(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014530
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】エンジン停止後のエンジン制御装置及びこれを組み込んだエンジン
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240125BHJP
F02P 5/15 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F02D45/00 362
F02P5/15 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117431
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】老松 章斗
(72)【発明者】
【氏名】松原 泰司
(72)【発明者】
【氏名】永川 啓吾
【テーマコード(参考)】
3G022
3G384
【Fターム(参考)】
3G022CA10
3G022DA01
3G022DA02
3G022GA05
3G384AA01
3G384BA24
3G384CA23
3G384DA04
3G384EB03
3G384EB04
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】運転停止スイッチの操作に基づくエンジン停止後において、点火プラグの点火によってエンジンが活性化してしまうのを防止しながらラン-オン現象の持続時間を短縮する。
【解決手段】エンジン停止信号を受け取った後、第1所定時間が経過するか又はエンジン回転数がしきい値よりも低下した場合に、点火プラグ14の制御を再開する点火再開制御部40を有する。点火再開制御部40は、エンジン本体2の通常運転領域で設定されている全ての点火タイミングの範囲から逸脱したタイミングの再開用点火タイミングTg(R-on)に基づいて点火プラグ14の制御を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン停止信号によって点火プラグの点火制御を中止することによりエンジン本体が停止するエンジン停止後のエンジン制御装置において、
前記エンジン停止信号を受け取った後、第1所定時間が経過するか又はエンジン回転数がしきい値よりも低下したときに、前記点火プラグの制御を再開する点火再開制御部を有し、
該点火再開制御部は、前記エンジン本体の通常運転領域で設定されている全ての点火タイミングの範囲から逸脱したタイミングの再開用点火タイミングに基づいて前記点火プラグの制御を実行することを特徴とするエンジン停止後のエンジン制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジン停止後のエンジン制御装置において、
前記再開用点火タイミングが、前記通常運転領域で設定されている点火タイミングの範囲から進角側に逸脱したタイミングである、エンジン停止後のエンジン制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエンジン停止後のエンジン制御装置において、
前記再開用点火タイミングが、前記通常運転領域で設定されている点火タイミングの範囲から遅角側に逸脱したタイミングである、エンジン停止後のエンジン制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエンジン停止後のエンジン制御装置において、
前記再開用点火タイミングが、前記通常運転領域で設定されている点火タイミングの範囲から進角側に逸脱したタイミングと、遅角側に逸脱したタイミングとを含む、エンジン停止後のエンジン制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のエンジン停止後のエンジン制御装置において、
前記点火プラグの制御を再開する点火再開制御が、第2の所定時間実行された後に前記点火プラグへの電源供給を遮断することにより終了される、エンジン停止後のエンジン制御装置。
【請求項6】
エンジン停止信号によって点火プラグの点火制御を中止することによりエンジン本体が停止するエンジン停止後のエンジン制御装置を組み込んだエンジンにおいて、
