(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145313
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241004BHJP
【FI】
F16H57/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057603
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松原 光将
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AB12
3J063AC01
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD38
3J063XD47
3J063XD62
3J063XF22
3J063XH02
3J063XH12
3J063XH23
(57)【要約】
【課題】吸入口からケース内の油を吸入するオイルポンプを備える場合に、空気の吸い込みが発生し難い位置に吸入口を配置することが容易な車両用駆動装置を実現する。
【解決手段】車両用駆動装置100は、収容室に開口する吸入口9と、収容室内の油を吸入口9から吸入して吐出するオイルポンプ5と、吸入口9とオイルポンプ5とを接続する吸入油路90に配置されたストレーナ6と、を備える。収容室における油の貯留部7を含む領域を対象領域として、ストレーナ6は、筒状に形成され、吸入口9は、ストレーナ6よりも、軸方向Lにおける対象領域の中央側に配置され、吸入口9の上端が、ストレーナ6の入口6aの上端よりも下側V2に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを備えた回転電機と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
前記ロータと前記出力部材との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、
収容室を備え、当該収容室に前記回転電機、前記動力伝達機構、及び、油が収容されたケースと、
前記収容室に開口する吸入口と、
前記収容室内の油を前記吸入口から吸入して吐出するオイルポンプと、
前記吸入口と前記オイルポンプとを接続する吸入油路に配置されたストレーナと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記ロータの回転軸心に平行な方向を軸方向とし、前記収容室における油の貯留部を含む領域を対象領域として、
前記ストレーナは、中心線に沿って延びる筒状に形成され、
前記吸入口は、前記ストレーナよりも、前記軸方向における前記対象領域の中央側に配置され、
前記吸入口の上端が、前記ストレーナの入口の上端よりも下側に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記ストレーナは、前記中心線が水平方向に沿うように配置され、
前記吸入口の上下方向の寸法は、前記ストレーナの入口の上下方向の寸法よりも小さく、
前記吸入口の上端が、前記ストレーナの前記中心線よりも下側に配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記吸入油路における前記吸入口から前記ストレーナの入口までの長さが、前記吸入油路における前記ストレーナの出口から前記オイルポンプの入口までの長さよりも長い、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記ケースは、第1ケース部と、前記第1ケース部に対して前記軸方向第1側から接合される第2ケース部と、を備え、
前記吸入口が前記第1ケース部に設けられ、
前記ストレーナは、前記第2ケース部における前記軸方向第2側に開口する収容孔に収容され、
前記ストレーナの前記軸方向第2側の端面と、前記第1ケース部の前記軸方向第1側を向く面とが対向している、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを備えた回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、ロータと出力部材との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、ケースと、オイルポンプと、ストレーナと、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置の一例が、特開2020-148297号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。特許文献1の駆動装置(14)は、電動モータ(48)と、動力伝達機構(16)と、ケース(18)と、オイルポンプ(56,66)と、オイルストレーナ(30)と、を備えている。