(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145315
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】触覚提示装置、触覚提示システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05G 5/03 20080401AFI20241004BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20241004BHJP
G06F 3/04847 20220101ALI20241004BHJP
【FI】
G05G5/03 Z
G06F3/01 560
G06F3/04847
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057606
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 修一
(72)【発明者】
【氏名】木野井 慶介
【テーマコード(参考)】
3J070
5E555
【Fターム(参考)】
3J070AA03
3J070AA06
3J070AA07
3J070BA19
3J070BA51
3J070CA42
3J070CB02
3J070CB37
3J070CC71
5E555AA08
5E555AA23
5E555AA76
5E555BA06
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC04
5E555BC17
5E555CA06
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5E555CA12
5E555CA43
5E555CA48
5E555CB12
5E555CB19
5E555CB21
5E555CB45
5E555CB48
5E555CC01
5E555CC05
5E555DA24
5E555DB41
5E555DC13
5E555DD02
5E555DD06
5E555DD11
5E555EA07
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】様々なオブジェクトの疑似的な触覚を従来よりもリアルに提示することができる触覚提示装置等を提供すること。
【解決手段】基部2と、ユーザの操作によって基部2に対して変位するように設けられた変位部3と、変位部3の変位に対して付与する抵抗を発生する抵抗発生部6と、を備える。抵抗発生部6は、基部2に固定された非回転部62と、非回転部62に対して回転可能に設けられた回転部61と、非回転部62と回転部61の相対回転に対し抵抗を付与する回転抵抗付与機構63と、を有する。そして、ユーザが操作する際に触れる変位部3の一部または変位部3全体が着脱可能に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
ユーザの操作によって前記基部に対して変位するように設けられた変位部と、
前記変位部の変位に対して付与する抵抗を発生する抵抗発生部と、
を備え、
前記抵抗発生部は、
前記基部に固定された非回転部と、
前記非回転部に対して回転可能に設けられた回転部と、
前記非回転部と前記回転部の相対回転に対し抵抗を付与する回転抵抗付与機構と、
を有する、触覚提示装置であって、
前記ユーザが操作する際に触れる前記変位部の一部または前記変位部全体が着脱可能に設けられている、
ことを特徴とする触覚提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の触覚提示装置と、
前記触覚提示装置に前記抵抗に関する情報を送信する情報処理端末と、
を備え、
前記変位部においてオブジェクトの疑似的な触覚を提示することが可能な触覚提示システムであって、
前記情報処理端末は、
前記変位部の所定位置からの変位量と、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御するための抵抗制御情報とを対応付けた前記オブジェクトの触覚情報を記憶し、着脱可能に設けられた前記変位部の一部または前記変位部全体である着脱部材の材質情報と、補正係数とを対応付けた補正情報を記憶する記憶部と、
前記材質情報の指定を受け付ける材質指定受付部と、
前記記憶部から前記オブジェクトの触覚情報を読み出すとともに、前記材質指定受付部が受け付けた前記材質情報に対応する補正係数を前記補正情報から読み出し、読み出した当該触覚情報および当該補正係数を前記触覚提示装置に送信する情報処理部と、
を有し、
前記触覚提示装置は、前記情報処理端末が送信した前記触覚情報および前記補正係数を装置側通信部を介して受信し、受信した前記触覚情報および前記補正係数と、前記変位部の所定位置からの変位量とに基づいて、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御する制御部を有する、
ことを特徴とする触覚提示システム。
【請求項3】
請求項2に記載の触覚提示システムであって、
前記情報処理部は、前記触覚情報および前記補正係数を前記触覚提示装置に送信する代わりに、前記触覚情報に含まれる前記抵抗制御情報と前記補正係数に基づき得られる補正後の触覚情報を前記触覚提示装置に送信し、
前記触覚提示装置の前記制御部は、前記情報処理端末が送信した前記補正後の触覚情報を装置側通信部を介して受信し、受信した前記補正後の触覚情報と、前記変位部の所定位置からの変位量とに基づいて、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御する、
ことを特徴とする触覚提示システム。
【請求項4】
請求項1に記載の触覚提示装置と、
前記触覚提示装置に前記抵抗に関する情報を送信する情報処理端末と、
を備え、
前記変位部においてオブジェクトの疑似的な触覚を提示することが可能な触覚提示システムであって、
前記情報処理端末は、
着脱可能に設けられた前記変位部の一部または前記変位部全体である着脱部材の材質情報ごとに、前記変位部の所定位置からの変位量と前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御するための抵抗制御情報とを対応付けた触覚情報を記憶する記憶部と、
前記材質情報の指定を受け付ける材質指定受付部と、
前記オブジェクトと前記材質指定受付部が受け付けた材質との両方に対応する触覚情報を前記記憶部から読み出して、前記触覚提示装置に送信する情報処理部と、
を有し、
