IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヌ・ティ・ティ・ソフトウェア株式会社の特許一覧

特開2024-145250家畜管理装置、家畜管理方法及びプログラム
<>
  • 特開-家畜管理装置、家畜管理方法及びプログラム 図1
  • 特開-家畜管理装置、家畜管理方法及びプログラム 図2
  • 特開-家畜管理装置、家畜管理方法及びプログラム 図3
  • 特開-家畜管理装置、家畜管理方法及びプログラム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145250
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】家畜管理装置、家畜管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20241004BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20241004BHJP
【FI】
A01K29/00 D
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057523
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102717
【氏名又は名称】NTTテクノクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】赤野間 信行
(72)【発明者】
【氏名】畠中 将徳
(72)【発明者】
【氏名】大家 眸美
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】家畜の起立困難状態の発生を防止できる技術を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様による家畜管理装置は、家畜を撮影した第1の撮影画像に基づいて、前記家畜の状態が横臥状態であるか否かを判定する第1の判定部と、前記家畜の状態が前記横臥状態であると判定された場合、前記横臥状態を継続している時間を表す経過時間が所定の第1の閾値以上であるか否かを判定する第2の判定部と、前記経過時間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記家畜の状態を前記横臥状態から伏臥状態に遷移させるための所定の刺激を前記家畜に出力する出力部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜を撮影した第1の撮影画像に基づいて、前記家畜の状態が横臥状態であるか否かを判定する第1の判定部と、
前記家畜の状態が前記横臥状態であると判定された場合、前記横臥状態を継続している時間を表す経過時間が所定の第1の閾値以上であるか否かを判定する第2の判定部と、
前記経過時間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記家畜の状態を前記横臥状態から伏臥状態に遷移させるための所定の刺激を前記家畜に出力する出力部と、
を有する家畜管理装置。
【請求項2】
前記刺激を前記家畜に出力した後の前記家畜を撮影した第2の撮影画像に基づいて、前記家畜の状態が前記伏臥状態であるか否かを判定する第3の判定部と、
前記家畜の状態が前記伏臥状態であると判定されなかった場合、前記第2の撮影画像に基づいて、前記家畜の状態が起立困難状態であるか否かを判定する第4の判定部と、
前記家畜の状態が前記起立困難状態であると判定された場合、前記家畜が前記起立困難状態であることを表す第1のアラートをユーザに通知する通知部と、
を有する請求項1に記載の家畜管理装置。
【請求項3】
前記家畜の状態が前記起立困難状態であると判定されなかった場合、前記刺激の出力回数が所定の第2の閾値以上であるか否かを判定する第5の判定部を更に有し、
前記通知部は、
前記刺激の出力回数が前記第2の閾値以上であると判定された場合、前記家畜が前記起立困難状態となる危険性があることを表す第2のアラートを前記ユーザに通知する、請求項2に記載の家畜管理装置。
【請求項4】
家畜を撮影した第1の撮影画像に基づいて、前記家畜の状態が横臥状態であるか否かを判定する第1の判定手順と、
前記家畜の状態が前記横臥状態であると判定された場合、前記横臥状態を継続している時間を表す経過時間が所定の第1の閾値以上であるか否かを判定する第2の判定手順と、
前記経過時間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記家畜の状態を前記横臥状態から伏臥状態に遷移させるための所定の刺激を前記家畜に出力する出力手順と、
をコンピュータが実行する家畜管理方法。
【請求項5】