ケース(18)の下部にはオイルが貯留されるオイル貯留部(32)が形成されており、オイル貯留部(32)に、オイル内の異物を除去するためのオイルストレーナ(30)が配置されている。そして、オイルストレーナ(30)の鉛直方向の下部に、オイルポンプ(56,66)の駆動時にオイルが吸入される吸入口(34,36)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オイルポンプの駆動時に油が吸入される吸入口は、当該吸入口から空気が吸い込まれ難い位置に配置することが望まれるが、車両用駆動装置の小型化の要求や最低地上高による制約等から、ケース内には空間の余裕が少ないのが通常である。この点に関して、特許文献1の車両用駆動装置では、吸入口がストレーナの下側に配置されるため、吸入口の配置位置が、吸入口の上側にストレーナの配置スペースを確保可能な位置に限定される。そのため、車両用駆動装置の構成によっては、空気の吸い込みが発生し難い位置に吸入口を配置することが難しくなり、ケース内に封入される油の量を多くする等の対策が別途必要となる場合がある。
【0005】
そこで、吸入口からケース内の油を吸入するオイルポンプを備える場合に、空気の吸い込みが発生し難い位置に吸入口を配置することが容易な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用駆動装置は、ロータを備えた回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記ロータと前記出力部材との間の動力伝達を行う動力伝達機構と、収容室を備え、当該収容室に前記回転電機、前記動力伝達機構、及び、油が収容されたケースと、前記収容室に開口する吸入口と、前記収容室内の油を前記吸入口から吸入して吐出するオイルポンプと、前記吸入口と前記オイルポンプとを接続する吸入油路に配置されたストレーナと、を備えた車両用駆動装置であって、前記ロータの回転軸心に平行な方向を軸方向とし、前記収容室における油の貯留部を含む領域を対象領域として、前記ストレーナは、中心線に沿って延びる筒状に形成され、前記吸入口は、前記ストレーナよりも、前記軸方向における前記対象領域の中央側に配置され、前記吸入口の上端が、前記ストレーナの入口の上端よりも下側に配置されている。
【0007】
本構成によれば、吸入口を軸方向における対象領域の中央側に配置しつつ、ストレーナを吸入口に対して軸方向に離した位置に配置することができる。そのため、軸方向における対象領域の中央側にストレーナの配置スペースがない場合であっても、吸入口を、軸方向における対象領域の中央側に配置することができる。これにより、ケース内の油が軸方向のいずれの側に偏った場合であっても吸入口から空気が吸い込まれる可能性を低減しやすい。更に、本構成では、吸入口の上端をストレーナの入口の上端よりも下側に配置しており、この点からも、吸入口から空気が吸い込まれる可能性を低減しやすい。このように、本構成によれば、空気の吸い込みが発生し難い位置に吸入口を配置することが容易となっている。
【0008】
車両用駆動装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
【
図2】実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
【
図3】実施形態に係るケースの内部を軸方向第2側から見た図
【
図4】実施形態に係る車両用駆動装置を軸方向及び上下方向に直交する方向の一方側から見た図
【
図5】実施形態に係る車両用駆動装置を下側から見た図
【
図6】実施形態に係るストレーナの周辺の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、車両用駆動装置100は、ロータ10を備えた回転電機1と、車輪Wに駆動連結される出力部材2と、ロータ10と出力部材2との間の動力伝達を行う動力伝達機構3と、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、車輪Wにそれぞれ駆動連結される一対の出力部材2(第1出力部材21及び第2出力部材22)を備えており、動力伝達機構3は、ロータ10と一対の出力部材2との間の動力伝達を行う。
図2に示すように、第1出力部材21は、左右一対の車輪Wの一方に駆動連結され、第2出力部材22は、左右一対の車輪Wの他方に駆動連結される。車両用駆動装置100は、回転電機1の出力トルクを車輪W(本実施形態では、左右一対の車輪W)に伝達させて、車両用駆動装置100が搭載された車両を走行させる。車両用駆動装置100が搭載される車両に、回転電機1とは別の駆動力源(例えば、内燃機関)が設けられ、車両用駆動装置100が、回転電機1及び当該別の駆動力源の出力トルクを車輪Wに伝達させる構成とすることもできる。
【0011】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。但し、遊星歯車機構の回転要素について「駆動連結」という場合には、当該遊星歯車機構が備える他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