前記触覚提示装置は、前記情報処理端末が送信した前記触覚情報を装置側通信部を介して受信し、受信した前記触覚情報と、前記変位部の所定位置からの変位量とに基づいて、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御する制御部を有する、
ことを特徴とする触覚提示システム。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載の触覚提示システムであって、
前記着脱部材に、1次元コードまたは2次元コードが表示されており、
前記情報処理端末は、前記1次元コードまたは2次元コードを読み取るコード読取装置を有しており、
前記情報処理端末の前記材質指定受付部は、前記コード読取装置が読み取ったコード読取情報に含まれる情報を、指定された材質情報として受け付ける、
ことを特徴とする触覚提示システム。
【請求項6】
請求項2~4の何れか1項に記載の触覚提示システムであって、
前記情報処理端末は、ユーザによる情報の入力を受け付ける情報入力部を有しており、
前記情報処理端末の前記材質指定受付部は、ユーザが前記情報入力部を用いて指定した材質情報を、指定された材質情報として受け付ける、
ことを特徴とする触覚提示システム。
【請求項7】
請求項2~4の何れか1項に記載の触覚提示システムであって、
前記着脱部材に、ICタグが設けられており、
前記触覚提示装置は、前記ICタグの情報を読み取るICタグ読取装置と、前記ICタグ読取装置が読み取ったICタグ読取情報を前記情報処理端末に送信する装置側通信部と、を有しており、
前記情報処理端末の前記材質指定受付部は、前記装置側通信部から受信する前記ICタグ読取情報に含まれる材質情報を、指定された材質情報として受け付ける、
ことを特徴とする触覚提示システム。
【請求項8】
基部と、ユーザの操作によって前記基部に対して変位するように設けられた変位部と、前記変位部の変位に対して付与する抵抗を発生する抵抗発生部と、を備え、前記抵抗発生部は、前記基部に固定された非回転部と、前記非回転部に対して回転可能に設けられた回転部と、前記非回転部と前記回転部の相対回転に対し抵抗を付与する回転抵抗付与機構と、を有し、
前記ユーザが操作する際に触れる前記変位部の一部または前記変位部全体が着脱可能に設けられた触覚提示装置にオブジェクトの疑似的な触覚を提示させるプログラムであって、
前記着脱可能に設けられた前記変位部の一部または前記変位部全体である着脱部材の材質情報の指定を受け付ける材質指定受付処理と、
オブジェクトに設定された前記変位部の所定位置からの変位量と、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御するための抵抗制御情報とを対応付けた触覚情報と、前記材質指定受付部が受け付けた前記材質情報に対応する補正係数とを読み出す処理と、
読み出した当該触覚情報および当該補正係数を送信する処理
を実行することを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムであって、
前記触覚情報および前記補正係数を送信する代わりに、前記触覚情報に含まれる前記抵抗制御情報と前記補正係数に基づき得られる補正後の触覚情報を送信する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項10】
基部と、ユーザの操作によって前記基部に対して変位するように設けられた変位部と、前記変位部の変位に対して付与する抵抗を発生する抵抗発生部と、を備え、前記抵抗発生部は、前記基部に固定された非回転部と、前記非回転部に対して回転可能に設けられた回転部と、前記非回転部と前記回転部の相対回転に対し抵抗を付与する回転抵抗付与機構と、を有し、
前記ユーザが操作する際に触れる前記変位部の一部または前記変位部全体が着脱可能に設けられた触覚提示装置にオブジェクトの疑似的な触覚を提示させるプログラムであって、
前記着脱可能に設けられた前記変位部の一部または前記変位部全体である着脱部材の材質情報の指定を受け付ける材質指定受付処理と、
前記受け付けた材質情報と、前記変位部の所定位置からの変位量と前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御するための抵抗制御情報とを対応付けた触覚情報を読み出す処理と、
前記読み出した触覚情報を送信する処理、
を実行することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが所定の変位部を変位させる操作を行う際に、ユーザに触覚を提示する触覚提示装置、触覚提示システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ユーザが変位部を変位させる際に、ユーザに所望の力覚(触覚)を提示する触覚提示装置(特許文献1では「力覚提示装置」と称されている。)が開示されている。同文献の力覚提示装置は、所望の力覚を提示するために、変位部が変位する際に、変位部に抗力を与える回転抵抗発生部を備えている。この回転抵抗発生部は、電磁石によって内部に封入された磁気粘性流体に磁場を付与するものであり、電磁石に給電する電流値を制御することで、当該回転抵抗発生部が生じる回転抵抗を制御する。この力覚提示装置では、変位部が押し込まれると、その動作がリンク機構を介して回転動作に変換されて回転抵抗発生部に伝達される。このとき、回転抵抗発生部が回転抵抗を生じることで、その回転抵抗が、リンク機構を介して変位部に伝達され、変位部を押し込むユーザに触覚として提示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の力覚提示装置では、変位部を変位させるときに受ける抗力が触覚としてユーザに提示されるが、ユーザが変位部の表面に触れたときに知覚する触覚(感触)を変えることができない。例えば、変位部の材質がプラスチックである場合は、表面がプラスチック又はプラスチックと似た材質からなる物体のリアルな触覚は提示できても、プラスチックと顕著に異なる材質の物体、例えば、アルミ缶やゴムボールなどに触れたときの触覚をリアルに提示することは難しい。仮に変位部を押し込む際の触覚がアルミ缶やゴムボールを変形させる際に受ける触覚(抗力)と酷似していても、変位部の表面に触れたときの触覚(感触)が想定している物体の材質と異なれば、触覚全体としてのリアリティが損なわれてしまう。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、触覚を提示する仮想物体(オブジェクト)が複数種類あっても、それぞれの仮想物体について触れたときの触覚をリアルに提示することができる触覚提示装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る触覚提示装置は、基部と、ユーザの操作によって前記基部に対して変位するように設けられた変位部と、前記変位部の変位に対して付与する抵抗を発生する抵抗発生部と、を備える。前記抵抗発生部は、前記基部に固定された非回転部と、前記非回転部に対して回転可能に設けられた回転部と、前記非回転部と前記回転部の相対回転に対し抵抗を付与する回転抵抗付与機構と、を有する。前記ユーザが操作する際に触れる前記変位部の一部または前記変位部全体が着脱可能に設けられている。
