(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145308
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】コンテンツ推薦方法、コンテンツ配信システム、推薦コンテンツ推定装置、及び機械学習装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/237 20110101AFI20241004BHJP
H04N 21/24 20110101ALI20241004BHJP
H04N 21/482 20110101ALI20241004BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20241004BHJP
【FI】
H04N21/237
H04N21/24
H04N21/482
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057597
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】三村 乃那
【テーマコード(参考)】
5C164
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5C164FA14
5C164SB41P
5C164SB61P
5C164SC31S
5C164UD53P
5C164YA04
5C164YA10
5C164YA21
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】視聴者の視聴環境に適したコンテンツを推薦する。
【解決手段】処理装置32は、視聴ログをプロジェクター4ごとに集計し、記憶装置31に集計結果を保存する。処理装置32は、集計結果に含まれる環境指標、即ち、照度、画面サイズ、及び騒音に基づいて、複数のプロジェクター4をクラスタリングする。処理装置32は、クラスタリングされてできた各グループに属するプロジェクター4において再生された複数のコンテンツの各々に対して、複数のコンテンツの各々の評価値に基づいて、グループ全体における評価値を算出する。処理装置32は、グループごとに算出された評価値に基づいて、各プロジェクター4に対する推薦コンテンツを決定する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視聴者がコンテンツを視聴する環境を示す環境指標を、複数の視聴端末の各々について取得することと、
コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって視聴者によって付与される前記評価値を、前記複数の視聴端末の各々について取得することと、
前記取得された複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標の類似度に応じて、前記複数の視聴端末を複数のグループに分類することと、
前記分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられた前記評価値から前記1つのグループ全体における評価値を算出し、前記算出された評価値に基づいて、前記1つのグループに属する各視聴端末を利用する視聴者に対し、前記環境に応じたコンテンツを推薦することとを含む、
コンテンツ推薦方法。
【請求項2】
前記環境指標は、前記視聴環境の照度、前記視聴端末の画面のサイズ、及び前記視聴環境における騒音のうち、少なくとも1つを含む
請求項1に記載のコンテンツ推薦方法。
【請求項3】
前記視聴端末は、プロジェクターであり、
前記コンテンツは、前記プロジェクターによって投射対象に表示され、
前記画面のサイズは、前記投射対象に表示された画面のサイズである
請求項2に記載のコンテンツ推薦方法。
【請求項4】
前記環境指標には、少なくとも前記騒音が含まれる、
請求項2又は請求項3に記載のコンテンツ推薦方法。
【請求項5】
複数の視聴端末の各々に1つ以上のコンテンツを配信するコンテンツ配信システムであって、
コンテンツ配信サーバーと、
データ解析サーバーと、を備え、
前記コンテンツ配信サーバーは、
記憶された前記複数のコンテンツの中から、前記複数の視聴端末の各々を利用する視聴者の要求に応じた視聴コンテンツを、前記視聴者に対応付けられた視聴端末に配信し、
前記データ解析サーバーは、
視聴者がコンテンツを視聴する環境を示す環境指標と、コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって視聴者によって付与される前記評価値とを、前記複数の視聴端末の各々について取得する取得部と、
前記取得された複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標の類似度に応じて、前記複数の視聴端末を複数のグループに分類する分類部と、
前記分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられた前記評価値から前記1つのグループ全体における評価値を算出し、前記算出された評価値に基づいて、前記1つのグループに属する各視聴端末を利用する視聴者に対し、前記環境に応じたコンテンツを推薦する推薦部と、
を有する、
コンテンツ配信システム。
【請求項6】
視聴端末が設置された環境を示す環境指標と、前記視聴端末を利用する第1視聴者に推薦するコンテンツの候補である候補コンテンツとを含む判定データを取得する判定データ取得部と、
視聴者がコンテンツを視聴するときの環境に関する情報及び前記コンテンツの属性に関する情報と、前記コンテンツに対する前記視聴者による評価値との関係を学習済みである学習モデルに、前記判定データを入力することによって出力される評価値を、前記候補コンテンツに対する前記第1視聴者の評価値であると推定する推定部と、
前記推定部によって推定された評価値に基づいて、前記第1視聴者に推薦するコンテンツを決定する決定部と、
を備える、
推薦コンテンツ推定装置。
【請求項7】
複数の教師データを取得する取得部と、
複数の教師データを学習モデルに機械学習させることによって、学習済みの学習モデルを生成する生成部とを備え、
前記複数の教師データの各々は、視聴者が視聴端末を用いて視聴したコンテンツの属性に関する属性情報及び前記視聴端末の環境を示す環境情報と、前記コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって前記視聴者によって付与される前記評価値とを含む、
機械学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ推薦方法、コンテンツ配信システム、推薦コンテンツ推定装置、及び機械学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ニューラルネットワークである推定モデルに基づいて、属性の推定対象となるコンテンツ利用者について、コンテンツ利用者の年齢等の属性値を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係る技術では、コンテンツ利用者についての属性値を推定することに留まっており、利用者にとって最適なコンテンツを推薦することはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係るコンテンツ推薦方法の一態様は、視聴者がコンテンツを視聴する環境を示す環境指標を、複数の視聴端末の各々について取得することと、コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって視聴者によって付与される前記評価値を、前記複数の視聴端末の各々について取得することと、前記取得された複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標の類似度に応じて、前記複数の視聴端末を複数のグループに分類することと、前記分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられた前記評価値から前記1つのグループ全体における評価値を算出し、前記算出された評価値に基づいて、前記1つのグループに属する各視聴端末を利用する視聴者に対し、前記環境に応じたコンテンツを推薦することと、を含む。
【0006】
本開示に係るコンテンツ配信システムの一態様は、複数の視聴端末の各々に1つ以上のコンテンツを配信するコンテンツ配信システムであって、コンテンツ配信サーバーと、データ解析サーバーと、を備え、前記コンテンツ配信サーバーは、記憶された前記複数のコンテンツの中から、前記複数の視聴端末の各々を利用する視聴者の要求に応じた視聴コンテンツを、前記視聴者に対応付けられた視聴端末に配信し、前記データ解析サーバーは、視聴者がコンテンツを視聴する環境を示す環境指標と、コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって視聴者によって付与される前記評価値とを、前記複数の視聴端末の各々について取得する取得部と、前記取得された複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標の類似度に応じて、前記複数の視聴端末を複数のグループに分類する分類部と、前記分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられた前記評価値から前記1つのグループ全体における評価値を算出し、前記算出された評価値に基づいて、前記1つのグループに属する各視聴端末を利用する視聴者に対し、前記環境に応じたコンテンツを推薦する推薦部と、を有する。
【0007】
本開示に係る推薦コンテンツ推定装置の一態様は、視聴端末が設置された環境を示す環境指標と、前記視聴端末を利用する第1視聴者に推薦するコンテンツの候補である候補コンテンツとを含む判定データを取得する判定データ取得部と、視聴者がコンテンツを視聴するときの環境に関する情報及び前記コンテンツの属性に関する情報と、前記コンテンツに対する前記視聴者による評価値との関係を学習済みである学習モデルに、前記判定データを入力することによって出力される評価値を、前記候補コンテンツに対する前記第1視聴者の評価値であると推定する推定部と、前記推定部によって推定された評価値に基づいて、前記第1視聴者に推薦するコンテンツを決定する決定部と、を備える。
