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特開2024-145254エピハロヒドリン系ゴムおよびゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145254
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】エピハロヒドリン系ゴムおよびゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/24 20060101AFI20241004BHJP
   C08L 71/03 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08G65/24
C08L71/03
C08K5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057531
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 尚也
(72)【発明者】
【氏名】野路 将義
(72)【発明者】
【氏名】矢野 倫之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4J002AE04Y
4J002CH02X
4J002CH04W
4J002DE010
4J002DJ000
4J002EF050
4J002EK000
4J002EV120
4J002EV140
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD170
4J002GN00
4J002GQ00
4J005AA02
4J005AA10
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ブリードアウトが生じず、計量・加工時のハンドリング性、加工性を保持しつつゴム物性とのバランスもかね備える、エピハロヒドリン系ゴムを提供する。
【解決手段】重量平均分子量(Mw)が3万~20万である、エピハロヒドリン系ゴムを提供する。また、重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴム100質量部に、重量平均分子量(Mw)が3万~20万であるエピハロヒドリン系ゴム10~150質量部を含有することを特徴とするゴム組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量(Mw)が3万~20万である、エピハロヒドリン系ゴム。
【請求項2】
アルキレンオキサイド、エピハロヒドリンから選択される化合物に由来する構成単位を少なくとも1つ以上含み、アルキレンオキサイド:エピハロヒドリンのモル比が0:100~90:10の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のエピハロヒドリン系ゴム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエピハロヒドリン系ゴムが、重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴムの分解物であるエピハロヒドリン系ゴム。
【請求項4】
重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴム100質量部に、請求項1又は2に記載のエピハロヒドリン系ゴム10~150質量部を含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項5】
重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴムを、酸化剤存在下反応させることを含む、重量平均分子量(Mw)が3万~20万である、エピハロヒドリン系ゴムの製造方法。
【請求項6】
前記酸化剤が、有機過酸化物系、無機過酸化物系からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の重量平均分子量(Mw)が3万~20万である、エピハロヒドリン系ゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピハロヒドリン系ゴムおよびゴム組成物に関する。さらに詳しくは、ブリードアウトが生じず、計量・加工時のハンドリング性、加工性を保持しつつゴム物性とのバランスもかね備える、エピハロヒドリン系ゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
エピクロロヒドリン系ゴムをはじめとするエピハロヒドリン系ゴムは、優れた耐熱性、耐油性、耐燃料油性、耐オゾン性、低温特性、半導電特性などを有していることから、自動車用ゴム部品や電気、電子機器用ゴム部材として広く利用されている。
【0003】
エピハロヒドリン系ゴムはコンパウンドに加工される際に、カーボンブラック等の充填剤の存在下では粘度が上昇する。通常は、コンパウンドの粘度を下げ柔軟性を持たせるため、可塑剤や軟化剤等が用いられるが、加工性は改善されるものの、ゴム組成物表面にブリードアウトが生じたり、圧縮永久歪みや常態物性といったゴム物性が悪化するという問題があった。
【0004】
特許文献1には、可塑剤の代わりに低分子量エピクロロヒドリン系重合体を用いるゴム組成物が開示されているが、実施例で示されたいずれにおいても、エピクロロヒドリン系ゴム単独またはNBR共重合体とのブレンド100重量部に対して、充填剤としての炭酸カルシウムが30重量部含まれる構成となっており、ゴム組成物としての加工性と常態物性の両方のバランスを良好とするのに、純粋に低分子量エピクロロヒドリン系重合体だけが効いているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-087892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ブリードアウトが生じず、計量・加工時のハンドリング性、加工性を保持しつつゴム物性とのバランスもかね備える、エピハロヒドリン系ゴムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、重量平均分子量(Mw)が3万~20万であるエピハロヒドリン系ゴムを用いることで、上記目的を達成できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、重量平均分子量(Mw)が3万~20万であるエピハロヒドリン系ゴムを提供する。