家畜を撮影した第1の撮影画像に基づいて、前記家畜の状態が横臥状態であるか否かを判定する第1の判定手順と、
前記家畜の状態が前記横臥状態であると判定された場合、前記横臥状態を継続している時間を表す経過時間が所定の第1の閾値以上であるか否かを判定する第2の判定手順と、
前記経過時間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記家畜の状態を前記横臥状態から伏臥状態に遷移させるための所定の刺激を前記家畜に出力する出力手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、家畜管理装置、家畜管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
肥育牛では、肥育後期に起立困難(又は、起立不能と呼ばれてもよい。)が発生し易いことが知られている。起立困難を放置すると、窒息等により牛が死亡することがあるため、牛を肥育する肥育農家では、牛舎の見回り等を行って、起立困難が牛に発生していないかを確認している。これに対して、牛に装着された加速度センサのセンサ値から起立困難な状態を推定し、起立困難な状態が推定された場合はその旨をユーザに通知する技術が知られている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/039118号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では牛が起立困難な状態になったことを推定しており、起立困難な状態の発生を防止することはできない。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたもので、家畜の起立困難状態の発生を防止できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による家畜管理装置は、家畜を撮影した第1の撮影画像に基づいて、前記家畜の状態が横臥状態であるか否かを判定する第1の判定部と、前記家畜の状態が前記横臥状態であると判定された場合、前記横臥状態を継続している時間を表す経過時間が所定の第1の閾値以上であるか否かを判定する第2の判定部と、前記経過時間が前記第1の閾値以上であると判定された場合、前記家畜の状態を前記横臥状態から伏臥状態に遷移させるための所定の刺激を前記家畜に出力する出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
家畜の起立困難状態の発生を防止できる技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る家畜管理システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】牛の横臥状態及び伏臥状態の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る家畜管理処理部の機能構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る家畜管理処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。以下の実施形態では、家畜の一例として牛を想定し、牛の起立困難な状態の発生を防止すると共に、起立困難な状態が生じた場合やその危険性がある場合にその旨をユーザに通知することができる家畜管理システム1について説明する。ここで、起立困難な状態とは、例えば、牛等の家畜が脚を上に向けて藻掻いている状態のことである。起立困難な状態が続くと、牛では第一胃にガスが溜まり窒息死してしまうことがある。
【0010】
ただし、牛は家畜の一例であって、以下の実施形態が適用可能な家畜は牛に限られるものではない。
【0011】
<家畜管理システム1の全体構成例>
本実施形態に係る家畜管理システム1の全体構成例を図1に示す。図1に示すように、本実施形態に係る家畜管理システム1には、家畜管理装置10と、1以上の撮影装置20と、1以上のスピーカ30と、1以上のGW装置40と、1以上のユーザ端末50とが含まれる。また、家畜管理装置10と各GW装置40と各ユーザ端末50は、例えば、インターネット等を含む通信ネットワーク60を介して通信可能に接続される。
【0012】
家畜管理装置10は、牛70を撮影装置20によって撮影した撮影画像データに基づいて、牛70の起立困難な状態の発生を防止する。すなわち、家畜管理装置10は、当該撮影画像データから牛70が横臥と呼ばれる状態を或る程度の時間継続しているか否かを判定し、牛70が横臥状態を或る程度の時間継続している場合はスピーカ30に対して所定の音声(又は、音声に限られず、例えば、機械音等といった何等かの音であってもよい。)の出力を指示する。これは、横臥状態が長く続き、脚が天井方向を向き始めると起立困難な状態に陥る可能性があるためである。また、スピーカ30から音声を出力することによって横臥状態から伏臥と呼ばれる状態に遷移すること、また伏臥状態では起立困難な状態に陥る可能性がないことが本件発明者の知見によって確かめられたためである。
