(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145290
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】双方向コンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H02M3/155 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057579
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】山根 康嗣
(72)【発明者】
【氏名】五十棲 健太
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD02
5H730DD16
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FG05
5H730FV00
(57)【要約】
【課題】昇圧状態と降圧状態とが切り替わる時にオーバーシュートまたはアンダーシュートが発生することを抑制可能な双方向コンバータを提供する。
【解決手段】双方向コンバータA1では、電力変換回路1は、第1端子対T1および第2端子対T2の一方を一次側、他方を二次側として、一次側から二次側に、昇圧して電力伝送を行う昇圧モードと、降圧して電力伝送を行う降圧モードと、昇圧および降圧での電力伝送を選択的に行う昇降圧モードとで、動作可能である。昇降圧モードでは、昇圧状態と降圧状態とで複数のスイッチング素子Q1~Q4の駆動制御が共通する。昇圧モードと降圧モードとは、昇降圧モードを介して切り替わる。制御部4は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わる時、二次側の低電位側のスイッチング素子を、一時的にオフ状態にした後、PWM制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1高電位側端子および第1低電位側端子を含む第1端子対と、
第2高電位側端子および第2低電位側端子を含む第2端子対と、
複数のスイッチング素子、インダクタ、および、前記複数のスイッチング素子のうちの対応する1つにそれぞれ逆並列に接続された複数のダイオードを含み、前記第1端子対および前記第2端子対の間で双方向の電力伝送が可能な電力変換回路と、
前記複数のスイッチング素子の各々のオンとオフとを切り替える駆動制御を行う制御部と、
を備え、
前記複数のスイッチング素子は、前記第1高電位側端子と前記インダクタの一端とに接続された第1スイッチング素子と、前記第1低電位側端子と前記インダクタの前記一端とに接続された第2スイッチング素子と、前記第2高電位側端子と前記インダクタの他端とに接続された第3スイッチング素子と、前記第2低電位側端子と前記インダクタの前記他端とに接続された第4スイッチング素子と、を含み、
前記電力変換回路は、前記第1端子対および前記第2端子対の一方を一次側、前記第1端子対および前記第2端子対の他方を二次側として、前記一次側から前記二次側に昇圧して電力伝送を行う昇圧モードと、前記一次側から前記二次側に降圧して電力伝送を行う降圧モードと、前記一次側から前記二次側に昇圧および降圧での電力伝送を選択的に行う昇降圧モードとで、動作可能であり、
前記昇降圧モードでは、昇圧状態と降圧状態とで前記複数のスイッチング素子の前記駆動制御が共通し、
前記昇圧モードと前記降圧モードとは、前記昇降圧モードを介して切り替わり、
前記二次側の低電位側のスイッチング素子は、前記昇降圧モードおよび前記昇圧モードの各々で、PWM制御されており、
前記制御部は、前記昇降圧モードから前記昇圧モードに切り替わった時、前記二次側の低電位側のスイッチング素子を、一時的にオフ状態にした後、前記PWM制御する、双方向コンバータ。
【請求項2】
前記電力変換回路は、前記第1端子対に印加される第1電圧と前記第2端子対に印加される第2電圧との電圧差の絶対値が設定値よりも大きい時に、前記昇圧モードまたは前記降圧モードで動作し、前記電圧差の絶対値が設定値以下である時に、前記昇降圧モードで動作する、請求項1に記載の双方向コンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記昇降圧モードから前記昇圧モードに切り替わってから、予め設定された時間が経過するまで、前記二次側の低電位側のスイッチング素子を一時的にオフ状態にする、請求項2に記載の双方向コンバータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記昇降圧モードから前記昇圧モードに切り替わってから、前記電圧差が閾値以上となるまで、前記二次側の低電位側のスイッチング素子を一時的にオフ状態にする、請求項2に記載の双方向コンバータ。
【請求項5】
前記制御部は、前記昇降圧モードから前記昇圧モードに切り替わってから、二次側電流が閾値以下となるまで、前記二次側の低電位側のスイッチング素子を一時的にオフ状態にする、請求項2に記載の双方向コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、双方向コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの電圧源の間で双方向に電力変換を行う双方向DC/DCコンバータが知られている。例えば、特許文献1には、従来の双方向コンバータが開示されている。特許文献1に記載の双方向コンバータは、昇降圧部と、スイッチング制御部と、を備える。
【0003】
昇降圧部は、第1ないし第4のスイッチ素子と、インダクタとを有する。また、昇降圧部は、第1の電圧源が接続される第1の端子対(第1の入出力端子および第1の基準端子)と、第2の電圧源が接続される第2の端子対(第2の入出力端子および第2の基準端子)とを有する。昇降圧部は、スイッチング制御部の制御に基づいて、第1の電圧源から第2の電圧源に電力伝送する場合と、第2の電圧源から第1の電圧源に電力伝送する場合とのそれぞれで、降圧動作または昇圧動作を行う。
【0004】
スイッチング制御部は、第1の端子対から第2の端子対に電力伝送する場合、第2および第4のスイッチ素子をオフしたまま、降圧動作時には第1のスイッチ素子のスイッチングを制御すると共に第3のスイッチ素子をオフにし、昇圧動作時には第1のスイッチ素子をオンすると共に第3のスイッチ素子のスイッチングを制御する。一方、第2の端子対から第1の端子対に電力伝送する場合、第1および第3のスイッチ素子をオフしたまま、降圧動作時には第4のスイッチ素子のスイッチングを制御すると共に第2のスイッチ素子をオフして、昇圧動作時には第4のスイッチ素子をオンすると共に第2のスイッチ素子のスイッチングを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の双方向コンバータにおいて、上記のように第1ないし第4のスイッチング素子のスイッチングを制御すると、第1の端子対に印加される電圧と第2の端子対に印加される電圧との大小が切り替わる時(昇圧状態と降圧状態とが切り替わる時)に、オーバーシュートまたはアンダーシュートが発生することがある。オーバーシュートおよびアンダーシュートは、内部回路および外部回路(外部の電源および負荷など)の各々の破壊または寿命を短くする要因であると共に、第1の端子対および第2の端子対間の電圧変換に悪影響を及ぼす。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、昇圧状態と降圧状態とが切り替わる時にオーバーシュートおよびアンダーシュートが発生することを抑制可能な双方向コンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の双方向コンバータは、第1高電位側端子および第1低電位側端子を含む第1端子対と、第2高電位側端子および第2低電位側端子を含む第2端子対と、複数のスイッチング素子、インダクタ、および、前記複数のスイッチング素子のうちの対応する1つにそれぞれ逆並列に接続された複数のダイオードを含み、前記第1端子対および前記第2端子対の間で双方向の電力伝送が可能な電力変換回路と、前記複数のスイッチング素子の各々のオンとオフとを切り替える駆動制御を行う制御部と、を備え、前記複数のスイッチング素子は、前記第1高電位側端子と前記インダクタの一端とに接続された第1スイッチング素子と、前記第1低電位側端子と前記インダクタの前記一端とに接続された第2スイッチング素子と、前記第2高電位側端子と前記インダクタの他端とに接続された第3スイッチング素子と、前記第2低電位側端子と前記インダクタの前記他端とに接続された第4スイッチング素子と、を含み、前記電力変換回路は、前記第1端子対および前記第2端子対の一方を一次側、前記第1端子対および前記第2端子対の他方を二次側として、前記一次側から前記二次側に昇圧して電力伝送を行う昇圧モードと、前記一次側から前記二次側に降圧して電力伝送を行う降圧モードと、前記一次側から前記二次側に昇圧および降圧での電力伝送を選択的に行う昇降圧モードとで、動作可能であり、前記昇降圧モードでは、昇圧状態と降圧状態とで前記複数のスイッチング素子の前記駆動制御が共通し、前記昇圧モードと前記降圧モードとは、前記昇降圧モードを介して切り替わり、前記二次側の低電位側のスイッチング素子は、前記昇降圧モードおよび前記昇圧モードの各々で、PWM制御されており、前記制御部は、前記昇降圧モードから前記昇圧モードに切り替わった時、前記二次側の低電位側のスイッチング素子を、一時的にオフ状態にした後、前記PWM制御する。
【0009】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記電力変換回路は、前記第1端子対に印加される第1電圧と前記第2端子対に印加される第2電圧との電圧差の絶対値が設定値よりも大きい時に、前記昇圧モードまたは前記降圧モードで動作し、前記電圧差の絶対値が設定値以下である時に、前記昇降圧モードで動作する。