前記エンジン停止信号を受け取った後、第1所定時間が経過するか又はエンジン回転数がしきい値よりも低下した場合に、前記点火プラグの制御を再開する点火再開制御部を有し、
該点火再開制御部は、前記エンジン本体の通常運転領域で設定されている全ての点火タイミングの範囲から逸脱したタイミングの再開用点火タイミングに基づいて前記点火プラグの制御を再開することを特徴とするエンジン停止後のエンジン制御装置を組み込んだエンジン。
【請求項7】
請求項6に記載のエンジンにおいて、
該エンジンに燃料を供給する燃料供給装置を含み、該燃料供給装置が、前記エンジン停止信号によって燃料供給を遮断する弁を備えていない気化器で構成されている、エンジン。
【請求項8】
請求項6に記載のエンジンにおいて、
該エンジンに燃料を供給する燃料供給装置を含み、該燃料供給装置が、前記エンジン停止信号によって燃料供給を遮断する燃料噴射弁で構成されている、エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン停止後のエンジン制御装置及びこれを組み込んだエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン動作を停止させるエンジン停止スイッチを作業者がON操作つまりエンジン停止指示操作すると、点火プラグへの通電が中止されてエンジン停止される。特許文献1は、高出力運転の直後において、エンジン停止スイッチを操作したにも関わらず、残留燃料が間欠的に燃焼する現象を指摘している。この現象は「ラン-オン現象」と呼ばれている。ラン-オン現象の原因である残留燃料の燃焼を「ラン-オン燃焼」と呼ぶ。
【0003】
ラン-オン現象を防止するために、エンジン停止スイッチがON操作されたら、点火プラグへの電源供給を中止すると共に、エンジン本体への燃料供給を遮断することが知られている。特許文献1は、この燃料供給遮断によって引き起こされる次の問題点を指摘している。すなわち、燃料供給を遮断したとき、エンジン本体や吸気系に残留する燃料が冷えていく過程で化学変化してガム質の物質に変化する。このガム質の物質は粘着性が強く、バルブシステムの膠着や燃料噴射ノズルの詰まりを発生させる可能性がある。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1は、エンジン停止スイッチのON操作後も、所定時間(例えば1秒間)、点火プラグへの通電を継続することを提案している。エンジン停止後において、エンジンが慣性運動することに伴って、残留燃料が燃焼室に吸引され、そして、点火プラグによって点火される。これにより、残留燃料を吸気系や燃焼室から一掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、上述したように、エンジン停止スイッチの操作に基づくエンジン停止後も点火制御を継続する発明を提案している。この発明によれば、エンジン停止後も、通常運転領域で設定される点火タイミングの下で点火制御が継続される。したがって、エンジン停止後において、点火プラグによる残留燃料の点火によってエンジンが活性化してしまう可能性がある。この可能性としての現象は、運転停止スイッチを操作したにも関わらずエンジンの運転が継続するため、作業者に驚きを与えてしまう。また、完全に停止するまでの時間が長くなる。これは作業者にとっては単なるロス時間となる。
【0007】
本発明の目的は、運転停止スイッチの操作に基づくエンジン停止後において、点火プラグの点火によってエンジンが活性化してしまうのを防止しながらラン-オン現象の持続時間を短縮できるエンジン制御装置及びこれを組み込んだエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題は、
エンジン停止信号によって点火プラグの点火制御を中止することによりエンジン本体が停止するエンジン停止後のエンジン制御装置において、
前記エンジン停止信号を受け取った後、第1所定時間が経過するか又はエンジン回転数がしきい値よりも低下したときに、前記点火プラグの制御を再開する点火再開制御部を有し、
該点火再開制御部は、前記エンジン本体の通常運転領域で設定されている全ての点火タイミングの範囲から逸脱したタイミングの再開用点火タイミングに基づいて前記点火プラグの制御を実行することを特徴とするエンジン停止後のエンジン制御装置及びこれを組み込んだエンジンを提供することにより達成することができる。
