、再び第2静電容量が検出されるまで待機する。一方、第2静電容量>第1所定上限値という関係が成立すると判定されると(ステップS400においてYES)、検出回路20は、第3異常を検出する(ステップS410)。
【0074】
このように、液体センサS1においては、異常が生じていない場合における第2静電容量の範囲が予め分かる。すなわち、少なくとも第2静電容量を参照することによって、液体センサS1において何らかの異常が生じていることが比較的高精度に検出され得る。液体センサS1によれば、少なくとも第2静電容量に基づいて液体センサS1における異常が検出されるため、液体センサS1における異常を比較的高精度に検出することができる。
【0075】
[5.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う液体センサS1においては、液体センサS1が液体に浸漬された状態で、第2電極部E2が第1電極部E1よりも下方に位置する。したがって、第1電極部E1の少なくとも一部が液体に浸漬されている場合には、第2電極部E2の全体が液体に浸漬されている。例えば、第1静電容量の変化に基づいて液位が検出される場合に、液体センサS1によって検出可能な範囲内に液位が存在するときは、第2電極部E2の全体が液体に浸漬されている。第2電極部E2の全体が液体に浸漬されているため、第2静電容量を比較することによって液体毎の誘電率の違いが検出され得る。したがって、液体センサS1によれば、液体毎の誘電率の違いを考慮した上でより高精度に液位を検出することができる。
【0076】
[6.他の実施の形態]
上記実施の形態の思想は、以上で説明された実施の形態に限定されない。例えば、いずれかの実施の形態の少なくとも一部の構成と、他のいずれかの実施の形態の少なくとも一部の構成とが組み合わされてもよい。以下、上記実施の形態の思想を適用できる他の実施の形態の一例について説明する。
【0077】
<6-1>
上記実施の形態においては、第1静電容量が第2静電容量に基づいて補正され、補正後の第1静電容量に基づいて液位が検出された。しかしながら、液位の検出は、必ずしもこのような手順で行なわれなくてもよい。例えば、第1静電容量に基づいて液位が検出され、検出された液位が第2静電容量に基づいて補正されてもよい。
【0078】
図14は、第1の他の実施の形態に従う液体センサにおける液位の検出手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えば、検出回路20によって所定の周期で実行されてもよい。
【0079】
図14を参照して、検出回路20は、第1及び第2静電容量を検出する(ステップS500)。検出回路20は、検出された第2静電容量に基づいて補正係数を算出する(ステップS510)。検出回路20は、検出された第1静電容量に基づいて液位を検出する(ステップS520)。具体的には、検出回路20は、第1静電容量を関係式に代入することによって液位を検出する。検出回路20は、ステップS510において算出された補正係数を用いて、ステップS520において検出された液位を補正する(ステップS530)。検出回路20は、例えば、ステップS510において算出された補正係数をステップS520において検出された液位に掛け合わせることによって液位の補正を行なう。なお、補正係数は、上記実施の形態と同様の方法で算出され得る。
【0080】
このように、第1の他の実施の形態に従う液体センサにおいては、第1静電容量に基づいて液位が検出され、検出された液位が第2静電容量に基づいて補正される。すなわち、この液体センサにおいては、液体毎の誘電率の違いを考慮した液位の補正が行なわれる。したがって、この液体センサによれば、例えば、第1静電容量のみに基づいて液位が検出される場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【0081】
<6-2>
また、上記実施の形態において説明されたエラー判定以外のエラー判定が行なわれてもよい。例えば、上記実施の形態に従う液体センサS1においては、第1電極部E1の下端に液面が存在する状態において液位が0とされた。しかしながら、液位が0とされる場合の液面の位置はこれに限定されない。例えば、第1電極部E1の下端よりも僅かに上方の位置に液面が存在する状態において液位が0とされてもよい。
【0082】
図15は、第1電極部E1の下端よりも僅かに上方の位置に液面が存在する状態において液位が0とされた場合における液位と各静電容量との関係を示す図である。
図15に示されるように、液位が0である場合に、第1静電容量はC20である。この場合に、例えば、第1静電容量<C20、かつ、第2静電容量<C12という関係が成立する場合には、第2異常が生じている可能性が高い。したがって、液体センサS1においては、以下のエラー判定動作が行なわれてもよい。