【0009】
上記エピハロヒドリン系ゴムは、アルキレンオキサイド、エピハロヒドリンから選択される化合物に由来する構成単位を少なくとも1つ以上含み、アルキレンオキサイド:エピハロヒドリンのモル比が0:100~90:10の範囲であることが好ましい。
【0010】
さらに、上記エピハロヒドリン系ゴムは、重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴムの分解物であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴム100質量部に、重量平均分子量(Mw)が3万~20万であるエピハロヒドリン系ゴム10~150質量部を含有することを特徴とするゴム組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴムを、酸化剤存在下で反応させることを含む、重量平均分子量(Mw)が3万~20万であるエピハロヒドリン系ゴムの製造方法を提供する。
【0013】
上記酸化剤は有機過酸化物系、無機過酸化物系からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムはおよびゴム組成物は、ブリードアウトが生じず、計量・加工時のハンドリング性、加工性を保持しつつ良好な圧縮永久歪み性および常態物性を示す。
【0015】
本明細書では、これより以降、内容を分かりやすくするため、重量平均分子量(Mw)が3万~20万であるエピハロヒドリン系ゴムを「エピハロヒドリン系ゴムI」とし、重量平均分子量(Mw)が60万~300万であるエピハロヒドリン系ゴムを「エピハロヒドリン系ゴムII」と表記する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のゴム組成物は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、ポリスチレン換算により測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、重量平均分子量(Mw)が3万~20万であるエピハロヒドリン系ゴムIを少なくとも含有する。
【0017】
エピハロヒドリン系ゴムI
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、3万以上であることがよりさらに好ましく、4万以上であることが特に好ましく、上限は20万以下であることが好ましく、15万以下であることがより好ましく、10万以下であることが特に好ましい。本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、示差屈折計(RI検出器)を用いて測定し、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、ポリスチレン換算により測定する。
【0018】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの重量平均分子量(Mw)の具体的な測定方法としては、株式会社島津製作所GPC装置RID-6A(示差屈折計(RI検出器))、ShodexカラムKF-806L、KF-803L、KF-801を用いて、流量1.0mL/min、濃度を10mgエピハロヒドリン系ゴムI/テトラヒドロフラン(THF)8mlとし、注入量50μL、カラム温度40℃で測定することが示される。
【0019】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量1万以下の割合の下限は1%以上であることが好ましく、5%以上であることが好ましく、7%以上であることが特に好ましく、上限は50%未満であることが好ましく、40%以下であることが好ましく、30%以下であることが好ましい。分子量1万以下の割合は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、検出に示差屈折計(RI検出器)を使用した、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)から求められるグラフに基づいており、グラフの横軸は分子量の対数、縦軸は積分分布値である。すなわち、GPCにより測定されるエピハロヒドリン系ゴムIにおける分子量1万以下の割合とは、ポリスチレンの分子量を測定して得られた検量線に基づいて決定されるエピハロヒドリン系ゴムIの分子量分布全体のピーク面積に対する、分子量1万以下の分子量成分のピーク面積の割合である。エピハロヒドリン系ゴムIにおける分子量1万以下の割合を10%以上にすることで、計量・加工時のハンドリング性が損なわれず、粘度を十分に下げることができる。エピハロヒドリン系ゴムIにおける分子量1万以下の割合が50%を超えると、後述のゴム組成物の製造において、混練時の相溶性が悪く、ブリードアウトが発生し、ゴムの加工性や常態物性が悪化する。
【0020】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの室温(23℃)での性状としては、固体状態などが例示できる。固体状態(ロウ状)であると、ゴム組成物の製造において、計量時のハンドリング性が良く、加工性を悪化させる充填剤の配合量を抑えることが出来、得られるゴム組成物の加工性や常態物性も良好となる。また、可塑剤や、液状のエピハロヒドリン系ゴムを用いた時と比べて、ゴム表面へのブリードアウトの発生が抑制される。
【0021】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIは、アルキレンオキサイド、エピハロヒドリンから選択される化合物に由来する構成単位を少なくとも1つ以上含む。