【0012】
また、本明細書では、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの要素の配置に関して、「特定方向の配置領域が重複する」とは、一方の要素の特定方向の配置領域内に、他方の要素の特定方向の配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
【0013】
以下の説明では、ロータ10の回転軸心Xに平行な方向を「軸方向L」とし、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。また、回転軸心Xに直交する方向を「径方向R」とし、径方向Rにおいて、回転軸心Xの側を「径方向内側R1」とし、その反対側を「径方向外側R2」とする。
【0014】
また、車両用駆動装置100が車両に搭載された車両搭載状態において、鉛直方向に沿う方向を「上下方向V」とし、鉛直上側を「上側V1」とし、鉛直下側を「下側V2」とする。本実施形態では、車両用駆動装置100は、軸方向Lが、水平方向である車両左右方向に沿う向きで車両に搭載される。そのため、軸方向L及び上下方向Vに直交する方向(
図3における左右方向、
図4における紙面に直交する方向、
図5における上下方向)は、車両前後方向(車両左右方向に直交する水平方向)に沿う方向となる。なお、本明細書において、「特定方向に沿う」とは、特定方向に平行な態様に限らず、特定方向に対して多少傾斜している態様も含む。
【0015】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、ケース4を備えている。ケース4は収容室Sを備え、当該収容室Sに、回転電機1及び動力伝達機構3が収容されている。本実施形態では、収容室Sは、ケース4が備える区画壁44によって、第1収容室S1と第2収容室S2とに軸方向Lに区画されている。第1収容室S1は、第2収容室S2に対して軸方向第1側L1に配置されている。第1収容室S1に回転電機1が収容され、第2収容室S2に動力伝達機構3が収容されている。
【0016】
本実施形態では、ケース4は、第1ケース部材41と、第1ケース部材41に対して軸方向第1側L1から接合される第2ケース部材42と、第1ケース部材41に対して軸方向第2側L2から接合される第3ケース部材43と、を備えている。収容室Sは、第1ケース部材41、第2ケース部材42、及び第3ケース部材43により囲まれて形成されている。第1ケース部材41は、回転電機1を径方向外側R2から覆うように配置されている。第2ケース部材42は、回転電機1を軸方向第1側L1から覆うように配置されている。第3ケース部材43は、動力伝達機構3を径方向外側R2及び軸方向第2側L2から覆うように配置されている。区画壁44は、回転電機1と動力伝達機構3との軸方向Lの間に配置されている。ここでは、第3ケース部材43が区画壁44を備えている。本実施形態では、第1ケース部材41及び第3ケース部材43が「第1ケース部」に相当し、第2ケース部材42が「第2ケース部」に相当する。
【0017】
図示の例では、第1ケース部材41は、軸方向Lに延びる筒状に形成されている。第2ケース部材42は、蓋状に形成されている。第2ケース部材42には、第1出力部材21を後述する第1ドライブシャフト23に連結する(本例では、後述する連結軸37を介して連結する)ための貫通孔が形成されている。第3ケース部材43は、軸方向Lに延びると共に軸方向第2側L2に底部を備える有底筒状に形成されている。第3ケース部材43の底部には、第2出力部材22を後述する第2ドライブシャフト24に連結するための貫通孔が形成されている。第2ケース部材42は、第1ケース部材41の軸方向第1側L1の開口部を塞ぐように、第1ケース部材41に接合されている。第3ケース部材43は、第1ケース部材41の軸方向第2側L2の開口部を塞ぐように、第1ケース部材41に接合されている。区画壁44は、第3ケース部材43における軸方向Lに延びる筒状部に固定されている。
【0018】
回転電機1は、車輪W(本実施形態では、左右一対の車輪W)の駆動力源として機能する。本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。図示は省略するが、回転電機1は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置と電気的に接続されている。回転電機1は、蓄電装置に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、回転電機1は、車輪Wの側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置を充電する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、回転電機1は、ステータ13とロータ10とを備えている。ステータ13は、円筒状のステータコア14を備えている。ステータコア14は、ケース4(ここでは、第1ケース部材41)に固定されている。ステータコア14にはコイルが巻装されており、コイルにおけるステータコア14から軸方向Lに突出する部分により、コイルエンド部15が形成されている。
