(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145292
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6551 20140101AFI20241004BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241004BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20241004BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20241004BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M10/6551
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/651
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057581
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】バットウラ ロケッシュ ヤダウ
(72)【発明者】
【氏名】米田 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大介
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031KK01
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】電池セルの良好な冷却を可能にするヒートシンクを提供する。
【解決手段】複数の電池セルが第一方向Xに沿って夫々並設された複数の電池モジュール10が、第一方向Xと交差する第二方向Yに沿って隣接配置された電池パックを冷却するヒートシンク30であって、該ヒートシンク30は、第一方向Xに沿って隣り合う電池セルの間で第二方向Yに沿って配置され、流体が流通する内部流路31を有する複数のプレート部材30Aと、複数のプレート部材30Aに対して流体を給排する配管部材30Bと、を備えている。内部流路31は、第一流路31a、当該第一流路31aにおける流体の流通方向とは反対方向に流体が流通する第二流路31b、及び第一流路31aの下流端と第二流路31bの上流端とを接続する接続流路31cを有している。配管部材30Bは、第一流路31aに流体を供給する供給口及び第二流路31bから流体を排出する排出口を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが第一方向に沿って夫々並設された複数の電池モジュールが、前記第一方向と交差する第二方向に沿って隣接配置された電池パックを冷却するヒートシンクであって、
前記第一方向に沿って隣り合う前記電池セルの間で前記第二方向に沿って配置され、流体が流通する内部流路を有する複数のプレート部材と、
複数の前記プレート部材に対して前記流体を給排する配管部材と、を備え、
前記内部流路は、第一流路、当該第一流路における前記流体の流通方向とは反対方向に前記流体が流通する第二流路、及び前記第一流路の下流端と前記第二流路の上流端とを接続する接続流路を有しており、
前記配管部材は、前記第一流路に前記流体を供給する供給口及び前記第二流路から前記流体を排出する排出口を有しているヒートシンク。
【請求項2】
前記配管部材は、前記電池パックの前記第二方向に沿う中央領域に配置されている請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記配管部材は、前記電池パックの前記第二方向に沿う端部に配置されている請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記第二流路の流路断面積は、前記第一流路の流路断面積と異なっている請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車(以下、「電動車」と総称する)はモータを駆動させるためのバッテリ(以下、単にバッテリともいう)を搭載している。
【0003】
通常、電動車に搭載されるバッテリは、複数の電池セルが並設された電池モジュールを容器に収容した電池パックとして構成されている。そのため、バッテリを使用すると、発熱により容器の内部に熱がこもって高温になる。バッテリが高温になると劣化が進みやすくなるので、バッテリをヒートシンクにより冷却しながら使用して温度上昇を防いでいる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のヒートシンク(特許文献1では熱交換アセンブリ)は、夫々の電池セルの間に接続流路を形成し、電池パックの一方の側面に給排流路を有する第1プレート部材を配置し、他方の側面に給排流路を有する第2プレート部材を配置している。第1プレート部材の給排流路と第2プレート部材の給排流路とは接続流路を介して接続され、電池セルの両腹面に対して流体を流通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許第111384465号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される構成では、第1プレート部材から送り出された流体を、第2プレート部材に向けて一方向に流通させる。しかしながら、第1,第2プレート部材に対し、一方向から流体の給排を行う構成では、流体と電池セルとの熱交換時間が短く、セル冷却が不十分になるおそれがある。