【0022】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIにおいて、アルキレンオキサイドを具体的に例示すると、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、ヘキシレンオキサイド等を挙げることができ、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドがより好ましく、エチレンオキサイドがさらに好ましい。
【0023】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIにおいて、アルキレンオキサイドはこれら1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIにおいて、エピハロヒドリンを具体的に例示すると、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリン等を挙げることができ、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンがより好ましく、エピクロロヒドリンがさらに好ましい。
【0025】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIにおいて、エピハロヒドリンはこれら1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIにおいて、アルキレンオキサイド:エピハロヒドリンのモル比は0:100~90:10の範囲である。より好ましくはアルキレンオキサイド:エピハロヒドリンのモル比=0:100~80:20、さらに好ましくは0:100~70:30である。
【0027】
エピハロヒドリン系ゴムIの製造方法
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIは、アルキレンオキサイドおよび/またはエピハロヒドリンを原料として重合によって得られるものでも良いし、重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴムIIの分解によって得られる物でも良いが、所望の分子量への調整が容易であり、製造設備が簡便であることから、エピハロヒドリン系ゴムIIの分解物であることがより好ましい。
【0028】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの重合による製造方法としては、特に限定されないが、触媒としてオキシラン化合物を開環重合させ得るものを使用し、重合温度は、例えば、-20~100℃の範囲である。この重合は、溶液重合、スラリー重合のいずれでもよい。前記触媒としては、例えば、有機アルミニウムを主体としこれに水やリンのオキソ酸化合物やアセチルアセトン等を反応させた触媒系、有機亜鉛を主体としこれに水を反応させた触媒系、金属ハロゲン触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系(例えば米国特許第3,773,694号明細書に記載の有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系)等が挙げられる。なお、このような製法により、共重合させる場合、これらの成分を実質上ランダムに共重合することが好ましい。どのような製造方法であっても、分子量の制御方法は周知であり、低分子量のものとそうでないものとを適当な割合で混合すれば、本発明のエピハロヒドリン系ゴムIを製造できる。
【0029】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIを分解により得るには、エピハロヒドリン系ゴムIIを酸化剤存在下で反応させることが例示できる。
【0030】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの製造において、分解物を得る際に用いられるエピハロヒドリン系ゴムII(出発原料)としては、エピハロヒドリン-アルキレンオキシド共重合体、エピハロヒドリン単独重合体などがあり、市販品としては、例えば、株式会社大阪ソーダ製のエピクロマーC(エピクロロヒドリン-エチレンオキシド共重合体、エピクロロヒドリンに基づく構成単位:50mol%、エチレンオキサイドに基づく構成単位:50mol%)、エピクロマーH(エピクロロヒドリン単独重合体)などが好適に用いられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの製造において、分解物を得る際に用いられる酸化剤としては、有機過酸化物系、無機過酸化物系などの過酸化物、また、空気、酸素など気体が挙げられるが、取り扱いの観点から、有機過酸化物系が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、過酸化物を用いる場合は、反応系内に添加して分解反応を行えばよく、気体を用いる場合は、反応系内を気体の雰囲気下で分解反応を行えばよい。反応系内を気体の雰囲気下で行う場合の反応系内の気体濃度は適宜適当すればよいが、具体的には、1%~100%であればよい。
【0032】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの製造において例示される有機過酸化物としては、tert-ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3,-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、1,1-tert-ブチルペルオキシシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジtert-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジtert-ジブチルペルオキシヘキシン-3、1,3-ビスtert-ブチルペルオキシイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジベンゾイルペルオキシヘキサン、1,1-ビスtert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビスtert-ブチルペルオキシバレレート、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシドイソブチレート、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、tert-ブチルペルオキシアリルモノカルボナート、p-メチルベンゾイルペルオキシド、1,4-ビス[(tert-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼンが挙げられる。