(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145323
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241004BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20241004BHJP
G09B 5/02 20060101ALI20241004BHJP
G09B 7/06 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06Q50/20
G09B5/02
G09B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057615
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 麻由
【テーマコード(参考)】
2C028
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2C028AA10
2C028BB04
2C028BC01
2C028BD03
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC04
5H181EE15
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF32
5H181FF40
5H181LL01
5H181LL08
5L049CC34
5L050CC34
(57)【要約】
【課題】学習教材の質を高めることができる情報処理装置および情報処理方法を提供すること。
【解決手段】本願に係る情報処理装置は、コントローラを備える。コントローラは、映像に基づいて学習情報を生成する。また、コントローラは、映像と定められた複数の要素との一致度を算出し、一致度が閾値以上か否かで学習情報の表現を変更する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像に基づいて学習情報を生成する情報処理装置であって、コントローラを有し、
前記コントローラは、
前記映像と定められた複数の要素との一致度を算出し、前記一致度が閾値以上か否かで前記学習情報の表現を変更する
情報処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記映像を視聴して運転における危険の内容を問う問題に回答する形式の前記学習情報を生成する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記問題に対して複数の選択肢から回答を選択する択一式の前記学習情報を生成する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記複数の要素すべての前記一致度が閾値未満である場合、前記映像の視聴のみ行う前記学習情報を生成する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記複数の要素は、
前記危険の原因となった対象の種類、前記対象の位置および前記対象の動作を含む
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、
映像に基づいて学習情報を生成し、
前記映像と定められた複数の要素との一致度を算出し、前記一致度が閾値以上か否かで前記学習情報の表現を変更する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転に関する学習教材を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転中におけるヒヤリハット発生時の映像を利用者が見てヒヤリハットに関する問題に回答する等といった学習教材を提供するサービスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、この種のサービスとして、映像を解析して得たヒヤリハットの内容が予め準備したヒヤリハットのパターンのいずれに該当するかを特定し、特定したパターンに関する問題を作成して提供する技術がある。上記各パターンは、ヒヤリハットの原因となった対象物の種類(車両や歩行者等)や、対象物の位置、対象物の動作等といった複数の要素を含んで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、作成される学習教材の質の向上を図るうえで改善の余地があった。具体的には、従来は、複数の要素を含んだパターン中で、実際の内容と最も一致度が高いパターンを特定して問題を作成する。このため、パターンを構成する複数の要素のうち、ある要素が実際の内容と異なったとしても当該パターンとの一致度が高くなってしまう場合がある。この場合には、実際の映像と内容が乖離した問題が作成されてしまうため、学習教材として質が高いとは言えなかった。
