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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145306
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241004BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20241004BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/165 207
B41J2/01 401
B41J2/165 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057595
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】増島 大輝
(72)【発明者】
【氏名】薄木 崇
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB40
2C056EC08
2C056EC37
2C056EC54
2C056FA04
2C056HA05
2C057AF65
2C057AG29
2C057AK07
2C057AM17
2C057AR03
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】複数の印刷ヘッドを複数の回路装置で制御できる液体吐出措置を提供すること。
【解決手段】基駆動信号と第1吐出制御信号とを出力する第1制御回路、第2吐出制御信号を出力する第2制御回路、基駆動信号から駆動信号を出力する駆動回路、駆動信号と第1吐出制御信号とに応じて液体を吐出する第1吐出部、駆動信号と第2吐出制御信号とに応じて液体を吐出する第2吐出部、媒体と第1吐出部との相対位置に応じた第1タイミング信号を出力する第1タイミング信号出力回路、及び第2タイミング信号を出力する第2タイミング信号出力回路を備え、媒体と第1吐出部との相対位置が変化する第1モードにおいて、第1制御回路及び第2制御回路は、第1タイミング信号に基づいて動作し、媒体と第1吐出部との相対位置が変化しない第2モードにおいて、第1制御回路及び第2制御回路は、第2タイミング信号に基づいて動作する、液体吐出装置。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基駆動信号、及び第1吐出制御信号を出力する第1制御回路と、
第2吐出制御信号を出力する第2制御回路と、
前記基駆動信号に応じた駆動信号を出力する駆動回路と、
前記駆動信号と前記第1吐出制御信号とに応じて媒体に液体を吐出する第1吐出部と、
前記駆動信号と前記第2吐出制御信号とに応じて前記媒体に液体を吐出する第2吐出部と、
前記媒体と前記第1吐出部との相対位置に応じた第1タイミング信号を出力する第1タイミング信号出力回路と、
第2タイミング信号を出力する第2タイミング信号出力回路と、
を備え、
前記媒体と前記第1吐出部との相対位置が変化する第1モードにおいて、前記第1制御回路、及び前記第2制御回路は、前記第1タイミング信号に基づいて動作し、
前記媒体と前記第1吐出部との相対位置が変化しない第2モードにおいて、前記第1制御回路、及び前記第2制御回路は、前記第2タイミング信号に基づいて動作する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2タイミング信号出力回路は、前記第1モードにおいて前記第1タイミング信号出力回路が出力する前記第1タイミング信号を模擬した前記第2タイミング信号を、前記第2モードにおいて出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第2タイミング信号出力回路は、前記第1制御回路が出力するクロック信号に基づいて、前記第1タイミング信号出力回路の出力を模擬した前記第2タイミング信号を出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1タイミング信号を前記第1制御回路、及び前記第2制御回路に供給するのか、前記第2タイミング信号を前記第1制御回路、及び前記第2制御回路に供給するのか、を切り替えるセレクターを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記セレクターは、前記第1制御回路が出力するセレクター制御信号に応じて、前記第1タイミング信号を前記第1制御回路、及び前記第2制御回路に供給するのか、前記第2タイミング信号を前記第1制御回路、及び前記第2制御回路に供給するのか、を切り替える、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1吐出部は、前記駆動信号が供給されることで駆動する圧電素子を含み、
前記第1制御回路は、前記第2モードにおいて、前記圧電素子が駆動した後に生じる残留振動を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第1吐出部は、前記第2モードにおいて、フラッシング動作を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に対してインクを吐出する液体吐出装置には、特許文献1に記載されるように、複数の印刷ヘッドを複数の回路装置を用いて制御する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-166713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の印刷ヘッドを複数の回路装置を用いて制御する際、特許文献1に記載の技術のみでは十分でなく、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る印刷装置の一態様は、
基駆動信号、及び第1吐出制御信号を出力する第1制御回路と、
第2吐出制御信号を出力する第2制御回路と、
前記基駆動信号に応じた駆動信号を出力する駆動回路と、
前記駆動信号と前記第1吐出制御信号とに応じて媒体に液体を吐出する第1吐出部と、
前記駆動信号と前記第2吐出制御信号とに応じて前記媒体に液体を吐出する第2吐出部と、
前記媒体と前記第1吐出部との相対位置に応じた第1タイミング信号を出力する第1タイミング信号出力回路と、
第2タイミング信号を出力する第2タイミング信号出力回路と、
を備え、
前記媒体と前記第1吐出部との相対位置が変化する第1モードにおいて、前記第1制御回路、及び前記第2制御回路は、前記第1タイミング信号に基づいて動作し、
前記媒体と前記第1吐出部との相対位置が変化しない第2モードにおいて、前記第1制御回路、及び前記第2制御回路は、前記第2タイミング信号に基づいて動作する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】液体吐出装置の機能構成を示す図である。
図2】吐出部の概略構造の一例を示す図である。
図3】駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。
図4】駆動信号選択回路の構成を示す図である。
図5】デコーダーにおけるデコード内容の一例を示す図である。
図6】選択回路の構成を示す図である。
図7】駆動信号選択回路の動作を説明するための図である。
図8】PTS信号出力回路の構成の一例を示す図である。
図9】PTS信号出力回路の動作の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0008】
1.液体吐出装置の機能構成
本実施形態における液体吐出装置1の機能構成について説明する。本実施形態の液体吐出装置1は、液体の一例としてインクを媒体に吐出することで、媒体に所望の画像を形成するインクジェットプリンターである。このような液体吐出装置1は、不図示のコンピューター等の外部機器から画像データを受信し、受信した画像データに基づいて媒体に画像を形成する。図1は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。図1に示されるように、液体吐出装置1は、メイン制御回路10、ヘッド制御回路20-1,20-2、PTS信号出力回路30、搬送機構40、駆動信号出力回路50、及び吐出ヘッド100-1~100-6を備える。
【0009】
メイン制御回路10は、複数の機能を備えた1又は複数の半導体装置であって、例えば、CPU(Central Processing Unit)やSoC(System on a Chip)を含んで構成されている。メイン制御回路10には、液体吐出装置1の外部に設けられた不図示の外部機器から画像データが入力される。メイン制御回路10は、入力される画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メイン制御回路10は、当該画像処理を施した信号を画像情報信号Pr1としてヘッド制御回路20-1に出力するとともに、画像情報信号Pr2としてヘッド制御回路20-2に出力する。
【0010】
また、メイン制御回路10は、画像データに依らずヘッド制御回路20-1,20-2の動作を制御することもできる。この場合、メイン制御回路10は、ヘッド制御回路20-1,20-2の動作を制御する情報を含む画像情報信号Pr1,Pr2を生成し、対応するヘッド制御回路20-1,20-2に出力する。このメイン制御回路10が、画像信号に依らずにヘッド制御回路20-1,20-2に実行させる動作は、例えば、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれに対するメンテナンス動作であって、具体的には、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれからのインクの吐出状態を検出する検出動作や、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれの状態を復帰させるためのワイピング動作やフラッシング動作等が含まれる。