【0007】
このような理由から、電池セルの良好な冷却を可能にするヒートシンクが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るヒートシンクの特徴構成は、複数の電池セルが第一方向に沿って夫々並設された複数の電池モジュールが、前記第一方向と交差する第二方向に沿って隣接配置された電池パックを冷却するヒートシンクであって、前記第一方向に沿って隣り合う前記電池セルの間で前記第二方向に沿って配置され、流体が流通する内部流路を有する複数のプレート部材と、複数の前記プレート部材に対して前記流体を給排する配管部材と、を備え、前記内部流路は、第一流路、当該第一流路における前記流体の流通方向とは反対方向に前記流体が流通する第二流路、及び前記第一流路の下流端と前記第二流路の上流端とを接続する接続流路を有しており、前記配管部材は、前記第一流路に前記流体を供給する供給口及び前記第二流路から前記流体を排出する排出口を有している点にある。
【0009】
本構成のように、隣り合う電池セルの間にプレート部材を配置し、このプレート部材の内部流路に流体を流通させれば、電池セルの腹面を直接冷却することが可能となり、冷却効率が高まる。また、複数のプレート部材に対して流体を給排する配管部材を設ければ、夫々のプレート部材に対して少ない配管数で流体を給排することが可能となるため、コンパクト化を図ることができる。
【0010】
さらに、本構成におけるプレート部材の内部流路は、第一流路、第一流路における流体の流通方向とは反対方向に前記流体が流通する第二流路、及び第一流路の下流端と第二流路の上流端とを接続する接続流路を有し、配管部材が第一流路に接続される供給口と第二流路に接続される排出口とを有する折り返し構造である。このため、夫々の電池セルに対して、流体の熱交換時間を多く確保することが可能となる。その結果、電池セルの良好な冷却を可能にするヒートシンクとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態に係るヒートシンクを用いた電池パックの平面図である。
【
図2】
図1のII-II線矢視の部分斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線矢視の模式図である。
【
図5】第二実施形態に係るヒートシンクのプレート部材の縦断面図である。
【
図6】プレート部材、伝熱シート、及び電池セルの横断面図である。
【
図7】第三実施形態に係るヒートシンクのプレート部材の縦断面図である。
【
図8】プレート部材、伝熱シート、及び電池セルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るヒートシンクの実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0013】
〔第一実施形態〕
図1~
図4に示されるように、本実施形態に係るヒートシンク30を用いた電池パック1は、第一方向Xに沿って並設された直方体状の複数(本実施形態においては24個)の電池セル12からなる電池モジュール10を備え、複数(本実施形態においては4個)の電池モジュール10が第一方向Xと交差(直交)する第二方向Yに沿って隣接配置されている。ここで、第一方向Xは車両前後方向であり、X1が車両前方向、X2が車両後方向となっている。また、第二方向Yは、車両左右方向であり、第三方向Zは、車両上下方向である。以下、ラジエータを含む冷却回路(不図示)が車両前方に配置され、電池パック1が車両中央の底部にあるバッテリ収容空間に収容される場合を説明する。
【0014】
電池パック1は、金属等で構成される拘束部材Kで拘束された状態で、車両底部のバッテリ収容空間に収容されている。また、電池パック1は、電池モジュール10の全ての電池セル12の腹面(第二方向Yに沿う側面)と接触する一方の面を有するシート状の伝熱シート20と、伝熱シート20の他方の面に密着し且つ電池モジュール10の全ての電池セル12の腹面と隣り合うヒートシンク30と、を有する。ヒートシンク30は、アルミニウムや鉄等の金属材料で構成されている。
【0015】