【0020】
ロータ10は、円筒状のロータコア11を備えている。ロータコア11は、ステータコア14に対して回転可能に、ケース4に支持されている。ロータコア11は、ロータ軸12と一体的に回転するようにロータ軸12に連結されている。本実施形態では、回転電機1は、インナロータ型の回転電機であり、ロータコア11は、ステータコア14に対して径方向内側R1に配置されている。また、本実施形態では、回転電機1は、回転界磁型の回転電機であり、ロータコア11には、不図示の永久磁石が設けられている。
【0021】
本実施形態では、動力伝達機構3は、遊星歯車機構36と、差動歯車機構30と、を備えている。本実施形態では、回転電機1、遊星歯車機構36、及び差動歯車機構30は、同軸上に配置されている。回転電機1、遊星歯車機構36、及び差動歯車機構30は、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向かって記載の順に配置されている。
【0022】
遊星歯車機構36は、回転電機1の側から伝達される回転を変速して出力部材2の側に出力する。本実施形態では、遊星歯車機構36は、ロータ10の回転を減速して差動歯車機構30に伝達する減速機として機能する。
【0023】
図1及び
図2に示す例では、遊星歯車機構36は、サンギヤSGと、キャリヤCRと、第1リングギヤRG1と、第2リングギヤRG2と、を備えている。キャリヤCRは、互いに一体的に回転する第1ピニオンギヤPG1及び第2ピニオンギヤPG2を回転自在に支持している。第2ピニオンギヤPG2は、第1ピニオンギヤPG1よりも小径に形成されている。サンギヤSG及び第1リングギヤRG1は、第1ピニオンギヤPG1に噛み合い、第2リングギヤRG2は、第2ピニオンギヤPG2に噛み合っている。そして、サンギヤSGは、ロータ軸12と一体的に回転するようにロータ軸12に連結され、第1リングギヤRG1は、ケース4(ここでは、区画壁44)に固定され、第2リングギヤRG2は、差動歯車機構30に駆動連結されている。本例では、第2リングギヤRG2は、差動歯車機構30の後述する差動ケース35と一体的に回転するように差動ケース35に連結されている。
【0024】
差動歯車機構30は、回転電機1のトルクを一対の出力部材2に分配する。本実施形態では、差動歯車機構30は、遊星歯車機構36を介して伝達される回転電機1のトルクを一対の出力部材2に分配する。差動歯車機構30は、第1出力部材21に駆動連結される第1サイドギヤ31と、第2出力部材22に駆動連結される第2サイドギヤ32と、を備えている。差動歯車機構30は、回転電機1のトルクを第1サイドギヤ31と第2サイドギヤ32とに分配することで、回転電機1のトルクを第1出力部材21と第2出力部材22とに分配する。本実施形態では、第1出力部材21は、第1サイドギヤ31と一体的に形成された部材であり、第2出力部材22は、第2サイドギヤ32と一体的に形成された部材である。具体的には、第1出力部材21は、第1サイドギヤ31と一体的に形成されて軸方向Lに延びる筒状の部材であり、第2出力部材22は、第2サイドギヤ32と一体的に形成されて軸方向Lに延びる筒状の部材である。なお、本明細書では、「一体的に形成」とは、複数の要素が同じ部材で構成されていること、及び、複数の要素が溶接等により分離不能に連結されていることを含む。
【0025】
本実施形態では、差動歯車機構30は、傘歯車式の差動歯車機構である。差動歯車機構30は、差動ケース35と、第1サイドギヤ31と、第2サイドギヤ32と、ピニオンギヤ33(本例では、一対のピニオンギヤ33)と、ピニオン軸34と、を備えている。第1サイドギヤ31、第2サイドギヤ32、及びピニオンギヤ33は、いずれも傘歯車である。差動ケース35は、第1サイドギヤ31、第2サイドギヤ32、及びピニオンギヤ33を収容している。ピニオンギヤ33は、差動ケース35と一体的に回転するピニオン軸34によって、回転自在に支持されている。第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32は、ピニオンギヤ33に噛み合っている。第1サイドギヤ31は、ピニオン軸34に対して軸方向第1側L1に配置され、第2サイドギヤ32は、ピニオン軸34に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0026】