【0011】
ここで、メイン制御回路10が出力する画像情報信号Pr1,Pr2は、差動信号等の電気信号であってもよく、光信号であってもよい。また、メイン制御回路10が実行する画像処理には、例えば、入力される画像信号を、赤、緑、青の色彩情報に変換した後、液体吐出装置1から吐出されるインクの色彩に対応する色彩情報に変換する色彩変換処理や、色彩変換処理がなされた色彩情報を二値化するハーフトーン処理等が挙げられる。なお、メイン制御回路10が実行する画像処理は、上述した色変換処理やハーフトーン処理に限るものではない。
【0012】
また、メイン制御回路10は、インクが吐出される媒体の搬送を制御するための搬送制御信号PTを生成し、搬送機構40に出力する。搬送機構40は、搬送モーター41、搬送ローラー42、及び、エンコーダーセンサー43を有する。メイン制御回路10が出力する搬送制御信号PTは、搬送モーター41に入力される。搬送モーター41は、搬送制御信号PTに基づいて駆動する。この搬送モーター41の駆動力は、媒体を支持し、又は、挟持する搬送ローラー42に供給される。これにより、搬送ローラー42が回転駆動し、搬送ローラー42に支持、又は挟持される媒体が、搬送ローラー42の回転方向に沿って搬送される。ここで、以下の説明において、媒体が搬送される方向を搬送方向と称する場合がある。
【0013】
エンコーダーセンサー43は、搬送ローラー42の回転量に応じた信号であって、搬送ローラー42の回転駆動に応じて搬送される媒体の搬送位置に応じた信号を生成し、エンコーダー信号PE_A/Bとして出力する。すなわち、エンコーダーセンサー43は、媒体の搬送位置であって、媒体と後述する吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置に応じたエンコーダー信号PE_A/Bを出力する。このようなエンコーダーセンサー43としては、例えば、2相タイプのロータリーエンコーダーを用いることができる。すなわち、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A/Bには、A相の信号と、A相の信号から90度位相が遅れたB相の信号と、が含まれる。
【0014】
媒体の搬送位置を検出するエンコーダーセンサー43を2相タイプのロータリーエンコーダーとすることで、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A/Bに基づいて、搬送ローラー42の回転方向であって、媒体の搬送方向を把握することができる。ここで、以下の説明において、エンコーダー信号PE_A/Bに含まれるA相の信号とB相の信号とを区別する場合、エンコーダーセンサー43が出力するA相の信号をエンコーダー信号PE_Aと称し、エンコーダーセンサー43が出力するB相の信号であって、エンコーダー信号PE_Aの位相が90度遅れた信号をエンコーダー信号PE_Bと称する。
【0015】
搬送機構40のエンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A/Bは、PTS信号出力回路30に入力される。また、PTS信号出力回路30には、後述するヘッド制御回路20-1が出力するセレクト信号SEL、及びエンコーダークロック信号ECKが入力される。PTS信号出力回路30は、入力されるエンコーダー信号PE_A/B、セレクト信号SEL、及び、エンコーダークロック信号ECKに基づいて、ヘッド制御回路20-1,20-2の動作タイミングを規定する動作タイミング信号PTSを生成し、ヘッド制御回路20-1,20-2に出力する。なお、PTS信号出力回路30の詳細については後述する。
【0016】
ヘッド制御回路20-1は、例えば、SoC(System on a Chip)を含んで構成されている。ヘッド制御回路20-1には、メイン制御回路10が出力する画像情報信号Pr1と、PTS信号出力回路30が出力する動作タイミング信号PTSと、が入力される。ヘッド制御回路20-1は、動作タイミング信号PTSに同期したタイミングでラッチ信号LAT1を出力するとともに、画像情報信号Pr1に応じたチェンジ信号CH1、システムクロック信号SCK1、印刷データ信号SI1~SI3、基駆動信号dA、セレクト信号SEL、及びエンコーダークロック信号ECKを、ラッチ信号LAT1に同期して出力する。
【0017】
また、ヘッド制御回路20-2は、例えば、SoC(System on a Chip)を含んで構成されている。ヘッド制御回路20-2には、メイン制御回路10が出力する画像情報信号Pr2と、PTS信号出力回路30が出力する動作タイミング信号PTSと、が入力される。ヘッド制御回路20-2は、動作タイミング信号PTSに同期したタイミングでラッチ信号LAT2を出力するとともに、画像情報信号Pr2に応じたチェンジ信号CH2、システムクロック信号SCK2、及び、印刷データ信号SI4~SI6を、ラッチ信号LAT2に同期して出力する。
【0018】
ヘッド制御回路20-1が出力する基駆動信号dAは、駆動信号出力回路50に入力される。駆動信号出力回路50は、入力される基駆動信号dAをアナログ信号に変換した後、変換したアナログ信号をD級増幅することで、駆動信号COMを生成し、出力する。また、駆動信号出力回路50は、駆動信号COMの基準電位であって、後述する圧電素子60の駆動の基準電位として機能する基準電圧信号VBSを生成し、出力する。
【0019】
また、ヘッド制御回路20-1が出力するラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、システムクロック信号SCK1、及び、印刷データ信号SI1と、駆動信号出力回路50が出力する駆動信号COM、及び、基準電圧信号VBSとは、吐出ヘッド100-1に入力される。
【0020】
吐出ヘッド100-1は、駆動信号選択回路200、及び複数の吐出部600を有し、複数の吐出部600のそれぞれは、圧電素子60を含む。ラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、システムクロック信号SCK1、印刷データ信号SI1、及び、駆動信号COMは、駆動信号選択回路200に入力される。駆動信号選択回路200は、印刷データ信号SI1に基づいて、ラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1で規定されるタイミングで、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、複数の吐出部600のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成する。そして、駆動信号選択回路200は、生成した駆動信号VOUTを対応する吐出部600に含まれる圧電素子60の一端に供給する。このとき、吐出ヘッド100-1が有する複数の圧電素子60の他端には、基準電圧信号VBSが供給される。圧電素子60は、一端に供給される駆動信号VOUTと他端に供給される基準電圧信号VBSとの電位差に応じて駆動する。そして、圧電素子60の駆動に応じた量のインクが、吐出部600から吐出される。
【0021】
また、駆動信号選択回路200は、圧電素子60が駆動した後に生じる吐出部600の残留振動を取得し、取得した残留振動に応じた残留振動信号NVT1を生成する。そして、駆動信号選択回路200は、生成した残留振動信号NVT1をヘッド制御回路20-1に出力する。この吐出部600に生じる残留振動は、吐出部600の状態であって、例えば、吐出部600に気泡が混入した場合や、吐出部600に貯留されるインクの粘度に変化が生じた場合、周波数や電圧振幅が変化する。駆動信号選択回路200は、この残留振動の周波数や電圧振幅を取得し、取得した周波数、及び電圧振幅の少なくとも一方に応じた残留振動信号NVT1を生成し、ヘッド制御回路20-1に出力する。こりより、ヘッド制御回路20-1は、吐出ヘッド100-1に含まれる吐出部600の状態であって、吐出ヘッド100-1からのインクの吐出状態を検出することができる。
【0022】
ここで、吐出ヘッド100-2~100-6は、同様の構成であり、同様の動作を行う。
【0023】
すなわち、吐出ヘッド100-2は、駆動信号選択回路200、及び複数の吐出部600を有し、複数の吐出部600のそれぞれは、圧電素子60を含む。そして、吐出ヘッド100-2には、ヘッド制御回路20-1が出力するラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、システムクロック信号SCK1、及び、印刷データ信号SI2と、駆動信号出力回路50が出力する駆動信号COM、及び、基準電圧信号VBSと、が入力され、吐出ヘッド100-2は、残留振動信号NVT2を出力する。
【0024】
同様に、吐出ヘッド100-3は、駆動信号選択回路200、及び複数の吐出部600を有し、複数の吐出部600のそれぞれは、圧電素子60を含む。そして、吐出ヘッド100-3には、ヘッド制御回路20-1が出力するラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、システムクロック信号SCK1、及び、印刷データ信号SI3と、駆動信号出力回路50が出力する駆動信号COM、及び、基準電圧信号VBSと、が入力され、吐出ヘッド100-3は、残留振動信号NVT3を出力する。
【0025】
同様に、吐出ヘッド100-4は、駆動信号選択回路200、及び複数の吐出部600を有し、複数の吐出部600のそれぞれは、圧電素子60を含む。そして、吐出ヘッド100-4には、ヘッド制御回路20-2が出力するラッチ信号LAT2、チェンジ信号CH2、システムクロック信号SCK2、及び、印刷データ信号SI4と、駆動信号出力回路50が出力する駆動信号COM、及び、基準電圧信号VBSと、が入力され、吐出ヘッド100-4は、残留振動信号NVT4を出力する。
【0026】