【0008】
本開示に係る機械学習装置の一態様は、複数の教師データを取得する取得部と、複数の教師データを学習モデルに機械学習させることによって、学習済みの学習モデルを生成する生成部とを備え、前記複数の教師データの各々は、視聴者が視聴端末を用いて視聴したコンテンツの属性に関する属性情報及び前記視聴端末の環境を示す環境情報と、前記コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって前記視聴者によって付与される前記評価値とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るコンテンツ配信システムの構成図である。
【
図2】
図1のコンテンツ配信サーバーの構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1のデータ解析サーバーの構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図1の各プロジェクターが設置された視聴環境の一例を示す模式図である。
【
図5】
図1の各プロジェクターの構成例を示すブロック図である。
【
図6】データ解析サーバーにおいて受信される視聴データの例を示す図である。
【
図7】取得部において取得された環境指標の一例を示す図である。
【
図8】あるプロジェクターに対する視聴ログの一例を示す図である。
【
図9】照度、画面サイズ、及び騒音の3つの環境指標をそれぞれ特徴ベクトルとする3次元の特徴ベクトル空間を示す図である。
【
図10】取得された複数の環境指標の各々における環境指標の合成ベクトルの分布を示す図である。
【
図11】各環境指標を複数のグループに分類した結果を示す図である。
【
図12】データ解析サーバーの処理装置による推薦コンテンツ決定の動作を示すフローチャートである。
【
図13】第2実施形態に係るコンテンツ配信システムの構成図である。
【
図14】
図13のデータ解析サーバーの構成例を示すブロック図である。
【
図15】第2実施形態に係る機械学習装置の一例を示すブロック図である。
【
図16】第2実施形態に係る教師データの一例を示すデータ構成図である。
【
図17】第2実施形態に係る学習モデルに適用されるニューラルネットワークモデルの一例を示す概略図である。
【
図18】第2実施形態に係る機械学習装置による機械学習方法の一例を示すフローチャートである。
【
図19】第2実施形態に係る推薦コンテンツ推定装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法や縮尺は実際と異なる場合があり、理解を容易にするために模式的に示す部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0011】
1.第1実施形態
1.1.コンテンツ配信システムの概要
以下、
図1を参照しつつ、第1実施形態に係るコンテンツ配信システムの概要について説明する。
【0012】
図1は、第1実施形態に係るコンテンツ配信システムの構成図である。コンテンツ配信システム1は、コンテンツ配信サーバー2、データ解析サーバー3、複数の視聴端末としての複数のプロジェクター4を備えている。
【0013】
コンテンツ配信サーバー2と、データ解析サーバー3と、複数のプロジェクター4とは、ネットワークNETを介して互いに接続されている。ネットワークNETは、インターネット等のネットワークである。
【0014】
1.2.コンテンツ配信サーバーの構成
以下、
図2を参照しつつ、第1実施形態に係るコンテンツ配信サーバー2の構成について説明する。
【0015】
図2は、
図1のコンテンツ配信サーバー2の構成例を示すブロック図である。コンテンツ配信サーバー2は、記憶装置21、処理装置22、及び通信装置23を備えている。
【0016】
記憶装置21は、各種情報を記憶する。記憶装置21は、例えば、RAM等の揮発性メモリー及びROM等の不揮発性メモリーを含んで構成されている。ここで、RAMとは、Random Access Memoryの略称である。また、ROMとは、Read Only Memoryの略称である。記憶装置21には、制御プログラム211、複数のコンテンツ212、複数のメタデータ213等が記憶されている。記憶装置21の揮発性メモリーは、処理装置22のワークエリア214として処理装置22に利用される。制御プログラム211は、コンテンツ配信サーバー2の全体を制御するプログラムである。
【0017】
なお、記憶装置21の一部又は全部は、外部記憶装置、外部サーバー等に設けられてもよい。また、記憶装置21に記憶される各種情報の一部又は全部は、予め記憶装置21に記憶されてもよいし、外部記憶装置、外部サーバー等から取得されてもよい。
【0018】
処理装置22は、コンテンツ配信サーバー2の動作を制御する。処理装置22は、管理部221及び配信部222としての機能を有している。処理装置22は、1以上のCPUを含んで構成されている。但し、処理装置22は、CPUの代わりに、又はCPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。ここで、CPUとは、Central Processing Unitの略称であり、FPGAとは、Field-Programmable Gate Arrayの略称である。
【0019】
処理装置22は、記憶装置21から制御プログラム211を読み出し、読み出された制御プログラム211を実行する。処理装置22は、制御プログラム211を実行することにより、管理部221及び配信部222として機能する。
【0020】
管理部221は、記憶装置21に記憶された複数のコンテンツ212及び複数のメタデータ213の管理を行う。複数のメタデータ213の各々は、複数のコンテンツ212の各々と一対一に対応付けられている。コンテンツは、主として映像コンテンツである。各メタデータには、対応するコンテンツの属性情報が含まれる。属性情報は、例えば、コンテンツのタイトル及び概要を示す情報、コンテンツのジャンルを示す情報、コンテンツの投稿者又は作成者を示す情報等が含まれる。
【0021】
配信部222は、プロジェクター4からコンテンツの取得要求を受け付ける。配信部222は、プロジェクター4から視聴者により選択されたコンテンツの取得要求を受け付けると、受け取った取得要求に従って、プロジェクター4にコンテンツを送信する。コンテンツの取得要求には、例えば、コンテンツのストリーミング要求又はダウンロード要求がある。
【0022】
また、配信部222は、プロジェクター4から推薦情報の取得要求を受け付ける。配信部222は、推薦情報の取得要求を受け付けると、受け取った取得要求に従って、データ解析サーバー3において別途決定された推薦コンテンツを含む推薦情報をプロジェクター4に送信する。なお、推薦情報は推薦コンテンツ以外の情報を含んでもよく、推薦コンテンツ以外の情報として、推薦コンテンツに類似のコンテンツをコンテンツ配信サーバー2が選んでもよい。
【0023】
通信装置23は、他の装置と通信を行うための送受信デバイスとしてのハードウェアである。通信装置23は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュール等とも呼ばれる。通信装置23は、有線接続用のコネクターを備え、上記コネクターに対応するインターフェース回路を備えていてもよい。また、通信装置23は、無線通信インターフェースを備えていてもよい。有線接続用のコネクター及びインターフェース回路としては、有線LAN、IEEE1394、USB等に準拠した製品が挙げられる。また、無線通信インターフェースとしては、無線LAN及びBluetooth(登録商標)等に準拠した製品が挙げられる。通信装置23は、データ解析サーバー3、複数のプロジェクター4等の外部装置との間においてデータ通信を行う。
【0024】
このように、コンテンツ配信サーバー2は、動画配信プラットフォーム用のサーバーとして機能する。
【0025】
1.3.データ解析サーバーの構成
以下、
図3を参照しつつ、第1実施形態に係るデータ解析サーバー3の構成について説明する。
【0026】
図3は、
図1のデータ解析サーバー3の構成例を示すブロック図である。データ解析サーバー3は、記憶装置31、処理装置32、及び通信装置33を備えている。
【0027】
記憶装置31は、各種情報を記憶する。記憶装置31は、例えば、RAM等の揮発性メモリー及びROM等の不揮発性メモリーを含んで構成されている。記憶装置31には、制御プログラム311等が記憶されている。記憶装置31の揮発性メモリーは、処理装置32のワークエリア312として処理装置32に利用される。制御プログラム311は、データ解析サーバー3の全体を制御するプログラムである。
【0028】
なお、記憶装置31の一部又は全部は、外部記憶装置、外部サーバー等に設けられてもよい。また、記憶装置31に記憶される各種情報の一部又は全部は、予め記憶装置31に記憶されてもよいし、外部記憶装置、外部サーバー等から取得されてもよい。
【0029】
処理装置32は、データ解析サーバー3の動作を制御する。処理装置32は、取得部321、分類部322、及び推薦部323としての機能を有している。処理装置32は、1以上のCPUを含んで構成されている。但し、処理装置32は、CPUの代わりに、又はCPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。
【0030】
取得部321は、環境指標と評価値とを、複数のプロジェクター4の各々について取得する。環境指標は、視聴者がコンテンツを視聴する環境、即ち、視聴環境を示す指標である。例えば、環境指標は、各プロジェクター4が設置されている場所の明るさ、各プロジェクターが投射している投射画像の画面サイズ、各プロジェクターが設置されている場所における騒音、各プロジェクターに設定されている各種設定値である。各種設定値とは、カラーモード、設定音量等である。