【0006】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、学習教材の質を高めることができる情報処理および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る情報処理装置は、コントローラを備える。前記コントローラは、映像に基づいて学習情報を生成する。また、前記コントローラは、前記映像と定められた複数の要素との一致度を算出し、前記一致度が閾値以上か否かで前記学習情報の表現を変更する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、学習教材の質を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理方法の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、ヒヤリハット映像DBの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、学習情報DBの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、危険要素DBの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、生成部が生成する学習教材の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るコントローラが実行する全体処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、情報処理装置および情報処理方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1を用いて、実施形態に係る情報処理装置によって実行される情報処理方法の概要について説明する。
図1は、実施形態に係る情報処理方法の概要を示す図である。
図1では、実施形態に係る情報処理装置1を含む情報処理システムSの構成例を示している。
図1に示すように、実施形態に係る情報処理システムSは、情報処理装置1と、車載装置100と、利用者端末200とを備える。
【0012】
車載装置100は、例えば、ドライブレコーダ等の撮像機能を備えた車載装置である。車載装置100は、車両の周囲を撮影し、撮影した映像を自身の記憶部に記憶する。また、車載装置100は、運転者が危険を認知した際の運転操作をトリガーとして、撮影した映像データを情報処理装置1へ送信する。
【0013】
利用者端末200は、情報処理装置1によって提供される学習教材を利用する利用者が扱う端末装置である。利用者端末200は、スマートフォン、デスクトップ型PC、ノート型PC、タブレット型PC等の任意のタイプの端末装置を用いることができる。
【0014】
情報処理装置1は、実施形態に係る情報処理方法を実行する。情報処理装置1は、車載装置100や利用者端末200に対して、各種アプリケーション(以下、アプリ)等に対するAPI(Application Programming Interface)サービス等と、各種データを提供する情報処理装置であり、サーバ装置やクラウドシステム等により実現される。情報処理装置1が提供するサービスは、例えば、ヒヤリハットに関する学習教材を提供するサービスである。
【0015】
本開示において、情報処理システムSは、ヒヤリハット映像から検出されるヒヤリハットの危険を複数の要素に分解する。また、情報処理装置1は、分解した複数の要素毎に、予め定められた危険要素との一致度を算出し、複数の要素それぞれの一致度に応じた内容の学習教材を生成する。以下、情報処理システムSの処理について具体的に説明する。
【0016】
具体的には、
図1に示すように、車載装置100は、運転者が危険を認知した際の映像であるヒヤリハット映像を撮影し(ステップS1)、撮影したヒヤリハット映像のデータを情報処理装置1へ送信する(ステップS2)。
【0017】
具体的には、車載装置100は、運転者が急ブレーキや、急加速、急ハンドル等の緊急性が高い運転操作(Gセンサの検出値が所定値以上)が検出された場合に、当該運転操作の時刻を含む所定時間の映像をヒヤリハット映像として情報処理装置1へ送信する。
【0018】
つまり、ヒヤリハット映像とは、運転者が運転中に事故に繋がる危険を認知し、運転操作により当該危険を回避する必要がある事象(いわゆるヒヤリハット)が発生した際に撮影された映像である。なお、車載装置100の撮影方式は、常時録画方式であってもよく、Gセンサの検出値を撮影のトリガーとするトリガー方式であってもよい。
【0019】