【0083】
図16は、第2の他の実施の形態に従う液体センサにおける第2異常の検出手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えば、第1及び第2静電容量が検出される度に、検出回路20によって実行されてもよい。
【0084】
図16を参照して、検出回路20は、第2静電容量<第1所定下限値(例えば、
図15におけるC12)、かつ、第1静電容量<第2所定下限値(例えば、
図15におけるC20)という関係が成立するか否かを判定する(ステップS600)。第2静電容量<第1所定下限値、かつ、第1静電容量<第2所定下限値という関係が成立しないと判定されると(ステップS600においてNO)、検出回路20は、再び第1及び第2静電容量が検出されるまで待機する。一方、第2静電容量<第1所定下限値、かつ、第1静電容量<第2所定下限値という関係が成立すると判定されると(ステップS600においてYES)、検出回路20は、第2異常を検出する(ステップS610)。
【0085】
このように、第2の他の実施の形態に従う液体センサにおいては、異常が生じていない場合における第1及び第2静電容量の範囲が予め分かる。すなわち、第1及び第2静電容量を参照することによって、液体センサS1において何らかの異常が生じていることが比較的高精度に検出され得る。この液体センサによれば、第1及び第2静電容量に基づいて液体センサにおける異常が検出されるため、液体センサにおける異常を比較的高精度に検出することができる。
【0086】
<6-3>
また、基板100に形成される電極のパターンが変更された上でエラー判定が行なわれてもよい。
【0087】
図17は、第3の他の実施の形態に従う液体センサに含まれる基板100Aを模式的に示す平面図である。基板100Aにおいては、上記実施の形態における導電部120の代わりに、導電部120A及び導電部140が設けられている。
【0088】
導電部120Aは、配線121と、電極122Aとを含んでいる。電極122Aは、孔H1において、導電部110に含まれる電極112と向き合う面に形成されている。すなわち、電極112,122Aは、互いに向き合っている。また、導電部140は、電極142と、配線141とを含んでいる。電極142は、H1において、導電部110に含まれる電極112と向き合う面に形成されている。すなわち、電極112,142は、互いに向き合っている。
【0089】
電極122A,142は、例えば、上記実施の形態における電極122を分断することによって構成されている。基板100Aが液体に浸漬された状態で、電極112,142によって構成される電極部は、電極112,122Aによって構成される電極部よりも下方に位置する。
【0090】
配線141は、基板100Aの主面上に形成されており、短手方向に延びる部分と、長手方向に延びる部分とを含んでいる。配線141は、電極142と検出回路20とを電気的に接続する。このような構成の基板100Aを用いて、例えば、以下のような手順で第2異常の検出が行なわれてもよい。
【0091】
図18は、第3の他の実施の形態に従う液体センサにおける第2異常の検出手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えば、検出回路20によって所定の周期で繰り返し実行されてもよい。
【0092】
図18を参照して、検出回路20は、導電部110,140間に電圧を印加することによって、電極112,142間における静電容量(以下、「第3静電容量」とも称する。)を検出する(ステップS700)。検出回路20は、第3静電容量が所定値未満であるか否かを判定する(ステップS710)。なお、所定値は、例えば、電極142の一部分が液体に浸漬された状態における電極112,142間における静電容量に相当し、予め測定等を通じて定められている。
【0093】
第3静電容量が所定値以上であると判定されると(ステップS710においてNO)、検出回路20は、再びステップS700の処理を実行する。一方、第3静電容量が所定値未満であると判定されると(ステップS710においてYES)、電極142の一部分すら液体に浸漬されていないといえるため、検出回路20は、第2異常を検出する(ステップS720)。
【0094】
このように、第3の他の実施の形態に従う液体センサにおいて第2異常が生じていない場合における第3静電容量の範囲は予め分かる。すなわち、第3静電容量を参照することによって、液体センサにおいて何らかの異常が生じていることが比較的高精度に検出され得る。第3の他の実施の形態に従う液体センサによれば、第3静電容量に基づいて液体センサS1における第2異常が検出されるため、液体センサにおける第2異常を比較的高精度に検出することができる。