【0010】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記制御部は、前記昇降圧モードから前記昇圧モードに切り替わってから、予め設定された時間が経過するまで、前記二次側の低電位側のスイッチング素子を一時的にオフ状態にする。
【0011】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記制御部は、前記昇降圧モードから前記昇圧モードに切り替わってから、前記電圧差が閾値以上となるまで、前記二次側の低電位側のスイッチング素子を一時的にオフ状態にする。
【0012】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記制御部は、前記昇降圧モードから前記昇圧モードに切り替わってから、二次側電流が閾値以下となるまで、前記二次側の低電位側のスイッチング素子を一時的にオフ状態にする。
【発明の効果】
【0013】
本開示の双方向コンバータでは、昇圧モードと降圧モードとは、昇降圧モードを介して切り替わる。この昇降圧モードでは、各スイッチング素子の駆動制御は、昇圧状態でも降圧状態でも共通する。この構成によれば、昇圧状態と降圧状態とが切り替わるタイミングにおいて、電力変換回路における電流の流れが同じとなる。したがって、本開示の双方向コンバータによれば、昇圧状態と降圧状態とが切り替わる時に、電力変換回路における電流の流れに変化が生じないので、オーバーシュートおよびアンダーシュートの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る双方向コンバータを示す全体構成図である。
【
図2】一実施形態に係る双方向コンバータの適用例を示す構成図である。
【
図3】一実施形態に係る双方向コンバータの各動作モードと各信号との関係を示す表である。
【
図4】一実施形態に係る双方向コンバータの各動作モード(第1昇圧モード、第1昇降圧モードおよび第1降圧モード)における制御状態を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る双方向コンバータの各動作モード(第2昇圧モード、第2昇降圧モードおよび第2降圧モード)における制御状態を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る双方向コンバータの制御部の詳細な構成例を示す機能ブロック図である。
【
図7】変形例に係る双方向コンバータの制御部の詳細な構成例を示す機能ブロック図である。
【
図8】変形例に係る双方向コンバータの制御部の詳細な構成例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の双方向コンバータの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る双方向コンバータA1を示している。双方向コンバータA1は、第1端子対T1、第2端子対T2、電力変換回路1、電流検出器21、3つの設定部31,32,33、制御部4および2つの検出部51,52を備える。
【0017】
電力変換回路1は、第1電圧源B1と第2電圧源B2の間に電気的に接続される。第1電圧源B1は、第1端子対T1に接続され、第2電圧源B2は、第2端子対T2に接続される。第1端子対T1は、第1高電位側端子T11および第1低電位側端子T12を含み、第2端子対T2は、第2高電位側端子T21および第2低電位側端子T22を含む。第1端子対T1には、第1電圧源B1の電源電圧が印加されており、第2端子対T2には、第2電圧源B2の電源電圧が印加されている。以下では、第1電圧源B1の電源電圧を「第1電圧E1」といい、第2電圧源B2の電源電圧を「第2電圧E2」という。よって、第1端子対T1には、第1電圧E1が印加され、第2端子対T2には、第2電圧E2が印加される。第1低電位側端子T12と第2低電位側端子T22とは、電気的に接続されており、同電位である。電力変換回路1は、これらの第1端子対T1と第2端子対T2との間で電力を双方向に伝送可能である。以下において、第1端子対T1から第2端子対T2に電力が伝送されている時の電力伝送方向を「第1方向」、第2端子対T2から第1端子対T1に電力が転送されている時の電力伝送方向を「第2方向」ということがある。電力伝送方向が第1方向(T1→T2)である時、第1端子対T1が一次側であり、第2端子対T2が二次側である。一方、電力伝送方向が第2方向(T2→T1)である時、第2端子対T2が一次側であり、第1端子対T1が二次側である。
【0018】
電力変換回路1は、4つのスイッチ部SW1~SW4およびインダクタL1を含む。スイッチ部SW1およびスイッチ部SW2は、互いに直列に接続されて、第1端子対T1に接続されている。図示された例では、スイッチ部SW1は、第1端子対T1の第1高電位側端子T11に接続され、スイッチ部SW2は、第1端子対T1の第1低電位側端子T12に接続されている。スイッチ部SW3およびスイッチ部SW4は、互いに直列に接続されて、第2端子対T2に接続されている。図示された例では、スイッチ部SW3は、第2端子対T2の第2高電位側端子T21に接続され、スイッチ部SW4は、第2端子対T2の第2低電位側端子T22に接続されている。インダクタL1は、2つのスイッチ部SW1,SW2の直列回路と、2つのスイッチ部SW3,SW4の直列回路との間に電気的に接続される。4つのスイッチ部SW1~SW4は、以上のように接続されることで、Hブリッジ回路を構成する。特に、本開示の双方向コンバータA1では、
図1に示すように、スイッチ部SW1の高電位側と、スイッチ部SW3の高電位側とが接続されていないことから、4つのスイッチ部SW1~SW4は、オープンHブリッジ回路である。
【0019】
図1に示すように、4つのスイッチ部SW1~SW4はそれぞれ、4つのスイッチング素子Q1~Q4のうちの対応する1つと4つのダイオードD1~D4のうちの対応する1つとを含む。
【0020】
各スイッチング素子Q1~Q4は、例えばトランジスタである。当該トランジスタの種類は、何ら限定されないが、例えばバイポーラトランジスタ、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)あるいはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが採用される。
図1に示す例では、各スイッチング素子Q1~Q4は、バイポーラトランジスタである。各スイッチング素子Q1~Q4には、制御部4から駆動信号(例えばオン信号、オフ信号およびPWM信号)が入力される。各スイッチング素子Q1~Q4は、入力される駆動信号に基づいて、常時オン状態、常時オフ状態およびスイッチング状態のいずれかで動作する。スイッチング状態では、各スイッチング素子Q1~Q4のオン(導通状態)とオフ(遮断状態)とが交互に切り替わる。スイッチング素子Q1は、第1高電位側端子T11とインダクタL1の一端とに接続されている。スイッチング素子Q2は、第1低電位側端子T12とインダクタL1の一端とに接続されている。スイッチング素子Q3は、第2高電位側端子T21とインダクタL1の他端とに接続されている。スイッチング素子Q4は、第2低電位側端子T22とインダクタL1の他端とに接続されている。
【0021】
ダイオードD1は、スイッチ部SW1において、スイッチング素子Q1に逆並列に接続されている。同様に、ダイオードD2は、スイッチ部SW2において、スイッチング素子Q2に逆並列に接続され、ダイオードD3は、スイッチ部SW3において、スイッチング素子Q3に逆並列に接続され、ダイオードD4は、スイッチ部SW4において、スイッチング素子Q4に逆並列に接続されている。なお、各ダイオードD1~D4は、スイッチング素子Q1~Q4と異なる部品であってもよいし、スイッチング素子Q1~Q4に内蔵されるダイオード成分であってもよい。
【0022】
本実施形態では、各スイッチ部SW1~SW4は、高電位側から低電位側に電流が流れる状態と、低電位側から高電位側に電流が流れる状態と、電流が流れない状態とがある。例えば、スイッチ部SW1において、高電位側から低電位側に電流が流れている状態では、スイッチング素子Q1に電流が流れる。また、スイッチ部SW1において、低電位側から高電位側に電流が流れている状態では、ダイオードD1に電流が流れる。スイッチ部SW1において、電流が流れない状態では、スイッチング素子Q1にもダイオードD1にも電流が流れない。このことは、他のスイッチ部SW2~SW4においても同様である。
【0023】
電力変換回路1は、第1電圧E1および第2電圧E2の大小関係と、第1端子対T1と第2端子対T2との間の電力伝送方向(第1方向か第2方向か)とによって、昇圧モード、降圧モードおよび昇降圧モードのいずれかの動作モードで動作する。これらの昇圧モード、降圧モードよび昇降圧モードは、電力伝送方向が第1方向である場合と、電力伝送方向が第2方向である場合とでそれぞれで存在する。なお、理解の便宜上、電力伝送方向が第1方向である場合の昇圧モード、降圧モードおよび昇降圧モードをそれぞれ、第1昇圧モード、第1降圧モード、第1昇降圧モードといい、電力の伝送方向が第2方向である場合の昇圧モード、降圧モードおよび昇降圧モードをそれぞれ、第2昇圧モード、第2降圧モード、第2昇降圧モードということがある。昇圧モード、降圧モードおよび昇降圧モードでの各スイッチング素子Q1~Q4の駆動制御は、互いに異なる。
【0024】
昇圧モードは、一次側から二次側に昇圧して電力伝送を行う動作モードである。第1昇圧モードでは、第1端子対T1が一次側となり、且つ第2端子対T2が二次側となって、電力変換回路1は、第1端子対T1に入力される電圧を、昇圧して第2端子対T2から出力する。第2昇圧モードでは、第2端子対T2が一次側となり、第1端子対T1が二次側となって、電力変換回路1は、第2端子対T2に入力される電圧を、昇圧して第1端子対T1から出力する。