つづいて、情報処理装置1は、取得したヒヤリハット映像から検出される危険を複数の要素に分解する(ステップS3)。複数の要素は、例えば、危険の原因となった対象の種類や、対象の位置、対象の動作等の要素を含む。
【0020】
つづいて、情報処理装置1は、複数の要素毎に、危険な要素として予め定められた危険要素との一致度を算出する(ステップS4)。例えば、対象の種類に関する危険要素は、車両、自転車、歩行者等である。対象の位置に関する危険要素は、前方、後方、左方、右方等である。対象の動作に関する危険要素は、急停止、死角障害物から侵入(いわゆる道路への飛び出し)、バック走行等である。
【0021】
具体的には、情報処理装置1は、ヒヤリハット映像の中から危険の原因となった対象の領域を検出し、パターンマッチングにより、当該領域と、危険要素である車両、自転車および歩行者それぞれのテンプレート画像との一致度を算出する。
【0022】
また、情報処理装置1は、検出した領域の位置や不図示のカメラの撮像範囲に基づいて、対象の位置に関する危険要素である前方、後方、左方および右方それぞれとの一致度を算出する。また、情報処理装置1は、検出した領域の映像内における位置変化(領域サイズの変化を含む)に基づいて、対象の動作に関する危険要素である急停止、死角障害物から侵入およびバック走行それぞれとの一致度を算出する。
【0023】
つづいて、情報処理装置1は、算出した各一致度に応じた内容の学習教材である学習情報を生成し(ステップS5)、利用者端末200へ学習情報を提供する(ステップS6)。
図1では、ヒヤリハット映像と、ヒヤリハット映像において発生した危険に関する問題、回答および解説を含む学習情報を示している。なお、
図1では、対象の種類に関する危険要素(車両)および対象の位置(前方)に関する危険要素それぞれの一致度が閾値以上で、対象の動作に関する危険要素の一致度が閾値未満である場合の学習情報を示している。
【0024】
具体的には、
図1に示す学習情報は、問題の回答に関して、対象の種類に関する危険要素および対象の位置については具体的な表現を用い、対象の動作に関する危険要素については抽象的な表現を用いる。
【0025】
つまり、情報処理装置1は、対象の動作に関する危険要素については一致度が閾値未満であり、具体的な表現を用いた場合にヒヤリハット映像と乖離するおそれがあるため抽象的な表現を用いる。
【0026】
なお、情報処理装置1は、すべての危険要素について一致度が閾値以上である場合には、すべての危険要素について具体的な表現を用いる。また、情報処理装置1は、すべての危険要素について一致度が閾値未満である場合には、問題形式ではなく、ヒヤリハット映像の視聴のみとし、例えば、「今から再生するヒヤリハットに巻き込まれないよう気を付けましょう」といった危険に対する注意喚起に関する内容を提供する。なお、学習情報の具体例については、
図6で後述する。
【0027】
このように、実施形態に係る情報処理装置1によれば、複数の要素それぞれの一致度に応じた内容の学習教材を生成することで、ヒヤリハット映像の中で判別し難い要素があった場合であっても学習教材とヒヤリハット映像の実際の内容との乖離を小さくすることができる。すなわち、実施形態に係る情報処理装置1によれば、学習教材の質を高めることができる。
【0028】
次に、
図2を用いて、実施形態に係る情報処理装置1の構成例について説明する。
図2は、情報処理装置1の機能ブロック図である。
図2に示すように、実施形態に係る情報処理装置1は、通信部2と、記憶部3と、コントローラ4とを備える。
【0029】
通信部2は、たとえば、例えばNIC(Network Interface Card)等によって実現される。通信部2は、所定の通信ネットワークに双方向通信可能に接続され、各車載装置100や、各利用者端末200との間で情報の送受信を行う。
【0030】
記憶部3は、たとえば、不揮発性メモリやフラッシュメモリ、ハードディスクドライブといった不揮発性記憶媒体を有する。
図2に示すように、記憶部3は、ヒヤリハット映像DB31、学習情報DB32および危険要素DB33を有する。
【0031】
ヒヤリハット映像DB31は、車載装置100から取得したヒヤリハット映像を含むデータベースである。
図3は、ヒヤリハット映像DB31の一例を示す図である。
図3に示すように、ヒヤリハット映像DB31は、「映像ID」および「映像データ」といった項目を有する。
【0032】
「映像ID」は、ヒヤリハット映像を識別する識別情報である。「映像データ」は、ヒヤリハット映像の映像データである。コントローラ4は、車載装置100からヒヤリハット映像を取得した場合に、新たな映像IDを発行してヒヤリハット映像DB31に記憶する。
【0033】
学習情報DB32は、コントローラ4が生成した学習情報を含むデータベースである。
図4は、学習情報DB32の一例を示す図である。
