(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145280
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】路面標示管理システム、および路面標示管理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241004BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G08G1/00 J
E01C23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057566
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】杉村 正曉
【テーマコード(参考)】
2D053
5H181
【Fターム(参考)】
2D053EA02
2D053EA04
2D053FA02
5H181AA01
5H181AA06
5H181AA15
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF05
5H181MC03
5H181MC16
5H181MC19
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】路面標示の描画から路面標示の維持管理まで一貫したサービスを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、道路に路面標示を描画する描画装置を備えた車両の位置および車両周囲の物体の位置に基づいて路面標示の描画位置を決定する描画位置決定部と、描画装置により描画位置に描画された路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した路面標示の初期状態情報を取得する初期状態取得部と、路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した路面標示の経過状態情報を取得する経過状態取得部と、初期状態取得部により取得された初期状態情報と経過状態取得部により取得された経過状態情報とに基づいて路面標示の劣化を診断する診断部と、を備える、路面標示管理システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に路面標示を描画する描画装置を備えた車両の位置および車両周囲の物体の位置に基づいて前記路面標示の描画位置を決定する描画位置決定部と、
前記描画装置により前記描画位置に描画された前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した前記路面標示の初期状態情報を取得する初期状態取得部と、
前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した前記路面標示の経過状態情報を取得する経過状態取得部と、
前記初期状態取得部により取得された前記初期状態情報と、前記経過状態取得部により取得された前記経過状態情報とに基づいて前記路面標示の劣化を診断する診断部と、
を備える、路面標示管理システム。
【請求項2】
前記初期状態取得部は、前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応して高度情報を前記初期状態情報として取得し、
前記経過状態取得部は、前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応して高度情報を前記経過状態情報として取得し、
前記診断部は、前記初期状態情報としての前記高度情報と前記経過状態情報としての前記高度情報とを比較することにより路面形状の変化を診断する
請求項1に記載の路面標示管理システム。
【請求項3】
前記描画位置決定部は、前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した高度情報に基づいて前記路面標示を歪ませて描画させるよう前記描画位置を決定する、請求項1に記載の路面標示管理システム。
【請求項4】
前記描画装置は磁性材料を含む塗料を用いて前記路面標示を描画し、
前記初期状態取得部は、前記路面標示の磁力に基づく情報を前記初期状態情報として取得し、
前記経過状態取得部は、前記路面標示の磁力に基づく情報を前記経過状態情報として取得し、
前記診断部は、前記初期状態情報としての前記路面標示の磁力に基づく情報と前記経過状態情報としての前記路面標示の磁力に基づく情報とを比較することにより前記路面標示の劣化を診断する、
請求項1に記載の路面標示管理システム。
【請求項5】
前記診断部により診断された前記路面標示の劣化に基づいて前記路面標示の補修の要否および補修内容を決定する補修管理部を備える、請求項1に記載の路面標示管理システム。