【0009】
本発明によれば、エンジン停止信号を受け取った後第1所定時間が経過した後又はエンジン回転数がしきい値よりも低下したら、点火プラグの制御が再開される。この再開する点火制御は前記再開用点火タイミングに基づいて実行される。この再開用点火タイミングは、通常運転領域で設定されている全ての点火タイミングの範囲から逸脱したタイミングである。これにより、エンジン停止後において、点火プラグの点火によってエンジンが活性化してしまうのを防止しながらラン-オン現象の持続時間を短縮できる。
【0010】
本発明の作用効果、他の目的は、以下の本発明の好ましい実施態様の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例のエンジンシステムの全体概要を説明するための図である。
【
図2】燃料供給停止及び点火休止の下で発生するラン-オン現象を説明するための図である。
【
図3】ラン-オン抑制用点火タイミングの一例を説明するための図である。
【
図4】ラン-オン抑制制御の第1の例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】ラン-オン抑制制御の第2の例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】ラン-オン抑制用点火タイミングの他の例を説明するための図である。
【
図7】ラン-オン抑制制御の第3の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
図1は、エンジンシステムの概要を説明するための図である。エンジンシステム1は、エンジン本体2と、エンジン本体2に混合気を供給する吸気系4と、エンジン本体2の既燃ガスを外部に排出する排気系6とを有している。図中、参照符号8はマフラーを示す。
【0013】
エンジン本体2はピストン10によって画成される燃焼室12を有し、燃焼室12に臨んで点火プラグ14が配設されている。ピストン10は連結ロッド16によってクランクシャフト18に連結され、クランクシャフト18によってエンジン駆動力が出力される。
【0014】
図示のエンジン本体2は例示としての4サイクルエンジンである。エンジン本体2は吸気ポート20と排気ポート22を有する。吸気ポート20は吸気弁24によって開閉される。排気ポート22は排気弁26によって開閉される。吸気ポート20には吸気系4が連結される。排気ポート22には排気系6が連結される。エンジン本体2は2サイクルエンジンであってもよい。2サイクルエンジンは、周知のように、吸気弁24、排気弁26を備えていない。そして、2サイクルエンジンでは、吸気ポート20、排気ポート22はピストン10によって開閉される。2サイクルエンジンは、現在、刈り払い機、チェーンソーなどの作業機に用いられている。
【0015】
吸気系4は、上流端にエアクリーナ30を有し、そして、エアクリーナ30で濾過されたエアが通る吸気通路32を有している。吸気通路32にはスロットルバルブ34が配設され、スロットルバルブ34を操作することでエンジン本体2に導入される空気量が調整され、これによりエンジン出力が制御される。吸気系4は気化器36を有し、燃料タンク38内の燃料Fが気化器36を通じて吸気通路32に供給されることにより混合気が生成される。変形例として、気化器36に代えて燃料噴射弁を採用してもよい。燃料噴射弁は、後に説明するエンジン停止信号が入力されると直ちに燃料噴射が停止される。
【0016】
エンジンシステム1は制御ユニット40を有し、制御ユニット40には、点火プラグ14の取付座に設置されてエンジン本体2の温度を検出するエンジン温度センサ42からの温度信号及びエンジン回転数を検出する回転数センサ44からの回転数信号が入力される。また、制御ユニット40には、作業者が操作するエンジン停止スイッチ46からのエンジン停止信号が入力される。
【0017】
図2は、ラン-オン現象を説明するための図である。図中、参照符号「Pt」は、エンジン停止信号の入力に基づいてエンジン停止制御が実行された時点を示す。エンジン停止信号が入力されると、点火プラグへの通電が中止される。その結果、点火プラグは、事実上、休止状態になり、エンジン本体2は停止状態になるがエンジン本体2は慣性によってのみ、その回転運動が継続される。その結果、エンジン回転数が降下する。