同様に、吐出ヘッド100-5は、駆動信号選択回路200、及び複数の吐出部600を有し、複数の吐出部600のそれぞれは、圧電素子60を含む。そして、吐出ヘッド100-5には、ヘッド制御回路20-2が出力するラッチ信号LAT2、チェンジ信号CH2、システムクロック信号SCK2、及び、印刷データ信号SI5と、駆動信号出力回路50が出力する駆動信号COM、及び、基準電圧信号VBSと、が入力され、吐出ヘッド100-5は、残留振動信号NVT5を出力する。
【0027】
同様に、吐出ヘッド100-6は、駆動信号選択回路200、及び複数の吐出部600を有し、複数の吐出部600のそれぞれは、圧電素子60を含む。そして、吐出ヘッド100-6には、ヘッド制御回路20-2が出力するラッチ信号LAT2、チェンジ信号CH2、システムクロック信号SCK2、及び、印刷データ信号SI6と、駆動信号出力回路50が出力する駆動信号COM、及び、基準電圧信号VBSと、が入力され、吐出ヘッド100-6は、残留振動信号NVT6を出力する。
【0028】
ここで、以下の説明において、吐出ヘッド100-1~100-6を区別する必要がない場合、単に吐出ヘッド100と称する場合がある。この際、吐出ヘッド100には、ラッチ信号LAT1,LAT2としてのラッチ信号LATと、チェンジ信号CH1,CH2としてのチェンジ信号CHと、システムクロック信号SCK1,SCK2としてのシステムクロック信号SCKと、印刷データ信号SI1~SI6としての印刷データ信号SIと、駆動信号COMと、基準電圧信号VBSと、が入力され、残留振動信号NVT1~NVT6としての残留振動信号NVTを出力するとして説明を行う。
【0029】
ここで、吐出ヘッド100が有する吐出部600の構造の一例について説明する。図2は、吐出ヘッド100が有する複数の吐出部600の内の1個の吐出部600の概略構造の一例を示す図である。なお、図2には、吐出部600に加えて、複数の吐出部600に共通に設けられたリザーバー641と、リザーバー641にインクを供給する供給口661と、を図示している。
【0030】
図2に示すように、吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631、及びノズルプレート632を含む。
【0031】
圧電素子60は、圧電体601と電極611,612とを含む。そして、圧電素子60において、電極611,612は、圧電体601を挟むように位置している。そして、電極611,612の一方に駆動信号VOUTが供給され、電極611,612の他方に基準電圧信号VBSが供給される。以上のように構成された圧電素子60は、電極611,612の一方に供給される駆動信号VOUTと、電極611,612の他方に供給される基準電圧信号VBSとの電位差に応じて、圧電体601の中央部分が上下方向に変位するように駆動する。
【0032】
振動板621は、図2における圧電素子60の下方に位置している。すなわち、圧電素子60は、振動板621の図2における上方の面に形成されている。このような振動板621は、圧電素子60の駆動に伴う上下方向への変位に伴い、上下方向に変形する。
【0033】
振動板621の図2における下方には、キャビティー631が位置している。キャビティー631は、リザーバー641と連通している。これにより、供給口661を介して供給されたインクが、リザーバー641を経由してキャビティー631の内部に供給される。このようなキャビティー631は、振動板621の上下方向の変位に伴い内部容積が変化する。すなわち、振動板621はキャビティー631の内部容積を変化させるダイヤフラムとして機能し、キャビティー631は振動板621の変位に伴い内部圧力が変化する圧力室として機能する。
【0034】
ノズルプレート632には、ノズル651が形成されている。ノズル651は、ノズルプレート632に設けられ開口部であって、キャビティー631と連通している。そして、キャビティー631の内部に充填されたインクは、キャビティー631の内部容積の変化に応じてノズル651から吐出される。
【0035】
以上のように構成された吐出部600において、駆動信号VOUTと基準電圧信号VBSとの電位差によって、圧電素子60が上方向に撓むように駆動した場合、振動板621が上方向に変位する。これにより、キャビティー631の内部容積が拡大し、リザーバー641に貯留されているインクがキャビティー631に引き込まれる。一方で、駆動信号VOUTと基準電圧信号VBSとの電位差によって、圧電素子60が下方向に撓むように駆動した場合、振動板621が下方向に変位する。これにより、キャビティー631の内部容積が縮小し、キャビティー631の内部容積の縮小の程度に応じた量のインクが、ノズル651から吐出される。なお、吐出部600に含まれる圧電素子60の構造は、駆動によりノズル651からインクを吐出できる構造であればよく、図2に示す構造に限られるものではない。
【0036】
2.駆動信号選択回路の機能構成
次に、駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。駆動信号選択回路200は、システムクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、複数の吐出部600のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成する。そして、駆動信号選択回路200は、生成した駆動信号VOUTを対応する吐出部600に出力する。そこで、駆動信号選択回路200の構成、及び動作を説明するにあたり、まず、駆動信号選択回路200に入力される駆動信号COMの信号波形の一例について説明する。
【0037】
図3は、駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。図3に示すように、駆動信号COMは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T1に配置された台形波形Adpと、チェンジ信号CHが立ち上がってから次にチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T2に配置された台形波形Bdpと、チェンジ信号CHが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間T3に配置された台形波形Cdpと、を含む。すなわち、駆動信号COMは、ラッチ信号LATが立ち上がってから次にラッチ信号LATが立ち上がるまでの周期Tpに配置された台形波形Adp,Bdp,Cdpを含む。換言すれば、駆動信号出力回路50は、ヘッド制御回路20-1の制御の基で、ラッチ信号LATによって規定されたタイミングに配置された台形波形Adp,Bdp,Cdpを含む駆動信号COMを出力する。
【0038】
台形波形Adpは、圧電素子60に供給された場合に当該圧電素子60に対応する吐出部600から所定量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形である。台形波形Bdpは、圧電素子60に供給された場合に当該圧電素子60に対応する吐出部600から所定量よりも少量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形である。台形波形Cdpは、圧電素子60に供給された場合に当該圧電素子60に対応する吐出部600からインクが吐出されない程度に圧電素子60を駆動する信号波形である。ここで、台形波形Cdpが圧電素子60に供給された場合、当該圧電素子60は、対応する吐出部600のノズル開孔部付近のインクを振動させる。これにより、ノズル開孔部付近のインク粘度が増大するおそれが低減する。
【0039】
また、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれは、開始タイミングでの電圧値、及び終了タイミングでの電圧値がいずれも電圧Vcで共通である。すなわち、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する信号波形である。
【0040】
ここで、以下の説明において、圧電素子60に台形波形Adpが供給された場合に、当該圧電素子60に対応する吐出部600から吐出される所定量のインクの量を中程度の量と称し、圧電素子60に台形波形Bdpが供給された場合に、当該圧電素子60に対応する吐出部600から吐出される所定量のよりも少ないインクの量を小程度の量と称する場合がある。また、圧電素子60に台形波形Cdpが供給された場合に、当該圧電素子60に対応する吐出部600のノズル開孔部付近のインクを振動させてインク粘度の増大を防止するための動作を微振動と称する場合がある。
【0041】
なお、図3に示す駆動信号COMの信号波形は一例であり、これに限られるものではない。すなわち、駆動信号COMの信号波形は、吐出されるインクの性質や、インクが着弾する媒体の材質等に応じた様々な信号波形が組み合わされていてもよい。また、駆動信号出力回路50は、図3に示す台形波形Adp,Bdp,Cdpに加えて、又は替えて、上述した残留振動を検出するための信号波形を含む駆動信号COMを生成し、出力してもよい。
【0042】
本実施形態の駆動信号選択回路200は、期間T1,T2,T3を含む周期Tpにおいて、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれを選択又は非選択とすることで、吐出部600から吐出されるインクの量を制御する。すなわち、ラッチ信号LATによって規定される周期Tp毎に、媒体に形成されるドットサイズが制御される。
【0043】
図4は、駆動信号選択回路200の構成を示す図である。図4に示すように、駆動信号選択回路200は、選択制御回路210と複数の選択回路230を有する。
【0044】
選択制御回路210には、システムクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及び、チェンジ信号CHが入力される。また、選択制御回路210には、シフトレジスター(S/R)212とラッチ回路214とデコーダー216との組が、複数の吐出部600の各々に対応して設けられている。すなわち、吐出ヘッド100がp個の吐出部600を有する場合、駆動信号選択回路200は、p個のシフトレジスター212と、p個のラッチ回路214と、p個のデコーダー216とを含む。