【0007】
本発明の第2の態様に係る触覚提示システムは、第1の態様に係る触覚提示装置と、前記触覚提示装置に前記抵抗に関する情報を送信する情報処理端末と、を備え、前記変位部においてオブジェクトの疑似的な触覚を提示することが可能な触覚提示システムである。前記情報処理端末は、記憶部と、材質指定受付部と、情報処理部とを有する。前記記憶部は、前記変位部の所定位置からの変位量と、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御するための抵抗制御情報とを対応付けた前記オブジェクトの触覚情報を記憶し、着脱可能に設けられた前記変位部の一部または前記変位部全体である着脱部材の材質情報と、補正係数とを対応付けた補正情報を記憶する。前記材質指定受付部は、前記材質情報の指定を受け付ける。前記情報処理部は、前記記憶部から前記オブジェクトの触覚情報を読み出すとともに、前記材質指定受付部が受け付けた前記材質情報に対応する補正係数を前記補正情報から読み出し、読み出した当該触覚情報および当該補正係数を前記触覚提示装置に送信する。一方、前記触覚提示装置は、前記情報処理端末が送信した前記触覚情報および前記補正係数を装置側通信部を介して受信し、受信した前記触覚情報および前記補正係数と、前記変位部の所定位置からの変位量とに基づいて、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御する制御部を有する。
【0008】
本発明の第3の態様に係る触覚提示システムは、第2の態様に係る触覚提示システムにおいて、前記情報処理部は、前記触覚情報および前記補正係数を前記触覚提示装置に送信する代わりに、前記触覚情報に含まれる前記抵抗制御情報と前記補正係数に基づき得られる補正後の触覚情報を前記触覚提示装置に送信し、前記触覚提示装置の前記制御部は、前記情報処理端末が送信した前記補正後の触覚情報を装置側通信部を介して受信し、受信した前記補正後の触覚情報と、前記変位部の所定位置からの変位量とに基づいて、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御する。
【0009】
本発明の第4の態様に係る触覚提示システムは、第1の態様に係る触覚提示装置と、前記触覚提示装置に前記抵抗に関する情報を送信する情報処理端末と、を備え、前記変位部においてオブジェクトの疑似的な触覚を提示することが可能な触覚提示システムである。
前記情報処理端末は、記憶部と、材質指定受付部と、情報処理部とを有する。前記記憶部は、着脱可能に設けられた前記変位部の一部または前記変位部全体である着脱部材の材質情報ごとに、前記変位部の所定位置からの変位量と前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御するための抵抗制御情報とを対応付けた触覚情報を記憶する。前記材質指定受付部は、前記材質情報の指定を受け付ける。前記情報処理部は、前記オブジェクトと前記材質指定受付部が受け付けた材質との両方に対応する触覚情報を前記記憶部から読み出して、前記触覚提示装置に送信する。前記触覚提示装置は、前記情報処理端末が送信した前記触覚情報を装置側通信部を介して受信し、受信した前記触覚情報と、前記変位部の所定位置からの変位量とに基づいて、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御する制御部を有する。
【0010】
本発明の第5の態様に係る触覚提示システムは、第2~第4の態様に係る触覚提示システムにおいて、前記着脱部材に、1次元コードまたは2次元コードが表示されており、前記情報処理端末は、前記1次元コードまたは2次元コードを読み取るコード読取装置を有しており、前記情報処理端末の前記材質指定受付部は、前記コード読取装置が読み取ったコード読取情報に含まれる情報を、指定された材質情報として受け付ける。
【0011】
本発明の第6の態様に係る触覚提示装置は、第2~第4の態様に係る触覚提示システムにおいて、前記情報処理端末は、ユーザによる情報の入力を受け付ける情報入力部を有しており、前記情報処理端末の前記材質指定受付部は、ユーザが前記情報入力部を用いて指定した材質情報を、指定された材質情報として受け付ける。
【0012】
本発明の第7の態様に係る触覚提示装置は、第2~第4の態様に係る触覚提示システムにおいて、前記着脱部材に、ICタグが設けられており、前記触覚提示装置は、前記ICタグの情報を読み取るICタグ読取装置と、前記ICタグ読取装置が読み取ったICタグ読取情報を前記情報処理端末に送信する装置側通信部と、を有しており、前記情報処理端末の前記材質指定受付部は、前記装置側通信部から受信する前記ICタグ読取情報に含まれる材質情報を、指定された材質情報として受け付ける。
【0013】
本発明の第8の態様に係る発明は、基部と、ユーザの操作によって前記基部に対して変位するように設けられた変位部と、前記変位部の変位に対して付与する抵抗を発生する抵抗発生部と、を備え、前記抵抗発生部は、前記基部に固定された非回転部と、前記非回転部に対して回転可能に設けられた回転部と、前記非回転部と前記回転部の相対回転に対し抵抗を付与する回転抵抗付与機構と、を有し、前記ユーザが操作する際に触れる前記変位部の一部または前記変位部全体が着脱可能に設けられた触覚提示装置にオブジェクトの疑似的な触覚を提示させるプログラムでである。具体的には、次の3つの処理を実行するプログラムである。1つ目の処理は、前記着脱可能に設けられた前記変位部の一部または前記変位部全体である着脱部材の材質情報の指定を受け付ける材質指定受付処理である。2つ目の処理は、オブジェクトに設定された前記変位部の所定位置からの変位量と、前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御するための抵抗制御情報とを対応付けた触覚情報と、前記材質指定受付部が受け付けた前記材質情報に対応する補正係数とを読み出す処理である。3つ目の処理は読み出した当該触覚情報および当該補正係数を送信する処理である。
【0014】