【請求項6】
前記補修管理部は、前記路面標示付近における事故発生情報に基づいて補修内容を決定する、請求項5に記載の路面標示管理システム。
【請求項7】
路面に路面標示を描画する描画装置を備えた車両の位置および車両周囲の物体の位置に基づいて前記路面標示の描画位置を決定するステップと、
前記描画装置により前記描画位置に描画された前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した前記路面標示の初期状態情報を取得するステップと、
前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した前記路面標示の経過状態情報を取得するステップと、
前記初期状態情報と前記経過状態情報とに基づいて前記路面標示の劣化を診断するステップと、
を含む、路面標示管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面標示管理システム、および路面標示管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に描画された路面標示を管理するための技術としては、例えば、下記の特許文献1および特許文献2が知られている。
【0003】
特許文献1には、塗装装置が搭載された塗装用車両が記載されている。この塗装用車両は、施工時において区画線を塗装しながら移動し、GPS等を利用して区画線の位置情報を取得している。さらに、塗装用車両は、施工中に測距センサ、速度センサ、塗装幅検出手段によって取得されたデータを記録することで、施工結果および施工状況を客観的に把握することが可能となっている。
【0004】
特許文献2には、道路管理者が車両を走行させることでドライブレコーダによって撮影された路面の撮像画像を取得し、撮影位置である位置情報と関連付けて記憶することが記載されている。特許文献2の情報処理装置は、路面標示が写った撮像画像から路面標示を抽出し、抽出した路面標示と、抽出した路面標示に関連付けられる撮影位置が同一である道路新設時の路面標示との差分を抽出することによって、路面標示の劣化度合いを推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-132152号公報
【特許文献2】特開2022-17106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された塗装用車両は路面標示の塗装時のデータを記録し、特許文献2に記載された情報処理装置は、路面標示が写った撮像画像を用いて路面標示の劣化度合いを推定しているが、路面標示の描画と路面標示の劣化度合いの推定とを別々に行う技術である。したがって、従来では路面標示の描画から路面標示の維持管理まで一貫したサービスは提供されていないのが現状である。また、特許文献1および特許文献2は区画線を描画したときの車両位置、路面標示を撮像したときの車両位置を記憶しているため、路面標示の部分的な劣化を管理することができなかった。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、路面標示の描画から路面標示の維持管理まで一貫したサービスを提供することができる路面標示管理システム、および路面標示管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は上述した課題を解決するためになされたもので、本開示の一態様は、道路に路面標示を描画する描画装置を備えた車両の位置および車両周囲の物体の位置に基づいて前記路面標示の描画位置を決定する描画位置決定部と、前記描画装置により前記描画位置に描画された前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した前記路面標示の初期状態情報を取得する初期状態取得部と、前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した前記路面標示の経過状態情報を取得する経過状態取得部と、前記初期状態取得部により取得された前記初期状態情報と前記経過状態取得部により取得された前記経過状態情報とに基づいて前記路面標示の劣化を診断する診断部と、を備える、路面標示管理システムである。
【0009】