【0025】
降圧モードは、一次側から二次側に降圧して電力伝送を行う動作モードである。第1降圧モードでは、第1端子対T1が一次側となり、且つ第2端子対T2が二次側となって、電力変換回路1は、第1端子対T1に入力される電圧を、降圧して第2端子対T2から出力する。第2降圧モードでは、第2端子対T2が一次側となり、第1端子対T1が二次側となって、電力変換回路1は、第2端子対T2に入力される電圧を、降圧して第1端子対T1から出力する。
【0026】
昇降圧モードは、一次側から二次側に昇圧および降圧での電力伝送を選択的に行う動作モードである。第1昇降圧モードでは、第1端子対T1が一次側となり、且つ第2端子対T2が二次側となって、電力変換回路1は、第1端子対T1に入力される電圧を、昇圧または降圧して第2端子対T2から出力する。第2昇降圧モードでは、第2端子対T2が一次側となり、且つ第1端子対T1が二次側となって、電力変換回路1は、第2端子対T2に入力される電圧を、昇圧または降圧して第1端子対T1から出力する。昇降圧モード(第1昇降圧モードおよび第2昇降圧モードの各々)では、昇圧する場合でも降圧する場合でも、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動制御は共通する。
【0027】
双方向コンバータA1において、昇圧モードと降圧モードとは、昇降圧モードを介して、切り替わる。よって、昇圧モードから降圧モードに切り替わる際には、まず、昇圧モードから昇降圧モードに切り替わる。そして、当該昇降圧モードで、第1電圧E1と第2電圧E2との大小関係が切り替わった後、昇降圧モードから降圧モードに切り替わる。反対に、降圧モードから昇圧モードに切り替わる際には、まず、降圧モードから昇降圧モードに切り替わる。そして、当該昇降圧モードで第1電圧E1と第2電圧E2との大小関係が切り替わった後、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わる。つまり、第1電圧E1と第2電圧E2との大小関係は、昇降圧モードで動作している時に反転する。
【0028】
双方向コンバータA1では、二次側の低電位側のスイッチング素子は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わった時、一時的にオフ状態となる。以下の説明では、二次側の低電位側のスイッチング素子を「オフ対象スイッチング素子」ということがある。そして、オフ状態を一定期間継続した後、通常の昇圧モードで駆動制御される。なお、後に詳述される構成から理解されるように、通常の昇降圧モードおよび通常の昇圧モードのそれぞれでは、オフ対象スイッチング素子は、PWM制御される。また、オフ対象スイッチング素子は、電力伝送方向が第1方向(T1→T2)である時はスイッチング素子Q4であり、電力伝送方向が第2方向(T2→T1)である時はスイッチング素子Q2である。よって、本実施形態では、電力伝送方向が第1方向(T1→T2)である時、第1昇降圧モードから第1昇圧モードに切り替わると、スイッチング素子Q4は、一時的にオフ状態となる。そして、一定期間オフ状態を継続した後、通常の第1昇圧モードで駆動制御(PWM制御)される。一方、電力伝送方向が第2方向(T2→T1)である時、第2昇降圧モードから第2昇圧モードに切り替わると、スイッチング素子Q2は、一時的にオフ状態となる。そして、一定期間オフ状態を継続した後、通常の第2昇圧モードで駆動制御(PWM制御)される。本実施形態では、オフ対象スイッチング素子は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、予め設定された時間経過するまで、オフ状態を維持する。よって、本実施形態では、オフ状態を維持する期間は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってからの経過時間により決まる。
【0029】
図2は、双方向コンバータA1の適用例を示している。
図2(a)は、双方向コンバータA1を太陽光発電システムに用いた例である。
図2(b)は、双方向コンバータA1をEV(Electric Vehicle)充放電システムに用いた例である。
図2(c),(d)は、双方向コンバータA1を蓄電システムと太陽光発電システムとの複合システムに用いた例である。
図2(e)は、双方向コンバータA1をV2X(Vehicle to Everything)システムと太陽光発電システムとの複合システムに用いた例である。
図2(a)~(e)において、K1は系統電源、PCSはパワーコンディショナ、PVは太陽光パネル、EVは電気自動車、Battは蓄電池、FCは周波数変換装置、Stdは充放電スタンドを示している。なお、
図2(a)~(e)に示す双方向コンバータA1の適用例は、一例であって、これらに限定されない。双方向コンバータA1の電力変換回路1は、双方向の電力伝送が可能であるが、一方向に電力伝送を行うものに適用することも可能である。
図2(b)に示す例において、双方向コンバータA1は、パワーコンディショナPCSと電気自動車EVとの間に接続される。そして、双方向コンバータA1は、パワーコンディショナPCSを介して入力される電力を変換して、電気自動車EVに出力することで、電気自動車EVの充電を行う。一方、双方向コンバータA1は、電気自動車EVから入力される電力を変換して、パワーコンディショナPCSに出力することで、電気自動車EVの放電を行う。
【0030】
電流検出器21は、電力変換回路1に流れる制御対象電流として、第2低電位側端子T22に流れる電流を検出する。電流検出器21は、制御対象電流の検出値に応じた検出信号を、制御部4(後述の制御信号生成部41)に出力する。
図1から理解されるように、制御対象電流の検出値は、第2低電位側端子T22から各スイッチ部SW1~SW4側に電流が流れている時に、正の値となる。なお、電流検出器21は、第2低電位側端子T22に流れる電流ではなく、第1高電位側端子T11、第1低電位側端子T12または第2高電位側端子T21に流れる電流を検出するものであってもよい。
【0031】
検出部51は、第1端子対T1における電気的な特性値を検出する。検出部51は、第1端子対T1に印加される第1電圧E1(すなわち第1電圧源B1の電源電圧)を検出する電圧検出器511を含む。検出部51の出力(第1電圧E1の検出値)は、制御部4に出力される。
【0032】
検出部52は、第2端子対T2における電気的な特性値を検出する。検出部52は、第2端子対T2に印加される第2電圧E2(すなわち第2電圧源B2の電源電圧)を検出する電圧検出器521を含む。検出部52の出力(第2電圧E2の検出値)は、制御部4に出力される。
【0033】
設定部31は、制御対象電流の設定を行う。設定部31は、制御対象電流の設定値を、制御部4(後述の制御信号生成部41)に出力する。制御対象電流の設定値は、例えば、第1端子対T1から第2端子対T2に電力伝送を行う時には、正の値であり、第2端子対T2から第1端子対T1に電力伝送を行う時には、負の値である。なお、設定部31で設定する電流値は、電流検出器21による電流の検出箇所に応じて、適宜変更される。
【0034】
設定部33は、各動作モードにおいて、昇圧モードおよび降圧モードと、昇降圧モードとを切り替える切替電圧を設定する。設定部33は、切替電圧の設定値を制御部4(後述の動作モード判定部43)に出力する。
【0035】
設定部34は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、一定期間経過したか否かを判定するための判定値(以下「経過判定値」という)を設定する。つまり、設定部34は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わって、一時的にオフ状態にしたオフ対象スイッチング素子(スイッチング素子Q2またはスイッチング素子Q4)を、通常の昇圧モードでの駆動制御を開始するための判定値(経過判定値)を設定する。本実施形態では、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってからの経過時間によって、通常の昇圧モードでの駆動制御を開始するので、経過判定値として、時間に応じた判定値(以下「判定時間」という)が設定される。設定部34は、経過判定値(本実施形態では判定時間)の設定値を制御部4(後述の停止判定部46)に出力する。
【0036】
制御部4は、複数のスイッチング素子Q1~Q4の各々に駆動信号を入力することで、各スイッチング素子Q1~Q4のオンとオフとを切り替える駆動制御を行う。制御部4は、駆動信号として、PWM信号、オン信号またはオフ信号を選択的に出力する。PWM信号が入力されたスイッチング素子Q1~Q4は、PWM制御される。オン信号が入力されたスイッチング素子Q1~Q4は、常時オンに制御される。オフ信号が入力されたスイッチング素子Q1~Q4は、常時オフに制御される。
図1に示すように、制御部4は、制御信号生成部41、動作モード判定部43、PWM信号生成部45、停止判定部46および駆動信号生成部47を含む。以下の説明において、ある出力がローレベルである信号を「L信号」といい、ある出力がハイレベルである信号を「H信号」という。先述のPWM信号は、ある出力がローレベルとハイレベルとを交互に繰り返す信号に相当する。また、L信号は、デューティ比が0%である信号に相当し、H信号は、デューティ比が100%である信号に相当する。なお、ローレベルおよびハイレベルの具体的な大きさは、対応する出力ごとに設定される。
【0037】
制御信号生成部41には、設定部31の出力(制御対象電流の設定値)と電流検出器21の出力(制御対象電流の検出値)とがそれぞれ入力される。制御信号生成部41は、制御対象電流の値を設定部31で設定された設定値にするための制御信号を生成する。制御信号生成部41は、生成した制御信号をPWM信号生成部45に出力する。