図4に示すように、学習情報DB32は、「教材ID」、「映像ID」および「教材情報」といった項目を有する。
【0034】
「教材ID」は、学習教材を識別する識別情報である。「映像ID」は、学習教材に紐付いたヒヤリハット映像を識別する識別情報であり、上記したヒヤリハット映像DB31における「映像ID」が入力される。「教材情報」は、学習教材の内容を示す情報であり、例えば、ヒヤリハットに関する問題や、回答、解説等の情報である。コントローラ4は、学習情報を生成した場合に、新たな教材IDを発行して学習情報DB32に記憶する。
【0035】
危険要素DB33は、危険要素を含むデータベースである。
図5は、危険要素DB33の一例を示す図である。
図5に示すように、危険要素DB33は、「大項目:対象」、「中項目:対象位置」および「小項目:対象動作」といった項目を有する。
【0036】
「大項目:対象」は、対象の種類に関する危険要素に関する情報であり、例えば、各危険要素のテンプレート画像の情報である。「中項目:対象位置」は、対象の位置に関する危険要素であり、例えば、映像内における対象の領域の位置を示す情報である。「小項目:対象動作」は、対象の動作に関する危険要素であり、対象の動作に伴って変化する映像内における対象の領域の大きさの変化を示す情報である。危険要素DB33における各項目は、例えば、学習教材の提供元によって予め登録される。
【0037】
図2の説明に戻り、コントローラ4について説明する。コントローラ4は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって機能する。
【0038】
コントローラ4は、取得部41、検出部42、算出部43、生成部44および提供部45を備える。また、コントローラ4の取得部41、検出部42、算出部43、生成部44および提供部45は、CPUが記憶部3に記憶されたプログラムを実行することで実現する。
【0039】
取得部41は、車載装置100からヒヤリハット映像を取得する。ヒヤリハット映像の取得タイミングは、任意のタイミングで取得可能である。例えば、取得部41は、ヒヤリハット映像が撮影される都度、すなわち、運転者が急ブレーキや急加速、急ハンドルを行う都度、ヒヤリハット映像を取得する。
【0040】
また、取得部41は、車載装置100に対してヒヤリハット映像を要求することで、車載装置100が自身の記憶部に記憶した複数のヒヤリハット映像をまとめて取得してもよい。また、取得部41は、所定の間隔(例えば、毎月や毎週1回の間隔)でヒヤリハット映像をまとめて取得してもよい。取得部41は、取得したヒヤリハット映像をヒヤリハット映像DB31に記憶する。
【0041】
検出部42は、取得部41が取得したヒヤリハット映像から検出される危険を複数の要素に分解し、要素毎に危険を検出する。具体的には、検出部42は、ヒヤリハットの原因となった対象、対象の位置、対象の動作等の要素をそれぞれ検出する。
【0042】
具体的には、検出部42は、ヒヤリハット映像に映った物体の領域を要素である対象として検出する。より具体的には、検出部42は、ヒヤリハット映像に基づいて物体と車両との距離を算出し、かかる距離が閾値未満の物体を対象として検出する。
【0043】
また、検出部42は、検出した対象の位置(方向や距離)を要素として検出する。具体的には、検出部42は、ヒヤリハット映像を撮影したカメラの撮影方向に基づいて、対象が存在する方向を検出する。また、検出部42は、ヒヤリハット映像に基づいて物体と自車両との距離を検出する。
【0044】
また、検出部42は、検出した対象の動作を要素として検出する。具体的には、検出部42は、ヒヤリハット映像における対象の領域のサイズ変化を動作として検出する。より具体的には、検出部42は、対象の領域サイズが短時間で急激に大きくなった場合に、対象の動作が急ブレーキであると検出する。
【0045】
また、検出部42は、自車両の走行速度を加味して、例えば、自車両の走行速度が変化しない状態で対象の領域サイズが短時間で急激に大きくなった場合には、対象の動作が急ブレーキであると検出する。なお、走行速度は、例えば、車両に設けられた車速センサで検出される走行速度や、カメラの画像に基づいて検出される走行速度である。また、検出部42は、ヒヤリハット映像において対象の領域が所定サイズ以上で突然に出現した場合には、対象の動作が割込み(あるいは、道路への飛び出し)であると検出する。
【0046】
算出部43は、検出部42が検出した要素毎に、危険な要素として定められた危険要素との一致度を算出する。具体的には、算出部43は、検出部42が検出した各要素と、危険要素DB33に格納された各危険要素との一致度を算出する。
【0047】
例えば、算出部43は、要素である対象と、危険要素DB33における「大項目:対象」との一致度を算出する。具体的には、算出部43は、「大項目:対象」の自動車、歩行者、自転車それぞれのテンプレート画像と、検出部42が検出した対象の領域とのパターンマッチング(テンプレートマッチング)を行い、それぞれの一致度を算出する。