【0013】
また、家畜管理装置10は、起立困難な状態が生じたり、起立困難な状態が生じる危険性があったりする場合、起立困難な状態が生じた旨又はその危険性がある旨をユーザ端末50に通知する。なお、家畜管理装置10は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)、汎用サーバ等で実現される。
【0014】
撮影装置20は、牛舎80内で肥育されている牛70を撮影し、GW装置40を介して、その撮影によって生成した撮影画像データを家畜管理装置10に送信する。なお、撮影装置20は牛舎80内の牛70を撮影可能な場所であれば任意の場所に設置可能であるが、牛70を側面から撮影可能な場所(例えば、牛舎80の柱や壁等)に設置されることが好ましい。ただし、この設置場所は一例であって、これに限られるものではなく、例えば、牛舎80の天井等といった牛70を上方から撮影可能な場所に撮影装置20が設置されてもよい。
【0015】
撮影装置20によって生成される撮影画像データは、静止画を表すデータであってもよいし、動画を表すデータであってもよい。撮影画像データが静止画を表すデータである場合、撮影時刻を表す時刻インデックスtにおける撮影画像をxとすれば、当該撮影画像データはxと表される。一方で、撮影画像データが動画を表すデータである場合、当該撮影画像データは{x|t∈[t,t]}と表される。ここで、t及びtはそれぞれ当該撮影画像データを生成したときの撮影開始時刻を表す時刻インデックス及び撮影終了時刻を表す時刻インデックスである。なお、撮影画像データが動画を表すデータである場合、xはフレーム画像又は単にフレームとも呼ばれる。以下、時刻インデックスのことを単に「時刻」とも呼ぶことにする。
【0016】
スピーカ30は、GW装置40を介して、家畜管理装置10から受信した音声出力指示に従って音声を出力する。なお、スピーカ30は牛舎80内の牛70に対して音声を出力可能な場所であれば任意の場所に設置可能である。一例として、スピーカ30は、牛舎80の柱や壁、天井等に設置される。
【0017】
GW装置40は、撮影装置20から撮影画像データを受信し、これらの撮影画像データを家畜管理装置10に送信する。また、GW装置40は、家畜管理装置10から音声出力指示を受信し、これらの音声出力指示をスピーカ30に送信する。なお、GW装置40は、例えば、ゲートウェイ機器やIoT(Internet of Things)ゲートウェイ等と呼ばれる通信機器で実現される。
【0018】
ユーザ端末50は、牛70を管理するユーザ(例えば、牧場の運営者等)が利用する各種端末である。ユーザ端末50は、家畜管理装置10から各種通知(起立困難な状態が生じた旨又はその危険性がある旨の通知)を受信し、その通知内容をユーザに提示する。なお、ユーザ端末50は、例えば、PC、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルデバイス等で実現される。
【0019】
ここで、本実施形態に係る家畜管理装置10は、家畜管理処理部100と、記憶部200とを有する。家畜管理処理部100は、例えば、家畜管理装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサに実行させる処理により実現される。また、記憶部200は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等といった各種記憶装置により実現される。
【0020】
家畜管理処理部100は、GW装置40を介して、撮影装置20から受信した撮影画像データを記憶部200に保存する。また、家畜管理処理部100は、記憶部200に記憶されている撮影画像データを用いて、後述する家畜管理処理を実行する。家畜管理処理では、牛70の起立困難な状態の発生防止と、起立困難な状態が生じた旨又はその危険性がある旨の通知とを実現するための処理が実行される。なお、家畜管理処理部100の詳細な機能構成例については後述する。
【0021】
記憶部200は、撮影画像データを記憶する。また、記憶部200は、撮影画像データ以外にも、家畜管理処理の実行に必要な様々なデータ(例えば、後述する経過時間や音声出力回数、牛70の状態を判定するために利用される閾値等)も記憶する。
【0022】