これらの中では、ジクミルペルオキシド、1,3-ビスtert-ブチルペルオキシイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジtert-ブチルペルオキシヘキサンが好ましく、1,3-ビスtert-ブチルペルオキシイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジtert-ブチルペルオキシヘキサンがより好ましい。
【0033】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの製造において例示される無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系等が挙げられる。
【0034】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの製造において用いられる酸化剤の使用量としては、エピハロヒドリン系ゴムII(出発原料)100質量部に対して、0.1~10質量部が挙げられる。好ましくは0.2~8質量部であり、より好ましくは0.5~5質量部である。酸化剤の使用量が10質量部を超えるとエピハロヒドリン系ゴムIIの分解が進行しすぎ、所望の分子量が得られない観点で好ましくなく、0.1質量部未満であると得られるエピハロヒドリン系ゴムIIの分子量が下がらないため好ましくない。
【0035】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの分解による製造方法において、反応温度は、例えば、25~300℃の範囲であり、反応時間は1~60分である。反応温度や反応時間は用いる過酸化物の半減期温度に応じて適宜変更することができる。
【0036】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの分解による製造方法において、条件には制限はないが、常圧~100MPaの圧力下で行ってよく、常圧下で行なうことが好ましい。また必要に応じて溶媒を使用しても良いが、溶媒を使用しないことがより好ましい。
【0037】
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIの分解による製造方法において、当該分解反応で用いられる好適な実験装置としては、ギアオーブン、定温乾燥機、電気炉が挙げられるがいずれで行ってもよい。所望の分子量に合わせて反応温度・反応時間を適宜調整することにより、本発明のエピハロヒドリン系ゴムIを簡便に製造できる。
【0038】
ゴム組成物
本発明のエピハロヒドリン系ゴムIを含むゴム組成物は、重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴムIIを100質量部に対し、重量平均分子量(Mw)が3万~20万であるエピハロヒドリン系ゴムIを10~150質量部を含有する。
【0039】
本発明のゴム組成物に用いられるエピハロヒドリン系ゴムIIは、エピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド共重合体、エピクロロヒドリン-プロピレンオキシド共重合体、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-プロピレンオキシド-アリルグリシジルエーテル四元共重合体等のこれらの単独重合体又は共重合体を1種、又は2種以上併用して使用することができる。これらの単独重合体又は共重合体の市販品としては、例えば、株式会社大阪ソーダ製のエピクロマーH、エピクロマーC、エピクロマーCGシリーズ、エピクロマーD、エピクロマーDG、エピオンシリーズ等を例示することができる。
【0040】
本発明のゴム組成物に用いられるエピハロヒドリン系ゴムIIの重量平均分子量(Mw)の具体的な測定方法としては、株式会社島津製作所GPC装置RID-6A(示差屈折計(RI検出器))、ShodexカラムKD-807、KD-806M、KD-803を用いて、流量1.0mL/min、濃度を10mgエピハロヒドリン系ゴムII/ジメチルホルムアミド(DMF)8mlとし、注入量50μL、カラム温度60℃で測定することが例示される。
【0041】
本発明のゴム組成物において、エピハロヒドリン系ゴムIIを100質量部に対し、エピハロヒドリン系ゴムIは10~150質量部であり、好ましくは10~140質量部であり、より好ましくは20~120質量部である。10質量部未満だと粘度の低下効果が限定的であり、150質量部を超えると圧縮永久歪みや引張物性が悪化する観点から好ましくない。
【0042】
本発明のゴム組成物には、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の配合剤、例えば、滑剤、老化防止剤、受酸剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤や光安定剤等の添加剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、難燃剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋剤、素練り促進剤等を更に任意に配合できる。さらに本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われている、ゴム、樹脂等のブレンドを行うことも可能である。
【0043】
