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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145278
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】冷却庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20241004BHJP
   F25D 23/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F25D23/00 302C
F25D23/02 305Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057559
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】大井 慎典
(72)【発明者】
【氏名】山地 亮
(72)【発明者】
【氏名】山岸 達矢
【テーマコード(参考)】
3L102
3L345
【Fターム(参考)】
3L102JA01
3L102KA01
3L102KC02
3L102KC06
3L102KC07
3L102LE04
3L345AA02
3L345AA12
3L345BB01
3L345DD42
3L345DD51
3L345EE13
3L345EE45
3L345EE53
3L345FF14
3L345GG03
3L345KK02
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】密閉性の低下を抑制しつつ庫内の負圧を軽減することのできる冷却庫を提供する。
【解決手段】冷却庫1は、貯蔵室10を有する本体部50と、本体部50に取り付けられている扉11とを備えている。扉11には、閉状態のときに貯蔵室10内の密閉性を高める扉パッキン45が取り付けられている。冷却庫1には、扉11の開閉状態を検知する検知部44と、負圧解消機構61とが備えられており、扉11が閉状態となったことを検知部44が検知すると、負圧解消機構61は、扉パッキン45の一部を本体部50の間口50aから一定期間引き離すように動作させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有する本体部と、
前記本体部に取り付けられている扉と、
前記扉に取り付けられ、前記扉が閉状態のときに前記貯蔵室内の密閉性を高める扉パッキンと、
前記扉の開閉状態を検知する検知部と、
前記扉が閉状態となったことを前記検知部が検知すると、前記扉パッキンの一部を前記本体部の間口から一定期間引き離すように動作させる負圧解消機構と
を備えている冷却庫。
【請求項2】
前記扉は、前記本体部に対して前記扉を引き付けるマグネットを有し、
前記負圧解消機構は、電磁石を有している、
請求項1に記載の冷却庫。
【請求項3】
前記扉は、前記本体部に対して前記扉を引き付けるマグネットを有し、
前記負圧解消機構は、ソレノイドを有している、
請求項1に記載の冷却庫。
【請求項4】
前記マグネットは、前記本体部の間口から引き離される前記扉パッキンの一部と対応する位置において分割されている、
請求項2または3に記載の冷却庫。
【請求項5】
前記負圧解消機構は、前記扉が閉状態となってから一定期間経過すると、前記電磁石に逆方向の磁界を形成させる、
請求項2に記載の冷却庫。
【請求項6】
前記貯蔵室内の温度と庫外の温度との差が大きくなるほど、前記負圧解消機構の動作時間を長くする、
請求項1から3の何れか1項に記載の冷却庫。
【請求項7】
庫外の湿度が高いほど、前記負圧解消機構の動作時間を長くする、
請求項1から3の何れか1項に記載の冷却庫。
【請求項8】
貯蔵室を有する本体部と、
前記本体部に取り付けられている扉と、
前記扉に取り付けられ、前記扉が閉状態のときに前記貯蔵室内の密閉性を高める扉パッキンと、
前記扉の開閉状態を検知する検知部と、
前記扉が閉状態となったことを前記検知部が検知すると、前記扉と前記扉パッキンとの間に一定期間隙間を形成するように前記扉パッキンを動作させる負圧解消機構と