なお、図1に示す家畜管理システム1の全体構成は一例であって、これに限られるものではない。例えば、図1では、一例として、1台の撮影装置20と、1台のスピーカ30と、1台のGW装置40と、1台のユーザ端末50とが図示されているが、複数の撮影装置20が存在してもよいし、複数のスピーカ30が存在してもよいし、複数のGW装置40が存在してもよいし、複数のユーザ端末50が存在してもよい。また、例えば、撮影装置20及びスピーカ30が家畜管理装置10とGW装置40を介さずに通信可能である場合には、GW装置40が存在しなくてもよい。更に、例えば、撮影装置20とスピーカ30は一体で構成されていてもよい。
【0023】
<横臥状態と伏臥状態>
ここで、牛70の横臥状態と伏臥状態の一例を図2に示す。横臥状態及び伏臥状態はいずれも牛70が寝た状態のことであるが、横臥状態は牛70が四肢を投げ出して横倒しになっている状態のことであり(図2(a))、伏臥状態は牛70が膝を下ろし、胸を起こした状態のことである(図2(b))。
【0024】
横臥状態が長き、牛70の脚が天井方向を向き始めると起立困難な状態に陥る可能性がある。このため、横臥状態が或る程度の時間継続した場合、牛70に起立困難状態が生じる危険性があるといえる。一方で、伏臥状態では牛70に起立困難状態が生じる危険性はない。本件発明者は、スピーカ30から音声(例えば、「おーい」等といった音声)を出力することによって横臥状態から伏臥状態に牛70の状態を遷移させることが可能であることを確かめた。このため、横臥状態が或る程度の時間継続した場合、スピーカ30から音声を出力することによって起立困難状態の発生を防止することができる。
【0025】
<家畜管理処理部100の機能構成例>
本実施形態に係る家畜管理処理部100の機能構成例を図3に示す。図3に示すように、本実施形態に係る家畜管理処理部100には、取得部101と、状態判定部102と、経過時間判定部103と、更新部104と、出力指示部105と、回数判定部106と、通知部107とが含まれる。
【0026】
取得部101は、最新の時刻tにおける撮影画像xを記憶部200から取得する。ただし、取得部101は、例えば、最新の時刻tから過去N時刻分の撮影画像x,xt-1,・・・,xt-Nを記憶部200から取得してもよい。ここで、Nは過去何時刻分の撮影画像を取得するかを表すハイパーパラメータであり、予め決められた1以上の整数が設定される。
【0027】
以下、取得部101によって取得された撮影画像をxt'(t'∈T)とする。ここで、Tは取得部101によって取得された撮影画像の時刻集合であり、最新の時刻をtとして、T={t}であってもよいし、T={t,t-1,・・・,t-N}であってもよい。
【0028】
状態判定部102は、取得部101によって取得された撮影画像xt'(t'∈T)を用いて、牛70の状態を判定する。すなわち、状態判定部102は、当該撮影画像xt'(t'∈T)を用いて、牛70の状態が横臥状態であるか否か、伏臥状態であるか否か、起立困難状態であるか否かを判定する。
【0029】
例えば、状態判定部102は、撮影画像xt'(t'∈T)を入力として当該撮影画像xt'中の牛70の状態を横臥状態又はそれ以外の状態のいずれかに分類する第1の分類器により、牛70が横臥状態であるか否かを判定する。同様に、例えば、状態判定部102は、撮影画像xt'(t'∈T)を入力として当該撮影画像xt'中の牛70の状態を伏臥状態又はそれ以外の状態のいずれかに分類する第2の分類器により、牛70が伏臥状態であるか否かを判定する。同様に、例えば、状態判定部102は、撮影画像xt'(t'∈T)を入力として当該撮影画像xt'中の牛70の状態を起立困難状態又はそれ以外の状態のいずれかに分類する第3の分類器により、牛70が起立困難状態であるか否かを判定する。
【0030】
なお、上記の第1の分類器は、例えば、牛を撮影した撮影画像と、その牛の状態が横臥状態又はそれ以外の状態のいずれかであるかを表すラベルとを対応付けたデータを学習用データとして、既存の機械学習手法により作成される。同様に、上記の第2の分類器は、例えば、牛を撮影した撮影画像と、その牛の状態が伏臥状態又はそれ以外の状態のいずれかであるかを表すラベルとを対応付けたデータを学習用データとして、既存の機械学習手法により作成される。同様に、上記の第3の分類器は、例えば、牛を撮影した撮影画像と、その牛の状態が起立困難状態又はそれ以外の状態のいずれかであるかを表すラベルとを対応付けたデータを学習用データとして、既存の機械学習手法により作成される。
【0031】
ただし、第1の分類器、第2の分類器及び第3の分類器を用いることは一例であって、これ以外の方法により牛70の状態を判定してもよい。例えば、状態判定部102は、パターンマッチング等といった画像処理技術を用いて、牛70の状態が横臥状態であるか否か、伏臥状態であるか否か、起立困難状態であるか否かを判定してもよい。
【0032】