複数の電池セル12は、互いに電気的に接続された状態で並設されている。電池パック1は、例えば、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)に用いられる。なお、伝熱シート20とヒートシンク30は全ての電池セル12に隣り合っていなくても、そのうちの複数の電池セル12に隣り合っていればよい。また、「電池セル12と隣り合うように配置されたヒートシンク30」とは、電池セル12とヒートシンク30とが直接接触する場合、及び電池セル12とヒートシンク30との間に固体物(伝熱シート20等)を介在させた状態で電池セル12の熱が該固体物を介してヒートシンク30に伝熱する場合、の両方を含む概念である。本実施形態のように、電池セル12とヒートシンク30との間に伝熱シート20を介在させ互いに隣り合うもの同士が直接接触する構成は、後者の概念である。
【0016】
電池セル12には、例えばリチウムイオン電池が用いられる。電池モジュール10は、複数の電池セル12を直列に接続することにより高電圧を発生させている。電池セル12は発電(放電)に伴い発熱する。発熱により電池セル12の温度が上昇すると電池セル12の発電性能が低下するので、電池セル12を冷却する必要がある。このため、本実施形態では、隣り合う電池セル12の間にヒートシンク30を配置して、電池セル12の腹面を直接的に冷却している。
【0017】
伝熱シート20は、シリコーン等の熱伝導率の高い材料から構成されている。
図4に示されるように、電池セル12とプレート部材30Aとの間に伝熱シート20を密着させることにより、電池モジュール10で発生した熱は、伝熱シート20を介してヒートシンク30のプレート部材30Aに効率よく伝達される。これにより、電池モジュール10を構成する複数の電池セル12の温度を低下させることができる。
【0018】
図1に示されるように、ヒートシンク30は、プレート部材30Aと配管部材30Bとを備えている。プレート部材30Aは、第一方向Xに沿って隣り合う電池セル12の間で、第二方向Yに沿う全て(本実施形態では4個)の電池セル12に対向するように配置され、内部に形成された内部流路31に流体が流通するように構成されている。配管部材30Bは、複数(本実施形態においては25個)のプレート部材30Aに対して流体を給排するように構成されている。なお、流体とは、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、又はハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。本実施形態では、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水やパラフィン系等の絶縁油といった電気絶縁性の高い液体を用いることが好ましい。
【0019】
このように、隣り合う電池セル12の間にプレート部材30Aを配置し、このプレート部材30Aの内部流路31に流体を流通させれば、電池セル12の腹面を直接冷却することが可能となり、冷却効率が高まる。また、複数のプレート部材30Aに対して流体を給排する配管部材30Bを設けているため、夫々のプレート部材30Aに対して少ない配管数で流体を給排することが可能となるため、コンパクト化を図れる。
【0020】
本実施形態における配管部材30Bは、電池パック1の第二方向Yに沿う中央領域14に配置されており、第二方向Yの一方側となる2個の電池モジュール10と、第二方向Yの他方側となる2個の電池モジュール10とに夫々流体を流通させている。中央領域14とは、第二方向Yに沿って並置された4個の電池モジュール10の内側の2個の電池モジュール10の間の領域である。
【0021】
プレート部材30Aのうち中央領域14に位置する部分は、
図2に示されるように、電池モジュール10から突出し、2面32cを有する突出部32Aを含んでいる。プレート部材30Aの内部流路31は、
図3に示されるように、第一流路31aと第二流路31bと接続流路31cとを有している。第一流路31aは、プレート部材30Aの突出部32Aの上部領域32aに形成された円形状の貫通孔の内周面32から第二方向Yの両端部33,33に向かって流体を流通させる。第一流路31aは、一つのプレート部材30Aにおいて、第二方向Yに沿って三つ形成されている。
【0022】
第二流路31bは、第二方向Yの両端部33,33からプレート部材30Aの突出部32Aの下部領域32bに形成された円形状の貫通孔の内周面32に向かって流体を流通させる。すなわち、第二流路31bにおける流体の流通方向は、第一流路31aにおける流体の流通方向と反対方向である。第二流路31bは、一つのプレート部材30Aにおいて、第二方向Yに沿って三つ形成されている。
【0023】
接続流路31cは、第二方向Yの両端部33,33において、三つの第一流路31a及び三つの第二流路31bをZ方向に沿って接続する連通空間となっている。つまり、プレート部材30Aの内部流路31は、両端部33,33の接続流路31cで、三つの第一流路31a及び三つの第二流路31bを互いに連通させて流体の流通方向を反対方向に変える折り返し構造となっている。換言すると、接続流路31cは、第一流路31aの下流端と第二流路31bの上流端とを接続している。接続流路31cが配置されたプレート部材30Aの両端部33,33は、第二方向Yに沿って並置された4個の電池モジュール10の外側の2個の電池モジュール10の電池セル12,12における中央領域14から最も離れた両端部12a,12aに対向する箇所に位置している(