を備えている冷却庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内の負圧を解消するための機構を備えている冷却庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫などの冷却庫に設けられている貯蔵室は、パッキンが取り付けられた扉によって内部を密閉した状態にすることができる。扉を閉じた直後の貯蔵室内は、内部の空気が冷やされて収縮することで負圧状態となる。この負圧により貯蔵室と扉のパッキンとの密着が強くなり、扉を開放するときに大きな力が必要となる。
【0003】
そこで、貯蔵室内の負圧を開放するための構成が検討されている。例えば、特許文献1には、冷蔵庫の負圧を解消する構造として、扉パッキング33の4辺のうち少なくとも1辺の扉に形成された溝に取り付ける部分37が、切欠かれ、扉を開状態にする際、扉パッキングが変形して、切欠きから庫内の空気が外気と連通する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-108998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、扉の密閉を維持するためのパッキンに切り欠きを設けると、庫内の密閉性が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明では、密閉性の低下を抑制しつつ庫内の負圧を軽減することのできる冷却庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面にかかる冷却庫は、貯蔵室を有する本体部と、前記本体部に取り付けられている扉と、前記扉に取り付けられ、前記扉が閉状態のときに前記貯蔵室内の密閉性を高める扉パッキンと、前記扉の開閉状態を検知する検知部と、前記扉が閉状態となったことを前記検知部が検知すると、前記扉パッキンの一部を前記本体部の間口から一定期間引き離すように動作させる負圧解消機構とを備えている。
【0008】
本発明のもう一つの局面にかかる冷却庫は、貯蔵室を有する本体部と、前記本体部に取り付けられている扉と、前記扉に取り付けられ、前記扉が閉状態のときに前記貯蔵室内の密閉性を高める扉パッキンと、前記扉の開閉状態を検知する検知部と、前記扉が閉状態となったことを前記検知部が検知すると、前記扉と前記扉パッキンとの間に一定期間隙間を形成するように前記扉パッキンを動作させる負圧解消機構とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、密閉性の低下を抑制しつつ庫内の負圧を軽減することのできる冷却庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態にかかる冷却庫の斜視図である。
図2】一実施形態にかかる冷却庫の断面模式図である。
図3】冷却庫に備えられている扉の背面図である。
図4図2の破線で囲んだ部分を拡大して示す断面模式図である。
図5】第1の実施形態にかかる冷却庫の負圧解消機構の構成を示す断面模式図である。
図6図5に示す冷却庫の上面模式図である。
図7】一実施形態にかかる冷却庫の内部構成を示すブロック図である。
図8】第2の実施形態にかかる冷却庫の負圧解消機構の構成を示す断面模式図である。
図9図8に示す冷却庫の上面模式図である。
図10】第3の実施形態にかかる冷却庫の上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
<第1の実施形態>
本実施形態では、冷却庫の一例として、一つの貯蔵室を備えている小型の冷却庫1を例に挙げて説明する。本実施形態にかかる冷却庫1は、貯蔵室10を備えている。貯蔵室10内の温度は、冷蔵温度帯の温度だけでなく、冷凍温度帯の温度にも設定可能となっている。すなわち、冷却庫1は、冷蔵庫としても冷凍庫としても利用することができる。なお、本発明にかかる冷却庫は、冷蔵機能のみを有する冷蔵庫、あるいは、冷凍機能のみを有する冷凍庫にも適用することできる。また、本発明は、例えば、冷蔵室および冷凍室を備える冷蔵庫のように複数の貯蔵室を備える冷蔵庫に適用することもできる。
【0013】
(冷蔵庫の全体構成)
先ず、第1の実施形態にかかる冷却庫1の全体構成を説明する。図1には、冷却庫1の外観を示す。また、図2には、冷却庫1の内部構成を示す。
【0014】
冷却庫1の外形は、主として、断熱箱体(本体部)50と、扉11とで形成されている。断熱箱体50は、主として、外箱51と、内箱52と、断熱材53とを備えている。内箱52は、フードライナーとも呼ばれる。
【0015】
本実施形態では、扉11が設けられている面を冷却庫の正面または前面と呼ぶ。そして、前面を基準にして、冷却庫1を通常の状態で設置した場合に存在する位置に基づいて、冷却庫1の各面を、上面、側面、背面、及び底面とする。