図2に示すように、車両用駆動装置100が搭載される車両には、第1ドライブシャフト23と第2ドライブシャフト24とが設けられている。第1ドライブシャフト23は、例えば等速ジョイントを介して、軸方向第1側L1の車輪Wに連結され、第2ドライブシャフト24は、例えば等速ジョイントを介して、軸方向第2側L2の車輪Wに連結される。第1出力部材21は、第1ドライブシャフト23と一体的に回転するように第1ドライブシャフト23に連結され、第2出力部材22は、第2ドライブシャフト24と一体的に回転するように第2ドライブシャフト24に連結される。本実施形態では、第1出力部材21は、ロータ軸12及び遊星歯車機構36に対して径方向内側R1を軸方向Lに沿って延在する連結軸37を介して、第1ドライブシャフト23に連結される。
【0027】
ケース4が備える収容室Sには、回転電機1及び動力伝達機構3に加えて油が収容されている。油は、回転電機1及び動力伝達機構3の冷却及び潤滑を行うための油である。例えば、コイルエンド部15等の回転電機1の発熱部位に供給された油によって、発熱部位が冷却される。また、動力伝達機構3におけるギヤや軸受等の潤滑対象部位に供給された油によって、潤滑対象部位が潤滑される。
【0028】
油は、収容室Sの底部(下側V2の部分)に形成される貯留部7(
図3、
図4参照)に貯留される。貯留部7に貯留される油は、上記の発熱部位や潤滑対象部位等の油の供給対象箇所に供給された後、貯留部7に戻される。このような油の循環は、後述するオイルポンプ5の駆動によって行われ、或いは、オイルポンプ5の駆動に加えてギヤ等の回転部材による油の掻き上げによって行われる。
【0029】
収容室Sにおける油面OL(
図4参照)の高さは、車両用駆動装置100の状態によって変動するが、例えば、収容室Sにおける油面OLよりも下側V2になる場合がある部分(言い換えれば、油面OLの変化範囲における最も高い油面OLよりも下側V2の部分)を、貯留部7と定義することができる。なお、ここでの油面OLは、車両用駆動装置100が搭載された車両に重力加速度以外の加速度が作用せず、当該車両の車体が水平な状態における油面である。
【0030】
本実施形態では、貯留部7は、収容室Sの底部の全域に亘って形成されている。具体的には、貯留部7は、第1収容室S1の底部と第2収容室S2の底部とに亘って形成されている。図示は省略するが、区画壁44には第1収容室S1と第2収容室S2とを連通する連通口が形成されている。この連通口を介して、第1収容室S1と第2収容室S2との間で油が流動可能となっている。なお、貯留部7は、収容室Sの底部における一部の領域(例えば、軸方向Lの一部の領域)に形成されてもよい。例えば、貯留部7が第1収容室S1の底部のみに形成される構成や、貯留部7が第2収容室S2の底部のみに形成される構成とすることができる。
【0031】
図4及び
図5に示すように、車両用駆動装置100は、収容室Sに開口する吸入口9と、収容室S内の油を吸入口9から吸入して吐出するオイルポンプ5と、吸入口9とオイルポンプ5とを接続する吸入油路90に配置されたストレーナ6と、を備えている。吸入口9は、収容室Sにおける油の貯留部7に開口している。ストレーナ6は、吸入口9から吸入された油に含まれる異物を除去するための濾過器である。オイルポンプ5として、例えば、内接歯車ポンプ、外接歯車ポンプ、或いはベーンポンプを用いることができる。本実施形態では、オイルポンプ5は、回転電機1とは別の専用の電動モータにより駆動される電動ポンプである。なお、オイルポンプ5は、動力伝達機構3を伝わる駆動力(言い換えれば、回転電機1の駆動力)により駆動される機械式ポンプであってもよい。
【0032】
吸入口9は、第1収容室S1に開口していても、第2収容室S2に開口していてもよい。また、吸入口9は、いずれの方向に開口していてもよい。
図3~
図5に示す例では、吸入口9は、第1収容室S1において軸方向第2側L2に開口している。
図3に示す例では、吸入口9は、第1ケース部材41における軸方向第2側L2を向く面に開口している。このような例とは異なり、例えば、吸入口9が、第2収容室S2において軸方向第2側L2に開口する構成とすることもできる。この場合、吸入口9は、例えば、第3ケース部材43(例えば、第3ケース部材43が備える区画壁44)における軸方向第2側L2を向く面に開口するように設けられる。
【0033】
図6に示すように、ストレーナ6は、中心線Cに沿って延びる筒状に形成されている。ストレーナ6における中心線Cに沿う方向の端部には、油が流入する入口6aが形成されている。ここで、中心線Cは、ストレーナ6の断面図形(延在方向に直交する断面の図形)の重心(幾何学的重心)を通る仮想線である。また、「筒状」は、円筒状及び多角筒状(例えば、四角筒状)を含み、延在方向の位置によって寸法が異なる形状(例えば、段付き形状、円錐状や円錐台状等の先細り形状)に形成されてもよい。本実施形態では、ストレーナ6は、中心線Cに沿って延びる円筒状に形成されている。
【0034】
ストレーナ6は、油を濾過する機能を有する本体部60を備えている。本体部60は、中心線Cに沿う方向に延びると共に当該方向の一方側(具体的には、入口6aが形成されている側とは反対側)に底部を備える有底筒状に形成されている。詳細は省略するが、本体部60(例えば、本体部60における軸方向Lに延びる筒状部)には、多孔状或いは網目状に形成された濾過部が設けられている。ストレーナ6の入口6aから本体部60の内部に流入した油は、本体部60に設けられた濾過部を通過することで濾過された後、本体部60の外部に流出する。そのため、ストレーナ6の出口6bは、本体部60の外面に形成されている(