【0045】
印刷データ信号SIは、システムクロック信号SCKに同期して選択制御回路210に入力される。印刷データ信号SIは、「大ドットLD」、「中ドットMD」、「小ドットSD」、及び「非記録ND」のいずれかを選択するための2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を、p個の吐出部600の各々に対応してシリアルに含む。すなわち、印刷データ信号SIは、少なくとも2pビットのシリアル信号である。そして、印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]は、p個の吐出部600のそれぞれに対応するp個のシフトレジスター212に保持される。
【0046】
具体的には、吐出部600に対応したp個のシフトレジスター212が互いに縦続接続しているとともに、シリアルで入力された印刷データ信号SIが、システムクロック信号SCKに従って順次後段のシフトレジスター212に転送される。そして、印刷データ[SIH,SIL]が対応するシフトレジスター212に保持されると、システムクロック信号SCKの供給が停止する。換言すれば、システムクロック信号SCKの供給が停止することで、印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]が、対応するシフトレジスター212に保持される。なお、図4では、p個のシフトレジスター212を区別するために、印刷データ信号SIが入力される上流側から順番に1段、2段、…、p段と表記している。
【0047】
p個のラッチ回路214の各々は、ラッチ信号LATの立ち上がりで対応するシフトレジスター212に保持された印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。そして、ラッチ回路214がラッチした印刷データ[SIH,SIL]は、対応するデコーダー216に入力される。図5は、デコーダー216におけるデコード内容の一例を示す図である。デコーダー216は、期間T1,T2,T3のそれぞれにおいて、入力される印刷データ[SIH,SIL]で規定される論理レベルの選択信号Sを出力する。例えば、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを、期間T1,T2,T3においてH,L,Lレベルとして出力する。
【0048】
デコーダー216が出力する選択信号Sは、選択回路230に入力される。選択回路230は、p個の吐出部600のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択回路200は、吐出部600と同数のp個の選択回路230を有する。図6は、吐出部600の1個分に対応する選択回路230の構成を示す図である。図6に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232とトランスファーゲート234とを含む。
【0049】
選択信号Sは、トランスファーゲート234において丸印が付されていない正制御端に入力されるとともに、インバーター232によって論理レベルが反転された後、トランスファーゲート234において丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234の入力端には、駆動信号COMが供給されている。そして、トランスファーゲート234は、Hレベルの選択信号Sが入力された場合に入力端と出力端との間が導通となり、Lレベルの選択信号Sが入力された場合に入力端と出力端との間が非導通となる。すなわち、トランスファーゲート234は、入力される選択信号Sの論理レベルがHレベルの場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力し、入力される選択信号Sの論理レベルがLレベルの場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力しない。
【0050】
そして、駆動信号選択回路200は、選択回路230が有するトランスファーゲート234の出力端に出力された信号を、駆動信号VOUTとして出力する。
【0051】
ここで、図7を用いて駆動信号選択回路200の動作について説明する。図7は、駆動信号選択回路200の動作を説明するための図である。印刷データ信号SIは、システムクロック信号SCKに同期したシリアル信号として選択制御回路210に入力される。印刷データ信号SIは、システムクロック信号SCKに同期して、p個の吐出部600のそれぞれに対応するp個のシフトレジスター212において順次転送される。その後、システムクロック信号SCKの入力が停止すると、シフトレジスター212には、p個の吐出部600のそれぞれに対応した印刷データ[SIH,SIL]が保持される。
【0052】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、シフトレジスター212に保持されている印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。
【0053】
なお、図7に示すLT1、LT2、…、LTpは、1段、2段、…、p段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた印刷データ[SIH,SIL]を示す。
【0054】
デコーダー216は、ラッチされた印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間T1,T2,T3のそれぞれにおいて、選択信号Sの論理レベルを図5に示す内容で出力する。そして、選択回路230が、デコーダー216が出力する選択信号Sの論理レベルに応じて駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成する。
【0055】
具体的には、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間T1,T2,T3においてH,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間T1において台形波形Adpを選択し、期間T2において台形波形Bdpを選択し、期間T3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、周期Tpにおいて駆動信号選択回路200は、「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0056】
「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTが吐出部600が有する圧電素子60に供給された場合、吐出部600は、期間T1において中程度の量のインクを吐出し、期間T2において小程度の量のインクを吐出し、期間T3においてインクを吐出しない。そして、吐出部600から吐出された中程度の量のインクと小程度の量のインクとが媒体に着弾し結合することで、媒体に「大ドットLD」が形成される。
【0057】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間T1,T2,T3においてH,L,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間T1において台形波形Adpを選択し、期間T2において台形波形Bdpを選択せず、期間T3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0058】
「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTが吐出部600が有する圧電素子60に供給された場合、吐出部600は、期間T1において中程度の量のインクを吐出し、期間T2においてインクを吐出せず、期間T3においてインクを吐出しない。そして、吐出部600から吐出された中程度の量のインクが媒体に着弾することで、媒体に「中ドットMD」が形成される。
【0059】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間T1,T2,T3においてL,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間T1において台形波形Adpを選択せず、期間T2において台形波形Bdpを選択し、期間T3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0060】
「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTが吐出部600が有する圧電素子60に供給された場合、吐出部600は、期間T1においてインクを吐出せず、期間T2において小程度の量のインクを吐出し、期間T3においてインクを吐出しない。そして、吐出部600から吐出された小程度の量のインクが媒体に着弾することで、媒体に「小ドットSD」が形成される。
【0061】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間T1,T2,T3においてL,L,Hレベルとする。これにより、選択回路230は、期間T1において台形波形Adpを選択せず、期間T2において台形波形Bdpを選択せず、期間T3において台形波形Cdpを選択する。その結果、駆動信号選択回路200は、「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0062】
「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTが吐出部600が有する圧電素子60に供給された場合、吐出部600は、期間T1においてインクを吐出せず、期間T2においてインクを吐出せず、期間T3においてインクを吐出しない。したがって、吐出部600からインクが吐出されず、媒体にドットが形成されない「非記録ND」となる。
【0063】