本発明の第9の態様に係る発明は、第8の態様に係るプログラムにおいて、前記触覚情報および前記補正係数を送信する代わりに、前記触覚情報に含まれる前記抵抗制御情報と前記補正係数に基づき得られる補正後の触覚情報を送信するものである。
【0015】
本発明の第10の態様に係る発明は、基部と、ユーザの操作によって前記基部に対して変位するように設けられた変位部と、前記変位部の変位に対して付与する抵抗を発生する抵抗発生部と、を備え、前記抵抗発生部は、前記基部に固定された非回転部と、前記非回転部に対して回転可能に設けられた回転部と、前記非回転部と前記回転部の相対回転に対し抵抗を付与する回転抵抗付与機構と、を有し、前記ユーザが操作する際に触れる前記変位部の一部または前記変位部全体が着脱可能に設けられた触覚提示装置にオブジェクトの疑似的な触覚を提示させるプログラムである。具体的には、次の3つの処理を実行するプログラムである。1つ目の処理は、前記着脱可能に設けられた前記変位部の一部または前記変位部全体である着脱部材の材質情報の指定を受け付ける材質指定受付処理である。2つ目の処理は、前記受け付けた材質情報と、前記変位部の所定位置からの変位量と前記回転抵抗付与機構が前記相対回転に対して付与する抵抗を制御するための抵抗制御情報とを対応付けた触覚情報を読み出す処理である。3つ目の処理は、前記読み出した触覚情報を送信する処理である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、触覚を提示する仮想物体(オブジェクト)について触れたときの触覚をリアルに提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る触覚提示装置の側面と、触覚提示装置を操作するユーザの手とを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る触覚提示装置の部分断面図である。第1リンク部材の一部、および第2リンク部材の図示は省略している。
【
図3】第1実施形態に係る触覚提示装置の側面である。(a)は、変位部が基部側に押し込まれた状態を示し、(b)は、変位部が基部側に押し込まれる前の状態を示す。
【
図4】回転抵抗発生部の一例を示す断面図を示す図である。
【
図5】材質の異なる複数の着脱部材と本体部とからなる変位部を示す概略図である。
【
図6】第1実施形態に係る触覚提示システムの機能ブロックを示す図である。
【
図6A】第4実施形態に係る触覚提示システムの機能ブロックを示す図である。
【
図7】オブジェクト情報が付与された触覚情報の一例を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る触覚提示システムにおいて実行される処理動作を示すフローチャートである。
【
図9A】第3実施形態の変形例に係る触覚提示システムにおいて実行される処理動作を示すフローチャートである。
【
図9B】第4実施形態の変形例に係る触覚提示システムにおいて実行される処理動作を示すフローチャートである。
【
図10】第1~第4実施形態に係る触覚提示システムにおいて実行される処理動作を示すフローチャートである。
【
図11】補正後の触覚情報をなす情報テーブルの一例を示す図である。
【
図12】オブジェクト情報および材質情報が付与された触覚情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施の形態に係る触覚提示システムについて説明する。触覚提示システムには、触覚提示装置と情報処理端末とが含まれる。
【0019】
先ず、本実施形態に係る触覚提示装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る触覚提示装置1は、ユーザの手に収まる形状および大きさに形成されており、ユーザは、触覚提示装置1を手に持ちながら操作することができる。
【0020】
触覚提示装置1は、基部2、変位部3、抵抗発生部6、連動機構7、変位量検知部8、制御装置9、バッテリ10、装置側通信部11等を備えている。
【0021】
基部2は、本実施形態では、触覚提示装置1のユーザの手に保持される保持部である。また、基部2は、本実施形態では、抵抗発生部6、変位量検知部8、制御装置9およびバッテリ10を収容するケーシングでもある。
【0022】
変位部3は、ユーザの操作によって基部2に対して変位するように設けられている。この変位部3は、
図3に示すように、一端部に設けられた支軸31回りに回動して基部2に対して接近又は離反するようになっている。
図1に例示する変位部3は、円弧状に湾曲した形状を有する。変位部3がユーザの操作力によって変位すると、その操作力は、連動機構7を介して、抵抗発生部6の回転部61に伝達される。
【0023】
ユーザは、例えば、
図1に示すように、親指の上に基部2を保持しながら、人差指で変位部3を押し込む操作をすることができる。また、図示しないが、ユーザは、基部2の両側面を親指と中指で挟み持つことによって保持しながら、人差指で変位部3を押し込む操作をすることもできる。
【0024】
また、変位部3は、その一部である着脱部材32と、その他の部分である本体部33とで構成されている。着脱部材32は、変位部3においてユーザが操作する際に触れる部分に設けられている。好ましくは、着脱部材32は、本体部33において真ん中よりも先端部側に設けられる。更に好ましくは、
図1に示すように、ユーザの指の腹部が触れる部分に設けられる。ユーザの指の腹部が触れる部分は、操作する人ごとに誤差があるが、たとえば、本体部33の先端から本体部33の長さ(変位部3が湾曲している場合は、湾曲に沿った長さ)の1/3の位置までの範囲をユーザの指の腹部が触れる部分とすることができる。
【0025】
着脱部材32は、
図5に示すように、本体部33に対して着脱可能となっている。着脱部材32として、プラスチックやゴム、金属等、互いに材質の異なるものが複数用意されている。表面が平坦なものだけでなく、獣毛や絨毯など、繊維の一部が表面に埋め込まれたものも採用できる。このため、ユーザは、触覚提示を受けたい材質の着脱部材を複数の着脱部材32から選択して本体部33に取り付けることができる。本実施形態では、本体部33の所定部位に着脱部材32の形状に対応した凹部33aが形成されている。着脱部材32が本体部33の凹部33aに嵌め込まれると、着脱部材32は凹部33a内に固定される。着脱部材32は、凹部33aに対して簡単に手で着脱できるように構成されていてもよいし、工具等の道具を使って着脱できるように構成されていてもよい。また、着脱部材32の本体部33に対する取付形態は上記嵌込式に限定されず、種々の取付態様を採用し得る。
【0026】