本開示の他の態様は、路面に路面標示を描画する描画装置を備えた車両の位置および車両周囲の物体の位置に基づいて前記路面標示の描画位置を決定するステップと、前記描画装置により前記描画位置に描画された前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した前記路面標示の初期状態情報を取得するステップと、前記路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した前記路面標示の経過状態情報を取得するステップと、前記初期状態情報と前記経過状態情報とに基づいて前記路面標示の劣化を診断するステップと、を含む、路面標示管理方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、路面標示の描画から路面標示の維持管理まで一貫したサービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態における路面標示管理システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施の形態における路面標示管理システムの動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1の実施の形態における路面標示の一例を示す上面図である。
【
図4】第1の実施の形態における路面標示描画用車両の位置と描画位置との関係の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態における道路標示を表す複数の点の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態における道路標示が劣化した状態の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施の形態における路面標示管理システムの動作手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図8】第2の実施の形態における路面標示管理システムの一例を示すブロック図である。
【
図9】第2の実施の形態における道路標示の一例を示す図であり、(A)は劣化がない道路標示の一例を示す上面図であり、(B)は劣化した道路標示の一例を示す上面図である。
【
図10】第3の実施の形態における路面標示管理システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した路面標示管理システム、および路面標示管理方法を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、第1の実施の形態における路面標示管理システム1の一例を示すブロック図である。路面標示管理システム1は、例えば、路面標示管理装置100と、路面標示描画用車両200と、路面標示検出用車両300と、路面標示検出用ドローン400と、補修管理装置500とを備える。路面標示管理装置100、路面標示描画用車両200、路面標示検出用車両300、路面標示検出用ドローン400、および補修管理装置500は、インターネット等の通信ネットワークNWに接続するためのNIC(Network Interface Card)または無線通信モジュールなどの通信インターフェース(不図示)を有する。ネットワークは、例えばインターネット等の汎用ネットワーク、およびローカル5GまたはWiFi(登録商標)などのプライベートなネットワークを含んでよい。
【0014】
路面標示管理装置100は、通信ネットワークNWを介して情報を取得し、各種の処理を行う情報処理装置である。路面標示管理装置100は、例えば、初期状態取得部110と、経過状態取得部120と、診断部130とを備える。初期状態取得部110、経過状態取得部120、および診断部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。初期状態取得部110は、路面標示描画用車両200の描画装置250により描画位置に描画された路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した路面標示の初期状態情報を取得する。経過状態取得部120は、路面標示を表す複数の点のそれぞれに対応した路面標示の経過状態情報を取得する。診断部130は、初期状態取得部110により取得された初期状態情報と、経過状態取得部120により取得された経過状態情報とに基づいて路面標示の劣化を診断する。
【0015】
路面標示描画用車両200は、GPS(Global Positioning System)処理部210と、3次元位置検出部220と、描画位置決定部230と、描画データ生成部240と、描画装置250と、撮像部260とを備える。GPS処理部210は、GPS信号に基づいて路面標示描画用車両200の位置情報を取得する。3次元位置検出部220は、例えば慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)である。3次元位置検出部220は、例えば、路面の3次元位置情報を取得する。
【0016】
描画位置決定部230は、路面標示描画用車両200の位置および路面標示描画用車両200の周囲物体の位置に基づいて路面標示の描画位置を決定する。描画データ生成部240は、描画装置250が路面に路面標示を描画するための描画データを生成する。描画位置決定部230は、3次元位置検出部220により検出された路面の凹凸によって路面標示が歪んで見えないように描画データを変更してよい。