【0048】
また、算出部43は、要素である対象の位置と、危険要素DB33における「中項目:対象位置」との一致度を算出する。具体的には、算出部43は、「中項目:対象位置」に含まれるヒヤリハット映像内での対象の領域の位置を示す情報と、検出部42が検出した対象の領域の位置とのパターンマッチングにより一致度をそれぞれ算出する。
【0049】
例えば、算出部43は、車両の前方を撮影したヒヤリハット映像において、対象の領域が中央に映っている場合、危険要素における「前方」の一致度の値を高く算出する。
【0050】
また、算出部43は、要素である対象の動作と、危険要素DB33における「小項目:対象動作」との一致度を算出する。具体的には、算出部43は、「小項目:対象動作」に含まれるヒヤリハット映像内での対象の領域のサイズ変化を示す情報と、検出部42が検出した対象の領域のサイズ変化とのパターンマッチングにより一致度をそれぞれ算出する。
【0051】
生成部44は、算出部43によって算出された複数の要素それぞれの一致度に応じた内容の学習教材である学習情報を生成する。具体的には、生成部44は、複数の要素それぞれについて、最も一致度が高い危険要素を特定する。
【0052】
より具体的には、生成部44は、危険要素DB33における「大項目:対象」である自動車、歩行者および自転車のうち一致度が最も高いものを特定する。生成部44は、「中項目:対象位置」および「小項目:対象動作」についても同様に、一致度が最も高いものを特定する。
【0053】
そして、生成部44は、特定した複数の要素それぞれにおいて最も一致度が高い危険要素に基づいて学習教材を生成する。ここで、
図6を用いて、生成部44が生成する学習教材の一例について説明する。
【0054】
図6は、生成部44が生成する学習教材の一例を示す図である。
図6では、複数の要素の一致度が異なる3つのヒヤリハット映像(映像A~C)から生成される学習教材の例を示している。なお、
図6では、映像A~Cそれぞれについて、「大項目:対象」の自動車との一致度、「中項目:対象位置」の前方の一致度、「小項目:対象動作」の急停止(急ブレーキ)の一致度を示している。
【0055】
まず、映像Aについて説明する。映像Aは、「大項目:対象」、「中項目:対象位置」および「小項目:対象動作」それぞれの危険要素との一致度が閾値以上(例えば、80%以上)の例である。
【0056】
つまり、映像Aは、前方車両の急停止によりヒヤリハットが発生したヒヤリハット映像であることを示している。この場合、生成部44は、3つの要素すべてにおいて一致度が閾値以上であるため、問題作成方法として、全項目を利用した4択問題を作成する。
【0057】
具体的には、
図6に示すように、生成部44は、「このヒヤリハットはなぜ起きたでしょう?」といった問題と、回答の選択肢として、「前方の車両が急停止したから」等といった3つの危険要素を具体的に表現した選択肢を生成する。
【0058】
つまり、生成部44は、複数の要素それぞれの一致度がすべて閾値以上である場合には、複数の要素それぞれに対応する危険要素すべてを具体的に表現した学習教材を生成する。これにより、ヒヤリハット映像に忠実な学習教材を生成できる。さらに、すべての危険要素を具体的に表現することで、利用者が具体的な内容で学習を行うことができるため、学習効果を高めることができる。
【0059】
次に、映像Bについて説明する。映像Bは、「大項目:対象」および「中項目:対象位置」については危険要素との一致度が閾値以上であり、「小項目:対象動作」については危険要素との一致度が閾値未満の例である。
【0060】
つまり、映像Bは、前方車両のなにかしらの動作によりヒヤリハットが発生したヒヤリハット映像であることを示している。この場合、生成部44は、3つの要素のうち、一致度が高い2つの危険要素(「大項目:対象」および「中項目:対象位置」)のみを利用した4択問題を生成する。
【0061】
具体的には、
図6に示すように、生成部44は、「このヒヤリハットを防ぐためにはどうすればよいでしょうか」といった問題と、回答の選択として、「前方の車両の挙動に気を付ける」等といった一致度が高い2つの危険要素を具体的に表現する。
【0062】
また、生成部44は、かかる回答の選択肢において、一致度が低い1つの危険要素については抽象的に表現する(例では「挙動」という文言を使用)。このように、一致度が低い危険要素については抽象的に表現することで、ヒヤリハット映像との乖離が小さい学習教材を生成することができる。
【0063】
次に、映像Cについて説明する。映像Cは、「大項目:対象」、「中項目:対象位置」および「小項目:対象動作」それぞれの危険要素との一致度が閾値未満(例えば、80%以上)の例である。