【0038】
動作モード判定部43には、設定部33の出力(切替電圧の設定値)と2つの電圧検出器511,521の各出力(第1電圧E1および第2電圧E2の各検出値)がそれぞれ入力される。動作モード判定部43は、動作モードの判定を行い、各動作モードに応じて昇圧許可信号および降圧許可信号を出力する。
図3に示すように、動作モード判定部43は、昇圧モードであると判定すると、昇圧許可信号をH信号に、降圧許可信号をL信号にする。また、降圧モードであると判定すると、昇圧許可信号をL信号に、降圧許可信号をH信号にする。また、昇降圧モードであると判定すると、昇圧許可信号および降圧許可信号をともにL信号にする。
【0039】
動作モード判定部43は、電力変換回路1の一次側電圧と二次側電圧との電圧差(一次側電圧-二次側電圧)を演算する。電力伝送方向が第1方向である時、第1電圧E1が一次側電圧であり、第2電圧E2が二次側電圧である。一方、電力伝送方向が第2方向である時、第2電圧E2が一次側電圧であり、第1電圧E1が二次側電圧である。なお、動作モード判定部43は、電力伝送方向が第1方向であるか第2方向であるかは、例えば制御対象電流に基づいて判断する。例えば、動作モード判定部43は、制御対象電流が正の値である時に電力伝送方向が第1方向であると判断し、制御対象電流が負の値である時に電力伝送方向が第2方向であると判断する。動作モード判定部43は、電圧差の絶対値が切替電圧よりも大きく(|電圧差|>切替電圧)且つ電圧差が負の値(一次側電圧<二次側電圧)である時、昇圧モードであると判定する。また、電圧差の絶対値が切替電圧よりも大きく(|電圧差|>切替電圧)且つ電圧差が正の値(一次側電圧>二次側電圧)である時、降圧モードであると判定する。また、電圧差の絶対値が切替電圧以下(|電圧差|≦切替電圧)である時、電圧差が正の値(一次側電圧>二次側電圧)であるか負の値(一次側電圧<二次側電圧)であるかに関わらず、昇降圧モードであると判定する。なお、昇圧モード、降圧モードおよび昇降圧モードの判定においては、上記電力伝送方向が第1方向であるか第2方向であるかに応じて、第1昇圧モードであるか第2昇圧モードであるか、第1降圧モードであるか第2降圧モードであるか、第1昇降圧モードであるか第2昇降圧モードであるかをそれぞれ判定する。なお、切替電圧は、第1電圧E1と第2電圧E2とに応じて適宜設定され、第1電圧E1および第2電圧E2の一方が0V~800Vであり、他方が300V~450Vである例において、例えば100Vである。
【0040】
PWM信号生成部45には、制御信号生成部41の出力(制御信号)が入力される。PWM信号生成部45は、入力される制御信号を用いてPWM信号を生成する。PWM信号生成部45は、生成したPWM信号を、駆動信号生成部47に出力する。
【0041】
停止判定部46には、動作モード判定部43の出力(昇圧許可信号および降圧許可信号)と、設定部34の出力(経過判定値の設定値)とが入力される。停止判定部46は、昇圧許可信号および降圧許可信号と、経過判定値(本実施形態では判定時間)の設定値とに基づいて、オフ対象スイッチング素子を、一時的にオフ状態にするための停止信号を出力する。例えば、停止判定部46は、まず、動作モード判定部43の判定結果に基づいて、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わったか否かを判定する。そして、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わったと判定した場合、次いで、経過判定値の設定値に基づいて、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから一定期間経過したか否かを判定する。停止判定部46は、この一定期間経過したか否かの判定結果により、L信号またはH信号の停止信号を出力する。本実施形態では、停止判定部46は、第1昇降圧モードから第1昇圧モードに切り替わった場合、スイッチング素子Q4を、一定期間オフ状態にするために、例えばH信号の停止信号を出力する。また、停止判定部46は、第2昇降圧モードから第2昇圧モードに切り替わった場合に、スイッチング素子Q2を、一定期間オフ状態にするために、例えばH信号の停止信号を出力する。
【0042】
駆動信号生成部47には、PWM信号生成部45の出力(PWM信号)と動作モード判定部43の各出力(昇圧許可信号および降圧許可信号)と停止判定部46の出力(停止信号)とがそれぞれ入力される。駆動信号生成部47は、入力されるPWM信号、停止信号、昇圧許可信号および降圧許可信号を基に、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号を生成する。駆動信号生成部47は、停止判定部46からH信号の停止信号が入力される間、オフ対象スイッチング素子(スイッチング素子Q2またはスイッチング素子Q4)をオフ状態にするための駆動信号を生成する。
【0043】
本実施形態では、各動作モードにおける各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号は、次の通りである。第1昇圧モードの場合、
図3に示すように、駆動信号生成部47には、H信号の昇圧許可信号とL信号の降圧許可信号とが入力され、スイッチング素子Q1がオン、スイッチング素子Q2,Q3がオフ、スイッチング素子Q4がPWM制御となるように、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号を生成する。第1降圧モードの場合、
図3に示すように、駆動信号生成部47には、L信号の昇圧許可信号とH信号の降圧許可信号とが入力され、スイッチング素子Q1がPWM制御、スイッチング素子Q2,Q3,Q4がオフとなるように、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号を生成する。第1昇降圧モードの場合、
図3に示すように、駆動信号生成部47には、L信号の昇圧許可信号とL信号の降圧許可信号とが入力され、スイッチング素子Q1,Q4がPWM制御、スイッチング素子Q2,Q3がオフとなるように、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号を生成する。この例とは異なり、第1昇降圧モードの場合、駆動信号生成部47は、スイッチング素子Q2,Q3がPWM制御となるように、各スイッチング素子Q2,Q3の駆動信号を生成してもよい。この場合の各スイッチング素子Q2,Q3の駆動信号は、各スイッチング素子Q1,Q4の駆動信号が反転した信号である。
【0044】
第2昇圧モードの場合、
図3に示すように、駆動信号生成部47には、H信号の昇圧許可信号とL信号の降圧許可信号とが入力され、スイッチング素子Q3がオン、スイッチング素子Q1,Q4がオフ、スイッチング素子Q2がPWM制御となるように、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号を生成する。第2降圧モードの場合、
図3に示すように、駆動信号生成部47には、L信号の昇圧許可信号とH信号の降圧許可信号とが入力され、スイッチング素子Q3がPWM制御、スイッチング素子Q1,Q2,Q4がオフとなるように、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号を生成する。第2昇降圧モードの場合、
図3に示すように、駆動信号生成部47には、L信号の昇圧許可信号とL信号の降圧許可信号とが入力され、スイッチング素子Q2,Q3がPWM制御、スイッチング素子Q1,Q4がオフとなるように、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号を生成する。この例とは異なり、第2昇降圧モードの場合、駆動信号生成部47は、スイッチング素子Q1,Q4がPWM制御となるように、各スイッチング素子Q1,Q4の駆動信号を生成してもよい。この場合の各スイッチング素子Q1,Q4の駆動信号は、各スイッチング素子Q2,Q3の駆動信号が反転した信号である。
【0045】
制御部4の構成は、上記した例(
図1に示す例)に限定されない。
図1に示す構成と異なり、切替許可信号が、切替可否判定部42からPWM信号生成部45に入力されるようにしてもよい。この場合、PWM信号生成部45は、入力される切替許可信号がL信号である時に、制御信号に制限を加える。
【0046】
図4および
図5は、各動作モード(昇圧モード、降圧モードおよび昇降圧モード)における、各スイッチング素子Q1~Q4のオンオフの状態と流れる電流の状態とを示している。
図4(a)は第1昇圧モードを、
図4(b)は第1昇降圧モードを、
図4(c)は第1降圧モードの時をそれぞれ示している。
図5(a)は第2昇圧モードを、
図5(b)は第2昇降圧モードを、
図5(c)は第2降圧モードの時をそれぞれ示している。
【0047】
第1昇圧モードでは、
図4(a)に示すように、制御部4は、スイッチング素子Q1をオンにし、且つ2つのスイッチング素子Q2,Q3の両方をオフにしたまま、スイッチング素子Q4をスイッチングさせる。これにより、第1昇圧モードにおいて、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、
図4(a)の上図に示すように、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには、高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW3のいずれにも電流が流れない。この時、第1電圧源B1(第1端子対T1)からインダクタL1に電力が供給される。2つ目の状態では、