【0016】
断熱箱体50内には、食品などを収容するための貯蔵室10、および冷却室20などが設けられている。冷却室20は、貯蔵室10の背面側に配置されている。冷却室20内には、冷却器21などが設けられている。
【0017】
冷却庫1の底部の背面側には、機械室30が設けられている。機械室30内には、圧縮機31などが設けられている。
【0018】
(扉周辺の構成)
続いて、扉11およびその周辺の構成について説明する。図3には、扉11の背面側(庫内側)の構成を示す。図4には、冷却庫1の前側上方部(図2の破線で囲んだ部分)の内部を拡大して示す。
【0019】
扉11は、断熱箱体50の前面側に配置されている。扉11は、主として、正面部41と、背面部42と、断熱材43と、扉パッキン45とを備えている。扉パッキン45は、扉11の背面側の外周に沿って配置されている(図3参照)。
【0020】
扉パッキン45は、例えば、ゴム(例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)、樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニルなど)などの材料で形成されており、弾性変形性を有する。すなわち、扉パッキン45は、扉11を閉めたときは、断熱箱体50の間口部50aに対応して容易に圧縮変形する。これにより、扉11が閉状態のときの貯蔵室10内の密閉性を高めることができる。扉パッキン45は、扉11の背面部分を形成している背面部42に取り付けられている。
【0021】
扉パッキン45の内部には、パッキン内マグネット71(以下、単にマグネット71とも呼ぶ)が設けられている。マグネット71は、扉パッキン45の形成位置と同様に、扉11の背面部42の外周に沿って配置されている。マグネット71は、弾性を有する比較的柔らかい材質のものが好ましい。
【0022】
また、断熱箱体50の間口部50aの全体または少なくとも一部は、鉄、ニッケルなどの磁性体を含む金属材料で形成されている。扉11が閉状態となったときに、マグネット71は間口部50aの方へ引き寄せられる。これにより、扉11が閉状態のときの貯蔵室10内の密閉性をさらに高めることができる。
【0023】
冷却庫1の本体部(すなわち、断熱箱体50)と扉11との間には、扉11が閉状態であるか開状態であるかを検知する検知部44が備えられている。検知部44は、扉11側に配置されているマグネット46と、断熱箱体50側に配置されているドアセンサ47とで構成されている。
【0024】
ドアセンサ47は、断熱箱体50の間口部50aに配置されている。ドアセンサ47は、例えば、間口部50aの上端側の左右方向の略中央部に配置されている。本実施形態では、ドアセンサ47は、センサユニット60内に配置されている(図4参照)。マグネット46は、扉11が閉状態のときにマグネット46に近接するような位置に配置されている(図4参照)。
【0025】
本実施形態にかかる冷却庫1には、扉11を閉じた直後に貯蔵室10内の空気が冷やされて収縮することで起こり得る庫内の負圧状態を解消するための構成として、負圧解消機構61が備えられている。負圧解消機構61は、断熱箱体50の間口部50aに配置されている。一例では、負圧解消機構61は、ドアセンサ47とともにセンサユニット60内に配置されている(図4参照)。別の例では、負圧解消機構61は、ドアセンサ47とは別のユニット内に配置されていてもよい。
【0026】
負圧解消機構61は、扉が閉状態となったことをドアセンサ47が検知すると、扉パッキン45の一部を断熱箱体50の間口部50aから一定期間引き離すように動作させる。
【0027】
(負圧解消機構の構成)
続いて、負圧解消機構61およびその周辺のより詳細な構成について説明する。本実施形態では、負圧解消機構61が電磁石62を有している場合の構成を例に挙げて説明する。図5および図6には、負圧解消機構61が電磁石62を有している場合の冷却庫1の構成を示す。
【0028】
図5は、冷却庫1の前側上方部の断面模式図である。図6は、冷却庫1を上方から見た場合の上面模式図である。図6では、断熱箱体50の内部に配置されている電磁石62、および、扉パッキン45の内部に配置されているマグネット71なども図示している。
【0029】