このとき、対応する選択回路230は、台形波形Cdpを含む駆動信号VOUTを出力する。したがって、対応する吐出部600に対して微振動が実行される。その結果、対応する吐出部600のノズル開孔部付近のインク粘度が増大するおそれが低減する。
【0064】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1では、駆動信号出力回路50が、ラッチ信号LATによって規定される周期Tp毎に台形波形Adp,Bdp,Cdpを含む駆動信号COMを出力し、駆動信号選択回路200が、ラッチ信号LATによって規定される周期Tp毎に、駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpを選択するのか非選択とするのかを切り替える。これにより、ラッチ信号LATによって規定される周期Tp毎に「大ドットLD」、「中ドットMD」、「小ドットSD」、及び「非記録ND」のそれぞれに対応するドットが媒体に形成される。
【0065】
3.PTS出力回路の構成、及び動作
以上のように本実施形態の液体吐出装置1は、基駆動信号dA、システムクロック信号SCK1、ラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、及び印刷データ信号SI1~SI3を出力するヘッド制御回路20-1と、システムクロック信号SCK2、ラッチ信号LAT2、チェンジ信号CH2、及び印刷データ信号SI4~SI6を出力するヘッド制御回路20-2と、基駆動信号dAに応じた駆動信号COMを出力する駆動信号出力回路50と、駆動信号COM、システムクロック信号SCK1、ラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、及び、対応する印刷データ信号SI1~SI3に応じて媒体にインクを吐出する吐出部600を含む吐出ヘッド100-1~100-3と、駆動信号COM、システムクロック信号SCK2、ラッチ信号LAT2、チェンジ信号CH2、及び、対応する印刷データ信号SI4~SI6に応じて媒体にインクを吐出する吐出部600を含む吐出ヘッド100-4~100-6と、を備える。
【0066】
すなわち、本実施形態の液体吐出装置1は、ヘッド制御回路20-1によって制御される吐出ヘッド100-1~100-3と、ヘッド制御回路20-2によって制御される吐出ヘッド100-4~100-6と、を備え、吐出ヘッド100-1~100-6には、ヘッド制御回路20-1が出力する基駆動信号dAに応じて駆動信号出力回路50が生成した駆動信号COMが共通に供給される。
【0067】
このような液体吐出装置1では、ヘッド制御回路20-1によって制御される吐出ヘッド100-1~100-3と、ヘッド制御回路20-2によって制御される吐出ヘッド100-4~100-6とに、共通の駆動信号COMが供給される。このとき、駆動信号COMの信号波形の周期Tpがラッチ信号LAT1によって規定される点に鑑みると、ヘッド制御回路20-1とヘッド制御回路20-2との動作タイミングであって、ヘッド制御回路20-1がラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、及びシステムクロック信号SCK1を出力するタイミングと、ヘッド制御回路20-2がラッチ信号LAT2、チェンジ信号CH2、及びシステムクロック信号SCK2を出力するタイミングと、にずれが生じた場合、吐出ヘッド100-1~100-3のそれぞれが有する駆動信号選択回路200が、駆動信号COMの信号波形を選択又は非選択とするタイミングと、吐出ヘッド100-4~100-6のそれぞれが有する駆動信号選択回路200が、駆動信号COMの信号波形を選択又は非選択とするタイミングと、にずれが生じる。その結果、駆動信号COMの生成に寄与しないヘッド制御回路20-2によって吐出が制御される吐出ヘッド100-4~100-6に供給される駆動信号VOUTの信号波形に歪みが生じ、吐出ヘッド100-4~100-6からのインクの吐出精度が低下するおそれがある。
【0068】
また、ヘッド制御回路20-1がラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、及びシステムクロック信号SCK1を出力するタイミングと、ヘッド制御回路20-2がラッチ信号LAT2、チェンジ信号CH2、及びシステムクロック信号SCK2を出力するタイミングと、にずれが生じた場合、ヘッド制御回路20-2によって吐出が制御される吐出ヘッド100-4~100-6のそれぞれが有する選択回路230が、駆動信号COMの信号波形の電圧値が大きなタイミングで導通に制御される可能性が生じ、仮に、ヘッド制御回路20-2によって吐出が制御される吐出ヘッド100-4~100-6のそれぞれが有する選択回路230が、駆動信号COMの信号波形の電圧値が大きなタイミングで導通に制御された場合、対応する圧電素子60に、電圧値が急峻に変換する駆動信号VOUTが供給される。これにより、圧電素子60に急激な負荷が加わり、圧電素子60を損傷する可能性もある。そして、圧電素子60が損傷した場合、吐出ヘッド100-4~100-6からの吐出精度が著しく低下する。
【0069】
係る問題に対して、本実施形態の液体吐出装置1では、PTS信号出力回路30がヘッド制御回路20-1とヘッド制御回路20-2とに共通の動作タイミング信号PTSを出力し、ヘッド制御回路20-1とヘッド制御回路20-2とが、入力される共通の動作タイミング信号PTSに基づいて動作することで、ヘッド制御回路20-1とヘッド制御回路20-2との動作タイミングの同期を図る。これにより、液体吐出装置1におけるインクの吐出精度が低下するおそれを低減するとともに、圧電素子60に異常が生じるおそれも低減する。
【0070】
このようなヘッド制御回路20-1,20-2の動作タイミングを規定する動作タイミング信号PTSを出力するPTS信号出力回路30の構成、及び動作について説明する。図8は、PTS信号出力回路30の構成の一例を示す図である。図8に示すように、PTS信号出力回路30は、擬似エンコーダー回路31、及びセレクト回路35を有する。PTS信号出力回路30には、前述のとおり、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A/Bとしてのエンコーダー信号PE_A、及びエンコーダー信号PE_Bと、ヘッド制御回路20-1が出力するセレクト信号SEL、及びエンコーダークロック信号ECKと、が入力される。
【0071】
擬似エンコーダー回路31は、D-FF(Flip-Flop)回路32aとD-FF回路32bとを有する。
【0072】
D-FF回路32aのクロック入力端子には、エンコーダークロック信号ECKが入力される。D-FF回路32aの入力端子と反転出力端子とは、電気的に接続されている。そして、D-FF回路32aは、正転出力端子から擬似エンコーダー信号DE_Aを出力する。このD-FF回路32aが出力する擬似エンコーダー信号DE_Aは、エンコーダークロック信号ECKの立ち上りに同期して論理レベルが反転する。
【0073】
D-FF回路32bのクロック入力端子には、エンコーダークロック信号ECKの論理レベルが反転した信号が入力される。D-FF回路32bの入力端子と反転出力端子とは、電気的に接続されている。そして、D-FF回路32bは、正転出力端子から擬似エンコーダー信号DE_Bを出力する。このD-FF回路32bが出力する擬似エンコーダー信号DE_Bは、エンコーダークロック信号ECKの立下り同期して論理レベルが反転する。
【0074】
すなわち、D-FF回路32aは、入力されるエンコーダークロック信号ECKの1/2の周波数の擬似エンコーダー信号DE_Aを出力し、D-FF回路32bは、入力されるエンコーダークロック信号ECKの1/2の周波数であって、擬似エンコーダー信号DE_Aの位相が90度遅れた擬似エンコーダー信号DE_Bを出力する。換言すれば、擬似エンコーダー回路31は、擬似エンコーダー信号DE_Aと、擬似エンコーダー信号DE_Aの位相が90度遅れた擬似エンコーダー信号DE_Bと、を出力する。
【0075】
ここで、前述のとおり、エンコーダーセンサー43は、媒体の搬送位置に応じた信号であって、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置に応じたエンコーダー信号PE_A/Bとして、エンコーダー信号PE_Aと、エンコーダー信号PE_Aの位相が90度遅れたエンコーダー信号PE_Bと、を出力する。このとき、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A/Bの周波数は、搬送ローラー42の回転速度に比例し、搬送される媒体の搬送速度によって制御される。
【0076】
これに対して、擬似エンコーダー回路31は、媒体の搬送位置、及び、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置に依らない信号であって、エンコーダークロック信号ECKに応じた擬似エンコーダー信号DE_Aと、擬似エンコーダー信号DE_Aの位相が90度遅れた擬似エンコーダー信号DE_Bと、を出力する。このとき、擬似エンコーダー回路31が出力する擬似エンコーダー信号DE_A、及び擬似エンコーダー信号DE_Bの周波数は、ヘッド制御回路20-1から入力されるエンコーダークロック信号ECKの周波数によって制御される。
【0077】
すなわち、擬似エンコーダー回路31は、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置が変化する期間にエンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A/Bを模擬した擬似エンコーダー信号DE_A,DE_Bを、エンコーダークロック信号ECKに基づいて生成し、出力する。
【0078】
セレクト回路35は、セレクター36a、及びセレクター36bを有する。セレクター36a、及びセレクター36bは、例えばマルチプレクサーを含んで構成され、制御端子入力される信号に応じて、入力端子に入力される信号を選択し、選択した信号を出力端子から出力する。