【0095】
<6-4>
また、上記実施の形態に従う液体センサS1において、導電部130に含まれる配線131は、導電部110に含まれる配線111及び電極112と平行に延びている。配線111及び電極112と、配線131との両方が液体に接触していると、配線111及び電極112と、配線131との間における静電容量が液位の影響を受ける可能性がある。その結果、第2静電容量が液位の影響を受け得る。したがって、例えば、配線131と液体との直接的な接触を抑制するために、配線131の一部が基板100の内層に形成されてもよい。
【0096】
図19は、第4の他の実施の形態に従う液体センサに含まれる基板100Bを模式的に示す平面図である。
図19に示されるように、基板100Bは、導電部130Bを含んでいる。導電部130Bは、配線131Bと、複数の電極132とを含んでいる。配線131Bの一部は、基板100Bの内層に形成されている。特に、長手方向における配線111及び電極112と対応する部分において、配線131Bが基板100Bの内層に形成されている。第4の他の実施の形態に従う液体センサによれば、配線131Bの少なくとも一部が基板100Bの内層に形成されているため、第2静電容量に対する液位の影響を抑制することができる。
【0097】
<6-5>
また、上記実施の形態に従う液体センサS1においては、対象液体の温度を考慮した上で各制御が行なわれてもよい。
【0098】
図20は、第5の他の実施の形態に従う液体センサに含まれる基板100Cを模式的に示す平面図である。
図20に示されるように、基板100Cには、温度センサ150が実装されている。基板100Cが液体に浸漬された状態で、温度センサ150は液体の温度を検出するように構成されている。例えば、温度センサ150の検出結果に基づいて以下のような制御が行なわれてもよい。
【0099】
図21は、第5の他の実施の形態に従う液体センサにおける動作手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えば、温度センサ150による検出結果が継続的に検出回路20に送信されている状態で、検出回路20によって所定の周期で繰り返し実行されてもよい。
【0100】
図21を参照して、検出回路20は、温度センサ150によって検出された温度が液体センサの動作保証範囲内であるか否かを判定する(ステップS800)。動作保証範囲は、例えば、その範囲内で液体センサによる液位検出が行なわれても液体センサに含まれる各部品の劣化が過度に進まない温度範囲である。動作保証範囲は、例えば、温度の下限値及び上限値によって規定され、検出回路20において予め記憶されている。
【0101】
温度センサ150によって検出された温度が液体センサの動作保証範囲内であると判定されると(ステップS800においてYES)、検出回路20は、再びステップS800の処理を実行する。一方、温度センサ150によって検出された温度が液体センサS1の動作保証範囲内でないと判定されると(ステップS800においてNO)、検出回路20は、異常の検出、又は、液位の検出動作の停止を行なう(ステップS810)。
【0102】
第5の他の実施の形態に従う液体センサにおいては、例えば、温度に応じて動作状態が切り替えられる。より詳細には、第5の他の実施の形態に従う液体センサにおいては、予め定められた温度範囲から温度が外れた場合に検出動作が停止される。したがって、この液体センサによれば、製品劣化が過度に進むことを抑制することができる。
【0103】
また、温度に応じて電極間の距離が変化する等の理由により、第1電極部E1及び第2電極部E2の各々における静電容量は温度の影響を受ける。したがって、温度センサ150によって検出された温度に基づいて、第1及び第2静電容量の少なくとも一方が補正されてもよい。例えば、
図9のステップS200において第1及び第2静電容量が検出された後に、検出された第1及び第2静電容量が温度に基づいて補正されてもよい。その後、補正後の第1及び第2静電容量を用いてステップS210以後の処理が実行されてもよい。
【0104】
このように、第5の他の実施の形態に従う液体センサにおいては、第1静電容量及び第2静電容量の少なくとも一方が温度センサ150の検出結果に基づいて補正されてもよい。この液体センサによれば、第1静電容量及び第2静電容量の少なくとも一方に対する温度の影響が考慮されるため、温度の影響が考慮されない場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【0105】
<6-6>
また、上記実施の形態に従う液体センサS1において、液体センサS1の傾きが考慮された上で、液位が検出されてもよい。
【0106】