図5に示すように、負圧解消機構61は電磁石62を有している。また、扉11の背面部42に配置されている扉パッキン45の内部における電磁石62と対向する位置には、マグネット71が設けられている。上述したように、マグネット71は、扉11が閉状態となったときに、磁性を有する間口部50aの方へ引き付けられる。なお、電磁石62とマグネット71の間に介在する間口部50aの近傍は、樹脂や非磁性体など、磁力を通過させる材質としている。
【0030】
負圧解消機構61は、ドアセンサ47と連動し、扉11が開状態から閉状態へと変化したタイミングで、扉パッキン45の一部を断熱箱体50の間口部50aから一定期間引き離すように動作させる。これにより、扉パッキン45の一部が断熱箱体50の間口部50aから離れて隙間Gが形成され(図6参照)、庫内の負圧状態が解消される。
【0031】
電磁石62の動作時間を短期間(例えば、1秒から5秒程度)とすることで、隙間Gが長期にわたって形成されることが避けられ、貯蔵室10内の密閉性を比較的高い状態に維持することができる。これにより、冷却庫1の消費電力を抑えることができる。また、貯蔵室10内に庫外の湿気が流入することが抑制され、貯蔵室10内の霜付きを抑えることができる。
【0032】
図6に示すように、マグネット71は、断熱箱体50の間口部50aから引き離される扉パッキン45の一部と対応する位置において分割されていることが好ましい。図6に示す例では、扉11が閉まった状態で電磁石62と対向する位置にあるマグネット71aが、他の位置にあるマグネット71から分離されている。
【0033】
これにより、マグネット71aが配置されている扉パッキン45の一部分をより変形しやすくすることができる。
【0034】
また、電磁石62と対向する位置にあるマグネット71aの磁力を、他の位置にあるマグネット71の磁力よりも強くしてもよい。これにより、電磁石62に特定の磁界を付与したときのマグネット71aの反応を速めることができる。
【0035】
(負圧解消方法)
続いて、負圧解消機構61を用いて庫内の負圧状態を解消する方法について説明する。図7には、負圧解消機構61の動作に関わる冷却庫1内の構成を示す。
【0036】
冷却庫1は、制御部80を備えている。制御部80は、冷却庫1内の各構成部品(例えば、ドアセンサ47、庫内温度センサ91などの各種センサ、負圧解消機構61など)と接続され、これらの制御を行う。制御部80内には、CPU81、メモリ82、およびタイマ83などが備えられている。
【0037】
庫内温度センサ91は、貯蔵室10内の温度を検知する。庫外温度センサ92は、例えば、冷却庫1の外面に配置され、冷却庫1が配置されている環境下の温度を検知する。庫外湿度センサ93は、例えば、冷却庫1の外面に配置され、冷却庫1が配置されている環境下の湿度を検知する。
【0038】
負圧解消機構61は、扉11が閉状態となったことをドアセンサ47が検知すると、扉パッキン45の一部を断熱箱体50の間口部50aから一定期間引き離す方向に変形させるように動作させる。具体的には、制御部80内のCPU81は、扉11が開状態から閉状態に変化したというドアセンサ47から情報(信号)を受けて、負圧解消機構61内の電磁石62に対して、マグネット71aと反発するような磁性を与える。例えば、マグネット71aの表面(間口部50aとの対向面)がN極の磁性を帯びている場合には、電磁石62の先端側(正面側)に対してN極の磁性を与える。
【0039】
そして、タイマ83が時間を計測し、電磁石62が動作を開始してから一定期間(例えば、1秒から5秒程度)経過すると、CPU81は、負圧解消機構61の動作を停止させる。具体的には、電磁石62の磁性を解除する。これにより、間口部50aから引き離されていたマグネット71aは、弾性変形した扉パッキン45の復元力によって間口部50aに接する。これにより、隙間Gがなくなり、貯蔵室10内は密閉状態となる。
【0040】
上記の構成によれば、隙間Gが長期にわたって形成されることが避けられ、貯蔵室10内の密閉性を比較的高い状態に維持することができる。これにより、冷却庫1の消費電力を抑えることができる。また、貯蔵室10内に庫外の湿気が流入することが抑制され、貯蔵室10内の霜付きを抑えることができる。
【0041】
なお、負圧解消機構61は、扉11が閉状態となってから一定期間経過すると、電磁石62に逆方向の磁界を形成させてもよい。すなわち、扉11が閉状態となったことをドアセンサ47が検知すると、制御部80は、最初に負圧解消機構61内の電磁石62に対して、マグネット71aと反発するような磁界を形成させ、扉パッキン45の一部を間口部50aから一定期間引き離すように動作させる。その後、制御部80は、電磁石62に対して、最初に形成した磁界とは逆方向の磁界を形成させる。これにより、間口部50aから引き離されていた扉パッキン45の一部は、逆に間口部50a側へ引き付けられる。