【0079】
セレクター36aの入力端子には、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_Aと、擬似エンコーダー回路31が出力する擬似エンコーダー信号DE_Aと、が入力される。また、セレクター36aの制御端子には、ヘッド制御回路20-1が出力するセレクト信号SELが入力される。これにより、セレクター36aは、セレクト信号SELに応じて、エンコーダー信号PE_A、又は擬似エンコーダー信号DE_Aを選択し、選択した信号を動作タイミング信号PTSの内の動作タイミング信号PTS_Aとして出力する。ここで、以下の説明においてセレクター36aは、入力されるセレクト信号SELの論理レベルがLレベルの場合、エンコーダー信号PE_Aを選択し、動作タイミング信号PTS_Aとして出力し、入力されるセレクト信号SELの論理レベルがHレベルの場合、擬似エンコーダー信号DE_Aを選択し、動作タイミング信号PTS_Aとして出力するとして説明を行う。
【0080】
セレクター36bの入力端子には、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_Bと、擬似エンコーダー回路31が出力する擬似エンコーダー信号DE_Bと、が入力される。また、セレクター36bの制御端子には、ヘッド制御回路20-1が出力するセレクト信号SELが入力される。これにより、セレクター36bは、セレクト信号SELに応じて、エンコーダー信号PE_B、又は擬似エンコーダー信号DE_Bを選択し、選択した信号を動作タイミング信号PTSの内の動作タイミング信号PTS_Bとして出力する。ここで、以下の説明においてセレクター36bは、入力されるセレクト信号SELの論理レベルがLレベルの場合、エンコーダー信号PE_Bを選択し、動作タイミング信号PTS_Bとして出力し、入力されるセレクト信号SELの論理レベルがHレベルの場合、擬似エンコーダー信号DE_Bを選択し、動作タイミング信号PTS_Bとして出力するとして説明を行う。
【0081】
すなわち、セレクト回路35は、ヘッド制御回路20-1からLレベルのセレクト信号SELが入力された場合、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_Aを動作タイミング信号PTS_Aとして出力するとともに、エンコーダー信号PE_Bを動作タイミング信号PTS_Bとして出力し、ヘッド制御回路20-1からHレベルのセレクト信号SELが入力された場合、擬似エンコーダー回路31が出力する擬似エンコーダー信号DE_Aを動作タイミング信号PTS_Aとして出力するとともに、擬似エンコーダー信号DE_Bを動作タイミング信号PTS_Bとして出力する。
【0082】
このセレクト回路35が出力する動作タイミング信号PTS_A、及び動作タイミング信号PTS_Bが、PTS信号出力回路30から出力され、ヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2に共通に入力される。ヘッド制御回路20-1は、動作タイミング信号PTSとして入力される動作タイミング信号PTS_A、及び動作タイミング信号PTS_Bに基づくタイミングで、システムクロック信号SCK1、ラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、印刷データ信号SI1~SI3、及び、基駆動信号dAを出力する。また、ヘッド制御回路20-2は、動作タイミング信号PTSとして入力される動作タイミング信号PTS_A、及び動作タイミング信号PTS_Bに基づくタイミングで、システムクロック信号SCK2、ラッチ信号LAT2、チェンジ信号CH2、及び、印刷データ信号SI4~SI6を出力する。これにより、ヘッド制御回路20-1とヘッド制御回路20-2との動作タイミングは、動作タイミング信号PTSとして入力される動作タイミング信号PTS_A、及び動作タイミング信号PTS_Bによって同期される。
【0083】
以上のように、PTS信号出力回路30は、エンコーダー信号PE_Aをヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2に供給するのか、擬似エンコーダー信号DE_Aをヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2に供給するのか、を切り替えるセレクター36aと、エンコーダー信号PE_Bをヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2に供給するのか、擬似エンコーダー信号DE_Bをヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2に供給するのか、を切り替えるセレクター36bと、を有する。
【0084】
そして、セレクター36aは、ヘッド制御回路20-1が出力するセレクト信号SELに応じて、エンコーダー信号PE_Aをヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2に供給するのか、擬似エンコーダー信号DE_Aをヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2に供給するのかを切り替え、セレクター36bは、ヘッド制御回路20-1が出力するセレクト信号SELに応じて、エンコーダー信号PE_Bをヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2に供給するのか、擬似エンコーダー信号DE_Bをヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2に供給するのかを切り替える。
【0085】
次に、本実施形態の液体吐出装置1におけるPTS信号出力回路30の動作の具体例について、説明する。図9は、PTS信号出力回路30の動作の具体例を説明するための図である。なお、図9では、搬送機構40にメイン制御回路10からHレベルの搬送制御信号PTが入力されている場合、搬送機構40は、搬送方向に沿って媒体を搬送し、搬送機構40にメイン制御回路10からLレベルの搬送制御信号PTが入力されている場合、搬送機構40は、媒体の搬送を停止するとして説明を行う。
【0086】
時刻t1以前において、液体吐出装置1は、媒体にインクを吐出する所謂印刷処理を実行している。すなわち、時刻t1よりも前において、液体吐出装置1は、印刷モードPMとして動作している。
【0087】
液体吐出装置1が印刷モードPMとして動作している期間において、メイン制御回路10は、Hレベルの搬送制御信号PTを搬送機構40に出力するとともに、媒体に形成する画像に対応する印刷情報PIを含む画像情報信号Pr1をヘッド制御回路20-1に出力し、媒体に形成する画像に対応する印刷情報PIを含む画像情報信号Pr2をヘッド制御回路20-2に出力する。これにより、媒体が搬送方向に沿って搬送されるとともに、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれが、搬送される媒体に対して、インクを吐出する。すなわち、印刷モードPMでは、Hレベルの搬送制御信号PTが搬送機構40に入力されることで、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置が変化し、吐出ヘッド100-1~100-6が、媒体との相対位置に応じてインクを吐出する。これにより、媒体に所望の位置にインクが着弾し、媒体に所望の画像が形成される。
【0088】
このような印刷モードPMにおいて、エンコーダーセンサー43は、媒体の搬送に応じたエンコーダー信号PE_A、及びエンコーダー信号PE_Bを出力し、ヘッド制御回路20-1は、Lレベルのセレクト信号SELと、Lレベルで一定のエンコーダークロック信号ECKと、を出力する。これにより、セレクト回路35は、エンコーダー信号PE_Aを動作タイミング信号PTS_Aとして出力し、エンコーダー信号PE_Bを動作タイミング信号PTS_Bとして出力する。すなわち、PTS信号出力回路30は、エンコーダー信号PE_Aを動作タイミング信号PTS_Aとして出力し、エンコーダー信号PE_Bを動作タイミング信号PTS_Bとして出力する。
【0089】
したがって、ヘッド制御回路20-1,20-2には、エンコーダー信号PE_Aを含む動作タイミング信号PTS_Aと、エンコーダー信号PE_Bを含む動作タイミング信号PTS_Bとが入力される。換言すれば、ヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2は、印刷モードPMにおいて、エンコーダー信号PE_Aを含む動作タイミング信号PTS_Aと、エンコーダー信号PE_Bを含む動作タイミング信号PTS_Bと、に基づいて動作する。
【0090】
このとき、ヘッド制御回路20-1は、エンコーダー信号PE_Aを含む動作タイミング信号PTS_Aの論理レベルがHレベルの場合に、エンコーダー信号PE_Bを含む動作タイミング信号PTS_Bの論理レベルがLレベルからHレベルとなることで、所定期間Hレベルとなるラッチ信号LAT1を出力し、ヘッド制御回路20-2は、エンコーダー信号PE_Aを含む動作タイミング信号PTS_Aの論理レベルがHレベルの場合に、エンコーダー信号PE_Bを含む動作タイミング信号PTS_Bの論理レベルがLレベルからHレベルとなることで、所定期間Hレベルとなるラッチ信号LAT2を出力する。
【0091】
すなわち、ヘッド制御回路20-1が出力するラッチ信号LAT1とヘッド制御回路20-2が出力するラッチ信号LAT2とは、エンコーダー信号PE_A、及びエンコーダー信号PE_Bに応じた略同一のタイミングでHレベルとなる。これにより、印刷モードPMにおいて、ヘッド制御回路20-1による吐出ヘッド100-1~100-3の制御、及び駆動信号出力回路50の制御と、ヘッド制御回路20-2による吐出ヘッド100-4~100-6の制御と、が同期する。したがって、印刷モードPMにおいて、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれからのインクの吐出精度が悪化するおそれが低減するとともに、圧電素子60に損傷が生じるおそれが低減する。