図2から分かるように、エンジン回転数が約1000rpmまで降下した後、間欠的に、何回かエンジン回転数が高くなる現象P1~P4が発生している。これは、制御装置による点火制御が停止されているにも関わらず、燃焼室12内に残留する混合気が、燃焼室12内の温度勾配と相俟って自己着火する現象であり、この意図しない燃焼の発生がラン-オン現象である。ラン-オン現象は、このように点火制御が既に停止された状況下で、偶発的に発生する燃焼であるが故に、定量的、固定的な制御によってコントロールすることが難しい。
【0018】
燃料供給装置である
図1に開示の気化器36は、電子制御される燃料供給遮断弁を備えていない。このように燃料供給遮断弁を備えていない気化器36の場合には、燃焼室12が負圧になると気化器36から燃料が吸い出され、エンジン停止信号に基づいて点火が停止された状態であっても混合気が燃焼室12に導入される可能性がある。このことから、エンジン停止後のラン-オン現象が起きやすい状態が発生し易い。
【0019】
本実施例では、エンジン停止後に実行されるエンジン制御によってラン-オン現象の持続時間が短縮される。このエンジン制御は、点火プラグ14への通電を中止する制御に加えて、エンジン停止後、所定の条件が成立した後に実行される点火再開制御を含む。点火再開制御は、第1に、エンジン停止信号を制御ユニット40が受け取ると上述したエンジン停止制御が実行される。しかし、回転数センサ44によって現在のエンジン回転数が監視され続ける。第2に、降下するエンジン回転数がしきい値Th(
図2)以下になったことを検出したら、当該エンジン本体2に設定されているアイドル運転からフルスロットル運転までの全ての運転領域(通常運転領域)での全ての点火タイミングの範囲から逸脱したタイミングである再開用点火タイミングに基づいて点火プラグ14が制御される。これが点火再開制御である。この点火再開制御を「ラン-オン抑制制御」と呼ぶと、ラン-オン抑制制御は、エンジン停止信号を受け取った時点から第1の所定時間(例えばエンジン停止から2~4秒)が経過した後に実行するようにしてもよい。第3に、ラン-オン抑制制御は第2の所定時間(例えばエンジン停止から5~6秒)が経過したら終了する。
【0020】
以下に詳述するラン-オン抑制制御は、ラン-オン現象の持続時間の短縮を目的とした制御である。再開用点火タイミングつまりラン-オン抑制用点火タイミングは、前述したように、当該エンジン本体2において通常運転領域において設定されている全ての点火タイミングの範囲から逸脱したタイミングに設定される。例えば、通常運転領域で設定されている全ての点火タイミングの範囲が、クランク角度でBTDC5°ないし40°の範囲のエンジン本体2であれば、この範囲から逸脱したタイミングがラン-オン抑制用点火タイミングとして設定される。仮に、エンジン本体2の例えば通常運転領域に含まれるアイドル運転時の点火タイミングをラン-オン抑制用点火タイミングとして設定したときには、点火プラグ14による残留燃料の点火によってエンジンが活性化してアイドル運転に戻ってしまう可能性がある。このため、ラン-オン抑制制御においては、通常運転領域において設定されている点火タイミング範囲とは重複しない点火タイミング範囲のラン-オン抑制用点火タイミングの下で点火制御が実行される。
【0021】
特に、通常運転領域で用いられる点火タイミング範囲と、ラン-オン抑制制御において用いられる点火タイミング範囲とが、回転数領域として隣接せず、所定のタイミング範囲で離間していることが望ましい。
【0022】
図3を参照して、エンジン本体2の通常運転領域で設定されている全ての点火タイミングTg(nor)を破線で図示してある。このエンジン本体2において、通常運転領域で設定されている点火タイミングTg(nor)は、BTDC30°ないし8°の範囲である。
図3の参照符号Tg(R-on)はラン-オン抑制用点火タイミングを示す。ラン-オン抑制用点火タイミングTg(R-on)はATDC10°ないし20°の範囲に設定される。ATDC10°ないし20°は、当該エンジン本体2の通常運転領域で設定されている点火タイミングTg(nor)の範囲つまりBTDC30°ないし8°の範囲から遅角側に逸脱した点火タイミングである。