【0042】
上記のように、電磁石62に対して最初に形成した磁界とは逆方向の磁界を形成させることで、扉パッキン45の一部分(マグネット71aが配置されている部分)の復元を促し、扉パッキン45の一部分が塑性変形することを抑制することができる。逆方向の磁界は、マグネット71が間口部50aの磁性体に引き寄せられる程度の力とすることが好ましい。これにより、逆方向の磁界の形成中に扉11を開けられたときであっても、負圧解消機構61に作用するマグネット71aは他の部分のマグネット71と同様に間口部50aから引き離されるため、扉パッキン45の変形を防止できる。また、逆方向の磁界の形成も短時間(例えば、1秒以内)としてもよい。これにより、扉パッキン45を元の形状に戻した後は電磁石62に電流を流さないようにするため、冷却庫1の消費電力を抑えることができる。
【0043】
制御部80は、庫内の温度、庫外の温度、および庫外の湿度などを検知することで、電磁石が作動する期間を適宜変更してもよい。具体的には、制御部80は、庫内温度センサ91、庫外温度センサ92、および庫外湿度センサ93の検知結果に基づいて、負圧解消機構61内の電磁石62の作動時間を変更してもよい。
【0044】
例えば、制御部80は、貯蔵室10内の温度と庫外との温度との差が大きくなるほど、負圧解消機構61内の電磁石62の動作時間を長くすることが好ましい。庫内外の温度差がより大きい環境下では扉閉鎖後の庫内がより負圧状態になりやすい。このような場合に、電磁石62の動作時間をより長くすることで、隙間Gの形成期間をより長くすることができる。
【0045】
また別の例では、庫外の湿度が高いほど、負圧解消機構61内の電磁石62の動作時間を長くすることが好ましい。庫外の湿度がより高い環境下では、庫外の湿度が低い環境下と比べて扉閉鎖後の庫内がより負圧状態になりやすい。そこで、庫外の湿度がより高い場合に、庫外の湿度が低い場合と比較して電磁石62の動作時間をより長くすることで、隙間Gの形成期間をより長くすることができる。
【0046】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる冷却庫1は、貯蔵室10を有する断熱箱体(本体部)50と、断熱箱体50に取り付けられている扉11とを備えている。扉11には、閉状態のときに貯蔵室10内の密閉性を高める扉パッキン45が取り付けられている。冷却庫1には、扉11の開閉状態を検知する検知部44と、負圧解消機構61とが備えられている。そして、扉11が閉状態となったことを検知部44が検知すると、負圧解消機構61は、扉パッキン45の一部を断熱箱体50の間口部50aから一定期間引き離すように動作させる。
【0047】
冷蔵庫などの冷却庫に設けられている貯蔵室は、パッキンが取り付けられた扉によって内部を密閉した状態にすることができる。扉を閉じた直後の貯蔵室内は、内部の空気が冷やされて収縮することで負圧状態となる。この負圧により貯蔵室と扉のパッキンとの密着が強くなり、扉を開放するときに大きな力が必要となる。特に、小型の冷却庫では、冷却庫本体の重量が比較的軽いため、庫内が負圧状態となった状態で扉を開けようとして大きな力で扉を手前に引くことで扉とともに本体も前方へ移動してしまう可能性がある。
【0048】
上記の構成によれば、扉11が閉状態となったタイミングで、負圧解消機構61が、扉パッキン45の一部を断熱箱体50の間口部50aから一定期間引き離すように動作させることで、庫内の負圧状態を速くに解消することができる。
【0049】
また、本実施形態では、負圧解消機構61は、扉11を閉めた後の短期間のみ動作するため、冷却庫1内の密閉状態が低下することを抑えることができる。このようにして、庫内の密閉性を高めることで、冷却庫1の断熱性を維持し、消費電力を抑えることができる。また、貯蔵室10内に庫外の湿気が流入することが抑制され、貯蔵室10内の霜付きを抑えることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、負圧解消機構が本体部(すなわち、断熱箱体50)側に備えられている構成例を挙げているが、別の実施形態では、扉側に負圧解消機構が設けられていてもよい。
【0051】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、負圧解消機構が電磁石を有している構成を例に挙げて説明した。本実施形態では、負圧解消機構がソレノイドを有している構成例について説明する。