【0031】
環境指標の1つである明るさは、プロジェクター4の視聴に与える影響が大きい。例えば、窓から外光が差し込む明るい室内では、投射画像のコントラスト比が低下するため、暗いシーンが多い映画等のコンテンツの再生には不向きであると考えられる。また、商業施設、飲食店等の公共の場においても、比較的明るい環境において視聴されるコンテンツの傾向と、比較的暗い環境において視聴されるコンテンツの傾向とは異なると考えられる。従って、明るさを環境指標の1つとすることは有意義なことと考えられる。
【0032】
また、100インチを超えるような比較的大きい画面サイズにおいては、例えば、映画、スポーツ中継等のコンテンツが好んで視聴されることが多いと考えられる。比較的大きい画面サイズにおいて視聴されるコンテンツの傾向と、比較的小さい画面サイズにおいて視聴されるコンテンツの傾向とは異なると考えられる。また、細かい文字等を多く含むコンテンツは、画面サイズが小さい環境には適しているとは言えない。このように、画面サイズを環境指標の1つとすることは有意義なことと考えられる。
【0033】
また、家庭における視聴環境と、商業施設における視聴環境とを比較すると、商業施設における視聴環境において騒音値がより高い傾向があると考えられる。また、家庭において視聴されるコンテンツの傾向と、商業施設において視聴されるコンテンツの傾向とは異なるから、騒音を環境指標の1つとすることは有意義なことと考えられる。
【0034】
本実施形態では、環境指標として、明るさ、画面サイズ、及び騒音の3つの環境指標に基づいて、推薦するコンテンツを決定する方法について説明する。
【0035】
評価値は、視聴者によって評価されたコンテンツの視聴品質の程度を示す値である。評価値は、視聴者によってコンテンツに付与される。例えば、評価値は、0.0から5.0までの51段階で視聴者により数値化されている。コンテンツの視聴者は、コンテンツを鑑賞中又は鑑賞後にプロジェクター4に評価値を入力する。
【0036】
分類部322は、取得された複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標の類似度に応じて、複数のプロジェクター4を複数のグループに分類する。より具体的に述べると、分類部322は、教師なし学習の一種であるクラスタリング手法を用いて、複数のプロジェクター4を複数のグループに分類する。各グループに含まれる複数のプロジェクター4は、互いに類似した視聴環境を有する。なお、クラスタリングにより分類されたグループは、クラスタとも呼ばれる。クラスタリング手法による分類については後で詳述する。
【0037】
推薦部323は、分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられた評価値から1つのグループ全体における評価値を算出する。そして、推薦部323は、算出された評価値に基づいて、1つのグループに属する各プロジェクター4を利用する視聴者に対し、視聴環境に応じたコンテンツを推薦する。
【0038】
通信装置33は、他の装置と通信を行うための送受信デバイスとしてのハードウェアである。通信装置33は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュール等とも呼ばれる。通信装置33は、有線接続用のコネクターを備え、上記コネクターに対応するインターフェース回路を備えていてもよい。また、通信装置33は、無線通信インターフェースを備えていてもよい。有線接続用のコネクター及びインターフェース回路としては、有線LAN、IEEE1394、USB等に準拠した製品が挙げられる。また、無線通信インターフェースとしては、無線LAN及びBluetooth等に準拠した製品が挙げられる。通信装置33は、コンテンツ配信サーバー2、複数のプロジェクター4等の外部装置との間においてデータ通信を行う。
【0039】
1.4.視聴環境について
以下、
図4を参照しつつ、第1実施形態に係る視聴環境について説明する。
【0040】
図4は、
図1の各プロジェクター4が設置された視聴環境の一例を示す模式図である。視聴環境5には、プロジェクター4及びスクリーン6が設置されている。プロジェクター4からの出力光は、スクリーン6に対して投射される。スクリーン6上に投射された画像は、以下、投射画像61と呼ばれる。視聴者U1は、投射画像61を鑑賞する。なお、投射画像61が投射される面は、スクリーン6に限らず、建物の壁面、天井等であってもよい。
【0041】
プロジェクター4には、照度センサ71、距離センサ72、及び騒音センサ73が接続されている。
【0042】
照度センサ71は、視聴環境5における照度、即ち、視聴環境5の明るさを検出する。距離センサ72は、プロジェクター4の基準位置に設置されている。
【0043】
距離センサ72は、プロジェクター4とスクリーン6との間の距離LPを測定する。距離LPは、画面サイズを求めるために必要な値である。距離センサ72には、例えば、レーザー距離計が用いられる。なお、距離センサ72には、ミリ波レーダー、LiDARスキャナ等が用いられてもよい。ここで、LiDARとは、Light Detection And Rangingの略称である。
【0044】
騒音センサ73は、視聴環境5における騒音を検出する。騒音センサ73には、例えば、騒音計が用いられる。騒音センサ73は、プロジェクター4のファンにより生じる騒音の影響が無視できる位置に設置されることが好ましい。なお、騒音センサ73には、騒音計に代えて、騒音計のアプリケーションが組み込まれたスマートフォンが用いられてもよい。
【0045】
1.5.プロジェクターの構成
以下、
図5を参照しつつ、第1実施形態に係るプロジェクター4の構成について説明する。
【0046】
図5は、
図1の各プロジェクター4の構成例を示すブロック図である。プロジェクター4は、記憶装置41、処理装置42、通信装置43、操作装置44、及び投射装置45を備えている。記憶装置41は、各種情報を記憶する。記憶装置41は、例えば、RAM等の揮発性メモリー及びROM等の不揮発性メモリーを含んで構成されている。記憶装置41には、制御プログラム411等が記憶されている。記憶装置41の揮発性メモリーは、処理装置42のワークエリア412として処理装置42に利用される。制御プログラム411は、プロジェクター4の全体を制御するプログラムである。
【0047】
なお、記憶装置41の一部又は全部は、外部記憶装置、外部サーバー等に設けられてもよい。また、記憶装置41に記憶される各種情報の一部又は全部は、予め記憶装置41に記憶されてもよいし、外部記憶装置、外部サーバー等から取得されてもよい。
【0048】
処理装置42は、プロジェクター4の動作を制御する。処理装置42は、動画再生部421、環境計測部422、及びログ送信部423としての機能を有している。処理装置42は、1以上のCPUを含んで構成されている。但し、処理装置42は、CPUの代わりに、又はCPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。
【0049】
処理装置42は、記憶装置41から制御プログラム411を読み出し、読み出された制御プログラム411を実行する。処理装置42は、制御プログラム411を実行することにより、動画再生部421、環境計測部422、及びログ送信部423として機能する。
【0050】
動画再生部421は、コンテンツ配信サーバー2から取得した動画を再生する。
【0051】
環境計測部422は、視聴環境における環境指標を計測する。本実施形態では、環境計測部422は、照度、画面サイズ、及び騒音の3つの環境指標を計測する。環境計測部422は、照度センサ71から視聴環境における照度に関する情報を取得する。環境計測部422は、距離センサ72から距離LPに関する情報を取得するとともに、取得された距離LPに関する情報と、予め定められている投射光の広がり角に基づいて、画面サイズを算出する。環境計測部422は、騒音センサ73から騒音値に関する情報を取得する。
【0052】
ログ送信部423は、視聴ログを、通信装置43を介してコンテンツ配信サーバー2に送信する。視聴ログは、プロジェクター4により再生されたコンテンツに関する情報の履歴である。視聴ログには、1つのコンテンツに対して、例えば、視聴日時、再生中における視聴者の操作、視聴者による評価値が含まれる。
【0053】
通信装置43は、他の装置と通信を行うための送受信デバイスとしてのハードウェアである。通信装置43は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュール等とも呼ばれる。通信装置43は、有線接続用のコネクターを備え、上記コネクターに対応するインターフェース回路を備えていてもよい。また、通信装置43は、無線通信インターフェースを備えていてもよい。有線接続用のコネクター及びインターフェース回路としては、有線LAN、IEEE1394、USB等に準拠した製品が挙げられる。また、無線通信インターフェースとしては、無線LAN及びBluetooth等に準拠した製品が挙げられる。通信装置43は、コンテンツ配信サーバー2、データ解析サーバー3等の外部装置との間においてデータ通信を行う。
【0054】
操作装置44は、ユーザーから、プロジェクター4に対する入力操作を受け付ける入力インターフェースである。操作装置44は、例えば、プロジェクター4の筐体に設けられた操作ボタンを有している。操作装置44は、押下された操作ボタンを識別する情報を処理装置42へ出力する。これにより、ユーザーの操作装置44に対する入力操作の内容が処理装置42へ出力する。これにより、ユーザーの操作装置44に対する入力操作の内容が処理装置42へ伝達される。
【0055】
従って、視聴者は、操作装置44を介してコンテンツの評価値をプロジェクター4に入力することができる。なお、操作装置44は、操作ボタンの代わりにタッチパネルを有していてもよい。この場合、操作装置44は、検出したタッチ位置を示すデータを処理装置42へ出力する。また、操作装置44は、プロジェクター4の筐体から独立したリモコン装置であってもよい。