図4(a)の下図に示すように、スイッチ部SW1には、高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW3には、低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW4のそれぞれには電流が流れない。この時、第1電圧源B1(第1端子対T1)からインダクタL1に電力が供給されつつ、インダクタL1から第2電圧源B2(第2端子対T2)に電力が供給される。
【0048】
第1昇降圧モードでは、
図4(b)に示すように、制御部4は、2つのスイッチング素子Q1,Q4をスイッチングさせ、且つ2つのスイッチング素子Q2,Q3の両方をオフにする。これにより、第1昇降圧モードにおいて、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、
図4(b)の上図に示すように、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW3のそれぞれには電流が流れない。これにより、第1電圧源B1(第1端子対T1)からインダクタL1にエネルギーが蓄積される。2つ目の状態では、
図4(b)の下図に示すように、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには電流が流れず、スイッチ部SW2,SW3には、低電位側から高電位側に電流が流れる。これにより、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが、第2電圧源B2(第2端子対T2)に放出される。なお、2つ目の状態において1つ目の状態からインダクタL1に電流が連続的に流れるため、2つのスイッチング素子Q2,Q3がそれぞれオンになっても、各ダイオードD2,D3に電流が流れる。つまり、スイッチ部SW2,SW3の各々では、低電位側から高電位側に電流が流れる。これは、スイッチング素子Q2,Q3のオン電圧が各ダイオードD2,D3の順方向電圧よりも低ければ、同期整流と同じ効果が得られるためである。よって、スイッチング素子Q2,Q3をオフにしなくても、各ダイオードD2,D3に電流を流すことができる。このため、先述の通り、第1昇降圧モードにおいて、2つのスイッチング素子Q2,Q3は、PWM制御されてもよい。
【0049】
第1降圧モードでは、
図4(c)に示すように、制御部4は、3つのスイッチング素子Q2~Q4のそれぞれオフにしたまま、スイッチング素子Q1をスイッチングさせる。これにより、第1降圧モードにおいて、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、
図4(c)の上図に示すように、スイッチ部SW1には高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW3には低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW4には電流が流れない。この時、第1電圧源B1(第1端子対T1)からインダクタL1に電極が供給されつつ、インダクタL1から第2電圧源B2(第2端子対T2)に電力が供給される。2つ目の状態では、
図4(c)の下図に示すように、スイッチ部SW2,SW3には低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW1,SW4には電流が流れない。この時、インダクタL1から第2電圧源B2(第2端子対T2)に電力が供給される。
【0050】
第2昇圧モードでは、
図5(a)に示すように、制御部4は、スイッチング素子Q3をオンにし、且つ2つのスイッチング素子Q1,Q4の両方をオフにしたまま、スイッチング素子Q2をスイッチングさせる。これにより、第2昇圧モードにおいて、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、
図5(a)の上図に示すように、スイッチ部SW2,SW3のそれぞれには、高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW1,SW4のいずれにも電流が流れない。この時、第2電圧源B2(第2端子対T2)からインダクタL1に電力が供給される。2つ目の状態では、
図5(a)の下図に示すように、スイッチ部SW3には、高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW1には、低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW4のそれぞれには電流が流れない。この時、第2電圧源B2(第2端子対T2)からインダクタL1に電力が供給されつつ、インダクタL1から第1電圧源B1(第1端子対T1)に電力が供給される。
【0051】
第2昇降圧モードでは、
図5(b)に示すように、制御部4は、2つのスイッチング素子Q2,Q3をスイッチングさせ、且つ2つのスイッチング素子Q1,Q4の両方をオフにする。これにより、第2昇降圧モードにおいて、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、
図5(b)の上図に示すように、スイッチ部SW2,SW3のそれぞれには高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには電流が流れない。これにより、第2電圧源B2(第2端子対T2)からインダクタL1にエネルギーが蓄積される。2つ目の状態では、
図5(b)の下図に示すように、スイッチ部SW2,SW3のそれぞれには電流が流れず、スイッチ部SW1,SW4には、低電位側から高電位側に電流が流れる。これにより、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが、第1電圧源B1(第1端子対T1)に放出される。なお、2つ目の状態において1つ目の状態からインダクタL1に電流が連続的に流れるため、2つのスイッチング素子Q1,Q4がそれぞれオンになっても、各ダイオードD1,D4に電流が流れる。つまり、スイッチ部SW1,SW4の各々では、低電位側から高電位側に電流が流れる。これは、スイッチング素子Q1,Q4のオン電圧が各ダイオードD1,D4の順方向電圧よりも低ければ、同期整流と同じ効果が得られるためである。よって、スイッチング素子Q1,Q4をオフにしなくても、各ダイオードD1,D4に電流を流すことができる。このため、先述の通り、第2昇降圧モードにおいて、2つのスイッチング素子Q1,Q4は、PWM制御されてもよい。
【0052】
第2降圧モードでは、
図5(c)に示すように、制御部4は、3つのスイッチング素子Q1,Q2,Q4のそれぞれオフにしたまま、スイッチング素子Q3をスイッチングさせる。これにより、第2降圧モードにおいて、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、
図5(c)の上図に示すように、スイッチ部SW3には高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW1には低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW4には電流が流れない。この時、第2電圧源B2(第2端子対T2)からインダクタL1に電極が供給されつつ、インダクタL1から第1電圧源B1(第1端子対T1)に電力が供給される。2つ目の状態では、
図5(c)の下図に示すように、スイッチ部SW1,SW4には低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW3には電流が流れない。この時、インダクタL1から第1電圧源B1(第1端子対T1)に電力が供給される。
【0053】
次に、電力伝送方向が第1方向である場合における制御部4の詳細な構成例について、
図6を参照して、説明する。
図6は、電力伝送方向が第1方向である場合における制御部4の制御ブロック図を示している。当該制御ブロック図は、一例であって、これに限定されない。なお、本実施形態の双方向コンバータA1は、インダクタL1を挟んで第1端子対T1側と第2端子対T2側とが対称的であるため、電力伝送方向が第2方向である場合も同様に構成される。この場合、一次側と二次側とが反対となり、また、駆動信号生成部47から各スイッチング素子Q1,Q4への駆動信号は、スイッチング素子Q2,Q3への駆動信号として考えればよい。
【0054】
図6に示すように、制御信号生成部41は、演算器411および制御器412を含む。動作モード判定部43は、演算器431および判定回路432を含む。PWM信号生成部45は、キャリア発生器451および比較器453を含む。停止判定部46は、AND回路461、カウンタ462および比較器463を含む。駆動信号生成部47は、OR回路471、AND回路472およびOR回路473を含む。
【0055】
演算器411には、電流検出器21の出力(制御対象電流の検出値)と設定部31の出力(制御対象電流の設定値)とが入力される。演算器411は、制御対象電流の設定値から制御対象電流の検出値を減算する。
【0056】
制御器412には、演算器411の出力(演算結果)が入力される。制御器412は、例えばPI制御(比例・積分制御)を行う。制御器412は、PI制御ではなく、P制御(比例制御)またはPID制御(比例・積分・微分制御)を行う構成であってもよい。
【0057】
演算器431には、2つの電圧検出器511,521の各出力(第1電圧E1および第2電圧E2の各検出値)が入力される。演算器431は、一次側電圧から二次側電圧を減算することで、一次側電圧と二次側電圧との電圧差を算出する。
図6に示す例では、第1端子対T1側が一次側であり、第2端子対T2側が二次側であるので、演算器431は、第1電圧E1の検出値(電圧検出器511の出力)から第2電圧E2の検出値(電圧検出器521の出力)を減算する(E1-E2)。
【0058】
判定回路432には、演算器431の出力(演算結果)および設定部33の出力(切替電圧)がそれぞれ入力される。判定回路432は、演算器431の演算結果(E1-E2)の絶対値が切替電圧以下である時(