【0052】
図8および図9には、第2の実施形態にかかる冷却庫1を示す。図8は、冷却庫1の前側上方部の断面模式図である。図9は、冷却庫1を上方から見た場合の上面模式図である。図9では、断熱箱体50の内部に配置されているソレノイド162、および、扉パッキン45の内部に配置されているマグネット71なども図示している。
【0053】
負圧解消機構161は、ソレノイド162を有している。ソレノイド162は、可動部材163を有している。可動部材163は、ソレノイド162内に設けられているコイルに発生する磁界の作用によって前後方向に動く(図8の矢印参照)。
【0054】
扉11の背面部42に配置されている扉パッキン45の内部における可動部材163と対向する位置には、マグネット71が設けられている。上述したように、マグネット71は、扉11が閉状態となったときに、磁性を有する間口部50aの方へ引き付けられる。
【0055】
第1の実施形態と同様に、マグネット71は、断熱箱体50の間口部50aから引き離される扉パッキン45の一部と対応する位置において分割されていることが好ましい。図9に示す例では、扉11が閉まった状態でソレノイド162(より具体的には、可動部材163)と対向する位置にあるマグネット71aが、他の位置にあるマグネット71から分離されている。
【0056】
負圧解消機構161は、ドアセンサ47と連動し、扉11が開状態から閉状態へと変化したタイミングで、扉パッキン45の一部を断熱箱体50の間口部50aから一定期間引き離すように動作させる。これにより、扉パッキン45の一部が断熱箱体50の間口部50aから離れて隙間Gが形成され(図9参照)、庫内の負圧状態が解消される。
【0057】
より具体的には、制御部80内のCPU81は、扉11が開状態から閉状態に変化したというドアセンサ47から情報(信号)を受けて、負圧解消機構161内のソレノイド162に対して、所定方向の磁界を発生させる。例えば、CPU81は、可動部材163が前方側へ動作するような磁界をソレノイド162に発生させるように、ソレノイド162内のコイルに所定方向の電流を流す。
【0058】
これにより、可動部材163が前方側へ移動し、扉パッキン45の一部分(例えば、マグネット71aが配置されている部分)を扉11側へ押し返す。その結果、扉パッキン45の一部が断熱箱体50の間口部50aから離れて隙間Gが形成され(図9参照)、庫内の負圧状態が解消される。
【0059】
CPU81が、ソレノイド162のコイルに対して一定期間(例えば、1秒から5秒程度)電流を流した後、逆方向の電流を流す、または、可動部材163にバネなどで後方側への付勢力が与えられている場合は電流を止めることで、可動部材163は後方側に移動する。これにより、扉パッキン45は、自身の弾性変形からの復元力およびマグネット71aの作用により、断熱箱体50の間口部50aに引き寄せられる。負圧解消機構161および扉パッキン45がこのように動作することで、隙間Gが長期にわたって形成されることが避けられ、貯蔵室10内の密閉性が低下することを抑制することができる。これにより、冷却庫1の断熱性を維持し、消費電力を抑えることができる。また、貯蔵室10内に庫外の湿気が流入することが抑制され、貯蔵室10内の霜付きを抑えることができる。
【0060】
<第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。上述の実施形態では、扉が閉状態になると、扉パッキンの一部を本体部の間口から一定期間引き離すように動作させる負圧解消機構について説明した。本実施形態では、扉が閉状態になると、扉と扉パッキンとの間に一定期間隙間を形成するように扉パッキンを動作させる負圧解消機構について説明する。
【0061】
図10には、第3の実施形態にかかる冷却庫1を示す。図10は、冷却庫1を上方から見た場合の上面模式図である。図10では、断熱箱体50の内部に配置されている電磁石62、および、扉パッキン45の内部に配置されているマグネット71なども図示している。
【0062】
第1の実施形態と同様に、負圧解消機構61は、電磁石62を有している。負圧解消機構61は、ドアセンサ47と連動し、扉11が開状態から閉状態へと変化したタイミングで、扉パッキン45の一部を扉11の背面部42から引き離す。これにより、扉11と扉パッキン45との間に隙間Gが形成され(図10参照)、庫内の負圧状態が解消される。
【0063】