【0056】
投射装置45は、投射光を投射する。また、投射装置45は、不図示の光源と、光変調器451と、投射レンズ452とを備えている。光源は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、LED、レーザー光源等を含む。光変調器451は、1以上の液晶パネルを含んでいる。なお、光変調器451は、液晶パネルの代わりに、DMDを含んでいてもよい。
【0057】
光変調器451は、処理装置42から入力される信号に基づいて、光源から発せられた光を、スクリーン6上に投射画像61を表示するための投射光に変調する。ここで、LEDとは、Light Emitting Diodeの略称であり、DMDとはDigital Mirror Deviceの略称である。投射レンズ452は、光変調器451によって変調された投射光をスクリーン6において結像させる。
【0058】
投射装置45は、動画再生部421の制御により、スクリーン6上に投射画像61を表示するための投射光を投射する。言い換えると、投射装置45は、処理装置42から入力された画像情報に基づく画像をスクリーン6上に投射する。
【0059】
1.6.環境指標及び視聴ログの取得方法
以下、
図6~
図8を参照しつつ、環境指標及び視聴ログの取得方法について説明する。
【0060】
図6は、データ解析サーバー3において受信される視聴データの一例を示す図である。データ解析サーバー3は、各プロジェクター4においてコンテンツの再生が行われるごとに、
図6に示した視聴データを受信する。
【0061】
図6は、プロジェクター4において再生されたコンテンツのコンテンツIDが「X」であること、プロジェクター4の端末IDが「A」であることを示している。また、
図6に示した例によれば、視聴環境5における照度は500ルクスであり、画面サイズは150インチであり、騒音は60デジベルである。
【0062】
プロジェクター4の処理装置42は、プロジェクター4が設置されている環境についての環境指標を取得する。
【0063】
図7は、取得部321において取得された環境指標の一例を示す図である。取得部321は、
図6に示す視聴データから、照度に関する情報、画面サイズに関する情報、及び騒音に関する情報を抽出し、
図7に示す環境指標を得る。取得された環境指標は、クラスタリングに用いられる。
【0064】
図8は、あるプロジェクター4に対する視聴ログの一例を示す図である。この例では、視聴ログには、端末ID「A」のプロジェクター4において再生されたコンテンツ「X」、「Y」、「Z」ごとに、リピート再生回数及びコンテンツに対する評価値が記録される。ここで、リピート再生回数は、1つのプロジェクター4における同一コンテンツの再生回数を表す。各評価値は、1再生ごとの評価値の再生回数による平均値である。取得部321は、受信した複数の視聴データに基づいて、視聴端末ごとに
図8に示すような視聴ログを作成する。
【0065】
1.7.推薦コンテンツの決定動作
以下、
図9~
図12を参照しつつ、データ解析サーバー3における推薦コンテンツの決定動作について説明する。
【0066】
図9は、照度、画面サイズ、及び騒音の3つの環境指標をそれぞれ特徴ベクトルとする3次元の特徴ベクトル空間を示す図である。3次元の特徴ベクトル空間500では、照度についての特徴ベクトルである照度ベクトルe1、画面サイズについての特徴ベクトルである画面サイズベクトルs1、及び騒音についての特徴ベクトルである騒音ベクトルn1が互いに直交している。これは、照度、画面サイズ、及び騒音は、互いに独立した物理量だからである。
【0067】
3つの特徴ベクトルを合成した合成ベクトルp1の先端位置P1の座標は(E1,S1,N1)である。合成ベクトルp1は、原点Oに関する点P1の位置ベクトルである。
【0068】
図10は、取得された複数の視聴環境の各々における環境指標の合成ベクトルの分布を示す図である。
図10に示す複数の白丸の各々は、取得された環境指標の合成ベクトルの先端位置を表している。分類部322は、特徴ベクトル空間500に散らばった環境指標の合成ベクトルの先端位置を、互いの類似度に応じて、複数のグループに分類する。
【0069】
より具体的に述べると、分類部322は、クラスタリング手法を用いて、特徴ベクトル空間500に散らばった環境指標の合成ベクトルの先端位置を複数のグループに分類する。類似度は、例えば、複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標、すなわち、互いに異なる2つの合成ベクトルの先端位置同士のユークリッド距離から求められる。
【0070】
図11は、各環境指標を複数のグループに分類した結果を示す図である。
図11に示した例では、複数の環境指標は、類似度に応じて、5つのグループG1~G5に分類される。
【0071】
推薦部323は、分類された第1のグループG1に属する各プロジェクター4において再生されたコンテンツについて、当該コンテンツの各プロジェクター4における評価値から第1のグループG1全体における評価値を算出する。あるコンテンツの第1のグループG1全体における評価値は、例えば、第1のグループG1に属する複数のプロジェクター4の各々における1再生ごとのコンテンツの評価値の総和を、当該コンテンツの総再生回数で除した値として得られる。なお、1つのコンテンツに、複数の視聴者から評価値が付与されてもよい。
【0072】
推薦部323は、第1のグループG1に属するプロジェクター4によって再生されたコンテンツのすべてについて、第1のグループG1全体における評価値を算出する。推薦部323は、第1のグループG1全体における評価値のランキング上位のコンテンツを推薦コンテンツとして決定する。推薦部323は、決定された推薦コンテンツに関する情報である推薦情報をコンテンツ配信サーバー2に提供する。
【0073】
なお、あるコンテンツの各グループ全体における評価値は、リピート再生回数によって重み付けが行われてもよい。例えば、推薦部323は、1再生ごとのコンテンツの評価値に対し、リピート再生回数に応じた1よりも大きい係数を乗じることにより重み付けを行う。また、推薦部323は、各プロジェクター4に対する推薦コンテンツから、各プロジェクター4において再生されたことがあるコンテンツを除外してもよい。
【0074】
推薦部323は、分類された第2のグループG2、第3のグループG3、第4のグループG4、及び第5のグループG5においても同様に、複数のコンテンツの各グループ全体における評価値をそれぞれ算出する。推薦部323は、算出された各コンテンツの評価値に基づいて、推薦コンテンツを決定し、推薦情報をコンテンツ配信サーバー2に提供する。
【0075】
コンテンツ配信サーバー2の管理部221は、推薦情報を受信すると、各プロジェクター4に対し、推薦コンテンツ情報を提供する。このように、推薦部323は、コンテンツ配信サーバー2を介して、各プロジェクター4を利用する1又は複数の視聴者に対し、視聴環境に応じたコンテンツを推薦する。なお、一人の視聴者が複数のプロジェクター4を保有する構成でもよい。また、推薦部323からコンテンツが推薦される1又は複数の視聴者は、1つのコンテンツに過去に評価値を付与した1又は複数の視聴者と異なってもよいし、同じでもよい。推薦部323からコンテンツが推薦される1又は複数の視聴者が1つのコンテンツに過去に評価値を付与した1又は複数の視聴者と異なる場合は、前者を1又は複数の視聴者と呼称し、後者を1又は複数の他の視聴者と呼称してもよい。
【0076】
図12は、データ解析サーバー3の処理装置32による推薦コンテンツ決定の動作を示すフローチャートである。以下、
図12を参照することにより、処理装置32の動作について説明する。
図12のルーチンは、例えば、処理装置32が起動されることにより開始され、一定の時間が経過する毎に実行されるようになっている。
【0077】
図12のルーチンが開始されると、先ず、ステップS11において、処理装置32は、プロジェクター4から視聴ログが通知されたか否かを判定する。
【0078】
ステップS11において、処理装置32が、視聴ログが通知されたと判定した場合、即ち、ステップS11における判定結果が肯定的(ステップS11:YES)であった場合、処理装置32は、ステップS12の処理を実行する。この場合、ステップS12において、処理装置32は、視聴ログをプロジェクター4ごとに集計し、記憶装置31に集計結果を保存する。集計結果には、プロジェクター4ごとの環境指標、即ち、照度、画面サイズ、及び騒音が含まれる。
【0079】
一方、ステップS11において、処理装置32が、視聴ログが通知されていないと判定した場合、即ち、ステップS11における判定結果が否定的(ステップS11:NO)であった場合、処理装置32は、ステップS12の処理を省略して、ステップS13の処理を実行する。即ち、この場合、処理装置32は、視聴ログの集計及び保存を実行しない。
【0080】
次いで、ステップS13において、処理装置32は、推薦情報を更新するタイミングであるか否かを判定する。推薦情報を更新するタイミングは、予め定められた更新周期に従って決められてもよいし、コンテンツ配信サーバー2からの更新の要求に従って決められてもよい。
【0081】
ステップS13において、処理装置32が、推薦情報を更新するタイミングであると判定した場合、即ち、ステップS13における判定結果が肯定的(ステップS13:YES)であった場合、処理装置32は、ステップS14の処理を実行する。この場合、ステップS14において、処理装置32は、集計結果に含まれる環境指標、即ち、照度、画面サイズ、及び騒音に基づいて、複数のプロジェクター4をクラスタリングする。
【0082】
次いで、ステップS15において、処理装置32は、クラスタリングされてできた各グループに属するプロジェクター4において再生された複数のコンテンツの各々に対して、複数のコンテンツの各々の評価値に基づいて、グループ全体における評価値を算出する。
【0083】