経過時間判定部103は、状態判定部102によって牛70の状態が横臥状態であると継続して判定されている時間(以下、「横臥状態の経過時間」又は単に「経過時間」ともいう。)が予め決められた所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0033】
更新部104は、横臥状態の経過時間を更新したり、出力指示部105によって音声出力指示を送信した回数を表す「音声出力回数」を更新したりする。
【0034】
出力指示部105は、経過時間判定部103によって経過時間が予め決められた所定の閾値以上であると判定された場合、GW装置40を介して、スピーカ30に対して音声出力指示を送信する。
【0035】
回数判定部106は、音声出力回数が予め決められた所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0036】
通知部107は、状態判定部102によって牛70が起立困難状態であると判定された場合、牛70に起立困難状態が生じたことを示すアラート(以下、「起立困難アラート」ともいう。)をユーザ端末50に通知する。また、通知部107は、回数判定部106によって音声出力回数が予め決められた所定の閾値以上であると判定された場合、起立困難状態が生じる危険性があることを示すアラート(以下、「長時間横臥アラート」ともいう。)をユーザ端末50に通知する。
【0037】
<家畜管理処理>
以下、本実施形態に係る家畜管理処理について、図4を参照しながら説明する。以下では、横臥状態の経過時間及び音声出力回数はいずれも0に初期化されているものとする。なお、記憶部200には、GW装置40を介して撮影装置20から撮影画像データを受信するたびにその撮影画像データが保存される。
【0038】
家畜管理処理部100の取得部101は、撮影画像xt'(t'∈T)を記憶部200から取得する(ステップS101)。
【0039】
次に、家畜管理処理部100の状態判定部102は、上記のステップS101で取得された撮影画像xt'(t'∈T)を用いて、牛70の状態が横臥状態であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0040】
上記のステップS102で横臥状態であると判定されなかった場合(ステップS103でNO)、家畜管理処理部100の更新部104は、横臥状態の経過時間を0に初期化する(ステップS104)。
【0041】
一方で、上記のステップS102で横臥状態であると判定された場合(ステップS103でYES)、家畜管理処理部100の更新部104は、横臥状態の経過時間を更新する(ステップS105)。すなわち、現在時刻と、横臥状態の経過時間の初期化又は更新を前回行った時刻との差をΔtとしたとき、更新部104は、横臥状態の経過時間←横臥状態の経過時間+Δtにより、横臥状態の経過時間を更新する。これにより、牛70が横臥状態を継続している時間が「横臥状態の経過時間」として得られる。
【0042】
次に、家畜管理処理部100の経過時間判定部103は、横臥状態の経過時間が予め決められた閾値th以上であるか否かを判定する(ステップS106)。なお、閾値thは適宜任意の値に設定することが可能である。例えば、閾値thは、数十分程度としてもよいし、2~3時間程度としてもよい。
【0043】
上記のステップS106で横臥状態の経過時間が閾値th以上であると判定されなかった場合(ステップS106でNO)、家畜管理処理部100は、ステップS101に戻る。これにより、ステップS101以降が再度実行される。
【0044】
一方で、上記のステップS106で横臥状態の経過時間が閾値th以上であると判定された場合、(ステップS106でYES)、家畜管理処理部100の出力指示部105は、GW装置40を介して、スピーカ30に対して音声出力指示を送信する(ステップS107)。これにより、スピーカ30から所定の音声(例えば、「おーい」等といった音声)が出力され、牛70の状態が横臥状態から伏臥状態に遷移することが期待できる。
【0045】
次に、家畜管理処理部100の更新部104は、音声出力回数を更新する(ステップS108)。すなわち、更新部104は、音声出力回数←音声出力回数+1により、音声出力回数を更新する。
【0046】
次に、家畜管理処理部100の取得部101は、撮影画像xt'(t'∈T)を記憶部200から取得する(ステップS109)。
【0047】
次に、家畜管理処理部100の状態判定部102は、上記のステップS109で取得された撮影画像xt'(t'∈T)を用いて、牛70の状態が伏臥状態であるか否かを判定する(ステップS110)。
【0048】
上記のステップS110で伏臥状態であると判定された場合(ステップS111でYES)、家畜管理処理部100は、ステップS104に進む。これにより、横臥状態の経過時間が0に初期化される。なお、これは、スピーカ30からの音声出力によって牛70の状態が横臥状態から伏臥状態に遷移し、起立困難状態の発生が防止できたことを意味する。