図6参照)。
【0035】
軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lの他方側を軸方向第2側L2として、本実施形態では、上述したように、ケース4は、第1ケース部(第1ケース部材41及び第3ケース部材43)と、第1ケース部(ここでは、第1ケース部材41)に対して軸方向第1側L1から接合される第2ケース部(第2ケース部材42)と、を備えている。そして、本実施形態では、吸入口9が、第1ケース部(
図3~
図5に示す例では、第1ケース部材41)に設けられ、ストレーナ6は、
図6に示すように、第2ケース部(第2ケース部材42)における軸方向第2側L2に開口する収容孔42aに収容されている。そして、ストレーナ6の軸方向第2側L2の端面と、第1ケース部(ここでは、第1ケース部材41)の軸方向第1側L1を向く面とが対向している。
【0036】
このような本実施形態の車両用駆動装置100によれば、ストレーナ6を第2ケース部(第2ケース部材42)の収容孔42aに収容し、第1ケース部(ここでは、第1ケース部材41)と第2ケース部(第2ケース部材42)とを接合することで、ストレーナ6を収容孔42aの内部に保持することができる。従って、例えばボルトやブラケット等の保持部材を必要とせず、ストレーナ6をケース4に保持することができる。
【0037】
図6に示すように、収容孔42aは軸方向Lに延びるように形成されている。そして、ストレーナ6は、中心線Cが軸方向Lに沿うように配置されている。そのため、ストレーナ6の入口6aは、軸方向Lに(具体的には、軸方向第2側L2に)開口している。ストレーナ6の本体部60は、収容孔42aの内面との間に隙間が形成されるように配置されており、当該隙間を油が流動可能となっている。
図6に示す例では、ストレーナ6は、収容孔42aの内周面に嵌合する嵌合部61を備えている。嵌合部61は、本体部60における軸方向第2側L2の端部に連結されている。嵌合部61は、例えば、本体部60と一体的に形成される。嵌合部61は、ストレーナ6の入口6aに設けられており、嵌合部61の内周面によって囲まれる空間が、ストレーナ6の入口6aを構成している。図示の例では、嵌合部61と収容孔42aとの間には、シール部材62が配置されている。また、図示の例では、収容孔42aの内周面には、軸方向第2側L2を向く段差面が形成されており、嵌合部61は、当該段差面と第1ケース部材41とによって、軸方向Lの両側から位置決め保持されている。なお、第1ケース部材41の軸方向第1側L1を向く面は、ストレーナ6の軸方向第2側L2の端面(ここでは、嵌合部61の軸方向第2側L2の端面)と接触する必要はなく、これら2つの面の間に、ストレーナ6を収容孔42aの内部に適切に保持できる程度の隙間が形成されていてもよい。
【0038】
ここで、収容室Sにおける油の貯留部7を含む領域を対象領域Aとする。本実施形態では、
図1に示すように、対象領域Aを、収容室Sの配置領域の全域としている。なお、貯留部7が、収容室Sにおける一部の領域にのみ形成される場合にも、対象領域Aを、収容室Sの配置領域の全域としてもよいが、この場合には、貯留部7の配置領域を限度として、対象領域Aを、収容室Sの配置領域よりも小さい領域(例えば、貯留部7の配置領域と同じ領域)としてもよい。
【0039】
上記のように、本実施形態では、対象領域Aが、収容室Sの配置領域の全域とされる。そのため、軸方向L又は後述する幅方向を「特定方向」として、後述する「特定方向における対象領域Aの中央側」は、特定方向における収容室Sの中央側と同義であり、後述する「対象領域Aの特定方向の中央部」は、収容室Sの特定方向の中央部と同義である。なお、例えば、対象領域Aを、油の貯留部7と同じ領域とする場合には、「特定方向における対象領域Aの中央側」は、特定方向における貯留部7の中央側と同義となり、「対象領域Aの特定方向の中央部」は、貯留部7の特定方向の中央部と同義となる。
【0040】
図4及び
図5では対象領域Aの図示を省略しているが、
図1も参照することで明らかなように、吸入口9は、ストレーナ6よりも、軸方向Lにおける対象領域Aの中央側に配置されている。すなわち、吸入口9から対象領域Aの軸方向Lの中央部までの軸方向Lの距離は、ストレーナ6から対象領域Aの軸方向Lの中央部までの軸方向Lの距離よりも短い。このように吸入口9を、軸方向Lにおける対象領域Aの中央側に配置することで、ケース4内の油が軸方向Lのいずれの側に偏った場合であっても、吸入口9から空気が吸い込まれる可能性を低減しやすい。
【0041】
図3に示すように、吸入口9の上端は、ストレーナ6の入口6aの上端よりも下側V2に配置されている。このように吸入口9はストレーナ6よりも下側V2に配置されるため、吸入口9を回転電機1との干渉を避けて配置しやすくなっている。