【0017】
描画装置250は、例えば、路面に塗料を吐出して路面標示を描画する描画部252と、描画データに基づいて描画部252を制御する描画制御部254と、描画位置検出部256とを備える。描画位置検出部256は、路面標示描画用車両200の位置と、描画部252における描画位置とに基づいて、描画部252により描画位置に描画された路面標示を表す複数の点それぞれの位置を検出する。
【0018】
撮像部260は、描画装置250により描画された路面標示を撮像し、撮像データを生成する。撮像データに含まれる複数の点のそれぞれの座標には、描画位置検出部256により検出された路面標示を表す複数の点のそれぞれの位置情報が対応づけられる。なお、以下の説明において「路面標示を表す複数の点のそれぞれの位置情報」を単に「路面標示の位置情報」と記載する。路面標示描画用車両200は、初期状態情報としての撮像データおよび路面標示の位置情報、3次元位置情報を、路面標示管理装置100に送信する。
【0019】
路面標示検出用車両300は、例えば、バス、ゴミ収集車などの道路を巡回して走行する車両である。路面標示検出用車両300は、例えば、GPS処理部310と、3次元位置検出部320と、撮像部330とを備える。GPS処理部310は、路面標示検出用車両300の位置情報を取得する。3次元位置検出部320は、路面標示検出用車両300が走行する路面の3次元位置情報を取得する。撮像部330は、路面標示検出用車両300の周囲の撮像データを生成する。路面標示検出用車両300は、路面標示の位置情報、3次元位置情報、および撮像データを路面標示管理装置100に送信する。
【0020】
路面標示検出用ドローン400は、例えば、無人航空機である。路面標示検出用ドローン400は、例えば、GPS処理部410と、3次元位置検出部420と、撮像部430とを備える。GPS処理部410は、路面標示検出用ドローン400の位置情報を取得する。3次元位置検出部420は、路面標示検出用ドローン400の周囲の3次元位置情報を取得する。撮像部430は、路面標示検出用ドローン400の周囲の撮像データを生成する。路面標示検出用ドローン400は、路面標示の位置情報、3次元位置情報、および撮像データを路面標示管理装置100に送信する。
【0021】
補修管理装置500は、例えば、補修管理部510と、補修依頼部520とを備える。補修管理部510は、診断部130により診断された路面標示の劣化に基づいて路面標示の補修の要否および補修内容を決定する。補修依頼部520は、補修管理部510により路面標示の補修が必要であると決定された場合に、補修を行う者の端末装置に補修の依頼情報を送信する。
【0022】
なお、
図1に示したような初期状態取得部110、経過状態取得部120、および診断部130は路面標示管理装置100に含まれ、描画位置決定部230および、描画データ生成部240は路面標示描画用車両200に含まれ、補修管理部510および補修依頼部520は補修管理装置500に含まれるが、これに限定されず、路面標示管理システム1に含まれる装置に分散または集中して配置されてよい。
【0023】
図2は、第1の実施の形態における路面標示管理システム1の動作手順の一例を示すフローチャートである。
まず描画位置決定部230は、路面標示の描画位置を決定する(ステップS100)。
図3は、第1の実施の形態における路面標示の一例を示す上面図である。例えば、Uターン禁止の路面標示10は、縁石から距離D1、区画線から距離D2、道路標示から距離D3だけ離れた領域12に描画される。描画位置決定部230は、GPS処理部210により取得された路面標示描画用車両200位置と、3次元位置検出部220により検出された区画線の位置、縁石の位置、および道路標示の位置とに基づいて路面標示10を描画する領域12を決定する。描画データ生成部240は、3次元位置検出部220により検出された領域12における凹凸を用いて路面標示10を歪み無く見せるための描画データを生成する。
【0024】
次に描画部252は、描画データを用いて、描画制御部254の制御に従って路面標示10の描画を行う(ステップS102)。
図4は、第1の実施の形態における路面標示描画用車両の位置と描画位置との関係の一例を示す図である。例えば、描画部252が塗料を吐出するノズルであり、描画制御部254がノズルを駆動するアクチュエータを制御する場合、描画位置はノズル位置に相当する。描画位置検出部256は、路面標示描画用車両200の緯度及び経度を含む車両位置と、路面標示描画用車両200におけるノズルの基準位置と、アクチュエータにより駆動されたノズルの基準位置に対する相対位置とに基づいて、路面標示10を表す複数の点それぞれの位置情報を検出することができる。路面標示10の位置情報は、緯度情報、経度情報、および高度情報を含む。