前記滑剤としては、具体的には、例えば、パラフィン・ワックス、炭化水素系ワックスなどのパラフィンおよび炭化水素樹脂;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸;ステアロアミド、オレイル・アミドなどの脂肪酸アミド;n-ブチル・ステアレートなどの脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪アルコール;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。滑剤を含有する場合、その含有量は、エピハロヒドリン系ゴムIとエピハロヒドリン系ゴムIIの合計100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0044】
前記老化防止剤として、公知の、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオ尿素系老化防止剤、有機チオ酸系老化防止剤、亜リン酸系老化防止剤が例示され、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤であり、より好ましくはジチオカルバミン酸塩系老化防止剤である。老化防止剤を含有する場合、その含有量は、エピハロヒドリン系ゴムIとエピハロヒドリン系ゴムIIの合計100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましい。
【0045】
前記受酸剤としては、架橋剤に応じて公知の受酸剤を使用でき、金属化合物及び/又は無機マイクロポーラス・クリスタルが用いられる。
【0046】
金属化合物としては、周期表第II族(2族および12族 金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第IV族(4族および14族)の非鉛系金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等の金属化合物が挙げられる。
【0047】
前記、金属化合物の具体例としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ナトリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸錫、等を挙げることができる。特に好ましい受酸剤としては酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰が挙げられる。
【0048】
無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体を意味し、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミナホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、ハイドロタロサイト類、チタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましい受酸剤としては、ハイドロタルサイト類が挙げられる。
【0049】
受酸剤を含有する場合、その含有量は、エピハロヒドリン系ゴムIとエピハロヒドリン系ゴムIIに合計100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、1~8質量部がより好ましい。
【0050】
前記充填剤としては、公知の充填剤を使用することができ、具体的には炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、カーボンファイバー、グラスファイバー、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの中では、カーボンブラック、酸化マグネシウム、シリカが好ましく、カーボンブラック、酸化マグネシウムがより好ましい。充填剤を含有する場合、その含有量は、エピハロヒドリン系ゴムIとエピハロヒドリン系ゴムIIに合計100質量部に対して、1~200質量部が好ましく、5~100質量部がより好ましい。
【0051】
前記架橋促進剤としては3級アミンが例示できる。3級アミンの具体例としては、脂肪族3級アミン、ジチオカルバミン酸塩、ジアザビシクロアルケン化合物などが挙げられる。これらの中で、常態物性、耐熱性の観点からは、ジアザビシクロアルケン化合物が好ましい。
【0052】
脂肪族3級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミンなどが挙げられる。
【0053】
ジチオカルバミン酸塩の具体例としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄等が挙げられる。
【0054】
ジアザビシクロアルケン化合物の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン-5、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタンやこれらのp-トルエンスルホン酸塩、フェノール塩、フェノール樹脂塩、オルトフタル酸塩、ギ酸塩、オクチル酸塩、ナフトエ酸塩などが挙げられる。これらの中で、常態物性、取り扱いの観点からは、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7のナフトエ酸塩およびフェノール樹脂塩が好ましい。
【0055】
架橋促進剤を含有する場合、その含有量は、エピハロヒドリン系ゴムIとエピハロヒドリン系ゴムIIに合計100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0056】
前記架橋遅延剤としてはN-シクロヘキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、有機亜鉛化合物、酸性シリカ等を挙げられる。架橋遅延剤を含有する場合、その含有量は、エピハロヒドリン系ゴムIとエピハロヒドリン系ゴムIIに合計100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0057】