図3に示す例では、軸方向L及び上下方向Vの双方に直交する方向(
図3における左右方向)を「幅方向」として、吸入口9は、回転電機1と幅方向の配置領域が重複するように配置されている。また、
図3に示す例では、吸入口9は、ストレーナ6よりも、幅方向における対象領域Aの中央側に配置されている。すなわち、吸入口9から対象領域Aの幅方向の中央部までの幅方向の距離は、ストレーナ6から対象領域Aの幅方向の中央部までの幅方向の距離よりも短い。
図3では対象領域Aの図示を省略しているが、対象領域Aは、上述したように、収容室Sにおける油の貯留部7を含む領域である。このように吸入口9を、幅方向における対象領域Aの中央側に配置することで、ケース4内の油が幅方向のいずれの側に偏った場合であっても、吸入口9から空気が吸い込まれる可能性を低減しやすい。
【0042】
この車両用駆動装置100では、吸入口9を、ストレーナ6の配置位置とは異なる位置に、油路加工によって形成することができる。そのため、吸入口9の配置自由度を高く確保することができ、上記のように空気の吸い込みが発生し難い位置に吸入口9を配置することが容易となっている。これにより、ケース4内に封入する油の量を低減することも可能となっている。
【0043】
図6に示すように、本実施形態では、ストレーナ6は、中心線Cが水平方向(
図6に示す例では、軸方向L)に沿うように配置されている。そして、
図3に示すように、吸入口9の上下方向Vの寸法D1は、ストレーナ6の入口6aの上下方向Vの寸法D2よりも小さく、吸入口9の上端は、ストレーナ6の中心線Cよりも下側V2に配置されている。
【0044】
このような本実施形態の車両用駆動装置100によれば、ストレーナ6及び吸入口9の上下方向Vの配置スペースを小さく抑えることができる。従って、車両用駆動装置100の上下方向Vの寸法の小型化を図ることができると共に、軸方向Lにおける対象領域Aの中央側の領域に空きスペースが少ない場合であっても、当該領域に吸入口9を配置しやすい。更に、本構成によれば、吸入口9の上端がストレーナ6の中心線Cよりも下側V2に配置されているため、吸入口9から空気が吸い込まれる可能性を低減しやすい。
【0045】
図5及び
図6に示すように、吸入口9とオイルポンプ5とを接続する吸入油路90には、吸入口9とストレーナ6の入口6aとを接続する第1油路91と、ストレーナ6の出口6bとオイルポンプ5の入口5aとを接続する第2油路92とが含まれる。本実施形態では、第1油路91は、回転電機1よりも下側V2であって、上下方向Vに沿う上下方向視で回転電機1と重複するように配置されている。
【0046】
図5に示すように、本実施形態では、吸入油路90における吸入口9からストレーナ6の入口6aまでの長さ(すなわち、第1油路91の長さ)が、吸入油路90におけるストレーナ6の出口6bからオイルポンプ5の入口5aまでの長さ(すなわち、第2油路92の長さ)よりも長い。
【0047】
このような本実施形態の車両用駆動装置100によれば、ストレーナ6の出口6bからオイルポンプ5の入口5aまでの負圧が大きくなる油路の区間を短く抑えることができる。従って、オイルポンプ5に吸入される油の管路抵抗を小さく抑えやすく、オイルポンプ5の効率を高めやすい。
【0048】
図6に示す例では、第1油路91におけるストレーナ6の入口6a側の端部は、第1ケース部材41におけるストレーナ6の軸方向第2側L2の端面と対向する部分に開口している。また、第2油路92におけるストレーナ6の出口6b側の端部は、第2ケース部材42における収容孔42aの内面に開口している。なお、車両用駆動装置100が備える油路(第1油路91及び第2油路92、並びに後述する各油路)は、少なくとも一部がケース4の外部に配置されていてもよい。
【0049】
オイルポンプ5が吐出した油は、油の供給対象箇所に供給される。
図4及び
図5に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、油と冷媒(例えば、冷却水)との間での熱交換によって油を冷却するオイルクーラ8を備えており、オイルポンプ5が吐出した油は、第3油路93(
図1参照)を通ってオイルクーラ8に供給される。そして、オイルクーラ8にて冷却された後の油が、油の供給対象箇所に供給される。
【0050】
本実施形態では、オイルポンプ5が吐出した油の供給対象箇所に、回転電機1と動力伝達機構3とが含まれている。具体的には、
図1に示すように、オイルポンプ5が吐出した油は、オイルクーラ8を通った後、第6油路96に供給される。第6油路96は、コイルエンド部15に対して径方向外側R2において、軸方向Lに延在するように形成されている。第6油路96には、コイルエンド部15に向けて油を供給する供給孔が形成されており、第6油路96内の油は、コイルエンド部15を冷却するために、当該供給孔からコイルエンド部15に供給される。
【0051】