図22は、第6の他の実施の形態に従う液体センサS1Dにおける液位の検出手順を説明するための図である。
図22を参照して、液体センサS1Dは、液体センサ本体10と、検出回路20Dとを含んでいる。検出回路20Dは、例えば、CPU、RAM及びROMを含んでいる。検出回路20Dは、公知の種々の技術を用いることによって、第1及び第2静電容量を検出する。検出回路20Dは、検出された静電容量に基づいて液位を検出する。
【0107】
検出回路20Dは、さらに角度センサ21を含んでいる。角度センサ21は、液体センサS1Dの傾き(角度)を検出する。検出回路20Dは、角度センサ21の検出結果を用いて液位を補正する。
【0108】
例えば、液体センサS1Dが
図22の右側に示されるように傾いている場合に、液体センサS1Dの傾きが考慮されない場合には、液位L20が検出され得る。しかしながら、本来は液位L10が検出されるべきである。第6の他の実施の形態に従う液体センサS1Dにおいては、液体センサS1Dの傾きが角度センサ21によって検出され、液体センサS1Dの傾きを考慮して液位が補正される。すなわち、以下の式(4)に基づいて液位が補正される。これにより、液位L10が検出される。
L(液位)=L20×Sinθ1 ・・・(4)
【0109】
図23は、第6の他の実施の形態に従う液体センサS1Dにおける液位の補正手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、例えば、角度センサ21による検出結果が継続的に検出回路20Dに送信されている状態で、液位が検出される度に検出回路20Dによって実行されてもよい。
【0110】
図23を参照して、検出回路20Dは、角度センサ21によって検出された角度(傾き)に基づいて補正値を算出する(ステップS900)。具体的には、検出回路20Dは、角度センサ21によって検出された角度の正弦の値を算出する。検出回路20Dは、検出された液位を補正値に基づいて補正する(ステップS910)。具体的には、検出回路20Dは、ステップS900において算出された正弦の値を、検出された液位に掛け合わせることによって液位を補正する。なお、液位の検出は、上記実施の形態に従う液体センサS1と同様の方法で行なわれる。
【0111】
この液体センサS1Dによれば、検出された液位が角度センサ21の検出結果に基づいて補正されるため、液体センサの傾きが考慮されない場合と比較して、より高精度に液位を検出することができる。
【0112】
<6-7>
また、上記実施の形態に従う液体センサS1においては、第1電極部E1及び第2電極部E2において導電部110が共用された。しかしながら、第1電極部E1及び第2電極部E2の各々の構成はこれに限定されない。例えば、第1電極部E1及び第2電極部E2において導電部が共用されず、別途導電部が追加された上で、第1電極部E1及び第2電極部E2の各々が互いに完全に異なる導電部によって構成されてもよい。
【0113】
<6-8>
また、上記実施の形態に従う液体センサS1において検出される第2静電容量は、例えば、液体の劣化度の判定に用いられてもよい。例えば、最初に基板100が液体に浸漬された時の第2静電容量が検出回路20に記憶され、検出回路20が第2静電容量の変化を監視することによって、液体の劣化度の判定が行なわれてもよい。
【0114】
<6-9>
また、上記実施の形態において、静電容量を用いて行なわれた各処理は、静電容量に基づいて誘電率が算出された後に誘電率を用いることによって行なわれてもよい。
【0115】
<6-10>
また、上記実施の形態において、第2電極部E2は、一対の櫛歯電極によって構成された。しかしながら、第2電極部E2は、必ずしも一対の櫛歯電極によって構成されなくてもよい。例えば、第2電極部E2も、第1電極部E1と同様に、孔によって形成された基板100の内周面に設けられた一対の電極によって構成されてもよい。
【0116】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0117】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0118】
10 液体センサ本体、15 プラグ、20,20D 検出回路、21 角度センサ、30 ケーブル、100,100A,100B,100C 基板、101 内周面、110,120,120A,130,130B,140 導電部、111,113,121,131,131B,141 配線、112,114,122,122A,132,142 電極、115 第1部分、116 第2部分、150 温度センサ、CX1 静電容量、CX2 寄生容量、E1 第1電極部、E2 第2電極部、H1 孔、LN1,LN2,LN3,LN4 線、S1,S1D 液体センサ。