次いで、ステップS16において、処理装置32は、グループごとに算出された評価値に基づいて、各プロジェクター4に対する推薦コンテンツを決定する。
【0084】
次いで、ステップS17において、処理装置32は、各視聴端末から推薦情報の取得要求があったか否かを判定する。推薦情報の取得要求のタイミングは、例えば、視聴者が動画配信プラットフォームにおいて、コンテンツを検索するタイミング、視聴者が動画配信プラットフォームのホーム画面にアクセスしたタイミングである。この例では、推薦情報の取得要求は、コンテンツ配信サーバー2から送信される。
【0085】
ステップS17において、処理装置32が、推薦情報の取得要求があったと判定した場合、即ち、ステップS17における判定結果が肯定的(ステップS17:YES)であった場合、処理装置32は、ステップS18の処理を実行する。この場合、ステップS18において、処理装置32は、推薦情報をコンテンツ配信サーバー2に提供し、本ルーチンを一旦終了する。
【0086】
一方、ステップS17において、処理装置32が、推薦情報の取得要求がないと判定した場合、即ち、ステップS17における判定結果が否定的(ステップS17:NO)であった場合、処理装置32は、ステップS18の処理を省略して本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合、推薦情報は提供されない。
【0087】
以上が、選択操作に係る処理装置32の動作である。なお、処理装置32は、上述した各ステップにおいて以下のように機能する。処理装置32は、ステップS11において、取得部321として機能する。処理装置32は、ステップS12~S16において、分類部322として機能する。処理装置32は、ステップS17において、推薦部323として機能する。
【0088】
1.8.第1実施形態が奏する効果
以上説明したように、コンテンツ推薦方法は、環境指標を、複数のプロジェクター4の各々について取得する。環境指標は、視聴者がコンテンツを視聴する環境、即ち、視聴環境を示す指標である。また、本方法は、視聴者によって付与される評価値を、複数のプロジェクター4の各々について取得する。評価値は、コンテンツの視聴品質の程度を示す値である。また、本方法は、取得された複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標の類似度に応じて、複数のプロジェクター4を複数のグループG1~G5に分類する。また、本方法は、分類された1つのグループに属する各プロジェクター4に対応付けられた評価値から1つのグループ全体における評価値を算出する。さらに、本方法は、算出された評価値に基づいて、1つのグループに属する各プロジェクター4を利用する視聴者に対し、視聴環境に応じたコンテンツを推薦する。
【0089】
以上のコンテンツ推薦方法によれば、教師なし学習を用いて、動画配信プラットフォームを利用する視聴者の視聴環境を学習することができる。また、以上のコンテンツ推薦方法によれば、視聴環境ごとに複数のプロジェクター4をいくつかのグループに分類し、分類された1つのグループに属する各プロジェクター4に対応付けられたコンテンツの評価値を算出することができる。1つのグループに属する複数のプロジェクター4によって再生された複数のコンテンツのうち、算出された評価値が上位のコンテンツは、当該グループに属する各プロジェクター4の視聴環境に適したコンテンツ、即ち、推薦すべきコンテンツと言える。従って、以上のコンテンツ推薦方法によれば、視聴者に対し、視聴環境に適したコンテンツを推薦することができる。
【0090】
なお、第1実施形態において、プロジェクター4は「視聴端末」の一例であり、スクリーン6は「投射対象」の一例である。
【0091】
また、環境指標は、視聴環境の照度、プロジェクター4の画面のサイズ、及び視聴環境における騒音を含んでいる。
【0092】
視聴環境の明るさを示す照度は、プロジェクター4の視聴に与える影響が大きい指標であり、比較的明るい環境において視聴されるコンテンツの傾向と、比較的暗い環境において視聴されるコンテンツの傾向とは異なると考えられる。また、比較的大きい画面サイズにおいて視聴されるコンテンツの傾向と、比較的小さい画面サイズにおいて視聴されるコンテンツの傾向とは異なると考えられる。また、比較的騒音値が低い家庭において視聴されるコンテンツの傾向と、比較的騒音値が高い商業施設において視聴されるコンテンツの傾向とは異なると考えられる。
【0093】
従って、視聴環境の照度、プロジェクター4の画面のサイズ、及び視聴環境における騒音を環境指標として、視聴者の視聴環境を学習することにより、視聴者に対して、より適切なコンテンツを推薦することができる。
【0094】
また、上述のように、視聴端末は、プロジェクター4であり、コンテンツは、プロジェクター4によってスクリーン6に表示され、画面のサイズは、スクリーン6に表示された画面のサイズである。
【0095】
プロジェクターは、照度の影響を受け易い表示デバイスである。また、プロジェクターは、画面のサイズを大きくするほど投射面上の輝度が低くなるため、画面のサイズを大きくするほど、照度の影響を受け易い。また、プロジェクターは、騒音値が比較的低い環境から比較的高い環境まで幅広く利用されている。従って、以上のコンテンツ推薦方法によれば、照度、画面のサイズ、及び騒音を指標としていくつかのグループにプロジェクターを分類するため、プロジェクターの利用環境に適したコンテンツを推薦することができる。
【0096】
また、環境指標には、少なくとも騒音が含まれる。
【0097】
これによれば、騒音を指標としていくつかのグループに視聴端末を分類するため、視聴端末の利用環境に適したコンテンツを推薦することができる。
【0098】
また、コンテンツ配信システム1は、複数のプロジェクター4の各々に1つ以上のコンテンツを配信するシステムである。コンテンツ配信システム1は、コンテンツ配信サーバー2と、データ解析サーバー3と、を備える。コンテンツ配信サーバー2は、記憶された複数のコンテンツの中から、複数のプロジェクター4の各々を利用する視聴者の要求に応じた視聴コンテンツを、視聴者に対応付けられたプロジェクター4に配信する。
【0099】
データ解析サーバー3は、取得部321と、分類部322と、推薦部323と、を有する。取得部321は、環境指標と評価値とを、複数のプロジェクター4の各々について取得する。環境指標は、視聴者がコンテンツを視聴する環境、即ち、視聴環境を示す指標である。評価値は、視聴者によって付与されるコンテンツの視聴品質の程度を示す値である。分類部322は、取得された複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標の類似度に応じて、複数のプロジェクター4を複数のグループに分類する。推薦部323は、分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられた評価値から1つのグループ全体における評価値を算出する。また、推薦部323は、算出された評価値に基づいて、1つのグループに属する各プロジェクター4を利用する視聴者に対し、視聴環境に応じたコンテンツを推薦する。
【0100】
以上のコンテンツ配信システムによれば、教師なし学習を用いて、動画配信プラットフォームを利用する視聴者の視聴環境を学習することができる。また、以上のコンテンツ配信システムによれば、視聴環境ごとに複数のプロジェクター4をいくつかのグループに分類し、分類された1つのグループに属する各プロジェクター4に対応付けられたコンテンツの評価値を算出することができる。1つのグループに属する複数のプロジェクター4によって再生された複数のコンテンツのうち、算出された評価値が上位のコンテンツは、当該グループに属する各プロジェクター4の視聴環境に適したコンテンツ、即ち、推薦すべきコンテンツと言える。従って、以上のコンテンツ配信システムによれば、視聴者に対し、視聴環境に適したコンテンツを推薦することができる。
【0101】
2.第2実施形態
以下、
図13~
図19を参照することにより、本発明の第2実施形態に係るコンテンツ配信システム、機械学習装置、及び推薦コンテンツ推定装置について説明する。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、第1実施形態と同一の構成要素に対しては、同一の符号を用いると共に、その機能の説明を省略することがある。また、以下の説明では、説明の簡略化のため、主として、第2実施形態が、第1実施形態に比較して相違する点について説明する。
【0102】
2.1.第2実施形態の構成
以下、
図13~
図14を参照しつつ、第2実施形態に係るコンテンツ配信システムの構成について説明する。
【0103】
図13は、第2実施形態に係るコンテンツ配信システムの構成図である。コンテンツ配信システム1Aは、コンテンツ配信サーバー2、データ解析サーバー3A、複数の視聴端末としての複数のプロジェクター4を備えている。
【0104】
コンテンツ配信サーバー2と、データ解析サーバー3Aと、複数のプロジェクター4とは、ネットワークNETを介して互いに接続されている。
【0105】
第1実施形態に係るデータ解析サーバー3は、教師なし学習を実行するサーバーとして機能していたが、第2実施形態に係るデータ解析サーバー3Aは、教師あり学習を実行するサーバー又は教師あり学習の結果を用いてコンテンツを推薦するサーバーとして機能する。この点において、第2実施形態に係るデータ解析サーバー3Aの構成は、第1実施形態に係るデータ解析サーバー3の構成と異なっている。第2実施形態におけるコンテンツ配信サーバー2及びプロジェクター4の各構成は、第1実施形態におけるコンテンツ配信サーバー2及びプロジェクター4の各構成と同じである。
【0106】
以下、データ解析サーバー3Aは、第2実施形態に係る機械学習装置及び推薦コンテンツ推定装置として機能する。
【0107】
図14は、
図13のデータ解析サーバー3Aの構成例を示すブロック図である。データ解析サーバー3Aは、記憶装置31、処理装置32A、及び通信装置33を備えている。
【0108】