図3において切替電圧判定がH判定)、昇降圧モード(第1昇降圧モード)であると判定する。また、判定回路432は、演算器431の演算結果(E1-E2)の絶対値が切替電圧以上である時(
図3において切替電圧判定がL判定)、第1電圧E1が第2電圧E2よりも小さければ(E1<E2)、昇圧モード(第1昇圧モード)であると判定し、第1電圧E1が第2電圧E2よりも大きければ(E1>E2)、降圧モード(第1降圧モード)であると判定する。判定回路432は、昇圧モードであると判定すると、H信号の昇圧許可信号とL信号の降圧許可信号とを出力する。また、判定回路432は、降圧モードであると判定すると、L信号の昇圧許可信号とH信号の降圧許可信号とを出力する。また、判定回路432は、昇降圧モードであると判定すると、L信号の昇圧許可信号とL信号の降圧許可信号とを出力する。
【0059】
キャリア発生器451は、例えば三角波のキャリア信号を発生させる。
【0060】
比較器453には、制御器412の出力(制御信号)、および、キャリア発生器451の出力(キャリア信号)がそれぞれ入力される。比較器453の非反転入力端子には、制御器412が接続されており、比較器453の反転入力端子には、キャリア発生器451が接続されている。比較器453は、制御信号がキャリア信号以上である時、H信号を出力し、制御信号がキャリア信号未満である時、L信号を出力する。比較器453の出力は、上記PWM信号である。
【0061】
AND回路461には、判定回路432の出力(昇圧許可信号および降圧許可信号)が入力される。判定回路432から出力される昇圧許可信号および降圧許可信号のうち、降圧許可信号は、AND回路461に反転入力される。昇圧モードでは、判定回路432から、H信号の昇圧許可信号とL信号の降圧許可信号とが出力されるので、AND回路461の出力は、H信号となる。昇降圧モードでは、判定回路432から、L信号の昇圧許可信号とL信号の降圧許可信号とが出力されるので、AND回路461の出力は、L信号となる。降圧モードでは、判定回路432から、L信号の昇圧許可信号とH信号の降圧許可信号とが出力されるので、AND回路461の出力は、L信号となる。
【0062】
カウンタ462は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わったタイミングでカウントを開始する。カウンタ462には、AND回路461の出力が入力される。例えば、カウンタ462は、AND回路461から入力される信号がL信号からH信号に変わった時に、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わったと判定して、カウントを開始する。カウンタ462は、例えばアップカウンタであって、0(ゼロ)から所定時間経過するごとに1ずつ加算したカウント値を出力する。なお、AND回路461から入力される信号がL信号である場合、つまり、昇降圧モードおよび降圧モードである場合は、カウンタ462は、カウント値として上記判定時間以上の固定値を出力する。
【0063】
比較器463には、カウンタ462の出力(カウント値)と設定部34の出力(経過判定値の設定値)とが入力される。本実施形態では、経過判定値の設定値として判定時間の設定値が入力される。比較器463の非反転入力端子には、カウンタ462が接続されており、比較器463の反転入力端子には、設定部34が接続されている。比較器463は、入力されるカウント値が判定時間(経過判定値)未満である場合、L信号である停止信号を出力し、入力されるカウント値が判定時間(経過判定値)の以上である場合に、H信号である停止信号を出力する。先述の通り、昇降圧モードおよび降圧モードでは、入力されるカウント値は判定時間以上であるので、比較器463からはH信号である停止信号が出力される。
【0064】
OR回路473には、判定回路432の出力(降圧許可信号)と、比較器463の出力(停止信号)とがそれぞれ入力される。
図6に示すように、比較器463の出力は、OR回路473に反転入力される。OR回路473は、比較器463から出力される停止信号がL信号である時(OR回路473にはH信号に反転されて入力される)、または、降圧許可信号がH信号である時に、H信号を出力する。また、OR回路473は、比較器463から出力される停止信号がH信号であり(OR回路473にはL信号に反転されて入力される)、且つ降圧許可信号がL信号である時に、L信号を出力する。よって、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから上記判定時間経過するまでの間と、降圧モードである間とは、OR回路473からH信号が出力される。また、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから上記判定時間経過した後と、昇降圧モードである間とは、OR回路473からL信号が出力される。
【0065】
OR回路471には、比較器453の出力(PWM信号)と判定回路432の出力(昇圧許可信号)とがそれぞれ入力される。OR回路471の出力は、スイッチング素子Q1(ゲート電極)に入力される。つまり、OR回路471の出力は、スイッチング素子Q1の駆動信号である。OR回路471は、入力される昇圧許可信号がH信号である時、オン信号を出力する。また、OR回路471は、入力される昇圧許可信号がL信号である時、比較器453(PWM信号生成部45)から入力されるPWM信号を出力する。これにより、スイッチング素子Q1は、
図4に示すように、第1昇圧モードの時に、常時オンとなり、第1昇降圧モードおよび第1降圧モードの時に、PWM制御される。
【0066】
AND回路472には、比較器453の出力(PWM信号)とOR回路473の出力とがそれぞれ入力される。
図6に示すように、OR回路473の出力は、AND回路472に反転入力される。AND回路472の出力は、スイッチング素子Q4(ゲート電極)に入力される。つまり、AND回路472の出力は、スイッチング素子Q4の駆動信号である。AND回路472は、OR回路473からH信号が出力されている時(つまり、OR回路473からのAND回路472への入力がL信号である時)、オフ信号を出力する。AND回路472は、OR回路473からL信号が出力されている時(つまり、OR回路473からのAND回路472への入力はH信号である)、比較器453(PWM信号生成部45)から入力されるPWM信号を出力する。本実施形態では、第1昇降圧モードから第1昇圧モードに切り替わってから上記判定時間経過するまでの間、および、第1降圧モードである間は、OR回路473からH信号が出力されているので、AND回路472からは、オフ信号が出力される。一方、第1昇降圧モードから第1昇圧モードに切り替わってから上記判定時間経過した後、および、第1昇降圧モードである間は、OR回路473からL信号が出力されているので、AND回路472からは、PWM信号が出力される。これにより、スイッチング素子Q4は、
図4に示すように、第1昇降圧モードおよび通常の第1昇圧モードの時に、PWM制御され、第1降圧モードの時に、常時オフ状態となる。また、第1昇降圧モードから第1昇圧モードに切り替わった時には一時的に(判定時間が経過するまで)オフ状態となる。
【0067】
なお、
図6に示す制御部4の構成は、電力伝送方向が第1方向である場合での主要な構成部分を抽出したものである。例えば、PWM信号生成部45は、スイッチング素子Q2,Q3に対するPWM信号を生成する構成を含むが、これらの記載を省略する。例えば、スイッチング素子Q2,Q3に対するPWM信号は、スイッチング素子Q1,Q4に対するPWM信号を反転させたものとなる(好ましくはこれらのPWM信号にデッドタイムが設けられる)。また、駆動信号生成部47には、スイッチング素子Q2,Q3の駆動信号を生成する構成を含むが、これらの記載を省略する。例えば、駆動信号生成部47は、
図3および
図4から理解されるように、スイッチング素子Q2,Q3を常時オフにする駆動信号(オフ信号)を生成して、対応するスイッチング素子Q2,Q3にそれぞれ出力する。
【0068】
双方向コンバータA1の作用および効果は、次の通りである。
【0069】
双方向コンバータA1では、制御部4は、昇圧モードと降圧モードとを、昇降圧モードを介して切り替える。この時、一次側電圧と二次側電圧との大小関係(昇圧状態と降圧状態と)が昇降圧モードで切り替わる。この昇降圧モードでは、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動制御は、昇圧状態でも降圧状態でも共通する。この構成によれば、昇圧状態と降圧状態とが切り替わるタイミングにおいて、電力変換回路1における電流の流れが同じとなる。したがって、双方向コンバータA1では、第1電圧E1と第2電圧E2との大小関係が変わる時、すなわち、昇圧状態と降圧状態とが切り替わる時に、電力変換回路1における電流の流れに変化が生じないので、オーバーシュートおよびアンダーシュートの発生を抑制できる。ただし、双方向コンバータA1の昇圧モードでは、PWM制御されるスイッチング素子がオフである時にインダクタL1の電流がほとんど減少しない一方で、PWM制御されるスイッチング素子がオンである時に、インダクタL1の電流が増加する。なお、昇圧モードにおいてPWM制御されるスイッチング素子とは、電力伝送方向が第1方向である時(T1→T2)は、スイッチング素子Q4であり、電力伝送方向が第2方向である時(T2→T1)は、スイッチング素子Q2である。このため、昇降圧モードから昇圧モードに切り替える際に、すぐにスイッチング素子Q4(第1昇圧モードの時)またはスイッチング素子Q2(第2昇圧モードの時)のPWM制御を開始すると、二次側電流にオーバーシュートまたはアンダーシュートが発生することがある。そこで、双方向コンバータA1では、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わった時に、二次側の低電位側のスイッチング素子(オフ対象スイッチング素子)を、一時的にオフ状態にする。これにより、一次側電圧と二次側電圧との電圧差を大きくして、二次側電流を小さくすることが可能となる。つまり、昇降圧モードから昇圧モードへの切り替え時において、二次側電流が大きい状態で、切り替えることを抑制できる。したがって、二次側電流にオーバーシュートまたはアンダーシュートが発生することを抑制できる。つまり、双方向コンバータA1は、昇圧状態と降圧状態とが切り替わる際のオーバーシュートおよびアンダーシュートを抑制しつつ、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わる際のオーバーシュートおよびアンダーシュートを抑制できる。