【0092】
その後、時刻t1において、印刷処理が完了することで印刷モードPMは終了し、液体吐出装置1は、外部に設けられた不図示の外部機器から画像信号が入力までの期間、待機するスタンバイモードSMに移行する。このとき、メイン制御回路10は、Lレベルの搬送制御信号PTを搬送機構40に出力する。したがって、搬送機構40は、媒体の搬送を停止する。その結果、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A、及びエンコーダー信号PE_Bは、Lレベル、又はHレベルで一定となる。すなわち、エンコーダーセンサー43は、エンコーダー信号PE_A、及びエンコーダー信号PE_Bの出力を停止する。
【0093】
このとき、ヘッド制御回路20-1,20-2には、Lレベルのエンコーダー信号PE_Aを含む動作タイミング信号PTS_Aと、Lレベルのエンコーダー信号PE_Bを含む動作タイミング信号PTS_Bと、が入力される。したがって、ヘッド制御回路20-1は、Lレベルのラッチ信号LAT1を出力し、ヘッド制御回路20-2は、Lレベルのラッチ信号LAT2を出力する。すなわち、ヘッド制御回路20-1は、ラッチ信号LAT1の出力を停止し、ヘッド制御回路20-2は、ラッチ信号LAT2の出力を停止する。
【0094】
液体吐出装置1がスタンバイモードSMに移行した後の所定のタイミングの時刻t2において、メイン制御回路10は、吐出ヘッド100-1~100-3のメンテナンス処理を実行させるためのメンテナンス情報MNを含む画像情報信号Pr1をヘッド制御回路20-1に出力するとともに、吐出ヘッド100-4~100-6のメンテナンス処理を実行させるためのメンテナンス情報MNを含む画像情報信号Pr2をヘッド制御回路20-2に出力する。これにより、液体吐出装置1は、スタンバイモードSMにおいて、メンテナンス処理を実行するメンテナンスモードMMに移行する。ここで、メンテナンスモードMMにおいて吐出ヘッド100-1~100-6に実行されるメンテナンス処理としては、例えば、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれに含まれる吐出部600の状態を検出するための残留信号の取得や、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれの状態を維持し、回復させるために、吐出部600に貯留されているインクを一斉に吐出するフラッシング処理等が含まれる。すなわち、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれは、メンテナンスモードMMにおいて、圧電素子60が駆動した後に生じる残留振動を検出し、又は、フラッシング動作を実行する。
【0095】
具体的には、ヘッド制御回路20-1は、メンテナンス処理を実行させるためのメンテナンス情報MNを含む画像情報信号Pr1の入力が完了した後の時刻t3において、Hレベルのセレクト信号SELと、所定周期のエンコーダークロック信号ECKと、を出力する。
【0096】
擬似エンコーダー回路31は、入力されるエンコーダークロック信号ECKの周波数に応じた擬似エンコーダー信号DE_Aと、擬似エンコーダー信号DE_Aの位相が90度遅れ、エンコーダークロック信号ECKの周波数に応じた擬似エンコーダー信号DE_Bと、を出力する。そして、セレクト回路35は、擬似エンコーダー回路31が出力する擬似エンコーダー信号DE_Aを動作タイミング信号PTS_Aとして選択し、擬似エンコーダー回路31が出力する擬似エンコーダー信号DE_Bを動作タイミング信号PTS_Bとして選択する。すなわち、PTS信号出力回路30は、擬似エンコーダー信号DE_Aを動作タイミング信号PTS_Aとして出力し、擬似エンコーダー信号DE_Bを動作タイミング信号PTS_Bとして出力する。
【0097】
したがって、ヘッド制御回路20-1,20-2には、擬似エンコーダー信号DE_Aを含む動作タイミング信号PTS_Aと、擬似エンコーダー信号DE_Bを含む動作タイミング信号PTS_Bとが入力される。すなわち、PTS信号出力回路30は、スタンバイモードSMの内のメンテナンスモードMMにおいて、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置が変化する期間であって、印刷モードPMにおいて、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A/Bを模擬した擬似エンコーダー信号DE_A,DE_Bを、エンコーダークロック信号ECKに基づいて生成し、出力する。これにより、媒体が搬送されず、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置が変化しないスタンバイモードSMの内のメンテナンスモードMMにおいて、ヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2は、擬似エンコーダー信号DE_Aを含む動作タイミング信号PTS_Aと、擬似エンコーダー信号DE_Bを含む動作タイミング信号PTS_Bと、に基づいて動作する。
【0098】
そして、ヘッド制御回路20-1は、擬似エンコーダー信号DE_Aを含む動作タイミング信号PTS_Aの論理レベルがHレベルの場合に、擬似エンコーダー信号DE_Bを含む動作タイミング信号PTS_Bの論理レベルがLレベルからHレベルとなることで、所定期間Hレベルとなるラッチ信号LAT1を出力し、ヘッド制御回路20-2は、擬似エンコーダー信号DE_Aを含む動作タイミング信号PTS_Aの論理レベルがHレベルの場合に、擬似エンコーダー信号DE_Bを含む動作タイミング信号PTS_Bの論理レベルがLレベルからHレベルとなることで、所定期間Hレベルとなるラッチ信号LAT2を出力する。
【0099】
すなわち、ヘッド制御回路20-1が出力するラッチ信号LAT1とヘッド制御回路20-2が出力するラッチ信号LAT2とは、擬似エンコーダー信号DE_A、及び擬似エンコーダー信号DE_Bに応じた略同一のタイミングでHレベルとなる。これにより、媒体の搬送が停止しているスタンバイモードSMにおいて吐出ヘッド100-1~100-6が駆動する場合であって、例えば、吐出ヘッド100-1~100-6のメンテナンス処理が実行されるメンテナンスモードMMの場合であっても、ヘッド制御回路20-1による吐出ヘッド100-1~100-3の制御、及び駆動信号出力回路50の制御と、ヘッド制御回路20-2による吐出ヘッド100-4~100-6の制御と、が同期する。したがって、スタンバイモードSMの内のメンテナンスモードMMにおいても、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれからのインクの吐出精度が悪化するおそれが低減するとともに、圧電素子60に損傷が生じるおそれが低減する。
【0100】
ここで、ヘッド制御回路20-1が第1制御回路の一例であり、ヘッド制御回路20-1が出力するシステムクロック信号SCK1、ラッチ信号LAT1、チェンジ信号CH1、及び印刷データ信号SI1の少なくともいずれかが第1吐出制御信号の一例であり、ヘッド制御回路20-2が第2制御回路の一例であり、ヘッド制御回路20-2が出力するシステムクロック信号SCK2、ラッチ信号LAT2、チェンジ信号CH2、及び印刷データ信号SI4の少なくともいずれかが第2吐出制御信号の一例である。また、ヘッド制御回路20-1が出力する基駆動信号dAに基づいて駆動信号COMを出力する駆動信号出力回路が駆動回路の一例であり、駆動信号出力回路50が出力する駆動信号COM、及び駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTが駆動信号の一例であり、吐出ヘッド100-1に含まれる複数の吐出部600の内のいずれかが第1吐出部の一例であり、吐出ヘッド100-4に含まれる複数の吐出部600の内のいずれかが第2吐出部の一例である。また、エンコーダーセンサー43が第1タイミング信号出力回路の一例であり、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A、及びエンコーダー信号PE_Bの一方が第1タイミング信号の一例であり、擬似エンコーダー回路31が第2タイミング信号出力回路の一例であり、擬似エンコーダー信号DE_A、及び擬似エンコーダー信号DE_Bの一方が第2タイミング信号の一例である。また、ヘッド制御回路20-1が出力するエンコーダークロック信号ECKがクロック信号の一例であり、セレクト信号SELがセレクター制御信号の一例であり、セレクター36a,36bの一方がセレクターの一例である。そして、印刷モードPMが第1モードの一例であり、メンテナンスモードMMが第2モードの一例である。
【0101】
4.作用効果
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1は、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置に応じたエンコーダー信号PE_A、及びエンコーダー信号PE_Bを出力するエンコーダーセンサー43と、擬似エンコーダー信号DE_A、及び擬似エンコーダー信号DE_Bを出力する擬似エンコーダー回路31と、を有する。そして、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置が変化する印刷モードPMにおいて、駆動信号出力回路50、及び吐出ヘッド100-1~100-3の動作を制御するヘッド制御回路20-1と、吐出ヘッド100-4~100-6の動作を制御するヘッド制御回路20-2とは、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A、及びエンコーダー信号PE_Bに基づいて動作し、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置が変化しないスタンバイモードSMの内のメンテナンスモードMMにおいて、駆動信号出力回路50、及び吐出ヘッド100-1~100-3の動作を制御するヘッド制御回路20-1と、吐出ヘッド100-4~100-6の動作を制御するヘッド制御回路20-2とは、擬似エンコーダー信号DE_A、及び擬似エンコーダー信号DE_Bに基づいて動作する。