【0025】
次に初期状態取得部110は、初期状態情報を取得する(ステップS104)。このとき、描画位置検出部256は、描画された路面標示10を表す複数の点それぞれの位置情報を生成する。また、撮像部260は、描画された路面標示10を撮像して撮像データを取得する。路面標示描画用車両200は、撮像データおよび位置情報を路面標示管理装置100に送信する。路面標示管理装置100は、路面標示描画用車両200から取得した撮像データおよび位置情報、3次元位置情報を取得し、路面標示10の初期状態情報として記録する。撮像データに含まれる路面標示10を表す複数の点に対応した位置情報および撮像データは、路面標示10の初期状態情報に相当する。
【0026】
図5は、第1の実施の形態における路面標示10を表す複数の点の一例を示す図である。路面標示10を表す複数の点は、例えば、点aから点lまでの頂点を表す点であってよい。これに限定されず、路面標示10を表す複数の点は、例えば点i近傍に拡大して示すように、路面標示10の形状に沿った点群であってよい。点群を構成する各点の位置情報は、緯度情報、経度情報、および高度情報を含む。
【0027】
次に経過状態取得部120は、路面標示検出用車両300および路面標示検出用ドローン400から取得した位置情報、3次元位置情報、および撮像データを路面標示10の経過状態情報として取得する(ステップS106)。
【0028】
次の診断部130は、初期状態情報および経過状態情報に基づいて路面標示10の劣化を診断する(ステップS108)。診断部130は、診断結果を示す情報を補修管理装置500に送信する。
図6は、第1の実施の形態における路面標示10が劣化した状態の一例を示す図である。診断部130は、初期状態情報としての路面標示10を表す複数の点と経過状態情報としての路面標示10を表す複数の点とを比較することにより、経過状態情報に劣化箇所に対応した複数の点が無い(欠落している)ことを検知する。これにより診断部130は、路面標示10が部分的に劣化していると診断することができる。
【0029】
次に補修管理部510は、診断部130から取得した診断結果が示す路面標示10の劣化に基づいて路面標示10の補修の要否および補修内容を決定する。補修管理部510は、例えば、路面標示10のうち一部が著しく劣化している場合、当該劣化箇所の塗料を剥離しくにい塗料に変更することや、塗料の厚さを増加するよう変更するよう補修内容を決定してよい。また、補修管理部510は、車両のブレーキポイント、交通量、道路工事により塗料が剥がされるなどの劣化の種類に応じて補修の要否を判定し、補修内容を決定してよい。補修管理部510は、路面標示10の補修が必要である場合、補修依頼部520から補修依頼情報を送信させる(ステップS110)。補修依頼情報には、例えば路面標示10の位置、補修内容、および路面標示10の経過状態情報が含まれてよい。
【0030】
図7は、第1の実施の形態における路面標示管理システム1の動作手順の一例を示すシーケンス図である。
路面標示管理装置100は、例えば管理者の操作に基づいて路面標示10の種類等を特定する情報、および路面標示10の描画位置などを含む描画要求を路面標示描画用車両200に送信する(ステップS200)。路面標示描画用車両200が移動して、描画位置決定部230は、路面標示10の描画位置を決定する(ステップS202)。次に描画データ生成部240は、3次元位置検出部220により検出された路面の3次元位置に基づいて描画データを生成する(ステップS204)。次に描画部252は、描画データに基づいて路面標示10を路面に描画する(ステップS206)。次に3次元位置検出部220は、路面標示10における3次元位置情報を取得し、撮像部260は、路面標示10の撮像データを取得し、路面標示描画用車両200は、路面標示10の位置情報、3次元位置情報および撮像データ(初期状態情報)を路面標示管理装置100に送信する(ステップS208)。
【0031】
路面標示管理装置100は、路面標示描画用車両200から路面標示10の位置情報、3次元位置情報および撮像データを受信し、初期状態取得部110は、初期状態情報を取得する(ステップS210)。次に路面標示検出用車両300および路面標示検出用ドローン400は、路面標示10の位置情報、3次元位置情報および撮像データを路面標示管理装置100に送信する。路面標示管理装置100は、経過状態情報を取得し(ステップS212)、診断部130は、初期状態情報および経過状態情報に基づいて路面標示10の劣化を診断する(ステップS214)。
【0032】
診断部130により路面標示10に劣化があると判定した場合(ステップS216)、路面標示10の初期状態情報、経過状態情報および路面標示10の位置情報を含む経過状態データを補修管理装置500に送信する。補修管理装置500は、路面標示10の補修の要否および補修内容を決定して補修を行うスケジュールを作成する(ステップS218)。補修管理装置500は、例えば路面標示管理装置100および補修を行う者の端末装置に補修の依頼情報を送信する。これにより路面標示管理装置100は、路面標示10の補修作業を行う(ステップS220)。