記憶装置31Aは、各種情報を記憶する。記憶装置31Aは、例えば、RAM等の揮発性メモリー及びROM等の不揮発性メモリーを含んで構成されている。記憶装置31Aには、制御プログラム311A等が記憶されている。記憶装置31Aの揮発性メモリーは、処理装置32Aのワークエリア312Aとして処理装置32Aに利用される。制御プログラム311Aは、データ解析サーバー3Aの全体を制御するプログラムである。
【0109】
なお、記憶装置31Aの一部又は全部は、外部記憶装置、外部サーバー等に設けられてもよい。また、記憶装置31Aに記憶される各種情報の一部又は全部は、予め記憶装置31Aに記憶されてもよいし、外部記憶装置、外部サーバー等から取得されてもよい。
【0110】
処理装置32Aは、データ解析サーバー3Aの動作を制御する。処理装置32Aは、1以上のCPUを含んで構成されている。但し、処理装置32Aは、CPUの代わりに、又はCPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。
【0111】
通信装置33の構成は、第1実施形態に係る通信装置33の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0112】
2.2.機械学習装置
以下、
図15~
図18を参照しつつ、第2実施形態に係る機械学習装置について説明する。
【0113】
図15は、第2実施形態に係る機械学習装置8の一例を示すブロック図である。機械学習装置8は、制御部80、通信部81、教師データ記憶部82、及び学習済みモデル記憶部83を備えている。
図15において、制御部80は、処理装置32Aにより実現され、通信部81は、通信装置33Aにより実現され、教師データ記憶部82及び学習済みモデル記憶部83は、記憶装置31Aにより実現される。
【0114】
制御部80は、制御プログラム211Aを実行することにより、取得部800及び生成部801として機能する。通信装置33により実現される通信部81は、ネットワークNETを介して、コンテンツ配信サーバー2及び各プロジェクター4と接続され、各種のデータを送受信する通信インターフェースとして機能する。
【0115】
取得部800は、ネットワークNETを介して、コンテンツ配信サーバー2及び各プロジェクター4と接続され、入力データ及び出力データが対応付けられて構成される複数の教師データを取得する。
【0116】
教師データ記憶部82は、取得部800において取得された複数の教師データを記憶するデータベースである。
【0117】
生成部801は、複数の教師データを学習モデル9に機械学習させることによって、学習済みの学習モデルを生成する。より具体的に述べると、生成部801は、教師データ記憶部82に記憶された教師データを用いて機械学習を実施する。即ち、生成部801は、学習モデル9に複数の教師データを入力することにより、教師データを構成する入力データと出力データとの相関関係を学習モデル9に機械学習させることにより、学習済みの学習モデル9を生成する。
【0118】
学習済みモデル記憶部83は、生成部801により機械学習させた学習済みの学習モデル9を記憶するデータベースである。学習済みモデル記憶部83に記憶された学習モデル9は、ネットワークNET、記録媒体等を介して推薦コンテンツ推定装置に提供される。なお、学習モデル9は、例えば、サーバー型コンピュータ、クラウド型コンピュータ等の外部コンピュータに提供されて、外部コンピュータの記憶部に記憶されてもよい。また、
図15において、教師データ記憶部82と、学習済みモデル記憶部83とは別々の記憶部として示されているが、これらは単一の記憶部により構成されてもよい。
【0119】
図16は、第2実施形態に係る教師データの一例を示すデータ構成図である。教師データは、環境情報及び視聴したコンテンツに関する属性情報を含む入力データと、視聴したコンテンツに対する視聴者の評価値を含む出力データとのセットにより構成されている。
【0120】
環境情報には、照度、画面サイズ、及び騒音が含まれる。照度は、照度センサ71により測定される。画面サイズは、距離センサ72により測定されたプロジェクター4とスクリーン6との間の距離と、プロジェクター4の光の広がり角とに基づいて算出される。騒音は、騒音センサ73により測定される。照度センサ71、距離センサ72、及び騒音センサ73は、それぞれプロジェクター4に接続されている。
【0121】
属性情報には、コンテンツのジャンルを示す情報及びコンテンツの投稿者を示す情報が含まれる。属性情報は、メタデータとしてコンテンツに予め付帯している。
【0122】
出力データは、教師あり学習において、例えば、正解ラベルと呼ばれるものである。出力データに含まれる評価値は、プロジェクター4によって再生されたコンテンツの視聴品質の程度を示す値であり、視聴者によって付与される。
【0123】
図14の例では、入力データに含まれる環境情報及び属性情報に対して、出力データとして、評価値、即ち、視聴ログが対応付けられている。
【0124】
図17は、第2実施形態に係る学習モデル9に適用されるニューラルネットワークモデルの一例を示す概略図である。ニューラルネットワークモデル90は、入力層91、中間層92、及び出力層93を備えている。
【0125】
入力層91は、入力データとしての環境情報及び属性情報に対応する数のニューロンを有し、環境情報及び属性情報が各ニューロンにそれぞれ入力される。
【0126】
中間層92は、例えば、畳み込みニューラルネットワークにより構成される。中間層92は、入力層91を介して入力された環境情報及び属性情報から抽出された特徴量を活性化関数によって変換し、一次元配列の特徴ベクトルとして出力する。
【0127】
出力層93は、中間層92から出力された特徴ベクトルに基づいて、「属性情報」に含まれるコンテンツの「評価値」を含む出力データを出力する。
【0128】
ニューラルネットワークモデル90の各相の間には、層間のニューロンをそれぞれ接続するシナプスが張られている。
【0129】
生成部801は、教師データをニューラルネットワークモデル90に入力し、入力データである環境情報及び属性情報と、出力データである評価値との相関関係をニューラルネットワークモデル90に機械学習させる。より具体的に述べると、生成部801は、教師データを構成する環境情報及び属性情報を入力データとして、ニューラルネットワークモデル90の入力層91に入力する。
【0130】
生成部801は、出力層93から推論結果として出力された出力データ、即ち、評価値と、当該教師データを構成する出力データ、即ち、評価値の正解ラベルとを比較する評価関数を用いて、評価関数の値が小さくなるように、各シナプスに対応付けられた重みを調整することを反復する。ここで、各シナプスに対応付けられた重みを調整することは、バックプロパゲーションと呼ばれる。
【0131】
生成部801は、所定の学習終了条件が満たされたと判定した場合、機械学習を終了し、その時点におけるニューラルネットワークモデル90を、学習済みの学習モデル9として学習済みモデル記憶部83に格納する。所定の学習終了条件は、例えば、上記一連の学習の処理の反復回数が所定の回数に達すること、及び評価関数の値が許容値よりも小さくなることである。
【0132】
図18は、第2実施形態に係る機械学習装置8による機械学習方法の一例を示すフローチャートである。
【0133】
まず、ステップS21において、制御部80は、機械学習を開始するための事前準備として、複数の教師データを準備し、準備した教師データを教師データ記憶部82に記憶する。ここで準備する教師データの数は、最終的に得られる学習モデル9に要求される推論精度を考慮して設定すればよい。
【0134】
次いで、ステップS22において、制御部80は、機械学習を開始するため、学習前の学習モデル9を準備する。ここで準備する学習前の学習モデル9は、
図17に示したニューラルネットワークモデルを採用したものであり、各シナプスの重みが初期値に設定されている。入力層91の各ニューロンには、教師データを構成する入力データとしての属性情報及び環境情報が対応付けられる。出力層93の各ニューロンには、教師データを構成する出力データとしてのコンテンツの評価値が対応付けられる。
【0135】
次いで、ステップS23において、制御部80は、教師データ記憶部82に記憶された複数の教師データから、例えば、ランダムに1つの教師データを取得する。
【0136】
次いで、ステップS24において、制御部80は、1つの教師データに含まれる入力データを、準備した学習前又は学習中の学習モデル9の入力層91に入力する。その結果、学習モデル9の出力層93から推論結果として出力データが出力される。しかし、当該出力データは、学習前又は学習中の学習モデル9によって生成されたものである。そのため、学習前又は学習中の状態においては、推論結果として出力されたデータは、教師データに含まれる出力データ、即ち、正解ラベルとは異なる情報を示す。
【0137】
次いで、ステップS25において、制御部80は、ステップS23において取得された1つの教師データに含まれる出力データ、即ち、正解ラベルと、ステップS24において出力層93から推論結果として出力された出力データとを比較し、各シナプスの重みを調整することにより、機械学習を実施する。これにより、制御部80は、入力データと出力データとの相関関係を学習モデル9に学習させる。
【0138】
次いで、ステップS26において、制御部80は、所定の学習終了条件が満たされたか否かを、推論結果と、教師データに含まれる出力データ、即ち、正解ラベルとに基づく評価関数の値に基づいて判定する。なお、制御部80は、所定の学習終了条件が満たされたか否かを、推論結果と、教師データ記憶部82内に記憶された未学習の教師データの残数に基づいて判定してもよい。
【0139】
ステップS26において、制御部80が、学習終了条件が満たされておらず、機械学習を継続すると判定した場合、即ち、ステップS26における判定結果が否定的(ステップS26:NO)であった場合、制御部80は、学習中の学習モデル9に対して、ステップS23からステップS25までの処理を未学習の教師データを用いて複数回実施する。
【0140】