【0023】
より詳しくは、
図3に図示の例は、エンジン本体2において通常運転領域で設定されている点火タイミングTg(nor)の範囲から遅角側に逸脱したラン-オン抑制用点火タイミングが設定されていることを示している。これにより、ラン-オン燃焼が発生するタイミングの直前に点火プラグ14が点火される。そして、その飛び火で残留燃料の燃焼を誘発させることができる。すなわち、点火プラグ14が直接的に残留燃料を点火させることなく、点火プラグ14の点火の後に残留燃料の燃焼を誘発させることができる。なお、変形例として、当該エンジン本体2の通常運転領域で設定されている点火タイミングTg(nor)の範囲から進角側に逸脱した点火タイミングをラン-オン抑制用点火タイミングとして設定してもよい。
【0024】
エンジン制御において、アイドル運転からフルスットル運転に至る全運転領域に設定されている各点火タイミングで制御される通常運転制御モードと、これとは別に、再開用点火タイミングで点火を再開する点火再開制御モードとを用意し、これらの制御モードのプログラムを制御ユニット40のメモリM(
図1)に記憶させておくのがよい。そして、エンジン停止スイッチ46からエンジン停止信号を受け取ったら、点火制御を再開する前に通常運転制御モードから点火再開制御モードに切り替える。そして、エンジン回転数がしきい値Thよりも低くなったら又はエンジン停止から第1の所定時間が経過したら、点火再開制御モードに基づいてエンジン制御を実行すればよい。再開用点火タイミングは予め用意したラン-オン抑制用点火タイミングTg(R-on)のマップに基づいて設定するのが応答性に優れる。
【0025】
図4は、エンジン停止信号の入力からその後のエンジン制御の一例に関するフローチャートである。
図4を参照して、ステップS1で、エンジン停止スイッチ46からエンジン停止信号を受け付けたら、エンジン停止制御が実行される(S2)。ここに、エンジン停止制御は、点火プラグ14への通電を中止して点火プラグ14を休止状態にする制御を含む。
【0026】
次のステップS3において、エンジン停止前から実行されているエンジン回転数44による現在の回転数の監視がエンジン停止後も継続され、この回転数の監視はラン-オン抑制制御が終わるまで実行される。そして、ステップS4において、ラン-オン抑制用点火タイミングTg(R-on)が設定される。例えば、エンジン制御が通常運転制御モードから点火再開制御モードに切り替えられる。
【0027】
次のステップS5において、エンジン停止信号を受けとった後、第1所定時間が経過したら、ステップS6に進んで点火制御が再開される。点火再開制御は、上述したラン-オン抑制用点火タイミングに基づいて実行される。この再開した点火制御は、第2所定時間が経過するまで実行される(S7)。第2所定時間は、エンジン停止信号の入力を起点として例えば5~6秒が設定される。変形例として、点火制御を再開した時点を起点として第2所定時間を設定してもよい。第2所定時間が経過したら、ステップS8に進んで、点火プラグ14への通電が遮断される。これにより点火再開制御が終了する。
【0028】
図5は、ラン-オン抑制制御の他の例に関するフローチャートである。
図5のフローチャートにおいて、上述した
図4のフローチャートを構成するステップと同じステップには同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
図5の図示のエンジン制御例つまりラン-オン抑制制御において、ステップS10において、現在のエンジン回転数がしきい値Th(
図2)よりも低くなったら、ステップS6において点火制御が再開される。
【0029】
図6は、
図3を参照して説明したラン-オン抑制用点火タイミングTg(R-on)の変形例である。
図6に図示のラン-オン抑制用点火タイミングTg(R-on)は、エンジン回転数が1100rpmを含む第1領域ではBTDC70°が第1タイミングTg(R-on-1)として設定されている。エンジン回転数が1160rpmを含む第2領域ではATDC8°が第2タイミングTg(R-on-2)として設定されている。エンジン回転数が1250rpmを含む第3領域ではATDC12°が第3タイミングTg(R-on-3)として設定されている。
【0030】