【0033】
以上ように、第1の実施の形態の路面標示管理システム1によれば、描画位置決定部230により自動的に路面標示10の描画位置を決定し、初期状態取得部110により路面標示10を表す複数の点のそれぞれに対応した路面標示10の初期状態情報を取得し、経過状態取得部120により路面標示10を表す複数の点のそれぞれに対応した路面標示10の経過状態情報を取得し、診断部130により初期状態情報と経過状態情報とに基づいて路面標示10の劣化を診断することができる。このような路面標示管理システム1によれば、路面標示10の描画から路面標示10の維持管理まで一貫したサービスを提供することができる。
【0034】
また、路面標示管理システム1によれば、路面標示10を表す複数の点のそれぞれに対応した路面標示10の初期状態情報と路面標示10を表す複数の点のそれぞれに対応した路面標示10の経過状態情報とを用いるので路面標示10の部分的な劣化を診断することできる。この結果、路面標示管理システム1によれば、路面標示10の部分的な劣化に応じて補修作業が必要ない箇所を特定して不要な補修工事を抑制し、効率的に路面標示10の維持管理を行うことができる。第1の実施の形態における路面標示10は、区画線のように道路の形状に合わせた道路標示ではなく、図示したUターン禁止などの規則性のある形状である。したがって、路面標示管理システム1によれば、規則性のある路面標示10のエッジ(ピクセル)を決定して描画を行い、路面標示10のエッジにおける劣化診断を行うことができる。
【0035】
路面標示管理システム1において、初期状態情報には、路面標示10を表す複数の点のそれぞれに対応して高度情報が含まれてよい。高度情報は、3次元位置検出部220により検出された3次元位置情報に基づいて生成される。高度情報を含む路面標示10を表す複数の点のそれぞれの位置情報は、路面標示描画用車両200から路面標示管理装置100に送信される。これにより初期状態取得部110は、路面標示10を表す複数の点のそれぞれに対応して高度情報を初期状態情報として取得することができる。
【0036】
また、路面標示検出用車両300は、路面標示検出用車両300が走行する路面の3次元位置情報として高度情報を含む情報を3次元位置検出部320により検出し、路面標示管理装置100に送信してよい。さらに、路面標示検出用ドローン400は、路面標示検出用ドローン400の周囲の3次元位置情報として高度情報を3次元位置検出部420により検出し、路面標示管理装置100に送信してよい。これにより経過状態取得部120は、路面標示10を表す複数の点のそれぞれに対応して高度情報を経過状態情報として取得することができる。診断部130は、初期状態情報としての高度情報と経過状態情報としての高度情報とを比較することにより路面形状の変化を診断することができる。これにより路面標示管理システム1の診断部130によれば、路面形状の変化に応じて路面標示10の劣化を診断することができる。さらに路面標示管理システム1によれば、描画した路面標示10を描画した路面標示10の高度を基準として、災害時の高度変化を計測することや、交通量によって変化する路面形状の変化の検出も可能となる。
【0037】
さらに、第1の実施の形態の路面標示管理システム1は、診断部130により診断された路面標示10の劣化に基づいて路面標示10の補修の要否および補修内容を決定する補修管理部510を備える。これにより路面標示管理システム1によれば、ブレーキポイント、交通量、道路工事などの様々な要因で路面標示10の劣化の仕方が異なっていても劣化に応じて補修の要否および補修内容を決定することができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
図8は、第2の実施の形態における路面標示管理システム1Aの一例を示すブロック図である。なお、第2の実施の形態の説明において第1の実施の形態と同じ部分については同一符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0039】
路面標示管理システム1Aにおける描画装置250は、磁性材料を含む塗料を用いて路面標示10を描画する。路面標示管理システム1Aにおける路面標示描画用車両200Aは、磁気検出部270を備える。磁気検出部270は、例えば、路面標示10に含まれる磁気を検知する磁気センサを含む。磁気検出部270は、描画装置250により描画された路面標示10の磁力に基づく情報を取得する。路面標示描画用車両200Aは、路面標示10の磁力に基づく情報を路面標示管理装置100Aに送信する。
【0040】