【0049】
一方で、上記のステップS110で伏臥状態であると判定されなかった場合(ステップS111でNO)、家畜管理処理部100の状態判定部102は、上記のステップS109で取得された撮影画像xt'(t'∈T)を用いて、牛70の状態が起立困難状態であるか否かを判定する(ステップS112)。
【0050】
上記のステップS112で起立困難状態であると判定された場合(ステップS113でYES)、家畜管理処理部100の通知部107は、起立困難アラートをユーザ端末50に通知する(ステップS114)。これにより、ユーザは、牛70に起立困難状態が生じたことを知ることができる。
【0051】
一方で、上記のステップS112で起立困難状態であると判定されなかった場合(ステップS113でNO)、家畜管理処理部100の回数判定部106は、音声出力回数が予め決められた所定の閾値th以上であるか否かを判定する(ステップS115)。なお、閾値thは適宜任意の値に設定することが可能である。例えば、閾値thは、数回程度とすることが考えられる。
【0052】
上記のステップS115で音声出力回数が閾値th以上であると判定されなかった場合(ステップS115でNO)、家畜管理処理部100は、ステップS107に戻る。これにより、再度、スピーカ30から所定の音声が出力され、牛70の状態が横臥状態から伏臥状態に遷移することが期待できる。
【0053】
一方で、上記のステップS115で音声出力回数が閾値th以上であると判定された場合(ステップS115でYES)、家畜管理処理部100の通知部107は、長時間横臥アラートをユーザ端末50に通知する(ステップS116)。これにより、ユーザは、牛70が長時間横臥状態であり、起立困難状態が生じる危険性があることを知ることができる。
【0054】
<変形例>
上記の実施形態では、牛70の状態を横臥状態から伏臥状態に遷移させるためにスピーカ30から所定の音声を出力したが、牛70の状態を横臥状態から伏臥状態に遷移させることが可能な刺激であれば、音や音声以外の何等かの刺激が牛70に与えられてもよい。例えば、牛70に対して光を照射したり、軽い振動を与えたり、軽い電気的な刺激を与えたりしてもよい。
【0055】
また、音、音声、光、軽い振動、軽い電気的な刺激等といった様々な刺激の組み合わせを牛70に与えてもよい。特に、刺激を与えた回数(上記の実施形態では音声出力回数に相当)の増加に応じて刺激の組み合わせを変えてもよい。例えば、刺激を与えた回数が0回のときは1種類の刺激(例えば、音声)を与え、刺激を与えた回数が1回のときは2種類の刺激(例えば、音声と光)を与え、刺激を与えた回数が2回のときは3種類の刺激(例えば、音声と光と振動)を与えるというように、刺激を与えた回数の増加に応じて刺激の組み合わせ数を増加させてもよい。
【0056】
更に、刺激を与えた回数の増加に応じて刺激の度合い(刺激の強度)を強めてもよい。例えば、刺激を与えた回数の増加に応じて、音や音声のボリュームを上げてもよい。
【0057】
<まとめ>
以上のように、本実施形態に係る家畜管理システム1は、家畜を撮影した撮影画像データを用いてその家畜の横臥状態を判定し、横臥状態が或る程度継続した場合には横臥状態から伏臥状態に遷移させるための刺激を当該家畜に与えることができる。これにより、横臥状態が長時間継続することによって生じる起立困難状態を未然に防止することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態に係る家畜管理システム1は、起立困難状態が生じた場合やその危険性がある場合にはその旨をユーザに通知することもできる。これにより、刺激を与えても横臥状態から伏臥状態に遷移させることができなかった場合であっても、起立困難状態によって家畜が死亡してしまう事態を防止することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態に係る家畜管理システム1では、従来技術と異なり家畜に加速度センサ等のセンサ装置を装着する必要がない。このため、例えば、家畜毎にセンサ装置を装着する作業が不要になり、特に家畜数が多い場合にユーザの手間を削減することもできる。また、家畜の動作等によってセンサ装置が脱落して起立困難状態の推定が不可能になる等といった事態が起こらないといった利点もある。
【0060】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 家畜管理システム
10 家畜管理装置
20 撮影装置
30 スピーカ
40 GW装置
50 ユーザ端末
60 通信ネットワーク
70 牛
80 牛舎
100 家畜管理処理部
101 取得部
102 状態判定部
103 経過時間判定部
104 更新部
105 出力指示部
106 回数判定部
107 通知部
200 記憶部
図1
図2
図3
図4