一方、ステップS26において、制御部80が、学習終了条件が満たされたと判定した場合、即ち、ステップS26における判定結果が肯定的(ステップS26:YES)であった場合、制御部80は、ステップS27において、各シナプスに対応付けられた重みを調整することにより、機械学習させた学習済みの学習モデル9、即ち、調整済みの重みパラメータ群を学習済みモデル記憶部83に記憶し、本ルーチンを一旦終了する。
【0141】
以上が、機械学習方法の概要である。なお、制御部80は、上述したステップS21において、取得部800として機能し、上述したステップS22~S27において、生成部801として機能する。
【0142】
なお、
図18の機械学習方法では、重みを調整する手法として、オンライン学習を採用した場合について説明したが、バッチ学習やミニバッチ学習等が採用されてもよい。さらに、所定の学習終了条件が満たされたか否かは、誤判定率に基づいて判定されてもよい。
【0143】
2.3.推薦コンテンツ推定装置
以下、
図19を参照しつつ、第2実施形態に係る推薦コンテンツ推定装置について説明する。
【0144】
図19は、第2実施形態に係る推薦コンテンツ推定装置の一例を示すブロック図である。推薦コンテンツ推定装置10は、制御部100、通信部101、及び学習済みモデル記憶部102を備えている。
図18において、制御部100は、処理装置32Aにより実現され、通信部101は、通信装置33Aにより実現され、学習済みモデル記憶部102は、記憶装置31Aにより実現される。
【0145】
制御部100は、制御プログラム211Aを実行することにより、判定データ取得部110、推定部111、決定部112及び出力処理部113として機能する。
【0146】
通信部101は、ネットワークNETを介して、コンテンツ配信サーバー2、複数のプロジェクター4等の外部装置と接続され、各種のデータを送受信する通信インターフェースとして機能する。
【0147】
判定データ取得部110は、外部装置と通信部101及びネットワークNETを介して接続されている。判定データ取得部110は、環境指標と候補コンテンツとを含む判定データを取得する。環境指標は、プロジェクター4が設置された環境を示す指標である。環境指標には、照度、画面サイズ、騒音が含まれる。候補コンテンツは、プロジェクター4を利用する第1視聴者に推薦するコンテンツの候補である。
【0148】
推定部111は、判定データ取得部110により取得された判定データを学習モデル9に入力することにより、コンテンツの評価値を推定する推論処理を実行する。より具体的に述べると、推定部111は、視聴者がコンテンツを視聴する環境に関する情報及びコンテンツの属性に関する情報と、コンテンツに対する視聴者の評価値との関係を学習済みである学習モデル9に、判定データを入力することによって出力されるコンテンツの評価値を、候補コンテンツに対する第1視聴者の評価値であると推定する。
【0149】
決定部112は、推定部111によって推定された評価値に基づいて、第1視聴者に推薦するコンテンツを決定する。例えば、決定部112は、推定された評価値が高いコンテンツを推薦コンテンツとして決定すればよい。
【0150】
出力処理部113は、決定部112により推論されたコンテンツの評価値を出力するための出力処理を実行する。コンテンツの評価値を出力するための具体的な出力手段は、種々の手段を採用することが可能である。例えば、出力処理部113は、コンテンツの評価値をコンテンツ配信サーバー2に送信したり、推薦コンテンツ推定装置10の記憶部に記憶したりしてもよい。
【0151】
学習済みモデル記憶部83は、推定部111の推論処理において用いられる学習済みの学習モデル9を記憶するデータベースである。なお、学習済みモデル記憶部83は、例えば、サーバー型コンピュータ、クラウド型コンピュータ等の外部コンピュータの記憶部によって代用されてもよい。その場合、推定部111は、当該外部コンピュータにアクセスすることにより、上記の推論処理を実行してもよい。
【0152】
2.4.第2実施形態が奏する効果
以上の説明によれば、第2実施形態に係る推薦コンテンツ推定装置は、判定データ取得部110と、推定部111と、決定部112とを備える。判定データ取得部110は、プロジェクター4が設置された環境を示す環境指標と、プロジェクター4を利用する第1視聴者に推薦するコンテンツの候補である候補コンテンツとを含む判定データを取得する。推定部111は、視聴者がコンテンツを視聴するときの環境に関する情報及びコンテンツの属性に関する情報と、コンテンツに対する視聴者による評価値との関係を学習済みである学習モデル9に、判定データを入力することによって出力される評価値を、候補コンテンツに対する第1視聴者の評価値であると推定する。決定部112は、推定部111によって推定された評価値に基づいて、第1視聴者に推薦するコンテンツを決定する。
【0153】
以上の推薦コンテンツ推定装置によれば、教師あり学習を用いて生成された学習モデル9に判定データを入力することによって出力される評価値を、候補コンテンツに対する評価値であると推定する。従って、これによれば、推定された評価値に基づいて、推薦コンテンツを決定することができ、例えば、推定された評価値が高いコンテンツを推薦コンテンツとして決定することができる。
【0154】
また、第2実施形態に係る機械学習装置は、取得部800と、生成部801とを備える。取得部800は、複数の教師データを取得する。生成部801は、複数の教師データを学習モデル9に機械学習させることによって、学習済みの学習モデル9を生成する。複数の教師データの各々は、視聴者がプロジェクター4を用いて視聴したコンテンツの属性に関する属性情報及びプロジェクター4の環境を示す環境情報と、コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって、視聴者によって付与される評価値とを含む。
【0155】
以上の機械学習装置によれば、複数の教師データの各々は、属性情報及び環境情報と、評価値とを含む。従って、これによれば、動画配信プラットフォームを利用する視聴者の視聴環境と、視聴者のコンテンツに対する評価値との相関関係を学習させることができる。また、これによれば、生成された学習済みの学習モデル9に判定データを入力することによって出力される評価値を、候補コンテンツに対する評価値であると推定することができる。
【0156】
3.変形例
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。具体的な変形の態様を以下に例示する。また、以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内において適宜併合され得る。なお、以下に例示する変形例において、作用や機能が前述の実施形態と同等である要素については、以上の説明において使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜省略する。
【0157】
3.1.変形例1
第1実施形態では、各プロジェクターに対応する環境指標は、厳密には、コンテンツを再生するごとに変化する。例えば、あるプロジェクターにおいて、第1のコンテンツを再生した時点における環境指標と、第2のコンテンツを再生した時点における環境指標との差分が判定閾値未満である場合、取得部321は、上記2つの時点における視聴環境は同等であると見做す。この場合、取得部321は、2つの環境指標を平均化する。
【0158】
あるプロジェクターにおいて、第1のコンテンツを再生した時点における環境指標と、第2のコンテンツを再生した時点における環境指標との差分が判定閾値以上である場合、取得部321は、上記2つの時点における視聴環境は相違していると見做す。この場合、取得部321は、異なる2つの視聴環境にそれぞれ設置された互いに異なるプロジェクターがあると見做す。
【0159】
この場合、例えば、取得部321は、第1のコンテンツを再生した時点におけるプロジェクターと、第2のコンテンツを再生した時点におけるプロジェクターとに、それぞれ異なるIDを割り振る。例えば、リビングルームに1台のプロジェクターが設置されている場合であっても、カーテンが閉められ、室内が暗くされた状態において映画が視聴されることも、カーテンが開けられ、室内が明るくされた状態においてキッズ向けの番組が視聴されることもある。このような場合、取得部321は、カーテンが閉められた状態と、カーテンが開けられた状態とで、プロジェクターに互いに異なるIDを割り振り、分類部322にデータを送信すればよい。
【0160】
3.2.変形例2
第1実施形態において、データ解析サーバー3が推薦部323を有していたが、コンテンツ配信サーバー2が推薦部323の機能の一部を有していてもよい。例えば、データ解析サーバー3は、1つのグループ全体における評価値を算出するまでを実施する。コンテンツ配信サーバー2は、算出された1つのグループ全体の評価値をデータ解析サーバー3から取得し、取得された評価値に基づいて、1つのグループに属する各プロジェクター4を利用する視聴者に対し、視聴環境に応じたコンテンツを推薦してもよい。
【0161】
3.3.変形例3
第1実施形態において、分類部322は、分類するグループの数を初期値として与えてもよい。これによれば、クラスタリングの収束する時間を短縮することができる。
【0162】
3.4.変形例4
プロジェクター4の明部の輝度と暗部の輝度との比であるコントラスト比は、照度に影響を受け易い。そこで、コントラスト比を測定し、測定されたコントラスト比から照度を推定してもよい。また、測定されたコントラスト比を環境指標の1つとして加えてもよい。
【0163】
3.5.変形例5
画面サイズの測定は、プロジェクター4からスクリーン6に、サイズ測定用パターンを含む投射画像を投射し、サイズ測定用パターンを、プロジェクター4に接続されたカメラにより撮影し、撮影されたサイズ測定用パターンに対して画像処理を実施することにより測定してもよい。この場合、カメラは、カメラとスクリーン6との距離が、プロジェクター4のレンズとスクリーン6との距離が互いに等しくなるように固定される。また、固定されたカメラに代えて、プロジェクター4と連携したスマートフォンを用いて、スクリーン6上のサイズ測定用パターンが撮影されてもよい。