本実施形態では、図示しないが、着脱部材32に1次元コードまたは2次元コードが表示されている。これらのコードは、例えば、着脱部材にプリントされていてもよいし、コードがプリントされたシールが着脱部材32に貼り付けられていてもよい。なお、上記コードの役割については後に説明する。なお、2次元コードの一例としてマトリックス型2次元コードがある。
【0027】
変位部3は、所定範囲内で変位できるように構成されている。本実施形態では、変位部3を押し込んだ後、元の位置に復帰させるためのリターンスプリング等が設けられていない。このため、触覚提示装置1を使用するに当たっては、例えば
図1に示すように、ユーザの指先と変位部3とを面ファスナー付結束具34を使用して結束してもよい。そうすることで、ユーザは、変位部3を指先によって基部2側に押し込んだ後、再び元の位置に容易に引き戻すことができる。もちろん、触覚提示装置1に上記リターンスプリング等が設けられていてもよい。
【0028】
連動機構7は、変位部3と抵抗発生部6の回転部61とを連動させるために設けられている。連動機構7は、
図1および
図2に示すように、第1リンク部材71、第2リンク部材72およびボス部材73を備えている。第1リンク部材71は、一端部が変位部3の裏面に回転自在に連結され、他端部が第2リンク部材72の先端部に回転自在に連結されている。第2リンク部材72の基端部は、
図2に示す略有底円筒状のボス部材73の外周面に固定されている。ボス部材73は、ワンウェイクラッチ74およびベアリング76を介して抵抗発生部6の回転部61の回転軸611に取り付けられている。また、ボス部材73は別のベアリング75を介して基部2内に回転自在に支持されている。
【0029】
上記のワンウェイクラッチ74は、ユーザによって変位部3が基部2側に押し込まれる際に、変位部3から連動機構7を介して伝達される操作力を抵抗発生部6の回転部61(回転軸611)に伝達する。一方、ユーザによって変位部3が基部2側から引き戻される際は、ワンウェイクラッチ74は、変位部3から連動機構7を介して伝達される操作力を抵抗発生部6の回転部61(回転軸611)に伝達しない。
【0030】
抵抗発生部6は、変位部3の変位に対して付与する抵抗を発生する。抵抗発生部6は、基部2と一体に固定された非回転部62と、非回転部62に対して回転可能に設けられた回転部61と、回転部61と非回転部62の相対回転に対し抵抗を付与する回転抵抗付与機構63とを有する。この回転抵抗付与機構63として、非回転部62と回転部61との間に介在する磁気粘性流体64と、磁気粘性流体64に印加する磁場を発生する磁場発生部65とを有する。磁場発生部65は、磁気粘性流体64に対して印加する磁場の強さを変化させることができ、その磁場の強さを変えることにより、非回転部62に対する回転部61の回転抵抗を変化させることができる。また、回転部61は連動機構7を介して変位部3と連動するため、磁場発生部65が磁気粘性流体64に印加する磁場の強さを変えることにより、変位部3に対して付与する変位抵抗を変化させることができる。
【0031】
抵抗発生部6の具体的な構成例を
図4に基づいて説明する。
図4に示す抵抗発生部6は、回転軸611、円板612、ヨーク621,622、コイル623、磁気粘性流体64、ケーシング624等で構成されている。このうち、ヨーク621,622、コイル623およびケーシング624は、基部2に固定される非回転部62を構成し、回転軸611および円板612は、非回転部62に対して回転する回転部61を構成する。ヨーク621,622およびコイル623は非回転部62であるとともに、磁気粘性流体64に印加する磁場を発生する磁場発生部65でもある。また、磁気粘性流体64および磁場発生部65は、回転部61と非回転部62の相対回転に対し抵抗を付与する回転抵抗付与機構63でもある。
【0032】
円板612は、その裏面612bの中心部に回転軸611が垂直に接続され、回転軸611と一体に回転する。回転軸611は、ベアリング626を介してヨーク622に設けられた軸穴627に支持されている。なお、円板612には磁性体が用いられることが望ましく、回転軸611には非磁性体が用いられることが望ましい。
【0033】
ヨークは、第1ヨーク621および第2ヨーク622で構成されている。第1ヨーク621は、円板612の表面612aに対して微小隙間を介して対向しており、円板状の部材で構成されている。この第1ヨーク621は、円筒状のケーシング624に嵌め込まれて固定されている。
【0034】
第2ヨーク622は、円板612の裏面612bに対して微小隙間を介して対向する対向面622aを有する。この第2ヨーク622も円筒状のケーシング624の内側に嵌め込まれて固定されている。
【0035】
なお、第1ヨーク621の中心部に形成された凹部と、回転軸611の端面の中心に形成された凹部とで形成されるスペースに非磁性体からなる球体628が収容されている。
【0036】
コイル623は、第2ヨーク622に形成された環状の溝に沿って配設されている。このコイル623には、制御装置9の後述する装置側制御部92によって制御された電流が入力される。
【0037】
磁気粘性流体64は、円板612と、第1ヨーク621および第2ヨーク622との隙間に封入されている。この磁気粘性流体64は、磁性粒子を分散媒に分散させてなる液体である。磁性粒子として、例えばナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)からなるものを使用することができる。磁性粒子は磁化可能な金属材料からなり、金属材料に特に制限はないが軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル及びパーマロイ等の合金が挙げられる。分散媒は、特に限定されるものではないが、一例として疎水性のシリコーンオイルを挙げることができる。磁気粘性流体における磁性粒子の配合量は、例えば3~40vol%とすることができる。磁気粘性流体にはまた、所望の各種特性を得るために、各種の添加剤を添加することも可能である。
【0038】
上記構成を備える抵抗発生部6において、コイル623に電流が印加されると、例えば
図4に示す矢印Pが示す方向に沿って円板612、第1ヨーク621、第2ヨーク622内に磁路が形成される。この磁路は、円板612の表面612aと第1ヨーク621との隙間に介在する磁気粘性流体64、および、円板612の裏面612bと第2ヨーク622との隙間に介在する磁気粘性流体64を貫通する。これにより、磁気粘性流体64には、磁場の強さに応じた粘度(ずり応力)が発現し、円板612とヨーク621,622との間で伝達されるトルクが磁場の強さに応じて大きくなる。すなわち、抵抗発生部6は、コイル623に印加される電流値(磁場印加部が印加する磁場の大きさ)に応じた大きさの抵抗を連動機構7を介して変位部3に変位抵抗として付与する。