【0070】
双方向コンバータA1では、制御部4は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、予め設定された時間(上記判定時間)経過するまで、二次側の低電位側のスイッチング素子(オフ対象スイッチング素子)をオフ状態にする。なお、上記判定時間は、一次側電圧と二次側電圧との電圧差を大きくして、二次側電流を一定値以下にするために必要な時間に基づいて設定されればよい。このような構成によれば、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わった際、対象電圧差が大きくなって、二次側電流が適度に小さくなるまでの一定期間、オフ対象スイッチング素子をオフ状態にできる。つまり、二次側電流が適度に小さくなってから、オフ対象スイッチング素子のPWM制御が開始される。したがって、双方向コンバータA1は、昇降圧モードから昇圧モードへの切り替わり時のオーバーシュートまたはアンダーシュートを抑制できる。
【0071】
次に、本開示に双方向コンバータの変形例について、
図7および
図8を参照して説明する。上記実施形態では、オフ状態を維持する期間が、上記判定時間によって決定されたが、例えば、
図7に示す構成によって、一次側電圧と二次側電圧との電圧差によって決定されてもよいし、
図8に示す構成によって、オフ状態を維持する期間は、二次側電流の大きさによって決定されてもよい。
図7および
図8は、変形例に係る双方向コンバータA2,A3の制御部4であって、電力伝送方向が第1方向である場合における制御部4の構成例を示している。なお、各双方向コンバータA2,A3において、制御部4以外は、双方向コンバータA1と同様に構成される。よって、各変形例に係る双方向コンバータA2,A3も、双方向コンバータA1と同様に、インダクタL1を挟んで第1端子対T1側と第2端子対T2側とが対称的であるため、電力伝送方向が第2方向である場合も、一次側と二次側と逆にして同様に構成される。
【0072】
図7に示す双方向コンバータA2では、制御部4は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、一次側電圧と二次側電圧との電圧差が予め設定された閾値以上となるまで、オフ対象スイッチング素子をオフ状態にする。この構成では、設定部34は、経過判定値として、一次側電圧と二次側電圧との電圧差に応じた判定値(以下「判定電圧」という)を設定する。なお、以下の説明において、一次側電圧と二次側電圧との電圧差を「対象電圧差」という。そして、制御部4は、対象電圧差が、判定電圧以上となった場合に、通常の昇圧モードでの駆動制御を開始する。判定電圧は、例えば切替電圧よりも大きな値が設定される。
【0073】
双方向コンバータA2の停止判定部46には、動作モード判定部43の出力(対象電圧差、昇圧許可信号および降圧許可信号)と、設定部34の出力(経過判定値の設定値)とが入力される。停止判定部46は、昇圧許可信号および降圧許可信号と、対象電圧差および経過判定値(本実施形態では判定電圧)の設定値とに基づいて、オフ対象スイッチング素子を、一時的にオフ状態にするための停止信号を出力する。例えば、停止判定部46は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、対象電圧差が判定電圧以上となるまでの間、L信号の停止信号を出力する。一方、停止判定部46は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、対象電圧差が判定電圧以上となると、H信号の停止信号を出力する。
【0074】
図7に示す制御部4と、
図6に示す制御部4(双方向コンバータA1の制御部4)とを比較すると、主に停止判定部46の構成が異なる。
図7に示す停止判定部46は、比較器463、AND回路464、絶対値回路465、NOT回路466、NOR回路467およびOR回路468を含む。
【0075】
絶対値回路465には、演算器431の出力(演算結果)が入力される。絶対値回路465は、第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(E1-E2)の絶対値(対象電圧差の絶対値)に応じた信号を出力する。
【0076】
比較器463には、絶対値回路465の出力(対象電圧差の絶対値に応じた信号)と、設定部34(判定電圧の設定値)とがそれぞれ入力される。比較器463の非反転入力端子には、絶対値回路465が接続されており、比較器463の反転入力端子には、設定部34が接続されている。比較器463は、第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(絶対値)が判定電圧以上である時、H信号を出力し、第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(絶対値)が判定電圧未満である時、L信号を出力する。なお、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わった直後では、第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(絶対値)が小さい(判定電圧未満である)ので、L信号が出力される。その後、昇圧モードでの動作によって、第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(絶対値)が大きくなる(判定電圧以上となる)ので、H信号が出力される。つまり、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わった時には、一時的にL信号を継続した後にH信号に切り替わる。
【0077】
NOT回路466には、判定回路432の出力(降圧許可信号)が入力される。NOT回路466は、降圧許可信号の反転信号を出力する。よって、NOT回路466は、入力される降圧許可信号がH信号である時、L信号を出力し、入力される降圧許可信号がL信号である時、H信号を出力する。
【0078】
NOR回路467には、判定回路432の出力(昇圧許可信号および降圧許可信号)が入力される。NOR回路467は、昇圧許可信号および降圧許可信号の少なくとも一方がH信号である時、L信号を出力し、昇圧許可信号および降圧許可信号がともにL信号である時、H信号を出力する。よって、NOR回路467は、判定回路432が昇圧モードあるいは降圧モードであると判定した場合、L信号を出力し、判定回路432が昇降圧モードであると判定した場合、H信号を出力する。
【0079】
OR回路468には、NOR回路467の出力と比較器463の出力とがそれぞれ入力される。OR回路468は、NOR回路467の出力および比較器463の出力の少なくとも一方がH信号である時、H信号を出力し、NOR回路467の出力および比較器463の出力がともにL信号である時、L信号を出力する。よって、昇降圧モードである時と、第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(絶対値)が判定電圧以上である時とに、OR回路468からは、H信号が出力される。一方で、昇降圧モードではなく(昇圧モードまたは降圧モードであり)且つ第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(絶対値)が判定電圧未満である時に、OR回路468からは、L信号が出力される。つまり、昇圧モードであっても、第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(絶対値)が判定電圧未満である時には、OR回路468からL信号が出力される。
【0080】
AND回路464には、NOT回路466の出力とOR回路468の出力とがそれぞれ入力される。AND回路464は、NOT回路466の出力およびOR回路468の出力がともにH信号である時にH信号を出力し、いずれか一方でもL信号である時にはL信号を出力する。よって、昇圧モードであり且つ第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(絶対値)が判定電圧以上である時と、昇降圧モードである時とでは、AND回路464からH信号が出力される。一方、昇圧モードであり且つ第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差(絶対値)が判定電圧未満である時と、降圧モードである時とでは、AND回路464からL信号が出力される。
【0081】