【0164】
3.6.変形例6
第1実施形態及び第2実施形態において、視聴環境の騒音は、騒音センサにより取得したが、プロジェクター4に接続されたマイクロホン又はプロジェクター4と連携したスマートフォンを用いて取得された音信号から計算されてもよい。
【0165】
3.7.変形例7
第1実施形態の教師なし学習において、クラスタリング手法を用いる際、類似度を互いに異なる2つの先端位置のユークリッド距離から求めたが、ユークリッド距離に代えて、マハラノビス距離、マンハッタン距離、チェビシェフ距離等を用いてもよい。
【0166】
3.8.変形例8
第1実施形態及び第2実施形態では、視聴端末としてプロジェクター4が用いられていたが、視聴端末には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が用いられていてもよい。また、視聴端末として、プロジェクター4、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイが混在していてもよい。ここで、ELとは、electro-luminescenceの略称である。
【0167】
4.付記
以下、付記として本開示のまとめを記載する。
【0168】
4.1.付記1
視聴者がコンテンツを視聴する環境を示す環境指標を、複数の視聴端末の各々について取得することと、コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって視聴者によって付与される前記評価値を、前記複数の視聴端末の各々について取得することと、前記取得された複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標の類似度に応じて、前記複数の視聴端末を複数のグループに分類することと、前記分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられた前記評価値から前記1つのグループ全体における評価値を算出し、前記算出された評価値に基づいて、前記1つのグループに属する各視聴端末を利用する視聴者に対し、前記環境に応じたコンテンツを推薦することとを含む、コンテンツ推薦方法。
【0169】
付記1に記載のコンテンツ推薦方法によれば、教師なし学習を用いて、動画配信プラットフォームを利用する視聴者の視聴環境を学習することができる。また、これによれば、視聴環境ごとに複数の視聴端末をいくつかのグループに分類し、分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられたコンテンツの評価値を算出することができる。1つのグループに属する複数の視聴端末によって再生された複数のコンテンツのうち、算出された評価値が上位のコンテンツは、当該グループに属する各視聴端末の視聴環境に適したコンテンツ、即ち、推薦すべきコンテンツと言える。従って、付記1に記載のコンテンツ推薦方法によれば、視聴者に対し、視聴環境に適したコンテンツを推薦することができる。
【0170】
4.2.付記2
前記環境指標は、前記視聴環境の照度、前記視聴端末の画面のサイズ、及び前記視聴環境における騒音のうち、少なくとも1つを含む付記1に記載のコンテンツ推薦方法。
【0171】
視聴環境の明るさを示す照度は、視聴端末の視聴に与える影響が大きい指標であり、比較的明るい環境において視聴されるコンテンツの傾向と、比較的暗い環境において視聴されるコンテンツの傾向とは異なると考えられる。また、比較的大きい画面サイズにおいて視聴されるコンテンツの傾向と、比較的小さい画面サイズにおいて視聴されるコンテンツの傾向とは異なると考えられる。また、比較的騒音値が低い家庭において視聴されるコンテンツの傾向と、比較的騒音値が高い商業施設において視聴されるコンテンツの傾向とは異なると考えられる。
【0172】
従って、付記2に記載のコンテンツ推薦方法によれば、視聴環境の照度、視聴端末の画面のサイズ、及び視聴環境における騒音を環境指標として、視聴者の視聴環境を学習することにより、視聴者に対して、より適切なコンテンツを推薦することができる。
【0173】
4.3.付記3
前記視聴端末は、プロジェクターであり、前記コンテンツは、前記プロジェクターによって投射対象に表示され、前記画面のサイズは、前記投射対象に表示された画面のサイズである付記1又は付記2に記載のコンテンツ推薦方法。
【0174】
プロジェクターは、照度の影響を受け易い表示デバイスである。また、プロジェクターは、画面のサイズを大きくするほど投射面上の輝度が低くなるため、画面のサイズを大きくするほど、照度の影響を受け易い。また、プロジェクターは、騒音値が比較的低い環境から比較的高い環境まで幅広く利用されている。従って、付記3に記載のコンテンツ推薦方法によれば、照度、画面のサイズ、及び騒音を指標としていくつかのグループにプロジェクターを分類するため、プロジェクターの利用環境に適したコンテンツを推薦することができる。
【0175】
4.4.付記4
前記環境指標には、少なくとも前記騒音が含まれる、付記1から付記3までのいずれか1項に記載のコンテンツ推薦方法。
【0176】
付記4に記載のコンテンツ推薦方法によれば、騒音を指標としていくつかのグループに視聴端末を分類するため、視聴端末の利用環境に適したコンテンツを推薦することができる。
【0177】
4.5.付記5
複数の視聴端末の各々に1つ以上のコンテンツを配信するコンテンツ配信システムであって、コンテンツ配信サーバーと、データ解析サーバーと、を備え、前記コンテンツ配信サーバーは、記憶された前記複数のコンテンツの中から、前記複数の視聴端末の各々を利用する視聴者の要求に応じた視聴コンテンツを、前記視聴者に対応付けられた視聴端末に配信し、前記データ解析サーバーは、視聴者がコンテンツを視聴する環境を示す環境指標と、コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって視聴者によって付与される前記評価値とを、前記複数の視聴端末の各々について取得する取得部と、前記取得された複数の環境指標のうち互いに異なる2つの環境指標の類似度に応じて、前記複数の視聴端末を複数のグループに分類する分類部と、前記分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられた前記評価値から前記1つのグループ全体における評価値を算出し、前記算出された評価値に基づいて、前記1つのグループに属する各視聴端末を利用する視聴者に対し、前記環境に応じたコンテンツを推薦する推薦部と、を有する、コンテンツ配信システム。
【0178】
付記5に記載のコンテンツ配信システムによれば、教師なし学習を用いて、動画配信プラットフォームを利用する視聴者の視聴環境を学習することができる。また、以上のコンテンツ配信システムによれば、視聴環境ごとに複数の視聴端末をいくつかのグループに分類し、分類された1つのグループに属する各視聴端末に対応付けられたコンテンツの評価値を算出することができる。1つのグループに属する複数の視聴端末によって再生された複数のコンテンツのうち、算出された評価値が上位のコンテンツは、当該グループに属する各視聴端末の視聴環境に適したコンテンツ、即ち、推薦すべきコンテンツと言える。従って、これによれば、視聴者に対し、視聴環境に適したコンテンツを推薦することができる。
【0179】
4.6.付記6
視聴端末が設置された環境を示す環境指標と、前記視聴端末を利用する第1視聴者に推薦するコンテンツの候補である候補コンテンツとを含む判定データを取得する判定データ取得部と、視聴者がコンテンツを視聴するときの環境に関する情報及び前記コンテンツの属性に関する情報と、前記コンテンツに対する前記視聴者による評価値との関係を学習済みである学習モデルに、前記判定データを入力することによって出力される評価値を、前記候補コンテンツに対する前記第1視聴者の評価値であると推定する推定部と、前記推定部によって推定された評価値に基づいて、前記第1視聴者に推薦するコンテンツを決定する決定部と、を備える、推薦コンテンツ推定装置。
【0180】
付記6に記載の推薦コンテンツ推定装置によれば、教師あり学習を用いて生成された学習モデル9に判定データを入力することによって出力される評価値を、候補コンテンツに対する評価値であると推定する。従って、これによれば、推定された評価値に基づいて、推薦コンテンツを決定することができる。これによれば、例えば、推定された評価値が高いコンテンツを推薦コンテンツとして決定することができる。
【0181】
4.7.付記7
複数の教師データを取得する取得部と、複数の教師データを学習モデルに機械学習させることによって、学習済みの学習モデルを生成する生成部とを備え、前記複数の教師データの各々は、視聴者が視聴端末を用いて視聴したコンテンツの属性に関する属性情報及び前記視聴端末の環境を示す環境情報と、前記コンテンツの視聴品質の程度を示す評価値であって前記視聴者によって付与される前記評価値とを含む、機械学習装置。
【0182】
付記7に記載の機械学習装置によれば、複数の教師データの各々は、属性情報及び環境情報と、評価値とを含む。従って、これによれば、動画配信プラットフォームを利用する視聴者の視聴環境と、視聴者のコンテンツに対する評価値との相関関係を学習させることができる。また、これによれば、生成された学習済みの学習モデルに判定データを入力することによって出力される評価値を、候補コンテンツに対する評価値であると推定することができる。
【符号の説明】
【0183】
1,1A…コンテンツ配信システム、2…コンテンツ配信サーバー、3,3A…データ解析サーバー、4…プロジェクター、5…視聴環境、6…スクリーン、8…機械学習装置、9…学習モデル、10…推薦コンテンツ推定装置、110…判定データ取得部、111…推定部、112…決定部、321…取得部、322…分類部、323…推薦部、800…取得部、801…生成部、G1…第1のグループ、G2…第2のグループ、G3…第3のグループ、G4…第4のグループ、G5…第5のグループ、U1…視聴者。