図1参照)。本実施形態において、三つの第一流路31aの夫々の流路断面積、及び三つの第二流路31bの夫々の流路断面積は全て同じである。なお、第一流路31aや第二流路31bの数や形状は任意に変更可能であり、例えば左右夫々1つずつの角孔としてもよい。
【0024】
図2に示されるように、配管部材30Bは、電池パック1の第二方向Yに沿う突出部32Aに配置されている。配管部材30Bは、突出部32Aの上部領域32aにある内周面32に連通した三つの第一流路31aに流体を供給する供給口36aを有する第一配管30Baを有している。また、配管部材30Bは、プレート部材30Aの第二流路31bを流通して下部領域32bにある内周面32から排出された流体が流入する排出口36bを有する第二配管30Bbを有している。
【0025】
本実施形態における第一配管30Baは、突出部32Aの2面32cの一方面32c1に固定された複数(本実施形態では24個)の第一筒状部34と、突出部32Aの2面32cの他方面32c2に固定された複数(本実施形態では25個)の第二筒状部35と、を有している。同様に、第二配管30Bbは、突出部32Aの2面32cの一方面32c1に固定された複数(本実施形態では24個)の第一筒状部34と、突出部32Aの2面32cの他方面32c2に固定された複数(本実施形態では25個)の第二筒状部35と、を有している。突出部32Aにおいては、第一配管30Baの供給口36aと第二配管30Bbの排出口36bとは連通していない。
【0026】
配管部材30Bは、互いに外径の異なる円筒状の第一筒状部34と円筒状の第二筒状部35とを有し、第一筒状部34及び第二筒状部35が凹凸係合して構成されている。第一筒状部34の外径は第二筒状部35の外径よりも大きく形成されており、第一筒状部34の内部に第二筒状部35が挿入される構造となっている。本実施形態における第一筒状部34及び第二筒状部35は円筒状であるため、第一筒状部34の内径は第二筒状部35の外径よりも大きく形成されている。第一配管30Ba及び第二配管30Bbの夫々の第一筒状部34の基端部は、矩形平板状の第一フランジ部36Aと一体成形又は圧入等により接続されている。同様に、第一配管30Ba及び第二配管30Bbの夫々の第二筒状部35の基端部は、矩形平板状の第二フランジ部36Bと一体成形又は圧入等により接続されている。第一筒状部34及び第二筒状部35の夫々は2面32cに接着や溶接等の方法により固定されている。
【0027】
本実施形態における第二筒状部35には、Oリング等のシール部材Sが嵌合する環状凹部35aが形成されている。第一筒状部34の内部に第二筒状部35が挿入されることにより、環状凹部35aのシール部材Sが圧縮され、第一筒状部34と第二筒状部35とが密封状態で相対移動可能に係合している。
【0028】
このように、本実施形態における配管部材30Bは、互いに外径の異なる第一筒状部34と第二筒状部35とを有し、第一筒状部34及び第二筒状部35が凹凸係合している。このため、拘束部材Kで拘束されることにより組付誤差等が発生し、流体の給排流路(供給口36a及び排出口36b)とプレート部材30Aの内部流路31(第一流路31a及び第二流路31b)とが位置ずれした場合であっても、第一筒状部34と第二筒状部35との凹凸係合により位置合わせすることが可能となる。よって、組付誤差を吸収可能なヒートシンク30となっている。また、第二筒状部35には、Oリング等のシール部材Sが嵌合されており、これにより、第一筒状部34と第二筒状部35とが相対移動可能に密封状態で係合しているため、電池モジュール10の組付けや電池セル12の熱膨張又は熱収縮に起因する夫々の電池セル12の間隔変動を配管部材30Bで吸収することができる。
【0029】
第一配管30Ba及び第二配管30BbのX1方向の一番端の第二筒状部35,35は、車両に搭載された冷却回路(不図示)に接続されることにより、第一配管30Baの第二筒状部35が流体流入口となっており、第二配管30Bbの第二筒状部35が流体流出口となっている。また、第一配管30Ba及び第二配管30BbのX2方向の一番端は閉塞されている。これにより、第一配管30Baの流体流入口から流入した冷たい流体は、第一配管30Ba、第一流路31a、接続流路31c、第二流路31b、第二配管30Bbの順で流通し、第二配管30Bbの流体流出口より電池セル12から熱を奪った温かい流体が流出し、冷却回路で冷却されて再度第一配管30Baの流体流入口に循環する。
【0030】