前記架橋剤としては、例えば、ポリアミン系架橋剤、チオウレア系架橋剤、チアジアゾール系架橋剤、メルカプトトリアジン系架橋剤、ピラジン系架橋剤、キノキサリン系架橋剤、ビスフェノール系架橋剤等を挙げることができる。
【0058】
ポリアミン系架橋剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p-フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等が挙げられる。
【0059】
チオウレア系架橋剤としては、エチレンチオウレア、1,3-ジエチルチオウレア、1,3-ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等が挙げられる。
【0060】
チアジアゾール系架橋剤としては、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール-5-チオベンゾエート等が挙げられる。
【0061】
メルカプトトリアジン系架橋剤としては、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-メトキシ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ジエチルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-シクロヘキサンアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-アニリノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-フェニルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン等が挙げられる。
【0062】
ピラジン系架橋剤としては、2,3-ジメルカプトピラジン誘導体等があげられ、2,3-ジメルカプトピラジン誘導体を例示すると、ピラジン-2,3-ジチオカーボネート、5-メチル-2,3-ジメルカプトピラジン、5-エチルピラジン-2,3-ジチオカーボネート、5,6-ジメチル-2,3-ジメルカプトピラジン、5,6-ジメチルピラジン-2,3-ジチオカーボネート等が挙げられる。
【0063】
キノキサリン系架橋剤としては、2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体等があげられ、2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体を例示すると、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-エチル-2,3-ジメルカプトキノキサリン、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート等が挙げられる。
【0064】
ビスフェノール系架橋剤としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、1,1-シクロヘキシリデン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)、2-クロロ-1,4-シクロヘキシレン-ビス (4-ヒドロキシベンゼン)、2,2-イソプロピリデン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールA)、ヘキサフルオロイソプロピリデン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールAF)および2-フルオロ-1,4-フェニレン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)等が挙げられる。
【0065】
架橋剤を含有する場合、その含有量は、エピハロヒドリン系ゴムIとエピハロヒドリン系ゴムIIに合計100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0066】
ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物の製造方法としては、従来ゴム加工の分野において利用されている任意の手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を用いることができる。
【0067】
その製造手順としては、ゴム加工の分野において行われている通常の手順で行うことができる。例えば、最初にゴム成分のみを混練りし、次いで架橋剤、架橋促進剤以外の配合剤を投入したA練りコンパウンドを作成し、その後、架橋剤、架橋促進剤を投入するB練りを行う手順で行うことができる。
【0068】
このようにして得られる本発明のゴム組成物は、加工時においては、ロール加工性に優れる。本発明のゴム組成物を厚さ2~2.5mm程度のシート(未架橋シート)にしたときの温度125℃におけるスコーチタイムt5(JIS K6300)は60分以下であり、好ましくは5分以上60分以下であり、より好ましくは5.5分以上60分以下であり、さらに好ましくは6分以上55分以下である。スコーチタイムt5が長すぎると架橋速度が遅く、完全に架橋するまでに時間を要し、良好な架橋物性および接着性が得られなくなる場合がある。なお、スコーチタイムt5は、架橋剤や架橋促進剤の種類や含有量などを調整することにより所望の値に調整することができる。
【0069】
本発明のゴム組成物は、通常100~250℃に加熱することで、ゴム架橋物とすることができる。架橋時間は温度によって異なるが、0.5~300分の間で行われるのが普通である。
【0070】
一般的な架橋成形方法は、架橋と成形を一体的に行う方法や、先に成形した架橋性ゴム組成物に改めて加熱することで架橋物とする方法のほか、先に加熱して架橋物としたゴム架橋物を成形のために加工を施す方法のいずれでもよい。架橋成形の具体的な方法としては、金型による圧縮成形、射出成形、スチーム缶、エアーバス、赤外線、あるいはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0071】