【0039】
変位量検知部8(
図2参照)は、その入力部81がボス部材73と回転一体に連結されている。変位量検知部8は、ボス部材73の所定位置からの回転量(変位量)を検出し、その検出信号を制御装置9に送信する。この変位量検知部8として、例えば、エンコーダ又は可変抵抗器を用いることができる。
【0040】
制御装置9は、例えば、マイクロコンピュータ等を用いて構成されている。制御装置9はマイクロコンピュータのメモリに格納されたプログラムを実行することにより、例えば
図6に示すような、触覚情報記憶部91、装置側制御部92等の機能ブロックを形成する。
【0041】
触覚情報記憶部91は、情報処理端末100から装置側通信部11を介して受信した触覚情報または予め格納された触覚情報、その他の情報を記憶する。
【0042】
装置側制御部92は、変位量検知部8から受信する情報に基づいて変位部3の所定位置からの変位量を検知し、検知した変位量と、触覚情報記憶部91に格納された触覚情報とに基づいて抵抗発生部6に供給する電流を制御する。すなわち、制御装置9は、変位部3の所定位置からの変位量と触覚情報とに基づいて抵抗発生部6が変位部3に付与する変位抵抗を制御し、変位部3を操作するユーザに変位部3に付与される変位抵抗によって生じる触覚を提示する。
【0043】
バッテリ10は、制御装置9、振動発生部4および抵抗発生部6に供給する電力を蓄電している。
【0044】
装置側通信部11は、情報処理端末100の端末側通信部170と、互いに情報を送受信する通信モジュールである。装置側通信部11は、例えばブルートゥース(登録商標)を用いて端末側通信部170と無線通信を行うことができる。
【0045】
次に、情報処理端末100について説明する。情報処理端末100は、本実施の形態では、スマートフォン等の携帯端末が用いられる。但し、情報処理端末100は、スマートフォン等の携帯端末に限定されず、以下に説明する機能を実現可能な情報処理端末であればよい。例えば、情報処理端末100としてデスクトップ型のパーソナルコンピュータを用いることも可能である。情報処理端末100は、CPUやGPUなどからなる具体的な演算を行う制御装置と、フラッシュメモリや磁気ディスクなどのデータ及びプログラムを格納する記憶装置を有する。
【0046】
情報処理端末100は、
図6に示すように、触覚提示用アプリケーションプログラムを前記制御装置(図示せず)において実行することにより各種機能を提供するアプリ実行部110と、記憶装置において所定のデータやプログラムを格納する記憶部140と、表示部160と、端末側通信部170と、情報入力部180と、コード読取装置190とを有する。情報処理端末100が、スマートフォンのようにタッチパネルを備えている場合は、タッチパネルが表示部160および情報入力部180の両方の役割を果たす。
【0047】
アプリ実行部110は記憶部140に格納されている所定のプログラムを前記制御装置において実行することにより、オブジェクト選択受付部121、材質指定受付部122および情報処理部123として機能する。
【0048】
オブジェクト選択受付部121は、ユーザが触覚提示装置1において触覚提示を希望するオブジェクトの選択を受け付ける。本実施形態では、オブジェクト選択受付部121は、表示部160に複数のオブジェクトを選択可能な状態で表示させ、情報入力部180を用いてユーザに選択された1つのオブジェクトをユーザに選択されたオブジェクトとして受け付ける。
【0049】
材質指定受付部122は、着脱部材32の材質を特定する材質情報の指定を受け付ける。本実施形態では、材質指定受付部122は、表示部160に複数の材質情報を選択可能な状態で表示させ、情報入力部180を用いてユーザに選択された1つの材質情報を指定された材質情報として受け付ける。また、本実施形態では、情報処理端末100は、1次元コードまたは2次元コードを読み取るコード読取装置190を備えており、着脱部材32に1次元コードまたは2次元コードが表示されている。このため、材質指定受付部122は、コード読取装置190によって読み取られたコード読取情報に含まれる情報も、指定された材質情報として受け付ける。
【0050】
記憶部140には、
図7および
図8に示すように、複数のオブジェクトに関する触覚情報141と、補正情報142とが記憶されている。触覚情報141は、変位部3の所定位置からの変位量と、回転抵抗付与機構63が付与する抵抗を制御するための抵抗制御情報とを対応付けた情報であり、各オブジェクトを特定するオブジェクト情報を含む情報である。本実施形態では、抵抗制御情報は、コイル623に印加する電流値であるが、抵抗制御情報はこれに限定されず、他の種類のパラメータ情報であってもよい。例えば、抵抗制御情報は、コイル623に印加する電流のパラメータ情報として、電流値のほか、電流値の変動周波数、電流値のDUTY比、その他のパラメータであってもよい。補正情報142は、着脱部材32の材質情報と、補正係数とを対応付けた情報である。本実施形態では、
図7および
図8に示すように、触覚情報141および補正情報142は何れも情報テーブルの形態にて構成されている。
【0051】
図7に例示する触覚情報141を構成する変位部3の変位量情報は、例えば、変位部3が基部2から最も離れた位置となる基準位置からの回動角で示される。本実施形態では、変位部3の変位量情報は、1°刻みに複数設定されているが、設定間隔は1°に限定されず、適宜変更してもよい。例えば、変位部3の変位量情報は、0.1°刻みで設定されていてもよい。また、変位部3の変位量情報は、本実施形態では、変位部3の回動可能な角度範囲である0°~90°の範囲で設定されている。
【0052】
情報処理部123は、記憶部140からオブジェクト選択受付部121が受け付けたオブジェクトの触覚情報141を読み出すとともに、材質指定受付部122が受け付けた材質情報に対応する補正係数を補正情報142から読み出す。情報処理部123は、読み出した触覚情報141および補正係数を端末側通信部170を介して触覚提示装置1に送信する。
【0053】
また、情報処理部123は、オブジェクト選択受付部121が受け付けたオブジェクト(ユーザによって選択されたオブジェクト)を表示部160に表示させるとともに、触覚提示装置1から受信する変位部3の変位量情報に基づいて、表示するオブジェクトの形状を変化させる。
【0054】
端末側通信部170は、例えば、無線通信モジュールを用いて構成される。端末側通信部170は、既述したように、触覚提示装置1の装置側通信部11と通信する。
【0055】