【0102】
これにより、媒体が搬送される期間において、媒体の搬送にもとなってインクを吐出することができ、媒体に対するインクの吐出精度を高めることができるとともに、媒体が搬送されない期間であっても、ヘッド制御回路20-1とヘッド制御回路20-2との動作の同期をとることができる。すなわち、本実施形態の液体吐出装置1では、媒体が搬送されない期間においてメンテナンス処理などに伴ってインクを吐出する場合であっても、ヘッド制御回路20-1とヘッド制御回路20-2との動作の同期をとることができ、吐出ヘッド100-1~100-6のそれぞれが有する圧電素子60に損傷が生じるおそれが低減される。その結果、圧電素子60の損傷に起因してインクの吐出精度が悪化するおそれが低減する。
【0103】
また、本実施形態の液体吐出装置1において、擬似エンコーダー回路31は、媒体と吐出ヘッド100-1~100-6との相対位置が変化する期間にエンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_A/Bを模擬した擬似エンコーダー信号DE_A,DE_Bを、エンコーダークロック信号ECKに基づいて生成し、出力する。これより、ヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2は、エンコーダー信号PE_A、及びエンコーダー信号PE_Bによって動作の同期が図られている場合と、擬似エンコーダー信号DE_A、及び擬似エンコーダー信号DE_Bによって動作の同期が図られている場合とで、同様の処理を実行すればよく、ヘッド制御回路20-1,20-2における処理負担を低減することができる。
【0104】
さらに、本実施形態の液体吐出装置1において、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_Aと、擬似エンコーダー回路31が出力する擬似エンコーダー信号DE_Aとは、セレクター36aによって一方が選択された後、動作タイミング信号PTS_Aとしてヘッド制御回路20-1,20-2に入力され、エンコーダーセンサー43が出力するエンコーダー信号PE_Bと、擬似エンコーダー回路31が出力する擬似エンコーダー信号DE_Bとは、セレクター36aによって一方が選択された後、動作タイミング信号PTS_Aとしてヘッド制御回路20-1,20-2に入力される。これにより、ヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2は、擬似エンコーダー信号DE_A、及び擬似エンコーダー信号DE_Bが入力される端子を個別に設ける必要がなく、ヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2の端子数の削減、及びヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2の小型化を実現できる。
【0105】
5.変形例
以上のように構成された本実施形態の液体吐出装置1では、複数の吐出ヘッド100を2つのヘッド制御回路20-1、及びヘッド制御回路20-2が制御するとして説明を行ったが、複数の吐出ヘッド100を3つ以上のヘッド制御回路20が制御する場合であっても、PTS信号出力回路30が出力する動作タイミング信号PTSが、当該複数のヘッド制御回路20に共通に供給されることで同様の作用効果を奏する。
【0106】
また、本実施形態の液体吐出装置1では、媒体の搬送位置を検出するエンコーダーセンサー43が出力する信号に基づいて、印刷モードPMにおけるヘッド制御回路20-1とヘッド制御回路20-2との同期を図るとして説明を行ったが、吐出ヘッド100-1~100-6の移動を検出するエンコーダーを有し、当該エンコーダーが出力する信号に基づいて、印刷モードPMにおけるヘッド制御回路20-1とヘッド制御回路20-2との同期を図ってもよい。
【0107】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0108】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0109】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0110】
液体吐出装置の一態様は、
基駆動信号、及び第1吐出制御信号を出力する第1制御回路と、
第2吐出制御信号を出力する第2制御回路と、
前記基駆動信号に応じた駆動信号を出力する駆動回路と、
前記駆動信号と前記第1吐出制御信号とに応じて媒体に液体を吐出する第1吐出部と、
前記駆動信号と前記第2吐出制御信号とに応じて前記媒体に液体を吐出する第2吐出部と、
前記媒体と前記第1吐出部との相対位置に応じた第1タイミング信号を出力する第1タイミング信号出力回路と、
第2タイミング信号を出力する第2タイミング信号出力回路と、
を備え、
前記媒体と前記第1吐出部との相対位置が変化する第1モードにおいて、前記第1制御回路、及び前記第2制御回路は、前記第1タイミング信号に基づいて動作し、
前記媒体と前記第1吐出部との相対位置が変化しない第2モードにおいて、前記第1制御回路、及び前記第2制御回路は、前記第2タイミング信号に基づいて動作する。
【0111】
この液体吐出装置によれば、媒体と第1吐出部との相対位置に応じた第1タイミング信号を出力する第1タイミング信号出力回路と、第2タイミング信号を出力する第2タイミング信号出力回路と、を備え、媒体と第1吐出部との相対位置が変化する第1モードにおいて、第1制御回路、及び第2制御回路は、第1タイミング信号に基づいて動作し、媒体と第1吐出部との相対位置が変化しない第2モードにおいて、第1制御回路、及び第2制御回路は、第2タイミング信号に基づいて動作する。これにより、媒体が搬送されない場合であって、例えば、印刷処理が実行されていない期間であっても、第1制御回路、及び第2制御回路の動作を同期することができる。その結果、媒体が搬送されない期間において、第1吐出部、及び第2吐出部が液体を吐出する場合であっても、吐出精度が低下するおそれが低減される。
【0112】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第2タイミング信号出力回路は、前記第1モードにおいて前記第1タイミング信号出力回路が出力する前記第1タイミング信号を模擬した前記第2タイミング信号を、前記第2モードにおいて出力してもよい。
【0113】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第2タイミング信号出力回路は、前記第1制御回路が出力するクロック信号に基づいて、前記第1タイミング信号出力回路の出力を模擬した前記第2タイミング信号を出力してもよい。
【0114】
これらの液体吐出装置によれば、第1制御回路、及び第2制御回路が第1タイミング信号に基づいて動作する場合と、第1制御回路、及び第2制御回路が第2タイミング信号に基づいて動作する場合と、において、第1制御回路、及び第2制御回路は同様の処理を実行すればよく、第1制御回路、及び第2制御回路の処理負担を低減できる。
【0115】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1タイミング信号を前記第1制御回路、及び前記第2制御回路に供給するのか、前記第2タイミング信号を前記第1制御回路、及び前記第2制御回路に供給するのか、を切り替えるセレクターを備えてもよい。
【0116】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記セレクターは、前記第1制御回路が出力するセレクター制御信号に応じて、前記第1タイミング信号を前記第1制御回路、及び前記第2制御回路に供給するのか、前記第2タイミング信号を前記第1制御回路、及び前記第2制御回路に供給するのか、を切り替えてもよい。
【0117】
これらの液体吐出装置によれば、第1タイミング信号と第2タイミング信号とが共通の端子を介して第1制御回路に入力され、第1タイミング信号と第2タイミング信号とが共通の端子を介して第2制御回路に入力されることで、第1制御回路、及び第2制御回路の小型化を実現できる。
【0118】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1吐出部は、前記駆動信号が供給されることで駆動する圧電素子を含み、
前記第1制御回路は、前記第2モードにおいて、前記圧電素子が駆動した後に生じる残留振動を取得してもよい。
【0119】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1吐出部は、前記第2モードにおいて、フラッシング動作を実行してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…液体吐出装置、10…メイン制御回路、20,20-1,20-2…ヘッド制御回路、30…PTS信号出力回路、31…擬似エンコーダー回路、32a,32b…D-FF回路、35…セレクト回路、36a,36b…セレクター、40…搬送機構、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、43…エンコーダーセンサー、50…駆動信号出力回路、60…圧電素子、100,100-1~100-6…吐出ヘッド、200…駆動信号選択回路、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコーダー、230…選択回路、232…インバーター、234…トランスファーゲート、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、661…供給口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9