以上のように構成された停止判定部46では、昇降圧モードから昇圧モードに切り替っても、一次側電圧と二次側電圧との電圧差(対象電圧差)の絶対値が判定電圧未満である間は、L信号の停止信号が出力される。これにより、駆動信号生成部47において、OR回路473の出力がH信号となって、AND回路472の出力がL信号となる。つまり、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わっても、一次側電圧と二次側電圧との電圧差(対象電圧差)の絶対値が判定電圧未満である間は、スイッチング素子Q4は、オフ状態となる。一方、以上のように構成された停止判定部46では、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わり、一次側電圧と二次側電圧との電圧差(対象電圧差)の絶対値が判定電圧以上となると、H信号の停止信号が出力される。これにより、駆動信号生成部47において、OR回路473の出力がL信号となって、AND回路472の出力がPWM信号となる。つまり、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わり、一次側電圧と二次側電圧との電圧差(対象電圧差)の絶対値が判定電圧以上となると、スイッチング素子Q4は、PWM制御される。なお、双方向コンバータA2の停止判定部46の構成は、動作モードおよび一次側電圧と二次側電圧との電圧差(対象電圧差)に応じて、先述の通りに、停止信号を出力可能であれば、
図7に示す例に限定されない。
【0082】
双方向コンバータA2においても、双方向コンバータA1と同様に、昇降圧モードから昇圧モードへの切り替わり時において、二次側の低電位側のスイッチング素子(オフ対象スイッチング素子)を、一時的にオフ状態にするので、昇降圧モードと昇圧モードとが切り替わる際のオーバーシュートおよびアンダーシュートを抑制できる。
【0083】
双方向コンバータA2では、制御部4は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、対象電圧差(一次側電圧と二次側電圧との電圧差)が判定電圧(予め設定された閾値)以上となるまで、二次側の低電位側のスイッチング素子(オフ対象スイッチング素子)を一時的にオフ状態にする。なお、上記判定電圧は、二次側電流が一定値以下となる際の対象電圧差に基づいて設定されればよい。このような構成によれば、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わった際、対象電圧差が大きくなって、二次側電流が適度に小さくなるまでの一定期間、オフ対象スイッチング素子をオフ状態にできる。つまり、二次側電流が適度に小さくなってから、オフ対象スイッチング素子のPWM制御が開始される。したがって、双方向コンバータA2は、昇降圧モードから昇圧モードへの切り替わり時のオーバーシュートまたはアンダーシュートを抑制できる。
【0084】
図8に示す双方向コンバータA3では、制御部4は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、二次側電流が予め設定された閾値以上となるまで、オフ対象スイッチング素子をオフ状態にする。この構成では、設定部34は、経過判定値として、二次側電流の大きさに応じた判定値(以下「判定電流」という)を設定する。そして、制御部4は、二次側電流の大きさが判定電流以下となった場合に、通常の昇圧モードでの駆動制御を開始する。
【0085】
双方向コンバータA3の停止判定部46には、二次側電流の検出値(例えば電流検出器21の検出値)と、動作モード判定部43の出力(昇圧許可信号および降圧許可信号)と、設定部34の出力(経過判定値の設定値)とが入力される。なお、二次側電流の検出値としては、電力伝送方向が第1方向である場合には、電流検出器21の検出値を用いればよいし、電力伝送方向が第2方向である場合には、第1低電位側端子T12に流れる電流を検出する検出器(図示略)の検出値を用いればよい。停止判定部46は、昇圧許可信号および降圧許可信号と、二次側電流の検出値および経過判定値(本実施形態では判定電流)の設定値とに基づいて、オフ対象スイッチング素子を、一時的にオフ状態にするための停止信号を出力する。例えば、停止判定部46は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、二次側電流が判定電流以下となるまでの間、L信号の停止信号を出力する。一方、停止判定部46は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、二次側電流が判定電流以下になると、H信号の停止信号を出力する。
【0086】
図8に示す制御部4と、
図7に示す制御部4(双方向コンバータA2の制御部4)とを比較すると、主に停止判定部46の構成が異なる。
図8に示す例において、停止判定部46は、双方向コンバータA2の停止判定部46と同様に、比較器463、AND回路464、絶対値回路465、NOT回路466、NOR回路467およびOR回路468を含む。ただし、絶対値回路465への入力と、比較器463の非反転入力端子および反転入力端子への各入力とがそれぞれが異なる。
【0087】
絶対値回路465には、演算器431の出力の代わりに、電流検出器21の出力(二次側電流の検出値)が入力される。絶対値回路465は、二次側電流の絶対値に応じた信号を出力する。なお、電力伝送方向が第2方向の場合、第1低電位側端子T12に流れる電流の検出値が、絶対値回路465に入力されるように構成されていればよい。
【0088】
比較器463には、絶対値回路465の出力(対象電圧差の絶対値に応じた信号)と、設定部34(判定電圧の設定値)とがそれぞれ入力される。比較器463の非反転入力端子には、設定部34が接続されており、比較器463の反転入力端子には、絶対値回路465が接続されている。比較器463は、二次側電流の大きさ(絶対値)が判定電流以下である時、H信号を出力し、二次側電流の大きさ(絶対値)が判定電流よりも大きい時、L信号を出力する。なお、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わった直後では、二次側電流(絶対値)が大きい(判定電流よりも大きい)ので、L信号が出力される。その後、昇圧モードでの動作によって、二次側電流(絶対値)が小さくなる(判定電流以下となる)ので、H信号が出力される。つまり、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わった時には、一時的にL信号を継続した後にH信号に切り替わる。
【0089】
その他のAND回路464、NOT回路466、NOR回路467およびOR回路468の各々については、双方向コンバータA2と同じである。したがって、双方向コンバータA3においては、昇圧モードであり且つ二次側電流の大きさ(絶対値)が判定電流以下である時と、昇降圧モードである時とでは、AND回路464からH信号が出力される。一方、昇圧モードであり且つ二次側電流の大きさ(絶対値)が判定電流よりも大きい時と、降圧モードである時とでは、AND回路464からL信号が出力される。
【0090】
以上のように構成された停止判定部46では、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わっても、二次側電流の絶対値が判定電流よりも大きい間は、L信号の停止信号が出力される。これにより、駆動信号生成部47において、OR回路473の出力がH信号となって、AND回路472の出力がL信号となる。つまり、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わっても、二次側電流の絶対値が判定電流よりも大きい間は、スイッチング素子Q4は、オフ状態となる。一方、以上のように構成された停止判定部46では、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わり、二次側電流の絶対値が判定電流以下となると、H信号の停止信号が出力される。これにより、駆動信号生成部47において、OR回路473の出力がL信号となって、AND回路472の出力がPWM信号となる。つまり、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わり、二次側電流の絶対値が判定電流以下となると、スイッチング素子Q4は、PWM制御される。なお、双方向コンバータA3の停止判定部46の構成は、動作モードおよび二次側電流に応じて、先述の通りに、停止信号を出力可能であれば、
図8に示す例に限定されない。
【0091】
双方向コンバータA3においても、双方向コンバータA1と同様に、昇降圧モードから昇圧モードへの切り替わり時において、二次側の低電位側のスイッチング素子(オフ対象スイッチング素子)を、一時的にオフ状態にするので、昇降圧モードと昇圧モードとが切り替わる際のオーバーシュートおよびアンダーシュートを抑制できる。
【0092】
双方向コンバータA3では、制御部4は、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わってから、二次側電流の大きさ(絶対値)が判定電流(予め設定された閾値)以下となるまで、二次側の低電位側のスイッチング素子(オフ対象スイッチング素子)をオフ状態にする。このような構成によれば、昇降圧モードから昇圧モードに切り替わった際、二次側電流が適度に小さくなるまでの一定期間、オフ対象スイッチング素子をオフ状態にできる。つまり、二次側電流が適度に小さくなってから、オフ対象スイッチング素子のPWM制御が開始される。したがって、双方向コンバータA3は、昇降圧モードから昇圧モードへの切り替わり時のオーバーシュートまたはアンダーシュートを抑制できる。
【0093】
本開示に係る双方向コンバータは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の双方向コンバータの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0094】
A1:双方向コンバータ、1:電力変換回路、SW1~SW4:スイッチ部、Q1~Q4:スイッチング素子、D1~D4:ダイオード、L1:インダクタ、4:制御部、41:制御信号生成部、43:動作モード判定部、45:PWM信号生成部、46:停止判定部、47:駆動信号生成部、T1:第1端子対、T11:第1高電位側端子、T12:第1低電位側端子、T2:第2端子対、T21:第2高電位側端子、T22:第2低電位側端子