このようにして得られるゴム架橋物は、上記本発明のゴム組成物を用いて得られるものであるため、加工時においては、ロール加工性に優れ、かつ、架橋物とした場合における、常態物性に優れるものである。
【0072】
本発明のゴム架橋物は、良好な加工性、常態物性、ブリードアウトが抑制されるため、レーザープリンタ、コピー機における現像、帯電、転写ロール、自動車用ホース材料、チューブ材料、マウント材料、シール材料に好適に用いられる。
【0073】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。物性及び特性の試験、評価は以下のようにして行った。
【実施例0074】
(ムーニー粘度(ML1+4、100℃))
ゴム組成物について、JIS K6300の未架橋ゴム物理試験方法のムーニー粘度試験に従って、東洋精機社製 Mooney Viscometer AM-3を用いて、測定温度100℃においてムーニー粘度(ML1+4)を測定した。
【0075】
(スコーチタイムt5)
ゴム組成物をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2~2.5mmの未架橋ゴムシートを作製し、JIS K6300に従い、東洋精機社製MooneyViscometerAM-3を用いて125℃の条件にて、スコーチタイムt5(測定開始時から、ムーニー粘度の最低値(Vm)と比較して、ムーニー粘度が5ポイント上昇するまでの時間)を測定した。スコーチタイムt5が5分以上であれば、良好な加工安定性および成形時の流動性が得られる。一方で、スコーチタイムt5が5分より短いと、加工中に架橋による硬化が始まるため、成形時の流動性が得られず、良好な外観を有した架橋物が得られなくなる場合がある。
【0076】
(圧縮永久歪み)
ゴム組成物を試験片作製用金型にて170℃で20分プレス処理し、さらにこれをエアオーブン150℃で2時間加熱し、直径約29mm、高さ約12.5mmの円柱状のゴム架橋物を得た。得られたゴム架橋物を用い、JIS K6262記載の方法に準じ、125℃、72時間の試験条件で行った。
【0077】
(常態物性)
得られた架橋物を用い、精密万能試験機(株式会社島津製作所:オートグラフAGS-5kNX)を用いて、引張試験および硬さ試験の評価を行った。引張試験はJIS K6251、硬さ試験はJIS K6253に記載の方法に準じて行った。
【0078】
(ブリードアウト)
ゴム表面のブリードアウトは、厚さ2mmの架橋ゴムシートを作成し、目視にて評価した。
【0079】
まず、エピハロヒドリン系ゴムIそのものの評価を行うために、後述の製造例1~3のエピハロヒドリン系ゴムI-1、I-2、I-3を製造し、充填剤等がない状態でゴム組成物にした際の加工性を評価した。
(使用原料)
<エピハロヒドリン系ゴムI-1;製造例1>
・エピハロヒドリン系ゴムII:エピクロマーC(株式会社大阪ソーダ製、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド共重合体、エピクロロヒドリンに基づく構成単位:50mol%、エチレンオキサイドに基づく構成単位:50mol%)

<エピハロヒドリン系ゴムI-2;製造例2>
・エピハロヒドリン系ゴムII:エピクロマーH(株式会社大阪ソーダ製、エピクロロヒドリン単独重合体)

・有機過酸化物:パーブチルP(日油株式会社製、1,3-ビスtert-ブチルペルオキシイソプロピルベンゼン) ※ 製造例1~2共通

<エピハロヒドリン系ゴムI-3;製造例3>
・エピクロロヒドリン(株式会社大阪ソーダ製)
・エチレンオキサイド(株式会社大阪ソーダ製)
・エチレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・五塩化アンチモン(Sigma-Aldrich製)
・塩化メチレン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0080】
[製造例1]
エピハロヒドリン系ゴムII(エピクロマーC)100質量部に対して、有機過酸化物(パーブチルP)を1質量部を添加し、ギヤー老化試験機(株式会社マイズ試験機)」にて180℃で15分加熱処理を行い、ロウ状の黄褐色固体(エピハロヒドリン系ゴムI-1)を定量的に得た。エピハロヒドリン系ゴムI-1について、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、ポリスチレン換算により測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が6万であり、分子量1万以下の割合は16%であった。
【0081】
[製造例2]
エピハロヒドリン系ゴムIIとしてエピクロマーCをエピクロマーHに変更し、製造例1と同様の条件で、加熱処理を行い、ロウ状の黄褐色固体(エピハロヒドリン系ゴムI-2)を定量的に得た。エピハロヒドリン系ゴムI-2について、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、ポリスチレン換算により測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定したところ、エピハロヒドリン系ゴムI-2の重量平均分子量(Mw)は6万であり、分子量1万以下の割合は14%であった。
【0082】
[製造例3]
モレキュラーシーブスで乾燥させたエピクロロヒドリン300gに、エチレングリコール0.12g添加し、五塩化アンチモン0.15gを塩化メチレン12mlに溶解させ、反応温度35~45℃を一定保ちながら1時間かけて滴下した。5時間反応させた後水を1g添加して重合停止し、未反応モノマーを減圧留去することで粘稠な液状の黄色ポリマー(エピハロヒドリン系ゴムI-3)112g(収率37%)を得た。エピハロヒドリン系ゴムI-3について、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、ポリスチレン換算により測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定したところ、エピハロヒドリン系ゴムI-3の重量平均分子量(Mw)は2万であり、分子量1万以下の割合は51%であった。