このように本実施形態におけるヒートシンク30のプレート部材30Aの内部流路31は、第一流路31a、第二流路31b及び接続流路31cを有し、配管部材30Bが第一流路31aに接続される供給口36aと第二流路31bに接続される排出口36bとを有する折り返し構造である。このため、夫々の電池セル12に対して、流体の熱交換時間を多く確保することが可能となる。また、配管部材30Bは、プレート部材30Aの内周面32の上部領域32aに流体を供給する第一配管30Baと、プレート部材30Aの内周面32から流体を排出する第二配管30Bbとを有しているため、夫々の電池セル12に対して、上部領域32aでは相対的に冷たい流体、下部領域32bでは相対的に温かい流体が流通する。その結果、電池モジュール10のうちY方向の両端に位置する電池セル12の冷却が不十分となる不都合が防止され、電池セル12を均等に冷却することができる。よって、電池セル12の良好な冷却を可能にするヒートシンク30となっている。
【0031】
〔第二実施形態〕
図5、
図6には、第二実施形態に係るヒートシンク30が示されている。第二実施形態では、プレート部材30Aの第二流路31bの形状が第一実施形態とは異なる。その他の構成は、第一実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0032】
本実施形態において、三つの第二流路31bの夫々の流路断面積は三つの第一流路31aの夫々の流路断面積よりも小さい。流路断面積が小さくなると、第二流路31bを流通する流体の流速が大きくなり、熱交換時間を短くして熱交換効率が高くなる。第二流路31bでは第一流路31aに対して相対的に温かい流体が流通するが、本実施形態のような構成であれば、第二流路31bにおいても電池セル12を十分冷却することができるので、電池セル12のうち上部領域32aに対向する箇所と、下部領域32bに対向する箇所とを同等に冷却することができる。
【0033】
〔第三実施形態〕
図7、
図8には、第三実施形態に係るヒートシンク30が示されている。第三実施形態では、プレート部材30Aの第一流路31a、第二流路31bの構成が第一、第二実施形態とは異なる。その他の構成は、第一、第二実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施形態においては、三つの第一流路31aのうちZ方向で最も中央寄りにある流路、及び三つの第二流路31bのうちZ方向で最も中央寄りにある流路には、流体が流通しない。Z方向で最も中央寄りにある第一流路31aと第二流路31bとは流路として機能しておらず、空気があるだけである。以下、流路として機能していないこれら二つを断熱層31dという。したがって、本実施形態において、プレート部材30Aの上部領域32aにおいては、二つの第一流路31aと一つの断熱層31dが形成されており、下部領域32bにおいては、二つの第二流路31bと一つの断熱層31dが形成されている。二つの断熱層31dは、互いに隣り合っている。
【0035】
本実施形態の断熱層31dにおいては、第一方向Xに沿って見たときに伝熱シート20と重なっていない箇所に、プレート部材30Aを貫通する連通孔31eが形成されている。断熱層31dが連通孔31eを有することにより、例えば、プレート部材30Aの温度が高くなって断熱層31dの空気が膨張した場合には、連通孔31eから膨張した空気を逃がすことにより、断熱層31d内の空気の圧力を一定にすることができる。
【0036】
また、プレート部材30Aにおいて、第一流路31aと第二流路31bとの間に断熱層31dを設けることにより、第一流路31aを流通する流体と第二流路31bを流通する流体との間での熱の授受を抑制することができる。
【0037】
〔その他の実施形態〕
(a)上述したシール部材Sは、第二筒状部35の先端に固定されたリップシール等で合ってもよく、第一筒状部34及び第二筒状部35の密封状態を形成できる形状であれば特に限定されない。
【0038】
(b)上述した実施形態では、第一筒状部34の内部に第二筒状部35が挿入されることにより、環状凹部35aのシール部材Sが圧縮され、第一筒状部34と第二筒状部35とが密封状態で相対移動可能に係合する状態になっていた。これに代えて、第一筒状部34及び第二筒状部35の凹凸係合は、第一筒状部34の内部に第二筒状部35を挿入した後、拘束部材Kで拘束し、その後、第一筒状部34及び第二筒状部35を溶接等により固定してもよい。
【0039】
(c)上述した配管部材30Bは、電池パック1の第二方向Yに沿う中央領域14ではなく、電池パック1の電池セル12の第二方向Yに沿う一方の端部12aに配置してもよいし、両端部12a,12aに配置してもよい。配管部材30Bを電池パック1の電池セル12の第二方向Yに沿う端部12aに配置すれば、流体の熱交換時間を更に多く確保することが可能となる。
【0040】
(d)上述した実施形態における配管部材30Bは、第一配管30Baと第二配管30Bbとが同一のフランジ部36A,36Bを共有していたが、第一配管30Baと第二配管30Bbとを独立させてもよい。この場合、プレート部材30Aの内部流路31を折り返し構造にせず、一方向で構成してもよい。