次に、触覚提示装置1および情報処理端末100を有する触覚提示システムにおいて、ユーザがオブジェクト(オブジェクト)を選択して、そのオブジェクトの触覚が変位部3において提示されるまでの処理ステップを、
図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0056】
ユーザは、情報処理端末100の表示部160に表示される複数のオブジェクトのうち、触覚提示装置1での触覚の提示を希望するオブジェクト(本実施形態では、ボールとする。)を選択する(T1)。オブジェクトの選択は、例えば、表示部160に表示された複数のオブジェクトのうち、何れかのオブジェクトがユーザの指でタップ操作されることにより行われる。なお、オブジェクトはランダムで自動的に選ばれるようにしてもよい。この場合、表示部160には触覚が提示される所定のオブジェクトを表示し、ユーザの選択が行われずに次のステップへと進む。
【0057】
つぎに、情報処理部123は、ユーザに材質情報の指定を促す情報を表示部160に表示し、ユーザは、材質情報を指定する(T2)。例えば、情報処理部123は、ユーザに材質情報の指定を促す情報として、表示部160に「触覚提示装置に取り付けた着脱部材の材質を次の中から選択してください。」というメッセージとともに、当該メッセージの次行に「プラスチック」「獣毛」「ゴム」「鉄」等の材質情報を選択可能に表示させる。そして、ユーザが何れかの材質情報を選択する操作を行うと、材質指定受付部122は、選択された材質情報を、指定された材質情報として受け付ける。なお、材質情報の選択は、例えば、表示部160に表示された複数の材質情報のうち、何れかの材質情報がユーザの指でタップ操作されることにより行われる。
【0058】
また、情報処理部123は、ユーザに材質情報の指定を促す情報として、表示部160に「着脱部材に表示されている1次元コードまたは2次元コードを読み込ませてください。」というメッセージを表示させてもよい。そして、ユーザがコード読取装置190を用いて着脱部材32に表示されている1次元コードまたは2次元コードを読み取らせると、材質指定受付部122は、コード読取情報に含まれる情報を指定された材質情報として受け付ける。なお、コード読取情報には、「プラスチック」「獣毛」「ゴム」「鉄」等のうちの何れか1つの材質情報が含まれる。
【0059】
情報処理部123は、選択されたオブジェクト(ボール)に関する触覚情報141を記憶部140から読み出すとともに、補正情報142において、指定された材質情報に対応する補正係数を記憶部140から読み出す(T3)。
【0060】
情報処理部123は、読み出した触覚情報141と補正係数を端末側通信部170を介して触覚提示装置1に送信する(T4)。
【0061】
一方、触覚提示装置1の装置側制御部92は、装置側通信部11を介して受信(S1)した触覚情報141および補正係数を触覚情報記憶部91に格納する(S2)。
【0062】
装置側制御部92は、触覚情報記憶部91に格納した触覚情報141および補正係数に基づいて、回転抵抗付与機構63が回転部61と非回転部62の相対回転に対して付与する抵抗を制御する。より具体的には、装置側制御部92は、触覚情報記憶部91に格納した触覚情報141および補正係数に基づいて、コイル623に供給する電流を制御する(S3)。この制御により、変位部3の変位量に応じて変化する反力がユーザの指に触覚として提示される。
【0063】
上述のS3の処理と並行して、情報処理端末100の表示部160においては、ユーザが触覚提示装置1の変位部3を指で押し込む動作に伴って、オブジェクト(ボール)が変形する様子が表示される。このときの処理ステップを、
図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0064】
ユーザが触覚提示装置1の変位部3を指で押し込むと(S10)、変位部3の変位量と連動して回転する回転部61の回転量の情報が変位量検知部8により検知される(S11)。
【0065】
装置側制御部92は、変位量検知部8が検知した回転量の情報に基づいて検出した変位部3の変位量の情報を装置側通信部11を介して、情報処理端末100に送信する(S12)。
【0066】
情報処理端末100が変位部3の変位量の情報を受信する(T10)と、変位量の情報は、情報処理部123によってオブジェクト(ボール)の画像の変形量に変換される(T11)。
【0067】
そして、情報処理部123は、表示部160に、変形したオブジェクト(ボール)の画像を表示させる(T12)。
【0068】
以上に説明した第1実施形態に係る触覚提示システムによれば、ユーザが操作する際に触れる変位部3の一部が着脱可能に設けられているので、オブジェクトにあわせて着脱部材32を選択することで、様々なオブジェクトに触れたときの触覚をリアルに提示することができる。
【0069】
また、ユーザが選択した着脱部材32の材質に応じて、変位部3の変位抵抗が補正されるため、ユーザが選択した着脱部材32の表面に触れたときの触覚のみならず、変位部3の変位抵抗によって提示される触覚もユーザが選択したオブジェクトに相応しいものとすることができる。
【0070】
<第2実施形態>
第1実施形態に係る触覚提示システムにおいては、情報処理端末100の情報処理部123は、オブジェクト選択受付部121が受け付けたオブジェクトの触覚情報141を記憶部140から読み出すとともに、材質指定受付部122が受け付けた材質情報に対応する補正係数を補正情報142から読み出し、触覚提示装置1に送信したが、この情報処理部123の処理を次のように変更することも可能である。
【0071】
すなわち、情報処理部123は、オブジェクトの触覚情報141および、材質指定受付部122が受け付けた材質情報に対応する補正係数を触覚提示装置1に送信することなく、オブジェクトの触覚情報141に含まれる抵抗制御情報に補正係数を乗じて得られる補正後の触覚情報を触覚提示装置1に送信するようにしてもよい。例えば、前記処理ステップT1において、ユーザが複数のオブジェクトの中から「ボール」を選択し、材質情報として「ゴム」が指定された場合、情報処理部123は、
図8に示す補正情報142から指定された「ゴム」に対応付けられた補正係数「0.3」を読み出し、
図7に示す「ボール」の触覚情報141に含まれる全ての抵抗制御情報に対して、「ゴム」に対応付けられた補正係数「0.3」を乗じて補正後の触覚情報141A(
図11参照)を取得し、取得した補正後の触覚情報141Aを触覚提示装置1に送信するようにしてもよい。なお、補正後の触覚情報141Aは、抵抗制御情報に補正係数を加算した値としてもよい。
【0072】