【0083】
製造例1~3で得られたエピハロヒドリン系ゴムI-1、I-2、I-3を用いて、その他の配合物を添加しない状態で表1の配合表に基づき、参考例1、実施例1~4、比較例1に記載の各ゴム組成物を作成した。練り条件は、参考例1は60ccの密閉式混練混練機(東洋精機株式会社:ラボプラストミル、ローラーミキサー)、温度100℃、充填率75%、回転数40rpmでエピハロヒドリン系ゴムII(エピクロマーCを)投入してから排出までは3分とした。実施例1~4および比較例1については、エピハロヒドリン系ゴムII(エピクロマーC)を投入して1分経過ののち、エピハロヒドリン系ゴムI-1、I-2、I-3を各々投入して、トータルで3分経過後に排出する条件とした他は、参考例1と同様の条件にて練り作業を行った。エピハロヒドリン系ゴムII(エピクロマーC)とエピハロヒドリン系ゴムI-1、I-2、I-3の分散性および、得られた各ゴム組成物のムーニー粘度を測定した。結果を表1に示す、なお、分散性の評価基準は下記の通りとした。
<分散性の評価基準>
○:分散しトルクがかかる
×:分散せずトルクがかからない
【0084】
【表1】
【0085】
固体のエピハロヒドリン系ゴムI-1およびエピハロヒドリン系ゴムI-2を用いた実施例1~4では、エピハロヒドリン系ゴムII(エピクロマーC)100質量部に対して、30質量部まで配合量を増やすのに比例して、ムーニー粘度が低下し、加工性が向上していることが分かった。一方、粘稠な液状であるエピハロヒドリン系ゴムI-3を用いた比較例1では、ゴムが細かく砕けた状態となり分散性が悪く、トルクがかからず十分に分散が出来なかった。そのためムーニー粘度の測定は出来なかった。
【0086】
固体のエピハロヒドリン系ゴムI(エピハロヒドリン系ゴムI-1およびエピハロヒドリン系ゴムI-2)にて加工性向上の確認ができたので、充填剤等を含めた実用配合のゴム組成物を作成し、ゴム物性、ゴム表面のブリードアウトの有無について確認を行なった。
【0087】
(使用原料)
Aコンパウンド
・エピハロヒドリン系ゴムI-1(重量平均分子量(Mw):6万、分子量1万以下の割合:16%)
・エピハロヒドリン系ゴムII:エピクロマーC(株式会社大阪ソーダ製、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド共重合体、エピクロロヒドリンに基づく構成単位:50mol%、エチレンオキサイドに基づく構成単位:50mol%)
・滑剤:スプレンダーR-300V(花王株式会社製、ソルビタンモノステアレート)
・老化防止剤:ノクラックNBC(大内新興化学株式会社製、ジブチルカルバミン酸ニッケル)
・カーボンブラック(充填剤):シーストSO(東海カーボン株式会社製、ASTM D1765による分類:N550)
・受酸剤:MgO#150(協和化学工業株式会社製、酸化マグネシウム)、スタビエースHT-1(堺化学工業社製、ハイドロタルサイト)
・架橋促進剤:P-152(株式会社大阪ソーダ製、DBUのフェノール樹脂塩)

Bコンパウンド
・架橋剤:DAISONET XL-21S(株式会社大阪ソーダ製、キノキサリン系架橋剤)
・架橋遅延剤:リターダーCTP(大内新興化学株式会社製、N-シクロヘキシルチオフタルイミド)
【0088】
表2の配合表に基づいて、各配合剤をニーダーで混練(温度100℃)し、温度170℃で15分間加圧プレス、150℃で2時間熱空気架橋を行うことで、参考例2および実施例5~6のゴム架橋物のシートを得た。加工性(ムーニー粘度;ML1+4、ムーニー粘度の最低値;Vm、スコーチタイム;t5)、常態物性(引張応力;M100、引張強度;Tb、伸び;Eb、硬さ;Hs)、圧縮永久歪み試験(CS)の結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
表2の結果より、固体のエピハロヒドリン系ゴムI-1を配合しなかった参考例2に比べて、実施例5~6ではムーニー粘度が下がり、加工性が向上したことが分かった。
Vmについても同様の傾向で、エピハロヒドリン系ゴムI-1を配合しなかった参考例2に比べて、実施例5~6では半分程度まで下げることが出来、良好な加工性を有していることが分かった。
常態物性についてはエピハロヒドリン系ゴムI-1を配合しなかった参考例2と比較しても良好な常態物性を保持していることが確認できた。
圧縮永久歪み試験では、実施例6において参考例2と比較し同等の結果となった。
参考例2、実施例5~6で得られた各ゴム架橋物のシート表面は、いずれもブリードアウトが観察されず、エピハロヒドリン系ゴムIを用いたゴム組成物はゴムの加工性を向上させつつも、常態物性を保ちつつブリードアウトも発生しないことが明らかになった。
【0091】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]重量平均分子量(Mw)が3万~20万である、エピハロヒドリン系ゴム。
[付記2]アルキレンオキサイド、エピハロヒドリンから選択される化合物に由来する構成単位を少なくとも1つ以上含み、アルキレンオキサイド:エピハロヒドリンのモル比が0:100~90:10の範囲であることを特徴とする、付記1に記載のエピハロヒドリン系ゴム。
[付記3]付記1又は2に記載のエピハロヒドリン系ゴムが、重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴムの分解物であるエピハロヒドリン系ゴム。
[付記4]重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴム100質量部に、付記1~3のいずれか1つに記載のエピハロヒドリン系ゴム10~150質量部を含有することを特徴とするゴム組成物。
[付記5]重量平均分子量(Mw)が60万~300万のエピハロヒドリン系ゴムを、酸化剤存在下反応させることを含む、重量平均分子量(Mw)が3万~20万である、エピハロヒドリン系ゴムの製造方法。
[付記6]前記酸化剤が、有機過酸化物系、無機過酸化物系からなる群より選択される少なくとも1種である、付記5に記載の重量平均分子量(Mw)が3万~20万である、エピハロヒドリン系ゴムの製造方法。