【0041】
(e)上述した実施形態では、三つの第二流路31bの夫々の流路断面積は三つの第一流路31aの夫々の流路断面積よりも小さくした。これに代えて、三つの第二流路31bの夫々の流路断面積を三つの第一流路31aの夫々の流路断面積よりも大きくしてもよい。また、外側の二つの第二流路31bの夫々の流路断面積は外側の二つの第一流路31aの夫々の流路断面積と同じにし、三つの第一流路31aのうちZ方向で最も中央寄りにある第一流路31a、及び三つの第二流路31bのうちZ方向で最も中央寄りにある第二流路31bの流路断面積のみを小さくしてもよい。このように、電池セル12の発熱特性に応じて、第一流路31a及び第二流路31bの流路断面積は適宜変更することができる。
【0042】
上述した実施形態では、下記の構成が想起される。
(1)複数の電池セル(12)が第一方向(X)に沿って夫々並設された複数の電池モジュール(10)が、第一方向(X)と交差する第二方向(Y)に沿って隣接配置された電池パック(1)を冷却するヒートシンク(30)であって、第一方向(X)に沿って隣り合う電池セル(12)の間で第二方向(Y)に沿って配置され、流体が流通する内部流路(31)を有する複数のプレート部材(30A)と、複数のプレート部材(30A)に対して流体を給排する配管部材(30B)と、を備え、内部流路(31)は、第一流路(31a)、当該第一流路(31a)における流体の流通方向とは反対方向に流体が流通する第二流路(31b)、及び第一流路(31a)の下流端と第二流路(31b)の上流端とを接続する接続流路(31c)を有しており、配管部材(30B)は、第一流路(31a)に流体を供給する供給口(36a)及び第二流路(31b)から流体を排出する排出口(36b)を有しているヒートシンク(30)。
【0043】
本構成のように、隣り合う電池セル(12)の間にプレート部材(30A)を配置し、このプレート部材(30A)の内部流路(31)に流体を流通させれば、電池セル(12)の腹面を直接冷却することが可能となり、冷却効率が高まる。また、複数のプレート部材(30A)に対して流体を給排する配管部材(30B)を設ければ、夫々のプレート部材(30A)に対して少ない配管数で流体を給排することが可能となるため、コンパクト化を図れる。
【0044】
さらに、本構成におけるプレート部材(30A)の内部流路(31)は、第一流路(31a)、第二流路(31b)及び接続流路(31c)を有し、配管部材(30B)が第一流路(31a)に接続される供給口(36a)と第二流路(31b)に接続される排出口(36b)とを有する折り返し構造である。このため、夫々の電池セル(12)に対して、流体の熱交換時間を多く確保することが可能となる。その結果、電池セル(12)の良好な冷却を可能にするヒートシンク(30)となっている。
【0045】
(2)配管部材(30B)は、電池パック(1)の第二方向(Y)に沿う中央領域(14)に配置されていると好適である。
【0046】
本構成における配管部材(30B)は、電池パックの第二方向(Y)に沿う中央領域(14)に配置され、プレート部材(30A)は第二方向(Y)で中央領域(14)から最も離れた電池パック(1)の電池セル(12)の端部(12a)で折り返して流体を流通させるため、夫々の電池セル(12)に対して流体との熱交換時間を確保しながら、夫々の電池セル(12)の温度差を小さくすることができる。
【0047】
(3)配管部材(30B)は、電池パック(1)の第二方向(Y)に沿う端部(12a)に配置されていると好適である。
【0048】
本構成における配管部材(30B)は、電池パック(1)の第二方向(Y)に沿う電池セル(12)の端部(12a)に配置されているため、夫々の電池セル(12)に対して流体との熱交換時間を確保しながら、配管部材(30B)の組付性が高い。
【0049】
(4)第二流路(31b)の流路断面積は、第一流路(31a)の流路断面積と異なっていると好適である。
【0050】
本構成におけるプレート部材(30A)の内部流路(31)は、第二流路(31b)の流路断面積が第一流路(31a)の流路断面積と異なっている。そのため、例えば、第二流路(31b)の流路断面積が第一流路(31a)の流路断面積よりも小さい場合には、相対的に冷たい流体が流通する第一流路(31a)にて電池セル(12)と流体との熱交換時間を確保し、相対的に温かい流体が流通する第二流路(31b)にて電池セル(12)と流体との熱交換時間を短くして熱交換効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、ヒートシンクに利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:電池パック、10:電池モジュール、12:電池セル、12a:端部、14:中央領域、30:ヒートシンク、30A:プレート部材、30B:配管部材、31:内部流路、31a:第一流路、31b:第二流路、31c:接続流路、36a:供給口、36b:排出口、X:第一方向、Y:第二方向