第1タイミングTg(R-on-1)であるBTDC70°は、当該エンジン本体2の全ての運転領域つまり通常運転領域で設定されている点火タイミングTg(nor)の範囲、つまりBTDC30°ないし8°の範囲から進角側に逸脱した点火タイミングである。第2タイミングTg(R-on-2)であるATDC8°及び第3タイミングTg(R-on-3)であるATDC12°は、当該エンジン本体2の通常運転領域で設定されている点火タイミングTg(nor)の範囲から遅角側に逸脱した点火タイミングである。
【0031】
好ましい実施例として、ラン-オン抑制用点火タイミングTg(R-on)はエンジン温度に対応して設定値を変更するのがよい。
図6のラン-オン抑制用点火タイミングTg(R-on)で説明すれば、エンジン温度が高温(例えば点火プラグの座の温度が250℃以上)のときには、基準となる各設定値Tg(R-on-1)、Tg(R-on-2)、Tg(R-on-3)が高回転側にシフトされる。逆に、エンジン温度が低温のときには、基準となる各設定値Tg(R-on-1)、Tg(R-on-2)、Tg(R-on-3)が低回転側にシフトされる。
【0032】
図7は、ラン-オン抑制制御の別の例に関するフローチャートであり、ラン-オン抑制用点火タイミングTg(R-on)の温度による設定変更処理を含む。この設定変更処理において、ラン-オン抑制用点火タイミングTg(R-on)は、低温時には、基準設定値つまり
図6に図示の設定値Tg(R-on-1)、Tg(R-on-2)、Tg(R-on-3)が低回転側にシフトされ、高温時には、基準設定値から高回転側にシフトされる。
【0033】
図7において、
図3のフローチャートで説明したステップと同じステップには、同じ参照符号を付すことでその説明を省略する。ステップS1でエンジン停止信号の入力を受け付けたら、エンジン温度センサ42からのエンジン温度の監視が実行され(S20)、この温度監視は、ステップS8で点火再開制御が終了するまで継続される。
る。ステップS6で点火制御を再開したら、ステップS21に進んで、第1回目のラン-オン燃焼が発生したか否かが判断される。このラン-オン燃焼はエンジン回転数の加速度を検出することで検出することができる。この第1回目のラン-オン燃焼が発生した時点では、これに対応して、基準設定値である第1タイミングTg(R-on-1)に基づいて点火される。この第1回目のラン-オン燃焼に関して、事前に、エンジン温度に応じて基準設定値である第1タイミングTg(R-on-1)をシフトしたタイミングで点火してもよい。
【0034】
次のステップS22では、第2回目以降のラン-オン燃焼に対応して、エンジン温度に応じて基準設定値である第1ないし第3のタイミングTg(R-on-1)、Tg(R-on-2)、Tg(R-on-3)をシフトする設定変更が行われる。このシフトは少しずつ段階的に行っても良いし、一回のシフトでタイミング設定変更を完了させてもよい。第2回目以降の各ラン-オン燃焼に対応した点火制御は、通常のエンジン温度(例えば、点火プラグ座温度が200ないし250℃)であれば、基準設定値であるタイミングTg(R-on-1)、Tg(R-on-2)、Tg(R-on-3)に基づいて実行されるこれよりもエンジン温度が低温であれば、基準設定値を低回転側にシフトしたタイミングで点火制御が実行される。エンジン温度が高温あれば、基準設定値を高回転側にシフトしたタイミングで点火制御が実行される。
【0035】
上記のラン-オン抑制制御つまり点火再開制御により、エンジン停止時に残留する燃料を強制的に燃焼させることができるため、残留する燃料を吸気系4、燃焼室12などから一掃することができると共に、ラン-オン現象の持続時間を短縮することができる。また、エンジン停止信号に基づくエンジン停止後、時間的間隔を置いて点火制御が再開され、この再開した点火制御では、当該エンジン本体2の通常運転領域で設定されている全ての点火タイミングの範囲から逸脱したタイミングであるラン-オン抑制点火タイミング、つまり再開用点火タイミングTg(R-on)に基づいて点火制御が実行される。このことは、点火プラグ14の点火が残留燃料を点火する目的ではなく、点火プラグ14の点火の後に燃焼室12内の残留燃料の燃焼を促す目的であることを意味している。これにより、再開した点火制御によってエンジン本体2が活性化して例えばアイドル運転に戻ることを防止することができる。