図10に示すように、扉パッキン45に配置されているマグネット71は、扉11の背面部42から引き離される部分において分割されていることが好ましい。図10に示す例では、扉11が閉まった状態で電磁石62と対向する位置にあるマグネット271aが、他の位置にあるマグネット71から分離されている。また、扉パッキン45においてマグネット271aが配置されている部分は、ドア側に抜け防止の矢じり形状(図5のAで示す形状)がない構造とすることが好ましい。
【0064】
これにより、負圧解消機構61は、扉11が開状態から閉状態へと変化したタイミングで電磁石62に対して所定の磁界を与え、扉パッキン45内のマグネット271aを電磁石62側へ引き付け、扉11と扉パッキン45との間に隙間Gを形成することができる。
【0065】
(まとめ)
本発明の一局面にかかる冷却庫(例えば、冷却庫1)は、貯蔵室(例えば、貯蔵室10)を有する本体部(例えば、断熱箱体50)と、前記本体部に取り付けられている扉(例えば、扉11)と、前記扉に取り付けられ、前記扉が閉状態のときに前記貯蔵室内の密閉性を高める扉パッキン(例えば、扉パッキン45)と、前記扉の開閉状態を検知する検知部(例えば、検知部44)と、前記扉が閉状態となったことを前記検知部が検知すると、前記扉パッキンの一部を前記本体部の間口(例えば、間口部50a)から一定期間引き離すように動作させる負圧解消機構(例えば、負圧解消機構61、161)とを備えている。
【0066】
上記の本発明の一局面にかかる冷却庫(例えば、冷却庫1)において、前記扉(例えば、扉11)は、前記本体部(例えば、断熱箱体50)に対して前記扉を引き付けるマグネット(例えば、マグネット71)を有し、前記負圧解消機構(例えば、負圧解消機構61)は、電磁石(例えば、電磁石62)を有していてもよい。
【0067】
上記の本発明の一局面にかかる冷却庫(例えば、冷却庫1)において、前記扉(例えば、扉11)は、前記本体部(例えば、断熱箱体50)に対して前記扉を引き付けるマグネット(例えば、マグネット71)を有し、前記負圧解消機構(例えば、負圧解消機構161)は、ソレノイド(例えば、ソレノイド162)を有していてもよい。
【0068】
上記の本発明の一局面にかかる冷却庫(例えば、冷却庫1)において、前記マグネット(例えば、マグネット71)は、前記本体部(例えば、断熱箱体50)の間口(例えば、間口部50a)から引き離される前記扉パッキン(例えば、扉パッキン45)の一部と対応する位置において分割されていてもよい。
【0069】
上記の本発明の一局面にかかる冷却庫(例えば、冷却庫1)において、前記負圧解消機構(例えば、負圧解消機構61)は、前記扉(例えば、扉11)が閉状態となってから一定期間経過すると、前記電磁石(例えば、電磁石62)に逆方向の磁界を形成させてもよい。
【0070】
上記の本発明の一局面にかかる冷却庫(例えば、冷却庫1)は、前記貯蔵室(例えば、貯蔵室10)内の温度と庫外の温度との差が大きくなるほど、前記負圧解消機構(例えば、負圧解消機構61、161)の動作時間を長くしてもよい。
【0071】
上記の本発明の一局面にかかる冷却庫(例えば、冷却庫1)は、庫外の湿度が高いほど、前記負圧解消機構(例えば、負圧解消機構61、161)の動作時間を長くしてもよい。
【0072】
本発明のもう一つの局面にかかる冷却庫(例えば、冷却庫1)は、貯蔵室(例えば、貯蔵室10)を有する本体部(例えば、断熱箱体50)と、前記本体部に取り付けられている扉(例えば、扉11)と、前記扉に取り付けられ、前記扉が閉状態のときに前記貯蔵室内の密閉性を高める扉パッキン(例えば、扉パッキン45)と、前記扉の開閉状態を検知する検知部(例えば、検知部44)と、前記扉が閉状態となったことを前記検知部が検知すると、前記扉と前記扉パッキンとの間に一定期間隙間を形成するように前記扉パッキンを動作させる負圧解消機構(例えば、負圧解消機構61)とを備えている。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1:冷却庫
10:貯蔵室
11:扉
44:検知部
45:扉パッキン
47ドアセンサ
50:断熱箱体(本体部)
50a:間口部(本体部の間口)
61:負圧解消機構
62:電磁石
71:マグネット
91:庫内温度センサ
92:庫外温度センサ
93:庫外湿度センサ
161:負圧解消機構
162:ソレノイド
163:可動部材
G:隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10