【0064】
つまり、映像Cは、具体的な内容は不明であるがなにかしらのヒヤリハットが発生したヒヤリハット映像であることを示している。この場合、生成部44は、問題作成を実施せず、ヒヤリハット映像を視聴するのみの学習教材を生成する。
【0065】
そして、生成部44は、映像再生前に「今から再生するヒヤリハットに巻き込まれないよう気を付けて運転しましょう」等といった通知を行う。つまり、生成部44は、すべての要素の一致度が閾値未満である場合には、危険要素の具体的な表現を用いず、ヒヤリハットが発生していることのみを映像視聴によって学習させる学習教材を生成する。これにより、ヒヤリハット映像と乖離する可能性が高い問題を作成しないようできるため、学習教材の質が低下することを防ぐことができる。
【0066】
また、
図6で示したように、ヒヤリハット映像を視聴して危険(ヒヤリハット)の内容を問う問題に回答する形式により、すなわち、利用者が問題を解くという意欲を高められるため、利用者が学習教材へ取り組む意欲を高めることができる。
【0067】
また、
図6で示したように、問題に対して複数の選択肢から回答を選択する択一式の学習教材とすることで、利用者が容易に回答できるため、学習教材への意欲をさらに高めることができる。
【0068】
生成部44は、生成した学習教材を学習情報DB32にヒヤリハット映像毎に記憶する。
【0069】
なお、
図6では、学習教材として4択問題を生成する例を示したが、選択肢が3つ、あるいは、5つ以上の問題や、2択(〇×)問題等の任意の択一式の問題を採用可能である。
【0070】
提供部45は、生成部44が生成した学習情報を利用者へ提供する。具体的には、提供部45は、利用者の要求に従って学習情報を提供する。例えば、提供部45は、複数のヒヤリハット映像を利用者端末200に表示して、利用者から特定のヒヤリハット映像の選択を受け付けた場合に、かかるヒヤリハット映像に紐付く学習情報を提供する。
【0071】
また、提供部45は、利用者の学習履歴に基づいて、学習情報を提供する。例えば、提供部45は、利用者まだ学習していない内容(例えば、前方車両の動作に関するヒヤリハット等)の学習情報を提供する。また、提供部45は、利用者の正答率が低い、あるいは、過去に問題に間違えた内容の学習情報を提供する。
【0072】
次に、
図7を参照し、実施形態に係る情報処理装置1のコントローラ4が実行する処理について説明する。
図7は、実施形態に係るコントローラ4が実行する全体処理の一例を示すフローチャートである。
【0073】
図7に示すように、まず、コントローラ4は、車載装置100からヒヤリハット映像を取得する(ステップS101)。
【0074】
つづいて、コントローラ4は、ヒヤリハット映像から検出される危険を複数の要素に分解する(ステップS102)。具体的には、コントローラ4は、ヒヤリハットの原因となった対象、対象の位置、対象の動作等の要素をそれぞれ検出する。
【0075】
つづいて、コントローラ4は、複数の要素毎に危険要素との一致度を算出する(ステップS103)。具体的には、コントローラ4は、危険要素DB33における危険要素に関する情報とのパターンマッチングにより一致度を算出する。
【0076】
つづいて、コントローラ4は、各一致度に応じた内容の学習教材である学習情報を生成する(ステップS104)。具体的には、コントローラ4は、特定した複数の要素それぞれにおいて最も一致度が高い危険要素に基づいて学習教材を生成する。例えば、コントローラ4は、一致度が閾値以上の危険要素については具体的な表現を用い、一致度が閾値未満の危険要素のついては抽象的な表現を用いる。
【0077】
つづいて、コントローラ4は、ヒヤリハット映像を含む学習情報を利用者へ提供し(ステップS105)、処理を終了する。
【0078】
上述したように、実施形態に係る情報処理装置1は、コントローラ4を備える。コントローラ4は、映像に基づいて学習情報を生成する。また、コントローラ4は、映像と定められた複数の要素との一致度を算出し、一致度が閾値以上か否かで学習情報の表現を変更する。
【0079】
これにより、情報処理装置1は、複数の要素それぞれの一致度に応じた内容の学習教材を生成することで、ヒヤリハット映像の中で判別し難い要素があった場合であっても学習教材とヒヤリハット映像の実際の内容との乖離を小さくすることができる。すなわち、情報処理装置1は、学習教材の質を高めることができる。
【0080】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 情報処理装置
2 通信部
3 記憶部
31 ヒヤリハット映像DB
32 学習情報DB
33 危険要素DB
4 コントローラ
41 取得部
42 検出部
43 算出部
44 生成部
45 提供部
100 車載装置
200 利用者端末
S 情報処理システム