この場合、触覚提示装置1側では、装置側制御部92が補正後の触覚情報141Aを受信し、受信した補正後の触覚情報141と、変位部3の所定位置からの変位量とに基づいて、コイル623に印加する電流を制御することとなる。
【0073】
<第3実施形態>
第1実施形態に係る触覚提示システムにおいて、着脱部材32にICタグを設けるとともに、触覚提示装置1にICタグの情報を読み取るICタグ読取装置を設け、例えば
図9Aに示すように、装置側制御部92がICタグ読取装置が読み取ったICタグ読取情報を装置側通信部11を介して情報処理端末100に送信する処理(S0)を前記S1の前の処理ステップで実行するようにしてもよい。この場合、前記T2の処理を省略した上で、情報処理端末100の材質指定受付部122は、装置側通信部11から端末側通信部170を介して受信するICタグ読取情報に含まれる材質情報を、指定された材質情報として受け付けることとなる(T2-1)。
【0074】
<第4実施形態>
第1実施形態においては、情報処理端末100の記憶部140に補正情報142が格納され、補正情報142の補正係数と、着脱部材32の材料情報とを用いて触覚情報141が補正されるようになっていたが、補正情報142を用いることなく、着脱部材32の材料情報に応じた触覚提示をすることも可能である。
【0075】
そのために、例えば、変位部3の変位量情報と、抵抗制御情報と、オブジェクト情報(例:ボール)とで構成される触覚情報141(
図7参照)を着脱部材32の材料情報ごとに作成し、記憶部140に格納しておく。この場合、
図6Aおよび
図12に示すように、記憶部140に格納される各触覚情報141Bは、変位部の変位量情報と、抵抗制御情報と、オブジェクト情報(例:ボール、風船など)のほか、材料情報(例:プラスチック、獣毛、ゴムなど)が付与された情報テーブルとなる。
【0076】
次に、本実施形態において、ユーザがオブジェクト(オブジェクト)を選択し、そのオブジェクトの触覚が変位部3において提示されるまでの処理ステップを、
図9Bのフローチャートに基づいて説明する。なお、第1実施形態と同様の処理ステップについては第1実施形態と同様の符号を表示して説明を省略する。
【0077】
先ず、第1実施形態の処理ステップT1およびT2と同様の処理が実行された後、情報処理端末100の情報処理部123は、選択されたオブジェクト(ボール)情報と、指定された材質情報の双方に対応する触覚情報141Aを記憶部140から読み出す(T3A)。
【0078】
情報処理部123は、読み出した触覚情報141Aを端末側通信部170を介して触覚提示装置1に送信する(T4A)。
【0079】
一方、触覚提示装置1の装置側制御部92は、装置側通信部11を介して受信(S1A)した触覚情報141Aを触覚情報記憶部91に格納する(S2A)。
【0080】
装置側制御部92は、触覚情報記憶部91に格納した触覚情報141Aに基づいて、回転抵抗付与機構63が回転部61と非回転部62の相対回転に対して付与する抵抗を制御する。より具体的には、装置側制御部92は、触覚情報記憶部91に格納した触覚情報141に基づいて、コイル623に供給する電流を制御する(S3A)。
【0081】
この第4実施形態では、触覚情報141Bを、オブジェクトの種類および、着脱部材32の材質情報ごとに作成することができるので、オブジェクトの触覚をよりリアルに提示することが可能となる。例えば、触覚提示装置1の変位部3の着脱部材32としてゴム材質の着脱部材32を選択し、情報処理端末100において、複数のオブジェクトからゴムボールを選択すると、変位部3の表面に触れたときの触覚(感触)も、変位部3を押し込む際の触覚(抗力)も本物のゴムボールに近いものを提示することができる。また、仮に、ゴム材質の着脱部材32を使用したまま、ゴムボール以外のオブジェクトを選択した場合でも、提示される触覚の違和感を緩和することが可能である。例えば、ゴム材質の着脱部材32を使用したまま、情報処理端末100において複数のオブジェクトから鉄球を選択した場合、オブジェクト情報として鉄球が付与され、材質情報としてゴムが付与された触覚情報141Bに基づいて変位部3における触覚(抗力)が提示されることになるが、当該触覚情報141Bにおける抵抗制御情報を予め硬めの触覚が提示されるように設定しておけば、提示される触覚の違和感を緩和することができる。
【0082】
<その他の実施形態>
既述した実施形態では、変位部3は、その一部である着脱部材32が本体部33に対して着脱可能であったが、変位部3全体を触覚提示装置1の基部2に対して着脱可能となるように構成し、互いに異なる材質からなる変位部3を複数備えるようにしてもよい。変位部3全体を触覚提示装置1の基部2に対して着脱可能とする場合、工具を用いて着脱できる場合と、工具を用いずにユーザの素手で着脱できる場合とが考えられる。工具を用いて着脱できるようにする場合は、変位部3と基部2とを連結する支軸31と、変位部3と第1リンク部材71とを連結する連結軸77とを、例えばビスおよびナットを用いて構成することが考えられる。また、工具を用いずにユーザの素手で着脱できるようにする場合は、支軸31と連結軸77とを、例えば蝶ボルトおよびナットを用いて構成することが考えられる。
【0083】
既述した実施形態に係る触覚提示装置1の外観形状および大きさは例示に過ぎず、触覚提示装置1が手に収まらない大きさおよび形状であってもよい。また、触覚提示装置1は、机上に置いて使用する形態であってもよい。
【0084】
既述した実施形態においては、抵抗発生部6として磁気粘性流体64を用いたものが例示されたが、抵抗発生部6は、磁気粘性流体64を用いたものに限定されない。例えば、抵抗発生部6として、電動モータを採用することも可能である。電動モータの回転軸を回転部61、電動モータのケーシングを非回転部62とし、電動モータの回転トルクによって、変位部3に変位抵抗を付与し、ユーザに触覚を提示することができる。なお、この電動モータが提示する触覚はユーザが変位部3を押し込む際だけでなく、押込操作を止めている際にも提示されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 触覚提示装置
2 基部
3 変位部
11 装置側通信部
32 着脱部材
33 本体部
33a 凹部
6 抵抗発生部
61 回転部
63 回転抵抗付与機構
8 変位量検知部
81 入力部
9 制御装置
91 触覚情報記憶部
92 装置側制御部
100 情報処理端末
121 オブジェクト選択受付部
122 材質指定受付部
123 情報処理部
140 記憶部
141,141B 触覚情報
141A 補正後の触覚情報
142 補正情報
170 端末側通信部
180 情報入力部
190 コード読取装置