路面標示検出用車両300Aは、磁気検出部340を備える。磁気検出部340は、例えば、路面標示10に含まれる磁気を検知する磁気センサを含む。磁気検出部340は、路面により描画された路面標示10の磁力に基づく情報を取得する。路面標示検出用車両300Aは、路面標示10の磁力に基づく情報を路面標示管理装置100Aに送信する。
【0041】
路面標示検出用ドローン400Aは、磁気検出部440を備える。磁気検出部440は、例えば、路面標示10に含まれる磁気を検知する磁気センサを含む。磁気検出部440は、路面により描画された路面標示10の磁力に基づく情報を取得する。路面標示検出用ドローン400Aは、路面標示10の磁力に基づく情報を路面標示管理装置100Aに送信する。
【0042】
初期状態取得部110Aは、路面標示10の磁力に基づく情報を初期状態情報として取得する。経過状態取得部120Aは、路面標示10の磁力に基づく情報を経過状態情報として取得する。診断部130Aは、初期状態情報としての路面標示10の磁力に基づく情報と経過状態情報としての路面標示10の磁力に基づく情報とを比較することにより路面標示10の劣化を診断する。
【0043】
図9は、第2の実施の形態における路面標示10の一例を示す図であり、(A)は劣化がない路面標示10の一例を示す上面図であり、(B)は劣化した路面標示10の一例を示す上面図である。劣化がない路面標示10から検出される総磁力がAであるとすると、路面標示10の一部が劣化した場合には、路面標示10から検出される総磁力はAよりも低いBとなる。したがって、診断部130Aは、初期状態情報としての磁力と経過状態情報としての磁力とを比較することにより路面標示10の劣化を診断することができる。また、診断部130Aは、路面標示10を表す複数の点のそれぞれに対応した初期状態情報としての磁気情報と経過状態情報としての磁気情報とを比較することによって、路面標示10のうち劣化が発生した箇所を特定することができる。
【0044】
さらに、診断部130Aは、第1の実施の形態における路面標示10を表す複数の点のそれぞれに対応した位置情報、高度情報に加えて磁気情報に基づいて路面標示10の劣化を診断することができる。これにより路面標示管理システム1Aによれば、高い精度で路面標示10の劣化を診断することができる。
【0045】
(第3の実施の形態)
図10は、第3の実施の形態における路面標示管理システム1Bの一例を示すブロック図である。なお、第3の実施の形態の説明において第1の実施の形態と同じ部分については同一符号を付することにより詳細な説明を省略する。路面標示管理システム1Bは、事故発生情報提供装置600を備える。事故発生情報提供装置600は、例えば、事故発生情報を取得し、要求に応じて事故発生情報を送信するサーバ装置である。事故発生箇所においては交通量が多いことや車両の急ブレーキが多いため、路面標示10の劣化が発生しやすいことがある。事故発生情報は、例えば、車両に関連する事故の発生した位置および日時を含む情報である。事故発生情報は、車両のドライブレコーダから取得した位置情報、車速、ブレーキポイントを示す情報を含んでいてよい。
【0046】
補修管理部510Bは、診断部130から送信された路面標示10の劣化の診断結果を受信した場合、事故発生情報提供装置600から路面標示10付近の事故発生情報を取得する。補修管理部510Bは、路面標示10付近における事故発生情報に基づいて補修内容を決定する。補修管理部510は、例えば、事故が頻発している交差点付近の路面標示10の塗料を、高視認性標示塗料に変更することを決定することができる。
【0047】
なお、各実施形態および変形例について説明したが、一例であってこれらに限られず、例えば、各実施形態や各変形例のうちのいずれかや、各実施形態の一部や各変形例の一部を、他の1または複数の実施形態や他の1または複数の変形例と組み合わせて本発明の一態様を実現させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1、1A、1B…路面標示管理システム、10…路面標示、100、100A…路面標示管理装置、110、110A…初期状態取得部、120、120A…経過状態取得部、130、130A…診断部、200、200A…路面標示描画用車両、210…GPS処理部、220…3次元位置検出部、230…描画位置決定部、240…描画データ生成部、250…描画装置、252…描画部、254…描画制御部、256…描画位置検出部、260…撮像部、270…磁気検出部、300、300A…路面標示検出用車両、310…GPS処理部、320…3次元位置検出部、330…撮像部、340…磁気検出部、400、400A…路面標示検出用ドローン、410…GPS処理部、420…3次元位置検出部、430…撮像部、440…磁気検出部、500…補修管理装置、510、510B…補修管理部、520…補修依頼部、600…事故発生情報提供装置