また、オイルポンプ5が吐出した油は、オイルクーラ8を通った後、第4油路94を経由して第5油路95に供給される。第5油路95は、連結軸37の内部を軸方向Lに延在するように形成されている。第5油路95内の油は、回転電機1を冷却するために、回転電機1に対して径方向内側R1から供給される。また、第5油路95内の油は、動力伝達機構3の各部(ギヤや軸受等)を潤滑するために、動力伝達機構3に対して供給される。
【0052】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、ストレーナ6が、中心線Cが水平方向(具体的には、軸方向L)に沿うように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、ストレーナ6の中心線Cが沿う方向は、軸方向L以外の方向(例えば、軸方向Lに対して90度又は90度未満の角度で交差する水平方向、上下方向Vに沿う方向、水平面に対して90度未満の角度で傾斜した方向)であってもよい。
【0053】
(2)上記の実施形態では、吸入油路90における吸入口9からストレーナ6の入口6aまでの長さ(すなわち、第1油路91の長さ)が、吸入油路90におけるストレーナ6の出口6bからオイルポンプ5の入口5aまでの長さ(すなわち、第2油路92の長さ)よりも長い構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1油路91の長さと第2油路92の長さとが同じ構成や、第1油路91の長さが第2油路92の長さよりも短い構成とすることもできる。
【0054】
(3)上記の実施形態では、吸入口9の上下方向Vの寸法D1が、ストレーナ6の入口6aの上下方向Vの寸法D2よりも小さく、吸入口9の上端が、ストレーナ6の中心線Cよりも下側V2に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、吸入口9の上下方向Vの寸法D1が、ストレーナ6の入口6aの上下方向Vの寸法D2と同じである構成や、吸入口9の上下方向Vの寸法D1が、ストレーナ6の入口6aの上下方向Vの寸法D2よりも大きい構成とすることもできる。また、吸入口9の上端が、ストレーナ6の中心線Cと上下方向Vの同じ位置に配置される構成や、吸入口9の上端が、ストレーナ6の中心線Cよりも上側V1であって、ストレーナ6の入口6aの上端よりも下側V2に配置される構成とすることもできる。
【0055】
(4)上記の実施形態では、収容孔42aに収容されたストレーナ6の軸方向第2側L2の端面と、第1ケース部材41の軸方向第1側L1を向く面とが対向する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、ストレーナ6を、ボルトやブラケット等の保持部材を用いて、収容孔42aの内部に保持する構成とすることもできる。
【0056】
(5)上記の実施形態で示した動力伝達機構3の構成は一例であり、動力伝達機構3の構成は適宜変更することができる。例えば、動力伝達機構3が備える遊星歯車機構36が、互いに径の異なる2つのピニオンギヤ(第1ピニオンギヤPG1及び第2ピニオンギヤPG2)を備えるダブルピニオン型ではなく、シングルピニオン型であってもよい。また、動力伝達機構3は、クラッチやブレーキ等の係合要素を含んでいてもよい。更に、遊星歯車機構36が、ロータ10の回転を増速して差動歯車機構30に伝達する増速機として機能する構成や、遊星歯車機構36が、選択された変速段に応じた変速比でロータ10の回転を変速して差動歯車機構30に伝達する変速機であっても良い。
【0057】
また、動力伝達機構3が遊星歯車機構36及び差動歯車機構30の一方又は双方を備えない構成とすることもできる。例えば、動力伝達機構3が遊星歯車機構36を備えず、動力伝達機構3が、ロータ10の回転をそのまま差動歯車機構30に伝達する構成であってもよい。また、回転電機1と差動歯車機構30とが別軸に配置され、動力伝達機構3が、遊星歯車機構36に代えてカウンタギヤ機構を備える構成とすることもできる。更に、動力伝達機構3が差動歯車機構30を備えず、動力伝達機構3が、ロータ10と1つの出力部材2との間の動力伝達を行う構成とすることもできる。この場合、車両用駆動装置100は、例えば、車輪Wに取り付けられて当該車輪Wを駆動するインホイールタイプの駆動装置とされる。
【0058】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:回転電機、2:出力部材、3:動力伝達機構、4:ケース、5:オイルポンプ、5a:オイルポンプの入口、6:ストレーナ、6a:ストレーナの入口、6b:ストレーナの出口、7:貯留部、9:吸入口、10:ロータ、41:第1ケース部材(第1ケース部)、42:第2ケース部材(第2ケース部)、42a:収容孔、43:第3ケース部材(第1ケース部)、90:吸入油路、100:車両用駆動装置、A:対象領域、C:中心線、D1:吸入口の上下方向の寸法、D2:ストレーナの入口の上下方向の寸法、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、S:収容室、V:上下方向、V2:下側、W:車輪、X:回転軸心